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「WE GOTTA HOT POWER(前編)」(2009/05/20 (水) 14:32:29) の最新版変更点
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*WE GOTTA HOT POWER(前編) ◆vXe1ViVgVI
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□ ■ □ ■
これはベジータがヘタレ脱却を果たす十数分前……ベジータはブロリーに甚振られており、修造は戦いの場に向かい走り続けている時のこと。
この時、もう一人の登場人物・星井美希は俯きながら寒村を歩いていた。
その胸中には修造を止められなかった事への後悔が渦巻いており、美希にしては珍しく落ち込んだ様子を見せている。
「しゅーぞーさん……」
『過ぎた事を考えても仕方あるまい。……今は無事に屋敷に辿り着くことを考えるべきだ』
励ますようにそう呟くは炎の剣・ディムロス。
彼は、この殺し合いの中で二人の主を失っている。
一介の剣に過ぎないとは言え、それは決して気持ちの良いことではない。
ディムロスもまた修造のように、何とか美希に生き延びて欲しいと考えていた。
「でも美希がちゃんと止めてれば……」
『……あの男も言っていただろう、諦めるなと。なら今は諦めずに修造の無事を信じろ。何、ああいう男はそう簡単には死なないもの―――ムッ?』
不意にディムロスが言葉を切り、不可解な疑問符を上げた。
その声に美希も顔を上げ、首を傾けながら剣の方へと向く。
『避けろ!』
だが、美希が言葉を紡ぐよりも早く、ディムロスの焦り声が彼女の鼓膜を叩いた。
とはいえ唐突に避けろと言われて、回避行動に移れる人間など滅多に居ない。
少なくとも美希には不可能な事象。
当然ながら、美希はディムロスの放った言葉に対して首を捻り、そして質問をしようと口を開く。
しかしながら、開いた口から飛び出したのは疑問の言葉ではなく、
「ぷぎゃ」
悲鳴と言うにも情けのない、良く分からない擬音であった。
その光景を客観的に言うならば、『上空から落下してきた何かに美希が潰された』。
美希視点から言うと『いきなり目の前が真っ暗になった』。
兎にも角にも彼女は、突然の落下物に真上から潰されてしまった。
それはまるで車に踏み潰されたカエルのような、ファンにはとても見せられない姿であったが、幸いにも周囲に人は居ない。
……人は、だが。
『……大丈夫か?』
押し潰された拍子に美希の手から零れ落ち、難を逃れたディムロスが声を上げる。
そう、美希にとっては不幸なことに、ディムロスはその一部始終を見ていた。
落ちてくる謎の物体、締まりの無い顔のまま押し潰されていく美希の姿、ペッタンコになり地面と密着する美希の姿……全てを見てしまった。
その悲惨とも言える美希の姿にさしものディムロスも憐れみを覚えるのか、その声には同情の色が含まれていた。
「むぐぐ……ぐむっむむむむー」
返答は霰もないくぐもった声。
ゴムゆとりとなった事が幸をそうし、美希自体にダメージは無い……が、身体全体を潰されたお陰でまともな発声が出来ていない。
これまたファンには聞かせられない声であった。
『無事なようだな。それにしても何が落ちてきたのだ―――なッ!?』
安堵の感情と共に紡がれていたディムロスの言葉が再度、驚愕へと変化する。
ペッタンコ状態の美希にはその驚愕の示す事態が分からない。
取り敢えず、潰れた四肢を精一杯に動かし、謎の落下物からの脱出を試みる美希。
地面と落下物の間から何とか這い出ると共に、美希の姿が元の人間体へと戻っていく。
「何とか助かったの。それでディムロスさん、何でそんなに驚いてたの――って、えぇ!?」
その落下物を見て美希もまた驚愕の声を上げる。
地面に出来た小規模なクレーター。その中心にいる落下物は厳密に言うと物ではなかった。
胴体から生える手足と頭、まとわりついた布の間から見える肌色の皮膚……そう、落下物は「物」ではなく「人間」だったのだ。
これだけでも充分驚愕に至る事実。だが、美希はそれ以外の要素に驚きを見せていた。
「サ……サンレッドさん!?」
美希はその落下してきた人間に見覚えがあったのだ。
Tシャツ短パンに黄色い上着を纏った覆面の男、サンレッド。
その姿は以前出会った時と違い、素人目にも分かるほど傷だらけ。
どういう経緯をへてヒーロー役の俳優さんが空から落ちてきたのか、当たり前だが美希には分からない。
ただその傷だらけの身体に流石の美希も危機感を覚え、治療する方法を模索する。
「ディムロスさん! な、何かヒューンと傷を治せる魔法とか使えないの!?」
『馬鹿言うな! 我は炎の魔剣、我自身に魔法など使えない!』
ディムロスは口にこそ出さないが、サンレッドの怪我が相当にマズいものだと感じていた。
直ぐにでも治療しなければ確実に死ぬ。というか生きているのが不思議な程の重傷。
しかも、美希のゴムの身体が緩和材になったとは言え、あれだけの勢いで地面に落下したのだ。
普通の人間なら落下の衝撃だけでも充分死に至る。
『支給だ! 何か使えそうな支給品は無いのか!』
「そ、そうなの! 支給品を使うの!」
ディムロスの言葉を受け、美希は弾かれるようにデイバックを漁り出す。
先ずは手を入れたのは先程修造から渡されたデイバック。
出て来たのはおにぎりに、巨大な鏡、そして一枚のTシャツ。
Tシャツは止血用として包帯代わりに使用できるが、残りの二つは現状では何の意味もない。
美希は一枚のTシャツを地面に置き、もう一つのデイバックに手を掛ける。
此方はルガールから受け渡されたデイバックだ。
美希自身のデイバックにはモンスターボールと変なチップとお菓子しか入っていない。ルガールのデイバックが最後の希望であった。
(お願い……お願いなの……!)
