プレゼント編01

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幼「今年の誕生日プレゼント決めた」 俺「何?」 幼「なんだと思うよ」 俺「そういうのやめろよ」 幼「お話書いて」 俺「え」 幼「短いので良いから」 俺「はあ……」  ◇ 二時間後。 俺「書いたぞ」 幼「どんな話?」 俺「読めば分かる」  ◇ 一日目 痒い。 深夜に目覚める。 足が痒い。足が痒くて目覚めることってあるのだろうか? 足全体が痒いのではなく、左足の中指だけが非常に痒かった。こんなことは初めてだ。 しばらく右足の爪でガリガリしていたが痒みが止まらない。 手で引っ掻いたり抱き枕に押し付けたりと色々足掻いていた(足を掻いているだけに)が、なんだかあまりにも痒いので心配になり、ついには起きて電気を付けた。 最初は蚊に刺されたかなんかだと思ったのだが、ふと病気かもしれないと気になったのだ。 単純に水虫というのも考えられるが、しばらく足の爪を切ってなかったので、爪の病気かもしれないと。 今、俺には女はいない。なので足の爪など誰にも見られない。それでも、伸びてるからそろそろ切らなきゃなと二日前から気になっていたくらいには伸びていた。 明るくして足の指を見ると、何の変化もなかった。父の水虫のような白いカチカチの部分も出来ていないし、友人の巻き爪のような痛々しさもない。いつもの臭い足があるだけだ。 少し熱っぽくて赤いようにも見えるが、まあ手や足で引っ掻いたのだから、赤くなって当然だ。 とりあえず爪を切ってみる。左足の中指から切って、次は小指から順に普通に。 左足の薬指あたりを切っている時には既に痒みが薄れ、足の指を全部切り終わった時には何の痒みも残っていなかった。 爽快だ。これを爽快と言わずしてなんと言おう。 枕元に置いてあったマンガの続きを少しだけ読んで寝た。 八日目 また足が痒くなった。 起きて爪を切ったらおさまった。 寝た。 十五日目 また足が痒くなった。 起きて爪を切ったらおさまった。 寝た。 二十二日目 またも足が痒くなりやがった。 起きるなり「しつけえよ!」とツッコミしてやった。 起きて爪を切ったらおさまった。ざまあみやがれ。足のくせに痒くなりやがるからだ。 しかし、これはなんなんだろう。検索してみた。 しもやけではないかと書かれていることが多かった。 そうか、しもやけか。今は冬だししもやけに違いない。 前にも、寒い冬には何度かしもやけになったことがある。確かに痒かった。 安心して寝た。 二十九日目 恒例の足の痒み。 まず最初に、俺はバカかと思った。いつも寝ている時に痒くなり起きるなんておかしいだろと。 いや、たまたま起きたのかもしれないがそれにしてもしばらく置いた夜ばかり。 しもやけなら毎晩痒いだろう。それに、携帯を見るとまた火曜日だ。よく考えると七日置きに痒くなってるではないか。毎週火曜深夜。 どうせなら月曜深夜か水曜深夜か木曜深夜に起こしてほしいものだ。コンビニに立ち読みに行きたい。 俺はなんだかこの周期的な痒みが急に気になってきて、遡って最初から日記を書くことにした。 そして一気にここまで書いたところだ。寝る。 三十六日目 まず最初に俺が調べようと思ったのは、痒みが襲ってくるタイミング。これについてだ。 なので、寝た振りをしたままずっと起きてるつもりだった。つもりだったのだが、寝てしまった。 真っ暗にして何もしないで待ってるのは暇過ぎる。 起きたらやっぱり痒かった。 爪を切ったらおさまった。 寝た。 四十三日目 今回は、美少女が侵入して俺の足の中指を噛んで帰っているという仮説を立てて調べた。 『デスノート』で得た知識を使い、ドアの蝶番にシャーペンの芯を仕込んだ。部屋がフスマじゃなくてドアなのは俺の密かな自慢ベストスリーだ。 結論から言うと、シャーペンの芯は折れていた。