日常編44b

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俺「ちょい負けだけど、そろそろ止めても良い時間だな」 幼「疲れたー……」 俺「お疲れ。時短の止め打ちは慣れるまではどうしても腕に力入るからな」 幼「和君疲れないの?」 俺「疲れるけど、仕事だと思ってるからな。あの飲食店よりもはるかに楽だ」 幼「和君ってそういう所は偉いよね……」 俺「偉いんじゃないよ、怠け者だから楽に稼げる方が良いんだ」 幼「でも、負けなのに文句言わないし」 俺「まあ負ける時もあるよ」 幼「いくら負け?」 俺「どうだろ。今の時点ではギリギリプラスかも分からん。お前が一箱どのくらい入れてるのかがな」 幼「じゃあ止めちゃえば?」 俺「勝率だけ上げたって仕方ないよ。500円勝ちを10回重ねても一度大きく負けたら飛ぶ」 幼「そっか」 俺「まあ、次の箱で終わりにしよう」 幼「和君って勝率どれくらい?」 俺「今年は五割だな。夜から貯玉プレイとハイエナばっかだし」 幼「一番やってた時は?」 俺「言わなかったっけ?   一ヶ月で30勝1敗が最高」 幼「すっご!」 俺「スロットにサミーが出した方の海物語があったからな。天井打ってれば負けっこないだろみたいな機種だった。   人気出なくて翌月からはもうダメだったけど」 幼「今はそういうのないの?」 俺「規制で店も潰れまくったし客も減ったしで、スロットのコーナーが全国的に縮小しちゃったからね……。   たとえそういうのがあってもひっきりなしには打てないでしょ」 幼「規制めー……」 俺「もうドラゴンギャルとか大ヤマトとか海一番みたいなのは無理だよ」 幼「ごめん、全然分からないから」  ◇ 俺「ドラゴンギャル宝玉12個は、たしか期待値16000円とかで勝率も八割とかだった」 幼「期待値16000円ってやばいな」 俺「しかもそんなのを打てた回数が、機種がなくなるまでに十回や二十回じゃなかった……」 幼「そりゃ負けないはずだわ」 俺「ジャグラーのランプも初代とかはめちゃくちゃ暗いしガコッて言わないから光ってる台が空いてた……」 幼「だからよく分からないって」 俺「大当たりしてる台が年に三回くらい空いてたってこと」 幼「うそつけ」 俺「本当だって!   初代はジャグVの方も先光り遅いしすごい拾えたんだって!   スープラとかもリールの太さこんなしかないから揃えにくいのか結構リーチ目落ちてんだって!」 幼「周りの人は何してんの?」 俺「主に競馬中継か相撲か野球中継を聴いてる」 幼「オヤジばっかじゃんか」 俺「一昔前は客も店員もヤクザみたいのしかいなかったからな」 幼「お前いつからパチンコやってるの?」 俺「ハタチからだけど」 幼「一昔じゃないじゃん、最近じゃん」 俺「俺がハタチの頃にはかなり女性が入りやすくなってきてた」 幼「話が合わないじゃん」 俺「気のせいだろ」  ◇ 俺「ぶっちゃけると、名古屋は結構パチンコ盛んだからさ。   今はガキなんかどの店にもいないけど、昔はガキ連れて店に入ってもあんまり怒られなかったんだよ」 幼「そうなんだ」 俺「ちなみに小学生の時にお父さんと上野のPIAに行った時はすぐに怒られた」 幼「くだらないことだけ覚えてんなあ」 俺「もう金入れた後だったから、前の丸井のデパートの前でしばらくお父さんを待ってて暇だったからな。一生恨む」 幼「そんなことで一生恨むなよ」 俺「今考えるとやけに長かったから、ボーナスが当たっちゃったんだと思う」 幼「儲かってるじゃん」 俺「とにかくあそこは等価じゃないくせに設定も入ってないし、ハイエナしか出来ん!   一生恨む!」 幼「行ってみたのかよ」 俺「27って台をハイエナしたら中段7揃いのジャックポットきて7000枚出た。でも一生恨む!」 