だが、その願いも虚しく出て来たのは一つの大きなダンボールだけ。
一応ダンボールを開け中身を取り出してみるが、中に入っていたのはド派手な赤色の服が一着だけ。
まるで戦隊物のヒーローが身に付けていそうな、赤い生地に黄金の肩当てが付いた服。
カッコ良い見た目であるが、これまた止血にしか使えそうにない。
「ダメ……なの……」
デイバックには、薬は愚か湿布の一つもなかった。
一応止血の為に一枚のTシャツで擦り傷を二つ縛り上げるが、どう見ても焼け石に水。
サンレッドは着実に死へと向かい進んでいっている。
助けられないという冷酷な現実に、美希は涙を浮かべ膝を付いてしまう。
『……美希、ダンボールに入ってた服をその男に着せるんだ!』
美希の脳裏に諦めの二文字が掠めたその時、唐突にディムロスが大声を上げた。
その指示の意図が分からない美希は呆けたような表情でディムロスを見詰める。
「服……ってこれのことなの?」
『そうだ! その服にはその男と同じ力が込められてる! もしかしたら助けられるかもしれん!』
美希は訳も分からぬままにダンボールに入ってた服を、Tシャツや短パンの上からサンレッドに着せていく。
瞬間、サンレッドの身体から放たれるは金色の眩しすぎる光。
あまりの目映さに、美希は目を開けていられない。顔を逸らし光が止むことを待ち続けた。
「い、今のはなんだったの……?」
光が収まったのを確認し、美希は恐る恐るサンレッドへと視線を移していく。
そこには寝転がっているサンレッドの姿。
だが、先程とは明らかに違うものがある。
まずは服装。これは美希自身が着せたものだから、まあ当然のことだ。
そして、もう一つ変化しているものがあった。
その変化している物とはサンレッドの仮面。
太陽を模した額のマークと目の位置を覆う横長の楕円は変わらない。
ただ額のマークの横に二本の黄金に輝く角が生え、そして顎の部分も黄金の装甲が覆っていた。
「カッコ良いの……」
真紅の生地に加え肩や腕を覆う黄金の装甲、そして変化したサンレッドのマスク。それらが相成ったサンレッドの姿は本当のヒーローのように見える。
現状も忘れ、思わず美希は感嘆の声を零していた。
ディムロスもそのサンレッドの姿を見て、自分の予想が当たった事を確信する。
服から感じられた炎の力がサンレッドへと移動していっている。
このまま安静にしていれば、命が助かる可能性も出て来るかもしれない。ディムロスは安堵を覚えていた。
それは炎の魔剣だから読み取れた事象であった。
サンレッドの持つ炎の力、そしてダンボールに仕舞われていた服の持つ炎の力……炎を操る魔剣だからこそ、その力の類似に気が付けた。
ダンボールに入っていた服は『ファイアーバードフォーム』という名のもの。
かよ子(サンレッドがヒモしている彼女)の家の物置に仕舞われている、サンレッドの力を引き上げるパワーアップアイテムだ。
そのスーツに秘められた力をサンレッドの命を繋ぎ止める為に利用する――それがディムロスの考えであった。
そして、その考えは物の見事に成功した。ファイアーバードフォームの力はサンレッドへと移り、僅かな体力回復を齎したのだ。
ディムロスは安堵しながらも美希へと指示を送ろうとする。
『美希、一旦この男を休ませよう。あと少し進めば寒村がある筈だ、そこで休んだ後に洋館へは向かえば良い』
「で、でも本当にレッドさんは大丈夫なの?」
『……分からんな。死ぬか生きるかは五分五分と言ったところだろう……だが先程までの状態と比べれば幾分かマシになっている筈――「あー、確かに楽になったな、これは」――え?』
「え?」
その一瞬、二人の素っ頓狂な声がシンクロした。
美希の視線は横に向き、ディムロスの視界もまた横に移動する。
二人の視線を一心に集めるは、ヘラヘラと笑いながら二本の足で立っているサンレッド。
先程まで完璧に意識を失っていた筈の男が、余りに自然にそこに立っていた。
『な……!』
「サンレッドさんが目を覚ましたの! 凄いの、ディムロスさん!」
「何だよ、お前。ファイアーバードフォーム持ってたんなら先に言えよなー」
完全に予想の範囲外の事態にディムロスは言葉を失う。
なぜ立っている?