おいおい、と思わず一人で呟いてしまった。 洒落にならん。不思議な偶然もあるもんだな、くらいにしか考えてなかったがこれはさすがに洒落にならん。 洒落にならん上に美少女の唾液の臭いはしなかった。いつもの俺の足の臭いだ。臭かった。実に臭かった。 踏んだり蹴ったりとはまさにこのことである、足だけに。 五十日目 ゲームだと、五十日目というのは大抵イベントが起きる。 俺は、今日こそは寝ないと決心していた。 来訪者に心当たりがあったからだ。そしてちょっと期待出来ることもあった。 布団の中で携帯をいじりながらひたすら待った。そしてついに待ち人は来た。 微かな物音。静かに部屋に近付いている。俺は慎重に携帯の電源を落とす。ドアがそっと開く。 そいつはゆっくり忍び寄り、足元の布団を捲り、潜る。カチッと小さな音がした。携帯の明かりで足の中指を探しているのだろう。 俺は飛び起きてそいつにのしかかった。 「きゃっー、わたしわたし!」 「誰だ!」 「わたしだってば!」 犯人は分かっているのだが、強く抱きしめてスリスリしまくる。楽しみにしていたこととはこれで、こいつを抱きしめるために寝ずにフル勃起で待機していたのだ。 「ごめん、ごめんってば!」 焦る女の声。 「許さない!」 「離してよ」 「あと二分だけ」 「もうバカぁ!」 こちらはパジャマなので腰を擦り付けているだけで気持ち良い。絶頂が近付く。 「イキそう」 「えっ、は、早くない!?」 「キスして良い?」 相手の疑問は無視して自分の要求を口にする。これが大人の交渉である。 「分かんない」 許可が出たのと同じだ。唇を貪り頭を片手で抱く。 そのまま腰をグリグリ押し当て、精を放出した。  ◇ 「重い!」 のしかかったまま動かない俺を押しのけ、女が立ち上がり明かりを付けた。 「よくスイッチの場所分かったな」 「何度も来たことあるじゃん」 見慣れた顔。幼なじみで唯一の友人だ。 ショートカットの小柄な女性で、笑顔が可愛らしい。だが、幼児体型と言うと蹴りが飛んでくるので注意が必要だ。 「私ってバレバレだったの?」 「お前しか合鍵持ってねーし、お前の勤めてる美容院火曜日休みだし」 「あー服しわくちゃ、最悪。なんてことしてくれんのよ変態」 「それより種明かししろよ。なんで足が痒くなったの?」 「あーそれはね、痒くなる薬塗ったの」 「そんなの有るのか」 彼女の父親はなかなかの手品師だ。手品師というのは本当にすごい。道具なんか何も使わなくたって、そこらへんのファミレスで簡単に色んなことが出来る。 例えば、麻雀をやっていてもオセロをやっていても、簡単にイカサマをしてみせるのだ。まばたきせずに注目していても見破れない。 そして、やはり変な物もたくさん持っている。手品のグッズだけではなく、役に立たない物も集めている。 「合コンで飲み過ぎて鍵無くしちゃってさ。仕方なくお前の家に来たわけ。最初はさ、いっしょに布団に入って寝て『昨日は激しかったね』みたいなドッキリにしようかと思ってたんだけどさ」 「うん」 「飲んだの私だけじゃん。お前は二日酔いにならないんだから、昨日のこと忘れてるとかありえないじゃん。ダメじゃん」 「そりゃそーだ」 「だからしゃーない帰るかーって、お前の財布から私の家の鍵抜いて、ドア開けてスペアの鍵出して、お前の財布に鍵を戻しに来て」 「めんどくせーな」 「ついでに、合コンの小ネタのために持っていった痒くなる薬塗ったの」 「何してんだお前」 呆れたもんだ。 「ビールないの?」 「勝手に冷蔵庫を見るな!」 「良いじゃん」 「そうだ、爪を切ったら痒くなくなったんだけど?」 「ああ、爪切りの持つとことかに痒み止め塗っておいたのよ。あんた、両手で爪を切るし、切りながら一つ一つ指で爪をこするから」 「わざわざ痒み止めまで用意するか!?」 「いや合コンに痒み止めも持って行かないと困るでしょ。