日常編68

幼「今日芸能界見ちゃった。和くん芸能人と会ったことある?」
俺「俺は芸能人にカード盗まれたことがある」
幼「えー!?
  間違いないの?」
俺「間違いねーよ。ゲーム知らなきゃ60枚のデッキから極楽鳥二枚に不吉の月とか高いカードだけピンポイントで盗めねーよ」
幼「その人は知ってたんだ?」
俺「つーかそいつが持って来いって言ったんだよ。対戦しよーぜみたいな」
幼「あ、友達だったんだ?
  高校?」
俺「いや、中学。そいつ芸能人だからたまにしか学校来なくて別に誰とも仲良くなくて。
  でもたまたま席が前後ろでさ。俺が定期券入れのカードを見てたら話しかけてきたんだ」
幼「一人でカード見るなよ、暗いな」
俺「るせーな、カード見てると幸せなんだよ。
  そんでまあ次の日に対戦してさ。体育だったかなんだったかから戻ってきたらレアカードだけ抜かれてたわけ」
幼「すぐ気付いたの?」
俺「つーかクラスから出る寸前にカード枚数確認して帰ってきて即カード枚数確認したからな、タイミングは間違いないんだよ」
幼「確認しすぎだろ。そいつ危ないと思ってたの?」
俺「いや、全然思ってなかった。ただ、ちょっと何かあるとすぐ枚数確認してたんだよその頃。他の奴とやっても対戦後とか帰る前とか数えてた。
  カード滅多に買ってもらえないから貴重だったから一枚たりともなくせないと」
幼「心配性だな」
俺「それでさ、当時遊戯王カードなんかもなくてカードブームの前だったからな。
  知ってる奴すら少ないカードゲームでさらにカードの値段や価値まで分かる奴なんてそいつしかいないと思って。
  なにしろカードリストですら貴重な時代だから普通にパックのカード買ってもレアリティすら分からんからな。
  でかい本屋行ってRPGマガジンの別冊のカードリスト特集してるのとか買ってもシングルの値段とか載ってないんだぞ。
  ちょっとルールだけ知ってる程度の奴だったら極楽鳥なんて見向きもせず甲鱗のワームとか抜くはずなんだよ」
幼「知ってる人が遠くから対戦見てたとかは?」
俺「バカだな、だったら相手のレアカードも盗まれてなきゃおかしいだろ」
幼「あ、そっか」
俺「俺はワームのファンデッキで相手はガチのゴブリンバーンだぞ、相手のデッキのが数倍高いんだから無傷なのか変だろ」
幼「すごい上級者なんだ?」
俺「ほぼ完成品のデッキだよ。ゴブリンがカタパルトかなんかでドバドバ飛んできて何も出来ずに3ターンくらいでやられて度肝抜かれた」
幼「そんなすごいなら値段も知ってるもんね」
俺「そうなんだよ、そこが重要。レアカードでも安いのは残ってたからな。
  別のやたら詳しいクラスメイトがいた可能性よりそいつが盗んだ可能性のが高いだろ」
幼「うん、絶対そいつだよね」
俺「証拠がないから絶対とは言えんが、俺はそいつに決めつけてさ。
  どこに隠したってしつこくひっついたよ。家まで付いてくぞって」
幼「そういう時は積極的なんだ」
俺「まあそいつ別にいじめっ子じゃなかったからな」
幼「で、どうなったの?」
俺「それが、その後どうなったかよく覚えてないんだよ。
  電車賃がなかったとか走って振りきられたとかかな。
  家に帰って電話したけど誰も出なかった記憶がかすかにある。
  次の日に持って来なかったら先生や相手の親に言おうと思ってたような」
幼「次の日どうしたの?」
俺「それから二度と学校に来なかったよ」
幼「引きこもりか」
俺「そうだろうね、それまでは学校来たり来なかったりって感じだったのに急に全く来なくなったんだから」
幼「カードの価値いくらくらい?」
俺「あんま覚えてないんだけどせいぜい五千円くらいじゃないかなあ。極楽鳥以外にろくなの持ってなかったろうし」
幼「じゃあ和くんの勝ちじゃない!?
  不登校のがダメージでかいでしょ」
俺「勝ち負けの問題じゃないだろ」
幼「でもさでもさ、勉強してないわけでしょ」
俺「芸能人として大金持ちになってるかもしれないだろ」
幼「あーそっか、くやしー!」
俺「調べてみるか?」
幼「分かるの?」
俺「出た映画の話聞いたことあるから分かるし本名は卒業アルバム見れば良いし」
幼「見る見る。どいつよそいつ!」
俺「こいつだな」
幼「ああ、根性曲がった顔してるわ!」
俺「お前って先入観強いな。お、検索出たぞ」
幼「有名になってたら許せん。つーかこんな簡単ならなんで今まで調べなかったのよ」
俺「だって別に……」
幼「私だったら絶対数年ごとに調べてる。呪いながら」
俺「性格悪いな」
幼「興業収入15億……」
俺「ふむ、芸名と本名が同じか。検索しやすくて良いな」
幼「めちゃくちゃ売れてたらどうしよう」
俺「別にどうもしねーよ」
幼「だって悔しいじゃん」
俺「よくそんなに感情移入出来るな、俺が怪しんでるだけでこいつが盗んだ証拠はないんだぞ」
幼「良いの、こいつがやったの。私が決めた!」
俺「Wikipediaは作られてないな」
幼「じゃあ超有名ってのは消えたよね。名前聞いたことないし」
俺「……とりあえず映画はあの一作しか出てないみたいだな」
幼「よしっ!」
俺「あ、出演者の現在だって」
幼「おお!」
俺「えー……活動中、引退、引退、活動中、引退、引退、引退……」
幼「引退多いね」
俺「あいつは不明になってる」
幼「不明ってなんだよ」
俺「んー、所属事務所も不明だから事務所に現在の状況が聞けなかったんだろうな」
幼「引退とは何が違うの?」
俺「しょじょく事務所の答えがあやふやではっきりと聞けなかったんじゃないかな?」
幼「そっかー、しょじょく事務所ね、よちよち」

うー。

俺「所属事務所の答えがあやふやではっきりと聞けなかったんじゃないかな!」
幼「よく言えました」
俺「ったく」
幼「でもまあ引退してるわよね」
俺「他に出演情報が出ないからな」
幼「良かったー」
俺「でも子供を芸能事務所に入れる家ってイメージ的に金持ちそうだから裕福に暮らしてるかもよ。
  学校に行かず転校もせずって状況を親が許すってのは私立とか行かせる余裕があるからじゃないかな」
幼「でも金があっても学校からも芸能界からも逃げたんだから人間として和くんのがまし」
俺「言い方悪いな、ましってなんだましって」
幼「それにお金に困ったら保険金かけて和くんを殺せば問題ない」
俺「どこが問題ないんだよ」

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最終更新:2010年08月30日 02:52
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