※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

七恵の日



今日は七恵の日から1ヵ月後の8月8日。本当は七夕の日に祝ってやりたかったんだが…その手の文句は偽者にでも言ってくれ。
で、あの後どうにか家賃という負のループを乗り越えた俺達は今日こそ誕生日会をやるところである。それと同時に、今日は



夏祭りIN七恵の日



そう夏祭りなのだ。因みに俺の料理の準備の方は下拵えが終わっており、温かいほうがおいしいだろうという事で夏祭りが終わってから作る事になっている。
で、その空いた時間はなにに使われるというと、七恵と一緒に夏祭りを回って来ることに使われる事となった。もちろん、発案は音咲と楓さん。麻雀やって二人に集中砲火を浴びて無理やりやらされるとは…。
残った二人はどうするかって?
Very goodな質問だな。
教えてやろう。
『あなたがちゃんと一緒に回ってくれているかどうか監視しています』
とのこと。今迄で一番辛い罰ゲームだったと思う。辛くないぞ?辛いんだぞ?

そんなくだりがあって、俺は今七恵の家の前で待ちぼうけを食らっている。
そんなくだりなかった?
いいや、伏線はあったぜ?
夏祭りだぜ?
俺の家には浴衣はない。
という事は…
家にあるということだ。
で、俺が家の前にいるって事は―
「お~ま~た~せっ!」
柵に体を預けていた俺に飛び掛ってくる七恵。ここ…5階だぞ?落ちたら死ぬって!
「そうなったら助けてくれるでしょ?」
七恵が俺から離れながら言う。浴衣を着ても七恵は七恵か。
助けるかどうかは、七恵次第だな。
「むー。じゃあ命令!」
俺はお前の奴隷になった覚えはないぞ。
「音咲くんのマンションの階段での事…言っちゃうよ?」
……命令には従ってやる。お前はそれを他人に言えるのか?
「わ、私?い、いい言えるに決まってるよ!」
ここで浴衣チェックだ。
始めてみる七恵の浴衣姿は…楓さん以下だが、大分可愛い。楓さんの浴衣姿を見たことはないが…浴衣よりも和服の方が似合うだろうな。
それはともかく。七恵の浴衣は柔らかい赤と金魚のあしらわれた可愛い浴衣だった。胸元は閉じていて、閉じているのだが…おっと、これ以上は考えるだけで読まれる。足丈は充分に長く、歩くのに少し邪魔になるだろう。履物として下駄を履いているが、かなりウザそうだ。
「どう?可愛くて卒倒しそう?」
「ああ可愛い。卒倒はしないけどな」
俺が素直な心と意地悪な心を混ぜて言った言葉の効果は絶大なようで、七恵は顔を赤らめて柄にもなく『女の子』のような仕草をしている。もし撮影許可が下りていたのなら30枚は撮っていただろう。
「お!睦月君じゃないか。今日は七恵とお祭りかい?」
俺は素直にその旨を伝える。
「…そうだ。私の浴衣があるから…着て行きなさいッ!!!!」
その声が聞こえたと同時に七恵の家に連れ込まれ、一気に剥かれて一気に着せ替えられた。
「おい七恵。あんまりここにいても祭りにはならないぞ?」
といって手を差し出す。俺としては七恵がしゃがんでるから起こそうとして差し伸べたのだが、
「ありがとねっ。じゃ、いこっ?」
といって手をつながれてしまった。別に前例がないわけでもないのでほどこうともせずに、そのまま引っ張られている俺。『飼い主に引きずられる愛犬』みたいなビジョンが浮かんだが、考えない事にする。俺が哀れすぎる。いや、それなりに可愛いやつに引きずられて行くのが哀れだろうか…。うん。俺は幸せなんだ!
…病は気からって言うしな。


