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卑怯だッ! ◆jVERyrq1dU





 なんてこったい……まさかこんな馬鹿げたゲームに巻き込まれるとは思わなかった。
 一人しか生き残れない殺し合いなんて、よくそんな恐ろしいゲームを考え付くもんだ。
 それにしてもどうして俺みたいな何の変哲もない一般人が……
 俺はとあるバラエティ番組の【はっぱ隊】なるコント集団を愛してやまない、という以外は何の変哲もない一般人だって言うのに…… 

 ってよく見ると俺の格好がはっぱ隊員バージョンのままじゃないか!
 どうしようか。このままだと何も知らない人から見れば変態以外の何物でもない。
 でも、大好きなはっぱ隊員として死ねるなら、案外嬉しいかもしれないな。

 ついつい落ち込みそうになる気持ちをはっぱ隊魂で強引に持ち上げ、俺は辺りを見回してみる。
 民家がちらほらと見え、さらに四方を森に囲まれている所から考えるに、どうやらここはF-5の寒村のようだ。

「うわっ……」

 民家の影から突然出てきた男が俺を見るなりそう言った。
 青い髪、そして白っぽい服を纏った20歳前後の男は引いた視線を俺に投げかけてくる。
 俺は極力平静を崩さず、男に笑顔を向けつつ、挨拶として手を軽く上げた。

「や、やあ」
「う……うん」
 引いてる……完全に引いてる。いつもならこの衣装の素晴らしさをこれでもかと言うほど語るはずだけど、
 さすがにこの状況でそんな事が出来るわけがない。語り尽くせない。

「き、君は殺し合いになんか乗らないよね?」
「の、乗らない……そんなの絶対乗らない!……お前は乗ってるのか!?」
 男はかなり狼狽しているようだ。殺し合いで最初に会った人が俺だもんな、無理もない。
 俺はなるべく柔和な表情を作ろうと努めた。
「乗ってないよ。俺は……そうだな、はっぱ隊員と呼んでくれよ。君の名前は?」
「カ……カイトだ!」
「カイトさんか……とりあえず、一緒に行動してくれないかな。
 本当に殺し合いに乗っている人なんていないかもしれないけど、一人でいるのはやっぱり危険そうだし」

 俺は手を差し伸べる。カイトは今にも泣きだしそうな表情で俺の顔を何度も見て、そして縋るように俺の手を両手で握り締めた。

「うぅ……俺は死にたくない。絶対死にたくない……
 こんな訳の分からないところで死んでたまるかよ……」
「大丈夫だって。俺も不安だけど、こういう時にはプラス思考さ!
 なんとかしてYATTA!って言えるように俺達で頑張ろうぜ」
 カイトが滲んだ涙を服の袖で拭いて、さらに強く強く俺の手を握りしめた。
 しばらくの間、その状態が続き、カイトは漸く手を離し、立ち上がった。

「すまない……ちょっと慌ててた。なにせこの状況だから、つい混乱してしまって……」
「これから頑張れば大丈夫だって。怖いのは誰だって同じだ」
 カイトがぼーっと俺を眺める。なんなのだろうか。
「あんた……いい奴だな。こんな状況なのに、はっぱ1枚しかないのに、凄く前向きだ」
「はっぱ1枚あればいい。生きているからラッキーなんだよ」
「…………」

 カイトにとてつもない日本のはっぱ隊について事細かに説明してやりたい衝動に駆られるけど、ここは我慢だ。
 何時間もかけないと、とてもじゃないけど語り尽くせないからな。

「支給品を確認してみよう。カイトは済んでる?」
「いや、まだだ」
 俺達はデイパックを弄り、中に入っているランダム支給品なるものを取り出す。

俺の支給品は
  • ハンバーガー4個分
  • クレイモア地雷5個

カイトの支給品は
  • ベレッタ
  • 必須アモト酸(瓶入り)

「なんでハンバーガー……どうやってこれで殺し合うんだよ」
「隊員。この必須アモト酸って薬品……飲んだら頭がパーンと爆発するらしい……恐ろしい」
 とりあえず自衛で使えそうなのは、カイトのベレッタと俺のクレイモア地雷ぐらいだ。
 必須アモト酸は使い難いな。

「隊員……俺、この周りにクレイモア地雷をセットしてくる……」
「!? なんでだよ。誰も近寄れなくなるだろ?」
「とりあえずこれからの方針を話し合うんだ。話し合ってる間に殺し合いに乗っている奴が襲ってきたらどうする?」
「話し合いなんて歩きながらでも……」
「駄目だ。拠点を決めて慎重に……慎重にいかないとももし何かあって死んでしまったら……」
 不安そうなカイト。もし殺し合いに乗っていない人がクレイモアにかかってしまったらどうする気なのだろうか。
 それにこれからの方針なんて速攻で決まると思うけど……

「やっぱりいいよ。地雷をセットするのは手間がかかる。大丈夫だってきっと何とかなる」
「駄目だ。こればかりは譲れない。俺は安全を確保しようとしているんだぞ。
 反対する理由がどこにあるっていうんだ」
 その後、俺は何度も反論を試みたが、カイトは一向に受け入れてくれない。
 頑として譲らない彼の態度に、ついに俺は折れてしまった。

「い、言いだしっぺだから俺がクレイモアを仕掛けるよ。あんたは辺りを見張っていてくれ。
 ぜ、絶対に俺を置いて逃げたりしないでくれよ……いいな?絶対だからな!絶対に逃げるなよ!」
 これって所謂フリなのか?

 カイトはクレイモアの入った俺のデイパックを抱え、そしてベレッタを握りしめて茂みへと向かう。
 足もとが酷く覚束ない。見ているこっちがひやひやしてしまう。
 なんだかカイトがどんな人間なのか分かってきた気がする。

 まあ、はっぱ隊の教えを知らない普通の人が突然殺し合いに放り込まれたら、こうなるのも仕方ないかな……

 あ、そういえばデイパックごとカイトに渡したから今の俺は手ぶらだ。
 本当にはっぱ1枚しかなくなってしまった。このタイミングで殺人鬼に襲われたらひとたまりもないだろうな。
 ま、そんな事はありえない。こんな都合いいタイミングで悪漢が登場なんてそんな漫画みたいな事起こるわけが────


「この変態野郎が死ィィイねぇぇええええええええぇえぇえええええぇえええ!!!!1」


 ってあっれええええええええええええええええええええええええ!?
 背後から聞こえる男の凄まじい大音量に、俺の脳内はアフターザフェスティバル。
 滝のような冷や汗を流しつつ、俺はちらりと後方を見やる。
 抜き身の刀を握りしめた外国人眼鏡少年がそこに立っていた。俺を睨みつけて、今にも飛びかかってきそうだ。

「あ、あんたゲームに乗ってるのかよ!?」
「ああん!!?優勝しないと生還出来ないなら乗って当り前だろうがァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!1」

 やばい。こいつはやばい。やばいって形容詞じゃ表現しきれないレベルのやばさだ。
 なんつったって俺の手元には今何もない。はっぱ1枚あればいいとか言っている余裕なんて全くない。
 希望もない。夢もない。あるわけない。ないないづくしのこの俺にどうやってこのピンチを乗り切れと!?

 慌てる俺の視界の端で、茂みの中いそいそとクレイモアを仕掛けるカイトの姿が映った。
 そうだ!カイトを呼べば────

「おい、助けてくれえ!!」

 カイトはマッハのスピードでこちらに青ざめた顔を向ける。良かった。カイトはベレッタを持っている。
 きっと助けてくれるはず……ってあっれえええええええええええええええええええ!!!

 なんとカイトはそのまま逃げ出してしまった。
 俺のデイパックを持ったまま、振り返るそぶりを毛ほども見せず全力疾走で逃げていく。
 唖然としている間にカイトの姿は森の中へと消えてしまった。

 そんな馬鹿な!ありえない!
 しかもあいつ俺のデイパックをそのまま持って行きやがった!

「ひ、卑怯だッ!」
「( ゚∀゚)アハハハ八八八ノ ヽノ ヽノ ヽ/ \/ \/ \ あーおっかしwwwwwww」
 少年は逃げて行ったカイトを見て大笑いする。もうカイトは消えてしまったので、俺には仲間がいない。
 俺は……このまま死んでしまうのか?はっぱ一枚しかない状態でどうやって刀に立ち向かえと?

「どうして、どうしてこんな馬鹿げた殺し合いに乗るんだ!みんなでなんとか頑張ればきっと……!」
 俺は最後の希望を込めて、少年に向かって叫ぶ。
 少年は俺の言葉を聞いた途端に眉間に皺を寄せ、相変わらずの大音声で叫んだ。

「ああん!!!?んなわけないだろうがぁぁあああああああああ!!!!!
 現実逃避するなぁあ!!!こうなったからには優勝するしかないだろうがぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!1!1!
 俺は優勝して、天皇陛下を本気で万歳するために日本国籍を手に入れ、生還するんだァッ!!!!!!!1
 というわけで死ィィねぇええええええええええええええええええええ!!!1!1!!!1!!」

 そんな馬鹿な話があるか……
 どうすればいいんだ……考えろ、考えろよ俺。 はっぱ隊の底力をこいつに……!
 俺が憧れるとてつもない日本のはっぱ隊……どんな時でも前向きにポジティブに!

