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それでも僕は死にたくないⅤ ◆jVERyrq1dU





「カイト様!」
ここでカイトを見失うわけにはいかない。リンは追いかけようとしたが、肩の痛みで走る事が出来ない。
おまけに驚いた事に、今思いっきり頭を鉈で殴られたハクが、リンの前に立ちふさがった。

「貴方……痛くないの……?」
リンは目を大きく見開いて驚愕し、頭と腹から血を流しながらふらふらと立つハクを凝視した。
「痛い……よ……? リン、、ちゃん」
「それなのにどうして!早く死んでよ!見ていて痛々しいのよ!」

ハクは、リンの言葉を無視して、相変わらずの清々しい表情でぽつぽつと話し始めた。
もうそろそろ死ぬだろう。喋る事もそろそろ出来なくなる。だけど聞いてほしい。大好きなリンに聞いてもらいたい。

「どうして?って言ったね、リンちゃん……教えてあげます」
ふらふらとリンへと近づいていく。
「私も、カイトさんのように卑怯で……情けなくて、どうしようもない、人間なんです…
 リンちゃんの前では……いつも強がっていました。けど……一人でいる時は、いつも泣いて、
 いつもお酒を飲んで現実逃避して、どうしようもない女、でした」
ふらりとバランスを崩すハク。そしてべしゃりと地面に倒れてしまった。

覚悟していたはずなのに、やっぱり死ぬのは怖い。死への恐怖の所為で涙が溢れてきた。
これではまたカイトに馬鹿にされてしまう。ハクは、怖くて怖くて涙を流しながら、それでも喋る事を止めなかった。

「でも、そんな私を……信じてくれる人が現れました……。
 その人は、頼んでもいないのに、、進んで日陰者の私のマスターになってあげる、、ってそう言ってくれたんです……
 私、、その言葉を聞いた時…ああ、こんな私を信じてくれる人がいるんだな…って思って、嬉しくて嬉しくて……」

もう一度、アレクさんに会いたい。マスターに会いたい……

「私も頑張らなくちゃ……って、思ったんです…アレクさんの信頼に答えようと……ヘタレなハクを卒業しようって思って…
 怖かったけど…自分なりに……頑張りました……」

誰かが近づいてくる足音が聞こえる。ハクは地面に耳がくっついているから聞こえるのだろうか。
リンは足音に気づいていないようだ。


「私、自信を持って言えます。私は、以前の私よりも確実に立派になった……そう、確信しています。
 だから私は…簡単には死にません……リンちゃんと最後まで、お話したい、、です」


リンは複雑な面持ちで、静かに口を開いた。
「どうして私にそんな事を……?」
ハクは涙を流しながら微笑む。

「決まってるじゃないですか……いつもいつもレン君と一緒に私の歌の先生になってくれたリンちゃんに……
 アレクさんって人のおかげで少しだけ立派になれたよって……自慢したかったからです……」

ハクはふふっと軽く笑った。今目の前に居るリンは、ハクの事を知らない。
それでもいい。それでも伝えておきたかった。いくら記憶や人格が異なろうとも、リンがリンである以上、ハクは彼女の事を心から愛していた。


足音がどんどん大きくなってきている。誰かがこちらに近づいてきている。誰だろうか。
「カイト様……クラッシャー……」
リンが驚いて、やって来た二人を見る。

「畜生!やめろ!俺は死にたくない!!」
クラッシャーに無限刃を突き付けられ、ここまで歩かされてきたカイトがそう喚いた。
ふらふらしながら、ほとんど意識も何も残っていなさそうなクラッシャーがにやりと笑みを見せた。
「王子様を捕まえて、連れてきてやったぜ……お姫様……」
偶然クラッシャーに近づいてしまったのが、カイトの運の尽きだった。

「────ハク……」
ハクの耳に、懐かしい声が届いた。離れ離れになって一時間も経っていないのに、ひどく懐かしく感じるのは何故だろう。
ハクは一度閉じた目を薄らと開く。目の前にいたのはアレックスだった。

「アレクさん……私、成長しました……貴方が私を信じてくれたように、私は自分を信じてみました……
 有難う……アレクさん。貴方はまさにヒーローです……」
「がああッ!!おらあ!!くそがッ!」
カイトが必死になって喚きながら、クラッシャーの一瞬の隙を突き、逃げ出した。


「…………一つ……カイトさんに伝えてほしい事があるんです」
「言ってみろ……」
アレックスはぼろぼろの体でハクを抱きしめる。ハクは耳元で何かを囁いた。
それを聞いたアレックスは、複雑な気持ちで、絶対伝えると強く頷いた。

やり残した事はもうない。そう思うと、力が一気に抜けた。相変わらず怖くて怖くて仕方がない。

「怖いです……死にたくないです……」
「お前は立派だった!自分を誇っていい!だから、だから……」

弱音はもう吐かないって決めてたのになあ……やっぱり怖いよ。涙もぼろぼろ出てくる。
死にたくない。どうしてこんな馬鹿げたゲームで死なないといけないの?
私の日常を返してよ……死にたくない。死にたくない────


「死にたくない……アレクさん…………」


▼ ▼ ▼

ハクの顔から生気が消えるのを確認してすぐに、リンは遠くへ逃げているカイトを凝視した。
洗脳されているのであれば、カイトは元に戻って、あんな情けない事をせずに、リンの所へと戻って来てくれるはずだ。
だが、カイトは足を止めなかった。そのまま見えない恐怖に対して罵りながら、色々と言い訳しながら、逃げて行った。

「ハクを殺したのはリン、お前だな」
「カイトや……剣埼かもしれねえだろうが……」
ふらふらのクラッシャーがリンを守るようにして、アレックスの前に立つ。
「あのクズにそんな根性はない。剣埼でもない。俺達は勘違いしていた。あいつは殺し合いに乗っていない。
 となると、あの状況でハクを刺せるのは、リン。お前しかいない」
「まだやり合う……っていうのか?」
クラッシャーが刀の切っ先をアレックスに向け、威嚇する。
アレックスは静かに、妙に落ち着いた雰囲気で口を開く。

「正直言ってお前達に対して何の怒りも感じていないと言えば嘘になる。出来れば殺してやりたい。
 だが、俺は今回だけお前達を見逃そうと思う。ハクがリンに話していた内容は俺も聞いている。
 ハクの思いを汲んでやりたい。ここでお前達を殺すのは簡単だが……ハクの死体の前でリンを殺す事だけはしたくない」
アレックスは一旦言葉を切り、そして鋭い視線をカイトが逃げて行った方向へと向ける。

「それに、今すぐに追いかけて思い切りぶん殴りたい奴がいる……」

アレックスはハクの死体を綺麗に整え、カイトが逃げた方へと歩き始めた。
クラッシャーはアレックスの姿が見えなくなるまで身構えていた。彼の姿が見えなくなると、大きく溜息をして、リンの方へと向き直る。


「腕、折れてるだろ、それ……」
「……そうみたいね」
「歩ける……か?」
「動いたら痛いわ……凄く……」
「仕方ねえな……くそ……」

クラッシャーは刀をしまい、リンに背中を向けて中腰になる。
リンはクラッシャーの行動を見て戸惑っている。

「ロードローラーまで……背負って連れてってやる……」
「でも、貴方の体は私以上にぼろぼろだわ……凄く痛そう……」
「いいから早くしろよ。アレックスが戻ってきたら俺達今度こそぶっ殺されるぞ……
 背負うくらい大丈夫だ。キーボードクラッシャー様を嘗めるな。うほほほほ……」

リンは少し考えた後、素直にクラッシャーにおんぶして貰った。クラッシャーは苦しそうに呻いたが、気合でリンを運んでいく。
「いつもより元気のない『うほほほほ』だったわ……」
「仕方ないだろ……運動会プロテインパワーはおろか、三倍アイスクリームまで使ったんだから……」

必死になってリンをロードローラーの助手席まで運び、それからクラッシャーは近くから使えそうな木の枝を探してきて、
リンの折れた腕に添え木し、簡単な応急手当てを施してやった。それから、クラッシャーはロードローラーを運転し、全速力で駅を離れる。
リンは結局ヘタレだったカイトの事を思い出し、涙を流した。悲しくて悲しくて仕方がない。
カイトが本当に洗脳されていないのだとしたら、リンはあんな情けない、なんの魅力もない男に惚れてしまったという事になる。

「カイト様…………」
クラッシャーはリンの呻くような声を聞きながら、ロードローラーのハンドルを握りしめる。

「……病院にはいかないの……?」
「賀斉がいるかもしれん」
林にとりあえずロードローラーを止める。治療品を求めて病院に行こうとも思ったが、考えなおして林に隠れる事にした。
もしかしたら待ち合わせの約束を守って賀斉が来ているかもしれない。
剣埼がいないのを見られたら怪しまれるし、いざ襲いかかられたら今のクラッシャーでは何も対抗できないので、病院に行くのはやめておいた。

「クラッシャー……骨折って痛い……ここまで痛いなんて知らなかった……
 今まで私が奴隷たちに強いてきたことを思うと……」
「だけど……俺達は殺して優勝しないとダメなんだ……悲しいけどな」
クラッシャーはリンのデイパックの中に使えるものはないかと中身を見る。
リンが欲しがっていそうなものを見つけて、取り出す。

「見ろ。灯台下暗しって奴だ……ベッドには劣るけどな……ほほほ」
中にあったのは、はてなようせいの可愛らしい絵がプリントされた毛布だった。
見た目は痛々しいが、毛布は毛布なので暖かくて気持ちいい。
リンが温かいベットで寝たいと数時間前に言っていたのを、クラッシャーは覚えていた。

「俺は車体の上で寝る。誰か来たら起こせよな」
クラッシャーから毛布を受け取る。それからクラッシャーはロードローラーの座席から、
車体の方へと移り、そこで気が抜けたようにごろりと横になった。毛布をくれたのは嬉しいが、リンはそれどころではない。
カイトの事を思うと涙が出てくる。悲しくて悲しくて……。時折、カイト様、と呟くのがクラッシャーの耳に届いた。


駅での一連の騒動で、クラッシャーは気づいた事がある。どうも自分は、リンに対して仲間以上の感情を抱いているらしい。
だけど自分がリンの気を引けるわけがない事はすでに気づいていた。決して叶わない恋だ。
御姫様のようなリンは、王子様のような男が似つかわしい。クラッシャーの風体と雰囲気は王子様とは程遠い。

リンの事が好きなクラッシャーは、リンがいつまでも悲しそうに泣いているのが我慢できなかった。
泣いているリンより、カイトの事を思いうっとりしているリンの方が可愛い。
クラッシャーは剣埼を倒した後、偶然見つけた『それ』を握りしめる。恐らく自分がカイトをトイレで掴んだ時に、落ちたものだろう。

それを取り出して、クラッシャーは泣いているリンに向かって投げた。
リンはそれを見て目を瞬かせている。

「これって……」
「カイトのマフラーだ。本物のな。うほほほほ……嬉しいだろ?」

リンはクラッシャーから貰ったマフラーに顔を埋める。ついさっきまでカイトが巻いていたマフラー。
カイトの匂いが、汗が、全て染みついている。その匂いは、リンが憧れ、恋い焦がれたあのカイトの匂いと寸分違わない。
現実のカイトは情けない男でも、リンの記憶に残るカイトは完璧なヒーローだ。
このマフラーの匂いは、リンに完璧な方のカイトをリアルに思い出させた。なんといったって匂いなどが全て同じなのだから。

「カイト様ぁ……」
マフラーに顔を埋めて、切なさと愛しさからリンはまた泣いた。
涙こそ流したが、リンは嬉しかった。例え思い出だとしても、マフラーによってヒーロー、カイトの鮮明な姿を思い出す事が出来たのだから。
リンは、過去に触れ合ったカイトを思い出して、微笑む。


リンを励ますためにやるだけやったクラッシャーは目を閉じる。

どうやらリンはひとまず元気を取り戻してくれたようだ。好きな人の事を考えている時のリンは一番いい。
クラッシャーの一番好きな、しかしクラッシャーと顔を合わせている時には決して見せる事のない、とてもいい表情だ。

それにしても、偶然拾ったマフラーがリンの笑顔に変わるなんて……ラッキーだな。

そう思った後、クラッシャーは気絶するかのように眠りに落ちた。

クラッシャーが眠ってから少し経った後、はてなようせいがプリントされた痛々しい毛布が彼に優しくかけられた。
深い眠りに落ちているクラッシャーは毛布をかけられた事に気づかない。

【D-5/一日目・昼/林】
【鏡音リン@VOCALOID2(悪ノ娘仕様)】
【状態】健康、軽度の疲労。右腕骨折(応急手当済み)、悲しみ
【装備】本物のKAITOのマフラー@VOCALOID、ロードローラー@ぶっちぎりにしてあげる♪
【持物】基本支給品、レナの鉈@ひぐらしの鳴く頃に、KAITOのマフラー@VOCALOID、不明支給品0~1
【思考・行動】
基本思考:?????
1、クラッシャーと協力する。誰かが来たらクラッシャーを起こす。
2、レンに会いたい。カイト様は……
3、ロードローラーに一目惚れ
※初めて痛みを知って、色々と価値観が変化したようです

【キーボードクラッシャー@キーボードクラッシャー】
【状態】全身打撲、顔の痛み、極度の疲労、睡眠中
【装備】無限刃@るろうに剣心 、はてなようせいがプリントされた毛布
【持物】支給品一式×2、ブレイドバックル@仮面ライダー剣、Rホウ統(使用済)
ブレイドバックルの説明書、医療品一式(簡易な物のみ)、不明支給品0~1(ただし銃器は無い)
【思考・行動】
基本思考:優勝して日本国籍を手に入れる。
1、リンと協力する。リンの事が好き。
2、カイトの情けなさに呆れた
3、殺し合い打倒しようとか現実から逃げてんじゃねえええええええ!
※剣埼の支給品を奪いました。


俺は逃げた。どこまでもどこまでも逃げ続ける。俺はなんて卑怯な奴なんだろうな、
だとか、今すぐハクのところに戻ってやれとかいう心の声を無視して走り続ける。

情けなくて情けなくて、それでも罪だけは認めたくない。俺がした事は全て悪い事ではない。

俺はハクを殺したわけではない。悪いのは、リンだ……リンが訳の分からない人格になって……
いや、あれはきっとクラッシャーがリンをあんな風に変えてしまったのだろう。そうに違いない。
という事は、一番悪いのはクラッシャーだ。ハクが死んだのもリンが死んだのも全部あいつの責任だ。

「くそぅ……クラッシャー、お前のせいで俺は……リンは……」

クラッシャーという諸悪の根源を見つけ出した俺は、一気にあいつの事が憎たらしく思えてきた。
あいつの所為でハクは死んだ。俺の大切なリンはあいつに洗脳されて人殺しを強要させられているのだ。
そうに違いない。嫌がるリンを脅して、無理やり意のままに動かしているのだ。
なんという鬼畜だろう。殺してやりたいくらい憎い。

だが、俺には殺せそうにない。俺は弱いし、あいつは強い。俺には勝てるわけないんだよ……
あのクソ野郎の手から、誰かリンを助け出してくれる奴はいないだろうか……

クラッシャー……死ね……さっさと死ねよ馬鹿……

俺はクラッシャーへの呪いの言葉を呟きながら、歩いた。
ふと気がつくと、周りには何の障害物もない。このままでは誰かに襲われてしまうかもしれない。
そうなると……死。死にたくない……俺はまた震え始める────



意外にも、カイトとは簡単に再会する事が出来た。駅から少し離れた所に、悲しげに蹲っているカイトをアレックスは見つけた。
逃げだしたはいいが、これからどうすればいいのかわからず、一人恐怖と孤独に苛まされ、途方に暮れていたようだ。
カイトはアレックスを見ると、すぐに気まずそうに顔をしかめた。
それでも懸命に表情を作って、アレックスに愛想笑いを浮かべながら近づいて来たのは、やはり彼とて罪悪感を感じているからだろうか。
それとも、ただ単に自分の身を守ってくれる人間が追いかけて来てくれた事を喜んでいるだけなのだろうか。


「お、追いかけてきたんだな……」
俺は一生懸命笑顔を作って、アレックスに言った。アレックスはすでにボロボロで、自分の体重を支える事すらきつそうだった。
「クズめ……」
アレックスは吐き捨てるように言った。俺は言われた台詞を理解できなかった。
その時、俺の頬に電撃のような鋭い痛みが走った。訳の分からないまま天と地が逆転し、俺は情けなく地面に膝をついた。
どうやらアレックスに殴られたらしい。頭が霞がかったようにぼんやりしている。

「どう、して……」
「どうしたもこうしたもあるか……卑怯者め」
「卑怯……卑怯かもな……だがお前に俺を殴る権利はあるのか?
 俺は卑怯だが、何も悪い事なんてしちゃいねえぞ……」
俺は薄らいだ意識でアレックスを睨んだ。

「一々言われないと分からないのか? お前は今までに何度他人を裏切った?
 今までに何回言い訳をしたか覚えているか? 適当な理由を作り上げて、他人を裏切るための大義名分にしている」
「だったらなんだ……?それって悪い事なのか?自分を守るために我武者羅になって何が悪い?」
「……悪い、悪くないの問題じゃない」
アレックスの奴は俺の問いかけをかわしている。
「悪い悪くないの問題じゃないだと? という事はやっぱり俺は悪くないんじゃねえか。
 よくも無実の俺を殴りやがったな。何の罪もない一般人をお前は平気で殴るんだな」
俺はふらふらと立ち上がり、ますます鋭くアレックスを睨んだ。


「お前は自分が恥ずかしくないのか!」
「恥ずかしいわけないだろ!やっぱりお前には俺の気持ちなんて分からないんだよ!
 力もあって勇気もあるお前はヒーローだ! だけど俺には何の力もない。クラッシャーに襲われたら何の抵抗も出来ずに死んでしまう。
 俺は非力なんだ!ヒーローだったら俺に卑怯な振る舞いをさせる前にさっさと俺を助けろよ!
 それがヒーローの義務だろうが!!」
恥ずかしくないのかと問われて、俺はアレックスに腹がたった。そもそもアレックスがもっと頑張っていれば俺は卑怯者にならずに済んでいた。
超人なら、ヒーローならもっと頑張りやがれ……!

「お前は俺をどうしても悪者にしたいようだが、そもそも怒りの矛先が間違っていないか?
 誰よりも悪いやつなのは右上と左上だろうが!それとリンを洗脳しやがったクラッシャーだ!
 俺はこのクソゲームの最大の被害者なんだ!俺が悪いわけあるか!」
俺は勢いに任せて、アレックスの胸倉を掴んだ。
「お前がそんなにキレているのはハクが死んだからだろ? だったら俺を責めるのはますますおかしいよな?
 俺は仕方なくハクを見捨てたが、殺してはいない。殺したのはリンだ。そしてその仲間のクラッシャー。
 怒りに任せて殴るならそいつらを殴ってこいよ!どうして俺が殴られなくちゃいけないんだ!」
俺は思い切りアレックスの頬を殴る。


「この三流ヒーローが! 殴る相手を間違えてんじゃねえ!」


「本当に自分に何の罪もないと思っているのか?罪って言うのは法律で決められている項目だけを指す言葉じゃないぞ。
 俺はお前の心に聞いている。本当にお前は何の罪も感じていないのか?罪悪感はないのか?」
「ったく、ハクも守れずに何やってんだよお前は……俺だけは頑張って守れよな」
「俺の質問に答えろ!」
アレックスが突然激昂し、俺に叫んだ。俺はびくりと体を震わせる。

「罪悪感……そんなもん、感じるわけないだろうが!」

俺は思い切り嘘を叫んだ。本当は罪悪感を感じている。ハクにもリンにも申し訳ない事をしてしまった。
だけど罪悪感がある事を認めると、俺は悪者になってしまう。俺は何も悪い事をしていないから罪悪感なんて感じない。それでいいんだ。
アレックスは俺の言葉を聞くと、ますます真剣な目つきになり、口を開く。

「ハクに伝言を頼まれた。死に際に、あいつはどんな言葉をお前に残したと思う?」
「……伝言、だと!?」
俺は言葉に詰まった。伝言……。正直言って聞くのが怖い。あいつは俺の事を憎んでいるに違いないからだ。

「教えてやる。あいつは最後にこう言っていた。
 ────そうまでして生きたいですか? とな」

電撃のような刺激が俺の脳に走る。俺は言葉を返す事が出来なかった。そうまでして生きたいですか?
ハクの最後の言葉が、俺に重くのしかかる。

他人の期待、信頼、気持ち、好意、頼み、命、を裏切って────そうまでして
俺は浅ましく、醜く、情けなく、惨めに、ここまで生き伸びてきた。

────カイトさん。それでいいのですか?
────人間は生きる事に種の保存以外に何か別の意味を見出す事の出来る唯一の生き物です。
────カイトさん生き方は、およそ人間とは言えるものではありません。むしろ獣に近い。
────ただ生きる事だけを追い求めるのは、動物と同じです。

────カイトさん、これまで動物のように生き延びてきた貴方に、人間の尊厳が残っていますか?