幼「もう許してやれよ」 ◇ みおの箱が空になった。 幼「もう下の箱ではやらないんでしょ?」 俺「うん、もうきついね」 幼「流しちゃう?」 俺「いや、俺のが当たったら暇だしトイレ行って手を洗ってくれば?   パチンコ屋の客って半分くらい手を洗わないからすごい汚いから」 幼「そうなの!?」 俺「女ですら結構洗わないからな」 幼「なんで女側まで知ってんだよお前……」  ◇ 幼「洗ってきた」 俺「じゃあ店員呼んじゃえ」 幼「うん」  ◇ 幼「はい」 自分の台のレシートを俺に渡す。 俺「んー……」 頭の中で計算。 幼「どんな感じ?」 俺「まあバブあたりと交換すれば――」 ふと台を見ると何故か数字が揃っている。 俺「……え?」 おどろきもものきさんしょのきだ。  ◇ 幼「当たり?」 俺「みたい。あのリーチでかよ」 幼「もう流しちゃったじゃん」 俺「だってもうこれだけしか箱にないのに当たるなんて」 幼「暇……」 俺「俺のDSやってなよ」 幼「はーい……」  ◇ 俺「結局は勝ったな」 幼「最後のあれ、良かったね」 俺「お前5000円」 幼「やったー」 俺「腹減ったな、メダル全部出して帰るべ」  ◇ 俺「もうない?」 玉で取りたい景品を探す。 幼「ここ、アイスないんだね」 俺「アイス帰り道に違う店で取れるよ」 幼「やった」  ◇ 幼「ご飯どうしよ」 俺「俺は牛丼で良いや」 幼「えー」 俺「別にお前はもっと良いの食べて良いよ。お金出すから」 幼「バラバラ?」 俺「あーそっか……じゃあ日高屋は?」 幼「どこそれ」 俺「ラーメン屋なんだけど、安いから味は保証しない」 幼「美味しくないの?」 俺「いや、俺は美味しい。安いから他の人がどう感じるか不安ってだけ」 幼「じゃあそこ行こう」 パチンコの最中にあれだけ節約させられたのに、安い店でも文句言わないみお。実に良い子だ。  ◇ 幼「チャーハンとギョウザ食べたい」 俺「ラーメン食べないの?」 幼「あ、そっか……じゃあ半チャーハンセット?」 俺「ギョウザは良いの?」 幼「ギョウザ付きのもあるじゃん」 俺「チャーハンとギョウザのセット?」 幼「ダメ?」 俺「そんな食えないだろお前」 みおは普段ちょっぴり少食な感じなのだ。子供の頃はめちゃくちゃ食べてたのだがどうしたのだろう。ダイエットか? 幼「んー……私のラーメンちょっと食べられない?」 俺「食べられるよ。ってかここのならギョウザも食べられるよ」 幼「じゃあトンコツラーメンと半チャーハンとギョウザのセット」 俺「俺は醤油ラーメンのネギ抜きで良いや」  ◇ 最初にギョウザが来て二人でゆっくり食べる。 俺「んっ!」 ピュピュッ。 幼「もー、汚いな」 俺「いや、汁が飛ぶんだよこのギョウザ」 幼「んっ!」 ピュピュッ。 俺「お前もテーブル汚してるじゃねーか。なんかこうなるんだよなここのって」 幼「これ肉汁?」 俺「あ、そうなの?」 幼「いや知らないけど」 それまでは、なんかしらんが中の汁が飛んでうざいってだけだったのに肉汁だと思うとありがたく感じるのが不思議だ。  ◇ 俺の醤油ラーメンに少し遅れてみおのトンコツラーメンが来た。 幼「ちょっ、トンコツすごいね……」 俺「交換する?」 幼「良い?」 俺「ゴマ好きだからな」 ぎとぎとし過ぎてて嫌そうなので俺の醤油ラーメンと交換する。 幼「あ、ネギ入ってるよ?」 俺「大丈夫。つーかここで心配するなら最初からネギ抜き注文しろよ、元々俺に少し食べさせるつもりだったくせに」 幼「そうだ。忘れてた」 俺「ゴマ美味いわ」 幼「ありがとね、ごめんね」 俺「良いって。俺がこの店にしたんだし」 なんでみおがこんなに謝らなくちゃいけないんだ。かわいくってもう。家だったら抱きしめていた。  ◇ 俺「本当にちゃんと全部食べられたな」 幼「ね、今なら食べられると思ったもん。   