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世は並べてこともなし
平和な、それでいて平和な日常

暑いのか寒いのかハッキリしない、しかしそれは人間が最も好む気温状態を提供してくれる。そんな季節。
俺は6限目の終わりのチャイムのあと、担任の爽やかボイスを聞きながら憎悪を募らせた後、部室に行く。
部室とは、5月ごろに俺が七恵から逃げるために見つけた場所であり、今はみんなの集合場所だ。
ここに行けば大抵は誰かいるので暇つぶしになる。誰もいないときは…なかったな。
俺は部室への道のりを紳士的に静かに歩いていく。
「部室ですか?」
このどこか柔らかで教養のある口調は楓さんだ。
「そうですよ。でも、背後からいきなりは驚きますよ?」
「それも青春ですよ。」
楓さんはそう言って俺に極上スマイル。至高の笑みをむける。
ああ、癒される。さっきの憎悪が嘘のように消えていく。眼福眼福。
俺は二人で部室に向かう。無論、楓さんは女性なので歩幅が小さい。俺は楓さんに合わせて歩いた。
それから部室に着くまでは無言だったが気まずさは無い。気持ちのいい静寂。そんなところだ。
俺はノックをせずにドアを開ける。ノックはする必要が無いからだ。楓さんは横にいるからな。
「入ってください。」
音咲がいた。ドアを開けた後にそれを言っても遅いと思うぞ?
「お前…いつから後ろに黒衣の暗殺者を侍らせるようになったんだ?」
嘘だ。これはちょうど執筆者がエイプリルフールに書いたからだ。こんな時事ネタわからんだろうに。
「あなたらしくないですね?こんなちゃちな嘘なんて?」
なんで確認もせずにわかったんだ?モンスターなんてこともあるかもしれないぞ?
音咲曰く、「僕はものすごい経験を積んできましたからね。背後の気配くらいは察知できますよ。」だそうだ。
俺たちは部室に入り、各自のやりたいことをやる。
といっても、3人で交替にトランプやら将棋やらアナログゲームに興じるだけだ。
俺たち(七恵以外)はそういったアナログゲームの実力は同じくらいだ。だから暇つぶしにはなる。
今は楓さんと音咲が将棋をやっている。やや音咲が優勢だろうか。楓さん、ファイト!
「王手です。」
楓さんの一声。音咲はマジですか?といった目で盤上を見ている。俺も視線を盤上に移す。
「これは…、楓さんの勝ちですね。」
「おやおや、負けてしまいました。楓さんがこんなどんでん返しを仕掛けてくるとは。」
「奥の手、ですよ。ではジュースを人数分お願いしますね。」
ここで発動されしは『七恵ルール』七恵ルールとは勝負の敗者が勝者の命令を可能な範疇できくのだ!
因みに…七恵ルールはまだある。これからも増えるかもしれない…。
「なにがいいでしょう?」
「俺はフリースタイルだ。」
「私は午後の紅茶ミルクティーでお願いします。」
俺たちの要望を聞いて音咲はドアを開ける。ふと俺はあることを思い出す。
「七恵にはレモンティーな。」
音咲は振り返って俺に了解の旨を伝えた。ああ、神様はなんであいつを爽やかフェイスにしたんですか?
音咲が去った部室には俺と楓さんだけだ。俺たちは早速2局目を準備する。
「「お願いします。」」
パチ
パチ
パチ
…パチ
………パチ
「…いつの間に強くなられたんですか?」
パチ
「…そうですね。つい最近、あるバイブルを見つけた、というところですね。」
パチ
………………………………
「チェックメイトです。楓さん。」
「そのようですね。そのバイブルを見せてほしいですね。」
「実はバイブルなんて無いんですよ。」
俺がそういうと楓さんは優しく微笑んだ。ああ、癒される。
「嘘はいけませんよ?」
俺はこの人に何を命じようか考えていた。
その時、ドアが勢いよく開く。そこに見えたは俺たちの中で一番我侭な、そしてその我侭で俺たちを引っ張るやつ。
「遅れてごめんね!」
もうちょっと遅れてもよかったんだぞ?そうすれば俺は楓さんをずっと見てられたんだからな。
「七恵もやりますか?」
「今日は将棋?ならやるねっ!」
ならって、お前は将棋じゃなくてもやるだろう?もっとも、勝敗は置いといてだがな。
「すいません、遅くなりました。」
音咲が帰還したようだ。顔には汗一つ見えない。こいつ、走ったのか?
「走りましたよ?僕が汗をかかないのは体質ですよ?」
そりゃ爽やかな体質だな。羨ましいぜ。
「それより、オセロをやりませんか?もちろんルール無しで。」
ルール無しは言わなくていいぞ。勝敗は見えてるからな。
「そうですか?ではルールはありでやりましょう。」
音咲はオセロを並べ始める。俺はそれを黙ってみている。
七恵は将棋で四苦八苦しているようだ。さっきから顔が七変化している。見ていて飽きないな。
「それでは僕から。」
音咲が先手で始まった。俺は音咲に勝つつもりは無い。かといって負けるつもりも無い。
俺が目指すのは、初めてこいつとやったときの盤面だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「同点、ですね。」
そう言った音咲の顔は驚きがなかった。代わりに、過去を懐かしむような顔だ。
「詰みですよ。七恵。」
どうやらあっちも終わったようだ。ちょうどだな。
「さ、皆。もう帰ろう。」
俺がそう促す。俺はいつもの癖でそういう。時計を見る。5時50分だ。いつもどおりだな。
帰り道、音咲が俺にしか聞こえない声で話しかけてきた。
「今度僕の家でパーティーがあるのですが来ませんか?」
「それは皆を誘うべきだろ?」
俺はこの日常に不満を覚えたことは無い。だが、俺は一つ名案を思いついた。
「なあ皆。」
前にいた二人が振り向く。
「俺たちは確かに仲は良くなったけどさ、結束力に欠けると思わないか?」
俺は問う。前の二人は考えているような顔だ。音咲?見たくも無いね。
「それで名案があるんだ。俺たち4人でなにかのグループを創ればいいんじゃないかって。」
前の二人は驚いたような顔をしている。音咲?見たくも無いね。
「なあ、皆。どう思う?」
「賛成!」
七恵、賛成なのは嬉しいがもうちょっと考えようぜ?
「僕も賛成ですね。」
「私もです。」
全員一致で決まったな。そうして俺は音咲にさっきの話を話すよう促す。
「いきなりですいませんが今度僕の家でパーティーがあるんですよ。もしよければきてくれませんか?」
「いくいくっ!」
だからもうちょっと考えようぜ。
「日にちによりますができるだけ行けるようにしますね。」
どうやらこれも全員一致で―
「あとはあなただけですが来ますか?」
おっと、俺がまだだったな。俺ももちろん行くに決まってるだろ?