※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

愛の嵐 ◆1sC7CjNPu2





なんとかブロリーから逃げ切った文とグラハムは、椅子に座って体を休めていた。
 今彼らがいるのは、B-2の家の一つの中、リビング。
 中に人がいることを知らせないために、電灯は最小限部屋の中が見える程度しか点けていない。
 休憩の甲斐もあってか、文の背中の痛みは引いてきている。
 もっとも精神的疲労は一向に回復していない。グラハムが同じ部屋にいるので。
 グラハムを見ないようにしている文の視界に、ふと算数字で時刻を示している時計が入ってきた。
 もっとも、支給品の中に時計がある以上それは特段に目を引くものではない……はずだった。

「……あれ、なんですかこれ」
「デジタル時計だ。テングには機械は珍しいのかね?」
「いえ、そうじゃなくて……」

 幻想郷にも機械が存在しないわけではない。河童がよく作っている。
 問題は、その時計が示している数字。
 文はそれほど夜目が利かない。そのため、しっかりと確認するためその時計まで歩み寄った。
 その時計は支給品の時計が示しているものに加え、ある物までも示している。

「……ん? 日時がおかしいな。2月14日。
 私が死んでから、ずいぶんと時間が経ったようだ」
「……はぁ」

 依然、勘違いをしているグラハムにため息を吐く。
 もっとも、文が思ったことと同じことには気付いたようだが。

――少なくとも幻想郷は、2月14日じゃなかった。

 ひとまず文は口を開く。あることを確かめるために。

 もちろん、この時計に示されている日時が間違いだという可能性もある。
 だからこそ、聞かなくてはならない。

「すみません、グラハムさんの経歴について取材したいんですけど、いいでしょうか?」
「ふむ。テングでも現世のことに興味があるのか?」
「もういいです、そういうことにしておきます、ともかく話してください。
 できれば重要なところは年月日も言ってくれると助かります」
「確かに愛を育む上では相互理解が必要だな」
「……10分以内に話を終わらせてください」

 色々と余計なことを言ったがともかく、グラハムは自分の経歴について話し始めた。
 話の途中でガンダムへの愛を主張するせいで更に文は苛々したが、聞きたいことは聞けた。

「……ともかく、その日に私は宇宙でガンダムと相討ちになった。
 私が最後に覚えているのはそれだけだ。これで生きているはずがない」
「まぁ……確かにそれはそうですけど。
 宇宙開発とは、外の世界は凄い事になるんですねぇ」

 これは偽らざる正直な文の感想だ。
 幻想郷もスペルカードルールがなければ確実に凄い事になっているような世界だが、
 何もない宇宙に新しく住む場所を作るなんて発想はないし、難しいだろう。
 河童の技術力では遠く及ばない。紫でもそうそうできることではない。
 だが、彼女が本当に気にしたのは、グラハムがガンダムと戦った日時について。

――日時が違う、どころじゃない。グラハムさんがいたのは、遠い未来だったなんて。

 ありえない、とは思う。だが、それができる能力について考えると文はそうとも言えない。
 何より、それなら知らないうちに多数の人が攫われたことにも納得がいくからだ。
 知らないうちに動いている。瞬間移動。かつて文はそんな手品を見た。そう、紅魔館で。

――例えば、時間を操る。それも、戻るも自由止めるも進むも自由、際限なしの時操術。
――それなら私が知らないうちに拉致されたのも納得できるわ。

 知らず、文は唸っていた。
 問題は、主催者がどれほどの準備や消費でそういった真似ができるかどうか。
 もし何の準備もなくいきなり自由にできるのならば、どうやっても勝ち目はない。
 だが道具を使っていたり相応の儀式が必要なら、別だ。
 もし参加者を集めたときのような真似がもう出来ないなら、勝ち目はあるが……

 ふぅ、と文はため息を吐いた。
 現状では情報が少なすぎるし、間違っているかもしれないとは彼女も思っている。
 ただ一つだけ言えるのは。

――首輪を解除できたとしても、単なる力押しでなんとかなる相手じゃないみたい。

 とりあえず情報はまだ集めないと。最終的な方針は相手の能力の精度次第。
 そう結論付けて、文はこの話題について考えるのをやめた。
 ……だから、彼女はある一つの可能性を見逃しているのにも気付かなかった。