「イスラエルにトルネードスピィィィィンンンンンンッッッ!!!11!」

 少年が恐ろしいまでの速度で回転しながら、俺に切りつけてきた。
 人間とは思えない速度、俺は完全に意表を突かれた。だが、ここで諦めないのが、はっぱ隊。
 殺し合いをぶっ潰してYATTA!って叫ぶんだ!絶対に!

 俺は地面を蹴り、回避運動に移る。少年の回転切りが迫る。
 避けきれないか?いや、きっとなんとか、諦めない者には奇跡が────

 願いとは裏腹に、俺の首に刀の切っ先が迫る。俺は咄嗟に腕で防御するが、何の意味もない。
 腕は飛ばされ、刀の勢いはなおも止まらない。そのまま俺の首へと切っ先が迫り、喉元を激しい痛みが走る。
 声を出そうとしたが、何も出てこない。足にも力が入らなくなり、俺は両ひざを地に着く。
 首からの出血が止まらない。

 嘘だろ?ポジティブに生きれば、前向きに生きればきっとどんな苦境に立たされようと、打開できる。
 それなのに────

「( ゚∀゚)アハハハ八八八ノ ヽノ ヽノ ヽ/ \/ \/ \  天皇陛下バンザイィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」

 俺が最後に知覚したのは、地に伏した俺の前で、雄叫びをあげる少年の姿だった。

【はっぱ隊員@とてつもない日本のはっぱ隊 死亡】

【F-5 寒村/深夜】
【キーボードクラッシャー@キーボードクラッシャー】
[状態]:健康
[装備]:無限刃@るろうに剣心
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・状況]
1:優勝して日本国籍を手に入れる
 殺し合い打倒するとか現実逃避してんじゃねええええええええええええええええええ!!!!


 カイトは走る。一目散に脇目も振らず、ただただひたすらに足を運動させる。
 森を抜け、寒村から遠く離れた所で、彼は漸く一息吐いた。ぜえぜえと息切れして、進行方向とは反対の、寒村がある方向に目をやる。
 隊員はどうなったのだろうか。助けて、と叫んでいたのだから、あのやかましい眼鏡少年は恐らくゲームに乗っているのだろう。
 カイトは心臓に手を当て、呼吸を整える。

 やはり罪悪感は少なからずある。隊員が心配でないわけがない。
 だが仕方がない。あのままあそこにいたのでは、カイトも死んでいたかもしれない。
 2人纏めて死ぬよりは、どちらかが生き残った方がいいに決まっている。

(俺は悪くない……隊員には悪い事をしてしまったけど、仕方がないもんな。
 命がかかっているんだ……自分の命が一番大切なのに決まっているじゃないか。
 俺は何も間違っちゃいない……)

 カイトは歩きだす。なるべく寒村から離れて、人が少なそうな所へ行こう。
 俺は死にたくない。卑怯だろうがなんだろうが、死んでしまったらお終いだ。

 ────俺は悪くない。あれは仕方なかった。

 カイトは最後にもう一度、寒村の方へと視線を移す。

「出来れば、生きていてくれ……あんたのポジティブさ、俺は嫌いじゃなかった」


【F-4 平地/深夜】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタ(残弾数11/11)@現実
[道具]:支給品一式×2 ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタルギアソリッド
    必須アモト酸@必須アモト酸
[思考・状況]
1:死 に た く な い
2:生きるためなら例え卑怯な事をしても許されるはずだ


【必須アモト酸@必須アモト酸】
飲むと頭がパーン\(^o^)/と爆発してしまう薬品

【ハンバーガー@マクドナルド】
2枚のパンにハンバーグを挟んだ食べ物
分からない人は近所のマクドナルド行ったら売ってくれます



sm17:危険値大上昇中☆ 時系列順 sm19:無知・無名
sm17:危険値大上昇中☆ 投下順 sm19:無知・無名
はっぱ隊員 死亡
キーボードクラッシャー sm34:熱き血潮に
KAITO sm66:アレックスに主人公をさせてみた(前編)






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