おばあちゃんち五日目

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翌日。 幼「やっと起きてきた。昼まで寝てるんだから。   もうみんなご飯食べちゃったよ?」 俺「うう……」 幼「すごい頭」 俺「ふあー……」 幼「和くんの好きなのだよ」 俺「ほんとだ」 味噌汁にうどん粉をこねたのとワカメが入っている、すいとんみたいなやつだ。 俺「これ好き」 幼「おばあちゃん知らなかったんだってよ。あんたが何も言わないからもう。   ちゃんとこれ好きとか言いなさいよね」 俺「今言ったよ?」 幼「遅いわ!」  ◇ 幼「ねえ、教会ってただで結婚式してくれるって」 俺「えっ」 幼「神父さんに言えばお花とかのお金だけで祝福してくれるんだって」 俺「ふーん」 幼「やろうよ。お花だけだよ」 俺「やっても良いよ」 幼「やった。約束ね」 俺「んー」 幼「あー嬉しい。ここ来て良かったー。   和くんのおばあちゃんがね、教えてくれたの」 俺「聞いたの?」 幼「ううん。写真あったら送ってほしいって言うから、結婚式してないって言ったら」 俺「ふーん」 幼「教会でも良いよね?」 俺「良いけど、美味しいご飯とか食べられなくて良いの?」 幼「良いよそんなの。どうせ和くんの食べられるのあまりないんだしもったいないじゃん」 俺「そっか。ごめんね」 幼「ファミレス行って高いの頼んでやるから良いよ」 俺「ウェディングドレスでファミレスとかすげえ目立ちそうだな」 幼「格好良いじゃん。お前手掴みで肉とか食っちゃえよ」 俺「なんで野生化すんだよ」 幼「ノリで。私はスパゲティー食べるわ、セレブっぽく。   そうすればギャップで美女と野獣に見えるかも」 俺「ウェディングドレスでファミレスって完全に貧乏っぽいだろ」 幼「大丈夫、290円のスパゲティーもウェディングドレス着て上品に食べれば480円くらいに見えるはず!」 俺「はははっ、ちいさっ」 幼「じゃあなんか案出してよ」 俺「一人でドリンクバー三つ頼むとかどうよ。きっと全員腰抜かすぜ」 幼「な、なんて金持ちなんだこいつら……!」 俺「それで三井住友ビザカード出せば完璧」 幼「五人くらい心臓麻痺するな」 俺「犯罪的な金持ちだな」 幼「無敵だな」 俺「よし、ぼったくりのコーンポタージュも飲んで良いぞ」 幼「よろしいのですか」 俺「ふはは、問題ない」 幼「おそらく辺り一面火の海となりますが」 俺「構わぬ」 幼「かしこまりました」 犬「ワン、ワンワン」  ◇ 犬の散歩に付き合った。 幼「和くんも持ってみる?」 犬のヒモの先を俺に向けるみお。 俺「やだよ!」 幼「なんでよ」 俺「だって危ないだろ。   おばあちゃん、前の犬の散歩で手首骨折したんだぞ。二年くらい訓練しないと無理だろ」 幼「そんな大げさな……」 俺「犬に引っ張られて道路に連れてかれて車に吹っ飛ばされるかもしれん」 幼「手を離せば良いじゃない」 俺「パニックになってる奴がそんな冷静な判断出来るかよ。犬に慣れる訓練とかしなきゃ。   犬を飼うのとか資格が必要にすれば良いんだ。最初はアイボで練習してさ」 幼「アイボすごいかわいいよね。もっと流行っても良かったのに」 俺「俺のアイボはかわいいけど、最初がな。最初って四角いメタリックのやつかな?   あれとかロボ度高くてかわいくなかったからな。メッセージチャットの機能もないからなんの仕草か分からなかったりしそうだし。   まるっこくて分かりやすいあれの方が女の子向けだよ」 幼「あれ絶対女の子釣れまくるよね。首かしげる仕草とか肉球押すと驚く仕草とか超かわいい。ロボを舐めてた」 俺「だよな。かわいいよな。   ワンワンって言わないし」 幼「それお前にとってはメリットなんだ」 俺「だってわけわからんこと言われても困るよ」 幼「私いつもお前にわけわからんこと言われてるんだけど困って良い?」 俺「良いよ」 幼「困ったーん」 俺「えっなにそれ」 幼「お前がやらせたんじゃねーか!」 俺「別にやらせてはいない」 幼「ちくしょーもうヤダ……」 俺「今のなんだったの?」 幼「なんでもねーよ」 俺「よく分からなかったからもう一回やって」 幼「やるかバカ死ね!」  ◇ またプール。 幼「お待たせ。泳いでれば良かったのに」 俺「いやー疲れてね」 幼「まだ来たばっかじゃねーか!」 俺「ここまで来るのが結構疲れるんだよな」 幼「アホ」 俺「だって坂になってるじゃん。そんでまたウォータースライダー上がって行かなきゃならんし。   スキーも上までリフトで行くんだからウォータースライダーにもエレベーターつけてくれないかな」 幼「防水とか難しいでしょ」 俺「あーそっか。   ……今は空いてるから良いけど、混んでたらすげー疲れるだろうな。子供がうるさいだろうし」 幼「でも和くんは空いてて残念なんじゃない?   若い子の水着見たかったでしょ」 俺「んでも、みおが痴漢されるの嫌だし」 幼「痴漢されそう?」 片手は頭の後ろ、片手は腰。セクシーポーズをとるみお。 俺「すごくかわいいよ」 幼「へへー……ドキドキしちゃう?」 俺「もう水着ひっちゃぶきたい」 幼「やめろ!」  ◇ 俺「鼻が、鼻がツーンと……」 幼「キャハハ、バカねえ」 俺「お前が急に水の中に引きずりこむからだろ!   くそっ、仕返ししてやる」 幼「ちょっとやめて下さい変態。近寄らないで」 俺から離れるみお。 俺「待てー」 幼「ノロマー」 しばらく追いかけっこをして、みおの腕を掴む。 俺「へへっ、もう逃げられないぞ」 なんか悪者みたいなセリフ。 幼「捕まっちゃった」 俺「どうだ見たか」 幼「すごいね和くん。泳げなかったのに」 俺「でも、はあ、疲れた。みお早いよ」 幼「あはは。スタミナ不足だね」 俺「ずっと泳いでなかったのに無理だろ。   仕返しに帰りに水車に固定して水責めしたいけど素人がやると危険だからみおを大切にしたいから許してやる。あなたが好きだから」 幼「わー優しいー……のか?」 俺「聞かれても困る」 幼「だって、何か良いこと言われたのかと思ったけど水車で水責めって鬼畜だろ」 俺「今日の服装だとスカートの中が見えて恥ずかしいもんね」 幼「鬼畜なのはそこじゃねえだろ!」  ◇ おばあちゃんちに戻って。 幼「それで和くんたら『疲れるからウォータースライダーにエレベーターが欲しい』とか言うんですよ」 母「疲れるから滑り台で遊ばないって子だったからね」 幼「ええー!?」 母「みんなと公園行ってもずっと一人で砂場で遊んでたでしょ?」 幼「あーよく覚えてないけど……」 母「ブランコに乗せてみたんだけどね。   ちゃんと『お母さん手を離すからね。和が手を離したら危ないからね』って聞いて『うん』って言ったのにすぐ離してドテーンって倒れて。   それからほっといた」 幼「なんで離すのよバカ」 俺「多分ブランコなんて興味なかったんだよ。   立ってるのも鎖を持ってるのも疲れるし、早く砂場に戻りたいなあとか」 幼「どんだけやる気ないんだよ!   あれなんだろこれなんだろってのが子供だろ!?」 俺「滑り台は滑るのは好きだから、もしエレベーターがあったら滑ってたのにな」 幼「バカ!   あの階段で子供に体力つけさすんだよ!   ジャングルジムとかうんてい(←なぜか変換出来ない)とかタイヤの跳び箱とか」 俺「まあやらない奴は一切やらないんだけどな」 幼「そんな変人はお前だけだ」 俺「ふん。お前らも最初は砂場で遊んでたくせにあっちこっちで遊びやがって。   