 文は色んな場所を取材してきた。
 冥界を見た。三途の川だって取材した。閻魔にも会った。地獄だって見てきた。
 彼女は多様すぎる幻想郷を深く知っており、逆に外の世界をほとんど知らない。
 だからこそ、知らないことは全て外の世界も幻想郷と同じように多様なのだと思い込んだ。
 外から来た神が好き放題やらかしていたことがその思い込みに拍車を掛けた。
 故に、彼女には思い当たらなかった。「異世界」というものの存在に。

 続いて話題に上がったのは、互いの持っている支給品について。
 グラハムのD-ホイールなど、互いの武器となるものを一通り見ておくことにしたのだ。
 もっとも、文は究極のコッペパンを隠したままにしているが。

――こんな奴には絶対喰わせる訳にはいかないし。

 それが、偽らざる文の本心だった。
 幸い文のランダム支給品は三つ、十分に隠し通せる。
 二つ目である剣を紹介した後、文は三つ目の支給品を取り出した。

「えーっと、これは確か」
「チョコレートだな」

 ふむ、とグラハムが呟いた。
 文は食べたことはないが、知識としては知っている。外の世界のお菓子、という程度だが。
 しばらく考えていたグラハムは、いきなりあることを提案してきた。

「できれば、それを私に譲ってくれないか?
 そうだな、君自身の手でしっかり渡してほしい。感情を乗せて」
「感情?」
「なに、言葉のアヤさ」
「……? いいですけど……なんでですか?」
「さぁ……何故かな?」
「…………やっぱ貴方ムカつくわね」

 グラハムの返事に軽く苛々しながら、ともかくしっかりと文はチョコレートを渡した。
 それを受け取ると、異様にニヤニヤしながら食べ始めるグラハム。

――なに考えてるんだろう、コイツ。

 幻想郷の天狗である文にはグラハムの行動を全く理解できないでいる時。
 彼はチョコレートを食べながら、いきなり叫んだ。

「立ち聞きはよくないな。出てきたまえ!」
「!」
「……あやややや」

 その言葉は、自分に対して告げられたものではない。
 そう気づいて振り向いた文は、扉の向こうに隠れている誰かの気配を感じ取った。
 文の目では見えないが、風の流れで異常は感じ取れる。
 故に、特別な能力を持たないにも関わらず気づいたグラハムを賞賛した。

「普通の人間の割には勘がいいんですねぇ」
「なに、職業柄さ。……後ろに隠しているものや、その返り血は何かな?」

 チョコレートを食べながら放たれたグラハムの言葉に、再びその誰かはビクリと震える。
 最早疑うまでもない。そこにいる誰かは、文たちを襲撃する気だったらしい。

「ふむ、どう思う?」
「グラハムさんには相手の顔は見えているんですか?」
「はっきり言えるのは、髪の色くらいだな」
「なら、相手がバカかどうかはこれから分かりますね」

 そう文が言った矢先、扉を蹴破る音がした。その手にあるのは刃物。
 やれやれ、と言わんばかりグラハムは肩を竦める。ちなみにチョコレートはもう完食したらしい。
 バカか、と文はため息を吐き……デイパックから宝玉が散りばめられた剣を取りだした。
 その名は七星宝剣。
 これがあれば馬岱でも蜀の五虎将とやりあえるほどの名剣なのだが、文は知る由もない。

――剣術はあんまり得意じゃないのよねぇ。

 そう心の中で愚痴りながらも、彼女は剣を握り締めた。

「下がっていて」
「援護は必要かな?」
「いりませんよ、化け物相手ならともかく。ここでの肩慣らしには十分です」
「君が弱くなっている、という可能性も考慮したほうがいい」
「余計なお世話です。
 夜闇に紛れて攻撃してくるような自信のない奴なんて、大したことないでしょうし」

 言葉を返すと同時に、文は地面を蹴った。持つ剣の刀身を風が舞う。
 七星宝剣の力ではない。七星宝剣自体はただの剣だ。その剣を風の剣と化したのは、文の力である。
 そのまま襲い掛かってきた相手へと、彼女は風の剣を叩きつけた。


 囲炉裏とブロントさんは、現在B-2に来ていた。囲炉裏の提案によって。
 最初二人はC-3からの轟音を確認し、そちらを向かっていた。
 そこで倒壊するホテルを見たブロントさんは、

「きた! ベヒんもスきた! キングベヒんもスきた!」

 などと興奮し行きたがっていたが、囲炉裏が無理無理絶対俺死ぬと必死に頼み込んだ結果、

「みんながおれに注目するから勝手に俺の家来になる
 キングベヒんもス狩りはパーティ集めてから」

 と方針を変えてくれたのだ。そこで、僅かに見えたホテルから離れていった何か……
 つまり文たちを追うことにしたのである。もっとも、顔どころか体格さえ確認できていなかったが。
 そうして住宅地に来た彼らが歩いていると……鋭い音がした。ガラスが割れるような音が。

「うわ、何!?」
「恥知らずな剣使いがいた」

 音の発信源に目を向けると、家の中から少女――渚が窓ガラスを破って出てきた。
 あるいは、窓ガラスにまで吹き飛ばされ強引に出てこさせられた。
 それを追うように文が現れ、そのしばらく後にゆっくりとグラハムが出てくる。
 混乱している囲炉裏を尻目に、ブロントさんは呟いた。

「あいつらは雑魚狩り専門」
「えっと、どういう……」
「ヒーローは本当に偶然常に近くを通りかかるもん
 名実ともに唯一ぬにの盾の俺があの子を守ってやるべき」 

 ブロントさんは、文たちが殺し合いに乗っていると勘違いしたようだ。
 だが、それもやむを得ない。渚と文の戦いは文の圧倒的有利に進んでいたこと。
 そして、グラハムがのんびりとそれを眺めていること。
 この二つからブロントさんは渚が二人組に襲われ、追い詰められているように誤認したのである。
 渚が鉄平の返り血を浴びていたのも、逆に作用した。
 この夜の中では、渚が相当に出血している(実際少しは出血している)ようにしか見えなかったためだ。
 とはいえ、囲炉裏はさすがに冷静だったが。

「制服の子、血まみれの割にはよく動いているような……」
「俺がいれば自由自在の破壊力ばつ牛ンの連携を決めれる
 俺が前衛をやってる間にあの子を助け出すのがお前の義務」
「はぁ……えぇ!? いや無理ですって! 
 それに、どっちが先に襲い掛かったか分からないし様子を見たほうが……」
「迷ってると手の打ち様が遅れるんですわ? そういうのはちょとsYレならんしょ・・?」

 ブロントさんの言葉を聞いて、思わず囲炉裏は思わざるを得なかった。

――日本語でおk。

 ともかく彼が何とかブロント語を解読する頃には、既に事態は切迫していた。
 文が振り下ろした風の剣が、過たず渚のゼットソーを両断する。
 それでも半分になったゼットソーで切りかかろうとした渚は蹴りを喰らって吹き飛ばされ、
 文が剣に纏わせていた風をとどめとして打ち出そうとした瞬間。

「射命丸!」
「!?」

 ブロントさんの目立ちすぎる存在感に気づいたグラハムが警告を発した。
 魔力の流れを感じ取った文が、打ち出すはずだった風を逆転させて離脱。
 結果、ブロントさんが詠唱していたホーリーは射程が届かず地面で爆発した。
 しかし……それでも目くらましにはなる。
 その隙に素早くブロントさんが渚の前へと滑り込み、パーティの盾となる位置へ。
 当然文が切りかかってくるが、ナイトと忍者のLS信頼度は違いすぎるのでその攻撃を上手く捌く。
 ブロントさんが庇っている隙に、おっかなびっくり囲炉裏は気を失っている渚を助け出して離脱した。

「ここで引けば命は助けてやる
 俺は優しいからな他のやつらにも伝えてやるべき」
「……何か勘違いしてませんか?」
「襲われたのは私達だが」
「お前は俺が怖いのに必死につよがってもだめ
 ビビってるのばれてるからな」

 ブロントさんの勘違いは止まらない。
 集団でフルボッコするのが当たり前、敵はスクエニが表示してくれるのが当たり前。
 そんな世界に浸りきったブロントさんは自分の判断を疑いもしない。
 一方で、囲炉裏の判断はぶれまくっていた。

――ブロントさんがやったの何? というか黒い髪の子、一瞬飛んだだろ!?

 囲炉裏には魔法の知識もグラハムのような図太さもない。
 口出ししようにもできないまま、おっかなびっくり囲炉裏は渚を揺さぶった。
 その手にゼットソーはない。文に蹴飛ばされた際、手から離れている。
 もしそれが手元にあれば、その返り血で渚の本性に気付けただろうが。

「えーっと、もしもし、大丈夫……?」
「……おにいちゃん? おにいちゃんなの!」
「は?」
「そんな風に私に優しくしてくれるって、お兄ちゃんだよね!?」
「え、えええええええ!?」

 兄の記憶がぼやけた渚は、意識を取り戻すや否やとんでもない勘違いをした。
 予想だにしないリアクションに驚愕する囲炉裏。
 しかも後半は大声、ここにいる全員に丸聞こえだ。

「肉親の方ですか?」
「妹の躾ぐらいしっかりしてほしいものだな」
「いや、そうじゃなく……」

 予想外の事態に混乱する囲炉裏。
 できればなんとかこの争いを沈静して全員から話を聞きたいというのが彼の本心だった。
 しかし、ブロントさんはどんどんと話を進めていく。

「俺がナイトとして見事な仕事をしている間に囲炉裏は逃げたほうがいい」
「ちょっと待ってくださいよ、まず話を聞いたほうが」
「俺の言うことを聞く奴は本能的に長寿タイプ」
「ですけど……」
「仏の顔を三度までという名セリフを知らないのかよ」



 明らかに苛立ちを隠さないブロントさんを見て、しぶしぶ囲炉裏は渚に左肩を貸しながらその場を離れていく。
 脇では困ったような、そしてどこかバカにするような表情で文が口を開いた。

「そんなこと言われましても。囲炉裏さんですっけ?
 その方が疑っている通り、襲い掛かってきたのはこの子のほうなんですが」
「雑魚狩り専門の奴がアワレで情けない奴なのは確定的に明らか」

 囲炉裏の武器の件でも分かることだが、ブロントさんはあんまり人の話を聞かない。
 文たちが悪いと思い込んだら彼にとってそれは確定的に明らかとなる。
 それでもいきなり襲い掛かったりしないのはブロントさんが謙虚だからである。

「お前らはさっさと逃gえるべき 
 おれパンチングマシンで100とか普通に出すし」
「そうはいきません、勘違いによる風評被害は勘弁してほしいですし……
 ってパンチングマシン? なんですかそれ」
「殴りつける威力を測る機械のことだ、射命丸。単位はkgだな」
「なんだ、たったの100kgなのね。自慢にもならないわ」
「ボコボコにされたいらしいな
 おれはリアルモンク属性だから手加減できないし最悪の場合病院に行くことになる」
「モンクの割には、素手じゃなくてそんな貧相な刃物を大切に持ってるみたいですけど?
 それに殺し合いの場で病院送りだなんて、脅しているつもりならお笑い種ね」
「おれの怒りが有頂天になった」

 幻想郷で力のある人妖は大抵毒舌である。そして、文もその例に漏れない。
 その挑発に乗ってあっさりレザーソーを投げ捨てる、ブロントさんの煽り耐性は0だった。



 夜闇に落ちた住宅街の中、囲炉裏は渚に引っ張られて歩く。
 さすがに文の蹴りが効いたのか、渚の歩みは遅い。
 だが、その口は全く止まる様子がなかった。

「私の危機を助けに来てくれたってことは、お兄ちゃんだよね?」
「い、いや……それはどうかな……」

 やたらくっつきたがる渚に、囲炉裏は喜びながらも微妙に顔を顰めた。血の臭いに。
 返り血はほとんど乾いているが、完全に乾いたわけではない。
 もっとも、囲炉裏は変な匂いがすると思っただけで、返り血だとは確信できていないが。

――うーん、確かにかわいい子だけどさ、ちょっと困った。これなんてエロゲ?

 渚は黙っていれば、絶世の美少女である。黙っていれば、の話だが。
 しかしこの子がゲームに乗っていると思うと、囲炉裏も警戒を怠れない。
 あくまで確信していないだけで、返り血かもとは思っているのだ。
 だからゼットソーは拾ってこなかったし、渚のデイパックは没収して右肩に掛けている。
 武器なしの純粋な力勝負ならなんとかなるだろうと考えたからだ。

「ともかく、何があったんだ?」
「薄汚い虫を掃除してたら、汚れちゃって。
 どこかの家に行けばお風呂があるだろうし、そこで体を綺麗にしようと思ったんだけど……
 そしたら、薄汚いカラスに出会っちゃって、ひどい目に合わされちゃったの」
「虫?」
「虫は虫だよ。私たちを汚す薄汚い虫」

 要するに、渚は人を殺したと言っているのだが、不幸にも囲炉裏には理解できなかった。
 それでも何か引っかかりを感じ、どういうことか理解しようと足を止めて考え始めた瞬間。

「立ち止まらないでよお兄ちゃん。泥棒烏に追いつかれるかもしれないじゃない」
「いや、ブロントさんが戻ってくるのを待つにはあんまり離れると」
「お兄ちゃんさえ無事ならいいの! あのビッチと悪趣味なコスプレ男なんて、潰し合わせてればいいのよ!」

 渚の口調から僅かに、だが着実に狂気が漏れ始める。
 囲炉裏が一歩引こうとして……肩を貸している限り、無駄だということに気付いた。

「ブロントさんは、口調こそちょっと変、いやかなり変だけど、いい人で……」
「お兄ちゃん以外の人なんていらない! お兄ちゃんだけいればいい!!!」
「……だから、俺はお兄ちゃんじゃないっての!」

 渚の言葉にいらついたか、あるいは怯えたか。囲炉裏の口調は、少し厳しいものとなる。
 途端、渚はしゅんとなって顔を下げた。

「そう……そうだね。
 私、なんてひどいことしちゃったんだろう」

 分かってくれたか、と囲炉裏は安心した。安心しかけた。
 同時に、渚はいきなり顔を上げた。狂気に満ちた顔を。
 だが、囲炉裏はその顔を見ることはできない。

――え?  

 混乱するしかなかった。渚はぎゅっと囲炉裏に抱きつき、そして。

「確かに、あなたなんてお兄ちゃんじゃないよね。
 それをお兄ちゃんだと勘違いしちゃうだなんて、お兄ちゃんにひどいことしちゃった。
 お兄ちゃんに償わないと」

 ありえないほどの握力で、渚は囲炉裏のナイフを持っている手を握り締めた。
 その骨と肉が、鈍い音を立てるほどの力で。

「イ゙ェアアアアアアアアアアアアアア!!?」

 渚の華奢な肉体には似つかわしくない暴力を受け、囲炉裏はただ絶叫した。


 文とブロントの攻防は、ブロントさんの一方的な不利で進んでいた。
 といっても、致命傷を負ったわけではない。黄金の(ryなので文の攻撃をなんとか防ぎきっている。
 問題はただ一つ、攻撃面。

 文が腕を振るとともに、風が走る。
 ただでさえ切れ味の鋭い七星宝剣の刃は、その風によってより凄まじい威力を発揮する。
 ナイトであるブロントさんに避けるという選択肢はない。
 あえて腕を翳しその左の篭手で以って防ぐが、その篭手ですら防ぎ切れずにヒビが入った。
 もう片方の腕に持つ盾で殴りかかるものの、逆に蹴りを喰らって体が泳ぐ。
 幸い体自身へのダメージはそれほどないが距離を離され、何よりこのままでは防具が破壊される。

 いくらブロントさんと言えど、この状態では不利だということを認めざるを得なかった。
 素手では碌に攻撃があたらないし、仮に当ててもダメージは少ない。
 魔法を使うにも、この間合いではホーリーを唱える余裕もない。
 もっとも、自分でレザーソーを捨ててしまったのだから当然かつ自業自得なのだが。
 いくらリアルでモンクだろうと(そもそも本当のことなのかも定かでないが)、
 今の彼はリアルではなくヴァナ仕様、つまりナイトである。
 彼がモンクとしての技能を発揮することは、まず不可能。
 その状態で文に挑むなど、無謀極まりないことだったのだ。

 更に文の蹴りが来る。
 再び左篭手で防御したものの、とうとうその篭手が破壊され……ブロントさんは不利を悟った。

――真のナイトは思わずナイトをしてしまってる真のナイトだからもててるのだという事実

 ブロントさんはいったん引き、レザーソーを回収することを決意した、が。
 いざ周りに視線を飛ばしてみても、投げ捨てたはずのレザーソーが見つからない。

「探し物はこれかね?」

 声に視線を向けてみれば。
 いつのまにかグラハムがレザーソーを拾い上げ、自分の手元に置いていた。

「・・お前ら絶対忍者だろ・・あもりにもひきょう過ぎるでしょう?
 汚いなさすが忍者きたない」
「天狗です」
「フラッグファイターだ」
「いい加減にしろよてめーらぶっ殺すぞこっちが礼儀正しい大人の対応してればつけあがりやがってよ」
「そうですか。じゃあせいぜい頑張ってぶっ殺してみせて……」

 再び、ブロントさんが沸点に達しかけた瞬間。

「イ゙ェアアアアアアアアアアアアアア!!?」

 突如、この世のものとも思えぬ悲鳴が響いた。
 ブロントさんの動きと感情が凍る。この声は、明らかに。

「仲間が危機のようだな。おそらくあの少女の仕業か」
「だから言ったんですよ、襲い掛かってきたのはあっちだってね」

 他人事のように……いや、実際他人事として二人が追い討ちを掛ける。
 ここまでくると、ブロントさんといえど自分のミスに気づかないわけにはいかない。
 もちろん文とグラハムの態度が劣悪極まりなかったのも確かだが、ブロントさんは謙虚なので。

「お前らはどこにも逃げられないプレシャーを背負う事になった
 後ろに気をつけておくことをお進めする
 不意だまでお前らの命は非常にまずい事になる」

 そう捨て台詞を吐き、その場を立ち去る程度に留めておいた。
 その場に残された文はまったく、と愚痴りながらも口を開く。

「……不意だまってなんでしょうかねぇ?」
「知らないな。ところで射命丸、落ち着いたところで言いたいことがある」
「? なんですか?」

 振り向いた文が見たのは……チョコレートを食べている時と同じ、ニヤリと笑っているグラハムの表情。

「2月14日はバレンタインデーと言ってな。
 女性が愛する男性にチョコを渡す風習があるそうだ」
「え……な! も、もしかして、さっきあんなこと言ったのは!」
「君の愛の乗ったチョコ、ありがたく頂かせて――」

 言うが早いが、盛大にグラハムは文のビンタで張り倒された。

「うごぁ!? ぐ……怖い顔だなフラッグ」
「しゃ! め! い! ま! る!
 いいからさっさとホイールオブフォーチュンの準備をしてください。
 さっきの悲鳴で人が集まってくるかもしれません。
 また勘違いされたら困りますし、早く離れたほうがいいです」

 前途多難である。

【B-2東部/1日目・黎明】
【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダム00】
[状態]:ほっぺたにビンタ痕
[装備]:ハネクリボー@遊戯王GX(使用可能まで10時間)、言葉のノコギリ(レザーソー)@school days
[道具]:支給品一式、ホイールオブフォーチュン@遊戯王5D's
[思考・状況]
1.フラッグ(文)に惚れた
2.フラッグを守る
3.フラッグはツンデレらしいな
※参戦時期は一期終了後(刹那のエクシアと相討ちになった後)。

【B-2東部/1日目・黎明】
【射命丸文@東方project】
[状態]:精神的疲労(小)
[装備]:七星宝剣@三国志Ⅸ
[道具]:支給品一式、究極のコッペパン@ニコニコRPG
[思考・状況]
1.情報収集。自己保身を優先する。特に究極のコッペパンは絶対に自分で食べる。
2.主催者の方が強そうだったら優勝狙い、脱出できそうなら脱出狙い。それまでは1に徹する。
  少なくとも人数が半分以下になるまでは立場を確定させない。
3.優勝狙いが確定しない限りグラハムと一緒にいてやる(ただし優勝狙いに決めたら速攻で殺す)。
4.もしチルノさんとかがいたら……手元に置いておこうっと。
5.ブロリーと出会ったら何を犠牲にしても全力で逃げる。

【七星宝剣@三国志Ⅸ】
武器アイテム。
これを持てばろくに剣を持ったことのない文官だろうが阿斗だろうが大幅に武力が上がる。
ちなみに、実際の三国志でこの剣が活躍した記録はない。実在したかも疑わしい。

【チョコレート@現実】
2/14はバレンタインデーです。


 礼儀正しい大人の対応して話を聞いてたのに俺の誤解を解けなかったあいつらの浅はかさは愚かしい
 確かに俺が勘違いのしたかもしれにいがちゃんと説明できなかったあいつらが悪者でFA!
 調子に乗った奴らはいつか俺にすgあって助けを求めに来ることは確定的に明らか

