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「The last wolf strategy ~志々雄真実の策略~」(2009/05/15 (金) 19:36:48) の最新版変更点
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*The last wolf strategy ~志々雄真実の策略~ ◆4LgZV6zKDw
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「よし…これならもう問題ねえ」
志々雄は医療品を取り出し、つい先刻負わされた傷の処置を済ませる。
自身が拠所とする、徹底した"自然"の象徴とも言える信条―『弱肉強食』に従い、
当初は参加者を見つけ次第、すぐに殺しにかかるつもりでいた志々雄であったが、
そんな彼も行動指針を変える必要性を薄々感じ始めていた。
「さて、どうするか…どうやらこの殺し合い、簡単に勝ち残れるという訳でもねェみてえだからな…」
DIOと名乗る男との戦いを経て、志々雄にはある一つの懸念が生まれていた。
それは、DIOのような未知の能力―もしくはそれに準じる支給品を持った参加者が何人存在しているのか、という事である。
病院での一戦において志々雄が体験した、数々の信じ難い出来事――
DIOが何も無い所から突如スタンドと呼ばれた人型の物体を出したかと思うと、
いつの間にか投げつけられていた凶器がほぼ零距離まで迫っており、志々雄は避ける事が出来なかった。
通常、物を投げつける際には明らかな予備動作が発生するものだし、
これまで幾多もの死線を潜り抜けてきた自分がその程度見逃すはずが無い、そう思っていた。
しかし、あの一瞬で得られた感覚は――気がついたら凶器が目の前まで迫っていたという事、
ただそれだけだった。
奇妙な能力を持っていたのはDIOだけではない。
あの時、DIOと共に攻撃してきた生きた人形――彼女も何も無い所から自在に蔓を出し、操っていた。
尤も、DIOの策に嵌ったことで既に事切れている故、それについて深く考える必要は無くなったのだが。
いずれにせよ、このような未知の能力を携えた参加者とこれからも出くわす可能性は高いだろう。
当然そんな相手に、何の対策も無しに挑むのはあまり利口なやり方とは言えない。
考慮すべき点はもう一つある。志々雄自身が抱える、戦闘における制限時間だ。
志々雄は明治政府の裏切りによって全身を焼かれて以後、身体の汗をかく組織を完全に失い、
発汗による体温調節が一切出来ない体となっている。反面、これによって体内で無尽蔵に高まり続ける熱こそが、
志々雄がその人間離れした力を引き出す為の重要な源でもあった。
しかし――それでも身体の限界というものは存在し、15分以上の戦闘は命に関わってくる。
今は主催者達の手によって体温上昇の速度がある程度制御されている状態にある為に
15分以上の戦闘も不可能では無くなっているかもしれないが――、
いずれにしても志々雄にとってはこれが致命的な弱点である事に変わりは無い。
元より、長時間の激しい活動が出来ないというこの弱みがあったからこそ
志々雄は十本刀を始めとする大規模な軍勢を組織し、慎重かつ堅実に国家転覆を狙っていたのである。
自身が抱えるこの弱点と併せ、常識の枠を超えた方法で攻撃を仕掛けてくる相手と
連戦を行うと仮定した場合、優勝まで辿りつくのは困難を極めるだろう。
況してや複数で挑んでこられようものなら更に勝率は落ちる。
ならばこの殺し合いを勝ち残る為に、単純な戦闘能力以外に要となるもの――それは『情報』と『手駒』。
予め危険性の低い参加者との間でしばらく同盟を組み、
各参加者の支給品、能力、戦術、弱点などの情報が得られれば、それら各々に応じた対策も立て易くなる。
運が良ければ、首輪に関する有益な情報も手に入るかもしれない。
更に一度集団に潜り込みさえすれば、
高い戦闘能力を有する参加者の襲撃を受けた際もある程度有利な状況に立てる。
いざという時は、同行する参加者を囮に使って攻勢に出る、一時撤退するといった手段を取る事も可能だ。
同盟は利用価値が無くなった時に破棄し、その後はまた他の参加者に接触して同じ事を繰り返していけばいい。
(互いに利用し利用される関係――、俺に勝てるという確信が持てる奴や余程自尊心が強い奴以外は
この交渉に応じざるを得ないだろうさ。例え信念が違えど、少しでも長く生き残ろうとするなら
その意志に見合った戦力ってヤツが不可欠だからな…)
あれこれ思案を続ける志々雄は、やがて前方から二つの人影が迫ってくるのを認識する。
――同盟を組むなら、それなりの実力があってかつ少人数で動いている奴が理想。
殺し合いに乗っていようがいまいが、利用する以上は同じ事だ。どちら側であろうと問題は無い。
早速、奴等に交渉を持ちかけるとしよう。
志々雄は全く怯む事無く、そのまま歩を進めた。
"二人"は、医療品を回収すべく病院を目指していた。
絶え間ない緊張状態の故か、例によって二人の間には殆ど会話が見られない。
その理由は緊張だけではなく、美鈴が一人苦悩していた事にもあった。
「………」
――結局どうする事も出来なかった。
図書館から離れた今となっては、もう既に藤崎の命がバクラの手に掛かっていてもおかしくは無い。
