2004年12月10日 MYTH 旅日記その7


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奥からコーヒーを2人分持ってきて、ランプの明かりで半身だけ照らされた男はランプの方に向かいながらこう呟きました。
「ガジョル河が流れ込むダイアー湿原一帯は、その毒気で全てのものを腐らせてしまう。そのため近年になってもほとんどの遺跡が発見されていない」
ランプの明かりを少し弱めてから男はこちらに振り向き、話を続けました。
「だが伝承によれば君が倒れていた付近でナイン率いるリーゴン部隊とソウルブライター率いる暗黒の軍勢が戦ったのは確かだ。きみはその伝承を実体験したのだろう。確かに伝承は必ずしも事実とは異なる。それは証拠となる遺跡や遺物が発見されていないという事もあるがね」
私は彼に質問しました。
「私はあなたが修道僧で、この付近に井戸を掘っているのだと思っていたのですが、もしかしたら伝説の時代を実証するための発掘をしているのですか?」
男は手に持ったコーヒーを飲みながら呟きました。
「そうかもしれない。だがそうじゃないかもしれない」
「言っている意味がよく分かりません」
「そうだな」
「ではなぜこんなところに一人でいるのですか?」
しばらく沈黙が続き、コーヒーを飲み終わった男は私の質問に答えず、こう話しかけてきました。
「君が見た夢というのは恐らく残留思念と呼ばれるものだろうな。あの場所で戦いが行われ、普通ならその場に戦いを物語る遺物が残るはずなのに、あの近辺はそれを拒絶する。そのためその時に死んでいった兵士たちの思念だけが残っているのだ。君の見た夢もその戦いで斃れた1人の兵士の記憶なのだろう」
「私は『意識』として残った前世紀時代の意志を見たと言う事ですか」
「そうだ」
「生者は意志を持ったまま故郷に帰り、伝承という形で記憶を残していく。しかし死者となったものたちにはそれは許されない。死者は骸を残し、その形見を残す。だがそれすらも無理ならば、己の意識を残そうと試みるのではないか?」
「そういうものなのですか・・・」
男はランプの光を眺めながら、誰に言うでもなく呟く様に言いました。
「私はその伝承をカベナントの図書館で初めて目にした。そのとき伝承は事実だと感じたのだ。何故かは分からない。それから私はあちこちを旅し、発掘を繰り返し、そして2年前この地に到達した」
「ではやはり旧世紀時代の研究をしていたのですね?何か発見はあったのですか?」
「まだなにも出た事はない。だがもうすぐ結果は出るだろう。きっとね」
「何か出てくるといいですね」
男は私の方に向かって尋ねました。
「君はここに数日間滞在している。今君が話したのはダイアー湿原に入って倒れていた時に見た夢のはずだ。ここに来てからの夢も見たと思うのだが」
「ああ、そうですね。やはり戦いの夢を見ました」
こうして私は男に次に見た夢の話をし始めました。
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