【B-2中部 住宅街/一日目・黎明】
【ブロントさん@ネットゲーム実況板】
[状態]: 軽い打撲や切り傷を全身に負っているが行動にしstyうはない、軽い疲労、防具がやや損傷、左篭手が大破
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2(剣などの武器はない)
[思考・状況]基本思考:右上と左上を倒し真のエンディングを迎えひっそりとリアルより充実したヴァナ生活を送る。
1:囲炉裏を助けに行く
2:まともな武器がほしい(敢えて言うならグラットンソードだがそれを口に出さないところがまた謙虚なナイトらしい)。
3:出会ったやつに話しかけ出来れば仲間にして敵対するようならばカカッと対処する。
4:あの二人はいつかハイスラでボコる(謙虚なので殺しはしない)

【備考】
※メタ知識に関しては不明だがそんなものはなくてもブロントさんはうろたえない
※ナイトの防具一式はもはやブロントさんの普段着であるので奪われるわけがない
※自分の行動に関して反省する必要がないのは確定的に明らかだと思っている



 月夜に銀刃が輝いた。
 そして……蒼い空に似つかわしくない、血液も。

「死んじゃえ。お兄ちゃんになりすまそうとした奴なんか、死んじゃえ、死んじゃえ!」

 囲炉裏が情勢を理解できないまま、渚は武器を突き刺していく。
 その手にあるのはサバイバルナイフ。手をへし折られ、囲炉裏が手放したものを強奪したもの。
 囲炉裏の声はない。当然だ。彼はもう、死んでいる。
 しばらくして息を荒げた渚は、ようやくナイフを突き刺すのをやめた。

「ハァ、ハァ、ハァ……
 ごめんね、お兄ちゃん。こんな奴と間違えちゃって。
 でも安心して、薄汚い毒虫は殺したよ。後で謝りにいくから……」

 そう言うと共に、渚は奪われていたデイパックを回収した。
 文との戦いで、かなりのダメージと疲労を受けている。

――今はここから、離れないと。この毒虫の荷物に何か強い武器があればいいなぁ。

 いくら彼女でも、今自分が危険な状態にあるのは分かる。追いつかれたら、殺される。
 幸い、ここは住宅地。家のどれかに隠れれば上手くやり過ごし、休めるだろう。
 それに何より。

「安心してお兄ちゃん。家にお風呂があれば、ついちゃった虫の汚れが洗えるよ」

 にこりと。
 狂った笑みを浮かべて、渚は歩き出した。


【B-2西部 住宅街/一日目・黎明】
【野々原渚@ヤンデレの妹に愛されて夜も眠れないCDシリーズ】
[状態]:ヤンデレ、全身に軽い切り傷、腹部にダメージ(大)、返り血浴びまくり
[装備]:サバイバルナイフ@現実
[道具]:支給品一式×2、タバコ一箱@メタルギアシリーズ、北条鉄平の首、北条鉄平の首輪、不明支給品*0~6
[思考・状況]
1:まず休まないと。
2:お兄ちゃんを見つけ守る。
3:意地汚い虫はみんな殺す。
4:ああ汚くなったのを早く綺麗にしたいよ。
5:料理の材料を調達する?

【囲炉裏@まったり実況プレイシリーズ 死亡】



sm46:いい塩してんねぇ~ツンデレしてるねぇ~ 時系列順 sm48:ヤンデレは大変なフラグを投下していきました
sm46:いい塩してんねぇ~ツンデレしてるねぇ~ 投下順 sm48:ヤンデレは大変なフラグを投下していきました
sm09:射命丸文は大変な変人どもに振り回されてデデーン!されて逝きました グラハム・エーカー sm80:らららコッペパン
sm09:射命丸文は大変な変人どもに振り回されてデデーン!されて逝きました 射命丸文 sm80:らららコッペパン
sm02:バトルロワイアル~まったり(?)実況プレイ ブロントさん sm59:全ては愛しき貴方の為に
sm16:妹のパーフェクトヤンデレ教室 野々原渚 sm59:全ては愛しき貴方の為に
sm02:バトルロワイアル~まったり(?)実況プレイ 囲炉裏 死亡






| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー