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どうしてこうなったⅢ ◆jVERyrq1dU




「トキは訳の分からねえ力で志々雄とうさぎ女を倒した後、目覚めたカイトに殺された、ってこいつは言ってるぜ」
「こいつとは誰だ?」
「…………説明しないと駄目か?」
アレックスが当然のように頷く。左之助は面倒臭そうにして、なかなか説明を始めなかったが、
譲らないアレックスの態度を見て、渋々マッハキャリバーについて説明を始める。
アレックスは初めこそマッハキャリバーについて驚いていたが、
今まで主催などが持つ未知の技術に触れて免疫がついていたため、すぐに受け入れる事が出来た。

「嘘じゃないだろうな……」
「こんな嘘ついてどうするんだよ」
さも当然のように左之助は言った。まるで信じて当然という態度で接する左之助に対して、アレックスはほんの少し苛立ちが募った。

確かに、納得出来ない事はない。カイトはトキからの攻撃を受けて気絶したのだから、
気絶から目覚めた後にトキの事を敵と勘違いしたまま殺してしまうのも充分あり得る話だ。
あの時カイトは平静を失っていたのだから、恐怖と怒りのままトキを殺す事はいかにもありそうな話である。
むしろそうでない方が不思議なくらいだ。左之助の話はおそらく嘘ではない。真実だろう。

しかし、アレックスはカイトに話を聞くまで、トキを殺したのはカイトだと断定したくはなかった。
断定して、もし万が一左之助の話が偽りだった場合、カイトはまたも傷つくだろう。
もうカイトにこれ以上の苦難を味あわせたくはなかった。これ以上カイトを追い詰めると、きっと狂ってしまうだろう。

「そこの女は、お前の知り合いか?」
「ん? ああ、そうだな。おい起きろ」
左之助は地面に倒れている女を軽く蹴った。女性に対してそんな行動をとるのはどうかと思い、アレックスは顔を歪める。
何か一言言ってやろうかと思ったが、アレックスが口を開く前に左之助はマッハキャリバーに小言を言われていた。
「構うか。体中痛くてしゃがみ込むのが辛いんだよ。立ったまま蹴り起こすのが一番楽だ」
そう言ってまた蹴った。

機嫌の悪そうな顔で美鈴は目を覚ました。蹴っている左之助と目が合い、恨めしそうな視線を送って見たが、
左之助は美鈴の恨みなど意に帰さず、飄々とした態度で「よう」と声をかけてきた。
「何がよう、ですか。もう少し別の起こし方があるでしょう?」
「まあいいじゃねえか。お互いまだ命がある事をまず喜ぼうぜ」
「そう言えば……お前達はどうしてここで気絶していたんだ? と言うより、ここで何があった?」
騒動を収めたトキをカイトが殺したという話は聞いている。しかし、分からないことだらけだった。

美鈴が全身の激痛に耐えながら立ち上がり、アレックスにじとりとした視線を送る。
左之助とアレックスを見比べ、すでに和解は済んだという事を理解する。それから美鈴は辺りを見回し、眉をひそめた。
トキが死んでいるのだ。頭を叩き割られている。てゐと、自分達を裏切った志々雄の姿はない。分からないことだらけだ。

さらに、すでに日が沈んでいる。主人であるフランとの待ち合わせ時間に遅刻してしまった。
アクシデントがあったとはいえ、なんということだ。美鈴は項垂れ落ち込んだ。
とにかく、今分かる事からはっきりさせていかなければならない。

「さて、本当に何があったんでしょうか……左之助さん。分からないことだらけです」
「まあ、そこら辺の心配はいらねえよ。マッキャリが全部見ていた」
「マッキャリ……?」
「ああ、本当はマッハキャリバーって言う無駄に長ったらしい名前なんだが……」
左之助は美鈴にも、マッハキャリバーの存在を説明する。今まで特に隠していたわけではないが、説明する暇がなかった。
左之助、美鈴、アレックスの三人はいずれも戦いの途中で気絶してしまい、事の顛末を知らない。
しかし、左之助が装備しているマッハキャリバーだけは最初から最後まで、戦いの全てを見ている。

「通りで奇妙な格好をしていたんですね。少し安心しました。それは左之助さんの趣味じゃないんですね」
どういう意味だ、と左之助は無駄にほっとしている美鈴に白い眼を向ける。
「まあ、そういう訳だからよ。説明頼むぜマッキャリ」
『……どうして突然略すんですか』
「略されたくなかったらもっと簡潔な名前に改名しろよ」
「…………」

アレックスと美鈴は、左之助とマッハキャリバーが語る騒動の真実に、熱心に耳を傾ける。

左之助が勘違いしてアレックスを殴り、気絶させた後、何者かからの狙撃があったらしい。
トキの説得によりメタナイトという仮面の一等身が狙撃手の撃退に向かったが、未だに帰ってきていない。
それからすぐ後に包帯男、志々雄が現れ、ウサ耳幼女、てゐと共に奇襲を仕掛けてきた。
左之助と美鈴は彼らによって重傷を負わされ、そこで意識を失った。
同じく重傷を負ったトキはそれでも果敢に志々雄達と戦ったが、まるで歯が立たなかった。
いよいよトキが殺されようとする時、少女、逢坂大河が現れ、トキの盾となり死亡した。
彼女は完全に燃やしつくされ、死体も灰としてしか残っていない。
彼女の死に激高したトキは『何かよく分からない力』によって突然覚醒し、圧倒的強さで志々雄とてゐを殺した。
その後トキは瀕死の肉体を引きずって、心肺が停止していた左之助と美鈴を蘇生させた。
殺人鬼二人が死んでから少し経った後、トキによって問答無用で気絶させられていたカイトが目覚め、
トキは悪人だという勘違いをしたまま、重傷だったトキをスケボーで滅多打ちにして殺した。

「とまあ、こんな感じらしい……ぜ」
「トキさん……大河さん……」
美鈴と左之助の顔色は重く暗かった。アレックスも例外ではないが、
美鈴と左之助と比べてカイトへの理解があるため、彼の悲しみは一層複雑なものだった。

「ついさっきこの辺りを適当にぶらついてみたら、肉片が沢山落ちていた。多分アレは志々雄かてゐのもんだな。
 あそこの辺り、地面が黒ずんでいる場所は多分大河が死んだところだ」
「そしてトキさんの死体に、良く分からない謎の黒焦げ死体……ほとんど炭になっているようですね」
左之助が補足し、美鈴が確認するように言う。
「メタさんはどうなったんでしょうか……」
「…………」
二人の顔にまた影が差す。狙撃手の元へ向かったメタナイトが帰ってきていない。
撃墜は成功したのだろうか。それとも何かあったのだろうか。そもそもあの狙撃手はいったい誰なのだろうか。
十中八九、志々雄かてゐなような気がするが、そうと断定できる根拠はどこにもない。

「アレックス、お前も放送を聞き逃したらしいな」
「ああ……すまない」
一言カイトに尋ねていれば良かったものの、アレックスは後悔する。殺し合いが始まってから、ずっと後悔してばかりな気がする。
「ま、情報交換はこれくらいにして、これからどうするつもりだ?」
「俺はカイトを探したいんだが……」
「そうだな、そいつとメタナイトを探さないとな。で、どこに行ったんだよそいつらは」
それが分かれば苦労しない。途方に暮れる三人。
しばらく誰も口を開かなかったが、美鈴が思い出したかのように唐突に口を開く。

「あの黒焦げ死体はいったい誰なんでしょうか……見たところ、ついさっきまで燃えていた感がありますが……」
「あれは……」
アレックスの顔に影がさす。説明するのが恐ろしく憂鬱だった。出来れば話したくはない。
しかし、美鈴と左之助が意味深に黙り込むアレックスの顔を覗き込んできたため、話さざるを得なくなる。

「あの死体は、キーボードクラッシャーという男だ。────あれもカイトが殺した」
「……またカイトですか」
美鈴が呆れたように言った。カイトと言う男は、トキの死だけに関わっているわけではないらしい。
「カイトって奴は、本当に悪人じゃねえんだろうな。殺されたクラッシャーってのはどんな奴なんだ?」
「クラッシャーは、殺し合いに乗っていた奴なんだが……」
左之助と美鈴は拍子抜けしたように顔を見合わせる。

「それなら、まあ、クラッシャーの事に関しては何の問題もないですね」
「だな。トキまで殺してる事からしてかなり落ち着きのない野郎な気はするが……」
アレックスは勝手に納得している二人をほとんど恨めしげに睨んだ。睨まれている事に二人は気づいていない。
何も悪い事を言ったなどと考えていないからだ。殺し合いに乗っている者が殺されたところで何の感慨もわかず、
むしろ喜ぶ二人が、今のアレックスには別の生き物のように見えた。

「結局、カイトって人がトキさんを殺したのも勘違いかららしいですし……仕方がないんでしょうか」
「一発殴ってそれで終いにするしかねえだろ。トキって奴が、カイトと殺し合う事を望んでいるとは思えねえぜ」
「打算的な事を言うようでなんですけど、クラッシャーという人を殺したくらいなんですから頼りがいがありそうですしね……
 ここで無暗に敵対するようではやっぱり、駄目ですよね……」
「お前ら、クラッシャーが死んだ事については何も思わないのか?」
アレックスの唐突な一言に、二人はぽかんとしている。

「クラッシャーは殺し合いに乗っているんだろ?」
「────事情があったんだよ……あいつは死んでいい男じゃなかった」
重々しくアレックスが言ったのを見て、美鈴は息をのんだ。左之助は特に何も反応していない。
クラッシャーの死はどうでも良くて、トキの死は大いに悲しむ。アレックスはどうしても納得出来なかった。
クラッシャーさえ生きていれば、和解出来ていればリンもカイトも……そしてハクも……!
事情があったと聞いて息をのんだ美鈴はまだ許せるが、それでも平然としている左之助に怒りが募る。
アレックスは思わず、感情に任せて言い散らかした。

「クラッシャーはただ単純に死にたくなかっただけなんだよ。主催者に立ち向かう勇気のないものは、
 ルール通り殺し合いに乗って優勝を目指すか、何もせずに右往左往するしかないだろう?
 殺し合いに乗っている奴全員が悪なわけがあるか。主催者に逆らうだけの勇気と力がなくて、
 それでも死にたくなくて、元の日常に戻りたくて、ルールに従い優勝を目指す。
 お前らはそんな奴がいるって事を想像した事があるか!? 死にたくなくて死にたくなくて、優勝目指したのがクラッシャーという男だ。
 ────それすら出来ないのがカイトだ……」
美鈴は失言したと気づいたのか、沈痛な面持ちだ。しかし、左之助は違った。未だに平然としている。

「そんなもん知るか。殺し合いに乗った奴は、この世界では悪なんだよ」
「そんなぶっきら棒に決めつけていいのか!?」
猛るアレックスに左之助は冷たい目を送る。
「だったらお前は、やむを得ない事情があって殺し合いに乗ったカワイソーな奴に、大切な人を殺された時どうするつもりだ?
 可哀想な殺人鬼に同情して許すってのか。馬鹿じゃねえのか」
アレックスは反論できず、口を閉ざす。

「お前はどう考えてるのか知らねえけどな。俺にとっては弱い奴を助ける事が最優先なんだよ。
 殺さない奴を俺は殴らねえが、殺す奴は問答無用にぶん殴る。殺し合いが収まるのなら俺は何でもいいんだ。
 それにな……極論言っちまえば、悪だとか正義だとかは後付けじゃねえか。その場の常識に従う奴が正義で、逆らう奴が悪だろ?
 正義だった奴らも時代が変われば悪と罵られるかもしれねえ。赤報隊のようにな」
「…………やむを得ず殺し合いに乗った連中の、気持ちはどうなる……」
「どうにもならねえよ。仕方がない事だ。俺はそんな連中よりも殺し合いに乗っていない奴らの気持ちを優先してやりたいね。
 まあ、殺し合いに乗っていない奴らとやむを得ない事情で殺し合いに乗ってる奴らのどっちを守りたいかって事だな」
「両方とも守ろうとは思わないのか!?お前達はそれなりに戦える力を持っているんだろう!?」
「俺は殺す奴から殺さない奴を守るだけだ」

