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Junk the Eater ◆WWhm8QVzK6




ふらふらと、よろめいた足取りで身を進める。
体は既に満身創痍。気絶していたところを狙われずに済んだ事に安堵する。
焼け野原を渡り、近くの森に入る。
うっそうと茂った森は傷ついた体を隠すのに好都合だ。
意識こそ取り戻したものの今誰かに見つかるのは拙い。
ゆっくりと、木の股に腰を下ろす。そして一息。

もはや腹の傷はどうにもならない。
その他の傷は何とかなるようではあるが。
バッグを開け、食料に手をつける。
治療用の道具が入っていないのは確認済みだ。
ならば今は気力をつけるしかない。そう考えての行動だった。

「足りぬぅ…」

しかし、ブロリーに支給された食料は『一般人の食料2日分』しか入っていなかった。
しかも量は大したことがないので満腹感は得られず、スタミナもそれほど回復しなかった。
それでも、何もないよりはマシだったようだ。
幸いに相手が一人ならば殺せる程度の力はある。
傍目から見れば指の一本も動かせないような傷ではあるが、それを度外視できるのも偏にブロリーの超人的なタフネスに拠るものだろう。
そのうえ、彼にもあずかり知らぬところでわずかな予兆が芽生え始めていた。

彼は、静かに待つ。

時が経つのを。
自らの体力が回復するのを。






















悪魔が、哂う。



―――――――――――見つけた。


     ※     ※     ※     ※     ※

人の好奇心というものは止むことがない。
だからこそ文明が、科学が発達し、人類はここまで進歩できたと云えよう。
だが、その歴史の陰にある犠牲は果たしてどれだけ史実に残っているのだろうか?
輝かしい栄光は讃えられ、醜き衰残は葬られる。
盛衰とは至ってそういうものだ。人類は昔から全く進歩していない。

……そして、そんな好奇心で身を滅ぼすニンゲンがまた一人。
尤も、普通の人間ならばこんなものに興味など示さず退散するのだろうが、生半可な力を持っているが故に
変に過信を生んでしまうのだ。
運命は画の如く、歴史にも残らず人知れず進められていくのであった。

空に広がる不穏な暗雲を見たのはつい2時間前。
その30分後にはそれは晴れていった。
なにやら凄まじい轟音が遠くから鳴り響いていた気がするのだが、今はないということはもう安全なのだろう、と合点する。
しかし、気になる。
何が起こっていたのか見るくらい構わないだろうと興味を掻き立てられ、ついついそちらの方面に向かってしまった。
足場の悪い森の中を歩くこと一時間。

(この、気配は―――)

言いようの無い悪寒。
姿は見えない。だが、前方にいるのは間違いない。
全身が生温い風に浚われたような感触に襲われる。
これだけ離れているのに、何故これ程までに伝わるのか。
今まで出会った何よりも異質な、そして純粋なモノを感じる。
本能に警告されるまでもない。理性は既に警鐘を鳴らしている。
当然の如く、執る行動は決まっている。

この程度で下がってどうする。

似たような脅威なら過去に何度か経験している。
引き下がる意味もない。ただ、少し様子を見るだけだ。


姿は見えない。見ないほうがいい。迂闊に顔は出すべきでない。
息を殺し、昂ぶる脈拍を抑える。
霧散される殺気の所為で、呼吸すら苦しく思われる。
いつの間にか、頬を冷や汗が伝う。
暑いのか寒いのか分からない。元々暑くも寒くもない筈だが。
全身を刃で撫でられている様な感覚に吐き気がする。
恐ろしい。姿は分からない。ただ、ソレの脅威だけがひしひしと実感できる。
そして彼女は慮外にも、

ソレの姿を、見たくなった。

所謂相乗効果と云うやつだろうか。
脅威により蓄積された恐怖が、逆に好奇心までをも引き上げてしまった。

(見るだけなら……)

過剰な感情は、判断を鈍らせる。
それは決して怒りや恐怖といった負の感情だけに限らない。
喜び、愉しみ、驚き、閃き、その他全てが一瞬の思考を乱す。
どのような人間であろうとも、それは避けられるものではない。
彼女も、例外には為り得なかった。

顔を、少し出す。
目が出るくらいまでに。
距離は50メートル。遮蔽物の大量にある森の中で動かずにヒトを見つけるのは中々に難しい。
頭がぶれないように、眼球のみを動かす。
ソレはまだ動いていない。と言っても、アレが立ち止まってからせいぜい5秒しか経っていないのだが。
彼女は眼球を60度傾けたところで、ようやくソレを視界に収めた。


                      「ぁ」


アレ、は。
アレを見てはいけない。
あレの姿を見てはいけない。
発せられる殺気が何だというのか。
そんなモノでは比較にならない。

殺される。
あの生物はレベルが違う。
アレは存在其の物が死を顕している。
其処にいるだけで周りの存在に死を強制させてくる。

殺される。
このまま此処にいるのはマズイ。
とうにそれは理解した。理解している。
だけど体が動けない。
カラダが凍りつかされたように動かない。

いや、首を元に戻すだけでいい。
だけど、それすらも出来ないなんて。
もう、耐えられない。もう、我慢できない。
アレを目にしてられない。これ以上は、






目が、合った。


















「―――――ハ、」

洩れた声は彼女の物だった。
悪魔が、嗤う。
と同時に、咲夜は自身の体が動くのを自覚する。
麻痺していた命令系統は即座に全身に電流を行き渡らせ、受容体はそれに応えるように奮起する。
秒速100メートルの奔流は間違いなく指令を下し、それに伴い全身の筋肉が行動を開始する。
そのスピードは決して遅くない。
目でアレの姿を捕捉しながら、身体は既に逃走の体勢を取っている。

悪魔は嗤いながら、
僅か2秒で50メートルの距離をゼロに縮めた。

眼前に迫る男の顔。
一呼吸の間も無く、ソレは『彼女の目の前に回りこみ』、右腕を振り上げていた。
初速を自動車並みの速度で爆進し、拳はそれよりも数倍疾く咲夜の脳漿をブチ撒けようと飛んでくる。
迫り来る死の具現。それを目の前にして死を避けることは値わず、当然、彼女も死を覚悟した。

しかしそんな彼女の思考とは裏腹に、肉体はすべき行動を遵守していた。
回避のために首を右側に傾ける。
それを当たり前のように速度を保ったまま拳骨を軌道修正させるブロリー。
彼女の回避行動は、間に合うことはない。
後0,1秒もすれば、思い描く悪夢は実現され、彼女は終わる。

ぐしゃ。


メキメキと表皮を、防護壁を突き破り、中身まで貫通する。
元よりこの生物に防護壁など何の意味も為さない。紙の盾で大砲の弾を防ぐようなものだ。
さらにそれだけには飽き足らず、悪魔の拳は更にその内容物を吹き飛ばし内側から後ろの皮を突き破る。
その行為に一切の慈悲や情はない。
腕は完全に伸びきり、無様に立ち尽くしたそれを完全に破壊した。
バキ、と厭な音を立てて腕を引き抜く。それと同時に、中のモノも地面に墜ちる。
それにも関わらず、男は不審な表情を浮かべる。
横には、息を切らせている少女の姿。
彼女は全くの無傷であった。

拳が顔面に触れる0,1秒前。
そのままの速度ではもはや回避することは不可能だった。
ならば結論は、時を止めてしまえばいいだけのこと。
あまりにもイカれた結論だが、彼女にはそれを行使できる力が備わっている。
つまり、その瞬き程の時間を彼女は停止させたのだ。


死は、回避された。

「ウッ……グオオオオオ゛オ゛オ゛……!!!」

不気味な呻き声を上げて、悪魔が膝をつく。
少女には、ソレが痛みを訴えているのは分かるが何故なのかは分からない。
当然だ。彼女は全く攻撃を加えていないのだから。

「アアアアアア……ッ!」

ブロリーの、傍の木が崩れる。
どうと音を立てて、大木は少女の身代わりとなって朽ちた。
怪物の渾身の一撃は確かに、大木を破壊するほどのものだった。
だが、其の程度。
ソレの渾身の一撃は、その程度にしかならなかったのだ。

少女に走る筈も無い事実。
ブロリーは既に戦闘において致命的な傷を負っており、こうして行動するのがやっとだった。
それでも、恐るべきことには変わりないのだが。
これだけの傷を受けて猶、余人を殺す程度の力を彼は残しているのだ。

咲夜は、動きあぐねていた。
ソレが何らかの重傷を負っているのは理解できる。
しかし、攻撃を優先すべきか。はたまた別の行動をとるべきか。
攻撃するにせよ、逃げるにせよ、今がチャンスなのは間違いは無いが、現状彼女の思考を埋めているのは別の事だった。
そこらじゅうに散在したアイテム。元から落ちていたものではない。
ブロリーのバッグの口は閉じている。咲夜のは開いている。

(……荷物が…!)

彼女はすっかり忘れていたのだが、この地点に来る前に一度水を飲むためにバッグの口を開けたままで、
ジッパーを閉じていなかったのだ。長さは口の3分の一だけではあったが、それでも数個の支給品が落ちてしまった。
剣が1、2本。ボールが一つ。それから……待て。

アレは、一体何をしている?

がつがつがつ。
しきりに何かを口に運んでいる。
標的の事など眼中にないかのように、口をもごもごいわせている。
もう一度言うが、ブロリーのバッグは開いていない。
額に青筋が浮かぶ。誰に出たのかは言うまでもない。
そいつの足元にあるのは僅かな食べカス。

「足りん…」

あれだけ食っておいてよく言えるなこの筋肉ダルマは。
咲夜は別に食い意地が張っているわけではないが、この状況にはかなり苛立った。
なるべく他人との接触を避けたかったのにこれでは動き回らなくてはならない。
ちなみに、食料は全てブロリーの腹の中にある。
こんな非常時にそっちに頭が回るのはどこか抜けてるとも言えるが、彼女はすぐに思考を切り替えた。

ブロリーが、こちらを向いている。

君子危うきに近寄らずとは誰の言葉だったか。
アレの速度を考えればもはや逃げることは不可能。
時を止めようとも、すぐに追いつかれて頭蓋を割られるに違いない。
時間停止を行った場合、その後の時間操作にブランクが生じることはもう確認済みだ。
おまけに、もはや逃走を許される距離ではない。
両者の間合いは6メートル。
彼女にとっては必死の間合い。ソレにとっては必殺の間合い。
逃げることは、叶わない。

ならば、逃げられるようにするだけのこと。

「――――――なら、仕方ないわね」

呼応するように、彼女の背後から幽波紋が顕現した。

瀟洒な彼女には似合わぬ奇怪な格好をした大男がゆらりと現れる。
筋骨隆々としたその姿は目の前の怪物にも引けを取らないものではあるが、その実体は常識の存在ではない。
とある世界で空条承太郎という男が持っていた能力。
彼の持つこの『スタープラチナ』は現在十六夜咲夜のものとなっている。
皮肉と云うべきか、奇しくもそれの真の能力を彼女は知らない。
話は少し前に遡る。


     ※     ※     ※      ※

―――――――匙は見事に受け止められた。

「は?」

止められるはずがないと思っていたのに見事に止められ、呆気にとられる咲夜。
そんな彼女を無表情で見つめ、匙をつまんでいる。

「返しなさい」

つい口をついて出た言葉の後、匙は彼女の手元に戻った。

「は?」

思わず二度目。
一体こいつは何がしたいのか。いや、そもそも何者なのか。
考えること数秒。

「あれ取って」

無駄に悩むより体よく使役する方法を見つけた。
試行錯誤にしばらくかかり、ようやくこれの存在の意味をなんとなく把握した。
危害を加える様子はなく、念じるまで自衛以外は動かないというところか。
肝心なところは結局わかっていないのだが、そんなことを知る由もなく。
まあ使えるものは何でも使っておきたいという心情の表れだろう。


そして現在に至る。


      ※     ※     ※     ※


「!?」

声を上げる間もない。
男は面白いように体ごと頭を吹っ飛ばされた。
ほぼ真横に放物線移動した肉体は10メートル先の木の幹にぶつかって止まる。
戸惑いの顔。
確信の表情。
少女は男を警戒しつつも、悠然と腕を組んで構えている。
男がいた場所には拳を握ったスタープラチナの姿。
ブロリーは一瞬狼狽する。それも当然だろう。

なぜなら、彼にとって『当たるまで感知できない攻撃』などあり得ないのだから。
死角を突かれたわけでもなく、ただの横からのストレート。
こんな攻撃を避けられない筈がない。

しかし、驚愕するのもほんの少しだけ。
すぐさま立て続けに4発の光弾を放つ。
もはや油断ならないと悟ったか。
放たれたモノは、どれも必殺の威力に相応しい。
だがそれらは、全て標的に当たることはなかった。

咲夜からしてみれば威力も速度も確かに脅威となるものだが、その実情はただの直線的に飛来するボールに過ぎない。
一定座標軸の弾道である以上、その軌道は二次元ではなく一次元として捉えるのが妥当だ。
都合4発の殺人ボールは簡単に見切られ少々の森林破壊を起こし、果てた。

その間に、咲夜はついでと言わんばかりに落ちている支給品を回収。
どれも今後には役立つものだ。

少女は男に向き直る。
さて、相手へのダメージは如何程のものか。
場合によっては……と彼女は考えていたのだが、



 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

―――意識が、明滅する―――

正確無比のスタープラチナの一撃は、確実にブロリーの顎を打ち抜いた。
極度の振動と回転により脳が揺さぶられ、意識を不明瞭なものへとさせる。
条件反射的に立ち上がってみたが、足はふらつき、重心は安定しない。

―――息が荒い―――

目の焦点が定まらないまま、相手を見据える。
少女が一人。男が一人。
どちらを倒すべきかは言うまでもない。ただの一人も逃しはしない。
しかし、それすら適うかどうか。
もはや誰が見ても男がこれ以上の戦闘を続行するのは不可能と思うだろう。
体中は火傷と傷だらけ。これ以上立っていることも危うそうなその肉体。

―――それがどうした―――

しかし、我々の常識はこの生物には通用しない。
既に生物としてのカテゴリーに当てはまらない。

―――痛みは、気が紛れる―――

もって生まれた狂気という名の理性を糧に、アレは、何度でも立ち上がる。


―――正気でいられる―――













不滅の怪物は、再びここに降臨した。







「オ―――――――――――――――オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」



暴風、衝撃、破壊。
自らを奮い立たせる叫び声が、世界を震わせる、
大山鳴動とは正にこの事か。
石が、樹木が、地面が震える。
砂塵が舞い、木端が飛ぶ。

それは咆哮によるものだけではない。
眼を凝らさずとも視える。
男の黒髪は逆立ち金色に変色し、全身から光り輝く闘気が放たれている。
今もなお続く強風はそのためだ。

極度の怒りに任せ解放できる、ほぼノーリスクのドーピング。
選ばれた者にのみ許される規格外。先ほどの殺気など生ぬるい。
かの悪魔の本領は、ここにあったのだ。

瞬きを、息をすることも忘れて呆気にとられる。
そして自身の勘違いと愚かさを悟り、彼女は理解した。
アレは、理解の遥か外の存在だと――――――!

咲夜は感謝する。
この男が前もってダメージを負っていたこと。
自身が現状の全力で立ち向かえるということに。
どちらでも欠けていれば自分の敗北しか有り得なかった。
そして、彼女は確心する。

それでも、勝てる。
この化け物は、今此処で殺すべき存在だと、そう思った。

慢心に駆られてのことではない。
目の前の脅威は重々把握できているし、武者震いを起こしているわけでもない。
とりわけ、彼女は現在、打算的である。

勝機のない戦いはしない。
リスクの測れない殺し合いなどしない。
五分五分の戦いなど論外に値する。

そう、逃走することに意味はない。
元々の性能が違う。肉体面において、この悪魔には敵わない。

時間を止めることも意味がない。
いずれは追いつかれて殺される。

或るのは総て計算された戦い。
あらゆる想定を踏襲した上で、この戦闘に直視する。

そして、非常識のセカイが、始まった。



地を蹴るが直後、その姿はもはや人の目ではまともに捕捉できない。
音と同時に足が飛来してくる。
中距離の無拍子での飛び蹴りは、相手に一刻の猶予も与えない。
全力であればその速度は音速に迫る勢いであったのだが、例え死力を尽くしてスーパーサイヤ人となろうとも
肉体はもう限界寸前。それ未満しか望めない。

故に、またしても回避されることになる。

「クッ……」

瞬間移動か。
だとしたら厄介だとブロリーは舌打ちする。
相手がこちらの攻撃を目視出来る以上は攻撃が当たらないも同然だ。
ただ違和感を覚えたのは、相手のそれが本当に瞬間移動なのか、ということだ。
真であるならとっくにここから離脱していてもおかしくはない。
しかしそれをしないということは

「何か種があるなぁ………?」

「さて、なんのことでしょう?」

「……ハッ、笑わせる…」

咲夜にとって見破られることは百も承知。
自身は隙を作らなければいいのだからそれ以上の心配はない。
ここで、彼女はあることに気づく。

(首輪が…ない?)

そう。
ブロリーには首輪が付いていない。
胸と腹に何か装着してはいるが、あれはまた違う気がする。
聞いてみるのもいいかもしれないが、たぶん無理だろう。
そう解釈した彼女は、次の行動に移る。が、

再び弾幕がブロリーより放出される。
その数、先程の10倍。

「当たらないわよ」

そのすべてを1秒の時間停止で往なす。
木々が咲夜の代わりに砕け散る。これでは森の精霊にお仕置きされかねない。

折を見て石礫を投擲する。
文字通り只の布石に過ぎないそれらは、いともたやすくブロリーの拳に砕かれる。

気配。
後ろ。

「「ッ!!!」」

ブロリーは大きく仰け反り、スタープラチナの右ストレートを回避する。
その無理な体勢が祟ったのか、すぐさま反撃を繰り出すも安全圏に引き下がられた。

どちらにも冷汗が浮かぶ。
ブロリーは当然として、咲夜の方は、実は時間停止の時間を計り損ねたのだ。
それはほんのコンマ一秒程度ではあったが、それでも危険なことに変わりはない。
やはり最低限相手の攻撃が回避できる10メートルは離れておきたいが、それでは今のように間に合わないこともある。

(陽動、か)

ノーモーションで紅白の御目出度いボールを放る。
それがぱかりと口を開け、中から出てきたのは

「サーセンwwwwwwwwwwwwww!!」

ご存じ、サーセンという名のニドキングである。

「なんなんだお前はぁ?」

疑問符を口にしながらも質問をしていないのはいつものこと。
頭にあるのは、あの動物を破壊する。その事だけである。

左ストレートを顔面に目がけて打つ。
鈍間な獣は避けることすらできない。

「かげぶんしん」

拳は空を切った。
代わりに現象となっているのは、

「サーセンwww」

「サーセンwwwww」

「サーセンww」

「サーセンwwwwwwww」

「サーセンwwwwwwwwwwwwww」

「サーセンwwww」

「サー(ry」

何十匹にも増殖しているサーセンの姿だった。
もちろん、本当に増殖したわけではなく、「かげぶんしん」という技による効果だ。
幻影を作り出し、自身への攻撃の命中率を下げる技。
ちなみに増殖はしていないのでそれぞれから声を出せるわけがなく、発声しているのは一体のみだ。
ブロリーの攻撃を回避できたのがそんなに嬉しかったのか、とめどなく鳴き声(?)を連呼している。
かげぶんしんのせいでそれが何十匹も叫んでいるように感じるだけだ。

「……れいとうビーム」

瀟洒なメイドはこの程度で怒らない。
するべき命令をきちんと下す。

「サーセンwwwwwwww!」

水色のビームがサーセンの口から発射される。
その攻撃を見逃すブロリーではない。
いともたやすく回避され、ビームは地面を凍らせるのみに終わる。
ちなみに、何度も言うがビームを出しているのはサーセン本体であり、かげぶんしんは出せない。
ブロリーのスピードは瞬き並の速度。
ビームは最低でも数秒は出続ける。
つまり何が起こるかというと。


ぶしゅ。


「サーwww……セン………―――――――」

どばどばと体液が滴る。
正真正銘、ブロリーの拳はサーセンの腹を貫いていた。
同時にかげぶんしんは消え、サーセンは力なく項垂れた。
拳を引き抜こうと力を込める。


「ありがとう、貴方の死は無駄にはしないわ」


世界が、止まる。


瞬間。

瓦礫、石礫、木の枝、剣、ボール。
ありとあらゆる物体が、360度まんべんなくブロリーを取り囲んでいる。
その数、総勢55。

2秒間をフルに使った投擲武器の空間設置。
一人ではこれだけの量は為し得ない。
スタープラチナがいてこそ、出来た芸当だ。
加えて、足止めとしてサーセンがいたことが、決め手となった。
そして時は動きだす。


今まで以上の驚愕。
間に合わない、と、思考が怖気づく。
動けない。脳は速やかに結論を出しても、体が追い付かない。

咲夜の目的。
この怪物を倒すに値する作戦。



すなわち、不可避の速攻である。




  「殺人ドールッ!!!!!」



号を揃えて、凶器がブロリーに雪崩れ込んだ。

普段であれば大したことはなかっただろうが、今はもう満身創痍の状態。
たとえスーパーサイヤ人であろうとも、この制限された体ではすべてがダメージになり得る。



「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


ラッシュラッシュラッシュラッシュ。
四肢奮迅の如く全ての弾丸に拳を突き当てる。
当たってしまっても構わない。
それが致命傷の腹にさえ当たらなければいい!!

「ガッ…!!?」

血が飛ぶ。
左腕に剣が生えている。
馬鹿な、と思う。背後の武器は叩き落としたはず。見逃すはずがない、と。
見逃したのだ。

フジキ。
正式名称はクロスソード。
物理法則に完全に反抗したトリッキーな軌道を描く投擲剣。
計五段階の変化はブロリーを欺くには十分だった。

深々ではないにせよ、剣が刺さったことはブロリーには衝撃であり、

スタープラチナに踏み込ませる程の隙を作った。

しかし、ブロリーにとってはまだ対処できる範囲内。
繰り出した敵の拳に突き合わせるように、己の拳を乱舞させる。
百花繚乱とは形容しがたいが、それでも恐るべき勢いの拳が入り乱れる。
たった一秒で二十余合も互いの力をぶつけ合い、そのすべてがお互いの体に届くことはなかった。

瞬間、スタープラチナはブロリーから離れた。
下がらせたのは持主である咲夜に間違いない。
では、何故下げさせたのか。

(そんな……!)

彼女の手の甲は、赤く腫れ上がっていた。
咲夜は今の今までわからなかったのだが、スタンドが受けたダメージは本人にも反映される。
左手の方は危うく骨折寸前まで逝くところであった。
そして、誤算はさらなる危機を生む。

「ハアアアァァァッッ!!!」

ブロリーの全身から放出される気弾。
しかし、スピードはそれほどでもない。

「っ…当たらないって言ってるでしょ!」

その通り、一弾たりとも咲夜には被弾しない。
全体的に見れば弾数は百を超えたが、そのうち彼女に向かってきたのはたったの30程度。
それらを軽く回避して時間を停止させ、ブロリーからさらに距離を取ろうとする、が。
目を疑う。
避けたはずの光弾が、背後で咲夜を包むように接近してくる。
それは、ついさっきの焼き直し。
違う点は、してる方とやられる方が逆転していることだけ。
やられた。考慮に入れるべきだった。
弾幕の軌道操作なんて、いつもよく見慣れている筈なのに―――――!

周りを包むように270度。
回避できるスペースは正面しかない。
一歩地を蹴る。あと一歩で、被弾区域から回避できる。
そして、その正面には、したり顔で嗤う悪魔の姿があった。

時間停止は不可能。
ブレーキは効かない。そのまま吸い込まれるようにブロリーに接近してしまう。
自身で体勢を立て直すことはできない。ブロリーの拳が迫ってくる。

しかし、躱す方法はある。
使えば助かるだろうが、ダメージは避けられない。
どちらを選ぶかなど、そんな事、誰に聞かれるまでもない。

スタープラチナを割って入らせ、自身を押しのけさせる。
後は、そう。これ以上は何も出来ない。



その時、彼女は骨の砕ける音を聴いた。


激痛に、意識が飛びそうになる。
だが、ここで気を失うわけにはいかない。
時間が戻る。
この限られた時間が、今の彼女の命綱。

だが、それよりも早くブロリーの追撃が心臓を抉ろうとする。
それを理解した咲夜は、悟るでもなく、諦めるでもなく。
ただ、笑っていた。

「へぇあっ!?」

まるでコントのように体を傾けるブロリー。
足元には、サーセンがれいとうビームにより凍らされて滑りやすくなった地面が広がっている。
その一瞬の隙を、咲夜は見逃さない。
スタープラチナはくるりと体を独楽のように勢いづけ、大きく拳を振りかぶった。
額に本当の衝撃が伝わる。
立て続けの3発の連続パンチは、ブロリーを紙切れのように吹き飛ばさせた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

もはや声にすらならない。
そのまま地面にヘッドスライディングしたブロリーは、次第に光を薄めていった。
スーパーサイヤ人化が解けたのである。

「幕引きってところかしら?」

咲夜はブロリーの方に向かう。
息を切らせているのは、緊張と骨折と度重なる時間停止に依るものだろう。
一度時間停止をすれば次の時間停止は数秒を要するというシビアな戦いを迫られたのだから無理はない。

「辞世の句は用意してあるの?まあ、無くてもそんなヒマあげないけど」

スタープラチナを構えさせる。
全力で頭を叩き割るつもりか。

ブロリーは既に殆んどの力を失った。
今はもう一般人程度の力しか出せない。
それではこの女は殺せない。
万事休す。死ぬ以外に何もない。

本当に?






こつん。

何が落ちたのか見る前に、咲夜の体が煙で包まれる。

「煙幕!!?」

地面を走る音。
逃げる気か。そうはさせまいと、煙を振り払ったその時。


「――――――え?」

目の前の光景に目を疑う。

ガラス窓の外の満月。
揺れる蝋燭。赤いカーペット。
そして、自分がよく見知った主の姿。

「お嬢……様?」

そう呼ばれた少女は、神妙に笑う。
何か含みのある笑いだ。そう思える。

成程、と彼女は感じた。

(幻覚か)

「申し訳ありませんお嬢様。もうしばらくすればそちらに帰らせて頂きます」

唇を噛む。
がりり。血の味がする。
ほら、カーペットから苔が生えてきた。
辺りが木々で覆われる。

そうして待つこと数秒。
世界は元の色を取り戻した。

「……いない。逃げられたわね」

チッ、と舌打ちをする。
あれだけ息まいてこの様か。
手駒を失ったというのに結果すら出せないなんて。なんて無様。
おまけに左腕は少なくともこの場では再起不能。回復は望めない。
過ぎてしまったことは仕方がないが、それでも自身を叱責したくなる。
けれど、あれだけ傷めつければもうしばらくは何もできないだろう。後で出会ったらその場で引導を渡す。

「悪いわね、貴方の埋葬はしてやれないわ」

今はもう亡き獣に声を掛ける。
そして、彼女はその場を後にした。
疲れてはいるが食料がないのは少しきつい。
それに出来れば、応急処置品や痛み止めも欲しいと思った。
この痛みでは戦闘に支障が出かねない。

「とにかく、中心に向かってみようかしら…」

あまり取りたくなかった選択肢。
物事は、彼女の思い通りには運んでくれなかった。


【F-5南部・森林 /1日目・夕方】

【十六夜咲夜@東方project】
[状態]:疲労(大)、左腕複雑骨折、両手の甲にダメージ 
[装備]:時計型麻酔銃@名探偵コナン、計量匙×1@東方バトルロワイアル
[道具]:基本支給品(食糧無し)、果物ナイフ×2、、時計型麻酔銃の予備針(残り2発)@名探偵コナン、
    フジキ@ゆっくり村×4
[思考・状況]基本思考:優勝し、死亡者含め全ての参加者を元の所に戻すと主催に望む 
0:中心部に向かう。ブロリーは今は追いかけない。
1:食糧、出来れば応急処置品と痛み止めがほしい。
2:なるべく戦闘したく……なかった。
3:どうしようもない場合は即座に暗殺。
4:参加者が減ってきたら慎重に本格的に行動する。
5:まともな投擲武器が欲しい
6:連合は組まない。単独行動。
7:首輪解除の技術はわりとどうでもいい
【備考】
※七夜志貴の名前を知りました。
※ときちくは姿しか知りません。
※時間操作は2秒が限度です。停止した後に使用するには数秒のブランクが必要です。
※飛行が可能かどうかはわかりません。
※主催者側が参加者を施設を中心として割り振ったと推理しました。
※高い能力を持つ参加者は多くが妖怪と思い、あえて昼間挑む方が得策と判断しました。
※僧侶のネガキャンを聞きましたが、その情報を完全には信用はしていません。
※やる夫のデイパックは列車内に放置してあります。
※サムネホイホイ(出だしはパンツレスリングだが、その後別の映像は不明)は、A-5の平原に投げ捨てられました
※カミーユ・ビダンの死体を確認。首輪を解除しようとしてる人がいると推測しました
※一度幻想の法則から外れた者ももう一度幻想の法則の中にもどせば幻想の法則が適用されると推理しました。
※ヤバいDISCがINしました。スタープラチナが使えますが、真の能力には気づいていません。
※E-5橋付近にフジキが計14本あります



     ※     ※     ※     ※     ※     ※



がつがつが。


食ってる。
何を?獣を。

紫色の、とげとげしい獣を。
頭から尻までこんがり焼かれて。
固い皮膚はさすがに食えないと感じたのか。
腹筋のあたりを主に食べられている。

食っているのは?

ブロリー、です。



……ブロリーは逃げてなどいなかった。
木の幹に隠れて、咲夜の様子を窺っていたのだ。
それができたのはブロリーの支給品のお陰だった。

混乱玉。
何かにぶつかることで煙を噴き出し、その煙の効果で相手に幻覚を見せる。
その間に隠れてやり過ごしていたのだ。
咲夜を攻撃しなかったのは、言わずもがな、それだけの力がなかったからだ。
無理に出て攻撃するより、自分の保身を選んだ。

それがどれだけの屈辱だったかは語るまでもない。
プライドを捨ててまで、彼は生き残ることを選んだ。

次こそは、殺す。
そう固く誓い、ブロリーは必死に肉を喰らっていた。

【F-5南部・森林 /1日目・夕方】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】食事中、通常形態、、疲労(極大)、額にダメージ(小)、顎にダメージ(大)、左腕に刺し傷、ダメージ(極大)、全身に大きな怪我、
右足首骨折、腹に超深刻なダメージ、首にダメージ(中)、全身に火傷
【装備】なし
【道具】支給品一式、忍具セット(火薬玉、忘却玉)@忍道戒、不明支給品1?2
【思考・状況】
[基本思考]体力をつける。
0:サーセンを食事中。
1:あの女は殺す。
※額のリミッターにダメージがいっています。
※今のところ、一般人程度の力しか出せません。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが消滅しました。
※伝説の超サイヤ人形態になったため会場全体が暗雲に覆われましたが、少しすれば晴れます。
※目が覚めた後、伝説のスーパーサイヤ人に変身できるかは不明です
※サーセンを焼いて食べています。

【忍具セット@忍道戒】
支給されているのは、火薬玉と混乱玉と忘却玉。
火薬玉はぶつけた相手に物理ダメージを与える。
混乱玉は一時的に相手を幻覚状態に陥れる。
忘却玉は一時的に相手を忘却状態(しばらく突っ立ったまま)にする。



sm173:喜びだって 悲しみだって いつかは思い出になるから 時系列順 sm175:アカギーポッターと誰得の部屋Ⅲ
sm173:喜びだって 悲しみだって いつかは思い出になるから 投下順 sm175:アカギーポッターと誰得の部屋Ⅲ
sm148:咲夜、匙を全力でぶん投げる 十六夜咲夜 sm193:熱血と冷静の間
sm165:WE GOTTA HOT POWER(後編) ブロリー sm185:Food war






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