「あ!睦月~、あれ買って?」
…会場に来てすぐものを買う奴がいるのか?
「別に問題はないと思うよ?お祭りは楽しめるしお店にも利益が出るから一挙両得だっ!」
自分に対しては楽しむ事しか残らないな。ま、買ってやるから。なにがいいんだ?アレじゃわからんぞ?
「あの綿飴!ピンク色のやつねっ」
お前はどうすんだよ?ここで待ってるなんてこと言っても、はぐれるのがオチだぜ?
(そこはあなたが手を繋いで一緒に屋台に行くべきですよ)
…今なにか幻聴が…。
(幻聴じゃないですよ?秀のくれた盗聴機です。双方共に盗聴できる優れものですよ)
…で、なんで一緒に?
(それくらいは察してくれると思ったんですけど…鈍感男が…!)
このままだとお後が怖いので、
「お前も一緒に行こうぜ?そうじゃないと二人できた意味がないからな」
本音3で命令3の原動力で七恵を誘う俺。うまくいかなかったらどうしようかね。
(その心配はしなくてもいいですよ)
「そうだね。じゃ、朝と同じだけど、いこっ?」
と、手を繋ぐところまで如実に再現しながら屋台にいく俺達。朝と違うのは、俺と七恵がちゃんと並んで歩いてる所だろうな。
七恵が率先して雑踏をかきわけ、それに便乗する形で周囲に謝りながらその屋台へと向かう俺達。綿飴一つでここまでしなくちゃいけないのは癪だが、それで人の笑顔が見れるんだ。安いもんだ。
「すいません。そのピンクの綿飴ください」
屋台に着いて一言。気前よく屋台のおっちゃんは綿飴をとり、
「その娘は彼女かい?こんな可愛い彼女に綿飴だなんてねえ…よし、もう一個持ってきな!」
気前がいいのか出歯亀なのかよくわからないが、とりあえずお金の大切さを身にしみて感じた俺は素直に綿飴を二つ受け取る。去り際に
「頑張っとけよ!」
と一声。因みに七恵は顔を赤らめて俺に引っ付いている。歩きづらいが…ここでなにか言ったら楓さんにばれるんだろうな…。
とりあえず、人気のないところに一時避難する俺達。七恵は俺に先導されているだけなのだが。
先ほど少し描写しただけなので、七恵が立ち直るまで俺の浴衣の描写をする。
俺の浴衣はいわゆるオーソドックスというもので、紺と白の縞々模様だ。靴の方も下駄に代えてもらい、非常に歩きづらい。
「睦月~おなかへってない~?」
朝より少し『にょろーん』とした顔の七恵。わかる奴にしかネタがわからないのが玉に瑕だが、知ってみると面白いぞ―
「買いに行こうよ~」
七恵が俺の両手を引っ張りながらいう。あんまり無視してるとどうなるかわかったものではないので立ち上がる俺。
「こういう祭りの昼飯は不味いと相場が決まってるんだが…ここで食うか?」
ちょっと聞いてみる。返答次第では近場のちゃんとした店で食べるつもりだ。
「う~ん…奢ってくれる?」
…………
(奢ってあげた方がいいですよ。フラグが立ちますよ?)
飯を奢るくらいで立つフラグの存在なんてどうでもいいが、俺自身も不味い飯をわざわざ食いたいわけでもないので近辺の料理屋に行く事にする。
幸いな事に、この辺りは高校に入る前にちょくちょく来ていたので店にはめぼしが着いている。安くておいしい店…なんてのは夢だがな。
「どんなのが食べたい?夜の分も考えとけよ?」
一応リクエストは聞いておく。もし嫌いなものでもあったら払い損だからな。俺が料理して出した奴は…全部食べてたな。
「ピザがいいね。すぐ消化できるし」
俺は進行方向が逆である事を察知して振り返る。まだ俺と七恵は手を繋いだままだ。
「おやおや…見つかってしまいましたか…」
「尾行術は完璧だったんですけどね。まさかこっちに振り返るとは思ってませんでした」
音咲と楓さんである。思ったとおりだった。いくら音咲の盗聴機でも範囲には限界があるはずだ。そう考えると…そう考えなくても二人が着いてくるであろう事は想像できたがな。
「え!?なんで二人がいるの!?今日は二人でデートだって言ってたのに…!?」
デート?音咲と楓さんが?

everybody?
殴っていいぞ。
音咲だけをな!
「僕はッ君がッ泣くまでッ殴るのを止めないッ!!!」
音咲を殴る俺。少しばかりというかかなり容赦をしている。
「山吹色波紋疾走!!!」
最後の一撃は波紋で…音咲。立ち上がれ。まだまだこんなものじゃ足りない。
「尾行していたことは謝りますから…」
楓さんが申し訳なさそうに、そしてどこか楽しげに言う。
「ところで、今更出てきてどうするんだ?」
俺と七恵の疑問。音咲がいるなら逃げることもできたはずだ。
「…どうしましょうか?」
音咲。
「僕はッ君がッ泣くまでッ殴るのを止めないッ!!!」
音咲を殴り倒して、
「山吹色波紋疾走!!!」



音咲を気絶させた後、不本意ながら楓さんが音咲を病院に連れて行き、俺と七恵はまた二人でナポリタンな店に行く事になった。
「睦月は知ってたの?」
いきなりなんだ。何を知ってたって?
「二人がついてきてること」
それか。初めは尾行を考えてたんだけどな。俺に盗聴機が仕掛けられてると教えてもらった時に尾行はないって思ったんだ。でも冷静に考えたら盗聴機の電波範囲がどこまでなのかに気づいてな。
「…教えてくれてもよかったでしょ?」
教えてたら?
「あんなふうにしなかった!」
『あんなふう』とはどういうことだ?
「あんなふうって!…言うのは…その……えと…」
『あんなふう』って?
「あ~!もうっ!調子に乗るな馬鹿睦月っ!」
七恵パーンチ。睦月は地面と抱擁をした。
七恵ロック。睦月の背骨の疲労度が40上がった。
「あんまりからかわないでよねっ」
と捨て台詞。結構効いたぜ?背中が痛くて…祭りにいくのが嫌になるほどな。
「ね~。立ってよ~」
背中が痛くて…立つ事すら…。


ここは七恵ご所望のピザをメインとしたナポリタンな店である。なんで俺がこんな所を知っているかというと、kwsk言うと俺の家にはピザを焼けるような釜はない。これが理由だ。
「ナポレターナとボスカイオラのSサイズでお願いしま~す」
七恵に便乗する形で俺もピザを頼んだ。ナポレターナがナポリタン風でボスカイオラが樵風、茸入りだ。サイズを小さくしたのは祭りでなにかを食べるためだろう。
ウェイターに注文を言い届けて手持ち無沙汰に沈黙がテーブルを支配する。その静寂を切るように俺が
「なあ七恵」
「なに?」
文体だけではきつく当たってるようにしか思われないが、七恵の返答は大分機嫌のいい声をしていた。
「誕生日おめでとう。言い忘れてたよ」
「ありがとね。でも次はちゃんと7月に言ってよ?」
素直に喜んでいる七恵の笑顔。こういう顔が見れるなら…7月に頑張った甲斐があったのだろう。見ていてこっちも嬉しくなるね。
因みに、もしかしたら七恵はもう勘付いてるかもしれない。今日の夜にサプライズパーティーをやる事を。
「ご注文のピザです。ソース類は3種類ありますので。どうぞごゆっくり」
といってウェイターが料理を並べていく。どっちがどのピザを頼んだとは教えてないのに綺麗に配分していく。備考だが、俺は飲み物にチャイを。七恵はミルクチャイを頼んだ。
「末永くがんばってくださいね」
余計な一言を言い残して去っていくウェイター。その後姿には『やり遂げました』みたいなオーラが漂う。音咲の差し金か?
「末永くって…どういうこと?」
七恵が聞いてくる。さて、どう答えようか。

1 素直に白状する。
2 適当にはぐらかす
3 『結婚しよう』と言う。

…とりあえず選択肢は二つか。素直に白状したら…またこいつは動かなくなるんだろうな。
「早く~」
ちょっと待ってくれ。今整理中だ。
「む~。あ、ピザも~らいっ」
それは止めろ。ただでさえ小さくて一般的男子高校生の胃袋を満たすのには3割くらい足りないピザをこれ以上減らされたら…!
「末永くってのはな、俺達が…その…カップルに見えたってことだ!」
今恥ずかしいこといった。絶対恥ずかしいこといった。証拠としては…七恵の紅潮した顔を法廷に出そうか。
七恵がピザを口に運ぼうとして動きを止めている。まだピザは無事だ。
俺はピザの無事を確認してピザを奪い取り自分の口に―
「いただきま~す」
七恵の声がしたと同時に軽くなる右手。…SNN使いやがったよ。
「…これおいしいね。私もこっちにすればよかったかも…」
「じゃあ換える…いつの間に完食しやがった」
俺が七恵のピザから目を話したのは2秒ほどだったと思う。その間に全部食った?人間技じゃないな。
「さっきだよ?」
とりあえず不毛な会話を切り上げ、俺のピザを半分七恵に渡す事で場を制し、俺の腹の虫を黙らせる事で祭りの会場に向かう事になった。さて、俺は祭りの不味い飯でも食うかね。

「雛見沢5凶爆闘!…ここ違うよ圭ちゃん!?」
…魅音?ここはひぐらしの世界とリンクしてないはずじゃ…。
「ちょっとキョン!早くついてきなさいよ!」
「おいハルヒ。お前が速すぎてみんな遅れちまってるだろ?少しはゆっくり、な?」
「そんなにもたもたしてたら祭りが終わっちゃうでしょ!このお祭りを通してSOS団の宣伝をするの!だから早く行かなくちゃダメなの!」
…ここは神のような力を持つ女子高校生に振り回される人々の世界とはリンクしてないはずじゃ…もしリンクしてたら…SNNは神のような―面倒だな。ハルヒによって作り出されたんじゃ…。
「長門さん。涼宮さんを少し気絶させてはいただけないでしょうか?」
「わかった。効果は5分程度にする。いい?」
「ありがとうございます」
……古泉がそれぞれをそれぞれの世界に戻してくれたな。いや、ここがリンクしてなくてよかった。ひぐらしだったらループする事になるし、ハルヒだったら世界崩壊が起こるかもな。
「どうする?」
俺の言葉だ。正直、俺は七恵をエスコートしてくれと頼まれただけであり、別にデートをしろとは言われてないしな。
「じゃあね……屋台を回って勝負しよ?」
雛見沢5凶爆闘みたいにか?
「そうだねっ。まず初めは…あの射的からでっ」
陰気そうなおっちゃんが退屈そうに客を待っている。その姿を見ると行きたくなくなるが…まあ、景品はよさそうだし、やってみるか。
「1回5発で300円だよ」
値段の割に…ごめん。最近は祭りなんか行かないから相場がわからん。
「睦月からしていいよ?」
と七恵が言うので俺から短銃を構える。十字架?フル活用中だ。
狙うは一番上の一番遠い場所にある一番重そうな段ボール。一応景品ではあるのだが、段ボールでつつまれている為に中身がわからない。そして極めつけは段ボールが前に大きく出ていること。
とりあえず俺は団ボールの最上部を狙って弾を撃つ。
コン
情けない音と共に落ちていくコルク。…無理じゃね?
…口先の魔術師がいたじゃないか!
「おじさん。短銃を3丁用意してくれませんか?」
そう。弾は制限があるが、銃の数には制限がない。4丁拳銃だ。
「…はいよ」
気のない返事が返ってきたが無視だ。とりあえず俺は銃を手に取る。3丁を手にとって弾を詰める。最初の1丁は既に詰めてあるからな。
まず1発。跳弾させて後ろから当てる。
続く2、3も同じように後ろからだ。
そして前に押し出されて安定を失った段ボールにとどめの一撃。
前に倒れそうになった時に浮き上がった部分にコルクを当て入れる。
がたんっ
どこか間の抜けた音と共に棚から落ちる段ボール。中身はいったいなんなんだ?
「よく落としたッ!君にはこの雛見沢セットを進呈しよう!」
といって郵送の紙を渡される。…受取人は音咲でいいか。
俺は1%の罪悪感も感じず、音咲の名前と住所を郵送伝票に書き付けた。
「ありがとな!」
といって送り出すおっちゃん。まだ七恵がやってないんだが…
「だってもうあれより大きいのか同じくらいのやつなかったでしょ?絶対勝てないよ」
と言って憤懣遣る瀬無い表情の七恵。その憤懣がいつ俺に飛んでくるのかを考えるとひやひやするぜ。
「次は…」
歩きながら探す七恵。先ほどよりも人の数が多くなった為か、七恵が自主的に手を握ってきた。素直に喜びたいんだが…握る力が強すぎるだろ。痛い。まあ…普通に嬉しいけどな。
「あのストラックアウトやろ?」
といって指差したのは多分普通のストラックアウト。ところどころに筋肉番付の装飾が施されている。こういう場合は有名投手のプリントを張ったほうが効果的だと思うが…。
「今度は私が最初でいいよね?やる前から負けるのは嫌だからね?」
ストラックアウトでそういう結果が出るとは思えないが…ま、いいだろ。
「おじさ~ん。2回お願いしますっ」
といって金をおじさんに渡す七恵。表現が悪かったな、訂正しよう。
といって『俺の渡した金』をおじさんに渡す七恵。あくまでも自腹は切らないつもりらしい。
「この華麗なフォームを見てなよっ!」
俺に促して投げ始める七恵。そんなに見て欲しいのか?
壱球投げてから返答が返ってくる。的には一つ穴があいている。
「嫌なの?」
いいや全然。お前を見ていて感じる事はあんまりないもんでな。
弐球目を投げてから返答が返ってくる。的には二つの穴が開いている。
「じゃあどんな事感じてるの?」
『元気だな…』とか『可愛いな…』とか『サディスティック性癖があるんじゃないか?』とかだな。
参球目を大幅にボールにして返答が返ってくる。的の穴は二つのままだ。
「サディスティック性癖ってなに!?私ってそんなことしたかな?かな?」
自覚がないなら尚の事重症だな。いや、七恵より俺が重症になるかもしれないな。
肆球目を投げてから返答が返ってくる。的の穴は四つに増えた。
「むぅ~…次はもうちょっと優しくするからさ~」
…それはいいんだが。このままいくとパーフェクト出しそうだな。
「七恵。投げてるお前も可愛いぞ」
言ってみて究極に後悔した。今すぐに拳銃で頭を貫きたい。…偽者のせいにすればッ!偽者いねええええ!!!!

あの後、七恵は全球を見事に外し、続く俺が6個の穴を開けた。その後に幾つか行われた勝負は俺と七恵が同じ数勝ったため、総合結果は俺の勝ちとなった。
「…早く命令言ってよ~」
とまあ、ここでも七恵ルールは適用される模様だ。先ほどから音咲が
(告白でも何でもしてしまえばきっとOKしてくれますよ)
とかほざいている。俺は七恵をそういう対象として見ていないし、もしそういう告白をするならフェアな状況でするさ。これだと命令で仕方なく…って言われるかもしれないからな。
「これから家の家事を手伝ってくれ。それだけでいいぞ?」
そう。今までで一度も描写をしていないので曖昧だったが、正直に言う。七恵は自分の衣服類を洗濯する事くらいしかしていない。こいつが俺の家に泊まらなければいいだけの話なんだが…。まあ、俺も普通の男なわけで、七恵といわず女性の衣服を洗うのは充分に抵抗がある。いや、洗うよりも干すほうが抵抗があるな。…七恵がここに泊まってる事を容認しておきながら言えたことではないがな。
「え~!」
なにが不満なものか。居候が何もしないで言い分けないだろう。
「今日は誕生日なのに~!?」
今日じゃないが…じゃあ明後日からならどうだ?
「明後日?…む~。いいよっ」
七恵の承諾を得る。明後日のなにがいいのかはまったくわからんが、ろくでもないことか理解不能なことに違いないだろう。
ひゅ~…どんっ
えらく気の抜けた花火が上がる。気が抜けているのは音だけのようで、視覚だけで判断するなら中の上、なかなかのものだろう。あくまで素人目だが。
そして俺はそろそろ料理の準備をしなきゃならない。ここでどう言い訳をして巧く音咲の家に行くかは音咲が考えてくれた。それを著した紙が俺の手の中にあり、未開封である。
さて、開けるか。
―告白しなさい。さすれば未来は開かれるでしょう―
…音咲。とりあえず死んでくれ。
とりあえずどうしたらいいかを考える。考えている間にも七恵は俺の手を花火の見やすい場所へと引っ張っていく。
「さっきからなに考えてるの?」
七恵に勘付かれるまでに顔に出てたか。
「私は結構鋭いんだよ?」
鋭い?おいおい待ってくれ。ボクシンググローブくらいには鋭いかも知れないがな?
「七恵パーンチッ!!」
グローブ無しの全力パンチが俺の脳を揺さぶる。相手が七恵だからよかったが、楓さんだったら洒落ではすまないだろう。この前飛龍閃をやってたしな…。
…そうだ。
『人ごみではぐれてメールで今音咲の家にいるよと知らせる』作戦だ!
(却下します)
楓さん!?通信がないと思って安心してたのに!?
(今から私が七恵に電話しますので、今から秀の家に来てください)
その間七恵はどうするんですか?
(私が付き添いますよ。あと、部屋の中の段ボールはあけないで下さいね?)
わかりました。焼却処分はしなくてもいいんですか?
(あとで私が嬲るのでそのままにしておいて下さい)

そんな事があって今は音咲の家。楓さんの言ったとおり、段ボールが部屋の隅においてある。一応ながら段ボールの上からパーティー装飾が施してあり、そのパーティー装飾が見事に段ボールの動きを封じてしまっている。仮に中に人がいて、そいつが空間操作系能力者でも出られないだろう。
俺は時々胎動する胎児のような段ボールを海馬に消去させて調理に移る。
から揚げを作るときにずっとタレに漬けて置くわけにもいかず、やむなくSNNでどうにか漬ける時間を操作したから揚げ用の肉をとりあえず鍋に入れる。記述はしていないが、油は張ってあり充分に暖めてある。もちろん、から揚げを作るときの粉末も忘れてない。
次の作業だ。
揚げ物類はから揚げの時に全部過程を終えたので、次は七恵の好物であるミートスパゲティに取り掛かる。麺の方は俺が小麦粉で作ってみたのだが…如何せん処女作だ。味は確かなものではない。ミートソースならかなり自信があるんだがな。因みに、バイキング形式にするため量は非常に多い。もし食いきれなくなっても、質はいいはずなので音咲の弁当にはなるだろう。七恵と楓さんがいる時点で残る事は考えにくいがな。
…とまあモノローグをやっている間に全ての準備が終わったので、とりあえず二人を呼ぶ事にする。
俺は音咲ハウス備え付けの受話器に手をかけ―
ふもももももも
…嫌な電子音が響く。なんだよ…『ふもももももも』って。
不快音をこれ以上聴いていたくないので受話器を取る。
「睦月君ですね?大変な事になっちゃいました」
どこかおどけた感じの楓さん。全然大変そうじゃないな。
「七恵が失踪しました」
…失踪?迷子の間違いじゃ?
「それはありません。先ほどから発信機すら応答しないので」
発信機……。
「それで私も探してみたんですが…いませんでした」
…それで俺に探せと?
「そのとおりです」
と一方的に用件を告げられて交信を終了される。どこかの世界の休日返上でパトロールしている誰かが幻視できたが、ここはあえて無視しよう。
さて、七恵が行きそうな場所……。
ないな。簡潔に言うとわからないだな。なぜって、今まで外出する時は七恵が鍵持ってないから俺についてきてたからな。その間に変な場所に行った覚えはない。
…ここの階段…ってことはないだろうな。
俺はとりあえず家の外に出る。とりあえず廊下を見回して―
パンパンッ
…クラッカー?
「誕生日おめでとー!」
……誰のだ?
「睦月に決まってるでしょ?」
七恵がクラッカーの糸をさりげなく俺に被せていきながら言う。楓さんはクラッカーのコーンを被せながらだ。
俺の誕生日は…1月8日なんだが…。1月に生まれたから睦月ってつけられたって話しただろ?
「え…!?」
驚愕の表情を浮かべる七恵。何も言わないで祝われていた方がよかったのか、それとも毅然と言ってしまった方がよかったのか、俺にはどちらともいえない。
因みに、楓さんはいつもどおりに微笑んでいる。多分、わかっててやったに違いない。
「とりあえず二人とも。中に入れ」
俺が促す。音咲はどうするのかと少し疑問に思ったが、発信機や盗聴機のことを考えるとどうでもよくなった。

俺が二人を家に引き入れて調理を再開すると、音咲の声が聞こえるようになった。俺が気になって聞きにいくべきか迷っていると楓さんがやってきて、
「あのまま箱詰めにして祝わせないのはあまりにも不憫だったので開放しちゃいました」
とのこと。捕獲したのも箱詰めしたのも楓さんなので反論のし様も無い。別にする気もないがな。
楓さんが言い終わってリビングに戻るかと思いきや、
「私も手伝ってあげますよ?必要ないなんてこと言いませんよね?」
上目遣いで聞いてくる楓さん。そんなことしなくてもあなたの思う通りにしてあげますよ。
「本当ですか?じゃあこれを七恵に読んでくれませんか?」
………嫌です。それ、絶対なんかありますよね。
「当然です。何も無い文章なんて読ませるに値しません」
内容は?
「七恵への沢山の愛を込めた俗に言うラブレターですよ」
よくやった俺!もしあの時OKしていたら俺は不登校になっていたかもしれない!

俺は楓さんと初の共同s―
「ちょっと七恵見てきますね」
楓さんは逃亡してしまった!

俺は調理し終えた料理群を音咲を手伝わせる事で2回に分けてリビングへと運んだ。
「いや、大変だったんですよ?怒った楓さんをどうにか宥めるのは。必死に頑張って段ボールでしたからね」
お前にはそれだけの罪があるからな。計画の最終段階で無策だなんて楓さんが許すはずもない。
「それについては謝りますよ。でもああすれば絶対に上手く―」
仲間専用のMy angel 楓さんKOU・RIN!
「あ、楓さん。いや、先ほどはすいません。反省してますので許してください」
かなり逃げ腰な音咲。こいつは俺が遠く及ばないような実戦経験があるはずなんだが…今の二人は哀れな草食動物と列強諸国のように強い肉食動物だ。哀れ音咲。
「秀。人を獣扱いしちゃいけないと思うんですが?」
楓さんは俺に対してなのか音咲に対してなのかそれとも両方なのか対象が不明確な事を言ってのけた。俺としては音咲だけであって欲しい。
そうして楓さんは音咲家謹製の寒温コタツに入る。寒温コタツは俺が知っている音咲家の実態の中で最もまともで有益なものだと思う。
「差し上げる事は無理ですが、僕の家で働く会員証を持っていれば3割減で買えますよ?」
どれくらいだ?
「420万くらいですね」
車だってそんなにしないぞ。

俺の作った大量の料理連合艦隊をものの40分で食べつくした俺達。多分8割が七恵と楓さんの腹に入っていることだろう。俺と音咲は少し空腹気味だ。ケーキも作ってあるのだが…それも二人の腹の中に入るだろう。
「とりあえずプレゼントをあげましょう?焦らしても何も出ませんし」
と言って徐にバンダナを取り出す楓さん。迷彩柄の軍隊が使ってそうな奴だ。
「はい。これは無限バンダ―」
楓さんの口を俺が目で『それ以上言ったら版権に関わります!』『今更版権ですか?』
「ナなんですよ。弾はいつでも無限になります」
今更版権だなんて…ミスったな。
「本当は睦月君にあげるつもりだったんですけどね」
俺ですか?なんでバンダナなんて?
「意味がわかってないうちは渡しても無意味なんですよ」
と一蹴。バンダナにはそれ以下でもそれ以上の意味は無い…はずだがな。
「僕の方からは寒温コタツをプレゼントします」
おい音咲。それはタダってことだな?
「誕生日プレゼントになんでお金を払うようなものをプレゼントするのでしょう。僕はそんなことしませんよ」
ああ、普通そうだよな。俺も誕生日には…ってそんなもの頼めるかよ。
「私の家に送ってくれるんだよね?」
「もちろんです。住所はここでよろしいですね?」
「えーっと…ここだっけ?私の家」
俺に郵送伝票を俺に差し出してくる七恵。なんで俺がお前の家の住所を知らなきゃならん。知ってるはず無いだろ。
とは時報が各作品で死ぬ事くらい当然に洩らさず、俺は伝票を見る。
…おい七恵。お前の家、ここじゃないだろ。お前の家はマンションだろう?
「ここじゃなかったっけ?」
何をどうしたら俺の家はお前に乗っ取られるんだ!なんだ。最近言われなくなったがパラサイトか?俺の家の住所録や戸籍を見せてくれようか。
「まあいいじゃないですか。あなたの欲しがっていた寒温コタツが手に入るんですから。もちろん省電力なので―」
ここまで聞いて残りは全部生返事を返してやった。最後に音咲は、
「僕自身からは、このダイヤの髪留めを差し上げましょう」

everybady?
トランプのダイヤだ。勘違いはするなよ?
「僕は間違っても織口さんにそういうものはあげませんよ。将来あなたが渡す時に僕のものと比べられては酷ですから」
どうして俺が将来的に七恵にそんなものプレゼントせにゃならん。浪費だ。それを買うために稼ぐ時間も浪費だ。
俺がそういうと音咲は肩をすくめる仕草をとり、楓さんもそれに便乗していた。俺はなにか変なことを言ったのか?
さて残るは俺の番。前の負の連鎖を乗り越えるのに余った金をフルに使って買って来たのがこのネックレス。この前露店で見つけたんだ。ペアで4000円で、単品3000円だったんだぜ?もちろんペアで買ってきたさ。青と黄色のやつをな。
「ありがとねっ」
満面の笑みで微笑む七恵。いつもこれぐらいの好意を示してやってるんだが…普通にこういう顔してくれたっていいだろうに。でも毎日見てたら慣れるんだろうけどな。
「掛けてあげたらどうでしょう?」
楓さんの提案。それは俺にとって従う事の選択肢しかない。それに合わせてかは知らないが、七恵のほうもかけてもらう気満々だ。ここでやらなきゃ男が廃るって物だろう。
「掛けるぞ?」
一応一言断っておく。もしかしたら体に触れただけで訴えられるかもしれない。
「そんな事しないよっ!」
と顔を勢いよく上げる七恵。俺はネックレスをかけようとしていて顔を近づけていた。この意味がわかるな?だが、そうは問屋が卸さない。
「ちょ…ちょっと睦月!顔が!…その…近すぎない?」
止めろ。今すぐその女の子らしい仕草を止めろ。暴走するッ!!!
俺は理性が優勢なうちにネックレスを手早く掛け、部屋の隅っこに瞬間移動をした。
「七恵もネックレスを掛けてあげたらどうでしょう?」
楓さん?顔がにやけてますよ?
「そうするねっ」
紅潮したままの顔で迫ってくる七恵。ヤバイ。破壊力がヤバイ。理性城陥落の危機ッ!!!!
「大丈夫ですよ。僕が陥落した後の手続きなどを引き受けますので」
お前は本当に何を考えているんだッ!!!!陥落しないようにしてくれよッ!!!!!!
「僕のストリップショーでもやって差し上げましょうか?」
冗談混じりのニヤケ面。ここでOKしなければ理性が崩壊してもおかしくはないのだが、
「いや、いい。断る」
もしOKしたりしてしまったら、俺は高校生活をガチホモのレッテルを貼られたまま過ごす事になるだろう。それだったら崩壊する方がマシだ。
「掛けるよ?」
紅潮した七恵の顔が視界の60%を占めてやがるッ!!!!マジで陥落するッ!!!!
俺が潔くネックレスを掛けられようと決心したそのとき、
「ひゃっ!!?」
は?
なんでこの状態で七恵が倒れて来るんだ!!!?楓さん!!?楓さんなのか!!!?
楓さぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!





七恵がのしかかってきた事による精神的要因と、その衝撃が体の頭部に著しいショックを与えた為に、俺の意識はブラックアウトした。さよなら…俺の高校生活。フォーエバー…。