彼が死ねば、誰にも事実を伝えずに見て見ぬふりを続けていた私も共犯には違いないのだ。
そう考えると、果てしない罪悪感に襲われる。
会って間も無いとはいえ、共に生きて脱出したいと願う仲間を裏切るような真似はしたくなかった。
もっと正確に言うなら、ゲームに乗っている、乗っていないにかかわらず
故意に人を殺めるような残虐な行為に走りたくはなかった。
だが、脱出を成功させる為にもある程度の犠牲という物はやはり付き物なのかもしれない。
今は義に溢れる愚策よりも非情に徹した最善策を選ばなければ活路は見出せないのかもしれない――。
(でも…そしたら私自身の意志は―――)
「美鈴!」
足元から大きく響いた渋い声で、私は我に返る。
視線を下ろすと、ゲーム開始直後からずっと行動を共にしていた
一頭身の騎士――メタさんがこちらを鋭く見据えていた。
「図書館を出てから随分と考え込んでいるようだが……何か私に隠し事をしていないか?」
私は思わず動揺する。確かに図書館を出てからは
殆どメタさんに意識を向けていなかったが、勘付かれていたとは。
「正直に話せ。内容しだいではあるが、極力お前にとって不利益な行動は取りたくない」
「…別に、私は何も…」
「言え」
「………」
今になって思えば――メタさんは鋭い。図書館に戻った時に藤崎が死んでいれば、
図書館で待機していた人達を疑うという事も十分考えられる。
今更私達に医療品を取りに向かわせたバクラの真意を明かした所でどうにもならないだろうが、
下手に真相を隠し続けてメタさんの信頼を失うような事だけはしたくない。
せめて彼には、今ここで真実だけでも伝えておくか――。
私は葛藤の末、白状する事に踏み切った。
「……ドナルドに、藤崎は足を引っ張る恐れがあるから始末してくれと頼まれたんです」
「なに……?」
メタさんは少し驚いた様子を見せた。予想通りの反応だ。
私はメタさんの反応を伺いつつも、力の無い口調で言葉を紡ぐ。
「バクラにも同じ事が頼まれたんですが、彼は何の躊躇いも無くその仕事を引き受けました…。
あのトキって人を助ける為の医療品を私達に取りに行かせたのはただの口実で、
本当はバクラが安全に藤崎を殺せる時間を作る為の策略なんです」
「………」
メタさんは暫く何も言わなかった。
仮面で顔を隠している為に表情は全く読めないのだが、
私にはその時、仮面の穴から見える目の色が微妙に変わったかのように思えた。
「…成る程。自分には藤崎を殺す事は出来ない。かと言って計画を阻止したりすれば、
首輪解除の為の頼みの綱であるドナルド達との間で歪が生じる。
だからその場を黙ってやり過ごすしか無かったという訳か」
「…はい」
一応メタさんは理解を示したが、声の調子が普段と違っている。
やはり怒っているのだろうか。私が不安に思っていると、メタさんは再び口を開いた。
「…自分を責める必要は無い。このような自分の命が懸かった状況に立ち会えば、
第一に何を優先すべきかという迷いが生まれるのは至極当然の事だ」
「………」
メタさんの口から出てきた言葉は、私に対する非難でもなく藤崎に対する哀れみでもなく。
私情や驕りといったものを一切感じさせない、妙な説得力のある言葉だった。
「メタさん…怒ってないんですか?」
「別に怒ってなどいない。私としてはこれで藤崎が死ぬのは全くもって不本意だが、
美鈴が悩んだ末に取った行動である以上は仕方が無いというものだ」
やはり彼もこんな不確かな要素だけを理由に藤崎を殺すのは良しとしなかったようだ。
勿論私にとってもそれが本心だった――にも関わらず、最終的には自らの保身を考える余り
罪の無い人を見殺しにする道を選んでいた。
メタさんの怒りを買わなかったのは良かったが、未だ罪悪感は消える事無く私の心に重く圧し掛かる。
「メタさん、私は…」
「美鈴」
私の心境を知ってか知らずか、メタさんは私に言い始める。
「お前が元の主やフランの為だけに戦うというのなら、それでも構わない。
恩に報いるべく最後まで忠義を貫く、それもまた武人としての一つの道というものだ」
メタさんの言葉を聞いて私は思い出す。
そう、今私がすべき事はフランドール様をこの危険なゲームから護り通す事。それが最優先だ。
が、それ以外にも私個人が掲げる意志――果たすべき目的はあったはず。
「だが、私は出来る限り多くの参加者を救いたいと考えている。
その為ならゲームに乗った者を殺す事も自分の命を投げ出す事も厭わない。
例え途中で足手纏いとなる者がいようとも、その者を切り捨てるような真似は絶対にせん。
この目に映る人々は最後まで護り通す――これが私の果たすべき士道だ」
思わず私は絶句する。何て強い騎士道精神を持つ人なんだろう。
私欲や邪念といった普遍的な感情に一切とらわれず、ここまで一つの正義や信念に忠実な人は見た事が無い。
私はメタさんを改めて尊敬し、同時にこの武人らしい生き方をもっと見習いたいと思った。
参加者を救いたいという意志の強さは私とて変わらない。
迷いをほぼ完全に断ち切った私は決意した。
「…私も考えている事はメタさんと一緒です。
これからは絶対に、誰一人として殺させはしません」
例え自分が死ぬ結果になろうとも、最後までレミリア様とフランドール様――
そして他の力無き参加者の為に戦う。もう二度とこんな道は選ばない。絶対に。
「…そうか。ならば私はこの先何があろうともお前の味方でいる事を誓おう」
「こちらこそ。私も最後までメタさんに付いていきます」
色鮮やかに虹色な門番と、一頭身の仮面の騎士。
一見奇妙な間柄ではあるが、こうして二人の間には決して断ち切れる事の無い信頼関係が築かれた。
談義を終えた二人は再び歩き出し、やがて病院と思わしき建物がはっきりと見え始める。
「…あれが病院ですね。誰かいるでしょうか?」
美鈴が何気なくメタナイトに言葉を掛けるが、彼は返答を返す代わりにネギを構える。
「…構えろ、美鈴」
メタナイトの言葉に反応して視線を戻した美鈴は目を見張る。
そこに居たのは、嫌でも目を引かせるような一種異様な姿をした男。
全身に隈なく巻かれた包帯、それを覆う青い着流しと黒いブーツ、
そして包帯の隙間から覗かせる、凶暴な野獣の如き赤い眼。
「全身包帯の男…まさかあれが…」
「ああ、ドナルドやレンが言っていた特徴と寸分違わず合致している。
間違いなく――あの男が志々雄だろう。」
ドナルドやレンによると殺し合いに乗っている側――即ち、即刻で排除すべき危険人物である。
メタナイトと美鈴は志々雄に向かって鋭い視線を投げかけながら、相手の出方を伺った。
対する志々雄はじっと身構えている二人の方へゆっくりと歩み寄りつつ思考を働かせる。
一対二という、あちら側にとって優位な戦局でありながら一向に襲ってこない所を見ると
殺し合いに乗っている訳では無さそうだ。「しめた」と思った志々雄は即座に両手を挙げ、二人を制止する。
「まあ待て。俺はお前らに危害を加える気は無い。だからここはひとまず、情報交換と行こうぜ」
志々雄は攻撃を仕掛けることなく話を持ち掛けるが、二人は戦闘体勢を解こうとはしなかった。
事前に目の前に居る相手がゲームに乗っていると聞かされているのだから当然と言うべきだろう。
しかし、それ以上にこの志々雄真実という男が、そのあまりにも異質な風貌もあってか
直接肌で感じ取れる程の危険な気配を醸し出していたからである。
メタナイトは、志々雄がいつ攻撃して来てもいいように万全な体勢を保ったまま口を開いた。
「…貴様が志々雄真実だな。」
「あん?何故俺の名を………ああ、成る程。あの道化師と小僧の二人組に接触したって訳か」
志々雄は冷笑を浮かべながら納得した様子を見せた。
血肉を貪る獣をそのまま生き写したかのようなその目はとてつもない殺気を放っている。
「俺の事を知ってるなら話は早い。いかにも、俺が志々雄真実だ。
そっちも名乗りぐらいは上げてくれてもいいんじゃねえか」
「…紅美鈴、です」
「…メタナイトだ」
二人は警戒を緩める事なく、淡々と質問に答える。
「フ、礼儀を弁えてるじゃねえか。
しかし、こんな一頭身の化け物まで参加させられていたとはな。正直驚いたぜ」
「! …化け物……」
辺境の星、ポップスターで生きるメタナイト自身、これまで人間と呼ばれる種族と関わった事は殆ど無い。
だがそれでも、人間相手に化け物等と形容されたのは初めてだ。
屈辱的な言葉を浴びせられ、ゼロの仮面の下に隠されたその顔に薄っすらと青筋が浮かぶ。
そんなメタナイトの心情を悟った美鈴が慌てて彼に普段の平静さを取り戻させようとする。
「た、ただの挑発ですよ!落ち着いてくださいメタさん!」
「ム……」
確かに彼女の言う通りだ。
戦いの場において、一時の感情に振り回されるようでは後々それが死に繋がる。
メタナイトは込み上げてくる怒りを何とか抑えた。
その様子を眺めていた志々雄はくつくつと笑いながら、また嘲笑うかのような口調で言い始める。
「おっと、気に障ったか?まあ口さえ利けるんならどうだっていいぜ。
ところでよ、お前ら俺と同盟を組む気はねえか?」
「「!?」」
志々雄の発言は二人にとって予想だにしないものであった。
美鈴はしばらく動揺していたが、一方でメタナイトは志々雄の狙いを悟ったらしく、咄嗟に言葉を返す。
「…私達を利用するつもりか」
即座に自身の思惑を言い当てられた志々雄は、
逆に「思い通り」と言わんばかりの不敵な笑みを溢し、説明を始める。
「察しがいいな……そう、お前らが知っての通り、俺はこの殺し合いに乗ってる。
だが、そう簡単には生き残れそうにもねぇって事が分かってきたんでな。
そこで一時的な協力者って奴が欲しい所なのさ」
「………」
二人はただ無言でそれを聞く。
「同盟を組む事に賛成するってんなら、俺が持つ支給品の一部や情報は全てお前らに提供しよう。
そしてお前らと同行している間でなら、俺が許す限りそっちの行動指針に従って動いてやる。
大方お前らも殺し合いに乗ってる連中は容赦なく殺っちまおうってクチだろ?
それくらいはお前らの目を見りゃ分かるぜ」
――読まれている。やはりドナルドやレンの言ったように只者では無いらしい。
志々雄の洞察力を見せ付けられた二人は心の中でそう確信する。
「どうだ、お前らにとっても悪くねぇ条件だと思うんだが?
この医療品一式も必要とあらば、いつでも使わせてやるぜ。」
志々雄は傍に置かれた救急箱のような容れ物を指差した。
医療品の回収が目的であった二人は当然それを聞いて驚かざるを得なかった。
「医療品だと?」
メタナイトがあからさまな反応を示したことで、志々雄は二人の目的をすぐに悟る。
「フフフ…そうかそうか。進行方向からして、病院に行って医療品を回収する気だったんだろ?
