※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

激流に身を任せた結果がコレだよ!!(B面) ◆vXe1ViVgVI




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 これは志々雄がトキ達を襲撃する十数分前の出来事。
 まだメタナイト達がトキと大河を影から追っていた時の事だ。
 メタナイト、左之助、美鈴、志々雄の四人は草原の中に立ち、前方に見える二つの影の様子を伺っていた。

「あの二人は何をしているのだ……?」
「なんなんでしょう、何か話し込んでるみたいですけど……」
「どうでも良いからよお、早く追い付いちまおうぜ。そんなこと追い付いて後でアイツ等に聞けば良いじゃねえか」
「阿呆か。ああやってコソコソと密談してるって事は、誰かから身を隠してるって事だろが。
俺達が不用意に近付いて、その誰かが気付いちまったらどうすんだ、阿呆」
「ああ成る程……って、てめぇ、二回も阿呆って言ったな!」
「ちょっと二人共静かにして下さいよ!」
「落ち着け、左之助。志々雄もこれ以上挑発するな。お前もこんな所で同盟を破綻させたくはないだろう」
「分かってるよ。余りにこの単細胞が考え無しなもんでつい、な」

 所々に剣呑な空気を巡らせつつも、共に動く四人組。
 その様子は決して良好なものには見えないが、崩壊に至る兆しもまだ見えない。
 実際この時点では、志々雄も動乱を起こすつもりは皆無であったし、まだこの同盟関係を継続させようと考えていた。

「考え無しだと!? てんめぇ……」
「落ち着けと言っただろう、左之助。ここで怒れば奴の思う壺だぞ」

 小さな火種はあれど、まだしっかりと歯車は噛み合い周り続けていた。
 その歯車を狂わす出来事は、この数秒後に発生する事となる。

 始まりは、美鈴の一言だった。

「メタさん! トキさんが大河さんをっ……!」

 慌てた様子で発せられた美鈴の一言。
 その場を包んでいた喧騒が止み、三人の視線が美鈴へと向けられる。
 そして、美鈴の視線を辿るように視界が移動していき、そこでメタナイト達は見た。
 トキが気絶した大河を草むらの中に隠している、その光景を。

「おい、何やってんだよアイツは」
「……分からん。だが、殺害した訳ではないんだな?」
「はい、お腹を殴って気絶させただけですけど……」

 トキが行った謎の行動に、それぞれ困惑を浮かべその光景を見詰める三人。
 トキを良く知らない左之助は小さな疑心を、僅かであるがトキの人間性を知るメタナイト達は当惑を覚えながら、その行動を見守る。
 草原の彼方から青白い光が迸ったのは、そしてトキが疾走を始めたのは、その数瞬後の事であった。
 美鈴達はトキが向かう先……つまりは発光現象が起きた場に目をやり、そこにいる赤色の鎧を纏った少年とゴツい筋肉を纏った青年の存在に気付く。
 同時に二人組の側に転がる黒こげの死体も発見。
 左之助以外の四人は、その光景を見てトキの行動の真意を理解した。

「……志々雄の言う通りだったらしいな」
「は? どういう事だ?」
「多分トキさん達は、隠れながらあの二人組を追ってたんですよ。おそらく、接触するべきかどうか迷ってたんだと思います。
で、あの二人組が危険人物だと分かったから、倒しに向かった……多分、そんな感じだと思うんですけど」
「ああ、そういうことか。……ちょっと待て。でも、だったらあの嬢ちゃんを殴る必要は無いんじゃねえのか?
あのトキって奴は、何でわざわざ嬢ちゃんをノシてから向かったんだよ」
「……大河は背負いすぎる節があるのでな。戦場について来ないよう、気を失わせたのだろう」
「……そうか」

 メタナイト達の話を聞き、三人に遅れて左之助もまた、理解する。
 二人組へと迫っていくトキを遠目にボンヤリと眺める左之助。
 そして数秒の間を取った後、

「よっしゃ、俺も行くぜ!」

 両脚に備わる魔具をフルに活用し、駆け出した。
 余りに唐突なスタートにメタナイトと美鈴は呆気に取られてしまう。
 我に返ったのは左之助が走り出してたっぷり三秒ほど経過した後。
 二人は驚きを顔に滲ませながら、呆れたように大きく溜め息を吐き出した。

「……あの人は単純というか猪突猛進というか……」
「まぁ、悪い男ではないようなんだが……」
「……ですね」

 再び、溜め息。
 二人は顔を見合わせた後、どんどん遠ざかっていく左之助へと首を回す。
「……お前は大丈夫なのか? 主人との約束があるのだろう」

 左之助の背中を見詰めながらメタナイトはある疑念をこぼす。
 数時間前に彼等が遭遇したやけに派手な姿をした少女――フランドール・スカーレット。
 美鈴がもう一人の主人として従事を決意した、吸血鬼の少女。
 メタナイトは覚えている……あの邂逅から僅かな時間、美鈴の様子が少しおかしかった事を。
 その様子を覚えているからこそ、彼自身からフランドールに関する話題に出す事は無かった。
 だが、このタイミングでメタナイトはその話題に触れた。
 西に沈む太陽が彼女達の約束の期限を示していたから、
 あの太陽が沈みきったその時こそが、タイムリミットだと分かっているから、
 メタナイトは遂にその話題を口にした。

