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少し頭冷やそうか(強行編) ◆WWhm8QVzK6












「そうか」


――俺はきっと無表情でそう言った。
32人。そう、32人だ。
残りはたったこれだけしかいない。
見知らぬ誰か達は飽きることなく殺し合いを続けているようだ。
奴の言うとおり殺る気満々な奴がいるのかもしれないが。

それは、なんて無様な――。

何故、生きる努力をしない。
どうして自己保身をしない。

この殺し合いの参加者のするべきことは殺し合いだけじゃない。
生き残ること。これこそが重要だというのに。
どうして、大量発生して錯乱したレミングのように自ら死にに行くんだ。

おおよそ俺には理解できない。
死にたくないのなら、生きるべきじゃないのか。

「それとも、諦めのいい奴が多いのかもな」

俺としては勝手に殺し合ってくれた方が助かる。
一つ一つは繋ぎ合わさって連鎖となり、さらに拡大されるのだろう。
みんなで広げよう殺戮の輪。…入りたくねえけどな。

死人はどんどん増えてくれて構わない。
禁止エリアもかろうじて外れてるし、大した問題ではない。

しかし、気になることが一つだけあった。

カチ、かち。

カチ、カチ。

カチ。


「…うむ」

スイッチを入れる音と切る音が交互に響く。
液晶のディスプレイに映る映像を視ながら、回転椅子をくるくると回す。
気分はさながらメリーゴーラウンド、な訳ない。どっちかと言えばコーヒーカップか。

「さて、どうするか……」

画面に映る一点の光。
それが俺の最大の懸念事項だった。


             ◆◆◆


今更ながら、少人数での籠城には欠点がある。
簡潔に言えば、情報が集められないということだ。
運よく特定の情報でのアドバンテージはあるものの、参加者の相互関係、スタンスの把握においては明らかに劣る。
いずれは出会わねばならないのだから相手の素性くらいは把握しておきたいものだ。
そうでないと、前述の奴に話しかけることになりかねない。
だから、最低でも一人か二人は会っておきたいのだが……誰も来ないし。
それはいいことなのだろうが、ここまで来る気配がないというのも考えものかもしれない。
来ないのは仕方ない、仕方ないけど。

ところで、B-2に映る点。
どう見てもヒキコモリですありがとうございました。
人の事はいえないがそんなのはどうだっていい。

賢明な判断だと思うよ?
あれだけの家があれば意図的に探し出すことはほぼ不可能に近いし
力がなくて単独行動なら間違いなくそうするだろうな。
てか、動いてる奴の神経を疑いたいね。それとも非力な奴はあらかた死んだということだろうか?
こいつはいい判断をしていると思う。

けど俺に見つかっているのが運のツキだ。
これからもこいつは動かないだろうし、他の奴にも見つかりはしないだろう。
なら、こっちから出会ってやるまでのこと。
見つけた以上は思い通りには動かせてはやらない。

それにそろそろ探知機の寿命が半分に近づいてきたし。
余計な観察を減らすために越したことはない。
しばらく考えて、外に出ることにした。


カツコツと、ブーツが床を叩く音が響く。
無機質な雰囲気で囲まれたフロアは、昼間とは違い言いようのない不気味さを感じさせる。
静かだ。誰かの寝息しか聞こえない。
いい加減起こさないとな。

まあまあ良く寝ていらっしゃる。
えーと、かれこれ2、3時間以上か?
こんなにも無防備だとヤられても文句言えないな。

「おい、起きろ」

「ぅ……ん…、あと3分」

定型文みたいなセリフ吐きやがった。
構わず起こすけどな。

「おい」

「ふぁ?……――!!」

少々小突いたら起きた。
それはもう凄い勢いで。思わず顔面がぶつかるところだった。危ない危ない。

「あ!?え?え……もう夜?…まさか……!!」

「ああ、残念ながら聞き逃したようだ」

「ご、ごめんなさい!!ちょっと寝るつもりだったんだけど……」

「聞いてなかったのは、お前だけだから」

「え?……あ、ああ…そうなんだ……」

「幸いここは禁止エリアにならずに済んだ。当面は問題ないだろう」

「そうですかぁ…よかった」

多分次かその次くらいには入るかもしれないが。
その時には残り人数は20人を切っているだろうから本格的に動けるはずだ。
20人とは言ったが、別にその人数が多少上下しようとも構わない。
今からするように、俺の行動もあるわけだし。

「目は覚めたな」

「はい」

「じゃあここを出るぞ」

「え!?」

いちいち驚かれても困るんだが……。

「出張だ出張。しばらく離れるだけだ」

「でもそれじゃあ、誰もいなくなっちゃいますけど……」

「来るやつはいない。これから向かう所以外にいる奴は最低でも3kmは離れている。時間にも余裕はあるだろうよ。
 それに……鍵は閉めていくし」


                   ◆◆◆


室内は全て消灯された。
電気の消えたビルはさながら真っ黒な箱の様で、周りに電灯がないのがそれをさらに際立たせる。
非常階段から裏口を出て、ぐるりと正面ドアに回り込む。
ちなみに、開く扉は正面の自動ドアだけだ。そして一面に張られた水。
微かに、パチパチという音が聞こえる。
仮にゴム靴を履いてるやつが侵入したところでシャッターも閉まっている。
どのみち、ビルの中には誰も入れないようなものだ。

入れるのは、鍵を持つ人間のみ。

……

視界には闇しか映らない。
月はまだ低く、反射される光はまだあまり意味をなしていない。
気の利いた街灯も全く立っておらず、何故こんな所にビルがあるのか理解しようがない。
山奥に六本木ヒルズを建てるようなものだ。でもそれはそれで地域活性化が期待……出来そうにない。

「少し……怖いです」

「何度も言うがな、奇襲の心配は無用だ」

「いえ、そうじゃなくて、周りの雰囲気が」

ああ、そういう。
確かに生物の気配が全く感じられないというのは不気味極まるものだ。
虫の声すらしないのだから。
たとえこれらの植物が本物だとしても、作りものとしか思えない。そんな感じだった。
ジオラマの世界を歩き続ける。たまに吹き付ける風がうっとおしい。

会話も殆んどなく、歩き続けること数十分。
ようやく住宅街へと入った。ここら辺で街灯が規則的に立っている。
ここから概算で400m。先に、目的の奴がいるはずだ。
確認。
うん、やっぱり動いていない。
このまま進攻してもいいかもしれないが、今は、やっておきたいことがいくつかあったのだ。


                 ◆◆◆


経過30分。
標的が潜む家の向かいから5軒右隣の家に俺達はいた。
ここまで時間がかかったのは、単に道草食ってたからだ。
武器調達、道具調達etc……。ちなみに確認してわかったのだがどこの家も鍵がかかっていなかった。
しかし中の家具や小物はどこか使われていた様子を思わせる。謎だ。
それにしても、暗がりの中で男女共にいるというのは……別に変ったシチュエーションではないだろう。

「向こうも明かり、点けてませんね」

「相手もそこら辺は用心してるみたいだな」

今のところこちらの存在が気付かれている様子はない。
しかし相手が何らかの方法で(挙げるとキリがない)察知していた場合、はなからこの計画は台無しだ。
それを憂慮したところで、何も変わりはしないのだが。

「まあ、とりあえず俺が家に入ったらお前は待っておけ。先に俺が調べてくる」

「待っておくだけでいいんですか?」

「……そうだな。もし、俺が出てこなかったら――その時は自分でどうすべきか考えろ」

異論を挙げられる前に外に出る。
そんな声はなかったのだが。
……もうちょっと何かあってもいいんじゃないかい?


ひっそりと、音を立てずに壁伝いに道を進む。
重要なのは音を立てないことより見つからないことなのだが、そこは雰囲気の問題だ。
ゆっくりと、素早く。
こういった侵入時の緊張はいつもながら―――――――?――慣れるものではない。
相手の力量も測りがたいものだ。
軍人クラスが銃で武装していたら正面からでは無傷で済む可能性はかなり低い。
なるべく被害を最小限に留めるならばやはりいつも通り――違ぅ―でいいだろう。
家の内部構造がわからないので地の利はあまり良くない。
だからと言ってここで引き返すのも癪な話だ。ビビったままでは事態は進まない。
此処は前進あるのみだ。

目標がいる家の前にきた。
門灯も点いていない。窓と玄関は正面。ガレージは向かって右側にあり、左側にベランダがある。
こう言う場合はどうやって入るかはだいたい決まってくる。
アレだな。住宅街ってのは、家が密集しすぎなんだよ。
一般人にしては十分な間隔なんでしょうがね。
ということで、俺は五軒隣の家に入ったのだ。
あくまでも万全を期して。気付かれてたらただのピエロだが。

そして、五軒隣の屋根の上。
構造によってまちまちだが、家々の間の距離は4メートルくらい。
…どうやって屋根に昇ったかって?野暮なことは聞くだけ無駄なのさ。

ホップ、ステップ、ジャンプっと。

屋根を飛び継いで、着地。
起こした音に心配する必要はない。
あちらから見えていない限り、気づかれることも無いのだから。
だが、ここからが正念場だ。
さらにベランダに着地。
カーテンで窓の中、もとい部屋の中は見えない。
気配を窺って見れば、この部屋に人がいる気配はしないのだが……いないという保証はない。
できるだけ100パーセントに近づけたい。確証がほしい。
方法はあるにはあるのだが、よくよく考えてみればものすごく無謀だし相手の警戒心を上げるだけなので止めておくことにした。
今がベストと考えるのがいいだろう。これ以外に無難な方法が見当たらない。
自分の感覚を信じる。これが俺のとった方法だった。

気を張り詰めて、一か八か。
事態に備えながらからりからりと大窓と、網戸を開ける。

……。

よし、良し。
今この部屋には俺しかいない。
二階からは何も物音がしない。息遣いを感じろというのは少し無理な話だが。
ターゲットは一階にいると見てほぼ間違いないだろう。
勝手に動き回られる前に早めに行ってしまおう。

階段を下り、一階の床に足をつけ――……る前に、立ち止まる。
ここが一番危険なのではないだろうか。
何せ、家の構造上目の前に見えるのが玄関だけなのだ。
すぐに知れたことだが、廊下とリビングの扉はちょうど階段の横にあって死角になっている。

……てか、近づいてきてないか?誰がって、そりゃあ…
秒を待たず接近する足音。無警戒とも警戒ともとれる感触。てか、どっちかわからん。
まさか気付かれたのか?いや、そうじゃないのか?どっちだ。
わからない、わからないから――



「「!!!」」



視線が交錯する。
姿を確認すると同時に、どう対処すべきかを考える。
と、相手は思考するより逸早く俺を敵とみなし排除に乗り出したようだ。

ギラリと鈍色の包丁が光る。
ハ、殺気全開ってか。だが、無駄だ。
初動では遅れたが速度の上では俺が上回っている。
出会う前から攻撃してこなければ、その程度のスピードでは掠りもしない。

胸を狙ってまっすぐと向かってきた包丁を間髪で回避する。
この程度の斬戟、避けられずして何が暗殺者か。
俺を殺したければこの百倍は持ってこい。いや、しなくていい。
しかしよく見れば片手に2本も包丁を持っていらっしゃる。
そんなに持たなくてもそのくらいの刃渡りなら一本だけでも充分に致命傷だと思うけどなぁ。
当たってはやらないけど。

現在、攻撃を躱したということは、相手の腕はちょうど俺の脇腹の横にある。
というわけで、伸びきった相手の腕を脇に挟み込んでまず左手を封じる。
次が来るかと思いきや、来ない。必死に手を抜こうとしている。
不思議に思いながら相手の右手を見れば、成程、こりゃあ鉛筆も持てないな。
ふーんと独りで納得していると左方向から回し蹴りが飛んできた。
それも胴と腕で挟み込む。威力は意外とあるけど、まともに当たらなきゃ意味がない。

「くっ……!!」

左手と右足を封じられた相手は何とか危機を脱しようと必死でもがいている。
もうちょっと見ていたい気もするが、遊んでいる暇はないのですぐさま拘束を緩めてそいつを蹴り飛ばした。

「きゃっ!……」

可愛らしい声をあげて、尻もちをつく。
蹴り飛ばしたといっても足で押し倒した程度だからそれほどダメージはないだろう。

「怪我はないか?」

「ハァ!?人を蹴っておいてよく言うわね!」

「先に襲ってきたのはお前だろうが」

正当防衛で無罪です。
しかし戦意は全く衰えていない様子で。
けどね、手前の武器は俺の足元にあるんだよ。

「まあまあ落ち着いて、何も敵対するつもりはないから。少し話を聞きたいんでね」

「信じろっての?馬鹿じゃない……」

「信じるとか信じないとかどうでもいいんだが……あんまり下手な行動はしない方がいいと思うな」

拾った包丁の側面を撫ぜながら、俺は目の前の女に静かに言い放った。


                  ◆◆◆


さて、今俺はちょうど女…野々原渚の目の前に面と向かって座っている。
ちなみにこいつのバッグはリビングのソファの上に置いてあったのでそれごと占領中だ。
一方女の方は丸腰で小さくなって座っている。
てか、チャイナ服ってどうよ。
趣味の問題をどうこう言っているわけではなく、露出が多いからあまり野外活動には向いてないと思うんだが…。
しかし、縮こまってはいるものの未だに俺に対しての敵意は衰えず、双眸をぎらつかせている。
さながら獣のようで、女って怖いなあとしみじみ思う瞬間だった。

状況の説明はここで切って、本題に入る。
まず第一印象は最悪。ギャルゲーでもこんな出会い方しねえわ。
まあ殺し合ったし当然と言えば当然なんだが……これを和らげるのは難しい。
特に話術も持ち合わせていない俺にとって結果的にはごり押しになってしまうのだ。
こんな風に。手で、包丁を弄くりながら。

「今まで誰に出会ったか聞かせてもらおうか、え?」

まるでヤクザである。
渚の視線が、俺の持つ包丁を追う。追いながら、

「いやだ、って。言ったら?」

「想像に任せよう」

平然と言い放つ。

「……」

「わかったわ、言うわよ。言えばいいんでしょ!えっと「待った、一つだけ」」

ブチィ、という音が聞こえた気がしたが、きっとパンツのゴムでも切れたんだろう。
気にすることじゃない。

「死んだ奴の情報はいらない。生きている奴のだけをくれ」

「……そう」



略。
内容について端的に述べよう。
説明するだけの尺がもったいないとかそういうメタ的な意味じゃなくて、語るべきことが殆んどないのだ。

こいつ…渚は会った奴の名前を知らない。
口ぶりからしてそれなりの人数には出会っているようだが。
要するに、こいつは名前を教えるだけの人間関係を作っていないということだ。
貧乏くじ引いたかな、俺。
こうなったら死人のことも聞くべきだろうか。いや、それで墓穴掘ったらどうする。
藪蛇は勘弁したいところだ。で、数少ない情報から得られたのが、映画館での出来事だ。

主にカラス女と金髪の男。
色々あったようだが、特にカラス女に関しては話すテンションがとんでもなかった。
陰鬱で、憎しみをこめた言葉を口に出していた。
あくまでも彼女の主観でだが、それはもう凄惨な人物(?)だったのだろう。
指を切り落としたのもそいつらしいし。とんでもないドSである。

「ちょっと……聞いてもいい?」

「どうぞ」

何の気なしに質問を受けてしまった。
いや、質問如きに身構えるのもおかしな話だが、ここはそうすべきだったと思う。
その質問は度肝を抜くとまではいかないものの結構驚きに値するものだったからだ。

「私にはお兄ちゃんがいるんだけどね……顔が思い出せないのよ。
 いいえ、思い出せないというよりは誰がお兄ちゃんの本当の顔なのかわからないの。
 すごく……記憶があやふやで……あなたもそんなことない?」


「……いや、ないな」

正しい選択、だったろう。
動揺を出すわけにはいかない。付け込まれる可能性も十分にあるからだ。
それに嘘をついたところで誰にもわかるものではない。
そう、俺以外には――

「他にもそんな奴がいたのか?」

「うん、もういないけどね…」

「……ふぅん」

考えるような仕草をしてから、静かに考える。
一応、少ないが情報は手に入った。
後はこいつをどうするかということだが……

「おい」

「何よ」

「俺と協力しないか?」

「…は?」



露骨にそんな顔しないでくれー。
そこまで論外なこと言ったか?言ってないだろ?
こういう交渉の場ならこんな言葉が飛び出すのも普通だろうに。
……まあ、前準備は出来てないわけなんだが。

「お前も最後まで生き残れるとは思ってないんだろ?俺も実はそうなのさ。
 それに渡り歩いて耳にしたんだが首輪を解除しようとしているグループがあるらしい。
 だからそのグループに取り入ればお前の目的もひとまず一歩近づけるだろ。
 別に悪い話じゃあるまい。単独より複数人の方が行動できるしな」

嘘である。
首輪を解除しようとしているグループなんて見たことないし(可能性としてはあるが)
そんなものは希望的観測でしかない。首輪も実際にどうにかできるかと言えば怪しいものだ。
出来たならそれにあやかりたいところだが……

「……わかったわ」

…意外と簡単に了承してくれたな。
いや、そうでもないか。表情を見ればまだ疑っているのがわかる。
まあこいつに対しても警戒すればいいかな。荷物も奪っておくし。

「そう言ってくれるとありがたい。一番重要なことは、殺すことじゃなくて生きることだからな」

「………」


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