だったら悪い事は言わねぇ、病院に行くのは止めにして素直に俺の交渉に応じな。
あそこは今殺し合いに乗ってるもう一人の奴が占拠してる。
行った所で無駄な戦闘に巻き込まれるだけだぜ」
今の病院は危険――体の数箇所に傷を負っている志々雄はそう証言するが、
志々雄に対する二人の疑念は全く晴れる事は無い。医療品を持っているという事は
一度病院に行った事は確実だろうが、今負っている傷も病院ではなく
他の場所で誰かに付けられたものだという事も十分考えられる。
こんな男など信用出来たものではないのだから。
「お前の言葉を信じろと言うのか?」
「フ、まあ信じる信じないはお前らの勝手だけどよ。
いずれにしてもこの交渉を断った所でお前らには何の得も無いと思うがな」
「………」
――どうするか。志々雄の主要武器は恐らくあの腰に提げた刀。
殺傷力が高くそれでいて間合いを生かした戦闘が可能な厄介な武器――。
そして私には分かる。あれは違う事無き『剣客』の目だ。少なくとも相当の実力者である事は間違いない。
二対一とはいえ、武器がネギしか無い私と近接戦闘でしか決定打を与えられない美鈴では
この男相手に勝ちを収めるのは難しいだろう。よしんば勝てたとしてもかなりの痛手を負う事は必至――。
メタナイトが思考を巡らせる一方で、美鈴は念を入れて志々雄に問い質す。
「…拒否すれば…私達を殺すつもり?」
「さあ、どうだろうな」
志々雄はわざとらしく曖昧に答える。その表情は依然として余裕であった。
まるでこの交渉の場の主導権は完全に握っていると主張するかのように。
――やはり、この場はあえて志々雄の言う通りにしておくのが得策か。
こいつは何時どのように動くか分かったものではないが、
何も無い内から私達を殺しにかかるような無意味な行動にはまず出ないはず。
志々雄は常に注意深く監視しておけばいいし、こちら側の戦力が磐石なものとなった時に倒せばいい。
首輪解除班の保護という重要な役割を担っている私達にとっては、こちらが正しい選択のはずだ。
メタナイトはやがて結論を出した。
「…いいだろう。その話に乗ってやる」
「!? メタさん、いいんですか!?」
「同盟…成立だな」
慌てふためく美鈴を尻目に、メタナイトは今も尚、志々雄を鋭く睨みつけていた。
志々雄はそれにも動じず、相変わらず不敵な笑みを絶やさない。
かくして一時的な戦線協定を結んだ三人は図書館へ戻るべく歩き始める。
ただ――この一件で二人、特にメタナイトの志々雄に対する敵意は一層強まったようである。
メタナイトはやや離れた後方を歩く志々雄に対して心中で言い放つ。
――お前が私達を利用し、このゲームを優勝するつもりなのであれば…
私もお前を存分に利用してやろう。望む所だ。
こうなった以上、もう誰一人としてその私欲に満ちた思想の下に振るわれる剣の餌食にさせはしない。
志々雄真実――お前の野望はいずれ私が必ず打ち砕いてやる。
仁義を貫く仮面の騎士と幕末の炎から出でし修羅。
この二人の間にまた一つ、新たな因縁が生まれようとしていた。
【D-4 草原/1日目・昼】
【志々雄真実@るろうに剣心(フタエノキワミ、アッー!)】
[状態]:数箇所軽い刺傷、右足に傷。いずれも処置済み
[装備]:日本刀@現実
[道具]:支給品一式、医療品一式、禁止エリア解除装置@オリジナル、スタポカード刺しクリップ@
Ragnarok Online、リボン@FFシリーズ、
[思考・状況]
基本思考:弱肉強食の理念の元、全員殺害し元の世界に戻って国盗りの再開をする。
1:メタナイトと美鈴、それに追随する参加者を利用する
2:出来るだけ多くの参加者と接触し、情報を得る
3:余裕があれば禁止エリア解除装置を使った盛大な罠を張る
4:小僧(鏡音レン)を利用する。ドナルドがどう動くか気になる
5:次会ったらDIOを殺す
6:無限刃が欲しい
7:機会があれば首輪を調べる、その為の人材なら生かしてもいい
8:鳥頭(相楽左之助)は優先的に殺す
[備考]参戦時期は剣心が宗次郎戦を終えた時期からです。
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]顔面打撲、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:図書館へ戻る
2:志々雄真実を警戒
3:美鈴の知り合いの情報集め
4:殺し合いに反対する者を集める
5:脱出方法を確立する
6:触覚の男との決着
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※北に目撃した参加者は誠、南に目撃した参加者はキョン子とアカギです。
※E-2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました
【紅 美鈴@東方project】
[状態]健康、フランドールへの絶対的な忠誠
[装備]無し
[道具]支給品一式
[[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:図書館へ戻る
2:志々雄真実を警戒
3:日没までに映画館へ戻りフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
4:十六夜咲夜を警戒
5:知り合いの情報集め
6:殺し合いに反対する者を集める
7:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい
8:脱出方法を確立する
9:テトを探す
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。
|sm137:[[極みスイーツ(笑)~フジキ!スタンド!マッハキャリバー!]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|sm140:[[違う自分 -ADVENT-]]|
|sm138:[[矛と盾の話――PRIDE――]]|[[投下順>101~150]]|sm140:[[違う自分 -ADVENT-]]|
|sm122:[[DIO様は本当に頭の良いお方]]|志々雄真実|sm:[[]]|
|sm128:[[テーレッテー!なんと腰抜けな神々の遊び!]]|メタナイト|sm:[[]]|
|sm128:[[テーレッテー!なんと腰抜けな神々の遊び!]]|紅美鈴|sm:[[]]|
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*The last wolf strategy ~志々雄真実の策略~ ◆4LgZV6zKDw
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「よし…これならもう問題ねえ」
志々雄は医療品を取り出し、つい先刻負わされた傷の処置を済ませる。
自身が拠所とする、徹底した"自然"の象徴とも言える信条―『弱肉強食』に従い、
当初は参加者を見つけ次第、すぐに殺しにかかるつもりでいた志々雄であったが、
そんな彼も行動指針を変える必要性を薄々感じ始めていた。
「さて、どうするか…どうやらこの殺し合い、簡単に勝ち残れるという訳でもねェみてえだからな…」
DIOと名乗る男との戦いを経て、志々雄にはある一つの懸念が生まれていた。
それは、DIOのような未知の能力―もしくはそれに準じる支給品を持った参加者が何人存在しているのか、という事である。
病院での一戦において志々雄が体験した、数々の信じ難い出来事――
DIOが何も無い所から突如スタンドと呼ばれた人型の物体を出したかと思うと、
いつの間にか投げつけられていた凶器がほぼ零距離まで迫っており、志々雄は避ける事が出来なかった。
通常、物を投げつける際には明らかな予備動作が発生するものだし、
これまで幾多もの死線を潜り抜けてきた自分がその程度見逃すはずが無い、そう思っていた。
しかし、あの一瞬で得られた感覚は――気がついたら凶器が目の前まで迫っていたという事、
ただそれだけだった。
奇妙な能力を持っていたのはDIOだけではない。
あの時、DIOと共に攻撃してきた生きた人形――彼女も何も無い所から自在に蔓を出し、操っていた。
尤も、DIOの策に嵌ったことで既に事切れている故、それについて深く考える必要は無くなったのだが。
いずれにせよ、このような未知の能力を携えた参加者とこれからも出くわす可能性は高いだろう。
当然そんな相手に、何の対策も無しに挑むのはあまり利口なやり方とは言えない。
考慮すべき点はもう一つある。志々雄自身が抱える、戦闘における制限時間だ。
志々雄は明治政府の裏切りによって全身を焼かれて以後、身体の汗をかく組織を完全に失い、
発汗による体温調節が一切出来ない体となっている。反面、これによって体内で無尽蔵に高まり続ける熱こそが、
志々雄がその人間離れした力を引き出す為の重要な源でもあった。
しかし――それでも身体の限界というものは存在し、15分以上の戦闘は命に関わってくる。
今は主催者達の手によって体温上昇の速度がある程度制御されている状態にある為に
15分以上の戦闘も不可能では無くなっているかもしれないが――、
いずれにしても志々雄にとってはこれが致命的な弱点である事に変わりは無い。
元より、長時間の激しい活動が出来ないというこの弱みがあったからこそ
志々雄は十本刀を始めとする大規模な軍勢を組織し、慎重かつ堅実に国家転覆を狙っていたのである。
自身が抱えるこの弱点と併せ、常識の枠を超えた方法で攻撃を仕掛けてくる相手と
連戦を行うと仮定した場合、優勝まで辿りつくのは困難を極めるだろう。
況してや複数で挑んでこられようものなら更に勝率は落ちる。
ならばこの殺し合いを勝ち残る為に、単純な戦闘能力以外に要となるもの――それは『情報』と『手駒』。
予め危険性の低い参加者との間でしばらく同盟を組み、
各参加者の支給品、能力、戦術、弱点などの情報が得られれば、それら各々に応じた対策も立て易くなる。
運が良ければ、首輪に関する有益な情報も手に入るかもしれない。
更に一度集団に潜り込みさえすれば、
高い戦闘能力を有する参加者の襲撃を受けた際もある程度有利な状況に立てる。
いざという時は、同行する参加者を囮に使って攻勢に出る、一時撤退するといった手段を取る事も可能だ。
同盟は利用価値が無くなった時に破棄し、その後はまた他の参加者に接触して同じ事を繰り返していけばいい。
(互いに利用し利用される関係――、俺に勝てるという確信が持てる奴や余程自尊心が強い奴以外は
この交渉に応じざるを得ないだろうさ。例え信念が違えど、少しでも長く生き残ろうとするなら
その意志に見合った戦力ってヤツが不可欠だからな…)
あれこれ思案を続ける志々雄は、やがて前方から二つの人影が迫ってくるのを認識する。
――同盟を組むなら、それなりの実力があってかつ少人数で動いている奴が理想。
殺し合いに乗っていようがいまいが、利用する以上は同じ事だ。どちら側であろうと問題は無い。
早速、奴等に交渉を持ちかけるとしよう。
