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「どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~」(2009/11/21 (土) 16:40:33) の最新版変更点
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*どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~ ◆jVERyrq1dU
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「アレク……大丈夫か?」
俺はクズだ俺はクズだ、カイトはアレックスに声をかけつつ、心の中で呟き続ける。
「止血はしているんだがな……さすがに、辛い」
さっきからずっと、歩いては休み歩いては休みを繰り返している。その度にアレックスは水を飲む。
喉が渇いて仕方がないらしい。三日分あった水はすでに後少ししか残っていない。
「アレク……そんな傷で、ブロリーと戦いたかったのか?」
「……本音を言うとな」
秘密を打ち明けるかのように話し、アレックスは微笑する。そんなアレックスを見て、カイトも微笑む。
「でもな、お前とリン、そしてクラッシャーとの因縁を解決しないまま、お前のもとを離れる訳にはいかないだろう……
俺はずっとお前と一緒に行動して来た。正直言ってお前との縁を切りたいと今までに何度も思ってきた。
だけど結局、今に至った。腐れ縁って奴だな」
「アレク……お前がいないと、俺はすぐに死んでたよ……アレクにはどれだけ礼を言っても言い足りない」
「礼なんかいらないさ。俺が勝手にやっている事だ」
アレックスはそう言うが、カイトは何故アレックスがそこまで自分のために頑張ってくれるのか、理解していた。
「ハクに、ヒーローと言われたからだろ?」
そう言うと、アレックスははにかむ。カイトも笑った。
「鋭いな……馬鹿な話だが、俺はリンやお前にそう言われて、はっきりと自分のするべき事を自覚したよ……
俺は強かったんだ。そして、左之助と違って、本当に助けを求めている連中に、気づいてやれる長所を持っているんだ。
そうさ。ハクやお前が言ったとおり、俺はヒーローだ」
カイトは苦笑する。アレックスもだ。
「そんな事言って恥ずかしくないのか?」
「事実だろ?例えば、左之助がお前を助けると思うか?」
カイトは左之助に殴られた事を思い出し、顔を暗くする。
「助けないだろうな……俺が逃げた時点で、あいつは俺を見下していた。それにしてもずいぶん左之助の事が嫌いみたいだな」
「嫌いというわけではないんだが……」
アレックスは言葉を選ぶようにして、ゆっくりと話す。
「多分、左之助は左之助で正しいんだと思う。あいつは、細かい事を抜きにして、誰かを助けようとしているだけなんだ。
俺の場合、一々気にかけてしまうような細かい事でも、あいつは気にしない豪快さを持っている。
俺とあいつは全然違うが……あいつは、悪い人間ではない、はずだ」
「俺を殴ったのにか……?」
「それは早とちりしてトキを殺したお前が悪い」
カイトが乾いた笑みを見せる。
「ちょっと待ってくれ……また、痛んで来た……」
「水飲むか?」
「ああ……すまない」
アレックスの水はすでに底を突いている。それを知っていたカイトは、自分のデイパックから水を取り出し、アレックスに渡す。
受け取ったアレックスは水をがぶ飲みする。リンに刺された傷は想像以上に深手だったようだ。
血を流し過ぎたため、喉が渇いて渇いて仕方がない。アレックスが満足するまで水を飲むのを、カイトは眺めていた。
「少し、休ませてくれ……」
美鈴と左之助の元へ一刻も早く援軍を送ってやらなければならない。
しかし、事態はやはり思ったように進行してくれない。こんな事ばかりだ、とアレックスは心の中で呟く。
無理をしてでも歩かなければ、と思うが全身がだるくて思うように動けない。おまけに頭まで痛くなってきた。
「大丈夫か……頼む、頼むから死なないでくれよ」
縋るようにカイトは言った。アレックスはカイトに笑みを見せ、大丈夫だと言った。
「行こう……二人が死んでしまう前に……援軍を」
と言うものの、アレックスは立ち上がる事が出来ない。体中のだるさは相変わらず、頭痛はどんどん酷くなっていく。
仕方なくカイトはアレックスに肩を貸す。
「カイト……お前は根は優しい男なんだ。俺の知り合いに、お前ほど妹の事を思い、自分の過ちを後悔出来る人間はいない……」
「どうして急にそんな事言うんだよ……もう死ぬみたいじゃねえか。やめろよ」
カイトは狼狽して言った。アレックスに肩を貸しても、思うように進めない。
かなり限界のようだ。纏まった休息を取った方がいいかもしれない。
「お前に足りないのは、自分が悪い事を認め、反省する事が出来ないというところだ……
カイト、良く聞け。自分の過ちを認めて、反省しない奴はどうやっても成長出来ないぞ。
認める事は、恥ずかしい事じゃないんだ……悪い事をしてしまったとしても、取り返しがつかないなんて事はめったにない。
ハクも、お前が成長している事をきっと望んでいる……」
「ハク……」
カイトは呟いた。アレックスは彼女を思い出して、何度目か分からない涙を流す。
隣には、ハクを見捨てた男カイトがいる。いつかカイトを立派にしてやる事が、ハクへの弔いになるとアレックスは頑なに信じていた。
(カイトも、リンも……天国に行ったクラッシャーもハクも、みんなみんな俺が幸せにしてやる……