「大丈夫ですよ」

 満を持した質問の答えは笑顔であった。
 美鈴は微笑みと共にメタナイトに語り掛ける。

「此処から映画館までは2キロくらいですし、それ位なら全力走れば十分も掛かりませんし。それに、いざとなれば飛んで行けば良い訳ですしね」

 その答えに嘘はなかった。
 確かに間に合うかどうか心配ではあったが、メタナイト達はここまで共に生き延びてきた『仲間』だ。
 『主人』と比較すればその優先順位は遥かに低い。
 だがそれでも『仲間』を放置してまで『主人』の元へ向かう事が、美鈴には出来ない。
 せめて、約束のリミットギリギリまで力を貸して上げたい……美鈴の心は何時しかそのような願望を思っていた。
 そして、その願望が、美鈴の心配ないと語るような笑顔になっていた。
 美鈴の笑顔を受け、メタナイトもまた仮面の下で小さく笑う。
 胸に宿る幾分かの安堵が、メタナイトの鉄仮面を僅かに揺らがしていた。

「そうか……すまないな、迷惑を掛ける」
「言いっこなしですよ。私だってお嬢様に関連する事で、メタさんに力を借りるかもしれないんですし」

 二人は互いに笑い合い、共に走り出す。
 向かう先は数秒前に駆け出した左之助の背中、そしてその先にて鎧の男と戦闘しているトキの元。
 こうして三人の戦士達は先に待つ混沌を知らずに、戦場へと踏み入る事となった―――。





 そして、場に残されるは最強の剣客が一人、志々雄真実のみ。
 志々雄は呆れ顔で前方を走る三人を見詰め、嘲笑を浮かべる。
 事態が急展していったとは云え、最も注意を払うべき自分の存在を忘れて、仲間の助けに向かうその考えの至らなさ。
 呆れを通り越し、笑えさえする。
 あの単純バカが居なければ、あの二人ももう少しマシな判断を下せただろうが……仕方がない。
 此処で別れたとしても、折角組んだ同盟が無碍となる。
 再び溜め息を吐き、先を走る三人に追い付こうと志々雄も足を踏み出し――


「動くな。両手を挙げろ」


 ――同時に、後方から低い嗄れた男の声が届いた。
 チャキ、という軽い音と共に、堅い金属の物体が志々雄の後頭部に押し付けられる。
 志々雄はその冷たい感触に覚えがあった。
 何時しか警官隊の誰もが装備するようになっていた遠距離兵器――拳銃。
 刀を得物とする志々雄自身は一度も扱った事はないが、拳銃に関するある程度の知識は持っていた。
 引き金を引くだけで遠くにいる人間の身体を易々と破壊する、魔法のような兵器。
 刀、そして剣客という存在を退廃へと追い込んだ原因の一つである兵器。
 その兵器が、何時の間にか後頭部に突き付けられていた。
 特別な警戒をしていた訳ではないとはいえ、この自分を相手に楽々と間合いを詰め、銃口を当てられる距離にまで接近した謎の敵……敵が持つ技量の高さに、志々雄は素直な感嘆を覚えていた。
「……仕方ねぇな。降参だ、逆らいはしねぇよ」

 そして、志々雄は驚くほど素直に、謎の襲来者の命令を受け入れた。
 おそらく、志々雄の実力ならば抵抗は充分に可能な状況だっただろう。
 だが、その状況で彼は降伏の道を選択した。
 完全に背後を取られ、また敵の姿形や装備している武器すらも把握できていない現状……此処で無理な反抗を行えば確実に痛手を負う。
 志々雄は、先に続く闘争を見据えた上で冷静な判断をしてみせたのだ。

「……懸命な判断だ。まずは、デイバックと刀を足元に置け。そして前方の草むらへと蹴り飛ばすんだ」

 淡々とした口調で矢継ぎ早に指示が飛ばされ、それと同時に銃口の冷たい感触が志々雄の後頭部から離れる。
 破れかぶれの反撃を警戒してのその行動に、志々雄は、敵が相当な訓練を積ん
だ兵士だという事を再確認した。

「距離を取らせてもらうが、銃口は依然お前の頭を狙っている。少しでもおかしな真似をしたら容赦なく撃たせてもらうぞ」

 忠告を聞き流しながらも志々雄は敵の指示通り武装を解除していく。
 肩に掛かったデイバックと脇に差さった日本刀を地面に置き、草むらへと蹴る。
 続くボディーチェックを受け、そして遂に志々雄は敵と対面を果たす事ができた。

「ほう……」

 そこにいたのは、熟練した雰囲気を漂わせる三十代半ばの兵士。
 肩まで掛かる長髪に顎部を覆う無精髭。
 武器は拳銃が一丁。構えに隙は少なく、一目で武器を扱い慣れている事が分かる。
 思った通り相当な手練。
 現在の状況では、戦闘したとしても無傷で勝利を得る事は困難だろう。
 男は、地に転がるデイバックに回り込みながら近付き、銃を突き付けたままそれらを拾い上げた。
 その一連の動作にも、やはり隙は少ない。一挙一動に男の実力の高さが滲み出ていた。

「お前は殺し合いに乗ってるな?」
「ああ、乗ってるぜ」

 男の問いに対し、志々雄は平然と真実を語る。
 焦りも躊躇いもない返答に、逆に面を食らったのは男の方。
 眉が微かに吊り上がり、銃を握る手に力が籠もる。

「……向こうに俺の仲間が待機している。詳しい話はそこで聞かせてもらう」
「良いだろう」

 装備は解除され唯一の武器である刀も没収された。
 志々雄にとっては圧倒的に不利な状況。だというのに志々雄の口は弧を描く。
 このギリギリの状況すら楽しんでいるかのように笑い、男の言われた通りに行動を開始した。


 そして歩き出してから数十秒、志々雄は無精髭の男が言う仲間とやらに出会う事となる。
 人数は二人。
 ウサ耳を生やした幼女に大層な着物を纏った中年オヤジ。
 その二人は、草むらの陰に身を縮こませて隠れていた。
 異色極まりない……もはや犯罪の匂いすらするその二人組を見て、志々雄は思考する。

(さて、どうするか……)

 後方には相当な実力者であろう無精髭の男。
 前方には素人同然の男が一人にやけに血走った瞳をしている幼女が一人。
 選択肢はまだ提示されてすらいない。

「その男は誰だ!」

 この先、どう行動していくか……中年の叫びを聞きながら、志々雄はただ思考していた。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「その男は誰だ!」

 横に立つ中年の叫びを聞きながら、てゐはただ純粋に焦っていた。
 西の空を見ると、世界を照らす恒星が今にも地平線と触れようかという位置にある。
 あの恒星が沈みきったその時こそがタイムリミット。忌々しいこの首輪が爆発するその時だ。
 時間にすればあと一時間も無いだろう。
 そう、つまりこのまま時間が経過すれば自分は死ぬ。
 白色の首輪は黒色に変化する事なく、自分の首ごと爆散するのだ。
 嫌だった。
 死にたくなかった。
 横に立つ中年でも良い、スネークが連れてきた包帯の男でも良い、いざとなればスネークであっても良い……早く誰かを殺さなくては―――。

「ス、ス、スネーク! その男は殺しても良いウサか!?」

 思いと比例するように木槌を握る手は力を増していく。
 焦燥が胸をこがし、自身の生き延びる為の『餌』となる人物を求める。

「落ち着け、てゐ。こいつを殺するのは情報を引き出してからだ」

 そのてゐの思考に反し、無精髭の男――ソリッド・スネークは首を横に振る。
 だが、その否定を受けながらも、てゐは安堵に心中を包み込まれていた。
 『餌』が……『獲物』が、見付かった。
 先程のスネークの台詞は、情報を引き出せば殺しても良い、と言ったも同然。
 てゐは無邪気を装う仮面の下で凄惨な笑顔を浮かべ、獲物を眺める。
「スネーク! いくら殺人犯といえど殺害してしまうのは……!」
「……雄山の意見も分からない訳ではない。だが、このままではてゐが死ぬ。それにコイツは、殺人に対して何ら嫌悪感を持っていない……そんな瞳をしている。
この男を生かして置くと沢山の人が犠牲になるんだ。お前には理解できないかもしれないが……俺は、そう思う」
「く……! だが……!」

 スネークの言葉に言い返せず押し黙る雄山。
 唯一の不安材料も折れ掛かっている。てゐの安堵が揺らぐ事はなかった。
 その脳内には、目の前の男を殴り殺すその瞬間が映像となり、何回も何回もリピートされている。
 確実に訪れる未来、揺らぐ筈のない未来……言い争う二人の男達を前にてゐは心の笑みを更に深くしていた。

「……分かった、今回は見逃そう」

 結果的に折れたのは、てゐの予想通り雄山であった。
 苦渋を顔に滲ませながらも、腕を組みその場から引き下がる。
 スネークは雄山の決断に一つ礼を言い、そして志々雄の正面へと回り込む。
 その表情は徐々に冷淡な物へと変化していき、志々雄と対面した時には雄山に見せた物とはまるで別種なものへとなっていた。
 情報を吐かせるには手段を問わない……その顔は志々雄に無言で語っていた。

「まずは名前を教えてもらおうか」
「……志々雄真実だ」

 その表情を前にして、志々雄は嘘を吐く事が無意味だと悟る。
 笑顔を崩す事なくスネークの視線を真っ向から受け、自身の名を口にした志々雄。
 その脳内では現状の打開を目指し模索を続けている。

「……志々雄、次の質問だ。お前と共に行動していた奴等は何を目的としている?」

 ―――天恵が舞い降りたのはその問いを聞いた瞬間であった。
 組み上がるは、この状況を脱出する方法。
 決して楽な道のりではないが、全てのハードルを越えればイケる。
 対応を失敗しなければ、イケる。
 状況の打破どころではない。
 奴等もコイツ等も全てを排除できる魔法のような、そんな展開に持っていける。
 その為にも、此処だ。
 この切り返しで強烈な印象を植え付けるんだ。
 そうすれば、危うい所ではあるが―――極上の未来を引き寄せられる。

「フ……ハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!
!」

 ―――そして、熟考の剣客が動き出す。
 唐突に口から飛び出すは、張り巡らされた思考とは裏腹の狂ったような高笑い。
 何が起きたのかと、目を見開き驚くのはスネーク達三人。
 これまでの態度は狂気の色を孕んでいるとはいえ、ある程度の冷静さはあった。
 だが、今は違う。
 まるで脳組織の何処かが破損したかのような豹変。
 三人は驚愕と警戒に包まれながら志々雄を睨む。

「……静かにしろ」

 制止の言葉を上げるはスネーク。
 だが、その声が聞こえているのか、いないのか志々雄の笑い声を止む気配すらない。

「ハッハッハッハッハッハッハッハッ! こりゃあ面白え! 傑作だぜ、お前等はよぉ!!」

 笑う、笑う。
 狂ったようにただ、笑う。

「……静かにしろと言っている」
「そうだ、お前はアイツ等を見逃しちまったんだよなあ! スネークって言ったか? 阿呆だよ、お前はよぉ!
俺を捕まえたところでアイツ等を自由にさせてちゃ、何ら意味がねぇんだよ!!」

 ――ズドン、とその狂言を遮るように銃声が響き渡った。
 天に向かって放たれた銃弾は何にも命中する事なく、地面に落下。
 その大音量に流石の志々雄も高笑いを止め、スネークへと目をやる。
 志々雄の表情には未だ笑顔が張り付いていた。

「今お前は、アイツ等を自由にさせてたら意味がない、と言ったな」
「ああ、言ったぜ」
「……それは、どういう事だ」
「言葉通りの意味さ。俺を殺したところで奴等は殺戮を続ける……それにアイツ等は俺よりもずっと強く、凶暴だ。
さっき体の良い獲物も見つけたしな……今この瞬間にも一人や二人は殺してるかもしれねぇな」

 神の視点に立つ者なら一目で分かるような虚言を並べ、志々雄はスネークを見詰める。
 だが、スネークはその嘘を見破る事が出来ない。
 彼の経験からして、眼前の男が殺し合いに乗っているのは確かであり、その男と協力するという事は、その協力者達もまた殺し合いに乗っているとしか考えられない。
 夜神月のように仲間を口八丁で騙して……という可能性もあるが、ならば自分達に対しても嘘を吐く筈。
 殺し合いに乗っている事実を易々と語るということは、志々雄にはそれだけの自信が……対主催を掲げる参加者達と正面から対立し、そして勝ち抜く事ができる自信があるという事だ。
 夜神月に比べればまだ戦い易い相手、だがまた別の意味で厄介な相手でもある。
 そして、殺し合いに乗っている男と行動を共にするという事は、彼等もまた殺し合いに乗っているという事。
 自発的に動いていたその様子を見る限り、暴力による強制的な従僕の線も消える。
 今回の発言に関しても、おそらく志々雄は嘘を言っていない……スネークは上記の考察を経て、そう判断付けてしまった。

 勿論、志々雄が語った殆どは嘘。

 彼と行動を共にしていたメタナイト達は殺し合いになど乗っていないし、スネークと同じくゲームの転覆を目標と掲げる立派な対主催だ。
 志々雄よりも凶暴てはないし、実力的にも拮抗していると言える。
 だが、スネークは志々雄の嘘を看破する事ができなかった。
 彼の観察眼を曇らせたのは単純な情報不足。
 相手を殺人鬼だと把握しながらも手を組むなどという複雑な同盟関係を、スネークが知る由もないし、そのような同盟など彼からすればナンセンスの塊。
 加えてメタナイト達の同盟に関する情報は皆無。
 流石のスネークといえども、この状況では志々雄の嘘を見破る事は限りなく不可能に近い。
 事実、彼は志々雄の嘘に気が付く事はなく――

「分かった、貴重な情報をありがとう。礼と言っては何だが―――少し寝ていろ」

 ――勘違いをそのままに全ての事態を収集する方法を選び取った。

 告げ終えると同時にスネークの拳が志々雄の腹部を襲った。
 その鉄拳は完全に志々雄の鳩尾を捉えている。
 抵抗の暇もなく、呻き声を一つ上げ崩れ落ち、腹這いに倒れる志々雄。
 その姿を一瞥し、スネークは後方に立つてゐと雄山に声を掛ける。

「俺は今からこいつの仲間達を止めに向かう。志々雄は『体の良い獲物を見つけた』と言っていた。
おそらくは現在進行形で襲撃を行っているのかもしれない。俺一人で何処まで手助けできるかは分からないが……出来る限りの事はやってみるつもりだ。
雄山とてゐはさっきと同じ様に此処に隠れていてくれ」

 志々雄から与えられた嘘の情報を信じ、スネークは動き出そうとしていた。
 志々雄と接触した地点で、志々雄の仲間達の姿は確認していた。
 阻止の方法は未だ思い浮かばないが、迅速に行動をせねば無駄な犠牲者を出す事となる。
 スネークは、何としてでも志々雄の仲間達を止めるつもりでいた。


「……早めに始末を付けておくんだな、てゐ。取り敢えず無力化はしておいた、トドメを刺すのは容易だろう。
それと雄山はこれを装備しろ。拳銃と比べればまだ扱い易い筈だし、桑の実やコッペパンよりは余程タメになる筈だ」

 そう言い、雄山へと差し出されるは鞘に収まった一振りの日本刀とデイパック。
 先程、志々雄から没収したばかりの物品だ。
 日本刀を装備した事により何が変わる訳でもないが、素手に比べれば生存率も多少は上がる筈だ。
 スネークの判断は概ね間違いではないと言える。

「……すまんな」

 雄山も頭を下げ、素直に日本刀を受け取った。
 持ち慣れない武器に顔を苦ませながらも、一回二回と納刀状態のまま素振りを行う。
 手に馴染む感覚はない。
 初めて持つ日本刀は雄山に僅かな不快感を植え付けていた。

「じゃあ俺は行く。他の襲撃者が現れた時は俺に構わず逃亡しろ、分かったな?」
「うむ……了解した。お前も気を付けるんだぞ」
「分かったウサ……無理しないでね、スネーク」

 そうして歩き去るスネークを見送り、場には二人の人間と一匹の兎が残された。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 スネークは草むらの中に身を隠しながら、遠くに立つ三人組を見る。
 奴等の足元には二人の人間が横たわっている。生死の判断はこの位置からは不可能。
 奴等が介抱をする気配はない……対主催だとすれば、気絶した仲間をあんな乱暴に放置する事はしない筈だ。
 やはりあの志々雄の情報は正しかったのだろう。
 そもそも志々雄という危険人物と行動を共にしていたのだ。
 その時点で奴等の人間性を把握するには充分だ。

「……やるか」

 奴等からはこの位置は風下。距離も二百メートルほど離れてる。
 自分の腕ならギリギリ狙撃は可能な距離。銃声も届く事はないだろう。
「まずは奴等の手足を潰し無力化を計る。その後に説得が可能か接触。……任務としては単純明快、イージーランクだな」

 草むらから身体を乗り出し、呼吸を整えるスネーク。
 大きく一度深呼吸し息を止め、視界のブレを無くす。
 そして、酸欠により視界が霞むより早く―――引き金を絞った。

 一発、
 二発、
 三発、

 次々と放たれる弾丸が、正確無比にトキ達を貫いていく。
 叫び声は聞こえないが、彼等が倒れ伏すのは確認できた。
 スネークは、冷静に敵勢力に与えたダメージを観察し、任務の達成を把握する。

「任務完了か……」

 銃弾は狙った箇所に寸分違わず命中した。
 当分は立ち上がる事も出来ない筈だ。
 ……と、スネークが僅かな安堵を覚えたその瞬間――その表情が固まった。

「何だ……アレは?」


 誰もが倒れ伏すその場に何時の間にか、不思議な物体が乱入していた。
 それは、異常に短い手足と悪魔を連想させる羽根生やした球体。
 その球体が宙に浮きながら、奴等の一人と会話している。
 二本足で立つ有袋類や兎のような耳を生やした幼女を見てきたスネークであったが、その特異すぎる姿に思わず驚愕をしてしまった。

「球体……に手足と羽根が……? それに動いて……」

 そして、思わず呆然としていたスネークに、その球体が羽根を羽ばたかせ直進してきた。
 スネークも直ぐさま気持ちを切り替え銃を構えるが、銃撃しようにもその標的には手足がない。
 結局、引き金を引く事はできず、スネークは再度茂みの中へと身を隠した。

「くそっ……何なんだ、あの生物は……」

 悪態を尽きながらも、飛来したメタナイトを観察するスネーク。
 よくよく見れば、志々雄と遭遇した時にもこんな生物がいた気がする。
 その身体の小ささにより狙撃する箇所は少ないが、無力化できない事はない。

(だが、そう簡単にいく相手でもなさそうだな……)

 装備から見るに、敵は近接戦を得意としている。
 そして、驚愕していたとはいえ自分は奴の接近を許してしまった。
 先の無条件に狙撃できる状況とはまるで違う、不利な状況。
 明らかに自分は致命的なミスを犯した。

「敵の実力は未知数だが……やるしかないか」

 意を決し、スネークは拳銃を握り締める。
 トキ達とは別な場所で彼等の戦いもまた、始まった。



【D-4 草原/1日目・夕方】
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]顔面打撲、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:狙撃手の打倒
2:志々雄真実を強く警戒
3:美鈴の知り合いの情報集め
4:殺し合いに反対する者を集める
5:脱出方法を確立する
6:触覚の男との決着
[備考]
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※E?2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました
【ソリッド・スネーク@メタルギアソリッド】
【状態】肉体疲労(小)
【装備】コルトパイソン(3/6、予備弾31/36)@現実、TDNスーツ@ガチムチパンツレスリング、越前の軍服
 愛犬ロボット「てつ」@日本郵販テレホンショッピング
【持物】やる夫の首輪、ハイポーション@ハイポーション作ってみた、馬鹿の世界地図@バカ日本地図、全世界のバカが考えた脳内ワールドマップ
 咲夜のナイフ@東方project、さのすけ@さよなら絶望先生、基本医療品
【思考・行動】
基本思考:情報を集める。また、首輪を専門の奴に見てもらう。
0、目の前の男(?)を倒し、志々雄真実の仲間と接触。その後F-5へ向かう?
1、オフィスビルに向かう途中に図書館へ向かい、バクラ、言葉が危険人物か確認した上で、危険人物なら排除する。
2、自分から攻撃はしない。見つかった場合も出来れば攻撃したくない。
3、十六夜咲夜のような奴が居れば、仲間に誘った後、情報を聞き出した後倒す。
4、てつを使用し、偵察、囮に使う。
5、てゐが邪魔か否かを判断し、首輪が白くなったら延命させる。
6、十六夜咲夜、紅美鈴、フランドール・スカーレット、サンレッドを警戒。
[備考]
※馬鹿の日本地図の裏に何か書いてあります。
※ミクが危険人物という情報を得ましたが、完璧に信用はしていません。
※盗聴されている可能性に気付きました。また首輪に電波が送られているか何かがあると思っています。
※電波を妨害するチャフグレネード等の武器を使えば、どうにかなると考察しています。
※てゐからは千年以上生きている、知り合いの事を話してもらいました。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 ―――そして再び時は巻き戻され、スネークが離脱した直後の場。
 地面に倒れる剣客と、木槌を持ち標的に迫る白兎、そして全てを見守る覚悟を持った美食家が集結した会場に視点は移る。

 透き通るような静寂の中、最初に動き出したのは因幡てゐ。
 歓喜を面に出さないよう注意して、わざと沈痛な表情を装い、気絶中の志々雄へと近付いていく。
 喜々として殺人を行えば雄山に怪しまれると思っての行動であった。
 雄山も複雑な胸中を顔に滲ませていたが、てゐの行為を止めようとはしない。
 殺人鬼であろうと、人を殺す事に納得はできない。
 だが、眼前の少女が命を失う事もまた雄山にとっては納得できなかった。
 湧き上がるは無力な自分への苛立ち。
 自分に力があれば、自分にこの忌々しい首輪を解除できる技術があれば……それらの思いは後悔となって雄山にのし掛かっていた。
 雄山は唇を噛み締めその光景を見つめる。
 決して目は逸らさない。
 複雑な事情があるとはいえ殺人を認可したその事実から、雄山は目を逸らそうとはしなかった。
 その視界の中で、てゐが高々と木槌を振り上げた。
 あれを振り下ろせば、男は死ぬ。
 自分の目の前で、人が死ぬ。
 罪の瞬間を雄山は両の瞳で見詰め続ける。

 そして、木槌が振り下ろされ――




 ゴキリ、




 ――奇妙な音と共に雄山の視界がひっくり返った。
 地が天に、天が地に……視界そのものが逆さになり、雄山の思考は一瞬にして混乱の極みに陥る。
 だが、疑問を口から吐こうとするも声が出ない。口を開く事すら出来なかった。

(な、何が……?)

 身体を動かす事が……指一本も動かす事ができない。
 視界が急速に狭まっていき、漆黒に染まっていく。
 自分の身体に何が起きたか理解することすら出来ずに―――雄山は永遠の眠りについた。

「う、そ……」

 自身が持つ木槌の矛先を見詰めながら、てゐは驚愕に言葉を呟いていた。
 その木槌の先にてゐが想像していた光景は無い。
 潰れた頭蓋に辺りを濡らす鮮血と脳漿……そんな光景が在る筈だった。
 標的はスネークが完全に戦力を奪っており、外す訳がない。
 非力な自分でもこの木槌を本気で振り下ろせば、人間の頭くらいは簡単に砕き散らす事ができる。
 動くことのない敵、人を殺害するには充分な武器……まさかの要素はない筈だった。
 その筈だったのに、
 何故、どうして、この男は―――立っている。

「外れだな、嬢ちゃんよぉ」

 それもただ立っているだけでない。
 てゐの一撃を回避した志々雄は、それと同時に雄山へ接近して、その頸椎を捻り折っていた。
 それは予め決定されていたかのような、淀みない流れるような動き。
 獣の如く敏捷性で立ち上がり、疾走し、雄山を殺害した。
 油断があったとはいえ、その一連の動作はてゐにも読み切れる事はなく、おそらく雄山には知覚すら不可能であったろう。
 頭頂部と顎部の位置が逆さまになった雄山を棄て置き、志々雄がてゐへと歩み寄る。

「な、何で……気絶してた筈じゃ……」
「気付けに、ちょいと唇を噛み切らせてもらってな……延髄狙われたらヤバかったが、臓腐への痛みくらいならこれで耐えられるんだよ。
あの男なら気付くとも思ったがな、仰向けに倒れたお陰で何とかなったようだ」

 言葉と共に吐き出された肉片は決して小さい物ではなかった。
 よくよく見れば、その口からは夥しい量の血が流出している。
 ダメージに繋がる訳ではいが、相当な痛みが志々雄を襲っている筈。

 だが、志々雄は変わらぬ瞳を白兎へと向けていた。

 殺意に染まった瞳を―――、
 殺人を犯した直後だというのに欠片の罪悪感も見受けられない瞳を―――、
 まるで捕食者の如くギラついたその瞳を―――、
 志々雄はてゐへと向けている。

 てゐはその志々雄の瞳から目を離す事が出来ない。
 数瞬前までの余裕と歓喜は何処かに吹き飛び、恐怖が心を支配する。
 やはり自分は兎なのだと、やはり自分は搾取される側なのだと、てゐは心の端でその理不尽な真理に絶望していた。

「ひっ!」

 恐怖が音となり、口から漏れる。
 猫を被る余裕も、口八丁でこの場を切り抜ける余裕も、なかった。
 恐怖に駆られた兎は眼前へと迫る捕食者に対抗する術を持たない。
 命の危機に身体を震わせ、そして心の絶叫と共に全力で走り出す。

 ―――逃げなくては、この捕食者から逃げなくては!

 ただ全力で駆ける。
 文字通り脱兎の如く捕食者からの逃亡を計る―――が、易々と逃亡を許すほど、志々雄真実という捕食者は甘くない。
 志々雄は、雄山の死体から日本刀を奪うとてゐの行く手目掛け、それを投擲した。

「ツッ!」

 夕焼けの草原を駆ける閃きがてゐの脚を掠め、肉と脂肪とを僅かに削り取る。
 傷としては大した事のないもの。だが、その痛みがてゐの動きを止め、地に転ばせる。
 気付いた時には、てゐは仰向けに地面へと転がっており、そのてゐへ志々雄が迫る。
 そして馬乗りになると、てゐの平坦な胸を右手で抑え、地面に押し付けた。

「逃げることはねぇだろ、もう少し楽しんでいこうぜ」
「た、助けて……何でもするから……お願い……助けて……」

 胸部を通して伝わる重い力に、てゐは動くことができなかった。
 拘束から逃れている手足をばたつかせるも、志々雄の身体に届くことすらない。
 今のてゐに成せる事は、必死に命乞いをし、心変わりという矮小な可能性に全
てを賭ける事だけ。

「何でも……何でもするから……死にたくない……こんな、所で死にたくないぃ……」

 双眸に演技ではない本物の涙を浮かべ、てゐが譫言のように呟きを続ける。
 もはや狡猾な白兎はこの場には居らず、ただの『餌』と化した幼女が残されただけであった。

「何でもする、ねえ」

 対する志々雄はそんな白兎を愉悦で見下ろしていた。
 まるで値踏みをするような視線でてゐを舐めまわす。
 この『餌』をどう利用し、どう活用するか……その方法を熟考しながら、志々雄はてゐを観察していた。

「……良いぜ。助けてやる」
「え……?」

 ――そして、志々雄は『餌』の利用方法を決定した。
 てゐを抑える右手を離し、その小さな身体を拘束から解放。
 そのまま地面に転がる日本刀を拾い上げ、腰と帯との間に挟み込む。
「なに惚けてんだ? この場は見逃してやるって言ってんだろが」
「え……あ……? あ、ああ、ありがとう御座います!」

 本当に見逃してくれるとは思っていなかったのか、茫然自失状態にいたてゐがようやく活動を再開する。
 恐怖が抜けきっていない、強張った顔で謝礼を叫びながら立ち上がるてゐ。
 そんなてゐを横目で見て、志々雄は口を歪ませる。

(――計 画 通 り ! ……って奴だな)

 そう、全てが上手くいっていた。
 先の天恵で閃いた全てをこなす事ができた。

 あの時――スネークに左之助達について問われた時、思い付いた天恵。
 それは『スネークと左之助達をぶつけ合う』という物であった。

 スネークという男は敵と正面から戦闘する事はない。
 物陰に身を隠し、敵の不意を付き、無力化させるその戦法。実力差や人数差による戦力差を埋められる、最も賢い戦い方だ。
 おそらくあの三人……トキを合わせれば四人を相手にしてもそれなりの戦果は上げられる筈――志々雄はそう考え、スネークと左之助達がぶつかるよう仕組んだ。
 その特異な同盟関係を逆手に嘘の情報をスネークに刷り込み、左之助達の元へ向かわせたのだ。
 そして、戦いにより負傷し弱体化したアイツ等を叩く。
 個々の力は大した物であらずとも、あれだけの人数が集まれば厄介なもの。
 そこにトキという男も加われば、戦力は更なる飛躍を遂げるだろう。
 そして、それは反逆が困難な状況に追い詰められていく事と同意義。
 だが、何も知らないコイツ等を上手く利用すれば、打開は可能。
 スネークと奴等をぶつけ、その疲弊したところでタイミングを見計らえば、まだ可能性は見える。

 結果として、策は―――奇跡的なまでに上手く進んだ。

 スネークは奴等の襲撃に向かい、兎娘という手駒も入手でき、一人の邪魔者も殺害できた。
 『体の良い獲物を見付けた』との嘘を付き、スネークの離脱を仕向けたのは確かだが、此処まで戦果を上げられるとは考えてもいなかった。

(運も俺に味方しているか……)

 このまま娘を連れて逃亡する事も出来る。
 このまま奴等と合流し、同盟を継続する事も出来る。
 だが、運の波が傾いてる今なら―――勝負を掛けても良いかもしれない。

「おい、娘。付いてこい」
「は、はいウサ……」

 雄山の死体からデイパックを奪い取ると、志々雄はてゐを連れて歩き出した。
 向かうはスネークと左之助達が戦闘している筈の場所。
 あの四人に、スネークがどれ程のダメージ与えられてるかは分からない。
 だが、それでも今なら勝利を得られる気がした。

「おい、娘。お前てゐって名前だよな」
「そ、そうウサ……」
「美鈴って娘を知ってるよな。お前も、奴のように空を飛べるのか?」
「飛べますけど……」
「そうか」

 志々雄は一考する。
 奴等を葬れる完全な策を、
 奴等を殺害できる策を、

「……お前、何で俺を殺したがってた」
「! そ、それは……」
 殺人に対する考え方の違いはあれど、スネークと雄山は完全な対主催思考だった。
 だが、このてゐという娘は違う。何故か明確な殺意を持ち、攻撃をしてきた。
 そして、それをスネークと雄山は容認していた。
 何故、少なからず殺人に忌避の念を抱いておきながら、殺人を許可するのか……志々雄はその矛盾を疑問に思い―――そして利用するにはこの上ないとも考えていた。

「……言いたくないなら、言わなくて良い。絶対に殺人を犯さなければいけない理由が、お前にはある。そうだな?」
「……そうウサ」
「へっ、じゃあお前は幸運だな」
「え?」
「今から俺達はある集団を襲撃する。お前も殺せるよう頑張るんだな」

 志々雄の言葉を受け、てゐもまた熟考する。
 目の前の男は恐ろしい程に強い。少なくとも自分よりは遥かに、正面からの戦いなら恐らくあのスネークよりも。
 その男と共に行動すれば、敗北する事はない。
 上手く立ち回れば漁夫の利を得る事も出来る。
 何時か逃げ出さねば殺害されるとしても、今この瞬間の自分には有り難い同盟だ。

「……分かったウサ。協力するウサ」
「じゃあお前は、空中で待機してろ。俺が攻撃をしたら上から奇襲するんだ」

 考え付いた策は単純なもの。
 だが、単純が故に成功した時のリターンは大きい。
 見る限り、逃亡する様子もない。
 充分、成功する要素はある筈だ。

「じゃあ行け。上手くやれよ」
「任せてウサ!」
 ―――そして、空に向かうてゐを見送り、志々雄は遠くに見える左之助へと近付いていく。
 奴等は負傷したようでうずくまり、メタナイトの姿はない。
 まともに戦えそうなのは、トキのみ。
 意を決し左之助達に声を掛けようとする志々雄。

 が、その時、踏み出した右足が何かを踏みつけた。

 足裏からその何かが、長細い硬質の物体だという事が伝わる。
 志々雄の視線が下に向く。
 そこに転がっていたのは―――一振りの刀。
 志々雄の口が歪む。
 その刀は愛に殉じた少年が武器として装備していた刀。
 殺害された際の一撃で少年の手から零れ落ち、こんな遠くにまで吹き飛んだのだ。
 その刀の名は無限刃―――そう、志々雄真実の愛刀であった。
 志々雄は愛刀を拾い上げ、その腰にではなくデイパックへと入れた。
 刀はもうある。ならば奇襲用として忍ばせておいた方が、後々の展開によっては役に立つ筈だ。
 加えて、武器を隠しておくには最適なデイパックという存在もある。
 これからの事を考えて、忍ばせておくに越した事はない。

「やはりが運が傾いているか」

 そう、先の窮地からの脱出といい、この無限刃の件といい運は自分に傾いていた。
 勝機は充分にある。

「――よぉ、雁首そろえて何落ち込んでだよ」

 ―――そしてそれらの過程を経ることにより、志々雄は五角形を掌握した。
 対主催を目標と掲げる三人を血の海に沈め、自身は殆ど無傷で場に立ち尽くしている。
 志々雄の完全勝利とも言える状況。
 スネーク達との接触という危機を乗り越え、志々雄は勝利をもぎ取ったのだ。


sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 時系列順 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 投下順 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) メタナイト sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) ソリッド・スネーク sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) KAITO sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 海原雄山 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 逢坂大河 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 因幡てゐ sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 志々雄真実 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) トキ sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 紅美鈴 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) 相楽左之助 sm186:激流の後に訪れる―――
sm186:激流に身を任せた結果がコレだよ!!(A面・後編) アレックス sm186:激流の後に訪れる―――





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー