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「どうしてこうなったⅡ」(2009/08/02 (日) 21:39:49) の最新版変更点
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*どうしてこうなったⅡ ◆jVERyrq1dU
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俺の横を通り過ぎようとするリンの肩を、俺は掴む。
「レンを探したいのか?だったら俺とカイトが手伝ってやる。だからどこにも行くな。一人で行動するのは危ないだろう?」
「はなしてよ……あんた達と一緒に行動するなんて、死んでも嫌……
あんたもカイトと同類よ。駅でクラッシャーを痛めつけたのはあんたでしょ……」
俺は無言でリンの肩を掴み続ける。リンの暗い目が俺を睨みつけた。
その瞬間、リンの持つ刀が死体の燻る炎を受けて、赤く煌めいた。
リンが思いきり振り回した刀を俺はぎりぎりのところで回避する。
クソ……!結局こうなってしまうのか……
「ジョセフィーヌ!!行くわよ!」
リンはそう叫ぶとロードローラーに向かって走る。俺は追いかけたが、リンの方が明らかにロードローラーに近い。
リンはすぐにロードローラーに飛び乗り、エンジンをかける。俺もまた全力で走り、ロードローラーに飛びつく。
「やめろ!落ち着け!」
「来ないで!」
俺は車体の上に立ち、座席に座るリンへと手を伸ばす。
その時、恐ろしい衝撃が俺を襲った。ロードローラーがあり得ない急発進をしたのだ。
恐ろしい勢いで加速するロードローラーのスピードによって、俺はバランスを崩す。
リンはと言うと、しっかりと座席に座り、シートベルトまで着けているので、バランスを崩した様子など全くない。
どう見ても14歳そこそこの少女にしか見えないのに、どうしてこんな神がかった運転テクニックを持っているんだ。
あまりにも理不尽だ。馬鹿げている。ロードローラーに必死にしがみ付き、俺は運転を止めさせようと再びリンへと手を伸ばす。
事態はどうしても俺が思ったように動いてくれないらしい。リンがハンドルから片手を離し、その片手に刀を握りしめ、
振り向きざまに突き刺してきたのだ。バランスを取るのに必死な俺はその刀を避ける事が出来なかった。
俺の腹に深々と刀が突き刺さり、激痛が走る。俺は痛みによって呻き声をあげ、思わずバランスを崩す。
バランスが崩れたその瞬間を狙って、リンはハンドルを思い切り右へと切った。
がくんと車体が傾き、俺の体はロードローラーから吹き飛ばされる。
地面に激しく激突。ロードローラーを睨んだが、すぐに夜の闇の中に消えていってしまった。
腹から激しく出血している。真っ赤な血が地面を濡らしていく。あまりの激痛に、俺は意識を失いそうになる。
このままでは間違いなく死んでしまう。両手を使って患部を抑え、出血を防ごうとしたが、ほとんど意味がない。
早く治療しなければ、冗談抜きにヤバい。
「畜生……どうしていつもいつも上手くいかないんだ……」
ハクの時もクラッシャーの時もそして今回も、カイトと出会ってから俺はいつもいつも状況に流されているだけのような気がする。
物語のヒーローのように、ピンチを一気に挽回出来るような目覚ましい活躍など出来た覚えがない。
ただ道化のように、その場の状況を改善できないまま右往左往しているだけだ。
ハクやカイトにヒーローと言われたが、はたして俺は本当にヒーローなのか?
カイトの元へと歩きながら戻る。今のカイトを一人にするわけにはいかない。
両手で傷口を塞いでも、出血は完全には止まらない。
出血のせいだろうか、酷く喉が渇く。俺はデイパックから水を取り出し、がぶ飲みした。
俺はもう、長くないのかもしれない……
「知らねえよ。俺が目覚めた時にはもう誰もいなかったぜ?」
「嘘をついてるわけじゃないだろうな……」
「嘘をついて何の意味があるんだよ。俺だってそいつに、カイトだっけか、一つ聞きたい事があるんだ。
いたら問答無用で捕まえてたさ」
トキやクラッシャーの死体が転がる場所に戻った頃には、すでにカイトの姿はなかった。
代わりに左之助という、気絶していた男が目覚めていた。カイトの行方を尋ねると、知らないとの事。
左之助が嘘をついていないのなら、どうやらカイトは左之助が目覚める前にここを去ったという事らしいが……
どうして勝手にどこかに行くんだ……今度はいったい何なんだ?
「くそ……!くそ!くそっ!どうして思うようにいかないんだ!なんなんだ畜生!」
上手くいかない運命を罵る。どうしようもない無力感を感じて、辛かった。
「ずいぶんとそいつを心配しているらしいが、お前はカイトって奴とどういう関係なんだ?」
「…………」
左之助の質問に、即座に答える事が出来なかった。カイトに出会ってから一日も経っていないのだが、
いつの間にか、一言で答えられるほど簡潔な関係ではなくなっている。
「唯の腐れ縁だ……」
しばらく考えてから、俺はそう答えた。左之助はどうでも良さそうにしている。
「ほらよ」
左之助が、腰に巻いているサラシを外して、俺に渡してきた。
「それで腹の傷を塞げ。まあ、ないよりはマシだろ。滅茶苦茶バイ菌塗れだろうけど気にすんな」
俺は左之助に礼を言った。ぶっきらぼうな男だが、悪い人間ではないようだ。
左之助の人間性を信じて、俺は一つ頼み事をしてみる。
「良かったら、カイトを探すのを手伝ってくれないか?彼女が目覚めるのを待ってからでも、構わないから」
「別に断る理由なんかねぇ、んだが。お前、ここで何が起こったのか気にならないのか?あの白髪の死体、見覚えあるだろ?」
俺はぴたりと挙動を止める。そういえば、どうしてトキは死んでしまったのだろう。
今までカイトやリンの事で手いっぱいで、頭が回らなかった。
「カイトって奴の事をそんなに優先するなら、あえて語らないってのもありなんだがな……
あ、これだけは謝っとくけどお前を殴って気絶させたのは俺だ。悪いな」
全然悪びれていない。この男は謝罪の仕方を知っているのか?
「いや、済んだ事だし、別にいいさ。それよりも、ここで何があったのか教えて欲しい」
「ずっと気絶していたお前が知らないの当然の話だ。この白髪野郎、名前はトキって言うんだが……
こいつを殺した犯人は────カイトだ」
俺の喉はからからに乾いた。大量に失血しているからなのかもしれないが、原因はそれだけではない。
カイトが、トキを殺した……?
▼ ▼ ▼
「ジョセフィーヌ……もっと速く。もっともっと速く。いい子ね、ジョセフィーヌ」
ジョセフィーヌとは、リンが王女様だった頃、飼っていた愛馬の名前。
ロードローラーを、何を思ったのか彼女はジョセフィーヌと呼んでいる。
無骨なロードローラーを愛馬と見間違えるような人間は、はたしているのだろうか。
助手席には、クラッシャーが愛用していた無限刃を立てかけてある。
「ジョセフィーヌ……ジョセフィーヌ……クラッシャー…………」
ブレーキを踏む。無骨な車体が軋んで、そしてやがて止まる。リンは刀に手を伸ばし、悲しみを帯びた目で、それを見つめた。
「クラッシャー、これからどうしよう……これから……」
リンは涙を流す。もうどうしようもない事は、自分でも気づいている。
自分は王女なんかではない。一人では生きられない、そこらの奴隷と同じなのだ。
「助けて、助けてクラッシャー……!」
刀をクラッシャーと見立てているのも、ロードローラーを自分の愛馬に見立てているのも、別にリンが狂ったからしているわけではない。
クラッシャーも愛馬も傍に居る。いざとなったらクラッシャーが助けてくれる。ジョセフィーヌがいるから寂しくない。
無理やりそう錯覚して自分を安心させなければ、怖くて怖くて、不安で不安でどうしようもない。
本当は愛馬もクラッシャーもここにはいない事なんて分かっている。だが、頼れる者がいなければ、リンは何も出来ないのだ。
仮初めでもいいから、庇護者が欲しい。だから自分の想像力を使って強引に作り出し、リンは自分で自分を慰める。
「レン……レンに会いたい。クラッシャーは死んだ。クズはもう駄目……」
カイトに関しては、もう完全に諦めがついた。二度と会いたくない。名前を聞く事すら不快だった。
となると、やはり信頼出来て頼れる人間は、もうリン以外にいない。
「レン……助けてレン……お願いだから私を見捨てないで……!
こんなところで、奴隷のように無残に死ぬなんて……私は絶対に嫌……!」
リンは呪文のようにぶつぶつと呟くながら、首に巻いていた本物のカイトのマフラーを憎々しげに投げ捨てる。
マフラーはロードローラーのタイヤに巻き込まれ、耳障りな音を立てて引き裂かれた。
「助けてレン……死にたくない……」
【C-4/一日目・夜/】
【鏡音リン@VOCALOID2(悪ノ娘仕様)】
【状態】健康、軽度の疲労、右腕骨折(応急手当済み)、悲しみ、極度の精神的疲労
【装備】ロードローラー@ぶっちぎりにしてあげる♪、無限刃@るろうに剣心
【持物】基本支給品、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、KAITOのマフラー@VOCALOID、不明支給品0~1
【思考・行動】
基本思考:レンを見つけて守って貰う
1、レンを探す
2、ロードローラーに一目惚れ。
3、バトルロワイアルに恐怖。元の世界に帰りたい
※色々と現実逃避しています
アレックスがリンの操るロードローラーに飛び乗り、闇の中へ消えていったすぐ後、
カイトはおもむろに立ち上がり、ふらふらと歩き始めた。どこに行くかなど考えていない。
ただ、一人になりたくて、ぶらぶら歩いていれば心が落ち着くのではないかと浅はかにも考えて、
それで死体や気絶している者が転がっている場所から離れたのだ。
(どうしてこうなった。どうしてこうなったんだ……)
クラッシャーとの因縁は案外深い。カイトがクラッシャーと始めて出会ったのは、殺し合いが始まって間もない頃だった。
あの時逃げなければ、はっぱ隊員を見捨てずに一緒にクラッシャーと戦い、殺してしまえばこうはならなかったのかもしれない。
そうすればリンはクラッシャーと出会う事はなかった。リンにあそこまで嫌悪される事もなかった。
(どうして俺はあの時逃げたんだ……思えばあの時、奴を殺しさえしていれば……)
あの時殺していれば、リンとクラッシャーが組む事もなかっただろう。
リンとクラッシャーが親密な関係になる事もなかったし、駅での一件も起こらなかった。
カイトがクラッシャーを殺していれば、ハクもまた、死なないで済んだはずだ。
アレックスだって、あそこまで傷つく事もなかっただろう。
カイトはどうしようもなく無念な気持ちになって、足を止め、地面に座り込んだ。
こうやって、自分の不甲斐なさに絶望するのはいったい何度目だろう。
その度に、自分の行動を猛烈に後悔するのだが、いくら後悔してもカイトは変わらなかった。
変われない自分がどうしても嫌で嫌でたまらなかったが、カイトにはどうする事も出来ない。
(どうして俺はあそこで逃げてしまったんだろう?)
夜空を見上げ、ぼんやりと考える。あの時逃げたのは、単純に死ぬのが恐ろしかったからだ。
本当に唯それだけ。はっぱ隊員を見捨てる訳にはいかないだとか、殺し合いに乗っている者を放置するわけにはいかない、
なんて考えは全く浮かんでこなかった。ただ、恐ろしかった。本当に恐ろしかっただけなのだ。
(どうして俺は隊員と一緒に戦わなかったんだろう。
俺は拳銃を持っていたじゃないか。どうして使わなかったんだ。どうして勇気を持てなかったんだ?)
あそこでクラッシャーを殺していれば、何もかもが上手くいっていたかもしれない。
そう思い始めると、身を焦がすような後悔が、カイトの心に重く落ちた。
(隊員も、ハクも死ななかったはずだ。リンにも、アレクにも嫌悪されなかったはずだ。
なんだよ……結局全部自業自得じゃないか。俺が初めてクラッシャーに出会った時に、勇気を見せずに逃げた結果がこれだ)
(全部全部、俺が悪い。それなのに俺は力を手に入れてから図に乗って、ついさっきまで正義面してきたんだな……
挙句の果てに、リンまで傷つけてしまって……リンの言うとおりだ。俺は口だけで、リンを本当に守ってやった事なんて一度もない。
俺なんかよりクラッシャーの方が遥かに立派だ……)
だが……、とカイトは思う。過去の自分の過ちが元になって、今までの惨劇は引き起こされたという事は、納得出来る。
自分が悪い、自業自得だったという事は認めざるを得ない。しかし、カイトにはどうしても納得出来ない事があった。
(そんなに悪い事なのか……? 勇気を発揮できずに、殺人鬼から逃げる事が、そんなに悪い事なのか?
俺の過ちは、ハクも隊員もリンもアレクも傷つけるような悪い事だったのか……?
それほどまでに俺の犯した罪は重いのか……?)
ふと、腰に巻いたブレイバックルに目が映る。悲劇の大元の原因はカイトが一番初めにはっぱ隊員を見捨てた事だが、
このブレイバックルだって悲劇が起こってしまった一因を担っている。この都合のいい道具がなければ、俺はここまで惨めにはならなかった。
ここまで酷い事にはならなかっただろう。そう思うと、ブレイバックルの事がますます疎ましく思えてくる。
『力』を手に入れた時はこれ以上ない解放感を感じたが、今となって見れば、ただ疎ましいだけの存在。
この『力』がなければ、俺はもっともっとマシだっただろう。
カイトは少しだけ迷ってから、ブレイバックルを外して、遠くへ思い切り投げ捨てた。
ほんの少しだけ後悔したが、また惨劇を繰り返すのはごめんだ。
(俺みたいな馬鹿が力を持っていても、持て余すだけだ……)
大きな力を操るには、その力を持つにあたって生じるあらゆる物事の責任を、負えるだけの強い覚悟を持たなければならない。
その覚悟が、カイトには全くなかった。このまま『力』を持っていれば、自分の衝動に任せて無暗に力を行使してしまうような、
そんな気がしてならなかった。『力』を自ら捨てた事によって、少しだけ、罪の重さから解放されたかのような心地になった。
(生まれ変わろう……一から。アレクは俺の事を根は優しい人間と言ってくれた。
そうとも。俺は本来ならクズで卑怯で臆病な人間なんかじゃない。アレクがそう言ってくれたんだ。
きっと本気になれば俺だっていい所を見せられる……きっとそうだ)
元の場所に戻るため、カイトは歩きだす。気持ちのいい開放感が、彼の心を包んだ。
(残り32人……大丈夫だ。ブレイバックルなしでもきっと生き残れる。だから大丈夫だ。怖がるな……)
頭の端っこで、このような打算的な考えをしている事を、カイトは特に意識しなかった。
しかし、いや、やはりと言うべきか、一度手に入れた『力』を易々と放棄できるほど、カイトは強くない。
歩き始めてから、すぐに、カイトは背中に得体の知れない気配を感じた。
後ろを振り返って見たが、誰もいない。気の所為かと思い再び歩き始めると、また奇妙な気配が後方で蠢くのだ。
不気味な感覚にカイトは冷や汗を垂らす。もしかしたら後ろから誰か付いてきているんじゃないか?
生身の肉体になり、再び無力な自分に戻ってしまった事を不安に思い、
あり得ない妄想をしているだけだと言う事に気付いたのは、それから数分経ってからの事だった。
自覚してみると、ますますはっきりと、カイトは強い恐怖心に襲われた。
どうして自分は浅はかにもあのブレイバックルを捨ててしまったのだろうか。
頭が悪いにも程がある。今は一人。アレックスも傍にいない。誰かに襲われたら抵抗も出来ずに死んでしまう。
(ブレイバックル……やっぱり取りに戻るか……今思えば、何も捨てる事はない。
俺の心が強くなるまで、アレクに預かって貰えばいいんじゃないか?)
とことん弱い男である。カイトは恐怖に震えながら、歩いてきた道を引き返す。
そして、ブレイバックルを探して右往左往していると、『そいつ』はいた。
「なんだぁ?これは……」
(なんなんだあの化け物は!!)
アレックス以上に筋骨隆々な大男がブレイバックルを物珍しそうに拾っているのを見た途端、カイトは全身に悪寒が走った。
近くに雑草が群生している場所があったので、すぐにそこに隠れ、がたがたと震えながら様子を見守る。
「カワイイ!」
(それのどこら辺が可愛いんだよ)
ブロリーは嬉しそうにブレイバックルを掲げている。良く見ると全身が恐ろしいくらいに傷んでいる。
あれだけの傷を負ってどうして未だに生存していられるのか、カイトには訳が分からない。
(何か、食べてるような……)
ブロリーが手に、何かを握り、それを口に運んでいる事に気づく。
何を食べているのか無性に気になったので、暗闇の中必死に目を凝らした。
驚愕した。ブロリーが食べているものは、なんと人間の腕だった。恐らく男性のモノと思われる腕を口に運び、食いちぎる。
くちゃくちゃという耳障りな音がここまで聞こえてきた。カイトは恐怖のあまり卒倒しそうになった。
あいつはヤバい。間違いなくヤバい。クラッシャーや突然襲撃して来た白髪頭とは比べ物にならないくらいの恐ろしさを感じ、身を縮める。
(殺される……!見つかったら間違いなく殺される……!ブレイバックルなんて取りに戻るんじゃなかった!
あいつ、間違いなく殺し合いに乗っている……!)
カイトはゆっくりと地面を這い、ブロリーから逃げようとする。しかし、ふとある事に気づき、カイトは動きを止めた。
今の状況に、どこかデジャビュを感じる。デジャビュの発端に気づいた時、カイトは愕然とした。
そうだ。今の状況は、クラッャーと初めて出会った時とどこか似ている。
このままブロリーを放置してしまえば、間違いなく誰か犠牲者が出てしまう。
そうなると、また惨劇の繰り返しだ。カイトはがくがくと震えた。
もう逃げたくはなかった。また新たな因縁を生んでしまうのだろうかと考えると、恐ろしくて恐ろしくて仕方がない。
つい先ほど、生まれ変わろうと誓った決意を試す時が、まさかこんなに早く来るとは思いもしなかった。
(に、逃げるのか……?俺は、俺はまた逃げるのか?)
カイトは心の中で自問自答する。相手は瀕死だ。不意を突けば殺せるかもしれない。
しかし、どうしても悪いイメージが頭を離れない。
『自分の気持ちに正直になれ。リンとクラッシャーに対して、何か思う事があるはずだ。
俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている。妹のために殺人鬼に立ち向かう兄などそういない。
だからこそ、自分の本当の気持ちに気づいてほしい。実は後悔しているんだろ……?』
脳内で、ついさっきアレックスが言った言葉が渦巻く。勿論、後悔している。
どうしてこんな事になってしまったのかと後悔している。
(自分の気持ちに、正直に……)
『俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている』
(本当の俺……俺の本性は────ヘタレなんかじゃねえんだ!!)
意を決してカイトはポケットから拳銃を取り出す。ガチガチ震えながら、ブロリーに向かって照準を合わせる。
ブロリーはもぞもぞと何かしているようだが、暗闇の所為でよく分からない。
(殺してやる!ぶっ殺してやる……!俺は強い!世界最強だ!いつまでも逃げてばっかりでいられるか!)
「────ッッ!?」
カイトが引き金を引こうとしたその瞬間だった。ブロリーの体が突如光に包まれる。
あれは……。カイトはその光景を見た事があった。あまりの衝撃と恐ろしさに、拳銃がぽろりと手から滑り落ちる。
まさか装備できるとは思わなかった。あれを装備できるのは、確か限られた人間だけのはずだ。
どうしてあんな、生身でも化け物みたいな奴が装備できるんだ。不公平過ぎる。
「カカロットオオオオォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」
(無理だ……無理だ!無理なんだ!俺にはッ!アレク……これが俺の本性なんだ!)
カイトは必死に這いまわって、ブロリーから逃げる。見つからない事を心の底から祈った。
先ほどの誓いなど、すでに頭の中から消えていた。
咆哮するブロリーは、自分が生まれ変わったような心地を感じた。
この鎧のおかげで、全力とはいかないまでも、それなりの力が出せるようになったはずだ。
面白いものを拾った、とブロリーは大声で笑った。
「ははは……まだだぁ。まだまだ……まだまだ暴れ足りぬぅ!!」
なんとブレイバックルを身につけたブロリーがライダーに大変身!!
これにはカイトは勿論、作者もビビッた!!!
しーらない
しーらないっと!
【E-5北部/1日目・夜】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】通常形態、、疲労(中)、額にダメージ(小)、顎にダメージ(大)、左腕に刺し傷、ダメージ(極大)、全身に大きな怪我、
右足首骨折、腹に超深刻なダメージ、首にダメージ(中)、全身に火傷
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、忍具セット(火薬玉、忘却玉)@忍道戒、不明支給品0~2
【思考・状況】
[基本思考]全てを破壊しつくすだけだぁ!
1:あの女は殺す。
※額のリミッターにダメージがいっています。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが消滅しました。
※伝説の超サイヤ人形態になったため会場全体が暗雲に覆われましたが、少しすれば晴れます。
※伝説のスーパーサイヤ人に変身できるかは不明です
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|sm190:[[どうしてこうなったⅠ]]|ブロリー|sm190:[[どうしてこうなったⅢ]]|
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*どうしてこうなったⅡ ◆jVERyrq1dU
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俺の横を通り過ぎようとするリンの肩を、俺は掴む。
「レンを探したいのか?だったら俺とカイトが手伝ってやる。だからどこにも行くな。一人で行動するのは危ないだろう?」
「はなしてよ……あんた達と一緒に行動するなんて、死んでも嫌……
あんたもカイトと同類よ。駅でクラッシャーを痛めつけたのはあんたでしょ……」
俺は無言でリンの肩を掴み続ける。リンの暗い目が俺を睨みつけた。
その瞬間、リンの持つ刀が死体の燻る炎を受けて、赤く煌めいた。
リンが思いきり振り回した刀を俺はぎりぎりのところで回避する。
クソ……!結局こうなってしまうのか……
「ジョセフィーヌ!!行くわよ!」
リンはそう叫ぶとロードローラーに向かって走る。俺は追いかけたが、リンの方が明らかにロードローラーに近い。
リンはすぐにロードローラーに飛び乗り、エンジンをかける。俺もまた全力で走り、ロードローラーに飛びつく。
「やめろ!落ち着け!」
「来ないで!」
俺は車体の上に立ち、座席に座るリンへと手を伸ばす。
その時、恐ろしい衝撃が俺を襲った。ロードローラーがあり得ない急発進をしたのだ。
恐ろしい勢いで加速するロードローラーのスピードによって、俺はバランスを崩す。
リンはと言うと、しっかりと座席に座り、シートベルトまで着けているので、バランスを崩した様子など全くない。
どう見ても14歳そこそこの少女にしか見えないのに、どうしてこんな神がかった運転テクニックを持っているんだ。
あまりにも理不尽だ。馬鹿げている。ロードローラーに必死にしがみ付き、俺は運転を止めさせようと再びリンへと手を伸ばす。
事態はどうしても俺が思ったように動いてくれないらしい。リンがハンドルから片手を離し、その片手に刀を握りしめ、
振り向きざまに突き刺してきたのだ。バランスを取るのに必死な俺はその刀を避ける事が出来なかった。
俺の腹に深々と刀が突き刺さり、激痛が走る。俺は痛みによって呻き声をあげ、思わずバランスを崩す。
バランスが崩れたその瞬間を狙って、リンはハンドルを思い切り右へと切った。
がくんと車体が傾き、俺の体はロードローラーから吹き飛ばされる。
地面に激しく激突。ロードローラーを睨んだが、すぐに夜の闇の中に消えていってしまった。
腹から激しく出血している。真っ赤な血が地面を濡らしていく。あまりの激痛に、俺は意識を失いそうになる。
このままでは間違いなく死んでしまう。両手を使って患部を抑え、出血を防ごうとしたが、ほとんど意味がない。
早く治療しなければ、冗談抜きにヤバい。
「畜生……どうしていつもいつも上手くいかないんだ……」
ハクの時もクラッシャーの時もそして今回も、カイトと出会ってから俺はいつもいつも状況に流されているだけのような気がする。
物語のヒーローのように、ピンチを一気に挽回出来るような目覚ましい活躍など出来た覚えがない。
ただ道化のように、その場の状況を改善できないまま右往左往しているだけだ。
ハクやカイトにヒーローと言われたが、はたして俺は本当にヒーローなのか?
カイトの元へと歩きながら戻る。今のカイトを一人にするわけにはいかない。
両手で傷口を塞いでも、出血は完全には止まらない。
出血のせいだろうか、酷く喉が渇く。俺はデイパックから水を取り出し、がぶ飲みした。
俺はもう、長くないのかもしれない……
「知らねえよ。俺が目覚めた時にはもう誰もいなかったぜ?」
「嘘をついてるわけじゃないだろうな……」
「嘘をついて何の意味があるんだよ。俺だってそいつに、カイトだっけか、一つ聞きたい事があるんだ。
いたら問答無用で捕まえてたさ」
トキやクラッシャーの死体が転がる場所に戻った頃には、すでにカイトの姿はなかった。
代わりに左之助という、気絶していた男が目覚めていた。カイトの行方を尋ねると、知らないとの事。
左之助が嘘をついていないのなら、どうやらカイトは左之助が目覚める前にここを去ったという事らしいが……
どうして勝手にどこかに行くんだ……今度はいったい何なんだ?
「くそ……!くそ!くそっ!どうして思うようにいかないんだ!なんなんだ畜生!」
上手くいかない運命を罵る。どうしようもない無力感を感じて、辛かった。
「ずいぶんとそいつを心配しているらしいが、お前はカイトって奴とどういう関係なんだ?」
「…………」
左之助の質問に、即座に答える事が出来なかった。カイトに出会ってから一日も経っていないのだが、
いつの間にか、一言で答えられるほど簡潔な関係ではなくなっている。
「唯の腐れ縁だ……」
しばらく考えてから、俺はそう答えた。左之助はどうでも良さそうにしている。
「ほらよ」
左之助が、腰に巻いているサラシを外して、俺に渡してきた。
「それで腹の傷を塞げ。まあ、ないよりはマシだろ。滅茶苦茶バイ菌塗れだろうけど気にすんな」
俺は左之助に礼を言った。ぶっきらぼうな男だが、悪い人間ではないようだ。
左之助の人間性を信じて、俺は一つ頼み事をしてみる。
「良かったら、カイトを探すのを手伝ってくれないか?彼女が目覚めるのを待ってからでも、構わないから」
「別に断る理由なんかねぇ、んだが。お前、ここで何が起こったのか気にならないのか?あの白髪の死体、見覚えあるだろ?」
俺はぴたりと挙動を止める。そういえば、どうしてトキは死んでしまったのだろう。
今までカイトやリンの事で手いっぱいで、頭が回らなかった。
「カイトって奴の事をそんなに優先するなら、あえて語らないってのもありなんだがな……
あ、これだけは謝っとくけどお前を殴って気絶させたのは俺だ。悪いな」
全然悪びれていない。この男は謝罪の仕方を知っているのか?
「いや、済んだ事だし、別にいいさ。それよりも、ここで何があったのか教えて欲しい」
「ずっと気絶していたお前が知らないの当然の話だ。この白髪野郎、名前はトキって言うんだが……
こいつを殺した犯人は────カイトだ」
俺の喉はからからに乾いた。大量に失血しているからなのかもしれないが、原因はそれだけではない。
カイトが、トキを殺した……?
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「ジョセフィーヌ……もっと速く。もっともっと速く。いい子ね、ジョセフィーヌ」
ジョセフィーヌとは、リンが王女様だった頃、飼っていた愛馬の名前。
ロードローラーを、何を思ったのか彼女はジョセフィーヌと呼んでいる。
無骨なロードローラーを愛馬と見間違えるような人間は、はたしているのだろうか。
助手席には、クラッシャーが愛用していた無限刃を立てかけてある。
「ジョセフィーヌ……ジョセフィーヌ……クラッシャー…………」
ブレーキを踏む。無骨な車体が軋んで、そしてやがて止まる。リンは刀に手を伸ばし、悲しみを帯びた目で、それを見つめた。
「クラッシャー、これからどうしよう……これから……」
リンは涙を流す。もうどうしようもない事は、自分でも気づいている。
自分は王女なんかではない。一人では生きられない、そこらの奴隷と同じなのだ。
「助けて、助けてクラッシャー……!」
刀をクラッシャーと見立てているのも、ロードローラーを自分の愛馬に見立てているのも、別にリンが狂ったからしているわけではない。
クラッシャーも愛馬も傍に居る。いざとなったらクラッシャーが助けてくれる。ジョセフィーヌがいるから寂しくない。
無理やりそう錯覚して自分を安心させなければ、怖くて怖くて、不安で不安でどうしようもない。
本当は愛馬もクラッシャーもここにはいない事なんて分かっている。だが、頼れる者がいなければ、リンは何も出来ないのだ。
仮初めでもいいから、庇護者が欲しい。だから自分の想像力を使って強引に作り出し、リンは自分で自分を慰める。
「レン……レンに会いたい。クラッシャーは死んだ。クズはもう駄目……」
カイトに関しては、もう完全に諦めがついた。二度と会いたくない。名前を聞く事すら不快だった。
となると、やはり信頼出来て頼れる人間は、もうレン以外にいない。
「レン……助けてレン……お願いだから私を見捨てないで……!
こんなところで、奴隷のように無残に死ぬなんて……私は絶対に嫌……!」
リンは呪文のようにぶつぶつと呟くながら、首に巻いていた本物のカイトのマフラーを憎々しげに投げ捨てる。
マフラーはロードローラーのタイヤに巻き込まれ、耳障りな音を立てて引き裂かれた。
「助けてレン……死にたくない……」
【C-4/一日目・夜/】
【鏡音リン@VOCALOID2(悪ノ娘仕様)】
【状態】健康、軽度の疲労、右腕骨折(応急手当済み)、悲しみ、極度の精神的疲労
【装備】ロードローラー@ぶっちぎりにしてあげる♪、無限刃@るろうに剣心
【持物】基本支給品、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、KAITOのマフラー@VOCALOID、不明支給品0~1
【思考・行動】
基本思考:レンを見つけて守って貰う
1、レンを探す
2、ロードローラーに一目惚れ。
3、バトルロワイアルに恐怖。元の世界に帰りたい
※色々と現実逃避しています
アレックスがリンの操るロードローラーに飛び乗り、闇の中へ消えていったすぐ後、
カイトはおもむろに立ち上がり、ふらふらと歩き始めた。どこに行くかなど考えていない。
ただ、一人になりたくて、ぶらぶら歩いていれば心が落ち着くのではないかと浅はかにも考えて、
それで死体や気絶している者が転がっている場所から離れたのだ。
(どうしてこうなった。どうしてこうなったんだ……)
クラッシャーとの因縁は案外深い。カイトがクラッシャーと始めて出会ったのは、殺し合いが始まって間もない頃だった。
あの時逃げなければ、はっぱ隊員を見捨てずに一緒にクラッシャーと戦い、殺してしまえばこうはならなかったのかもしれない。
そうすればリンはクラッシャーと出会う事はなかった。リンにあそこまで嫌悪される事もなかった。
(どうして俺はあの時逃げたんだ……思えばあの時、奴を殺しさえしていれば……)
あの時殺していれば、リンとクラッシャーが組む事もなかっただろう。
リンとクラッシャーが親密な関係になる事もなかったし、駅での一件も起こらなかった。
カイトがクラッシャーを殺していれば、ハクもまた、死なないで済んだはずだ。
アレックスだって、あそこまで傷つく事もなかっただろう。
カイトはどうしようもなく無念な気持ちになって、足を止め、地面に座り込んだ。
こうやって、自分の不甲斐なさに絶望するのはいったい何度目だろう。
その度に、自分の行動を猛烈に後悔するのだが、いくら後悔してもカイトは変わらなかった。
変われない自分がどうしても嫌で嫌でたまらなかったが、カイトにはどうする事も出来ない。
(どうして俺はあそこで逃げてしまったんだろう?)
夜空を見上げ、ぼんやりと考える。あの時逃げたのは、単純に死ぬのが恐ろしかったからだ。
本当に唯それだけ。はっぱ隊員を見捨てる訳にはいかないだとか、殺し合いに乗っている者を放置するわけにはいかない、
なんて考えは全く浮かんでこなかった。ただ、恐ろしかった。本当に恐ろしかっただけなのだ。
(どうして俺は隊員と一緒に戦わなかったんだろう。
俺は拳銃を持っていたじゃないか。どうして使わなかったんだ。どうして勇気を持てなかったんだ?)
あそこでクラッシャーを殺していれば、何もかもが上手くいっていたかもしれない。
そう思い始めると、身を焦がすような後悔が、カイトの心に重く落ちた。
(隊員も、ハクも死ななかったはずだ。リンにも、アレクにも嫌悪されなかったはずだ。
なんだよ……結局全部自業自得じゃないか。俺が初めてクラッシャーに出会った時に、勇気を見せずに逃げた結果がこれだ)
(全部全部、俺が悪い。それなのに俺は力を手に入れてから図に乗って、ついさっきまで正義面してきたんだな……
挙句の果てに、リンまで傷つけてしまって……リンの言うとおりだ。俺は口だけで、リンを本当に守ってやった事なんて一度もない。
俺なんかよりクラッシャーの方が遥かに立派だ……)
だが……、とカイトは思う。過去の自分の過ちが元になって、今までの惨劇は引き起こされたという事は、納得出来る。
自分が悪い、自業自得だったという事は認めざるを得ない。しかし、カイトにはどうしても納得出来ない事があった。
(そんなに悪い事なのか……? 勇気を発揮できずに、殺人鬼から逃げる事が、そんなに悪い事なのか?
俺の過ちは、ハクも隊員もリンもアレクも傷つけるような悪い事だったのか……?
それほどまでに俺の犯した罪は重いのか……?)
ふと、腰に巻いたブレイバックルに目が映る。悲劇の大元の原因はカイトが一番初めにはっぱ隊員を見捨てた事だが、
このブレイバックルだって悲劇が起こってしまった一因を担っている。この都合のいい道具がなければ、俺はここまで惨めにはならなかった。
ここまで酷い事にはならなかっただろう。そう思うと、ブレイバックルの事がますます疎ましく思えてくる。
『力』を手に入れた時はこれ以上ない解放感を感じたが、今となって見れば、ただ疎ましいだけの存在。
この『力』がなければ、俺はもっともっとマシだっただろう。
カイトは少しだけ迷ってから、ブレイバックルを外して、遠くへ思い切り投げ捨てた。
ほんの少しだけ後悔したが、また惨劇を繰り返すのはごめんだ。
(俺みたいな馬鹿が力を持っていても、持て余すだけだ……)
大きな力を操るには、その力を持つにあたって生じるあらゆる物事の責任を、負えるだけの強い覚悟を持たなければならない。
その覚悟が、カイトには全くなかった。このまま『力』を持っていれば、自分の衝動に任せて無暗に力を行使してしまうような、
そんな気がしてならなかった。『力』を自ら捨てた事によって、少しだけ、罪の重さから解放されたかのような心地になった。
(生まれ変わろう……一から。アレクは俺の事を根は優しい人間と言ってくれた。
そうとも。俺は本来ならクズで卑怯で臆病な人間なんかじゃない。アレクがそう言ってくれたんだ。
きっと本気になれば俺だっていい所を見せられる……きっとそうだ)
元の場所に戻るため、カイトは歩きだす。気持ちのいい開放感が、彼の心を包んだ。
(残り32人……大丈夫だ。ブレイバックルなしでもきっと生き残れる。だから大丈夫だ。怖がるな……)
頭の端っこで、このような打算的な考えをしている事を、カイトは特に意識しなかった。
しかし、いや、やはりと言うべきか、一度手に入れた『力』を易々と放棄できるほど、カイトは強くない。
歩き始めてから、すぐに、カイトは背中に得体の知れない気配を感じた。
後ろを振り返って見たが、誰もいない。気の所為かと思い再び歩き始めると、また奇妙な気配が後方で蠢くのだ。
不気味な感覚にカイトは冷や汗を垂らす。もしかしたら後ろから誰か付いてきているんじゃないか?
生身の肉体になり、再び無力な自分に戻ってしまった事を不安に思い、
あり得ない妄想をしているだけだと言う事に気付いたのは、それから数分経ってからの事だった。
自覚してみると、ますますはっきりと、カイトは強い恐怖心に襲われた。
どうして自分は浅はかにもあのブレイバックルを捨ててしまったのだろうか。
頭が悪いにも程がある。今は一人。アレックスも傍にいない。誰かに襲われたら抵抗も出来ずに死んでしまう。
(ブレイバックル……やっぱり取りに戻るか……今思えば、何も捨てる事はない。
俺の心が強くなるまで、アレクに預かって貰えばいいんじゃないか?)
とことん弱い男である。カイトは恐怖に震えながら、歩いてきた道を引き返す。
そして、ブレイバックルを探して右往左往していると、『そいつ』はいた。
「なんだぁ?これは……」
(なんなんだあの化け物は!!)
アレックス以上に筋骨隆々な大男がブレイバックルを物珍しそうに拾っているのを見た途端、カイトは全身に悪寒が走った。
近くに雑草が群生している場所があったので、すぐにそこに隠れ、がたがたと震えながら様子を見守る。
「カワイイ!」
(それのどこら辺が可愛いんだよ)
ブロリーは嬉しそうにブレイバックルを掲げている。良く見ると全身が恐ろしいくらいに傷んでいる。
あれだけの傷を負ってどうして未だに生存していられるのか、カイトには訳が分からない。
(何か、食べてるような……)
ブロリーが手に、何かを握り、それを口に運んでいる事に気づく。
何を食べているのか無性に気になったので、暗闇の中必死に目を凝らした。
驚愕した。ブロリーが食べているものは、なんと人間の腕だった。恐らく男性のモノと思われる腕を口に運び、食いちぎる。
くちゃくちゃという耳障りな音がここまで聞こえてきた。カイトは恐怖のあまり卒倒しそうになった。
あいつはヤバい。間違いなくヤバい。クラッシャーや突然襲撃して来た白髪頭とは比べ物にならないくらいの恐ろしさを感じ、身を縮める。
(殺される……!見つかったら間違いなく殺される……!ブレイバックルなんて取りに戻るんじゃなかった!
あいつ、間違いなく殺し合いに乗っている……!)
カイトはゆっくりと地面を這い、ブロリーから逃げようとする。しかし、ふとある事に気づき、カイトは動きを止めた。
今の状況に、どこかデジャビュを感じる。デジャビュの発端に気づいた時、カイトは愕然とした。
そうだ。今の状況は、クラッャーと初めて出会った時とどこか似ている。
このままブロリーを放置してしまえば、間違いなく誰か犠牲者が出てしまう。
そうなると、また惨劇の繰り返しだ。カイトはがくがくと震えた。
もう逃げたくはなかった。また新たな因縁を生んでしまうのだろうかと考えると、恐ろしくて恐ろしくて仕方がない。
つい先ほど、生まれ変わろうと誓った決意を試す時が、まさかこんなに早く来るとは思いもしなかった。
(に、逃げるのか……?俺は、俺はまた逃げるのか?)
カイトは心の中で自問自答する。相手は瀕死だ。不意を突けば殺せるかもしれない。
しかし、どうしても悪いイメージが頭を離れない。
『自分の気持ちに正直になれ。リンとクラッシャーに対して、何か思う事があるはずだ。
俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている。妹のために殺人鬼に立ち向かう兄などそういない。
だからこそ、自分の本当の気持ちに気づいてほしい。実は後悔しているんだろ……?』
脳内で、ついさっきアレックスが言った言葉が渦巻く。勿論、後悔している。
どうしてこんな事になってしまったのかと後悔している。
(自分の気持ちに、正直に……)
『俺はお前の事を根は優しい奴だと信じている』
(本当の俺……俺の本性は────ヘタレなんかじゃねえんだ!!)
意を決してカイトはポケットから拳銃を取り出す。ガチガチ震えながら、ブロリーに向かって照準を合わせる。
ブロリーはもぞもぞと何かしているようだが、暗闇の所為でよく分からない。
(殺してやる!ぶっ殺してやる……!俺は強い!世界最強だ!いつまでも逃げてばっかりでいられるか!)
「────ッッ!?」
カイトが引き金を引こうとしたその瞬間だった。ブロリーの体が突如光に包まれる。
あれは……。カイトはその光景を見た事があった。あまりの衝撃と恐ろしさに、拳銃がぽろりと手から滑り落ちる。
まさか装備できるとは思わなかった。あれを装備できるのは、確か限られた人間だけのはずだ。
どうしてあんな、生身でも化け物みたいな奴が装備できるんだ。不公平過ぎる。
「カカロットオオオオォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」
(無理だ……無理だ!無理なんだ!俺にはッ!アレク……これが俺の本性なんだ!)
カイトは必死に這いまわって、ブロリーから逃げる。見つからない事を心の底から祈った。
先ほどの誓いなど、すでに頭の中から消えていた。
咆哮するブロリーは、自分が生まれ変わったような心地を感じた。
この鎧のおかげで、全力とはいかないまでも、それなりの力が出せるようになったはずだ。
面白いものを拾った、とブロリーは大声で笑った。
「ははは……まだだぁ。まだまだ……まだまだ暴れ足りぬぅ!!」
なんとブレイバックルを身につけたブロリーがライダーに大変身!!
これにはカイトは勿論、作者もビビッた!!!
しーらない
しーらないっと!
【E-5北部/1日目・夜】
【ブロリー@ドラゴンボールZ】
【状態】通常形態、、疲労(中)、額にダメージ(小)、顎にダメージ(大)、左腕に刺し傷、ダメージ(極大)、全身に大きな怪我、
右足首骨折、腹に超深刻なダメージ、首にダメージ(中)、全身に火傷
【装備】ブレイバックル@仮面ライダー剣
【道具】支給品一式、忍具セット(火薬玉、忘却玉)@忍道戒、不明支給品0~2
【思考・状況】
[基本思考]全てを破壊しつくすだけだぁ!
1:あの女は殺す。
※額のリミッターにダメージがいっています。
※腹への攻撃に対して対処出来る様になりました。
※首のリミッターが消滅しました。
※伝説の超サイヤ人形態になったため会場全体が暗雲に覆われましたが、少しすれば晴れます。
※伝説のスーパーサイヤ人に変身できるかは不明です
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