睨みあい、一触即発の二人を美鈴が間に入って宥める。アレックスは見るからに怒っていたが、左之助は未だに冷静だった。

「お前、少し休んだ方がいいんじゃねえか?」
「そう、ですね。まあ、アレックスさんの気持ちは分かりますけど……もう少し落ち着いて……」
アレックスの考えをまるで理解しない二人の言葉。美鈴は、アレックスに哀れなものを見るような視線を向けてくる。
なるほど、俺は気がふれていると思われてしまったようだ。そうじゃない。俺は正気だ。
どうして理解してくれないんだ……

「お前らは、クラッシャーの事情を何も知らないから、そんな事が言えるんだ……
 クラッシャーだって、何をやっても悪い方向にしか転がらないカイトだって、きっと何とか生まれ変われたはずなんだ。
 俺の手でなんとか生まれ変わらせて……やりたかった」
アレックスがぽつりと言った後、美鈴が「そうかもしれませんね」と気を使うように言った。
それがますますアレックスの琴線に触れたが、もう何も言わなかった。

俺がこいつらなら、手早くカイトとの関係を絶っていたのだろうか。
俺が左之助や美鈴なら、カイトのあまりの駄目さと卑怯さに落胆し、あいつを見限るのだろうか。
もしかするとあまりのカイトの駄目さに嫌気がさし、殺してしまうかもしれない。
アレックスにとってはあり得ない事だが、やむを得ず殺し合いに乗るような者を否定する左之助ならば、
カイトを否定しても不思議ではないだろう。

アレックスは溜息をついた。左之助と美鈴の言い分は確かに理解出来る。
殺し合いを止めようとする人間が、殺し合いに乗った連中に同情してしまうなど、本末転倒もいいところだ。
きっぱりと割り切る必要があるのだが、アレックスにはどうやってもそんな気にはなれない。
駄目な奴だって悪事を働いた奴だって、それぞれに理由がある。彼らは彼らで苦しんでいる。
そして、道を正してやる事だってできる。ハクが立派になれたように、クラッシャーに改心の余地があったように……

だから、カイトもきっとやり直せるはずだ。俺が必ず、改心させる。カイトを一人前の男に成長させると誓う!

「気のせいですかね。何か悲鳴が聞こえませんか?」
唐突に美鈴が口を開く。耳を澄まして、ある一点を指差す。
確かにその方向から何かが近づいてきているような音が聞こえてくる。
「どうやら気のせいじゃないみたいだぜ。誰か知らないが、こちらに来てる……」
「カイトだ。この声はカイトだ……」

「自分でどこかに消えて自分でまた戻ってきたわけか。何がしたいんだ?」
事情を知らない左之助の言葉は、逐一アレックスの心を逆撫でる。
「あいつは本当に傷ついている。再会できなかったかもしれないんだ。戻って来てくれただけでも、御の字だ。
 頼むから、暖かく迎えてやってくれないか?」
「……お前、嫌にあいつの肩を持つんだな」
「事情があるんだよ……話すと長いが……」
アレックスの沈痛な表情を、左之助はけろっとした顔で見ている。
「いくら事情があろうとな。トキを殺した落し前はつけさせて貰うぜ」
「…………」
左之助と美鈴は、トキの死体を悔しそうに凝視した。アレックスは何も言えなかった。

カイトの声が次第に大きくなっていく。どうやら錯乱しているようだ。
今度は何があった、と思い、アレックスはまた心を重くする。カイトを落ち着かせようと、アレックスは彼の名前を呼んだ。
カイトの喚き声が止み、一直線にこちらに向かってくる。闇の中からカイトが現れ、アレックス達三人の前で、力なく座り込んだ。

「カイト……今度はいったい何があったんだ」
「化け物が……化け物がいたんだよ。俺はまた逃げちまった……」
化け物という言葉に、左之助と美鈴は目敏く反応した。美鈴はすぐさまカイトがやって来た方向に意識を集中させる。
つい数時間前に感じた邪悪な威圧感が、さらに強くなって感じられた。いったい向こうに何がいるんだろう、
得体の知れない怪物への恐怖感から、美鈴は僅かに体を震わせる。

「化け物……か。トキを殺したようにそいつも殺そうとは思わなかったのか?」
左之助はカイトの胸倉を掴み、引き起こす。突然そんな事をされたカイトは、当然のように驚いている。
混乱して、目を白黒させながら左之助を見る。その顔には恐怖の色が浮かんでいた。
「ト、キ……? トキって誰なんだよ」
「やっぱり知らねえらしいな。お前がついさっき殺した白髪頭の野郎だ。どうしてあいつを殺したんだ?」
「どうしてって……あいつは悪人、だろ……? おい、まさか……」
カイトの顔が病人のように白んでいく。さすがのカイトも、真剣な表情の左之助を見て気がついた。トキは────
その瞬間、カイトの頬に電撃のような痛みが走った。左之助に殴られたのだ。
天地が逆転したかのような心地に陥り、カイトは正面から地面に倒れた。

「おいやめろ!何も知らなかったんだから────」
「知らねえからって許される事だと思っているのか?一発ぶん殴らねえと気が済まねえよ」
アレックスの言葉をすぐさま叩き斬る。左之助はぎらついた視線をアレックスに向ける。 
「正直言って俺はこいつと……こいつの肩をやたらと持つお前が気に食わねえ」
「だ、だが、カイトの事情を知らないお前に、一方的に殴る権利なんてあるのか!?」
「権利なんて知らねえよ。気に入らねえから殴る。悪いか?」
左之助の発言に驚愕しているアレックス。こいつはただ暴れたいだけなんじゃないか?
気に入らないから殴ったなんて……信じられない。アレックスは縋るように美鈴に視線を移す。表面上は中立を保っている彼女も、
内心では、左之助がカイトを殴った事が嬉しいのだろう。顔が僅かに綻んでいた。

「怪物だかなんだか知らねえが、また逃げて来たってわけか」
左之助が倒れているカイトに言葉を浴びせる。
「どんな事情があるのか知らねえけどよ。お前はこのまま一生逃げるつもりなのか?
 もしそうだとしたら、さっさと俺の前から消えな。気に入らねえんだよ。守る価値もねぇ」

左之助の乱暴な扱いは、カイトの心をさらに抉った。そうだ。自分はまた逃げたのだ。
さらに、俺が殺したトキは実は悪い男ではなかったらしい。今回ばかりは完全に俺が悪い。
クラッシャーの時とは全く場合が違う。この俺が、クラッシャーのような奴ではなく、この俺が、
殺人鬼、クズ、ゴミ────悪……!

「お前に……お前のような奴に何が分かる。何も知らないお前が……俺はクズだから、仕方がないだろうが」

ふるふると震えながらカイトはぽつりと言った。その小さな小さな声は、左之助の耳には届かない。

はっきりとカイトは自覚した。自分はクズなのだ。この駄目な自分が、本当の自分であるようだ。
全て自分が悪いと、自分はクズなのだと自覚してしまった時、カイトの心の中で何かが弾けた。
今まで溜めに溜めた負の感情が、奔流のように心の中を疾走し、カイトを闇に染めていく。
もうどうしようもならなかった。もうどうやっても止める事が出来なかった。

どうやろうとも、クズな性質を治す事が出来ない。当然だ。今までの、極限状態の俺の有り様こそが、俺自身の本性だったのだ。
アレクは間違っている。あいつは俺の事を根は優しい奴だと言った。違う。それは間違いだ。
何故なら俺はクズだからだ。俺は今まで、全ての人間に劣る最低最悪の本性からひたすら目を背けて生きてきたらしい。
俺は正義だ、俺は悪くないと喚いて、クズな本性を誰にも悟られないように必死に押し隠し生きてきたのに過ぎないのだ。

アレクは言った根は優しい奴だと。リンは妙な印象を俺に抱いていた、俺は憧れの王子様なのだと。
ハクは期待していた、俺が勇気に目覚める事を。はっぱ隊員は俺に希望への話を持ちかけてくれた、そしてその後死んだ。
俺の本性を見抜けず、俺の人生を賭けた必死の擬態に欺かれた連中はみんなみんな不幸になった。
俺はクズの本性が出そうになった時、いつもいつも自分を偽って生きてきた。卑怯な行いも仕方ないのだ、俺は悪くない、
と懸命に本性から目を退けて生きてきた。

俺と行動を共にした連中は言う。

「お前は根はいい奴だと信じてる」
「カイトさんが来てくれて嬉しいです」
「カイト様!」
「これから頑張れば大丈夫だって。怖いのは誰だって同じだ」

馬鹿がてめえら……騙されやがって。俺の本性はクズだ!ゴミだ!
────俺の本性は悪なんだ!!!

それなのにてめえらは俺の必死の演技に騙され、俺を信用して来たんだ。
どうしようもないクズの俺をな!!!!てめえらは自業自得だ!!クズの俺に騙されやがって!!
俺を勝手に信頼したお前らが悪いんだよ!!死んで当然、不幸になって当然だ!!





「おいカイト!大丈夫か!」
アレックスがカイトの体を揺する。いつまで経っても立ち上がらないカイトが心配で、
アレックスはいても経ってもいられなかった。きっといつか、カイトを勇気を持った強い人間に変えてみせる、
ついさっき決意したのだ。カイトにはこのまま死んでほしくなかった。

「おい、化け物ってのはどんな奴だった?」
左之助がカイトに声をかける。カイトは体を起こし、殴られた傷を痛そうに擦りながら、化け物の特徴を左之助と美鈴に伝える。
事細かに伝えていく内に、美鈴の顔が次第に深刻になっていく。
「それってもしかしてブロリー、ですか?」
名前は知らない、とカイトは返答した。美鈴はバクラ達から聞いた、ブロリーについての情報を思い出す。
カイトの言った化け物の特徴と、バクラの言ったブロリーの特徴が見事に一致している。
参加者の中で間違いなく最強クラス、そんな殺人鬼がすぐ傍に居るのだ。

「カイトさんの話だと、ブロリーは瀕死、なんですね?」
カイトは頷いた。持っている銃で撃っていれば、何とかなったかもしれない、と途方に暮れた顔で言った。
一々絶望するネガティブなカイトを放置して、美鈴は思考する。
ここは、今すぐにブロリーを殺すべきなのではないだろうか。カイトの話だと、今、ブロリーは瀕死。
危険人物を排除する絶好のチャンスだ。しかし、ブロリーを倒しに行く事はフランとの約束を破るという事だ。
美鈴は左之助の顔へと視線を移した。

「行くしかねえな。美鈴」
「そんな……行くと言っても……メタさんは、どうしましょうか」
未だに帰って来ないメタナイトが心配でたまらない。メタナイト以外にも、ご主人さま、フランの事も気にかかる。
はたして自分はメタナイトとフランを放置したままブロリーを倒しに行っていいのだろうか。
ブロリーが瀕死なら、確かに今が倒しどころなのだが……ブロリーを倒す事が出来れば、
フランの命の危険を軽減させる事が出来るのだが……

「探したいなら探してきて構わねえぜ」
「うーん……そうしたら、左之助さん一人でブロリーと戦いに行くでしょ?」
「あー……心配するなって。多分何とかなる」
何とかなるとは思えなかった。ブロリーが瀕死とはいえ、同じように美鈴も左之助も重傷を負っている。
勝つか負けるかの激しい戦いになるだろう。死を覚悟しなければならない。

「メタさんがいれば、戦いも有利に進められるのに……」
一刻を争う事態だというのに、戦力が揃わない。
「丁度いい戦力ならそこに居るぜ?」
左之助がカイトとアレックスを指差す。カイトはびくりと反応した。

「俺は行かねえぞ……アレクも行かせない」
三人の目が、同時にカイトを捕らえた。カイトは卑屈な目をして、さらに言葉を紡ぐ。
「俺なんて戦力になりはしねえよ。アレクも同じだ。ついさっきリンに刺されたらしいじゃねえか……
 行かせられるか……アレクに死なれたら天国に行ったハクに申し訳が立たねえんだよ。
 ハクへのせめてもの罪滅ぼしだ……アレクをみすみす死なせるような真似は絶対にしたくない」

確かにアレックスは、先ほどリンに刺されてからずっと顔に血の気がない。
見るからに苦しそうだし、喉が渇くのか、ひっきりなしに水を飲んでいる。
「カイト……俺は別に」
アレックスは所在なさげに美鈴と左之助を見た。

「そのブロリーという奴が危険人物なら、俺は────」
「別に構わねえよ」
アレックスの台詞に割り込むようにして、左之助が口を開いた。
「お前だってついさっき言ってたじゃねえか。カイトを生まれ変わらせたいだとかなんとか。
 丁度いいからここはカイトの言う事を聞いて引きな。俺がブロリーを殴っている間に、その馬鹿を更生させてやれよ」
それを聞いて、カイトの湿った視線がアレックスを捕らえた。

(アレク……そんな事を言っていたのか)

「確かに言ったが……」
アレックスは曖昧な態度をとっている。すぐ傍に倒すべき敵がいるのに、ここで背を向けていいものかと迷っているようだ。
「そうだな……お前らはメタナイトのような強い連中を探し出して、援軍を頼んでくれ。
 ブロリーを倒すために、二手に別れる事にしようぜ。これならいいだろ?」
「それは……結構いい考えかも知れませんねぇ」
美鈴が大きく頷く。メタナイトの安否も確認できるし、彼らにフランを保護してやってくれと頼んでおけば、
ある程度彼女の安全も保障される。ブロリー打倒への仲間を集める事も出来る。一石二鳥どころの話ではない。
「そのついでに、さっき言ってたリンとか言う女も捕まえてやればいい」
「…………」
アレックスは沈黙している。

「アレク、そうしよう。俺はブロリーの所にまた戻るのは絶対に嫌だ」
「相棒もそう言ってるぜ」
アレックスは押し黙り、考え込んでいる。根拠はないが、何か嫌な予感がした。
勿論気のせいだろうが、全てが水泡に帰してしまうような悪い予感が、一瞬脳裏に走った。

「なあアレク」
「……そうだな。リンも放っておくわけにはいかないし」
「決まりだな」
左之助は嬉しそうに笑った。

最後に四人はそれぞれ持っている情報をなるべく細かく伝えあった。
美鈴は、フランという女の子を見つけたら、私は危険人物を排除にしに行く事になったと伝えて欲しい、
とアレックスに頼んだ。カイトは、他の三人が知らない放送の内容を伝えた。
トキ、てゐ、志々雄、大河の死が告げられた時、三人はそれぞれ複雑な表情を見せた。情報交換が終わり、いよいよ別れる時が来た。
カイトは結局、最後の最後まで、ブロリーがブレイバックルを身につけパワーアップしている事を、左之助と美鈴に伝えなかった。

「何か罰が当たりそうですが、トキさんの死体にメタさんへの伝言を張り付けておきましょう。
 言っちゃ悪いですけどいい目印になりますからね。本当はすぐに埋葬してあげたいところですが……」
「埋葬している暇なんてないからな……」
トキの死体に紙を張り付ける。紙にはメタナイトへのメッセージが書き込まれている。
美鈴と左之助はブロリーを倒しに行ったという事、カイトとアレックスという者に増援を呼ぶよう頼んであるという事、
メタナイトがこの紙を見たら、すぐさま対ブロリーへの援軍に駆けつけて欲しい、しかし、無理なら来なくても構わない、
と言った事が紙に書かれている。

「すまないな……力になれなくて」
「いいですって。そんな事より、カイトさんを何とか立派にしてあげて下さいよ」
「その通りだな。どうも俺には出来そうもないが、細かい事ばっかり考えるお前ならなんとなくできそうだ」
アレックスと美鈴、左之助はそれぞれに言葉をかけ合い、別れを告げる。
カイトだけがその輪から離れ、幽霊のような覇気のない目で突っ立っている。

最後に落ちていたデイパックを拾い、各々に振り分ける。
アレックスとカイトはブロリー打倒への仲間を探しに、そして左之助と美鈴はブロリー打倒へ、それぞれ歩き始める。
二組はどうも互いにいがみ合ってばかりで、お世辞にも意気投合したとは言えない。
それでも、目標は同じ。バトルロワイアルを阻止する事。一人だけ、異端児が混じっているような気がしないでもないが……



「アレクさん、何か不安ですね……色々背負いこみ過ぎてしまっているというか……」
美鈴は言う。左之助は何か考え込んでいるようで、返事を返さなかった。
(鳥頭の癖に何を考え込んでいるんでしょうか……)
美鈴はしばらく左之助を眺めた後、視線を前方に戻した。

結局、美鈴はブロリーの打倒へ向かう事にした。フランとの約束を破る行為だが、最強クラスの危険人物を排除できる、
折角の大チャンスを失いたくはない。生真面目なアレックスにフランを保護してくれと約束させたのだから、
きっと悪いようにはならない、はずだ。そうだと信じたい。

ともかく、今はブロリーだ。美鈴は前方を見据えて、気を引き締める。


アレクを見ていると、どうも剣心の事を思い出してしまう。何もかも自分で背負いこみ、単純明快な答えをなかなか出す事が出来ないあたり、
剣心とアレクは似ている。全部割り切ってしまえばいいのに。悩んでいて何か前進するのだろうか。
気に入らない奴は殴ればいいし、気に入った奴は助けてやればいい。それだけでいいじゃないか。
善悪なんて、状況によって変化するものだ。そんなものを突き詰めて考えたところで仕方がない。

(ちっ……むしゃくしゃしやがる……)

あんな風に、己は絶対に正義だと信じ込もうとする奴を見ると、どうもイライラする。
絶対の正義なんてあるわけがない。気に入る奴と、気に入らない奴がいるだけだ。
政府に奉仕した赤報隊が悪と呼ばれたように、悪と正義の境なんて案外曖昧なものなんだ。
そんな事を考えても頭が痛くなるだけだ。だから俺は初めから考えない。ただ自分の思うように拳を振るうだけだぜ。

(アレックス、お前にとって俺は悪か?)

倒すべき志々雄はすでに倒され、自分が目覚めた時には戦いの全てが終わっていた。
左之助は力を持て余していた。イライラしている時には限界まで暴れてすっきりするのが一番いい。
ブロリーを思い切り殴って、全てのわだかまりを払拭させたい。
正義だとか悪だとか議論するよりも、目の前の『敵』を倒す事の方がずっと大事だ、と左之助は思う。

正直言って、カイトが、自分達はブロリーを倒しに行かないと言った時、左之助はしめたと思った。
アレックスのようないらない事を一々考えて悩む奴と共闘するのは煩わしくて嫌だった。
喧嘩というものはすっきりしているのが一番いい。悪だとか正義だとかの議論は、戦いが終わった後からいくらでもやればいいのに、
あいつは戦う前から悪だ正義だとか言って勝手に悩んでいる。悩む暇があったら、目の前の敵を倒すべきだ。

左之助は背後に目を向ける。アレックスとカイトの姿はもう見えない。
奴にとって、俺はさぞかし異端に見えただろうな、左之助は思う。
アレックス、お前にとって、単純な理由で拳を振るう俺は正義か?それとも悪か?

(ま……俺を悪と呼んでくれても、別に構わねえぜ。
 お前がそう呼んでいる間に、俺は一人でも多くの『気に入らねえ奴』を、殴り飛ばしてやるだけよ)

左之助の背中に書かれた『悪』の一文字が、風に吹かれてひらりと舞った。


【D-4 草原/1日目・夜】
【紅 美鈴@東方project】
[状態]頭部にダメージ(大)、右脚に銃痕、フランドールへの絶対的な忠誠
[装備]無し
[道具]支給品一式、医療品一式、禁止エリア解除装置@オリジナル、スタポカード刺しクリップ@ Ragnarok Online、リボン@FFシリーズ
[[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:ブロリーを倒す
2:ブロリーを倒した後、映画館へ向かいフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
4:十六夜咲夜を警戒
5:知り合いの情報集め
6:殺し合いに反対する者を集める
7:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい。メタさんの安否が気になる
8:脱出方法を確立する

[備考]
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。


【相楽左之助@るろうに剣心~明治剣客浪漫譚~】
[状態]:肩から脇腹にかけて斬り傷と重度の火傷、左脚に銃痕
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS 
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:ブロリーを倒す
4:二重の極みが打てない……だと……?
5:主催者相手に『喧嘩』する。
6:弱い奴は放って置けねぇ。
7:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
8:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ

sm190:どうしてこうなったⅡ 時系列順 sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ 投下順 sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ 鏡音リン sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ ブロリー sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ 紅美鈴 sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ 相良左之助 sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ アレックス sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~
sm190:どうしてこうなったⅡ KAITO sm190:どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~






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