ヒーローの俺が────)
「カイト……頑張ろうなあ。俺はお前を見捨てないぞ……俺はお前を絶対に一人前の男にしてやる……
そして、リンと仲直りさせてやる……本来の、お前に戻してやる。優しい、兄貴に……きっと」
アレックスの容体が急に悪くなってきたような気がする。
「アレク……大丈夫か?」
「さあ、な……さっきから頭が痛くて痛くてたまらん……」
「頭が痛いのか……」
「ああ……突然頭痛が……」
それを確認したカイトはアレックスの腹を思い切り殴った。
アレックスを地面に引きずり倒し、馬乗りになってアレックスの顔面を何度も何度も執拗に殴った。
ぼろぼろになったアレックスの顔に唾を吹きかける。アレックスは訳が分からなかった。
きっと悪い夢を見ているのだろう。きっと、そうに違いない。根は優しいカイトが、こんな事を突然するはずがなかった。
瀕死のアレックスに跨り、カイトはにやにやした笑みを見せつけた。そして、また唾を吹きかけた。
ポケットから、何かを取り出す。ビンだった。元々は何かの薬品が入っていたようだが、今は空だ。
「これが何だか分かるか?アレク」
アレックスの目の色が驚愕へと変わる。カイトが何を持っているのか以前確認した時、
それは確かに彼のデイパックの中に入っていた。飲むと、頭がパーン爆発して死亡してしまうという危険な……
「…………必須……アモト酸……か」
声帯の潰れたアレックスがしわがれた声を出した。
「御明答。こっそりペットボトルに入れておいたんだ。
人から貰ったものを無暗に飲食してはいけないと、子供の頃に習わなかったか?」
得意気な顔で、カイトは言った。
「お前の頭痛はこの毒薬の所為だ。もうすぐお前は、頭がパーンとなって死ぬ。
もうお前は俺を守る事は出来ないだろ?今まで世話になったな」
アレックスは悪に染まったカイトの笑みを見て、信じられない思いで目をこれでもかというほど見開いた。
理解出来なかった。確かにカイトは今まで散々な事をしてきた。しかし、カイトはそれでも、自分のしてきた事に絶望していたし、
弱い自分をなんとかしようと自分なりに頑張っていた。ライダーに変身して暴れた後だって、自分の過ちに絶望して涙を流していた。
根はいい奴だった……どこにでもいる、妹思いの青年だったはずだ……
「何故…………だ……何故なんだ、カイト……」
アレックスは呟いた。本当に意味が分からなかった。
「何故だと?答えは一つしかないだろ?」
カイトはアレックスの髪の毛を掴み、無理やりカイトの方へ顔を向けさせた。
「────優勝して生き残るための、人数減らしだ」
「馬鹿な……お前は、そんな人間じゃ、なかった……そんなクズじゃない」
「いいや違う。俺はクズで卑怯で本当にどうしようもない人間だ。どうして今まで気がつかなかったんだろう。
どれだけ頑張っても俺は一向にお前のような立派な人間になれない。俺の卑怯でクズな性質は生まれつき、定められたものなんだ。
アレク……お前の話だと、俺は根はいい奴なんだってな……。違うんだよ。俺はなあ!俺の本性はなあ!」
アレックスの頭から手を離し、カイトは自分の頭を押さえて、喚くように言った。
「俺は善人なんかじゃない! 俺は────悪魔だ!」
そう宣言した後、アレクに跨ったまま、カイトは項垂れる。
しばらく項垂れたままぶつぶつ何かを呟いていたが、突然跳ねるように顔を上げる。
「俺は、世界から、この世の全ての人間から拒絶されているんだよ!アレク!」
血走った眼でアレックスを凝視した。カイトの言っている意味が、アレックスにはよく分からない。
「俺は勇気がない!俺は卑怯だ!だがそれって悪い事なのか!
俺が今までしてきた事は、ただ勇気を出せなかったことだけだ!勇気を出せない事がそんなに悪いのか!?
ただ臆病に走った事が、妹からまで死ねと罵倒されるほど悪い事なのか!?
人を殺したクラッシャーよりも、臆病な真似をした俺の方が悪いってのか!!
ふざけるな!ふざけるな!!死にたくないって思う事が!そんなに悪い事なのか!?
────ふざけるなああああああああああああああああああああ!!!」
そう言いながらアレックスを殴った。殴り続ける。
カイトは色々と喚いているが、そんな事に答えが出せるはずがない。
殴りながら、カイトはまるで演説のように威厳たっぷりに言い放つ。
「だがな!どうもこの世界の常識に照らし合わせて考えてみると!やはり俺は悪であるらしい!
俺のしてきた事は悪だ!紛れもない悪だ!だからこそみんなみんな最後には俺を憎む!!ハクもリンも左之助も!!
だがどうすればいい!?生きる事を止めろとでも言うのか!それとも殺人鬼相手に!
勇気ではなく無謀を振り絞って勝ち目のない戦いを仕掛けろとでも言うのか!?どっちもごめんだ!!俺は生きたい!!」
はあはあ、と息を切らせながら、アレックスを殴るカイト。それはそうだろう。
誰だって生きたい。だが、生きる事自体が恥を撒き散らす行為に等しいのなら、人はいったいどうなってしまうのだろうか。
「俺は生きたくて生きたくて仕方がない!!だが、俺が生きようともがく度に!必ず誰かが不幸になってきた!!
何故なんだ!?それは俺の本性が悪魔だからだ!当然だ!俺は何をやっても反省出来ない!失敗を生かす事が出来ない!
それは心の中で密かに自分は悪くないと言い張っているからだ!やっている事はどう見ても悪なのに!
俺は悔い改める事すら出来ない!────否! しようとすらしない!!!
それこそが悪魔である証拠だ!!俺は自分のためならどんな事でも出来る人間なんだ!!
人の本性はどうやっても変えられねえ!!俺はいい奴なんじゃない!!────これが証拠だ!!」
叫びながら、拳を叩きこむ。息を切らして、カイトは体を休める。
アレックスはまだかろうじて生きていた。
「おま……えは、、やけに……」
「自暴自棄になっているだけとでも言うのか?違うね。俺は俺の本来の生き方に気づいただけだ」
「悲しいもんだぜアレク。俺は生きようと足掻いているのに、お前を除く全員が俺に死ねと圧力をかけてきやがる。
当然だよな。俺が生きていると周りの連中が不幸になるからだ。俺と俺を除く全員は、互いに相容れない存在だ。
さっさとこの事実に気づいちまえば良かったのに……俺は今まで生きて来て、自分の本性に全く気がつかなかった。
リンやミクやレンやメイコと今までのほほんと暮らしてきたが、今思い返してみるとあれほど歪んだ光景はないな。
クズ野郎と善良な人間が同じように生活していたんだぜ?いつか破綻するに決まっている。そして、予定通り破綻したんだ……
だが俺はやはり輪に入っていたかったんだよ。悪魔だろうと、他人に害を撒き散らす存在であろうと、
俺は普通に兄弟や友人達と仲良く暮らしたかったんだ。それがこの世の摂理に背くような行為でも、だ。
一人は寂しくて寂しくて死にそうだから、世界の秩序の中に生きていたかったんだ。
それは無理な話だと、このバトルロワイアルの中で気付かされた」
くつくつとカイトは笑う。アレクはひたすら呆然とした目をカイトに向けていた。
この男を信じていたハク、隊員、リン、そして兄弟達はどうなる?
カイト自身が自分を悪魔と名乗って、どうする……自分の事を蔑んでどうする……
────開き直ってどうする!!
「─────ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
あれほど愛した兄弟の死も!『ああそうか』と俺の心を通り過ぎていっただけだ!!
成長した友人の窮地からも! 俺は一目散に逃げ出した!!
最も大切だったリンも! 命を守る楯として使えるなら容赦なく使うまでだ!!
希望を語る仲間なんていらねえ!! 悪魔に仲間なんざいるか!!利用された馬鹿が悪い!!
クラッシャーもトキも俺という悪魔の視界にのうのうと入ってきた事自体が!!そもそも自業自得なんだよ!!」
「覚えているかアレク!右上の言葉!残り半数、後半戦開始だというあの言葉!
あの言葉を聞いた瞬間、俺というクズ野郎の脳みそはそろそろ積極的に動く頃合いだと計算を始めていたんだ!
自分が悪魔だと自覚したからには!もう容赦入らねえ!お前のような優しい人間を利用しまくってやる!
楯にしてやる!お前のように、俺を守る護衛として、生き残ったクソ雑魚どもを利用してやるよ!!」
アレックスは怒りで震えた。もう体のどこも動かす事が出来ない。それでも怒りだけはめらめらと湧いて出てくる。
許せなかった。こうなってしまったカイトが心の底から許せなかった。
隊員はクラッシャーはトキは!こんな外道に殺されたのか!
ハクはリンは……こんな外道に不幸にさせられたのか……
「カイ……ト……ふざ、けるな。このクズ野郎が……!」
「その通り!俺はクズ野郎だ!もう言い訳も言い逃れもしない。正々堂々卑怯な事をしてやるよ!
もう俺の心には、プライドも良心も罪悪感を感じる心も残っていないからな!!
クズ野郎だから、生き残る事以外はどうでもいい!!ククク……ハハハハハハハハハハ!!!」
アレックスは絶望する。完全にカイトは変わってしまった。最悪の方向へ、こいつは変わってしまった。
俺は、俺達の思いはどうなる?カイトの犠牲にあったみんなの気持ちはいったいどこへ……
「俺が死んだら………左之助達が、、不審に思うぞ……覚悟は、出来てるのか」
「馬鹿が!左之助達は今頃死んでるよ!呆気なくな!」
カイトは服の裾を上げる。あるべきはずの物がそこになかった。
ライダーに変身できるブレイバックル。カイトの腰に着いているはずだったそれが、ない。
カイトはにやにやと笑って言い放つ。
「ブロリーにとられちまった。あいつは見事にライダーに変身してたぜ。
ライダーを、瀕死の雑魚二人が倒せるはずがない!!あいつが暴れれば暴れるほど俺の優勝は近付く!!俺の生還は近づく!!」
勝ち誇った顔でカイトは言った。俺は途方に暮れた。ただでさえ強いと言われるブロリーが、さらに強力になってしまった。
「お前も美鈴も左之助もこれで終わりだ。これで残りは29人。
ククク……いいぞ。あと少し、あと少しだ」
────どうしてこうなった
────どうしてこうなった
何をどうすればカイトは道を誤らなかったのだろうか。アレックスには分からなかった。
ただ、今は……頭が痛い。頭が痛い……
「今まで俺の食い物になってくれて有難うアレク。あんたはこのゲームの中で一番俺のために働いてくれた。
その功績をたたえて、クズである俺の卑怯さによって殺してやろう。今まで死んでいった奴らには誰一人向けなかった俺の悪意だ。
初めてクズ野郎である事を自覚出来た記念だ────喜んで死ね」
カイトは腰を上げて、立ち上がる。アレックスを見下した後、背を向けて立ち去る。
「パーン\(^o^)/という間抜けな断末魔を楽しみにしてるぜアレク。精々大声で叫んでくれ」
カイトは高笑いしながら、闇の中へ消えていった。
もうカイトの声は聞こえなかった。アレックスは津波のように押し寄せてくる激痛によって、何も考えられなくなっていた。
頭が痛い。頭が痛い。カイトはアレックスを一瞥すると、彼の支給品を全て奪い、彼の元から去っていく。
とにかく頭が痛かった。恐ろしいくらいに痛かった。
その時、アレックスの頭の中に痛み以外の何かが走った。これは何だろう。何か懐かしい香りがする。
すぐに気付いた。これは思い出だ。走馬灯だ。今までのバトルロワイアルの中で出会った人達が、次から次へと現れ消える。
リン、クラッシャー……お前達の無念を晴らしてやる事は出来無さそうだ……
ハク……お前は間違っていた。俺は、ヒーローなんかじゃなかったんだ。
ただ、悪と善の区別が上手く出来ない……優柔不断な……
頭が……! 痛い……!!
頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が
頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が────
最後に頭に浮かんだ人物。それはカイトだった。カイトはいつものように卑怯な自分に絶望して涙を流している。
ハクを死なせ、リンを傷つけ、クラッシャーを殺し、トキまで道連れにした────
どうしようもなく嫌いだったカイトの卑怯さだが、あの頃は卑怯な行いを後悔していただけ、まだ可愛げがあったな……
カイトを……変えてやりたかった……リンと仲直りさせて、クラッシャーの墓を立てて祈る────
そんな平和な光景が、最後の最後に、俺の脳裏に映った。
(俺の行動は全て、無駄だったみたいだよ。ハク……
ごめんな。俺はヒーローなんかじゃなかったんだ)
頭が……
─────頭がぁぁあああああああああああああああ!!!!!!
「頭がっ……パーン\(^o^)/」
&color(red){【アレックス@MUGEN 死亡】}
&color(red){【残り31人】}
「アレクを殺したのはいいが、俺を守ってくれる奴がいなくなっちまった……ちょっと軽率すぎたか?
いやでもあいつは勝手に一人で死んでもおかしくないくらい死にかけだったからなあ」
これで残り人数は、最大31人。優勝が近付いたのはいいが、誰も守ってくれない今はとにかく恐ろしい。
アレックスを殺した事に関しては、何も罪悪感を感じなかった。悪魔として目覚めたおかげだろう。
そう。これこそが本性なのだ。今までは無理して善人であろうとしてきたから、悲しくて悲しくて仕方がなかったんだ。
俺の本性はクズ、卑怯者。それ以外の何物でもない。だが、クズでも生き残りたいという欲はある。
悪魔である俺だって普通の人間と同じように死を恐怖する。だからクズはクズなりに、優勝を目指すだけだ。
深呼吸する。晴れ晴れとした空気が肺を満たした。清々しい気分だ。
まるで生まれ変わったかのような、そんな心地だ。
名簿を眺めていると、ある名前に目がとまる。レンだ。
「アレクが死んだから、次の俺の保護者を探さないとな……レンなら兄貴の俺を裏切るわけがない。
レンに守って貰おう。まだまだ子供の弟に守って貰うってのが、実にクズで卑怯で、俺らしくていい感じだ。
さっさと会って守って貰わないと、怖くて怖くて死にそうだ」
クズの自覚をしたとはいえ、恐怖が消える訳がない。カイトは足早に北を目指す。
リンに会った時はどうしようか。カイトは考える。涙を流して靴でも舐めれば許してもらえるだろうか。
何故かリンは俺に対して恋愛感情を持っていたようだから、一発抱いてやれば気が変わるだろうか。
とにかく許してもらいたい。許して貰って守って欲しい。俺が一人で生きていける訳がない。
食い物となる善人が必要だ。だから……弟よ、妹よ、お兄ちゃんに愛をくれ!
クズを自覚した悪魔カイトには、守るべきプライドなどどこにも存在しなかった。
【D-4 草原/1日目・夜】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、精神的疲労(中)、高揚感、
[装備]:ベレッタM96(残弾数10/11)@現実、日本刀@現実
[道具]:支給品一式×5、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタルギアソリッド、
2025円が入った財布(ニコニコ印)@???、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実、ニコ産AI@MUGEN
Rホウ統(使用済)、ブレイバックルの説明書、医療品一式(簡易な物のみ)、はてなようせいがプリントされた毛布
エリアジャンプスクリプト機能(二日目午前まで使用不可)@ニコニコ動画、九条ネギ@現実、伯方の塩(瓶)@現実、魔王(芋焼酎)@現実
福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話 不明支給品0~1
[思考・状況]
1:どんな手段を使ってでも生き残る。クズで卑怯な事でも躊躇わずする
2:レンを見つけて守って貰う。リンとまた出会ったら仲直りしたい
3:ブロリーに期待
4:卑怯で卑劣な真似をするのは当たり前。何故なら俺はクズだから
※今のカイトにはプライドがありません。どんな恥ずかしい手段でも卑怯な手段でも、生き残るためなら躊躇わず使用します。
※自分の本性は卑怯でクズでどうしようもない悪魔だと確信しています。
※アレックスの支給品を全て奪いました。トキのデイパックも拾いました
※雄山の死体とデイパックはまだ放置されています
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|[[時系列順>第四回放送までの本編SS]]|sm191:[[少し頭冷やそうか(強行編)]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|[[投下順>151~200]]|sm191:[[少し頭冷やそうか(強行編)]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|鏡音リン|sm:[[]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|ブロリー|sm201:[[LIMIT BREAK]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|紅美鈴|sm201:[[LIMIT BREAK]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|相良左之助|sm201:[[LIMIT BREAK]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|&color(red){アレックス}|&color(red){死亡}|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|KAITO|sm206:[[とある悪魔の自縄自縛]]|
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*どうしてこうなったⅣ ~カイトの本性~ ◆jVERyrq1dU
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「アレク……大丈夫か?」
俺はクズだ俺はクズだ、カイトはアレックスに声をかけつつ、心の中で呟き続ける。
「止血はしているんだがな……さすがに、辛い」
さっきからずっと、歩いては休み歩いては休みを繰り返している。その度にアレックスは水を飲む。
喉が渇いて仕方がないらしい。三日分あった水はすでに後少ししか残っていない。
「アレク……そんな傷で、ブロリーと戦いたかったのか?」
「……本音を言うとな」
秘密を打ち明けるかのように話し、アレックスは微笑する。そんなアレックスを見て、カイトも微笑む。
「でもな、お前とリン、そしてクラッシャーとの因縁を解決しないまま、お前のもとを離れる訳にはいかないだろう……
俺はずっとお前と一緒に行動して来た。正直言ってお前との縁を切りたいと今までに何度も思ってきた。
だけど結局、今に至った。腐れ縁って奴だな」
「アレク……お前がいないと、俺はすぐに死んでたよ……アレクにはどれだけ礼を言っても言い足りない」
「礼なんかいらないさ。俺が勝手にやっている事だ」
アレックスはそう言うが、カイトは何故アレックスがそこまで自分のために頑張ってくれるのか、理解していた。
「ハクに、ヒーローと言われたからだろ?」
そう言うと、アレックスははにかむ。カイトも笑った。
「鋭いな……馬鹿な話だが、俺はリンやお前にそう言われて、はっきりと自分のするべき事を自覚したよ……
俺は強かったんだ。そして、左之助と違って、本当に助けを求めている連中に、気づいてやれる長所を持っているんだ。
そうさ。ハクやお前が言ったとおり、俺はヒーローだ」
カイトは苦笑する。アレックスもだ。
「そんな事言って恥ずかしくないのか?」
「事実だろ?例えば、左之助がお前を助けると思うか?」
カイトは左之助に殴られた事を思い出し、顔を暗くする。
「助けないだろうな……俺が逃げた時点で、あいつは俺を見下していた。それにしてもずいぶん左之助の事が嫌いみたいだな」
「嫌いというわけではないんだが……」
アレックスは言葉を選ぶようにして、ゆっくりと話す。
「多分、左之助は左之助で正しいんだと思う。あいつは、細かい事を抜きにして、誰かを助けようとしているだけなんだ。
俺の場合、一々気にかけてしまうような細かい事でも、あいつは気にしない豪快さを持っている。
俺とあいつは全然違うが……あいつは、悪い人間ではない、はずだ」
「俺を殴ったのにか……?」
「それは早とちりしてトキを殺したお前が悪い」
カイトが乾いた笑みを見せる。
「ちょっと待ってくれ……また、痛んで来た……」
「水飲むか?」
「ああ……すまない」
アレックスの水はすでに底を突いている。それを知っていたカイトは、自分のデイパックから水を取り出し、アレックスに渡す。
受け取ったアレックスは水をがぶ飲みする。リンに刺された傷は想像以上に深手だったようだ。
血を流し過ぎたため、喉が渇いて渇いて仕方がない。アレックスが満足するまで水を飲むのを、カイトは眺めていた。
「少し、休ませてくれ……」
美鈴と左之助の元へ一刻も早く援軍を送ってやらなければならない。
しかし、事態はやはり思ったように進行してくれない。こんな事ばかりだ、とアレックスは心の中で呟く。
無理をしてでも歩かなければ、と思うが全身がだるくて思うように動けない。おまけに頭まで痛くなってきた。
「大丈夫か……頼む、頼むから死なないでくれよ」
縋るようにカイトは言った。アレックスはカイトに笑みを見せ、大丈夫だと言った。
「行こう……二人が死んでしまう前に……援軍を」
と言うものの、アレックスは立ち上がる事が出来ない。体中のだるさは相変わらず、頭痛はどんどん酷くなっていく。
仕方なくカイトはアレックスに肩を貸す。
「カイト……お前は根は優しい男なんだ。俺の知り合いに、お前ほど妹の事を思い、自分の過ちを後悔出来る人間はいない……」
「どうして急にそんな事言うんだよ……もう死ぬみたいじゃねえか。やめろよ」
カイトは狼狽して言った。アレックスに肩を貸しても、思うように進めない。
かなり限界のようだ。纏まった休息を取った方がいいかもしれない。
「お前に足りないのは、自分が悪い事を認め、反省する事が出来ないというところだ……
カイト、良く聞け。自分の過ちを認めて、反省しない奴はどうやっても成長出来ないぞ。
認める事は、恥ずかしい事じゃないんだ……悪い事をしてしまったとしても、取り返しがつかないなんて事はめったにない。
ハクも、お前が成長している事をきっと望んでいる……」
「ハク……」
カイトは呟いた。アレックスは彼女を思い出して、何度目か分からない涙を流す。
隣には、ハクを見捨てた男カイトがいる。いつかカイトを立派にしてやる事が、ハクへの弔いになるとアレックスは頑なに信じていた。
(カイトも、リンも……天国に行ったクラッシャーもハクも、みんなみんな俺が幸せにしてやる……
ヒーローの俺が────)
「カイト……頑張ろうなあ。俺はお前を見捨てないぞ……俺はお前を絶対に一人前の男にしてやる……
そして、リンと仲直りさせてやる……本来の、お前に戻してやる。優しい、兄貴に……きっと」
アレックスの容体が急に悪くなってきたような気がする。
「アレク……大丈夫か?」
「さあ、な……さっきから頭が痛くて痛くてたまらん……」
「頭が痛いのか……」
「ああ……突然頭痛が……」
それを確認したカイトはアレックスの腹を思い切り殴った。
アレックスを地面に引きずり倒し、馬乗りになってアレックスの顔面を何度も何度も執拗に殴った。
ぼろぼろになったアレックスの顔に唾を吹きかける。アレックスは訳が分からなかった。
きっと悪い夢を見ているのだろう。きっと、そうに違いない。根は優しいカイトが、こんな事を突然するはずがなかった。
瀕死のアレックスに跨り、カイトはにやにやした笑みを見せつけた。そして、また唾を吹きかけた。
ポケットから、何かを取り出す。ビンだった。元々は何かの薬品が入っていたようだが、今は空だ。
「これが何だか分かるか?アレク」
アレックスの目の色が驚愕へと変わる。カイトが何を持っているのか以前確認した時、
それは確かに彼のデイパックの中に入っていた。飲むと、頭がパーン爆発して死亡してしまうという危険な……
「…………必須……アモト酸……か」
声帯の潰れたアレックスがしわがれた声を出した。
「御明答。こっそりペットボトルに入れておいたんだ。
人から貰ったものを無暗に飲食してはいけないと、子供の頃に習わなかったか?」
得意気な顔で、カイトは言った。
「お前の頭痛はこの毒薬の所為だ。もうすぐお前は、頭がパーンとなって死ぬ。
もうお前は俺を守る事は出来ないだろ?今まで世話になったな」
アレックスは悪に染まったカイトの笑みを見て、信じられない思いで目をこれでもかというほど見開いた。
理解出来なかった。確かにカイトは今まで散々な事をしてきた。しかし、カイトはそれでも、自分のしてきた事に絶望していたし、
弱い自分をなんとかしようと自分なりに頑張っていた。ライダーに変身して暴れた後だって、自分の過ちに絶望して涙を流していた。
根はいい奴だった……どこにでもいる、妹思いの青年だったはずだ……
「何故…………だ……何故なんだ、カイト……」
アレックスは呟いた。本当に意味が分からなかった。
「何故だと?答えは一つしかないだろ?」
カイトはアレックスの髪の毛を掴み、無理やりカイトの方へ顔を向けさせた。
「────優勝して生き残るための、人数減らしだ」
「馬鹿な……お前は、そんな人間じゃ、なかった……そんなクズじゃない」
「いいや違う。俺はクズで卑怯で本当にどうしようもない人間だ。どうして今まで気がつかなかったんだろう。
どれだけ頑張っても俺は一向にお前のような立派な人間になれない。俺の卑怯でクズな性質は生まれつき、定められたものなんだ。
アレク……お前の話だと、俺は根はいい奴なんだってな……。違うんだよ。俺はなあ!俺の本性はなあ!」
アレックスの頭から手を離し、カイトは自分の頭を押さえて、喚くように言った。
「俺は善人なんかじゃない! 俺は────悪魔だ!」
そう宣言した後、アレクに跨ったまま、カイトは項垂れる。
しばらく項垂れたままぶつぶつ何かを呟いていたが、突然跳ねるように顔を上げる。
「俺は、世界から、この世の全ての人間から拒絶されているんだよ!アレク!」
血走った眼でアレックスを凝視した。カイトの言っている意味が、アレックスにはよく分からない。
「俺は勇気がない!俺は卑怯だ!だがそれって悪い事なのか!
俺が今までしてきた事は、ただ勇気を出せなかったことだけだ!勇気を出せない事がそんなに悪いのか!?
ただ臆病に走った事が、妹からまで死ねと罵倒されるほど悪い事なのか!?
人を殺したクラッシャーよりも、臆病な真似をした俺の方が悪いってのか!!
ふざけるな!ふざけるな!!死にたくないって思う事が!そんなに悪い事なのか!?
────ふざけるなああああああああああああああああああああ!!!」
そう言いながらアレックスを殴った。殴り続ける。
カイトは色々と喚いているが、そんな事に答えが出せるはずがない。
殴りながら、カイトはまるで演説のように威厳たっぷりに言い放つ。
「だがな!どうもこの世界の常識に照らし合わせて考えてみると!やはり俺は悪であるらしい!
俺のしてきた事は悪だ!紛れもない悪だ!だからこそみんなみんな最後には俺を憎む!!ハクもリンも左之助も!!
だがどうすればいい!?生きる事を止めろとでも言うのか!それとも殺人鬼相手に!
勇気ではなく無謀を振り絞って勝ち目のない戦いを仕掛けろとでも言うのか!?どっちもごめんだ!!俺は生きたい!!」
はあはあ、と息を切らせながら、アレックスを殴るカイト。それはそうだろう。
誰だって生きたい。だが、生きる事自体が恥を撒き散らす行為に等しいのなら、人はいったいどうなってしまうのだろうか。
「俺は生きたくて生きたくて仕方がない!!だが、俺が生きようともがく度に!必ず誰かが不幸になってきた!!
何故なんだ!?それは俺の本性が悪魔だからだ!当然だ!俺は何をやっても反省出来ない!失敗を生かす事が出来ない!
それは心の中で密かに自分は悪くないと言い張っているからだ!やっている事はどう見ても悪なのに!
俺は悔い改める事すら出来ない!────否! しようとすらしない!!!
それこそが悪魔である証拠だ!!俺は自分のためならどんな事でも出来る人間なんだ!!
人の本性はどうやっても変えられねえ!!俺はいい奴なんじゃない!!────これが証拠だ!!」
叫びながら、拳を叩きこむ。息を切らして、カイトは体を休める。
アレックスはまだかろうじて生きていた。
「おま……えは、、やけに……」
「自暴自棄になっているだけとでも言うのか?違うね。俺は俺の本来の生き方に気づいただけだ」
「悲しいもんだぜアレク。俺は生きようと足掻いているのに、お前を除く全員が俺に死ねと圧力をかけてきやがる。
当然だよな。俺が生きていると周りの連中が不幸になるからだ。俺と俺を除く全員は、互いに相容れない存在だ。
さっさとこの事実に気づいちまえば良かったのに……俺は今まで生きて来て、自分の本性に全く気がつかなかった。
リンやミクやレンやメイコと今までのほほんと暮らしてきたが、今思い返してみるとあれほど歪んだ光景はないな。
クズ野郎と善良な人間が同じように生活していたんだぜ?いつか破綻するに決まっている。そして、予定通り破綻したんだ……
だが俺はやはり輪に入っていたかったんだよ。悪魔だろうと、他人に害を撒き散らす存在であろうと、
俺は普通に兄弟や友人達と仲良く暮らしたかったんだ。それがこの世の摂理に背くような行為でも、だ。
一人は寂しくて寂しくて死にそうだから、世界の秩序の中に生きていたかったんだ。
それは無理な話だと、このバトルロワイアルの中で気付かされた」
くつくつとカイトは笑う。アレクはひたすら呆然とした目をカイトに向けていた。
この男を信じていたハク、隊員、リン、そして兄弟達はどうなる?
カイト自身が自分を悪魔と名乗って、どうする……自分の事を蔑んでどうする……
────開き直ってどうする!!
「─────ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
あれほど愛した兄弟の死も!『ああそうか』と俺の心を通り過ぎていっただけだ!!
成長した友人の窮地からも! 俺は一目散に逃げ出した!!
最も大切だったリンも! 命を守る楯として使えるなら容赦なく使うまでだ!!
希望を語る仲間なんていらねえ!! 悪魔に仲間なんざいるか!!利用された馬鹿が悪い!!
クラッシャーもトキも俺という悪魔の視界にのうのうと入ってきた事自体が!!そもそも自業自得なんだよ!!」
「覚えているかアレク!右上の言葉!残り半数、後半戦開始だというあの言葉!
あの言葉を聞いた瞬間、俺というクズ野郎の脳みそはそろそろ積極的に動く頃合いだと計算を始めていたんだ!
自分が悪魔だと自覚したからには!もう容赦入らねえ!お前のような優しい人間を利用しまくってやる!
楯にしてやる!お前のように、俺を守る護衛として、生き残ったクソ雑魚どもを利用してやるよ!!」
アレックスは怒りで震えた。もう体のどこも動かす事が出来ない。それでも怒りだけはめらめらと湧いて出てくる。
許せなかった。こうなってしまったカイトが心の底から許せなかった。
隊員はクラッシャーはトキは!こんな外道に殺されたのか!
ハクはリンは……こんな外道に不幸にさせられたのか……
「カイ……ト……ふざ、けるな。このクズ野郎が……!」
「その通り!俺はクズ野郎だ!もう言い訳も言い逃れもしない。正々堂々卑怯な事をしてやるよ!
もう俺の心には、プライドも良心も罪悪感を感じる心も残っていないからな!!
クズ野郎だから、生き残る事以外はどうでもいい!!ククク……ハハハハハハハハハハ!!!」
アレックスは絶望する。完全にカイトは変わってしまった。最悪の方向へ、こいつは変わってしまった。
俺は、俺達の思いはどうなる?カイトの犠牲にあったみんなの気持ちはいったいどこへ……
「俺が死んだら………左之助達が、、不審に思うぞ……覚悟は、出来てるのか」
「馬鹿が!左之助達は今頃死んでるよ!呆気なくな!」
カイトは服の裾を上げる。あるべきはずの物がそこになかった。
ライダーに変身できるブレイバックル。カイトの腰に着いているはずだったそれが、ない。
カイトはにやにやと笑って言い放つ。
「ブロリーにとられちまった。あいつは見事にライダーに変身してたぜ。
ライダーを、瀕死の雑魚二人が倒せるはずがない!!あいつが暴れれば暴れるほど俺の優勝は近付く!!俺の生還は近づく!!」
勝ち誇った顔でカイトは言った。俺は途方に暮れた。ただでさえ強いと言われるブロリーが、さらに強力になってしまった。
「お前も美鈴も左之助もこれで終わりだ。これで残りは29人。
ククク……いいぞ。あと少し、あと少しだ」
────どうしてこうなった
────どうしてこうなった
何をどうすればカイトは道を誤らなかったのだろうか。アレックスには分からなかった。
ただ、今は……頭が痛い。頭が痛い……
「今まで俺の食い物になってくれて有難うアレク。あんたはこのゲームの中で一番俺のために働いてくれた。
その功績をたたえて、クズである俺の卑怯さによって殺してやろう。今まで死んでいった奴らには誰一人向けなかった俺の悪意だ。
初めてクズ野郎である事を自覚出来た記念だ────喜んで死ね」
カイトは腰を上げて、立ち上がる。アレックスを見下した後、背を向けて立ち去る。
「パーン\(^o^)/という間抜けな断末魔を楽しみにしてるぜアレク。精々大声で叫んでくれ」
カイトは高笑いしながら、闇の中へ消えていった。
もうカイトの声は聞こえなかった。アレックスは津波のように押し寄せてくる激痛によって、何も考えられなくなっていた。
頭が痛い。頭が痛い。カイトはアレックスを一瞥すると、彼の支給品を全て奪い、彼の元から去っていく。
とにかく頭が痛かった。恐ろしいくらいに痛かった。
その時、アレックスの頭の中に痛み以外の何かが走った。これは何だろう。何か懐かしい香りがする。
すぐに気付いた。これは思い出だ。走馬灯だ。今までのバトルロワイアルの中で出会った人達が、次から次へと現れ消える。
リン、クラッシャー……お前達の無念を晴らしてやる事は出来無さそうだ……
ハク……お前は間違っていた。俺は、ヒーローなんかじゃなかったんだ。
ただ、悪と善の区別が上手く出来ない……優柔不断な……
頭が……! 痛い……!!
頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が
頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が頭が────
最後に頭に浮かんだ人物。それはカイトだった。カイトはいつものように卑怯な自分に絶望して涙を流している。
ハクを死なせ、リンを傷つけ、クラッシャーを殺し、トキまで道連れにした────
どうしようもなく嫌いだったカイトの卑怯さだが、あの頃は卑怯な行いを後悔していただけ、まだ可愛げがあったな……
カイトを……変えてやりたかった……リンと仲直りさせて、クラッシャーの墓を立てて祈る────
そんな平和な光景が、最後の最後に、俺の脳裏に映った。
(俺の行動は全て、無駄だったみたいだよ。ハク……
ごめんな。俺はヒーローなんかじゃなかったんだ)
頭が……
─────頭がぁぁあああああああああああああああ!!!!!!
「頭がっ……パーン\(^o^)/」
&color(red){【アレックス@MUGEN 死亡】}
&color(red){【残り31人】}
「アレクを殺したのはいいが、俺を守ってくれる奴がいなくなっちまった……ちょっと軽率すぎたか?
いやでもあいつは勝手に一人で死んでもおかしくないくらい死にかけだったからなあ」
これで残り人数は、最大31人。優勝が近付いたのはいいが、誰も守ってくれない今はとにかく恐ろしい。
アレックスを殺した事に関しては、何も罪悪感を感じなかった。悪魔として目覚めたおかげだろう。
そう。これこそが本性なのだ。今までは無理して善人であろうとしてきたから、悲しくて悲しくて仕方がなかったんだ。
俺の本性はクズ、卑怯者。それ以外の何物でもない。だが、クズでも生き残りたいという欲はある。
悪魔である俺だって普通の人間と同じように死を恐怖する。だからクズはクズなりに、優勝を目指すだけだ。
深呼吸する。晴れ晴れとした空気が肺を満たした。清々しい気分だ。
まるで生まれ変わったかのような、そんな心地だ。
名簿を眺めていると、ある名前に目がとまる。レンだ。
「アレクが死んだから、次の俺の保護者を探さないとな……レンなら兄貴の俺を裏切るわけがない。
レンに守って貰おう。まだまだ子供の弟に守って貰うってのが、実にクズで卑怯で、俺らしくていい感じだ。
さっさと会って守って貰わないと、怖くて怖くて死にそうだ」
クズの自覚をしたとはいえ、恐怖が消える訳がない。カイトは足早に北を目指す。
リンに会った時はどうしようか。カイトは考える。涙を流して靴でも舐めれば許してもらえるだろうか。
何故かリンは俺に対して恋愛感情を持っていたようだから、一発抱いてやれば気が変わるだろうか。
とにかく許してもらいたい。許して貰って守って欲しい。俺が一人で生きていける訳がない。
食い物となる善人が必要だ。だから……弟よ、妹よ、お兄ちゃんに愛をくれ!
クズを自覚した悪魔カイトには、守るべきプライドなどどこにも存在しなかった。
【D-4 草原/1日目・夜】
【KAITO@VOCALOID】
[状態]:健康、精神的疲労(中)、高揚感、
[装備]:ベレッタM96(残弾数10/11)@現実、日本刀@現実
[道具]:支給品一式×5、ハンバーガー4個@マクドナルド、クレイモア地雷×5@メタルギアソリッド、
2025円が入った財布(ニコニコ印)@???、ハーゲンダッツ(ミニカップ)×3@現実、ニコ産AI@MUGEN
Rホウ統(使用済)、ブレイバックルの説明書、医療品一式(簡易な物のみ)、はてなようせいがプリントされた毛布
エリアジャンプスクリプト機能(二日目午前まで使用不可)@ニコニコ動画、九条ネギ@現実、伯方の塩(瓶)@現実、魔王(芋焼酎)@現実
福沢玲子のシャーペン@学校であった怖い話 不明支給品0~1
[思考・状況]
1:どんな手段を使ってでも生き残る。クズで卑怯な事でも躊躇わずする
2:レンを見つけて守って貰う。リンとまた出会ったら仲直りしたい
3:ブロリーに期待
4:卑怯で卑劣な真似をするのは当たり前。何故なら俺はクズだから
※今のカイトにはプライドがありません。どんな恥ずかしい手段でも卑怯な手段でも、生き残るためなら躊躇わず使用します。
※自分の本性は卑怯でクズでどうしようもない悪魔だと確信しています。
※アレックスの支給品を全て奪いました。トキのデイパックも拾いました
※雄山の死体とデイパックはまだ放置されています
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|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|紅美鈴|sm201:[[LIMIT BREAK]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|相良左之助|sm201:[[LIMIT BREAK]]|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|&color(red){アレックス}|&color(red){死亡}|
|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|KAITO|sm206:[[とある悪魔の自縄自縛]]|
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