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熱戦の裏側、眠れる恐怖 ◆T0ldTcn6/s




「右上、この不始末はどうつけるつもりだ?」
「それは……」

薄暗い部屋の中、相対する者がいる。
このバトルロワイアルの黒幕である運営長と進行役の右上である。

およそ2時間前、俺は運営長に呼ばれた。
左上と作業に当たっていたのだが、突如としてお呼びがかかったのだ。
理由はすぐに知れた。というか自分たちが見ていたモニターの前で発生した事由だ。
分からぬはずはない。

行ったら行ったで、運営長の野郎は何も言わずに予想どおりの映像を見せつけた。
言わずもがな伝説の超サイヤ人と化したブロリーの姿。

冒頭の質問は実は2度目で、1度目は映像の2秒後に言われたものだ。
変なことを言えば殺される、俺はそう直感したね。

そのとき俺がとっさに考えた言い訳は次の通りである。

――今は戦闘中である以上、主催者が手を加えるのはよろしくない

――ゆえに戦闘が終わるまで対応を保留とするべきです

参加者の前でブロリーを爆殺すれば、この企画に綻びが生まれたことを大声で触れ回ったも同然だ。
運営長もそれを理解したか、そのあとは何も言わなかった。

それはいいんだがこのクソジジイは無言のまま、モニター越しの戦闘を横目に見やりつつ、俺を睨むことをやめなかった。
2時間近くもだ。よくもまあ、飽きないと思う。
俺としてはべっぴんでも何でもない年寄りに見つめられたって何も嬉しくない。
はっきり言って精神的に参ってきてる。
俺はつい先ほども『てこ入れ』の件で警告を受けたばかりである。
舌の根乾かぬうちにブロリーの制限突破、よく見ずとも運営長の眉間にしわが寄っている。

――こえーよ、ものすごくこえーよ



もはや拷問に等しい。これを俺は2時間近くも耐え続けた。
長かった。正直、褒めて欲しいぐらいだ。

本来ならあの限界バトルは俺としては楽しむに値するものだ。
邪魔が入らなければポテチ片手に観戦してたさ。
サッカーの試合に熱狂するのと同じだ。
本ロワ屈指のベストバトルだったろう。
ゆっくりと眺めたかったのだが、運営長の前ではそうもいかない。

――まあ、一応録画しておいたし暇があれば見ようかね。

そしてバトルが終われば、2度目の「どうつけるつもりだ?」
勘弁してくれ。お前はあの戦いに何も感化されなかったのかよ。
機嫌ぐらい直せよ。

もしこの場に左上がいれば……ダメだな、あいつが助け船を出すとは思えない。
察しのいい人はお気づきかも知れないが、呼び出しを喰らったのは俺だけだ。
機械のような女は呼ばれておらず、今も仕事を生真面目にこなしているだろう。
どうしてか、だって? そりゃ……

「こいつの参加を強く推していたのは誰だったかな」

モニターに映るそれ、すなわち満身創痍で憎悪に満ちた表情を浮かべたまま意識を落としているサイヤ人を指さし、運営長は嫌らしく詰る。

ああ、そうさ。俺だよ、ブロリーの参加を勧めたのは。
強者を自負する者が圧倒的に強い奴を前にすれば、どう反応するか楽しみで楽しみで仕方なかったんだ。
間違いだとはこれっぽっちも思わない。
事実、ブロリーは俺の期待を裏切らなかった。
自慢の速さを否定される鴉天狗とか三国志最強の猛将があっさりとひねられる姿はあまりに滑稽で大いに笑ったものだ。

話を戻すが、ブロリーの参戦について運営長は難色を示したさ。
んなことは分かり切ってた。
だけど俺は鋭意説得した。
そのカードがリミッター。
パラガスは特殊な装置を使いブロリーを制御していた。
もちろん最終的には壊れてしまうわけだが、何年もブロリーを抑え続けたことから性能そのものは悪くない。
これを改造し、能力を抑える。
コントロールの壁を乗り越える原因を作ったのはカカロットだ。
だからそいつさえ参加させなければ問題はないと渾身の説明を行い運営長をやっとの思いで説き伏せた。
ちなみに、ベジータを参加させたのはお約束のようなものだ。
あのヘタレっぷりはいつ見ても笑えるからなー。



だから首のリミッターが壊れるなんてきっぱり想定外なんだよ。
あれはそう易々とダメになるような代物じゃない。
どれぐらいかというと、『参加者に取り付けた爆弾入りの首輪よりも』頑丈に作られてる。
まさか、あそこまで執拗に殴り続ける野郎がいるなんて思いもしなかった。
もちろん人間どころか妖怪が殴打した程度で砕けるほど脆くない。
そのときの俺はあの無駄な行為を鼻で笑っていたが、おそらくあの場面で強度が落ちていたんだろう。
そうとしか考えられない。
全てのリミッターが壊れるんならともかく、焼け落ちたのは首のリミッターだけ。
額と腰のリミッターは同じ炎に晒されても依然として残っているんだから、他に原因は思い当たらない。

それにさ。
いくらリミッターが1つ外れたからって、全身に重傷を纏ってんだからプラスマイナスゼロだろ。
だから、気にせずに殺し合いを続行すればいいじゃないか。

……もちろんこんなこと口が裂けても言えないけどな。
うん、本意じゃないけど背に腹は代えられないか。

「なら手に持っている『それ』でブロリーを殺せばいいじゃないですか」

右上にしては至極当然のことを言ったつもりだ。
しかし、それを聞いた運営長はギリリと歯がみする。
彼の手にはある電子機器が握られている。
これにパスワードを入力し、然る手続きを行えば参加者の命は思うがままだ。
にもかかわらず、なぜ使わないのか。

単純に制限と首輪が直結しているからだ。
ベジータをはじめとする実力者たちが睨んだとおり、制限には首輪が絡んでいる。
詳細なシステムはここでは触れない。
重要なのは制限と首輪に持ちつ持たれつの関係があるという一点。

なにせ参加者によって力の源が全く異なっているという根本的な問題がある。
『気』によるもの、あるいは『魔力』によるもの。果ては無関係に『超能力』という奴までいる。
よって、包括的な手段では厳しい。
ゲームバランスを整えるには個人単位で制限を課さねばならなかった。

それに伴う欠陥も運営長自身が承知済みだ。
それゆえ首輪には細心の注意を払った。
タケモトたちが探り当てた特徴は運営長の苦心を如実に物語っている。

継ぎ目がないのは、ドライバーなど簡単な工具で分解され解析されるのを防ぐためだ。
おかげで数を揃えるのに苦労したなと今更ながらに懐古する。

死者の首輪が爆発しないのは、それでも解析された時の対策だ。
死亡と同時に機能を完全に沈黙させることで、最低でも爆発のメカニズムだけは隠し通す。

ブロリーの場合、首ではなく心臓脇に仕掛けられているのだが仕組み自体は変わらない。
――制限と爆弾が等価であることも含めて。



さて、爆弾の破壊力は火薬の種類、そして何より火薬の量に準ずる。
小型ではその威力も知れるというもの。
実際問題『制限がなければ』ギリギリ死にそうにない奴がいる、運営長にはそう思えてならない。
チルノなんていい例だろう。

――そして、ブロリーもその1人。

手元にあるブロリーのデータ、爆弾の位置、そして残された2つのリミッターと爆弾を媒介とした制限を考慮すれば死ぬ公算は高い。
しかし、首にあるべきリミッターがないために、どの観点から見ても100%にはならなかった。
それが例え通常形態であったとしても、ズタボロで死にかけの肉体であったとしても。
1%でも生存の可能性が残ってしまうなら。
マーフィーの法則は有名だが本件に関しては笑い事じゃすまされない。

――もし生き延びてしまったら

表情にこそ現さないが、背筋が凍った。
無駄に終わるだけならまだ良い。
しかし、爆弾と制限はリンクしているのだ。
爆発をもってして殺害に失敗したのなら、それは制限がさらに緩くなることを意味する。
そうなれば最悪だ。現時点において、殺し合いを破綻させる要素があるとしたらそれはブロリーだ。
あの男はたった1個のリミッターが外れるだけでベジータとサンレッドを圧倒する暴挙を見せつけた。
2つ目になればどうなるか、想像すらしたくない。

右上の楽観的な思考とは対照的に、ハッキリとした危機感を抱いている運営長。
だから、運営長には右上がこの期に及んでヘラヘラと笑っているとしか感じられなかった。

「もう良い、持ち場に戻れ」
「わかりました」

もうダメだ、右上と向かい合ったところで時間の無駄にしかならない。
こいつに何かを期待した自分がバカだったと言わざるを得ない。
ともすればキツイお灸が必要かもしれん。
さっさと彼を追い返し、一息ついたところで運営長は視線を下ろす。
ディスプレイには「パスワードを入力してください」とだけ。
運営長は数秒だけそれを眺めて……目を瞑りデスクの上へ置いた。
どうしても実行へ踏み切るだけの決心をつけられない。

未来とは未定で不確実な事象だ。
それゆえに把握不能。
あるとも言い切れないし、ないとも言い切れない。
推定は可能、されど断定など不可能。

だから運営長は決断を躊躇する――――

【??/1日目・午後】
sm167:激流に身を任せ同化してみた 時系列順 sm170:unknown girl
sm168:どこかで見た光景であるのは確定的に明らか 投下順 sm170:unknown girl
sm140:好奇心は並行世界の猫を殺す -Nicht- 運営長 sm187:第三放送
sm140:好奇心は並行世界の猫を殺す -Nicht- 右上 sm187:第三放送






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