「小説」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

小説」(2007/04/22 (日) 20:29:02) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

移転しました。
STORY 1 始まり 君は、自分の周りがつまらないものだと思っているか?それとも面白いと思っているか?そんなことは個個の価値観にしか過ぎない。だが断言して言おう。俺の周りには面白いを遥かに超越してむしろ、 悪夢がごろごろ転がっている!この物語は…常人が非日常に巻き込まれる学園SF…ジャンル不明の物語だ! 今は3月。もうアパートに入っている。アパート生活はいいものだと心底思った。一日中寝ていても怒られない。 アパートの立地条件よく、設備がよく、なかなか広い。 立地条件はバス停から30秒。バスは結構な本数走っていて通学に苦労しない。銀行、スーパーなどは徒歩4分 でつく。設備のほうはインターネット完備の1Kの自炊可能な空間。幸い俺は料理がうまい。自分で食ってうまいといえるくらいだ。これならここで大学卒業までいてもいいかな…と思えた。 もうすぐ高校1年生だ。通う高校は東京の高校でレベルはトップだ。 始業までの時間をどう過ごそうか悩んでいた。楽しみたいと思ったが俺の友は哉基だけだ。その哉基も俺と違う高校に行ってるので都合が合いにくくなった。 始業式の日、金曜日である。どの高校でも新一年生にはなにかを読まされることがある。それはここも同じだ。が、1位を取ったやつが不運にも欠席し俺が代わりに代表になった。このおかげで俺の名は皆に知れ渡った。式は滞りなく終わった。ここまでの有名校なら式の時間は長いと思っていたがここは教師がいいようだ。頭が柔らかい。おかげで多分35分ほどで終わった。 俺のクラスは文系で1年C組だった。このクラスになったことで俺は非日常への切符を手に入れた。 欲しかったら売ってやる。そうだな、叩き売りで…4000円位でな。 式が終わった後、恒例というべきかなんというか。いや、恒例の自己紹介が行われた。その後の話だ。 「このクラスも前と同じ様な日常か…。どんなにランクが上がってもやることは変わらないか…。」 ものすごい平凡さで思わず口に出ていた。そのことに気づいてかは知らんが男女2人ずつで俺の周りに集まった。 俺は起き上がるのもけだるいので、机に突っ伏していた。だがそれでも人に心を許す気もなく、適当に話して終わらせようと思った。 「君は何処から来たのかな?」 そうだな。じゃあ東京都千代田区からだ。 「ホントのこと教えてよー。」 食い下がるやつだ。俺の自己紹介を聞いてなかったのか? 「うん。だってつまんなかったんだもん。」 クソ、こいつめ。なかなか可愛い顔してキツイこといってくれるぜ。それにしてもこいつは茜に似ているな。 ああ忌々しい。 「俺は他人の過去を無理やり穿り返すやつが大嫌いだ。それだけいっておければいい。ほら、いってやったぞ。」 気がつけば今話しているやつ以外には俺の周りから消えていた。 「そうだったっけ?じゃあいいや。今何処にすんでるの?」 こいつはしつこいな…。ため息をつきながら俺はルーズリーフを取り出し、住所、ここからの電車の図とバスの図を描いて渡した。まるで来てくださいって言ってるようなものだって?俺はビージェントルマンがモットーなんだ。 案の定そいつは来た。唯一予想外だったのは、今日の俺の帰宅をものすごく下手な尾行術でついてきたことだ。 ついてくる途中に転びかけたところを俺に支えられるなんて失態を見せておきながら、恥ずかしがる風もなく普通に俺のアパートに来た。大家さんに冷やかされたのは言うまでも無い。 「で、何のつもりだ。」 「何が?」 「ここに来た真意は何だ?」 ベッドにねっころがって、ちょっとあきれ気味に言った。 「君さ、なんかぜんぜん楽しそうじゃないんだもん。頑張ったかは知らないけど折角入った高校なんだしもうちょっと楽しんでいいと思うんだけど。」 こいつはいったい何様のつもりだ。俺のことについて詮索しないでくれ。ただでさえお前は茜に似てるんだから。 「茜って誰?彼女?」 しまった。またか。ま、教えても良いのだろうが教える気はミトコンドリアほども持ち合わせてはいない。 「あ、聞かないほうが良いんだっけ。じゃ、聞かない。でさ、私の名前知りたくない?」 「…別に。ちょっと俺寝るわ。帰るんだったら鍵をかけて玄関ポストに入れといてくれ。」 「え!?ちょっと!?こんな可愛い女の子を一人で帰らせるつもり?ちょっと起きてよ!」 …自分で可愛いって…可愛いけど…。 「ただいま、意識を留守にします。用件や文句のある方は起床後にどうぞ。」 そこからなにやら声が聞こえたが聞こえないふりをして寝た。この一言を後悔するとは知らずに。 ジリリリリリリリリリリリリリリ もそもそ ぺチ  「さて、今日は何をするかな。」 今日はいい日だ。起きてすぐに意識がはっきりとしている。とりあえず玄関に鍵を取りに行く。アレ?無い? ガバッ!!! 何事かと振り返ろうとするまもなく俺はチョークスリーパーをかけられていた。髪の毛が頭にかかる。でもいいにおいだ。俺のよく使うシャンプーの…。 「何してる。」 「チョークスリーパー。」 「やめろ。」 「話を聞け。」 「わかった…わかり…ましたから…やめてください…。」 この部分だけ見ると俺がやっていると思われるが、やっているのは名前も知らぬ女生徒である。くっ、こいつ強い。 あ、有名河川見えてきた。あ、おばあちゃん。元気してた? 「私の名前はね、織口七恵。どう?感動した?」 チョークスリーパーは弱まったがまだ体勢はそのままだ。俺はあの河を越える気は無い。 「ああ。いい名前だな。この体勢じゃなかったら涙を流して喜んだんだけどね。」 ほとんど嘘だ。ほとんど?ああ。のとこ以外は嘘だ。ああ。早くこの状態をやめて欲しい。アレ?というかこいつ俺んちにずっといたのでは? 「お前、俺の家に泊まったのか!?」 「名前教えたんだから名前で呼んでよ。」 そうだったな。じゃあ織口。泊まったのか? 「うん。お風呂も使わせてもらったよ。あと昼ごはんできてるよ。」 おお、そうか。ってちげーよ!ちょっと待て!風呂使った?キッチン使った?そんなのはまだいい。こいつ俺んちに泊まった? 「まさか俺が寝てるときに誰も来なかったよな?」 「君のお母さんなら来たよ?」 ジーザス!!!!!シット!!!!!!!!何故こんなときに俺の母は来る!!!!!完璧に誤解されたじゃないか!!!!!!終わった…。 まだ高校生活1日目だっていうのに!!!!!まあいいや・・・。 「ロープ。ロープをくれ。人一人つるしても大丈夫なやつを。」 「私がやってあげよっか?」 ごめんなさいすいませんもうしません土下座するから許してください。あ、このままじゃ土下座できないじゃん。 俺はまだ死ぬ気になんかなって無いんだ。冗談だから。マジで。 「そうなの?まあいいやとりあえずご飯食べよ?」 ためらう理由も無いので食べてみた。これは…母親が手伝ったな。赤飯か…お母さん!!!誤解だよ!!! まあ、うまかったから朝の分と称して結構な量食ったが。赤飯以外は織口が作ったものだそうだ。うまかった。 それにしてもこいつは何だ?このリポビタンDみたいなビンに入ってる物は。ちょっと飲んでみるか。 URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!!!!何だこのまずさ!!!!!!覚醒するくらいまずいぞ。覚醒? 俺は恐る恐る髪を触ってみた…。逆立っていない。よかった。俺はフリーザと戦う気も無いし魔神なんてごめんだ。 だがそれを見た織口は電波なことを口走りやがった。 「あ、この人当たりだ。君すごいね♪78分の77の確立で覚醒失敗して死ぬのに成功しちゃうなんて。」 は?こいつは何を言っているんだ?覚醒失敗?俺、死ぬとこだったの!?あ、織口なぜ俺を名前で呼ばん。 その後、上手くはぐらかされた俺が、ちょっと来て。と言われてきたのは学校のプールである。ここまで来るのに電車をちゃんと使ったしバスも使ったし、ちゃんと走った。このごろ俺って体力ついてきてんのかな?ぜんぜん疲れなかったぞ。 「プールって、織口。鍵はどうするんだ?」 「こうするの。」 織口が古い南京錠に手をかざすと手のひらから半透明で光る何かが出てきてそれが鍵を開けた。俺は夢を見てるんじゃないだろうな?そんなことを繰り返してプールに着いた。 「ここに向かって手をかざしてみてよ。」 俺自身この状況を楽しんでいる所為か俺は手をかざしていた。 「沸騰するプールを想像してみて?」 ああ。いいだろう。どうせ夢だ。どうにでもなるだろう。 …結果は…プールが…壊れた。水の熱にプールが耐え切れなくなったからだ。 「これは何だ?いったい何が起こっている?」 「流石は入学試験2位だね。SNN値がものすごい高いね。君は果報ものだっ!」 SNN?何だそれはSUGEE NANDAKONO NOURYOKUHA か?  「君は私と一緒に来て非日常の世界で生活するか今ここで退学するか選ぶことが出来るよっ!」 は?おい待て。なんで退学…プールか…。いや、証拠は無い! 「これ、な~んだ?」 …ビデオカメラ。死にたくなってきた……。 「今までのはこのイベントを起こす為のフラグだったのか?」 「7割がたそうだよ。」 おのれ孔明め!謀ったな!!! まあ俺は始まったばかりの高校生活がつまらなかったし、退学するのも嫌なのでついていくことにした。 「じゃあここを直してあげる。」 こんなことが夢じゃなかったらどうだろう。当事者以外は羨ましがるだろう。ここで俺は気づかなかった。 入学試験2位。入学試験というのはSNNを計ることも行っていたようだ。2位がいるということは1位もいる。 俺より少し強いらしい。つまり俺は1位にこき使われる存在らしい。俺はそのことに気づかなかった。 STORY 2 SNNバトル この前UPした作品には俺の名前が一つも出ていないことに気づいたか? そんなことはどうでもいい。あれからの毎日を説明する。 あの後俺のアパートにワープだか高速移動だか知らんもので戻ってきた。土足は厳禁だぞ。 戻ってきてから俺は説明を授けた。 SNNは魔法、超能力とは違う別種の存在でその人その人の力の特性があると。魔法と超能力の定義は教えてもらえなかった。結構気になった。 そしてそのSNNは6年前くらいから発見されていて、SNNは様々な人に宿っていると。SNNが宿っているものはたいてい文武両道の、まあ天才型らしい。 SNNを行使する目的は異次元とでも言っておく。(調べようにも現代科学では不可能だからだ)異次元から何かのはずみでやってくるモンスターを倒したりするものである。またSNN法と言うものがあるようで、そうおおっぴらに使っていいものではないようだ。 SNN能力は16~18の時期に発現、上昇して18の時点での能力値は生涯にわたって維持される。発現しない場合もある。また俺のSNN能力は水に関するものらしく非常に強力なものらしい。 使い方次第では恐らく国の1つや2つは3日で落とせるらしい。まあそうだろうな。 因みに織口のは土?に関するものっぽい。ぽいと言うのは俺の推理だからだ。 俺の通う高校はそのSNN能力を育成することを主とするところらしい。入るとこ間違えたかな…? 俺の疑問はまだ尽きない。なぜ織口が、一言も語られていないことをこんなに知っていて、俺に教えるのかと。 織口はまだ教えてくれていない。まあ過去を詮索するつもりは無いからな。 前置きが長くなった今日はあの日から一週間後の土曜日だ。織口は俺のアパートから程近い所に住んでいるらしい。それを理由に俺のところへしょっちゅう来る。まあこいつの作る飯はうまいからな。それに可愛いので許すことにした。多分こいつは許さなくても来るだろう。そんな気がする。 だが時々こいつは嘘を言っているんじゃなかろうかと思う。そのモンスターとやらが一向に出てくる気配が無いからだ。だが俺は空気中の水分を操って凍らせたり、カップラーメンを本当に3分で作ったり、ハサミがなかったので ウォーターカッターを使ったりしていた。なんて便利な能力だ。一度指の水分を0にしてみたら指がなくなりかけた。 そのとき俺は人体に能力を使わないことをカップラーメンの容器に誓った。むごかった。 ―学校― 俺は普通科の文系を取った。普通科は土曜日にも授業が補修としてあるらしい。織口曰く、SNN能力者は普段忙しいから補修でもしなきゃついていけないらしい。そんな情報を元に俺は学校へ行った。織口は顔合わせに行って来いといった。玄関で付け足したように、私の課題取ってきてといったのは聞かなかったことにする。聞いたと思うと腹立たしいが聞いて無いと思えば…無理だ。 ガラッ 俺の話し相手は織口以外にはいない。幸か不幸か織口もそのようだ。織口が他人と話すことなんか俺と一緒にいても一度もなかった。はずである。俺は普通に自席に座り、習性のように突っ伏した。 俺の席は窓際一番前である。これがなかなか教師にばれにくい。いい位置だ。 クラスを見渡すと必ず男女がペアのように近くにいた。ここはカップルの聖地か?と思ったが俺と織口の関係を思い出すと、ああ、そうか。ぐらいにしか思えなかった。そのペアの内おとなしそうな二人組みが近づいてきて男が ねえ君。君はパートナーの人は?と、聞いてきた。俺が一般人だったらどうするんだと考えると女が 「見ただけでわかるのよ。SNN能力者にはオーラがあるの。あなたのはすごく大きいのね。そのオーラの色はその人の特性を表しているの。知らなかった?」 ああ。知らなかった。あいつは何を考えているんだ。 「で、俺に何のようだ?見当がつかないんだが。」 男が、 「ずばり!SNNバトルさ!」 「そう!いくら2位でも一人なら勝てそうなの!」 ああ。わかった。この力は守る為の力じゃないのか? 「こういった趣向もありなんだ。」 で、ルールはどうなっている?という前にルールブックを渡された。薄っぺらいな。 「じゃあ読み終わったら来てよ。」 …脳内評価を改正。あいつらはなかなか強引なやつ等だ。 1分でルールブックを読み終えた俺はどこへ行けばいいのか聞いてなかったことに気がついた。だがそれは取り越し苦労だった。いきてぇと思ったら俺以外の何かの力で移動した。 「もう終わったの?ずいぶん早いのね。私なら絶対来ようとは思わないのにね。」 そうか。なら呼ぶな。それにしても嫌なルールだ。勝敗は相手の死亡、相手の投降であり逆もまたそうである。 また、この空間から出ると死亡してても入る前の状態になるらしい。フィールドは校舎である。 ここに入ると同時に頭にここの空間の性質が入ってきた。ご都合主義もいいとこだ。 「なあ。俺投降してもいいかな?いくらゲームだとわかっていても人を傷つけるのは遺憾を覚えるんだが。」 「これのランクはこれからの学校生活に大きく影響するんだ!だから勝たせてもらうよ!」 そういうと同時に男が突っ込んできた。俺は聞きたいことが幾つか、いや沢山あったのでこいつを捕まえることにした。男の能力の性質は土のようだ。こいつは何度かこういうことをやっているらしく、動きを止めるのに手間取った。 女のほうは開始直後に走り去った。男は増援が期待できないとみると諦めたように 「投降するよ。」 といった。俺は動きを止めさせている氷を溶かしてやった。短時間で溶かしたんだ。外傷は無いだろう。 「さあ、聞きたいことがある。いいな?」 「この学校について話そう。この学校は学年ごとのランクが存在する。そのランクはどれほど有能なSNN能力者であるかを示す。入学テストは潜在的な能力の測定、ランク付けは戦略性を示す。そしてそのランクは進級するごとに 順位に応じたSNNの最大エネルギー上昇を行使できる。これぐらいでいいか?」 俺の聞きたいことを全て言われた…。 「そして僕と彼女はこの学年を…そうだね取り締まる役かな。だから僕達以外の人は僕等と戦うのが初めてだと思うよ。そして君はこの学年で一番最後に僕と戦って256人中23人が僕等に勝った。君で24人目になるといいね。」 言い終わると男は消えていた。多分戻ったのだろう、現実世界に。 俺は一つここまでで失敗した。特性もわからぬ相手を目の届かない範囲にいかせてしまった。これは非常にまずい。なぜなら相手にとってその行動は有益であると同時に、恐らく俺の動向を監視しているだろう。早く隠れよ― ビシュッ  何かが放たれる音がした。俺は反射的に自身を氷で覆った。放たれた物体は小さく、銃弾程度の大きさだった。 どうやら足を狙って撃ったらしい。相手の能力はこれだけではつかめなかった。だが非常に早く、貫通力のあるものということはわかった。ここにいては危険だ!可及的速やかに撤退しなければ!こんなセリフ、一度はいってみたかった。 逃げる間にも相手の弾は飛んでくる。恐らく3桁はいっているだろう。そう考えるとものすごい量の力を使う計算になる。しかも飛んできた弾は消える。いったいどういう能力なんだ。とりあえず体育倉庫に隠れよう。 相手は流石に見失ったようだ。なにせ水の反射を使って姿をくらませたんだからな。とりあえずひとあんし― ズガガガガガガ といった効果音が似合うくらいに天井から弾が飛んできた。最悪だ、あの貫通力では致命傷になる。第一波は凌いだ。安堵したそのとき― ちょうどバスケットボールがはねて俺の視界をさえぎった。そして扉に一番近いボールが破裂した。扉からボール、その次に来るものは俺の頭だった。やばい!体が動かない!能力は間に合わない!マジでくたばる3秒前!いや、頭を冷やせ! BE COOL BE COOLだ! ―結果的には助かった。自分の頭を凍らせて弾こうとした。正直、死ぬ…いや負けるかと思った。相手の能力は 力のベクトルを変える能力らしい。飛んできた弾は空気であり、俺の位置把握は発信機で行っていた。 本当はあそこで俺が頭を凍らせるなんて思わなかったらしく、力のベクトルを変えようにも残存エネルギーが足りなかったらしい。最後の一人は弾かれたあと歩み寄ってきて、 「私の負けみたいね。貴方、発想がいいわね。」 とほめた後消えた。俺は帰れないのか?と思ったが知らぬ間に帰っていたようだ。驚いた目で俺を周りの生徒が見ていた。余談だが、勝負の様子は俺の周りの生徒にテレパシーのようなもので見られていたらしい。俺の周りの生徒は俺が勝つとは思ってなかったらしい。今までの23人は2人でもきつかったらしい。俺は少し嬉しかった。 堀崎睦月‘S STORY 3 初陣 「起きろ睦月~!起きろ~!」 この声の主は大いなる矛盾をしている。起きろといいながらにして、チョークスリーパーをかけている。 当然かけられているのは俺で今は川の中州にいる。わたったら楽になれるかな?などと考えつつも起きる。 やはり眠い。昨日は遅くまで起きてたからな。昨日だけは織口を俺のお墨付きで泊まることを許してしまうほど遅くまで話し込んでいた。理由はやはり昨日のことを問い詰めた。途中、織口は何度か黙秘権を行使したために話が長くなった。途中、何度か織口が寝てしまったので、体に触れないように起こす為ヘッドフォンを装着し、最大音量で音楽を流す。そして仕返しに手痛い反撃を受ける。を繰り返した為だ。最後の30分は俺と織口のどちらがベッドに寝るかだった。不覚にも俺はチョークスリーパーで落ち、朝にいたる。 「やめてくれ…今日は…眠いし疲れたんだよ…。」 「これみてよ!睦月くんっ!やっぱ昨日勝ってたんだねっ!」 なんだなんだ。なぜそれがわかった。そしてお前の言う、これ、を見るのは物理的に不可能だ。 チョークが解けて俺は、これ、を見る。 「今日……浜辺にてモンスターが発生するはず。AM11:00までに来たれり。だと?これが何だ。」 「これはね、モンスター討伐の依頼書!モンスターはこっちに来るときに、こことあっちの空間の狭間を通ってくるの。 で、その狭間を通れるのは上中下であらわすと中と上だけしか通れないの。それにこの紙は学校認定の強い人にしか来ないの。弱い人が行ったら死んじゃうしね。で、君は私の予想どうり一人で勝ったわけ!多分今回のは中レベルね。さあ行くよ!」 待て。俺はお前のパートナーになるといった。今言おう。あの時お前は、こんなこと一言も言ってなかった。 こんなことわかってりゃ俺は退学の道を選んだね。 「俺はこの年で死線を越えるつもりは無い。向かうなら単体でどうぞ。」 「あ、じゃあ別にいいわよ。今回は見学させるつもりだったから。」 そういって織口は行ってしまった。今は11:07である。浜辺まで確か往復20分である。 …なんだこの時間の進む遅さは…。まだ3分しかたってないのに6分は待った気になる…。 「もう待てん、ちょっと見てきてやる、このままいかなかったら男が廃る。」 バスはしばらく来ない。SNNを使って俺の靴に氷のローラースケートを作って坂道を滑走していった。下り坂でよかった。9分でついた。最速タイムだ。そこで俺が見たのは3体のモンスターに囲まれている織口だった。 俺は気づいたら氷の盾を織口に作り、氷の槍をモンスターの内一体に投げつけた。槍があたるか否かの瞬間にそのモンスターは俺の懐に入り鋭そうな爪で刺そうとしていた。未遂に終わった。代わりに― 織口が左太ももを真紅に染めていた。俺は少し前の俺が嫌になった。そうだ、俺がこいつの話を信じてなかったときに、SNN値が高い人は狙われやすいの。って言ってたな。そうか、織口は今まで俺を守る為に一緒にいたのか。 そしてここに俺を連れてこようとしたのは戦わせる為じゃなく経験をつませ一人でも大丈夫なようにするためか。 今はこの推論だけでいい。俺が傷ついたやつを守る理由はそれで充分すぎる。 「大丈夫か!?いや、大丈夫じゃないな!お前は下がってろ!」 「この足で…?無茶言わないで欲しいよ。」 「じゃあここでもいい!俺が守りきってやるから3分待ってろ!」 かっこいいことを言ってみたが、どうしようか。さっきの槍をよけたのは目で追えないくらい早かった。 他のは恐らく遅いはずだ。じゃなけりゃとっくに止めを刺しにきているだろう。いけそうだ。希望が見えるぞ。 一番早い奴を倒すのが先決だ。 俺はそいつに槍を投げた。さっきよりも早く。やはりよけて俺の懐に来た。予想通りだ。 ここに来ることがわかっていたのだ。反撃は充分可能だ。俺は体から氷の槍をそいつに向けてだした。見後に命中した槍は刺さったままでしばらくしてモンスター。仮にAとしよう。Aは消えた。砂みたいだった。 さああとは2体だ。残りもB,Cとしよう。 Bはゴリラみたいな感じだ。Cは…ケンタウロスの上下反対バージョンだ。異次元はすごい所らしい…。 俺は経験が浅いことをさっき自覚したので、2体同時に攻撃が来ないようにしようと考えた。…Cからやるか。 Cの足を凍らせた後、上から槍を落とした。Cは幾分か弱かった。これで1分だ。さあ、あのゴリラだ。 ゴリラはゴリラらしいスピードで突進してきた。恐らく俺を狙っているのだろうが確証は無い。 何より、俺の後ろには俺を守って傷ついた織口がいる。絶対にどけなかった。 俺はゴリラに向かって槍を4発撃った。槍はゴリラに当たってはじけた。―最悪だ。俺の攻撃が通じない。 俺は残存エネルギーの半分を使って目の前に分厚い氷の壁を作った。 そして俺は残ったエネルギーを織口の止血に使った後、氷の槍を作った。 俺の考えた策はこうだ。 氷の壁で時間を稼ぎ、エネルギーの足りるだけ密度を高めた槍で壁を破った瞬間貫こうと。 一か八かの賭けだった。 あろうことかゴリラは地面から現れて俺を手中に収めた。最悪だ。とりあえず俺ごとでもいい、こいつを倒そう。 そう思い、槍を放った。その刹那槍は消え、俺は地面に立っていた。織口に支えられながら。 ゴリラは既に消えていた。何が起こったのか問い詰めたかったがとりあえず病院だ。血は出てないが傷は深い。 携帯で救急車を呼ぼうとして携帯をとられた。長身の男だ。その男は手をかざすと織口の傷をなくした。 直していない。なくした。 「君が堀崎睦月か。ミッションコンプリートだ。織口の傷は明日の今頃また開く。そのときには君のSNNも回復しているだろう。直してやってくれ。」 黒スーツサングラスの男の声は柔らかかった。直感的にいい人だと思った。そうしてそいつは消えた。一瞬で。 その男が言ったとおり織口は傷が開いた。水分を操作してどうにか直した。 その男の能力は多分時間に関することだと思う。昨日は織口の足をおとといの状態に戻したのだと思う。 反則的だ。 余談だが織口はあの時既に2匹倒していたそうだ。だが予想外の増援が来て既にSNNが無い状態だったらしい。 それを俺が助けたというわけだ。因みに織口の能力は光に関するものであってゴリラに俺が捕まったとき まず俺を光の速さで助け、光の速さで槍を打ち出した、というわけだ。全く、俺の能力が小さく見えるね。 俺はこいつになら心を許してもいいと思った。友としてだぞ!?おいおいおい!何だその目は!疑ってんのか!? 堀崎睦月‘STORY 4 メタモルフォーゼ このごろの俺の悩みは境遇にある。なぜならモンスター討伐の件が学校全体に知れ渡っていたからである。 今は4月の3週目の金曜日。今週の月曜に学校にビラがまかれていた。俺はそれを見て思ったね。 この学校は俺になんか恨みでもあるんじゃないのか?と、どうやらそれは思い過ごしのようであった。 だが、生徒はそれをすごい事と認識した為に俺の周りにはそのことを性質の悪いマスコミのように聞いてくる生徒が とてもうざったい。月曜から今日までの、正確には今日もだな、5日間俺には自由時間中の自由がなかった。 弁当を食おうにも話しかけてくるし、トイレにいこうにも男子生徒はついてくる。そのたびに俺はSNNで水の壁を作り、 対応している。有名人は大変だな、と共感の意を示しつつ、やはり俺はこの非日常の渦中でもなるだけ普通を貫こうとしていた。なぜ俺だけが有名人で織口は違うんだ。ああ…うらやましい。と、思ったので聞いてみた。どうやらこいつにもそういったことが有った為、SNNで光の屈折を変えて俺以外に姿を見せないようにしていたらしい。らしいというのは俺にはその作用が無いからだ。確認出来ないことは推測の域を出ないからな。 この前の2対1のSNNバトルのときに言われたオーラ、見ようと思っていたのだがいい機会が月曜に訪れた。 表彰式だ。朝会に。それも全校朝会だ。俺の気苦労を増やす一因となった。そのときに校内の人を見渡せるのはおわかりだろうか?そのとき見た光景は忘れたい。 全校生徒がオーラをまとっていた。炎の様に揺らめいているものもあれば、きちんと人の輪郭に沿ってつくオーラもあった。そして色がきつかった。オーラにはそれぞれ色がついていて性質に関する色だ。全校生徒のオーラを見た俺は月曜は再起不能となった。全校生徒がSNN能力者なんて想定外だ。 土曜日である。金曜日はやはり授業を右から左に聞き流し、弁当を掻き込み、就寝で終わった。いい日だった。 今日も織口は6時にやってきた。すげえ迷惑だ。俺が睡眠不足だと知っててこんなことをしてるんじゃなかろうかと思ってしまう。取り越し苦労だといいのだが。 まさかとは思ったが、予想通り俺に2回目の出撃指令が下った。俺の尋常なる日常よ、フォ~エバ~。 今回書かれていたのは ―今日PM5:00にモンスター発生す。討伐せよ。― ―またこの指令は堀崎睦月、七恵に向けたものである。― …この手紙の主は何か勘違いをしてないか?俺はこの年で結婚する気も無いしこの日本では法律で結婚なんて無理だ。そしてなぜ相手が織口なんだ!俺は告白もプロポーズもした覚えは無いし、これからもする予定は無い! 「あ、これお父さんからの司令だ。」 は?何だって?詳しく説明しろ。 「私にお父さんが指令を出すときは織口って書かないで七恵って書くの。なに?もしかして勘違いした?」 ああ、したよ。普通に考えてするだろう?誰もこいつの父親がSNNに関係してるとは思わないし、その父親が可愛い娘にモンスター退治をさせるとは思わないだろう? 「5時になるまで外に出てよっ?これにはどこか書かれて無いし。外にいたほうがみつけやすいしねっ!」 「おい、ちょっと待て!まだ6時半だz―」 俺は腕を引っ張られ言葉を言い終わる前に外に出た。 今日は織口と8時間半も一緒にいなきゃならんのか。嫌なことが起きそうでならない。杞憂だといいのだが。 俺の杞憂は憂鬱へとランクアップした。今日の8時間半でわかったことは、 織口は1時間に一回こけるような奴で、すれ違う男が俺を羨望と憎悪の視線で見てくることだ。 なんだか、俺だけに貧乏くじが回ってきた気がする。その見返りが朝飯(珈琲一杯とサンドイッチ一つ)と昼飯(マックでポテトMとコーラS)って言うのはどうも足りないと思うんだがね。 指定された時間に俺たちは……浜辺にいた。ここに出現する確立が高いそうだ。次元断層がとか言ってたが聞き流した。そんなこといわれたってどうしようもないしな。 来た。今度のは強そうだ。ライオンみたいなの(Aとしよう)とゴリラに翼が生えたようなの(Bとしよう)の二体だ。 俺はBをやるようにいわれた。今度のゴリラは動きが格段にすばやく、 急降下からの攻撃は威力が非常に高かった。俺の氷がはじけとんだからな。俺はまぐれで生き延びた。失禁する所だった。俺はかねてから考えていたことを実行しようと考えていた。前に俺は自分の指を無くしかけた。 それを今度はモンスターにやろうと思ったのだ。 織口はとっくにAのほうを蜂の巣にしていた。…めっちゃ怖え…。 