痒いままじゃん」 「でも爪切ったらすぐ痒くなくなったけど早すぎない?」 「なんか特効薬的なものなんでしょ。両方セットなんだから」 「ふーん」 そういうもんか、と妙に納得した。  ◇ 「でも俺が爪を切らなかったらどうするの?」 「やたら痒かったら洗うでしょ」 「うわ、その発想はなかった」 「なんでだよ!」 「洗うって手があったかー」 「むしろなんで爪を切ったんだよ!」 「爪が伸びてるから痒いのかなと」 「お前、私が爪切りに毎回薬塗っておいて良かったな」 「確かに」 「毎回塗っておいてあげた私のおかげよね、感謝しなさい」 「助かったわ」 「今度おごりね」 「……ん?」 「なに?」 「いやいや、違うだろ!」 「えっ?」 「お前が薬塗ったから痒くなったんじゃん!」 「ありゃ」 「ありゃじゃねーよ、夜中に痒くて起きちゃうんだぞ」 「そんな痒いの?」 「お前ふざけんなよ。もし爪も切らずに洗いもしなかったらヤバいじゃん」 「ごめんね、そんなに痒いと思わなかったから。お前起きたら足洗うじゃん、だから平気かと」 「あー……」 そういえばそうだ。 「ね、許して」 「でも俺、爪切りを触った後に目を擦ったりしてたんだけど、痒み止めって目に悪くないの?」 「あ、悪そう……見てみよっか」 「うん」 薬の説明文を読む幼なじみ。 「なんか大丈夫だって」 そう言って薬品をしまおうとする。 「見せてみ」 「えっ、大丈夫だってば。触るなセクハラ」 「見せろバカ」 覆い被さって奪い、自分で読む。 「えーっと……『次の部位には使用しないこと(1)目の周囲、粘膜など』……」 「私そろそろ帰るね、一応嫁入り前の娘だし」 俺の下から抜け出そうとするBカップを押さえつける。 「待てこら。俺が失明してたらどうすんだ」 「ごめんね」 「ごめんで済むか」 「なんでもするから」 「なんでも?」 なんでもするから。聞いただけで胸が高まり心踊る、男にとって夢の言葉だ。  ◇ 「本当になんでも?」 「あんまりこわくしないでくれたらなんでも……私その、処女だから……」 「えっ処女なの?」 「恥ずかしながら処女です……」 「処女なのに良いの?」 「面倒じゃなければどうぞです……」 「えっ、いや、お前は俺で良いの!?」 激しく動揺する俺。 「ファーストキス奪っておいて何を今さら」 「うわっ、ごめん」 「バーカ……」 「でも俺、お前のこと好きだよ」 「嘘くさ……とりあえずヤッとくかーみたいの見え見え」 「本当に好きだよ。すぐイッちゃったじゃん」 「早漏なだけだろ」 「違うって。大好き大好き」 「大好きが安っぽい」 「安っぽいってなんだよ。じゃあ高そうな大好き言ってみろよ」 「えっ」 「言ってみろよ大好きって心込めて」 「やだ」 「言えよ」 「大嫌い」 「なんでもするんだろ」 「私は魂まで売った覚えはない!」 「そんな大げさな話じゃないだろ」 「プライドが許さない」 「じゃあ言わなかったら無理矢理彼女にするぞ」 「言ったら?」 「ずっと大切にする」 「……大好き」  END  ◇ 幼「おいなんだこれ、思ったより良い話じゃねーか!」 俺「ありがと」 幼「続きは?」 俺「ねーよ」 幼「バカ野郎、ここからが濡れ場じゃないですか!」 俺「おっさんか」 幼「ねえ続きー」 俺「来年な」 幼「ケチー」 俺「俺が実際に教えてやるよ。まずこう胸を揉んでだな」 幼「手が早いな」 俺「俺、本当にずっと好きだったんだよ。早く言えば良かった……」 幼「私も……」 俺「もうイキそう」 幼「ぶはっ」 俺「うわ唾が目に」 幼「笑わすな!」 俺「早漏って設定なんだから仕方ないだろ」 幼「設定じゃなくね?」 俺「気のせい」 幼「私もBカップって設定だけどもっとある気がする。Dくらいな気がする」 俺「気のせい」

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