ついさっきまで棺桶に片足を突っ込んでいた男が、なぜ笑顔を見せながら立ち上がっている?
服から炎の力を受け取ったとしても傷が治癒された訳ではない。
体力が少し回復しただけ。根本的な解決には至ってない筈だ。
「良かったの! 死んじゃうかと思ったの!」
「……俺もだよ」
「え、何て言ったの?」
「何でもねーよ。……わりーけどやることがあるんでな。俺はちょっと行かしてもらうわ」
「そ、それはダメなの! レッドさんはボロボロなの、ケガ人なの、じゅーしょー患者なの。安静にしてなくちゃダメなの!」
そんなディムロスの苦悩とは裏腹に、サンレッドは苦痛や疲労を微塵も見せる事なくその場から立ち去ろうとする。
あんな傷だらけの身体で何をするつもりなのか、ディムロスには考えが及ばない。
現在進行形で生死の境に居る男が、何処に向かおうと言うのだ。
『何をするつもりかは知らないが、止めておけ。今無理をしたら死ぬぞ』
「おー、驚いた喋る剣かよ」
『私の事はどうでも良い。悪い事は言わん、今は安静にしていろ』
「無理だな。俺には倒さなきゃなんねー奴が居る。仲間も置いてきちまったんだ、ここで行かなきゃヒーローじゃねえ」
そう告げるレッドの表情を見て、ディムロスは押し黙る。
その表情にはレッドの決意の強さが現れていた。
ディムロスにも、ゆとりである美希にさえ伝わる強固な意志。
スーツの下にボロボロな身体を隠し、虚勢の笑みを顔に浮かべてサンレッドは二人を見詰めている。
止めるべきだと、ディムロスも美希も考えていた。
だが、サンレッドは二人の言葉に耳を貸す気配はない。自身の信念に任せて動こうとしている。
『……分かった。行ってこい』
「ディムロスさん!?」
『私達はこの先にある洋館で待機する予定だ。お前も用とやらが片付いたら来い』
「……何だよ、やけに聞き分け良いじゃねーか」
『……お前はブロリーと戦っていたのだろう。恐らくそちらに松岡修造という男も向かっている。用事ついでにあの男も救ってくれると助かる』
「修造が!? ちっ、分かったよ、任せとけ!!」
その言葉を最後にサンレッドが疾風の如く駆け始める。
唐突なスタートと異常なまでの加速力、美希は止める言葉を掛ける事すら出来ない。
凄まじい速度で遠ざかっていくその背中を茫然と眺めていた。
「ディムロスさん! 何でレッドさんを止めなかったの!」
『……お前も気付いていただろう。我達の言葉であの男を止める事は不可能だ。ならばせめて自由に行動させてやろう……もし、奴が死ぬとしても』
「でも……!」
ディムロスが語った事は、美希もまた気付いていた。だが、それでも納得できるものではない。
加えて美希は先程同じようなシチュエーションで修造も阻止できなかったのだ。
その事が、尚更美希の不満を強くしていた。
『さあ、行くぞ美希。我達は我達でやる事がある筈だ』
美希はディムロスの言葉に返すことなく、サンレッドが走り去った方角を見ているだけであった。
サンレッドが走り去った方角―――自分が逃げてきた、修造とサンレッドが向かっていった、未だ激闘の音が聞こえる方角。
美希は唇を噛み締めながらその方角を見詰め……そして一歩足を踏み出す。
彼等が向かっていった方角に。
『美希!?』
ディムロスの言葉を再び無視し、サンレッドの半分にも満たない速度で走る。
何か考えがあった訳ではない。ただ嫌だったのだ。
こんな殺し合いの場で自分を信じてくれた修造を、傷だらけのサンレッドを放って置く事が、ただ嫌だった。
だから、走る。それはゆとりらしい無鉄砲な行動だったのかもしれない。
だが、その時の美希の表情は誰も見た事がない程に大人びて見えた。
これがベジータが覚醒する十数分ほど前の出来事。
