デス様の殺人クラブ ◆F.EmGSxYug
「地図は湿っていないみたいだな……
見る限り、ここは森林なんだろうな。となるとここはD-1か?」
水に濡れた身で苦労しながら、なんとか新堂は地図とコンパスを取り出した。
もっとも、苦労した理由は左手一本だけで取り出そうとしたことの方が主だ。
クリムゾンを一旦置いてから行えばもっと早く取り出せただろうが、
新堂はクリムゾンを手放す気にはまったくならなかった。
「となると、市街に行くには……」
視線を移し、コンパスを見て南がどちらかを確認する。
だいたい見当をつけた新堂は歩き出そうとして……やめた。
手に持った銃、クリムゾン。その力をふと試したくなったのだ。
もともと新堂は、銃を扱ったことなどないずぶの素人。
一度試し撃ちをして感覚を慣らしておくのは、常識的な考えであると言える。
……無論、この場において銃声を響かせるのがどういうことか、考えておく必要はあるのだが。
「よし……」
そう決めるとともに、新堂は自分なりの構えでクリムゾンを構えた。
幸い、新堂が流れ着いたのは森林だ。試し撃ちに使えそうなものはたくさんある。
近くの木に照準をつける。来るであろう反動や銃声に心の準備をして、引き金を引いた瞬間……
カチリと、静かな音だけがした。
「……おい」
クリムゾンから、銃弾が放たれることはない。
新堂がイライラしながら何度も銃をいじくり、何度も引き金を引いてしばらくした後。
ポロリと、クリムゾンに装填されていたマガジンが落ちた。
新堂の指が偶然起こした出来事であったが、それで新堂は思い当たった。
濡れたために弾丸が使えなくなった……までは分からなかったが、
弾丸を変えれば使えるようになるかもしれない、ということに。
舌打ちをしながらも、解説書と睨み合いをして弾丸を取り替える新堂。
作業を終えて銃を構え、照準を合わせて引き金を引く。
今度は新堂の狙い通り、耳を覆いたくなるような音と共に銃弾が発射された。
……だが、狙った木には、何の変化もない。銃弾はあらぬ方向に飛んでいった。
「よっぽど俺は下手糞みたいだな……いや、待てよ?」
最初こそ自分の腕前のせいだと思った新堂だったが、ふと気づいて木に歩み寄る。
そのまま銃を木に密着させて銃を放つと……銃弾がめり込んだ場所と照準の位置は明らかに違っていた。
思わず愚痴ったものの、堪えて解説書を取り出し照準を調節する。
その後ようやく照準と銃創が一致したのは、六発目のことだ。
「ようやく癖が掴めて来たが……
こんな照準じゃ、事前に試し撃ちしておかないとろくに使えないじゃないか」
舌打ちをして、新堂は歩き出した。ともかくクリムゾンの扱いには慣れてきた。
……しかし、彼の心のイラつきは収まることを知らない。
森を出ようとしばらく歩いても、心が静まることはない。
はっきりとしていなかった目的地を決めようにも、心のざわめきがそれを邪魔する。
濡れた服にくっつく土や葉が更にイラつきを増していく。
イライラするならば、"復しゅう"すればいい。だが、それが分からない。
……そう、誰に"復しゅう"すればいい?
クリムゾンの照準を修正しないまま渡した主催者か?それとも元の持ち主か?
あるいは川に落ちる原因となった、あの豹人間か?いや、全員に?
なぜかクリムゾンそのものに対する"復しゅう"は思い浮かばない。
まるで何かが、意図的にそれを避けさせているように。
心境が黒く染まりつつある新堂の視界の中に、光が混ざる。
森を出たところで東から朝日が昇り始めたのだ。それに釣られて空を見上げた新堂は、あるものを目にした。
丸っこい、小さな何か。ここからでは点にしか見えないが、空を飛んでいる。
遠目で視認できないが、確実に人間ではない、生き物。
そして、それが。間違いなくこちらを見た。
「な、なんだ……!?」
思わず唸って、慌てて森へと後ずさりをする。
点にしか見えないからこそ、あれが人間でないというのが分かったからだ。
しかし、その疑問に答えることなく、その点はあっさり目を逸らし、川に落ちていった。
……どうする、と新堂は自問する。
少なくとも、川に落ちたくらいで死んだとは思えない。現に新堂自身が生きている。
ではまた逃げるか、とも思うが、一方でそれを否定している自分もいる。
まるで、自分の右手にあるものを信じるかのように。
迷う新堂の目に、更に何かが映る。川に落ちる点を慌てて追う何かを。
ここからでは性別どころか人型であることしか分からない――
但し人型だからといって本物の人間かどうかは豹人間の例からしても言い切れない――が、
ともかく赤い何かが川に落ちた点を追っていった。
とどめを刺しに行ったのか、それとも助けに行ったのかはわからないが……
ともかく、この先には二つ何かがいる。
「……よし」
そう呟いて新堂は足を踏み出し、再び森を抜け出す。
向かうのはデパート。川沿いに歩いて橋を目指す。
一応デパートか塔、どちらかを最初から目指すつもりだったのだし、
早いところ参加者と接触しておきたいと思っていたのは事実。
何より今はこの手にクリムゾンがあるのだ。もし襲われても、なんとか撃退できるだろう……
先ほどとは違う好戦的な思考からそんな決断を下し、新堂は歩を進め始めた。
――心の中に溜め込んだままのストレスを、彼がいつどうやって発散しようとするかは、分からない。
見る限り、ここは森林なんだろうな。となるとここはD-1か?」
水に濡れた身で苦労しながら、なんとか新堂は地図とコンパスを取り出した。
もっとも、苦労した理由は左手一本だけで取り出そうとしたことの方が主だ。
クリムゾンを一旦置いてから行えばもっと早く取り出せただろうが、
新堂はクリムゾンを手放す気にはまったくならなかった。
「となると、市街に行くには……」
視線を移し、コンパスを見て南がどちらかを確認する。
だいたい見当をつけた新堂は歩き出そうとして……やめた。
手に持った銃、クリムゾン。その力をふと試したくなったのだ。
もともと新堂は、銃を扱ったことなどないずぶの素人。
一度試し撃ちをして感覚を慣らしておくのは、常識的な考えであると言える。
……無論、この場において銃声を響かせるのがどういうことか、考えておく必要はあるのだが。
「よし……」
そう決めるとともに、新堂は自分なりの構えでクリムゾンを構えた。
幸い、新堂が流れ着いたのは森林だ。試し撃ちに使えそうなものはたくさんある。
近くの木に照準をつける。来るであろう反動や銃声に心の準備をして、引き金を引いた瞬間……
カチリと、静かな音だけがした。
「……おい」
クリムゾンから、銃弾が放たれることはない。
新堂がイライラしながら何度も銃をいじくり、何度も引き金を引いてしばらくした後。
ポロリと、クリムゾンに装填されていたマガジンが落ちた。
新堂の指が偶然起こした出来事であったが、それで新堂は思い当たった。
濡れたために弾丸が使えなくなった……までは分からなかったが、
弾丸を変えれば使えるようになるかもしれない、ということに。
舌打ちをしながらも、解説書と睨み合いをして弾丸を取り替える新堂。
作業を終えて銃を構え、照準を合わせて引き金を引く。
今度は新堂の狙い通り、耳を覆いたくなるような音と共に銃弾が発射された。
……だが、狙った木には、何の変化もない。銃弾はあらぬ方向に飛んでいった。
「よっぽど俺は下手糞みたいだな……いや、待てよ?」
最初こそ自分の腕前のせいだと思った新堂だったが、ふと気づいて木に歩み寄る。
そのまま銃を木に密着させて銃を放つと……銃弾がめり込んだ場所と照準の位置は明らかに違っていた。
思わず愚痴ったものの、堪えて解説書を取り出し照準を調節する。
その後ようやく照準と銃創が一致したのは、六発目のことだ。
「ようやく癖が掴めて来たが……
こんな照準じゃ、事前に試し撃ちしておかないとろくに使えないじゃないか」
舌打ちをして、新堂は歩き出した。ともかくクリムゾンの扱いには慣れてきた。
……しかし、彼の心のイラつきは収まることを知らない。
森を出ようとしばらく歩いても、心が静まることはない。
はっきりとしていなかった目的地を決めようにも、心のざわめきがそれを邪魔する。
濡れた服にくっつく土や葉が更にイラつきを増していく。
イライラするならば、"復しゅう"すればいい。だが、それが分からない。
……そう、誰に"復しゅう"すればいい?
クリムゾンの照準を修正しないまま渡した主催者か?それとも元の持ち主か?
あるいは川に落ちる原因となった、あの豹人間か?いや、全員に?
なぜかクリムゾンそのものに対する"復しゅう"は思い浮かばない。
まるで何かが、意図的にそれを避けさせているように。
心境が黒く染まりつつある新堂の視界の中に、光が混ざる。
森を出たところで東から朝日が昇り始めたのだ。それに釣られて空を見上げた新堂は、あるものを目にした。
丸っこい、小さな何か。ここからでは点にしか見えないが、空を飛んでいる。
遠目で視認できないが、確実に人間ではない、生き物。
そして、それが。間違いなくこちらを見た。
「な、なんだ……!?」
思わず唸って、慌てて森へと後ずさりをする。
点にしか見えないからこそ、あれが人間でないというのが分かったからだ。
しかし、その疑問に答えることなく、その点はあっさり目を逸らし、川に落ちていった。
……どうする、と新堂は自問する。
少なくとも、川に落ちたくらいで死んだとは思えない。現に新堂自身が生きている。
ではまた逃げるか、とも思うが、一方でそれを否定している自分もいる。
まるで、自分の右手にあるものを信じるかのように。
迷う新堂の目に、更に何かが映る。川に落ちる点を慌てて追う何かを。
ここからでは性別どころか人型であることしか分からない――
但し人型だからといって本物の人間かどうかは豹人間の例からしても言い切れない――が、
ともかく赤い何かが川に落ちた点を追っていった。
とどめを刺しに行ったのか、それとも助けに行ったのかはわからないが……
ともかく、この先には二つ何かがいる。
「……よし」
そう呟いて新堂は足を踏み出し、再び森を抜け出す。
向かうのはデパート。川沿いに歩いて橋を目指す。
一応デパートか塔、どちらかを最初から目指すつもりだったのだし、
早いところ参加者と接触しておきたいと思っていたのは事実。
何より今はこの手にクリムゾンがあるのだ。もし襲われても、なんとか撃退できるだろう……
先ほどとは違う好戦的な思考からそんな決断を下し、新堂は歩を進め始めた。
――心の中に溜め込んだままのストレスを、彼がいつどうやって発散しようとするかは、分からない。
【D-1 川沿いの草原/1日目 早朝】
【新堂誠@学校であった怖い話】
[状態]:殺人クラブ新堂、悪霊、精神的イラつき
[装備]:クリムゾン(弾数6/6、予備弾24/36)@デスクリムゾン
[道具]:共通支給品、不明支給品0~1
【新堂誠@学校であった怖い話】
[状態]:殺人クラブ新堂、悪霊、精神的イラつき
[装備]:クリムゾン(弾数6/6、予備弾24/36)@デスクリムゾン
[道具]:共通支給品、不明支給品0~1
[思考・状況]
基本思考:主催者に“復しゅう”する
1:あの生き物と人影について確認しないとな
2:川沿いにデパートに行って人を探すぜ
3:豹人間…?怖くなんか…ない…ぜ?・・・怖い
4:他人とは協力したいけど邪魔なようなら“復しゅう”する
5:ストレスを無くしたいな……
基本思考:主催者に“復しゅう”する
1:あの生き物と人影について確認しないとな
2:川沿いにデパートに行って人を探すぜ
3:豹人間…?怖くなんか…ない…ぜ?・・・怖い
4:他人とは協力したいけど邪魔なようなら“復しゅう”する
5:ストレスを無くしたいな……
※みさおが死んだと思っています。
※アポロを参加者ではなく、豹の化け物と認識しています。
※クリムゾンに最初から装填してあった弾6発は湿って撃てなかったため、使えなくなったと思い廃棄しました。
※空を飛んでいたメタナイトを確認しました。
※アポロを参加者ではなく、豹の化け物と認識しています。
※クリムゾンに最初から装填してあった弾6発は湿って撃てなかったため、使えなくなったと思い廃棄しました。
※空を飛んでいたメタナイトを確認しました。
sm71:カリスマ株大変動 | 時系列順 | sm73:ビビリの悩む頃に、賽試し編 |
sm71:カリスマ株大変動 | 投下順 | sm73:ビビリの悩む頃に、賽試し編 |
sm25:みさお「豹人間はいいぞ」 | 新堂誠 | sm98:色鮮やかに虹色な従者(前編) |