志々雄は全く怯む事無く、そのまま歩を進めた。
"二人"は、医療品を回収すべく病院を目指していた。
絶え間ない緊張状態の故か、例によって二人の間には殆ど会話が見られない。
その理由は緊張だけではなく、美鈴が一人苦悩していた事にもあった。
「………」
――結局どうする事も出来なかった。
図書館から離れた今となっては、もう既に藤崎の命がバクラの手に掛かっていてもおかしくは無い。
彼が死ねば、誰にも事実を伝えずに見て見ぬふりを続けていた私も共犯には違いないのだ。
そう考えると、果てしない罪悪感に襲われる。
会って間も無いとはいえ、共に生きて脱出したいと願う仲間を裏切るような真似はしたくなかった。
もっと正確に言うなら、ゲームに乗っている、乗っていないにかかわらず
故意に人を殺めるような残虐な行為に走りたくはなかった。
だが、脱出を成功させる為にもある程度の犠牲という物はやはり付き物なのかもしれない。
今は義に溢れる愚策よりも非情に徹した最善策を選ばなければ活路は見出せないのかもしれない――。
(でも…そしたら私自身の意志は―――)
「美鈴!」
足元から大きく響いた渋い声で、私は我に返る。
視線を下ろすと、ゲーム開始直後からずっと行動を共にしていた
一頭身の騎士――メタさんがこちらを鋭く見据えていた。
「図書館を出てから随分と考え込んでいるようだが……何か私に隠し事をしていないか?」
私は思わず動揺する。確かに図書館を出てからは
殆どメタさんに意識を向けていなかったが、勘付かれていたとは。
「正直に話せ。内容しだいではあるが、極力お前にとって不利益な行動は取りたくない」
「…別に、私は何も…」
「言え」
「………」
今になって思えば――メタさんは鋭い。図書館に戻った時に藤崎が死んでいれば、
図書館で待機していた人達を疑うという事も十分考えられる。
今更私達に医療品を取りに向かわせたバクラの真意を明かした所でどうにもならないだろうが、
下手に真相を隠し続けてメタさんの信頼を失うような事だけはしたくない。
せめて彼には、今ここで真実だけでも伝えておくか――。
私は葛藤の末、白状する事に踏み切った。
「……ドナルドに、藤崎は足を引っ張る恐れがあるから始末してくれと頼まれたんです」
「なに……?」
メタさんは少し驚いた様子を見せた。予想通りの反応だ。
私はメタさんの反応を伺いつつも、力の無い口調で言葉を紡ぐ。
「バクラにも同じ事が頼まれたんですが、彼は何の躊躇いも無くその仕事を引き受けました…。
あのトキって人を助ける為の医療品を私達に取りに行かせたのはただの口実で、
本当はバクラが安全に藤崎を殺せる時間を作る為の策略なんです」
「………」
メタさんは暫く何も言わなかった。
仮面で顔を隠している為に表情は全く読めないのだが、
私にはその時、仮面の穴から見える目の色が微妙に変わったかのように思えた。
「…成る程。自分には藤崎を殺す事は出来ない。かと言って計画を阻止したりすれば、
首輪解除の為の頼みの綱であるドナルド達との間で歪が生じる。
だからその場を黙ってやり過ごすしか無かったという訳か」
「…はい」
一応メタさんは理解を示したが、声の調子が普段と違っている。
やはり怒っているのだろうか。私が不安に思っていると、メタさんは再び口を開いた。
「…自分を責める必要は無い。このような自分の命が懸かった状況に立ち会えば、
第一に何を優先すべきかという迷いが生まれるのは至極当然の事だ」
「………」
メタさんの口から出てきた言葉は、私に対する非難でもなく藤崎に対する哀れみでもなく。
私情や驕りといったものを一切感じさせない、妙な説得力のある言葉だった。
「メタさん…怒ってないんですか?」
「別に怒ってなどいない。私としてはこれで藤崎が死ぬのは全くもって不本意だが、
美鈴が悩んだ末に取った行動である以上は仕方が無いというものだ」
やはり彼もこんな不確かな要素だけを理由に藤崎を殺すのは良しとしなかったようだ。
勿論私にとってもそれが本心だった――にも関わらず、最終的には自らの保身を考える余り
罪の無い人を見殺しにする道を選んでいた。
メタさんの怒りを買わなかったのは良かったが、未だ罪悪感は消える事無く私の心に重く圧し掛かる。
「メタさん、私は…」
「美鈴」
私の心境を知ってか知らずか、メタさんは私に言い始める。
「お前が元の主やフランの為だけに戦うというのなら、それでも構わない。
恩に報いるべく最後まで忠義を貫く、それもまた武人としての一つの道というものだ」
メタさんの言葉を聞いて私は思い出す。
そう、今私がすべき事はフランドール様をこの危険なゲームから護り通す事。それが最優先だ。
が、それ以外にも私個人が掲げる意志――果たすべき目的はあったはず。
「だが、私は出来る限り多くの参加者を救いたいと考えている。
その為ならゲームに乗った者を殺す事も自分の命を投げ出す事も厭わない。
例え途中で足手纏いとなる者がいようとも、その者を切り捨てるような真似は絶対にせん。
この目に映る人々は最後まで護り通す――これが私の果たすべき士道だ」
思わず私は絶句する。何て強い騎士道精神を持つ人なんだろう。
私欲や邪念といった普遍的な感情に一切とらわれず、ここまで一つの正義や信念に忠実な人は見た事が無い。
私はメタさんを改めて尊敬し、同時にこの武人らしい生き方をもっと見習いたいと思った。
参加者を救いたいという意志の強さは私とて変わらない。
迷いをほぼ完全に断ち切った私は決意した。
「…私も考えている事はメタさんと一緒です。
これからは絶対に、誰一人として殺させはしません」
例え自分が死ぬ結果になろうとも、最後までレミリア様とフランドール様――
そして他の力無き参加者の為に戦う。もう二度とこんな道は選ばない。絶対に。
「…そうか。ならば私はこの先何があろうともお前の味方でいる事を誓おう」
「こちらこそ。私も最後までメタさんに付いていきます」
色鮮やかに虹色な門番と、一頭身の仮面の騎士。
一見奇妙な間柄ではあるが、こうして二人の間には決して断ち切れる事の無い信頼関係が築かれた。
談義を終えた二人は再び歩き出し、やがて病院と思わしき建物がはっきりと見え始める。
「…あれが病院ですね。誰かいるでしょうか?」
美鈴が何気なくメタナイトに言葉を掛けるが、彼は返答を返す代わりにネギを構える。
「…構えろ、美鈴」
メタナイトの言葉に反応して視線を戻した美鈴は目を見張る。
そこに居たのは、嫌でも目を引かせるような一種異様な姿をした男。
全身に隈なく巻かれた包帯、それを覆う青い着流しと黒いブーツ、
そして包帯の隙間から覗かせる、凶暴な野獣の如き赤い眼。
「全身包帯の男…まさかあれが…」
「ああ、ドナルドやレンが言っていた特徴と寸分違わず合致している。
間違いなく――あの男が志々雄だろう。」
ドナルドやレンによると殺し合いに乗っている側――即ち、即刻で排除すべき危険人物である。
メタナイトと美鈴は志々雄に向かって鋭い視線を投げかけながら、相手の出方を伺った。
対する志々雄はじっと身構えている二人の方へゆっくりと歩み寄りつつ思考を働かせる。
一対二という、あちら側にとって優位な戦局でありながら一向に襲ってこない所を見ると
殺し合いに乗っている訳では無さそうだ。「しめた」と思った志々雄は即座に両手を挙げ、二人を制止する。
「まあ待て。俺はお前らに危害を加える気は無い。だからここはひとまず、情報交換と行こうぜ」
志々雄は攻撃を仕掛けることなく話を持ち掛けるが、二人は戦闘体勢を解こうとはしなかった。
事前に目の前に居る相手がゲームに乗っていると聞かされているのだから当然と言うべきだろう。
しかし、それ以上にこの志々雄真実という男が、そのあまりにも異質な風貌もあってか
直接肌で感じ取れる程の危険な気配を醸し出していたからである。
メタナイトは、志々雄がいつ攻撃して来てもいいように万全な体勢を保ったまま口を開いた。
「…貴様が志々雄真実だな。」
「あん?何故俺の名を………ああ、成る程。あの道化師と小僧の二人組に接触したって訳か」
志々雄は冷笑を浮かべながら納得した様子を見せた。
血肉を貪る獣をそのまま生き写したかのようなその目はとてつもない殺気を放っている。
「俺の事を知ってるなら話は早い。いかにも、俺が志々雄真実だ。
そっちも名乗りぐらいは上げてくれてもいいんじゃねえか」
「…紅美鈴、です」
「…メタナイトだ」
二人は警戒を緩める事なく、淡々と質問に答える。
「フ、礼儀を弁えてるじゃねえか。
しかし、こんな一頭身の化け物まで参加させられていたとはな。正直驚いたぜ」
「! …化け物……」
辺境の星、ポップスターで生きるメタナイト自身、これまで人間と呼ばれる種族と関わった事は殆ど無い。
だがそれでも、人間相手に化け物等と形容されたのは初めてだ。
屈辱的な言葉を浴びせられ、ゼロの仮面の下に隠されたその顔に薄っすらと青筋が浮かぶ。
そんなメタナイトの心情を悟った美鈴が慌てて彼に普段の平静さを取り戻させようとする。
「た、ただの挑発ですよ!落ち着いてくださいメタさん!」
「ム……」
確かに彼女の言う通りだ。
戦いの場において、一時の感情に振り回されるようでは後々それが死に繋がる。
メタナイトは込み上げてくる怒りを何とか抑えた。
その様子を眺めていた志々雄はくつくつと笑いながら、また嘲笑うかのような口調で言い始める。
「おっと、気に障ったか?まあ口さえ利けるんならどうだっていいぜ。
ところでよ、お前ら俺と同盟を組む気はねえか?」
「「!?」」
志々雄の発言は二人にとって予想だにしないものであった。
美鈴はしばらく動揺していたが、一方でメタナイトは志々雄の狙いを悟ったらしく、咄嗟に言葉を返す。
「…私達を利用するつもりか」
即座に自身の思惑を言い当てられた志々雄は、
逆に「思い通り」と言わんばかりの不敵な笑みを溢し、説明を始める。
「察しがいいな……そう、お前らが知っての通り、俺はこの殺し合いに乗ってる。
だが、そう簡単には生き残れそうにもねぇって事が分かってきたんでな。
そこで一時的な協力者って奴が欲しい所なのさ」
「………」
二人はただ無言でそれを聞く。
「同盟を組む事に賛成するってんなら、俺が持つ支給品の一部や情報は全てお前らに提供しよう。
そしてお前らと同行している間でなら、俺が許す限りそっちの行動指針に従って動いてやる。
大方お前らも殺し合いに乗ってる連中は容赦なく殺っちまおうってクチだろ?
それくらいはお前らの目を見りゃ分かるぜ」
――読まれている。やはりドナルドやレンの言ったように只者では無いらしい。
志々雄の洞察力を見せ付けられた二人は心の中でそう確信する。
「どうだ、お前らにとっても悪くねぇ条件だと思うんだが?
この医療品一式も必要とあらば、いつでも使わせてやるぜ。」
志々雄は傍に置かれた救急箱のような容れ物を指差した。
医療品の回収が目的であった二人は当然それを聞いて驚かざるを得なかった。
「医療品だと?」
メタナイトがあからさまな反応を示したことで、志々雄は二人の目的をすぐに悟る。
「フフフ…そうかそうか。進行方向からして、病院に行って医療品を回収する気だったんだろ?
だったら悪い事は言わねぇ、病院に行くのは止めにして素直に俺の交渉に応じな。
あそこは今殺し合いに乗ってるもう一人の奴が占拠してる。
行った所で無駄な戦闘に巻き込まれるだけだぜ」
今の病院は危険――体の数箇所に傷を負っている志々雄はそう証言するが、
志々雄に対する二人の疑念は全く晴れる事は無い。医療品を持っているという事は
一度病院に行った事は確実だろうが、今負っている傷も病院ではなく
他の場所で誰かに付けられたものだという事も十分考えられる。
こんな男など信用出来たものではないのだから。
「お前の言葉を信じろと言うのか?」
「フ、まあ信じる信じないはお前らの勝手だけどよ。
いずれにしてもこの交渉を断った所でお前らには何の得も無いと思うがな」
「………」
――どうするか。志々雄の主要武器は恐らくあの腰に提げた刀。
殺傷力が高くそれでいて間合いを生かした戦闘が可能な厄介な武器――。
そして私には分かる。あれは違う事無き『剣客』の目だ。少なくとも相当の実力者である事は間違いない。
二対一とはいえ、武器がネギしか無い私と近接戦闘でしか決定打を与えられない美鈴では
この男相手に勝ちを収めるのは難しいだろう。よしんば勝てたとしてもかなりの痛手を負う事は必至――。
メタナイトが思考を巡らせる一方で、美鈴は念を入れて志々雄に問い質す。
「…拒否すれば…私達を殺すつもり?」
「さあ、どうだろうな」
志々雄はわざとらしく曖昧に答える。その表情は依然として余裕であった。
まるでこの交渉の場の主導権は完全に握っていると主張するかのように。
――やはり、この場はあえて志々雄の言う通りにしておくのが得策か。
こいつは何時どのように動くか分かったものではないが、
何も無い内から私達を殺しにかかるような無意味な行動にはまず出ないはず。
志々雄は常に注意深く監視しておけばいいし、こちら側の戦力が磐石なものとなった時に倒せばいい。
首輪解除班の保護という重要な役割を担っている私達にとっては、こちらが正しい選択のはずだ。
メタナイトはやがて結論を出した。
「…いいだろう。その話に乗ってやる」
「!? メタさん、いいんですか!?」
「同盟…成立だな」
慌てふためく美鈴を尻目に、メタナイトは今も尚、志々雄を鋭く睨みつけていた。
志々雄はそれにも動じず、相変わらず不敵な笑みを絶やさない。
かくして一時的な戦線協定を結んだ三人は図書館へ戻るべく歩き始める。
ただ――この一件で二人、特にメタナイトの志々雄に対する敵意は一層強まったようである。
メタナイトはやや離れた後方を歩く志々雄に対して心中で言い放つ。
――お前が私達を利用し、このゲームを優勝するつもりなのであれば…
私もお前を存分に利用してやろう。望む所だ。
こうなった以上、もう誰一人としてその私欲に満ちた思想の下に振るわれる剣の餌食にさせはしない。
志々雄真実――お前の野望はいずれ私が必ず打ち砕いてやる。
仁義を貫く仮面の騎士と幕末の炎から出でし修羅。
この二人の間にまた一つ、新たな因縁が生まれようとしていた。
【D-4 草原/1日目・昼】
【志々雄真実@るろうに剣心(フタエノキワミ、アッー!)】
[状態]:数箇所軽い刺傷、右足に傷。いずれも処置済み
[装備]:日本刀@現実
[道具]:支給品一式、医療品一式、禁止エリア解除装置@オリジナル、スタポカード刺しクリップ@
Ragnarok Online、リボン@FFシリーズ、
[思考・状況]
基本思考:弱肉強食の理念の元、全員殺害し元の世界に戻って国盗りの再開をする。
1:メタナイトと美鈴、それに追随する参加者を利用する
2:出来るだけ多くの参加者と接触し、情報を得る
3:余裕があれば禁止エリア解除装置を使った盛大な罠を張る
4:小僧(鏡音レン)を利用する。ドナルドがどう動くか気になる
5:次会ったらDIOを殺す
6:無限刃が欲しい
7:機会があれば首輪を調べる、その為の人材なら生かしてもいい
8:鳥頭(相楽左之助)は優先的に殺す
[備考]参戦時期は剣心が宗次郎戦を終えた時期からです。
【メタナイト@星のカービィ(メタナイトの逆襲)】
[状態]顔面打撲、ゼロマスクメタナイト
[装備] ネギ@初音ミク(お前ら全員みっくみくにしてやるよ)、ゼロの仮面(顔が入るサイズに改造)@コードギアス
[道具]支給品一式、バトルドーム@バトルドーム 、割れた仮面@星のカービィSDX
[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:図書館へ戻る
2:志々雄真実を警戒
3:美鈴の知り合いの情報集め
4:殺し合いに反対する者を集める
5:脱出方法を確立する
6:触覚の男との決着
※呂布との戦いでネギが2cmほど短くなりました。
※北に目撃した参加者は誠、南に目撃した参加者はキョン子とアカギです。
※E-2付近の川底で何か見たようです(気のせいという可能性もあります)
※フランドールと情報交換をしました。また、東方project出展のキャラについてそれなりの情報を得ました
【紅 美鈴@東方project】
[状態]健康、フランドールへの絶対的な忠誠
[装備]無し
[道具]支給品一式
[[思考・状況]
基本思考:参加者の救出及びゲームからの脱出
1:図書館へ戻る
2:志々雄真実を警戒
3:日没までに映画館へ戻りフランドールと合流する。フランドールの意思を最優先
4:十六夜咲夜を警戒
5:知り合いの情報集め
6:殺し合いに反対する者を集める
7:ちゃんとした剣をメタさんに持たせたい
8:脱出方法を確立する
9:テトを探す
※主催が簡単に約束を守ってくれる、とは考えていないようです。
※フランドールと情報交換をしました。
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