今が空腹のピークでこれ以上経つとなんか逆に食べられなくなるだろみたいなギリギリのとこだったから」 俺「ラーメン七割と半チャーハンとギョウザ二個半食べたぞ」 幼「さすがにお腹苦しい」 俺「味は大丈夫だった?」 幼「美味しかった。特にギョウザ」 俺「俺もあれは結構好きだ」 幼「ニラきつくないよね」 俺「それもだけど、あんまり大きくないでしょ?   大きいと真ん中を食べる時に中身がもろに直接きてちょっときついんだよね。ここのも真ん中よりは端の部分の方が好きだし。   なんだろ……皮の比率?」 幼「分かるような分からないような」 俺「俺も上手く説明出来ない」 幼「今度ギョウザ作ってみて良い?」 俺「良いけど、ギョウザって苦手なのは本当に苦手だから最悪吐いちゃうかもしれない。そしたらごめん」 幼「うん、頑張る」 もう十分にレパートリーがあるのにまだまだ増やそうとしてくれる。 俺が偏食じゃなければ楽だろうに、すごく心苦しい。  ◇ 幼「ここ?」 俺「うん」 アイスの打ってるパチンコ屋に入る。 幼「本当だ」 俺「定価の75%になるんだから一ヶ月分くらい買っても良いぞ」 幼「でもお徳用みたいなのないね」 俺「ハーゲンダッツのたくさん入ってるのあるじゃん」 幼「良いの?」 俺「お前今日頑張ったし良いんじゃない?   俺もジャンプ買うし」 パチンコであんなに頑張ってくれたのに食事中に謝らせて、 これでさらにハーゲンダッツのファミリーパックごときでケチったら鬼だ。 幼「今さらジャンプ買うの?」 俺「この店、来週のが置いてあんだよ」 幼「えっ?」 俺「なぜか土曜日にはもう置いてあるの」 幼「へー……」 俺「これを定価の75%で取って、月曜日に会社に持って行って桃に150円で売ればほとんどタダだ」 幼「読んだの150円で売るってひどっ。ジャンプくらいあげろよ」 俺「妻がいるのに他の女に貢ぐなんて浮気を疑われてしまうだろ」 幼「ジャンプあげたくらいで浮気って」 俺「でも今のジャンプって240円だから下手すりゃかけそばより高いんだぞ?   タダでジャンプをプレゼントして下心あるのかと思われたらギクシャクするじゃないか」 幼「考え過ぎ」 俺「でも、たとえば女の子に急に『これっもう要らなくなったからあげるだけだから勘違いしないでよねっ!』とか言いながら120円のジュース二本くれたらドキッとするぞ?」 幼「ツンデレに変換するからだろ」  ◇ 幼「大体、お前の場合は読んだやつだから120円のジュースそのままの価値とは違うだろ」 俺「女の子に飲みかけのジュース貰ったらめちゃくちゃドキドキしちゃうぞ?   これって間接キスだよな、とか聞いちゃうぞ?」 幼「聞くなセクハラ!」 俺「やっぱツンデレには聞かないと」 幼「だからまずツンデレ設定はやめて」 俺「えー……ツンデレじゃないと上手く妄想出来ない」 幼「しなくて良いから。   つーかそもそも、最初に男と女の立場を逆にしろ。   お前がもらう側だからおかしくなるんだよ」 俺「なるほど」 幼「お前が何かの罠以外で女の子に物をもらうわけがないからな」 俺「ひっでえ。まあ良いや、今までの逆な?」 幼「うん」 俺「俺が女の子にジュースをあげました、と」 幼「はいはい」 俺「女の子は『あのケチがなんで?』と怪しんで飲まずに捨てました、と」 幼「えっ!?   まあそうなるけども」 俺「さらに俺は女性社員に変な噂を流され会社に居づらくなり辞めてしまいましたとさ。   めでたしめでたし、と」 幼「いや、めでたくなかったぞ。結構悲しいエンディングだったぞ」 俺「結論としては、俺がタダでジャンプをあげたら地球滅亡」 幼「そんな滅亡の仕方は嫌だ」

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