次の面に行くのは砂場を全クリしてからだろ」 幼「お前は公園で何のゲームをやってたんだよ」 俺「あげくの果てに小学三年とかのぶんざいで鉄棒や縄跳びにまで手を出しやがって尻軽が」 幼「なんか男をとっかえひっかえみたいなノリにすんなよ」 俺「汚らわしい。ピョコピョコ縄なんて跳びくさって。   あっちでピョコピョコこっちでピョコピョコ。恥ずかしいったらないよわたしゃ、うう……」 幼「あはは、言い方だけじゃねーか。誰だよ」 母「あんたこんな喋るんだ」  ◇ 俺「何してたの?」 幼「和くんのおばあちゃんにちゃんとした魚の捌きかた教えてもらってた。うちお母さん両方とも出来ないんだよね」 俺「あんまり寄らない方が良いぞ、いつ理不尽に怒られるか分からないから。   娘が世話しててストレスで緊急入院しちゃったんだぞ」 幼「別に怒られたって良いもん」 俺「あーそうだったな」 幼「野菜の育て方も教えてもらっちゃった」 俺「ゲゲッ!   おばあちゃんは園芸好きだったからな」 幼「安く出来るのかな?」 俺「バカ、出来るわけないだろ。   素人がペヤング一個作るのと工場がペヤング一個作るのどっちが安くて美味いか分かるだろ」 幼「あーそっか。でもなぜペヤング……」 俺「土に種植えるだけで美味い物がたくさん生えてくるなら、農家はわざわざ畑耕さんわ。   肥料とか使って美味しい物をたくさん収穫出来るから儲かるんであって」 幼「なるほど」 俺「とにかく、捕獲失敗しまくったあげく全部逃げるのがウザ過ぎるからやらない方が良い」 幼「何言ってんだこいつ」  ◇ おばあちゃん達と七並べ。 祖母「和ぼうこんな元気になってまあ」 俺「そうかな」 祖母「みおさんのおかげじゃ。和ぼうは見る目がある、良い子を見付けた」 俺「えー?」 幼「何の『えー?』よ」 祖母「魚も食べるようになって。魚はたくさん食べた方がええ」 幼「そうですよね」 祖母「体もな、今くらいの方が健康でええ。太り過ぎも痩せ過ぎも良くない。    しっかり見てやってくれんね」 幼「はい」 俺「げげ」 幼「聞いた和くん?   これからはビシバシ行くからね!」 俺「参ったなあ……」 祖母「和ぼうは良い子を見付けた」 俺「それさっき聞いたけど」 幼「大切なことだから二度言ったの!   心に刻みなさい」 俺「とりあえずキングね」 幼「パス3」  ◇ 帰りの新幹線。母とは別の席になった。 おばあちゃんが作ってくれた焼き飯を食べる。タマゴとハムだけしか入ってないので俺にとっては嬉しい。 幼「なんでこんな美味しく作れるんだろ」 おばあちゃんの漬け物をパリパリしつつみおが不思議がる。 俺「漬け物?」 幼「全部よ。ゴボウの天ぷらにほうれん草のお浸しに」 俺「おばあちゃんが料理作れる状態で運が良かったなお前。調子悪い時なら七並べも出来ないぞ」 幼「ホントにね。もう何もかも最高だったもん」 俺「そんなかなあ」 幼「めちゃくちゃ美味しいって。あんた変」 俺「おばあちゃんち、好物があんま出ないんだもん。   煮物とかトーストとか多いし」 幼「バカ、あの煮物が最高なんじゃない!   あー、あんた肉じゃがとかあんま好きじゃないもんね」 俺「肉じゃが甘いんだもん。つまんない」 幼「味が濃い物ばっかりだと体に悪いでしょ」 俺「でも体に悪いのに人気の物って、体に良くて人気な食べ物を美味しさでははるかに上回ってるってことだろ?   体に悪いのに世に出回ってるってことはめちゃくちゃ美味いってことなわけだ。   極端に言えばタバコとか酒だって、デメリットを上回る魅力があるから高い税金かかっても売れるんじゃん。   カップヌードル食べてコーラ飲むのが最強なんだよ」 幼「いや私の味噌汁が最強だべ」 俺「それは認める。興奮する」 幼「興奮はおかしいだろ」

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