こうして伝説のスーパーサイヤ人の元に、一人のヒーローと戦闘民族の王子、そして元プロテニスプレイヤーにアイドル見習いが集まっていく。
その先に待つは勝利か敗北か、ただの虐殺か……今はまだ分からない。
□ ■ □ ■
「はぉおう!」
舞空術を使用しながらのブロリーのラリアットが、ベジータを後方の森林へと運んでいく。
ベジータもこう見えて全力で抵抗しているのだが、元々のパワーに天と地の差があり、均衡を生み出すことすら叶わない。
そのまま木々を数十本単位でなぎ倒し、ようやく地面に叩き付けられるベジータ。
まるで泥沼に叩き付けられたかのように、その身体が地面へ沈み込む。
そしてブロリーは気弾を一発、発射。デデーンという音と共に爆風がベジータを飲み込み、周囲の世界を揺らす。
「はははははははははは!! 弱い! 弱すぎるぞぉ!」
破壊されつくした森林にブロリーの笑い声が響き渡る。
戦闘が始まってから相当な時間が経過しているというのに、僅かな疲労の色も見せずブロリーは立ち尽くす。
あれからベジータも幾度となくブロリーへ突撃しているのだが、ダメージは与えられていない。
その笑顔を歪める事すら叶わないでいた。
「なめるなーー!」
地割れから、矢の如くスピードで一直線にブロリーへと向かうベジータ。
狙いは未だ血が流れている腹部の傷痕。ブロリーが持つ唯一の弱点へと僅かな望みを賭け、頭から突っ込む。
「その程度の攻撃が当たると思っているのかァ?」
だが、片手で止められる。
そして頭を掴まれ、そのまま無造作に投げ捨てられた。
ベジータの身体は数十メートルほど地面を滑った後、一本の木にぶつかりようやく止まった。
「くそッ……手を……抜きやがって……!」
ベジータは自身が遊ばれ、甚振られている事実を感じ取っていた。
本気を出せば瞬殺できる筈なのに、わざと手加減し遊んでいる。
フリーザと戦った時や完全体となったセルと戦った時に感じたものと同様の、圧倒的な実力差。
ベジータは悔しさを覚えると同時に、あまりに無力な自分への怒りを募らす。
「これならどうだ! ビッグバンアターーック!!」
ベジータが差し出した右手から、怒りを攻撃に変換させたかのような巨大な気弾が発射される。
本来のビッグバンアタックから見れば一回りも二回りも小さな気弾だが、制限の存在を考慮すれば相当なものだろう。
だが、その気弾を前にしてもブロリーは不動。
立ち尽くしたまま気弾に身を任せ―――直撃。
ブロリーの気弾にも負けず劣らずの爆風が周囲を揺るがす。
「ハァッ……ハァッ……どうだ、少しは効いたか化け物め」
疲労に息を切らしながら、ベジータは天へと巻き上がる爆煙へ言葉を吐いた。
手応えはある。確実に命中はした筈だ。
勿論ブロリーがこの程度の一撃で倒せる訳がない。それはベジータ自身も理解している。
多少のダメージがあれば良い。ダメージがあるのならば、微細ではあるが勝機が見えてくる。
それがどんな困難な道のりであろうと、ゼロ%の勝機に比べれば遥かにマシだ。
僅かな期待を宿すベジータの前で煙が徐々に薄れていく。
それと共にベジータの表情もまた変化していった。
―――希望から絶望へと。
現れたのは無傷のブロリー。
最初の時点では小さな気弾でも多少のダメージがあったというのに、今回はまるで無傷。
弱者が縋る小さな希望すらもブロリーは踏みにじった。
「それで全力かぁ?」
「くッ……! ちくしょう……!」
だが、今のベジータは決して諦めない。
身体を包む気だるさを無理やり押し込め気弾を連発。
ブロリーを近付かせまいと弾幕を張る。
これで通算三度目となる、俗に言う『王子戦法』。この戦法が通用しない事はベジータも重々承知している。
これは飽くまで次の攻撃への布石だ。
(…………今だ!)
爆煙がブロリーの身体を包み切ったのを確認すると同時に、右手に気を集中させながらベジータはブロリー目掛け一直線に飛行を始める。
気弾は目隠しで、本命はブロリーの弱点へのゼロ距離射撃。
煙の中を突き進み右手の光弾がブロリーの胴体へと迫る。
「とったぞ!「と思っているのかァ?」
当たる、と確信したのも束の間、煙の中から生えたブロリーの右手がベジータの胴体に命中する。
おまけに右手には緑色の気弾が握られており、接触と同時に爆発。
愛用の戦闘スーツごとベジータの胴体を焼き、後方の藪へと吹っ飛ばす。
「ガッ……カッ……」
激痛に悶え地に伏せるベジータを後目にブロリーは空へと浮かんでいく。
そして上へ、上へと進んでいき、ベジータの姿が指人形の如く小さく見えた所で止まる。
すると、ブロリーは右手を前方に差し出し顔を愉悦に歪めた。
「もう良いだろう。この辺りで終わりにしてやる!」
その言葉が呟かれると共にブロリーを中心にして、世界が怯えているかのように大きく震え出す。
ブロリーの周辺が緑色に染まったかと思えば、その光が何度も何度も右手へと収束していく。
収束の度に色を深くしていく光弾。その光景にベジータは身体をガタガタと震わせる。
「何というパワーだ……」
逃亡は出来ない。今逃げ出したところで攻撃範囲からは抜け出せないだろうし、何より修造がいる。
奴を巻き込まないよう移動してはいたが、あれだけのパワーが込められた一撃なら、修造が気絶している場所まで易々と届くだろう。
止めるしかない。修造を救うためにも、自分自身が生き延びるためにも何としてでも止める。
「うぉぉぉおおおおおお!! クソったれーー!!!」
純粋な力勝負であの化け物に勝てるとは思えない。だが諦めも―――しない。
ある男に教えられた通り諦めを見せずに、ベジータは両手を合わせブロリーへと矛先を向ける。
具現化された気が半透明な煙となって彼の身体から溢れていく。
放たれるは、過酷な修行で身に着けた、彼が持つ様々な技の中でも最強の技。
ダメージに繋がらなかったとはいえ、あのセルの半身を消し飛ばした光線。
その威力に全てを賭けて立ち向かう。
「無駄な事を……今楽にしてやる! 死ねい!」
「うおおおおおお! ファイナルフラーーッシュ!!」
ベジータの両腕から発せられるは極太の青色。
対するブロリーの気弾は小さく、ベジータのものと比較すると明らかに頼りない。
だが、気弾はファイナルフラッシュとぶつかると同時にその凶悪な正体を現した。
激突の瞬間、空一面を覆う程に巨大化する気弾。
地面が、木々が、空気が、何もかもが振動を始める。殺し合いが行われている会場その物を消し去りかねない、異常な力。
それと比較してしまえば、対する青色の波動など余りにちっぽけな存在。
気功波を通して伝わるとてつもない圧力にベジータの顔が焦燥に歪む。
「く……くそっ……!」
「フッフッ……フフフフフ」
それに加えブロリーにはまだ余裕がある。
ベジータの命懸けの抵抗を前に彼は未だ本気を出していない。
今のブロリーからすれば、バトルロワイアルなど児戯に等しき所行。
彼がこの姿に覚醒した時点でバトルロワイアルというゲームは殺し合いではなくなり、ただの虐殺と化している。
精神的に難があったとはいえ、ベジータはこのバトルロワイアルの参加者の中でもトップレベルの実力を有している。
制限下でなければ惑星の破壊も容易に行え、格闘技だけ見ても長年の修行により相当な錬度を誇る。
だが、そのベジータでさえブロリーにとっては赤子扱い。
醜い殺し合いが見たいという主催者達の思惑を外れていると言っても過言ではない。
「ハッハッハッハッハッハッハッ! 死ねぇ!」
全力全開のベジータを嘲笑うかのように邁進を続ける気弾。
ベジータを支える地面が圧力に耐えきれず崩壊を始め、半日間この殺し合いを見守ってきた木々は抵抗も出来ずに蹂躙される。
押されていく青色の線。
ベジータの視界を埋め尽くす緑の極光。
遂にはあと十数メートルの位置にまで緑の気弾が迫る。
この光景を見れば誰もが確信するだろう。
ベジータの敗北を、
一人の誇り高き戦士がまたこの世から居なくなることを、
この光景を見れば誰もが願い、そして思うだろう。
あの巨悪を滅してくれる正義のヒーローの登場を、
勇敢なる戦士を救う為、颯爽と現れるヒーローの姿を、
それが存在しない幻影だとしても願わずにはいられない。
「うぉぉぉりゃぁぁぁああああああああああ!」
―――だが、ヒーローはいる。
―――ブラウン管の中だけではない、悪から世界を守る為にヒーローは世界各地
に存在する。
―――そして、ここにも。
―――溝ノ口発の真っ赤なヒーローは窮地にこそ現れる。
□ ■ □ ■
それはまるで漫画のような光景だった。
空一面を覆い尽くす緑色の光弾。
左右に揺れ動き崩壊していく世界は、明らかな異常を訴えている。
今は何者かが放っている青色のレーザーのお陰で持ち堪えてはいるが、あの光弾が地面に落ちたのならば、少なくともこのエリアは丸々消し飛ぶだろう。
やっぱりブロリーは化け物だ。ファイアーバードフォームを手に入れたとはいえ、ブロリーに勝てる気はしない。
そもそもファイアーバードフォームの力が有るから、俺は何とか活動できている状態だ。
とてもじゃないが、全力全開での戦闘は不可能。
もしこの力が無ければ、今にもぶっ倒れる自信がある。
だが、そんな事は百も承知で俺は走り続ける。
巨大な緑に対抗する青色の奔流―――その根元を目指して。
あの青色のビームを発射している奴が誰なのかは分からない。
あのヘタレが覚醒したのか、何らかの支給品が撃ち出しているのか、それとも別の第三者か。
それは分からないが、あの化け物に反旗を翻す奴が居る……それだけは確固たる事実。
まだ諦めずに戦う者が居るというのに、ヒーローが真っ先に休憩とはお笑い草だ。
正義がそこにある限り、身体が動く限りヒーローは戦い続ける。そうでなくてはヒーローでない。
世界が崩壊を始めてから数分後、俺はようやく奔流の根元へと辿り着いた。
崩壊の中心地。木々も地面も全てが砕け散っているそこでは、黒髪の男が一人、両腕から極太のビームを撃ち出していた。
俺が居ない間に何があったのか、その表情はあのヘタレ野郎とは思えない程に凛々しく引き締まっていた。
言うなれば戦士の顔。戦闘種族の王云々は本当の話だったのかもしれない。
「まったくよお……立ち直るんならもう少し早く立ち直れっつーの……」
俺とあのタコが行った事は間違っていなかった。
奴を見捨てずに戦い続けた事が、結果的にエリアの崩壊を食い止めてる。
依然窮地に変わりない状況だというのに、視界が何故だか滲んでいた。
俺が行った事がこうして未来に繋がっている。
嬉しかった。その事実が、ただ純粋に嬉しかった。
枯渇していた筈の力が、何処からともなく湧き出す。
掲げた右手の上に出現するは太陽の如き巨大な火球。
俺が、サンレッドが持つ名も無き必殺技。
もはや壁とさえ錯覚しそうな程の巨大さを誇るブロリーの気弾と比較すれば、余りにちっぽけ。
だが、それがどうした。
無理なのも無茶なのも知っている。
今はゴチャゴチャと考えてる場合じゃねえ。
悪を倒す為に全身全霊を込め、最大限の力を尽くす。ただそれだけだ。奴を、ブロリーを殺す為に―――。
「うぉぉぉりゃぁぁぁああああああああああ!」
ベジータの気弾と並ぶ形で豪火球が緑色の壁に激突する。
瞬間、両腕から感じたのは馬鹿げた圧力。
重い。ただひたすらに重い。
腕が震え、両脚が地面に沈み込む。
こんな攻撃を一人で抑えるとはよ……やるじゃねえか、ベジータ。
「なっ! き、貴様、生きていたのか!?」
こんな絶望的な状況にも関わらず、ベジータは分かり易く驚きの表情を見せた。
残念ながら俺に返答する余裕はない。ただでさえボロボロだった身体で、無理矢理に必殺技を放ったのだ。
限界など軽く突破している。
「ハッハッハッハッ! 雑魚が幾ら集まったところで俺に勝つ事はできぬぅ!!」
悔しいが奴の言う通りだった。
俺とベジータ、二人の力を合わせても緑の光弾を押し返す事は叶わない。
それどころか、着実に均衡は俺達の方へと傾いている。
「ちっく……しょお!」
「くそっ……たれぇ!」
ふざけんな。
ここで奴を止めなきゃ沢山の人が死ぬ。
この殺し合いに参加させられた奴等は勿論、地球に住む人達も殺される。
世界征服なんて甘っちょろい話じゃない。人類全てが滅亡する。
此処で俺が勝たなければ全て死ぬ。
ベジータも、修造も、美希も、ヴァンプや、かよ子も全て―――。
そんな事は絶対に許せない。
「ふざけんじゃ……ねぇ!」
だが意志だけで勝利を収められる程、現実は簡単なものでは無い。
幾ら力を振り絞ろうと気弾はピクリとも動かず、着実にこちらに直進してくる。
誰でも良い。力を貸して欲しかった。
ヒーローだろうが悪人だろうが怪人だろうが、この際構わない。
此処で奴を止めなくては全てが終了するのだ。
誰か、俺達に力を―――。
蟻は人間に対し抵抗する術を持たない。
今のブロリーと他の参加者の関係もまた同様であった。
ベジータとサンレッドという、数ある参加者達の中でも有数の実力者達が力を合わせてもブロリーにはまだ届かない。
その余裕を崩す事すら叶わないでいる。
空を覆う緑はゆっくりとだが着実にベジータ達へと切迫し、ブロリーは未だ悪魔の笑みを浮かべたまま二人を見下ろす。
如何なる策略を張り巡らせようと、強者同士が徒党を組もうと、今のブロリーを前には何の意味を持たない。
サンレッドとベジータも良く持ち堪えてはいるが、勝敗は誰の目にも明らか。彼等の敗北は目に見えている。
彼等から離れた森林に、そんな絶望的な戦いを茫然と見詰める一人の少女――星井美希がいた。
「凄いの……」
それは彼女の居る世界では到底有り得ない、まるで映画のワンシーンのような光景。
地面が萎縮し木々が震える、木々の間から見える空は一色の緑に支配され腹の底から響く重低音が辺りを包む。
余りに非現実的な光景に、美希は夢でも見ているような気分にさえなっていた。
「……痛いの」
抓った頬は確かな痛みを発した。
痛覚、すなわち目の前の現象が現実の物であるということ。
だが流石の美希と言えども、この光景を現実だ受け入れる事は容易ではない。
自分がゴム人間になった事とは次元もスケールも何もかもが違う。
ゆとり脳でも信じられないものは信じられないのだ。
美希はサンレッドの追跡も忘れたまま、たっぷりと思考停止に勤しんでいた。
『美希……今すぐ此処から離れるんだ。あのエネルギー弾が地に落ちればこの場にも被害が出る』
そんな美希を現実に引き戻した物は炎の魔剣が放った言葉。
その内容はこれ以上無い程に的確な指示。
だが、我を取り戻した美希はその言葉を堂々と無視し、歩き始める。
勿論、逃げる為にではなくサンレッドや松岡の元に辿り着く為に、だ。
『お前が向かったところで足を引っ張るだけだ! 一刻も早く逃げるべきだ!』
「いやなの。しゅーぞーさんやサンレッドさんを助けるの」
それは至極真っ当な意見であったが、当たり前のように美希は聞き入れない。
美希は崩壊していく森林を危なげなくズンズンと先に進んでいく。
その時、不意に視界が開けた。
今まで通ってきた道の中でも尚一層凄惨な破壊痕。
地面には何ヶ所もクレーターが刻まれ、その一帯の木々に無事なものは存在しない。
美希は知る由もないが、そこはサンレッドとブロリーが激闘を繰り広げ、そして一匹のタコが爆散した地であった。
今まで空を覆い隠していた木葉も幹と共に地に伏せており、断片的にしか見えていなかった空の全貌が美希の視界に飛び込む。
空を埋め尽くす緑に変化は無い。
だが、美希はその時初めて、緑に抵抗している青色の筋と赤色の光球の存在に気付く事ができた。
『……赤色の火炎弾はサンレッドのものだな。あれにも相当な炎の力が籠められているが……話にならん』
ディムロスの言葉を聞きながら、美希は空に浮かぶある人物の存在に気が付いた。
空を占める緑色の、その更に上方にて悠々と佇む人間。
美希の視力では人影のようにしか見えないが、それでも美希はその人物が誰なのか瞬時に理解する。
「ブロリー……」
『……だろうな。分かったか? あの位置ではブロリーに攻撃する事も出来んし、何らかの魔法攻撃を持たない限りサンレッドの力になる事も不可能。……美希、今は逃げるんだ』
その言葉に対し美希は無言で空を眺め続け、そして唐突にその光景に背中を向けて走り始める。
ようやく逃亡を選んでくれたのか……ディムロスは心中で安堵の息を吐いていた。
だが、その安堵は一分と持たずに崩れ落ちる事となる。
ピタリ、と美希が立ち止まったのだ。
距離にすれば数十メートルしか移動していない。勿論、ブロリーの気弾から逃げられる距離では無いし、充分巻き込まれる可能性がある。
『どうしたのだ?』
思わず疑問を零したディムロスを無視し、美希は何か決心したかのように息を飲み込む。
美希の様子を見て、ディムロスの脳裏に嫌な予感がよぎった。
目の前のゆとりが何かとんでもない事をしでかしそうな……そんな予感。
『……美希、もう一度言うぞ。逃げろ、一刻も早く逃げるのだ』
美希は言葉を返さない。
ただ、黙ったままディムロスをベルトに差し込む。
その態度に、本格的な危機感がディムロスの内に湧き上がった。
『美希……?』
瞬間、美希は無手になった両腕を緑色の空に向かって勢い良く伸ばした。
ゴムゴムの実の能力により、美希の両腕は風を切りながらグングンと突き進んでいく。
ブロリーへの直接攻撃をする気か?、とディムロスは考えるが、流石にブロリーとは距離が開きすぎている。
ブロリーには届かないだろう……ディムロスはそう思い直し、落ち着かない心境で美希の謎の行動を見守る。
ディムロスの予想通り、見る見る内に勢いは消失していき、手の進む速度も減速していく。
そして遂には完全に速度が無くなり―――その両腕が、緑と青と赤の衝突に震える一本の木を掴んだ。
『あ……』
同時にディムロスは美希の行動の真意を理解した。
だが、残念ながら制止の言葉は間に合わず、
「突撃なのーーーー!!」
弾丸の如く勢いで美希の身体と共に空を舞っていた。
限界まで引き伸ばされたゴムは当然物凄い勢いで引き戻される。
ディムロスに声を上げる暇はなかった。美希の無謀を通り越した行動に呆れ果て愕然としている内に、標的へと迫っていく。
だが、相手はあのブロリーだ。
ゴムの勢いを利用した最高速の一撃とはいえコレだけの距離があれば回避されるだろうし、命中したところでダメージが与えられるとは思えない。
ディムロスは思わず存在しない目を閉ざしてしまい―――瞬間、美希の身体を通して激突の衝撃を感じ取った。
(『当たった!?』)
衝撃、即ち敵への突撃が成功したという事。
視界を回復させると、そこにはブロリーの腹に頭から突っ込む美希の姿。
ブロリーの顔には、素人目にも分かる位に明らかなダメージが浮かんでいる。
「うがぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!?」
苦悶に満ちたブロリーの叫びが周囲を突き抜ける。
何故、ブロリーは美希の突撃を回避しなかったのか。
何故、あれだけの耐久力を持つブロリーに美希の攻撃がダメージを与えられたのか。
ディムロスと美希が知る事は無いだろうが、それは様々な偶然が重なった結果に発生した奇跡の如く事象であった。
美希が突撃を仕掛けた時、ブロリーはちょうどベジータとサンレッドにトドメを刺そうとしていた。
無駄な抵抗を見せるクズ共へ、駄目押しの気弾を見舞い押し切る。
そう考え、空いている方の左手に気を集中させていたのだ。
幾らブロリーと言えど、気弾を形成するには多少の意識の集中は必要不可欠。加えて、どんな相手の攻撃であろうとダメージは受けないという、慢心もまた回避させる手を鈍らせた。
ブロリーの胸に宿り続ける慢心とトドメを刺す為の意識の集中、そしてゴムの特性を最大限に利用した超速の攻撃―――それらの事が奇妙に組み合い美希の突撃はブロリーに命中したのだ。
命中した部位もまた幸いした。
美希が当たった位置は、現在のブロリーに唯一ダメージを与えられるであろう腹部の傷跡であった。
最強のサイヤ人が刻みつけ、この殺し合いの場にて様々な達人達がダメージを積み重ね、ついさっきもヒーローが貫いた傷跡。
その部分にロケットの如く突っ込んで少女の頭が直撃したのだ。
さしものブロリーと言えどもダメージを隠す事は出来ない。
身体は痛覚に支配され動きを止める。
左手に形成していたトドメの気弾も宙へ霧散し、サンレッド達を追い込み続けていた圧力も消えた。
地に立つサンレッド達もまた、ブロリーに降り懸かった異常に気付いている。
一人の少女が文字通り身を呈して行った一撃が、ヒーロー達に唯一無二のチャンスを作ったのだ。
□ ■ □ ■
(何……?)
唐突に消失した圧力に、ベジータとサンレッドは困惑を覚えていた。
今まで両腕に掛かっていた圧倒的な力が、何故か消えた。
あまりに突然発生した幸運。
サンレッドとベジータは思わず戸惑いを覚え―――そしてその一瞬後に勝機が舞い降りた事を理解する。
「サンレッド!」
「分かってる! 押し切るぞ!」
先程までは口を開く余裕すら無かった二人が叫び、両腕を介して眼前の気弾へと渾身の力を流し込む。
長い長い辛抱の果てにようやく掴み取った、おそらく最初で最後の勝機。
空を覆う緑の壁の向こう側でブロリーに何が起こったのかなど、二人にとってはどうでも良い事であった。
この勝機に全てを注ぎ込む……ただそれだけを考えなけなしの力を振り絞る。
だが、
「くそっ……! 押し……切れん……!」
「何でっ……! 破れ……ねぇ……!」
立ちはだかる壁は余りに強大すぎた。
先に比べて格段に圧力の弱まった気弾を、押し返す事も突き破る事も出来ない。
ベジータもサンレッドもブロリーに嬲られ続けた満身創痍の身体で、今まで耐え抜いてきたのだ。
まだ命がある事すら奇跡、この状態で更なる奇跡を望むのは余りに酷であった。
(ダメか……)
遂にはサンレッドの心に絶望が掠める。
強靭な精神で自身を奮い立たせてきたサンレッドであったが、唯一の勝機を前に何も出来ない自分に対し「諦め」の二文字が浮かんでしまった。
(……俺では……ブロリーに勝てないのか……)
それはベジータもまた同様。
サイヤ人の王子として誇りを取り戻した彼にも、絶望という名の死に神が鎌をもたげていた。
限界を越えて戦い続けてきた戦士達の心が軋みを上げている。
ようやく掴んだ勝機を前に、改めて自身達の無力を思い知ってしまった。折れ掛けた心、それでも足掻き続けるのは彼等の性か。
彼等は求める。
あと少しだけで良い、あの壁をぶち破るだけの力を。
今ここで力尽きても良い、あの悪魔を倒すだけの力を。
彼等は願う。
力を、この絶望を打ち破る事ができる僅かな力を。
一瞬だけでも良い、あの空を突破する力を。
その求めは、その願いは誰にも届くことはなく、
二人の戦士は死の淵に立たされ、
「――もっと熱くなれよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
―――二度目の奇跡が唐突に巻き起こった。
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