GW3・プロポーズ編01

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ガチャガチャ んん……みおいつの間に出かけてたんだ? まあいいや……。 俺「おかえりー、おはよ……むにゅ……」 いや待てよ、足音も鍵の入れる音も違ったぞ。 父「……寝てたかな?」 俺「うわっ、お父さん!   おい起きろタマ」 タマ「んー?」 父「なんだ、娘とはもう別れて新しい彼女と暮らしてるのか?」 俺「いや、ちょっと出かけてるみたいで……」 父「その隙に浮気か」 俺「違うんですよ」 父「ははは、冗談だよ。話は聞いた」 なんだ、怒ってるのかと思ったけど違うみたいだな。 父「みおに冗談で告白したんだってな」 やっぱり怒っているようだ。 俺「いや別に、冗談でしたわけじゃ……」 父「じゃあうちの子が嘘をついてるって言うのか。プロポーズされて本気か確認したら冗談だと言われたんだとさっき聞いたが」 俺「や、その、それはですね……緊張のあまり取り消してしまって……」 父「ふざけてるのか!お前は娘の気持ちを侮辱したんだぞ!」 ひいい! 何この人、こわいよお。  ◇ 俺「ちが、僕は、僕は本気です!」 父「だったら婚約指輪を見せてみろ」 俺「指輪はまだ買ってないです……」 父「じゃあ婚姻届は?   お前の欄は書き終えてるのか?」 俺「……もらってきてないです……」 父「それでどう信用しろと言うんだ!!!」 俺「ふえ……」 父「泣きたいのはこっちだ!」 俺「すみません……」 父「君、すまないが二人だけで話がしたいのでしばらく娘の話し相手になってくれないかな。下で待ってるはずだから」 タマ「はい……」  ◇ タマ「あの、一つだけ。   私はプロポーズについて詳しい話は聞いてないから分からないですけど、こいつは不器用なだけなんです。   その分純粋だし、みおさんへの気持ちに嘘はないと思いますよ」 父「分かった、ありがとう」 ガチャガチャ……パタン……  ◇ 俺「ぐす……すみませんでした……」 父「本当に娘と結婚したいのか?」 俺「みおが……みおさんが……」 父「いつもの二人の時の呼び方で良い」 俺「みおがしたいと言えば僕は……」 父「しびれをきらしてみおに言われるまで待って、いざという時に責任を押し付けようって気か!   そうやってこれからずっと嫌なことから逃げて生きるつもりなのか!」 なんだかレイみたいなことを言う。どうせなら女の子に言ってほしい。 俺「そんなつもりじゃ……」 父「メソメソするな!お前の気持ちはどうなんだ!」 俺「僕は……僕じゃ彼女を幸せに出来るかどうか……僕で良いのか……」 父「お前で良いかはあいつが決めることだ。結婚したいのかしたくないのか」 俺「したいです!」 父「本気なんだな」 俺「本気です!」 父「なんでも出来るか」 俺「出来ます!」 父「じゃあサラダも食えるな」 俺「サラダ……?」 サラダは無理ぽ。 父「みおに買ってくるよう電話してくる。食べられなかったら、残念だが別れてもらうぞ」 サラダは無理ぽ。  ◇ 幼「ただいまー」 俺「タマは?」 父「少し時間を潰しててもらうように頼んだ」 幼「サラダ買ってきたけど……何の罰ゲームなの?」 俺「実は野菜が大好物なんだよ」 うわ、量多い……。 ……大丈夫だ。電話してる間にメールを送って大根のサラダにしてもらったんだから。 おでんとかの大根は食べられるんだから大根はサラダでもいけるはず。深呼吸だ。 俺「いやあ、美味しそうだな……」 幼「美味しそうって顔じゃないぞ」 もぐもぐ。もぐもぐ。 俺「美味しいよ……」 幼「とうもろこし一粒一粒食べてる……」 父「他のも食べなさい」 俺「……」 幼「ドレッシングは?」 俺「いらない」 ドレッシングなんてかかったら逆効果だ。これだから好き嫌いの素人は困る。  ◇ 俺「うん、美味しい……」 幼「小さいの口に入れて水で飲み込んでるだけじゃん」 父「あまり時間がないから早くしてくれんかな」 俺「あー……もう一気に食べちゃおうかな……」 ザクッ。 今まで一つ一つ拾ってたが、初めてフォークを突き立てる。 うわあトマトも刺しちゃった……既に吐きそう。 俺「い、いただきます……」 幼「大丈夫?」 パク。 俺「うえっ!んむう!」 幼「和君、これに吐いて良いから!」 びちびち……。 俺「けほっ……ぐすぐす……うええっ……ひっく……」 幼「無理しないで、ね?   お父さんに何言われたの?」 父「食べられないようなら帰るぞ」 幼「あのね、和君は小学校の給食で先生に……」 俺「みお、待って。食べるから、んぐ……食べるから大丈夫……くはっ、げほっげほっ」 父「……五分以内に食べろ。みお、タイマー」  ◇ [四分後] 幼「ほら、お父さん、和君食べたよ」 父「口に入れて全部吐き出すの繰り返しは食べたとは言わない」 幼「頑張ったじゃん!認めてあげてよ」 俺「みおの……みおの作ったサラダなら食べてみせる」 父「コーンサラダにでもしてもらうのか?」 俺「何のサラダでも食えるよ!」 父「そもそも時間がないんだよ」 俺「待っ、はあはあ……じゃあジャンケン……ジャンケン……」 父「お前ふざけてるのか?」 俺「ふざけてない!俺とみおが出会ったのが運命ならここで俺がジャンケンに勝ったらそれも運命だ。   そっちだけ一方的に条件出すのはおかしい」 父「ジャンケンで勝ったらどうするんだ?」 俺「勝ったら二人の関係に口出しさせない。父親なんか関係ない!   みおを幸せに出来るのはあんたじゃない、俺なんだ。   今は他人かもしれないけど結婚さえすりゃ家族だ、そうしたら父親とだって対等なはずだ。   誰にも文句は言わせない!」 父「……負けたらみおは連れて帰るぞ?」 俺「何でも良い。負けるわけないし、負けても力ずくで奪いに行くだけだ。   はああああ!!!!   最初はグー!!!!   ジャンケンポン!!!!」 負けた。  ◇ パーなら勝ちやすいって言ってたのにおてうと冨樫の嘘つきぃぃぃぃ!! 父「何が負けるわけないだ」 俺「三回勝負!三回勝負なんだよ!」 父「そんな話はしてないだろ」 俺「やらないなら俺の不戦勝だぞ!」 父「いい加減見苦しいぞ!」 俺のどこが見苦しいって言うんだよぉぉぉ。 俺「やだ、やだよ、みおはずっと俺といっしょにいるんだよ!」 父「今度は逆ギレか」 俺「みお、みお今の内に逃げて……」 父「お前は男と男の約束も守れないのか、情けない」 俺「俺は、みおとの結婚の約束を守るんだ!   男と男の約束なんて律儀に守ったってみおを幸せに出来るわけじゃないだろうが!」 父「何だその口の聞き方は」 俺「偉そうにすんな!最初に結婚した人を幸せに出来なかったじゃねーか!   俺は絶対みおを幸せにするんだよ!」 幼「和君、落ち着いて……」 心配して背中を撫でてくれる幼なじみの腕を掴みこう叫んだ。 俺「絶対みおは帰らせない!俺といつまでも幸せに暮らすんだ!」  ◇ 俺「もう離さない、絶対離さない!連れて行きたかったら俺ごと連れてけ!」 父「お前男としてそれで良いのか。力で無理矢理解決するのか」 俺「お前はみおに会えなくても平気だろ!俺にはみおが必要なんだよ!」 父「みお、帰るぞ」 俺「みおは俺といたいんだよ!」 幼「いたいよ和君」 俺「ほらみおだってここに居たいって言ってるだろ!」 幼「ちがっ、和君、手が痛いの……」 俺「うあっ、ごめっ、ごめん……」 幼「とりあえず、近所迷惑だから外でお父さんと話をしてくるから」 俺「みお、帰っちゃやだあ……」 幼「帰らないから。ね」 俺「本当?」 幼「うん。だから待ってて」 俺「早く帰って来てね」 幼「うん、約束」 俺「ふぇぇぇ……」  ◇ 幼「よしよし。行ってくるからね」 俺「うん……みお大好き……」 幼「お父さん、外で話そう」 父「ふひっ」 幼「……」 父「ああ限界だ、ははは……いや、かっこよかったよ和君」 俺「うえ……?」 父「みおに駅まで来てもらってここに来る途中、まだ二人は結婚する気はないのか聞いたんだよ。   そしたら冗談っぽくならプロポーズみたいなのあったって話をするからさ……和君が本気か確かめてみたんだけど」 俺「うあぁぁあ……あうあう……ひっく……ひっく……」 父「なんとかこらえてたんだけど、   さっき和君が『みおだってここに居たいんだ』って言ったらみおが『手が痛い』って言ったのが……はひはひ、   なんだか『いたい』繋がりのあのやり取りが妙にツボに入っちゃってさー。   ひー、傑作……」 この野郎……。 幼「……傑作じゃないでしょうが!」 父「ぐわ、いったー……」 幼なじみのキックが父親に炸裂。  ◇ 幼「信じらんない!   ほら、和君に謝って!」 父「悪かったねえ、良い泣きっぷり過ぎて途中から楽しくなってきてね」 幼「真面目に謝れよ!   和君泣きながら食べたのに!土下座でしょ!?」 父「すまん、和君」 俺「うっ、うっ……それは良いから……謝るより、みお……みお、くれ……」 父「みおが良いと言ったらね」 俺「何年経っても……ぐすん、良いと言わせる……」 父「素晴らしい」 俺「んおっ、ふがっふ……」 父「じゃあまた。友達にも悪いしね。みお、友達のところまでいっしょに行くか?」 幼「あー……うん。和君、私行っても大丈夫だよね?」 俺「うん……」 父「またね、和君」 俺「んがっ、ぐはっぐはっ……後から文句言っても……みおは返さっ、返さない……」 父「ハハハ、もってけドロボー」 ガチ、キィィ……バタン。ガチャガチャ。 俺「みお……えぐっ……」 つーか、あのオヤジ時間ないくせに何しに来たんだよ……それにアポ取ってから来いよ…… もし旅行とかで居なかったらどうしてたんだ…… みおは知ってたのかな…… はあ……前日の朝に騙されたばかりなのにまた騙された…… 俺「ぐすっ……みお……」 俺は泣き疲れてまた寝た。

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