「何やってんの。早く倒して帰るよ?」 「ちょっとやってみたいことがあるんだよ!あと話しかけんな!危ないから!」 話してるときでもお構いなしに攻撃を仕掛けてくるB。さっきからこいつ空からしか攻撃してこないな。この距離じゃ多分あいつを体の中から凍らすのは無理だな。…あ。俺、妙案思いついた。 「おい!織口!お前の力で俺をあのゴリラの背中に乗らせてくれないか!?」 俺の思いついた妙案はゴリラに0距離でSNNを使おう、といった所である。 織口は考えを読んだらしく、ベストポジションに送ってくれた。 俺はゴリラに手をかざす。ゴリラはこちらに気がついたようだが関係ない。いくら力が強かろうと内部からの破壊には耐えられないだろう。ゴリラはあえなく消えた。そして俺は重力法則にのっとって落下した。 織口は当然俺が落下時のことも考えてると思っているだろう。もちろん、考えてなどいなかった。 俺が地面まで5メートルのところで俺はいいことを思いついた。 織口は俺のSNNが無くなったと勘違いし、受け止めようと走っている。このままじゃ間に合いそうだ。 俺は織口の靴を濡らしてこけさせた。もちろん怪我しないようにコンクリを柔らかくした上でだ。 俺は地面に直撃した。地面はスライムのようにへこんで俺を包み込んだ。そして俺は徐々に軟質化を解き、 織口を立たせにいった。 「なんで私をこけさせたの?」 顔は笑っているが言葉が平坦だ。…怖いね。逃げ出したくなるよ。しかも初めからばれていたとは。 「やっぱ驚かせようとしたのよね?」 俺は残ったエネルギーで自身を氷の玉で覆った。呼吸は水を操ればいい。また光によって壊されないようにプリズムのような作りにした。完璧だ、明日まで持つ。…俺よく考えたら逃げられるわけ無いじゃん。篭城なんてするんじゃなかった。 「大丈夫かね。七恵。」 この前と同じ声だ。うん?七恵?『私にお父さんが指令を出すときは織口って書かないで七恵って書くの。』 って言ってたけどまさか…いや…。まさか…。呼ぶときは…そうだよな名前だよな…。 「睦月くん。氷を解きなさい。どうしようもないことはわかっているだろう?」 俺は氷を解いた。織口は怒っているようだ。ああ…後が怖い。もう一人は前と同じ姿の男だった。 「君が睦月くんだね。前は失礼した。改めて初めまして。」 「初めまして、お名前を教えてもらえませんか?」 そうだ。俺は織口の父に会うことは一生無いと思っていた。会いたくない…。 「何言ってんのよ!この人は私のパパなの!見てわからない!?」 わからん。そんな黒スーツサングラスの人の人相がわかるなら俺はそいつをFBIに送るね。 「七恵、それぐらいにしておきなさい。ところで睦月くん。」 「はい。何でしょう。」 一体なんだ。なにを俺に問うんだ。頼むから頼みごとはよしてくれよ。 「七恵とはどこまでいったんだね?」 …予想よりも悪いことを言われた。 「場所ですか?」 とぼけてみる。 「君はこの可愛い娘と7日間一緒にいて何もしなかったのかい?」 断じてしてません。何かしてほしかった、みたいな口調だがどうでもいい。俺は欲求より理性を優先できる人なんです。別に織口さんが可愛くないというわけじゃないんです。充分魅力的ですよ? 「なんだ…まだか…。」 織口父はすこぶる残念そうにいった。俺はなんだか馬鹿にされた気持ちになった。 「話が変わるが二人とも、今日の敵はなんだか強くはなかったかい?」 強かったと思う。織口もうなずいている。 「実を言うとね、さっき出てきたのが異次元世界では下の存在になってしまったんだよ。」 ということは…もっと強いのがこれからは来るのか?いや、前より来る頻度は減るはずだ。ランクが下がったということは前の上よりも強いのが生まれたということだ。そう強いのは多くはいないだろう。勘だけどな。 「君は事態をつかめて無いね。いいだろう教えてあげよう。今までのモンスターは上のみが知能を有していたんだ。 上中下全てのモンスターは全て同じ数がいるんだ。今は上、中ともに知能を有していることになる。いいね?」 はい。理解しましたが― 「質問は後にしてくれるかな。七恵に教えた情報ではモンスターがこっちに来るのは偶然だといったはずだ。 でもその理由が昨日わかったんだ。昨日SNN能力者が上のモンスターを捕まえて、そのモンスターが言ったんだ。 『我々はこの次元を征服しなければならない。でなければ―』のところで息絶えたんだ。 そしてSNN能力の相手のランクが変動したんだ。次からは相手の攻撃も戦略的になってくるんだ。」 はい。まさかそれで気をつけて。だけなんてことはありませんよね? 「ああ、ないよ。その対策として次からフォーマンセルに変えることにした。本来なら4人で同じ家に住んで欲しいとこなんだが、七恵と睦月くんは2人でも大丈夫だろうと思ってね。そのまんまにしておいたからね。」 この人は俺に何を期待しているんだ…。わからなくもないが、俺は…わかってくれないな…。 …フォーマンセルといっていたな。相手は誰だろうか。強いと楽が出来そうだが。 あ!ちょっと待て織口父!七恵さんを連れて帰らないんですか!? 「お返しは家でね。」 このことも含めて連れ帰って欲しかった。俺はまだ死にたくな― ~俺の家~ 「わかった!謝る!ちょっやめろっ本当に悪かったって思ってるから!」 「へぇ~。じゃあ何で私を連れ帰って欲しかったわけ?逃げたいからよね?」 「うっ、それも含めて悪かった!」 何のことは無い。俺がチョークスリーパーをかけられているだけだ。いつもよりきつめに。 「それよりもさ、お前の父親いい人だな。」 「え!?う、うん!」 話題転換成功!我奇襲に成功せり! 「ついに質問はさせてもらえなかったがな。」 「私の父さんは忙しいのよ…。SNN能力者はまだ数が少ないから結構多忙なの。多分今頃も会議中ね。」 「お前の父親は何をしているんだ?」 「詳しくは知らないけど、学校の職員よ。」 