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矛と盾の話――PRIDE―― ◆wgfucd.0Rw



「……少しは回復したな」 

 文との戦闘後しばらく大の字に寝転がっていたバルバトスがゆっくりと起き上がる。
 いつ誰が来るか分からないこの状況この場所で寝こけるつもり等無く、疲労を回復する為の小休止を終え、自分の体調を確かめる。
 若干の疲労感は残る物の肉弾戦をする分には支障はない。だが、晶術などの技を放つ度に消費するTPには殆ど回復が見られない。

「調子に乗って使いすぎたか……、晶術を撃てて後数発、ジェノサイドブレイバーで一発といった所か」

 晶術が殆ど使えない状況に陥ったバルバトスではあるが、その事に関しては大して気には留めていない。
 晶術をばかすか放つバルバトスではあるが、だからといって彼は晶術が無ければ何もできなくなるような相手ではない。
 彼の一番の武器、それは異常なまでのタフネスとキーボードですら凶器になりうるその膂力。
 晶術が思う存分撃てなくなる程度はバルバトスにとって致命的な事態ではない。ただ、使う機会を見定めればいいだけなのだ。
 必要最低限の休憩を終え、塔の中にでも入って休むべきか、戦う相手を探しに歩き回るか思考するバルバトスの視界に人影が映った。
 鎧と剣を装備した耳の長い男と、奇妙な帽子を被ったチャイナ服の少女。物々しい装備をした男がバルバトスの目に留まる。

「ククク、休む暇も無しか。まぁ、俺を楽しませてくれるなら文句は言わんがな」

 獰猛な笑みを浮かべたバルバトスの脳裏に、タミフルの存在が浮かぶ。
 バルバトスの支給品であるキーボードは宝剣と渡り合ったとはいえ、所詮はキーボード、相当なガタが来ている。これで男の持っている剣と渡り合えばどうなるのかはわからない。
 TPも残ってない以上、今こそが使い時では無いのかという考えがバルバトスに浮かぶが、それと同時にそれを忌避する考えも浮かぶ。
 アイテム嫌いではある彼だが、厳密に言えばアイテムの存在その物を嫌っている訳ではない。戦闘中にアイテムを用いる相手、及びそのアイテムが嫌いなのだ。
 命がけの戦闘は彼を昂らせ渇きを癒す。その最中にアイテムで回復するという事は命を賭けて戦う自分に対して水を差す行為である。
 同じ理由で、逃げ出す者、守りに徹する者、術でもって仕留めようとする者にも彼は不快感を示す。
 そういった相手には容赦なく術を放ち殲滅するのだが、戦闘に突入する前、厳密に言えばバルバトスが戦闘態勢に入る前に、術を使うなり、逃げるなり、アイテムを使うなりしてもバルバトスは気にも留めない。
 そして現在、相手らしき物を確認こそしたがアレックスを見つけた瞬間に襲いかかった時とは違い、バルバトスは戦闘態勢に入っていない。
 アイテム嫌いの彼でも、現在はアイテムを使用しても問題の無い状況なのだ。
 しかし、それでは目の前の相手に勝ち目が無いから事前にタミフルを使うようにバルバトスは思ってしまう。
それはプライドの高い彼にタミフルを使わせる事を躊躇わせるのに充分な理由であった。

(男に後退の二文字はねぇ、弱気な考えも必要ねぇ、必要なのは前進の二文字とどんな相手でも倒す意志だけだ)

 不利な状況へと自らを追いやったというのに、バルバトスの戦意は削がれるどころか際限なく昂っていく。
 その顔に狂喜に満ちた不敵な笑顔を浮かべ、こちらの存在を確認した二人と対峙した。

「貴様ら、こんな所で何をしている?」
「何いきなり話しかけてきてるわけ?」

 互いの視線がぶつかり合う。
 殺意を隠しもせずに話しながら一歩一歩距離を詰めて来るバルバトスに対し、渚を庇う様に緋想の剣を構えながらブロントさんが前に出る。
 ブロントさん達が民家から出てすぐに、文達を探しにとりあえず塔を目指して歩いていた。
 もし彼らが数時間早く向かっていたら文達に会えていただろうが、時既に遅く、この場に残っていたのはバルバトス一人であった。
 油断なく構えるブロントさんを見てバルバトスは少しは楽しめそうだと、その笑みを濃くしながら立ち止まった。

「俺の名はバルバトス・ゲーティア。貴様ら殺す者の名前だ……、覚えておけぇぇぇぇぇい!!!!」

 咆哮と共に飛びかかるバルバトスは手に持ったキーボードをブロントさんの脳天目がけ振り下ろすが、それをブロントさんは緋想の剣で受け止める。
 だが体重と勢いの乗った一撃は予想以上に重く、両手に遅いかかる負担にブロントさんは顔を顰める。
 恐らく切り払おうと振り上げていればそのまま押し切られていたであろう、尋常ではない膂力に舌を巻きながらブロントさんはバルバトスを吹き飛ばす。

「ブロントさん!!」
「あnぎさは逃げるべきこいつの力はちょとsYレならんしょ・・
俺が押さえるからとっとと逃げるべき
でないと塔の世界でひっそりと幕を閉じる事になる」
「で、でも……」
「黄金の鉄の塊でできたナイトがキーボード装備のジョブに遅れをとるはずがない
倒したらすぐ行くから安心しろ」

 自分の分のデイパックを預け、顔はバルバトスに向けたまま、ブロントさんは渚へと指示を出す。
 自分よりも戦闘力のあるブロントさんが厳しい顔を向ける相手、今の自分が足手まといになりかねない状況を理解し、渚は一歩後ろに下がった。

「……約束ですからね」
「hai!」

 ブロントさんの返事を聞くと渚は茂みの方向へと駆け出して行く。
 バルバトスが渚を狙わない様に渚とバルバトスに対して直線上にブロントさんは立ちはだかるが、当のバルバトスは特に動く事もせずに渚の姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。

「どういうつもりだ?」
「今日の俺は紳士的でな、態々貴様から戦ってくれると言うから、少しだけ待ってやっただけだ。
安心しろ、すぐにあの女も貴様が今から向かう場所に送ってやる」
「……そうか」

 場の空気が張りつめる。
 楽しそうな笑みを浮かべたバルバトスと、バルバトスを鋭い目で睨みつけるブロントさん。二人は一呼吸置き。

「さあ! 楽しもうぜ、この戦いをよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
「バラバラに引き裂いてやろうか!」

 声と同時に互いに駆け出し、キーボードと緋想の剣がぶつかり合う。
 剣とキーボードが弾かれてはぶつかり、ぶつかっては弾かれ、ぶつかっては鍔迫り合い、鍔迫り合っては弾かれる。
 左腕が使えない状態に加えてキーボードを使う相手に決定打を与えられず、自分と拮抗している状況。
 ブロントさんは内心で目の前の男が本来の実力でなかった事に感謝した。もしもまっとうな武器を持ち本調子であったのなら、危なかったかもしれない。

「ふははははははは! どうしたブロントサン! その程度で終わりじゃねぇだろうなぁ!!」
「おいィ? サンまで名前と勘違いしてるようだから言っておくが俺はBuront(ブロント)だ
正直なところ殺そうとしてくる相手にさんづけされるのは座りが悪いんでやめてもらえませんかねぇ・・?」
「そうかよ! じゃあ改めて楽しもうぜぇ、ブゥロントォォォォォォゥ!!」

 そうしてまた緋想の剣とキーボードがぶつかり合う。その瞬間、キーボードに亀裂が走った。
 異常な耐久力を誇ったキーボードとは言え、名剣といわれる部類の剣を相手の二連戦でついに限界が来てしまったのだった。
 弾かれると同時に上半分が吹き飛ぶキーボードを尻目にバルバトスは後ろへと飛び退る。
 どうするか、武器を持っている分あちらが有利、ふと、右手が掲げているデイパックへと伸びようとしている事に気付き、凍り付いた。
 自分は今、何をしようとしていたのか。デイパックには武器は無く、ある物はタミフルというアイテム。
 戦闘中にアイテムを使う。それはバルバトスにとって許されない行為。
 だが、この状況では仕方ない。死んでしまっては意味が無い。そう考えている自分がいる。
 その一方で、例え死んでしまったとしてもアイテムを使いたくない、軟弱者になどなりたくないと考える自分がいる。
 生存かプライドか、二つの自分が鬩ぎあう。
 何かを取り出そうとするバルバトスに対し、身構えるブロントさん。そしてバルバトスはデイパックからタミフルを取り出し、

「ア イ テ ム な ぞ 使 う 訳 が ね え !」

 明後日の方向へと放り投げた。
 バルバトスの突然の意味不明な行動を前に動きの止まるブロントさんをよそに、バルバトスは狂喜に染まった笑みを浮かべる。
 生存かプライドか、バルバトスの取った行動は後者であった。この場で生き残ったとしても、彼が軟弱者と同じ行動を取った事は消せない。
 何より自分はここで死ぬつもりなど毛頭ないのだ。同じ生きるのであればどうして屈辱的な方法を取るであろうか。
より獰猛な笑みを浮かべながらバルバトスはブロントさんを見据えた。

「そんな壊れたキーボードで戦うその浅はかさは愚かしい」
「くく、もう勝ったつもりかぁ? 灼熱のバーンストライク!!」

 突如上から降り注ぐ炎を纏った隕石群をバックステッポでカカッと避けた刹那、緋想の剣を持った手に鋭い痛みが走り思わず緋想の剣を取り落とす。
 何が起ったのか、視界に壊れたキーボードが映る。
 バーンストライクは囮であり、本命はキーボードを投函し緋想の剣を手放させる事にあったと気付くより速く、バルバトスの拳がブロントさんの顔面へと突き刺さった。

「これでぇ、条件は五分と五分だなぁ。オラ、立てよブロントぉ」

 緋想の剣を蹴り飛ばし、ヨロヨロと立ち上がるブロントさんをバルバトスは見下ろす。
 対するブロントさんは血の混じった唾を地面に吐き捨て、挑戦的な目でバルバトスを睨みながら拳を固めた。

「リアルでの俺はモンクタイプ
俺の雷属性の左がお前を捕らえる事になる
おまえ調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」
「面白い。見せてもらうぞ、貴様のもがきとやらを!」

 二人の拳が互いの顔に突き刺さる。
 パンチングマシーンで100を出し、不良として学校の生徒に一目置かれているブロントさんではあるが、如何せん相手が悪すぎた。
 重い一撃によろめくブロントさんの腹部に膝蹴りが入り、くの字に曲がった背中に拳が叩き込まれ地に叩き付けられる。

「いつまで寝てんだぁ!!」

 倒れ伏すブロントさんに浴びせられる踏みつけの嵐。ブロントさんの身を包む防具がべこべこに変形していく。
 トドメに勢い良く蹴り飛ばされてブロントさんは地を転がった。
 全身から痛みにより悲鳴が上がる。しかしそれでも尚、ブロントさんは立ち上がる。

「ほう、あれだけやられてまだ立ち上がるか。その根性だけは認めてやろう」
「ナイトはPTの盾だからこの程度で倒れないのは確定的に明らか
しぶとく立ち上がるのがナイトではにい、しぶとく立ち上がってしまうのがナイト」

 燃える闘志の両の目に灯しながら拳を構えるブロントさんを見て、バルバトスは今までに屠ってきた英雄達を思い出す。
 絶望的な状況でも諦めずに立ち向かって来る英雄達。そしてそういう者達を無慈悲に、残酷に叩き潰す行為は何よりも彼の渇きを癒してくれた。

「ほぉう、盾か。貴様が盾なら俺は貴様の様な盾など容易く突き破る矛だ。行くぜぇ、とっとと貫いてやるよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 ブロントさんの顔面へと照準を定めたバルバトスのストレートをブロントさんはバックステッポでカカッと回避する。
 その瞬間、バルバトスの魔力が迸った。

「男に後退の二文字はねぇ! 絶望のシリングフォールゥ!!!」

 ブロントさんの着地と同じタイミングで落下する岩石。逃げようとする弱者を絶望と共に押しつぶす岩石はブロントさんへと落下し、彼の鎧を粉砕しながら後方へと弾き飛ばした。
 土煙の晴れた先、そこには鎧の残骸を纏い、土にまみれて転がるブロントさんの姿があった。

「お、おいィ……」
「どぉしたぁ? もう動けないのか? ん?」

 鎧が守ったとはいえ大質量の岩石の直撃を受け、まともに動けないブロントさんへとトドメを刺す為に歩み寄るバルバトス。
 ホーリーを唱えようとするが吹き飛ばされたショックで脳震盪を起こし、うまく頭が回らない。
 万事休す。バルバトスは更に一歩前に進もうとし、視界の片隅に眩い光を捉えた。
 何事かと視線を向けた先には逃げ出した筈の小娘、渚が光源であろう何かを掲げた姿。
 そしてその掲げた何かから、オレンジ色の軌跡を描きかながら影が飛び出した。
 まずい。そう思い後ろへと下がった瞬間、先程までバルバトスの顔があった場所に刃が閃く。
 中央部煌煌と光るモノアイの付いた仮面を纏い、刀を携えた筋肉質の人間とよべるかどうかも怪しい人形の物体。

「俺に生きる実感をくれ!!」

 改めて刀を構え、人間大のサイズとなったサイボーグ忍者のフィギュアが咆哮と共にバルバトスへと斬り掛かる。

(まったく、何が遅れをとる筈がないよ。遅れっぱなしじゃない)

 心の中で悪態をつきながら渚は転がっていた緋想の剣を片手にブロントさんへと駆け寄っていた
 ブロントさんに逃げる様促された渚であったが、彼女は逃走せずに、二人の戦いを見ていた。
 理由の一つはブロントさんをここで失う事が彼女にとって痛手だった事。
 ブロントさんを置いて一人で逃げた先で文や文に情報を聞いた者達と遭遇したとして、殺し合いに乗ってないと言っても信用される確率は限りなく低い。
 文達に遭遇した時に彼女が乗っていない事えお証明してくれる相手が現状ブロントさんしかおらず、また、それなりの実力者である。彼の有用性はまだまだあるのだ。
 もう一つの理由はいざという時に彼を助けるための支給品、サイボーグ忍者のアシストフィギュアを手に入れていた事。
 それが無ければ苦渋の選択であったがブロントさんを見捨てて逃げるしかなかっただろう。
 そして、ブロントさんがシリングフォールにより吹き飛ばされた時、説明書に書いてある使用方通りにアシストフィギュアを掲げたのであった。

「ブロントさん!」
「お、おいィ? 下がっていろと言っているサル!
何勝手に戻って来てるわけ? やめてくれませんかねぇ・・?」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! やられそうになってるのに何言ってるのよ!」
「それは……」
「私の事守ってくれるんでしょ!? ならこんなとこで倒れてないでしっかり守りなさいよ!」
「すいまえんでした;;」

 説教を受けよろよろと立ち上がるブロントさんを見て、渚はとりあえず安堵の溜め息をつく。
 しかし、その後ろで轟音が響き音の発信源を見て渚は言葉を失った。
 吹き飛ばされたサイボーグ忍者が塔の壁にめり込みただのフィギュアへと姿を戻る、そして怒気の籠った目で渚を睨むバルバトスの姿。
 渚は知らなかった、バルバトスが戦闘の最中にアイテムを使われる事を極端に嫌う事、そしてアイテムを使う相手には容赦しない事を。
 サイボーグ忍者召還の一部始終を見ていたバルバトスは、渚がアイテムを使ったとみなし、獣の様に歯をむき出しながら最後の魔力を体から迸らせた。

「軟弱者は消え失せろぉぉぉぉぉ!!! 断罪のエグゼキューション!!」

 渚の前方に魔力が収束する。渚は逃げようとするがそれよりも早く、収束した魔力が解き放たれた。
 誰かの絶叫を耳にしながら渚の目前で極光が瞬き、衝撃が彼女を襲い吹き飛ばされた

「……あれ?」

 吹き飛ばされただけで襲ってこない痛みを不思議に思い渚は目を開けた。

「ほう、まだそんな力を隠していたのか」

 驚きと歓喜の表情が混じった顔でバルバトスが声を向けた先。
 そこにいたのは先程とどこか雰囲気の異なるブロントさんの姿だった。

 必死だった。
 我武者らだった。
 夢中だった。
 ただ、これ以上仲間を失いたくなかった。一縷の望みをかけて痛む体を無理にでも引きずり魔力をこめる。
 彼は憤った。盾と言っておきながら助けられ、仲間を危機に晒した無力な自分を。
 仲間を守る。ナイトとしてのプライドか無意識のうちに怒声があがる。
 その怒りは限界を越え、有頂天へと達した。
 咄嗟に放ったホーリーは何とか相手の魔法を相殺し、渚を助ける事には成功した。
 仲間を守る事に成功し、安堵の溜め息をついたブロントさんは、バルバトスを睨みながら口を開いた。

「一級廃人のおれに対してPTを攻撃するというナメタ行為をする事でおれの怒りは有頂天になった
この怒りはしばらくおさまる事を知らない」
「ならどうする? 俺にいい様にされていた貴様に何ができる」
「さっきとかわらにい
お前みたいな危険な奴はバラバラに引き裂くだけ」

 緋想の剣を構えたブロントさんに対し、強く拳を握りるバルバトス。
 互いが感じ取った。これが最後の一撃になると。

「テメェみたいな貧弱な盾なんぞ、微塵に砕いてやるよぉぉぉぉ!!!」

 先に飛びかかったのはバルバトス、頭を砕けといわんばかりの渾身の一撃を叩き込む。
 矢の様な速さで放たれる必殺の一撃は、正確にブロントさんの頭部を捉え、血の華が咲く。
 というバルバトスの予想はブロントさんが左手を使い拳をいなした事により覆った。バルバトスの顔が驚愕に歪む。
 ブロントさんとバルバトス、魔法も肉弾戦もこなすこの二人の戦闘スタイルの一番の相違点。それはバルバトスが相手を倒す事に特化し、ブロントさんは守る事に特化しているという事。
 ただ相手を倒すだけのバルバトスとは違い、ブロントさんの仕事は相手の攻撃を一身に受ける事であり、自然と攻撃のいなし方も身に付いてくる。
 互いに攻撃を放つのであれば攻めを主体とするバルバトスに軍杯が上がる。だが、攻撃を耐える、又はいなすのであればブロントさんにも勝機は充分にあるのだ。
 有頂天状態により身体能力が若干上昇していた事も功を奏し、バルバトスの一撃を避ける事に成功したブロントさんはそのまま緋想の剣をバルバトスの胸へと突き刺した。
 バルバトスの胸と口から鮮血が迸り、ブロントさんの頬を濡らす。

「最初にも言ったが黄金の鉄の塊でできたナイトがキーボ-ド装備のジョブに遅れをとる筈がない
お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」

 ブロントさんは剣を引き抜くと、即座にその剣を一閃させ、バルバトスの首を跳ね飛ばした。
 宙を舞うバルバトスの首は血を吹きながら地面に転がる。彼の渇きは癒える事ができたのか、それはもう永久に解らない。
 バルバトスの死亡を確認したブロントさんは一息つき渚へと声をかけようとする。
 その瞬間、極度の疲労感と激痛が彼に襲いかかった。

「ブロントさん!?」

 駆け寄る渚を視界に収めながらブロントさんは倒れ込む。
 バルバトスの戦闘による傷、そして有頂天状態になった事による疲労のせいで今にも意識が途絶えようとしていた。

(ちょと……これsYレならん……しょ)

 それを最後にブロントさんの意識は闇に沈んだ。

「結局ここで足止めか」

 塔の中で気絶しているブロントさんを見て渚は溜め息を吐いた。
 引きずりながらもブロントさんを塔の中まで運んだせいで体力を消耗した渚は地べたに座り込む。
 一瞬、渚の脳裏にブロントさんを殺害し先に進む考えも浮かんだが、それは彼女にとってリスクが大きいので即座に却下した。
 放送後、名簿を見た時は彼女の兄らしき人物はいなかった。最初は覚えてないから誰か分からないだけだと思っていたが、野々原の名字がない以上自分しかいないのだろう。
 これは彼女にとって喜ばしい事実であった、どちらか一方が生き残るかの選択肢を迫られもせず、しかも兄に自らの悪評が広まる事もない。
後はどうやってこの殺し合いから抜け出すかだ。
 優勝にしろ主催者をどうにかするにしろ積極的に殺して回るのが愚策な以上、彼女が今頼れるのは、彼女としては不本意な事にブロントさんしかいないのだ。
 動くとすれば殺し合いの終盤。それまではブロントさんを利用し続けるしかない。信用されているブロントさんのそばにいるのが彼女にとって一番都合がいいのだ。

「まあ使えそうなアイテムが手に入ったのは良かったけど」

 そう言って彼女は塔の近くに転がっていたタミフルを思い出す。
 バルバトスのデイパックに入っていた説明書を読み、何にせよいずれ役に立つだろうと渚は考えていた。

「はぁ、お兄ちゃんに会うのはもう少し先になりそう。それまでに変な虫がついてなきゃいいけど」

 本日何度目かの溜め息を着きながら、渚はペットボトルの水を流し込んだ。

【バルバトス・ゲーティア@テイルズシリーズ 死亡】

【C-2 塔内部/1日目 午前】
【ブロントさん@ネ実】
[状態]: 全身強打、左頬に痣、極度の疲労、気絶、鎧大破、左篭手が大破
[装備]:緋想の剣@東方project
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況]基本思考:右上と左上を倒し真のエンディングを迎えひっそりとリアルより充実したヴァナ生活を送る。
1:……。
2:渚と渚の兄を守る。
3:あの二人を見つけ渚を謝らせる。
4:出会ったやつに話しかけ出来れば仲間にして敵対するようならばカカッと対処する。

【備考】
※メタ知識に関しては不明だがそんなものはなくてもブロントさんはうろたえない
※ナイトの防具一式はもはやブロントさんの普段着であるので奪われるわけがない
※流石に人が死んだので自分の行動に関してどちらかというと大反省したようです。

【野々原渚@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ】
[状態]:ヤンデレ、全身に軽い切り傷、腹部にダメージ(小)、 軽い精神的ダメージ、小程度の疲労
[装備]:チャイナ服@現実 ピョン太君@私立東方学園 アシストフィギュア(サイボーグ忍者)@大乱闘スマッシュブラザーズX
[道具]:支給品一式×3、タバコ一箱@メタルギアシリーズ、タミフル@現実、北条鉄平の首、北条鉄平の首輪、不明支給品0~4
[思考・状況]
1:ブロントさんが起きるまで休憩。
2:ブロントさんを利用して自分を守ってもらう。
3:あの二人を見つけて、自分の風評が流れるのを防ぐ。
4:表立っての殺しはしない。
5:最終的に意地汚い虫はみんな殺すが強い奴は潰し合わせる。
6:料理の材料を調達する?

【共通備考】
※塔の外に首を切断されたバルバトスの死体が放置されています。

「あーあ、やられちゃったよ」

 一人しかいないモニター室の中。
 バルバトスの首輪の反応が消えた事を確認し、右上はつまらなそう溜め息を吐いた。

「折角アイテムに対する忌避感を和らげてやったってーのに、そんなにプライドなんてのが大事かねぇ?」
「なるほど、やはり貴方が犯人でしたか」

 扉が開く音と共に後ろから響く左上の声。
 犯人と言われてなお、右上はへらへらとした笑顔を左上に向けた。

「盗み聞きとは趣味が悪いね」
「北斗の拳から呼び出したトキが積極的に戦う姿勢を見せた時からおかしいと思っていましたが、どういうつもりです?」
「単なるてこ入れだよ」
「てこ入れ?」
「そ、だって殺し合いの割にはそれに適した支給品とか少ないしさ。二人、三人くらいならいいかなって思うじゃない?
基から大幅な剥離をしない程度に思考をちょちょいとね。
マーダーは多けりゃ多い程いいしさ。ま、どっちも失敗したけど」

 怪訝な表情を浮かべる左上に説明した後、右上は大袈裟に方をすくめる。

「……上の方々の中にはいい顔をしない者もいました。今後余計な事はしないように」
「へいへい」

 手をひらひらと振る右上を見て、溜め息を着きながら左上は席に着く。

(ま、そりゃ無理な相談だけどね。だってほら、無駄な事するのが俺の仕事だし)

 右上は心の中で舌を出して笑う。
 無駄という存在意義を持つ男はモニターを見ながら、次はどう動くかを考え始める。



sm130:Chain of Memories 時系列順 sm145:『キャーブロントサーン』
sm137:極みスイーツ(笑)~フジキ!スタンド!マッハキャリバー! 投下順 sm139:The last wolf strategy ~志々雄真実の策略~
sm90:塩くれてやる! -若本製塩編-(後編) バルバトス・ゲーティア 死亡
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sm91:このままでは私の寿命がストレスでマッハなんだが・・ 野々原渚 sm145:『キャーブロントサーン』
sm86:第一回定時放送 右上 sm140:違う自分 -ADVENT-
sm86:第一回定時放送 左上 sm146:第二回定時放送






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