ハクの声が聞こえてきたようだった。



もはや俺はアレックスに何の言葉も返せなかった。今までの事が走馬灯のようにフラッシュバックされる。

一緒に殺し合いを潰そうと持ちかけて来てくれたはっぱ隊員を俺は見捨てた。
ハクの悲鳴が聞こえてきたのに、アレックスに一緒に助けに行こうと誘われたのに、俺は無視を決め込んだ。
ハクの成長を認めてやる事が出来ず、嫉妬と我が身可愛さのあまり、彼女を非情な言葉で罵った。
剣埼に殴られそうになった時、俺は命惜しさに実の妹を盾にした。
ハクがリンに殺されそうになった時、助けを求めてきたハクを無視して、俺は逃げた。

「うううぅ……」
俺は地面に手を付き、もう何度目か分からないが涙をぼろぼろと落とした。

────そうまでして生きたいですか?
────そうまでして生きたいですか?
────そうまでして生きたいですか?

ハクの言葉が脳内で何度も何度も繰り返される。
俺にどうしろっていうんだ……そうまでして生きたい、じゃない。俺にとってはそうまでしないと生きられないんだ……
分かる……ハクの言いたい事は分かる。俺はとても惨めで、自分や他人を裏切り続けている。
俺はとてつもなく醜い人間だ……だけど

「俺には……俺には力がない……!だから仕方ないだろうが……!
 どうして俺みたいな弱者が他人の期待に答えるために頑張らないといけないんだよ……」

俺はそれからしばらくの間、後悔と悲しみの念に駆られ、泣き続けていた。
そうまでして生きたいですか? そうだな、ハク。俺は『そうまでして』生きたくはない。
これ以上醜くなりたくはないんだ。

俺はずっとポケットに入れておいて、結局一度も使わなかった拳銃の存在に気付いた。
生きたいけど死ぬのは怖い。だけど、自分のタイミングで死ぬ事が出来るなら、俺はこれ以上醜くならずにすむかもしれない。
俺の人生をここで終わらせる事が出来るかも知れない。

俺は思わぬところで気付いた。これ以上醜くならずにすむ方法がある。
ハク、お前の死体を丁寧に埋めに行ってやるよ。せめてもの罪滅ぼしだ。
その後、俺は自殺しようと思う。これ以上惨めになりたくないから……


カイトと俺はその後駅に戻り、ハクの死体と剣埼の死体を丁寧に葬った。
剣埼の事はよく知らないが、ハクの人生を思うと悲しくなってくる。
弱気で引っ込み思案で、後ろ向きで……こんな馬鹿げたゲームに参加させられて、そして友に裏切られ、友に殺された。
それでも、ハクはきっと何かを成し遂げたのだと信じていたい。

カイトとハク、二人とも弱気な性格だが、それでも二人は決定的に異なっている。
最後に自分の気持ちに素直になれたハクと、今まで他人と、そして自分を裏切り続けてきたカイト。

カイトは言った。お前には俺の気持ちは理解出来ない、と。
確かにそうかもしれない。俺にはなまじ力があるから、逃げ回るカイトを理解出来ない。
戦えばいいのに、精一杯闘って、それで負けて死ぬなら本望じゃないか。ついそう思ってしまう。
おそらく俺はなんだかんだいって自分の強さに自信があるのだろう。

だがカイトやハクは違う。彼らは力を持たない。狩る者には決してなれない。
だから逃げる。だから弱音を吐く。他人を出し抜き、単純な力以外の全てを用いて足掻こうとする。

カイトの足掻きは、本当に見るに耐えない。自分に嘘をついて、ただ生を追っている。
だがハクは違った。彼女だって勿論生きたかったが、最後の最後で自分に嘘をつかなかった。
リンに自分の全てを訴え、そしてカイトを逃がし、死を受け入れた。

俺はハクの生き方の方が好きだ。だが、本当のところ、どちらが正しいのかは分からない。
自己を守る事は正義。それは疑いようがない。ハクの最後の生き方は、自分の命を放棄しているように……見えなくもない。

「アレク、俺……ちょっとトイレに行って来る」

カイトがそう言った。ハクの言葉を伝えてから、カイトは酷く大人しい。
ハクの最後の言葉が身にしみたのだろうか。あの言葉を切欠に、生まれ変わってくれることを俺は期待している。

『そうまでして生きたいですか?』一見嘲笑の言葉のように思えるが、実はそうじゃないと思う。
ハクとカイトは似た者通しなのだから、ハクとカイトは腐っても友達なのだから、
ハクの言葉には嘲笑以外の別の意味が込められている、と俺は思いたい。

もしカイトのように非力なら、俺もあんな風に惨めに行動する事を選ぶのだろうか。
俺もあれだけ醜くなってしまうのだろうか。考えても仕方がない事だ。実際、俺には力がある。カイトが言うには勇気も精神力もあるらしい。
俺とカイトとでは全く立場が違う。俺がカイトの立場に立ってモノを考えたとしても、その溝は永遠に塞がらないのに決まっている。

カイトはこれからどうなるのだろう。さすがにこりたのだろうか。
自分を見つめ直し、勇気を振り絞って欲しい。そうでなければ、ハクがあまりにも不憫だ。


────ドンッ!


トイレの方から乾いた銃声が聞こえてきた。確かカイトは銃を持っていた。
俺の額に汗が滲む。全速力でトイレまで走り、中を覗いた。
崩壊し、あたりに瓦礫が散乱するトイレの真ん中に、カイトはいた。

「死にたくねえ……死にたくないんだ……アレク……」

涙を流しながら、俺の脚に縋りついて来る。拳銃が足元に落ちている。
その近くの地面には、つい先ほど出来た弾痕がある。

「どれだけ醜くても……どれだけ浅ましくても……どれだけ人間としての尊厳が失われようとも……」

カイトは自殺しようとして、土壇場で恐怖し、代わりに地面を撃ったようだ。
俺の脚を抱いたまま、カイトは涙ながらに口を開く。



「どれだけ卑怯と罵られても……それでも俺は死にたくない……!」



「俺は悪くない……全部全部仕方がない事なんだ! アレックス……頼むから俺を見捨てないでくれ……これからもずっと俺を守ってくれ
 それとあの糞野郎、俺のリンを奪ったクラッシャーをぶち殺してくれ……一生のお願いだから……」
……なんという事だ。
ハク、お前がした事は、お前の伝言は────どうやら無駄だったようだぞ……


【剣崎一真@仮面ライダー剣 死亡】
【弱音ハク@VOCALOID 死亡】

【残り46人】


【D-4 駅/1日目・昼】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、苦悩
[装備]:ベレッタM96(残弾数11/10)@現実
[道具]:支給品一式、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタル
ギアソリッド、必須アモト酸@必須アモト酸、2025円が入った財布(ニコニコ印)@???
、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実 ]
1:それでも俺は死 に た く な い
2:リンを洗脳してハクを殺させたクラッシャーを憎悪。殺してやりたい。
3:生きるためなら例え卑怯な事をしても仕方がないだろ。正当防衛の一種だ
4:ミク、リン、レンが心配。特に洗脳されているリンが心配

【アレックス@MUGEN】
[状態]:極度の疲労、全身に打撲。左腕に刺し傷。悲しみ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、九条ネギ@現実、伯方の塩(瓶)@現実、魔王(芋焼酎)@現実、福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話
[思考・状況]
1:自殺しなかったのは良かったが……駄目だこいつ……
2:クラッシャーとリンを警戒
3:殺し合いを止める為、仲間を集める。知人や、首輪が解除できそうな人物を優先。
4:バルバトスと会ったら倒す。
5:あのピエロに出あったらどうしよう……
6:温泉にはいつか行きたい……
※F-3のデパート内に、床に大きく穴が空き、壁が一部粉々になっている部屋が一つあります。
※トキ、DIO、十六夜咲夜をMUGEN出展の彼等と誤解しています。
 また、MUGEN内の扱われ方からDIOと咲夜が親子だと思っています。
※名簿が最初白紙だったのには、何か理由があると考えています。
※弱音ハクの支給品を拾いました。


sm135:それでも僕は死にたくないⅣ 時系列順 sm136:弱い奴は囮…そんなふうに考えていた時期が俺にもありました
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ 投下順 sm136:弱い奴は囮…そんなふうに考えていた時期が俺にもありました
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ 鏡音リン sm162:恋独の追跡者(チェイサー)
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ キーボードクラッシャー sm162:恋独の追跡者(チェイサー)
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ 剣崎一真 死亡
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ 弱音ハク 死亡
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ KAITO sm161:奴が行く
sm135:それでも僕は死にたくないⅣ アレックス sm161:奴が行く






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