俺は半ば呆れつつも織口を振り払いベッドに入った。 「鍵は玄関ポストに入れといてくれ。」 といって意識を消した。織口が何か言っていた気がしたが聞き流した。 PM8:30起床 腹が減って起きてしまった。いいにおいがする…。さてはまだ織口がいるな?俺は寝たふりを敢行することにした。 ぐぅ~ …まだ耐えるぞ。 ぐぎゅぅるるるるる …まだだ。 …やっぱ無理だ。 「ダアッ!!!」 「ひゃっ!」 俺の分ねえのかよ…。何こいつは人様の家で人様の家の食材を使って料理なんか作ってるんだ。 …すげえうまそう。多分これも仕返しだな…。 「何?食べたいの?」 「いや。腹は減っているがお前の分しかないのならしょうがない。ちょっとコンビニ行って弁当買ってくる。」 そういって俺は俺の腹が降伏声明をあげる前に家を出た。 俺の家は立地条件は良いのだがコンビニは無い。おかげで柄の悪いのが集まりにくいのだが。 そう。俺は今日は晩飯抜きである。健全なる高校1年生には大分きつい仕返しである。 俺はふらふらと街を彷徨っていた。そこで目に入ったアクセサリーが妙に気になった。恐らく9時過ぎである。 俺は公園のベンチに座って短い高校生活を早々に思い返していた。 高校に入ってはじめて話しかけてきて友達になったこと。意味不明な説明を受けて苦渋の選択をした日。 今まで飯作ってくれたこと。話し相手になってくれたこと。 …織口のことばっかじゃねーか。考えてみるとずいぶんと借りがあるな。 ふとあのアクセサリーを思い出した。あれを買ってやろう。 そのアクセサリーは金属で出来たネックレスタイプの十字架であり、親指ほどの大きさである。 その真ん中には黄色の透明の珠が入っているものと青いものがあった。 ペアで5000円、単品4000円。この店はどういうこった。本当は一個2000円くらいじゃないのか? 俺は買った。ペアで。ペアのことは織口には教えない。そういうことは恋人同士でやるものだろう。俺と織口は今もこれからも、そんな関係になるつもりは無い。少なくとも俺は。 色々考えていると10時になっていた。 俺の家には電気が点いていた。 「ただいま…。」 織口は寝ていた。俺のベッドで堂々と寝ていた。起こすのもかわいそうなので起こさないようにネックレスをかけてやることにした。こいつ髪が長くてかけづらいな。 苦闘すること5分かけてやることに成功した。織口は起きてない。今日の俺はパーフェクトだな。 あ、あと2時間で今日の俺よフォ~エバ~。 俺は今日は床で寝ることとなった。この状態でベッドに入って織口と一緒に寝ようものなら俺は前科を持つことになるだろう。俺はこの年で将来を捨てる気は無い。俺が明日風邪を、流行性感冒症にかからないことを祈る。 堀崎睦月‘S STORY 5 絶対的な差 4月の最終週の水曜日俺たちは楓さんの家にいった。俺はそこで忘れもしない、忘れたいことが起こった。 そこでのことは希望があれば、希望がなくても時間があったらUPするから割愛させてくれ。頼むから。 そして土曜日、今日も依頼書は来ていた。場所が指定されている。でも紙が今までとは色が違う。 「あれ?なんでだろう?」 織口さえ知らないとは。一体なんだ。不幸の手紙か? 俺の勘は実際当たったわけだが。 書かれていた指定地は市街地の交差点だった。これは人目についてもいいのか?と思いつつも朝食を久しぶりに 悠々と食べる俺。こんな風に毎日いられたら。それにしても織口の作る飯は旨い。俺よりは劣るが。 予定時間は6時だった。恐らく夕方の。 そしてその下に12時半にティレーズカフェの前に来い。と書かれていた。 ティレーズカフェは学校に一番近い喫茶店である。要するに電車に乗らないといけないということだ。 それまで俺たちは暇なので高校の課題をやることにした。課題というのは金曜日に出されたもので、 もし織口が終わっていようものなら俺は織口は未来から来た人造人間の説を浮上させるね。 「なあ織口。」 「何?今この問題解くのに忙しいんだけどね?」 「俺たちの高校ってさ、SNN使えりゃはいれんだろ?じゃあSNN使えても学力がなかったりしたらどうなるんだ?」 「落ちるだけよ?」 おい。お前の父さんは人材不足で忙しいんじゃないのか? 「あのね。使えない人材がSNN使えても戦力にはならないの。戦力にならない戦士は戦場では枷にしかならない。 なら最初からいないほうがいい。でしょ?」 そうだな。織口そこ間違ってるぞ。そこはBの式を使うんだ。 「え?あ、ホントだ!ありがとねっ。」 これで俺たちがSNNなどもっていなかったら夢のようなんだが…。そこはギブアンドテイクか…人生甘くねぇ…。 俺たちの課題は1時間で終わった。ほぼ俺のおかげだ。 「何で授業中寝てるのにそんなにわかるの?」 潜在的な能力だ。嫌味ではないぞ。昔からだ。 「睦月、勉強教えろ~。」 なんで俺が?他にもいるだろう?楓さんとか。あの人は結構頭よさそうだぞ。 「だって私はここにいるんだよ?わざわざ行くのめんどくさいじゃん!それに、また、あんなことになったらね…。」 それは禁句だ。胸の中にしまっておけ。そうだな、わかった。教えてやるよ。時給300円でな。 「金取るの?」 ああ、それがどうした。おい。涙目で上目遣いになってもこれだけは譲らんぞ。おい、まて、しがみつくな。 止めなさい。ちょっとま―大外狩り!?グハァッ。そのままチョーク!?死ぬ!止めろ…。 そんなことをしていたら12時半になっていて慌ててティレーズカフェに行った。光の速さで。 喫茶店の中に二人がいたのが見えたと伝えたら、織口がまたワープさせやがった。ウッ、エイリアンでそう。 「時間ぴったりですね。全くすごいですね。こんなに律儀な人は見たことがありませんね。」 「おかげでこっちは舟に乗ったわけでも無いのに酔ったがな。」 楓さんは俺たちの会話が終わるのを見計らって。 「今日のモンスターはずいぶんと強いのが来るらしいの。紙の色がちがかったでしょう?」 …嫌な予感は当たることがわかった。 「まだ確証は持ってませんがね。」 おお、希望が見えてきた。音咲お前いい奴だな。 「でもやはり、その可能性が高いですね。」 やっぱりこいつは嫌な奴だ。持ち上げて突き落とす。どっかの黄色いカエルみたいな事をするな! 「そんなことよりも何で二人がここに?」 そうだな。お前のおかげでやっと話が進む。心の中だけで感謝しておいてやるよ。 「手紙をお見せしましょう。これで全部わかると思います。」 ―指令― 今日12時半にティレーズカフェに来たれり。 その後は行動を共にし、モンスターを4人で殲滅せよ。 「わかりましたか?」 ああ、じゃあこれからどうする?俺はここにずっといるのはどうかと思うが。 「私としては買い物に行きたいかな。」 織口である。 「僕もそれでいいと思いますよ。」 「私もそれで。」 おい。お前らに希望は無いのか?と聞こうと思ったが止めた。俺にも無いからだ。 まあ俺も異論は無いのでついていくことにした。 俺たちはカフェをあとにした。それからはお決まりの街をふらふらしていた。 6時である。俺たちは指定された交差点にいる。 なんとそこにいったら黒スーツの人がいた。織口父ではなかった。 「時間通りだな。よし、いって来い。」 黒スーツの男が言うと俺たちはバトルをするときの空間にいた。まあ、戦闘で街を壊すわけにはいかないしな。 しばらくすると人型のモンスターが現れた。 モンスターだと断言できるのはそいつがトラックをこっちに向かって投げてきたからだ。人間技じゃない。 そのモンスターは紫色の服を纏っていて腰には日本刀だか両刃の剣かわからないような剣が携えてあった。 髪は黄色く、目は黒がなかった。水色に翠を混ぜたような色だった。 「お前らか。SNN能力者ってのは。」 モンスターはしゃべりだした。わざわざ日本語で。まあ異次元語で話されても困るけどな。 「ああ、そうだ。初めまして、堀崎―」 「名前はいい。俺はお前らを殺しに来たんだ。勝負しに来たわけじゃない。」 俺たちは俺以外身構えていた。え?何?ちょっと!何放置してんの? そのモンスター(Aとしよう)は時速110KMほどのスピードでこちらに来た。 俺はとっさに氷の壁を作り相手を阻もうとした。相手は剣を抜くこともなく拳で壁を壊した。 マジか。と思ったときには楓さんの炎がAに向かって放たれていた。 その炎は矢のように鋭くあたったらひとたまりも無いんじゃないのかと思うほどの勢いで飛んでいった。 その矢は見事に当たった。Aの右肩に矢は立っている。様に見えただけで刺さっていなかった。 矢はAに全く効かなかった。俺が直接凍らせるという手もあるが、それは最終手段だ。 織口は力を溜めている様子で恐らくでかいのを当てるつもりだろう。必死になって音咲が近づいてきたAを異次元に入れようとしながら守っている。俺もいくか。 俺は織口のそばに行き氷の壁を最高密度で作った。楓さんも矢を撃つことを止めSNNエネルギーを織口に譲渡している。多分SNNは思いつく限りのことが出来るのだろうと思った。 「チャージ完了!織口ビーム撃つよッ!軌道補正よろしくねっ!」 俺はAの脚を凍らせて地面に吸着させた。音咲は異次元空間からビームをワープさせた。 Aは真横からビームを食らった。ズゴオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!爆音が響き、煙が舞い上がる。 なんかこいつ織口ビームにやられてかわいそうだな。と考えていると Aは生きていた。無傷で。Aは直前で剣を抜き、ガードしたようだ。 「なんだこのカスみたいな攻撃は?ホントに全力か?SNN能力者ってのはこんなに弱いのか?」 マジかよ。こいつ強すぎだろ。一体何食ったらそんなに強くなれんだよ。 「はは…。もう何も出来ないよ…。」 「私も…同感ね…。」 「僕もあと一回分かな…。」 今までで一番やばいんじゃないのか?皆諦めかけている。 俺はあと75%はエネルギーがある。それでもこいつの強さじゃ届かないだろうな。 足止めくらいなら出来そうだ。いっそ音咲の力で逃げてしまおうか。 いや、それはいけない。俺が逃げるってことは俺以外の誰かが傷つくんだ。 俺は傷つけるのも傷つけられるのも嫌だ。ましてや他人が傷つく所を見るのはもっと嫌だ。 ならやることは一つだ。 「音咲。織口と楓さんをつれて逃げてくれ。このままここにいたらお前らまで巻き込みかねない。」 ハッタリを言ってみる。信じてくれればいいんだが。 織口は信じたようだ。楓さんは俺に 「死なないでね。」 と囁いて、音咲は 「またあなたの作る料理が食べたいですね。」 俺以外の人はこの空間にいなくなった。 「逃がしてよかったのか?」 俺はAに聞いた。もしこいつがSNN能力者を殺す為に来たのなら逃がさないはずだからな。 「ああ、よかった。あの中では一番お前が強いらしいな。俺は強い奴を殺しに来たんだ。」 お前らをって言ったのに。…俺ヤベェ。 「俺の名はアルガエス。向こうの世界では悪夢って意味だ。俺はお前らの言うとこの中ランクだ。」 「なぜお前は俺にそんなことを教えたんだ?」 「お前を生きて帰す理由を消す為だ!!!」 アルガエスは剣を構え、縦に振った。剣から衝撃がでて俺のほうに飛んでくるではないか! 俺は壁を作るでもなく避けた。恐らく砕かれるからだ。 「そんなもの使ってもあたるわけねえだろ。」 俺にはやはり直接凍らせるしか手立てはない。挑発するしかない! 「じゃあこれは、」 といった瞬間アルガエスは消えた。と思ったら俺の後ろにいた。剣を振りかぶっている。 「どうだ!!!!?」 もうだめだ!って相手とほぼ0距離だ!賭けるしかないのかよ! 俺は切られるが先か凍らせるが先かの瞬間に能力を使った。そこで俺の意識は途絶えた。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: