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「狂喜「サウンドプリンセス」」(2009/03/29 (日) 19:53:09) の最新版変更点
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*狂喜「サウンドプリンセス」◆CqqH18E08c
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――君は実に馬鹿だな、
私が馬鹿……?
やっぱり……嘘をついてたんだ。嘘付き。
私は……私はテトちゃんのことを友達だと思っていたのに……
テトちゃん……テトは私のことを馬鹿だと思っていた……
私は勝手に信じて、勝手に友達だと思って、勝手に嘘に騙されて……
――私の嘘を乗り越えさせてくれた
私は……助けてあげたのに……友達だと思っていたのに……
なんで……なんで……最初っから……最初っから私を嘘から乗り越えるためだけに利用するつもりだったの……?
やっぱり酷いよ……嘘付き……
――ミクちゃんは嘘をきっと乗り越えてくれるんだから
嘘を乗り越えるなんて……今まで友達だと思っていたのに……
嘘を勝手について置いて乗り越えてくれるなんて勝手に思ってた……?
なによそれ……嘘をついて置いて……いつかその嘘に気付くって思ってた……?
あはははは、私本当にただの馬鹿じゃない。
私はずっとテト……嘘付きに騙されていて。その嘘付きを信じていて。
その嘘付きはいつ嘘に気が付くのか心の中で笑ってたってこと……
友達だと思ってたのに……私が勝手に思い込んで騙されていただけ……
嘘付き……嘘付き……
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
本当に馬鹿じゃん私、嘘嘘嘘。嘘に騙されっぱなし。
はははははは。嘘吐きさん。あなたもたまには正しいことは言うんだね。
確かに私は馬鹿だよ騙されてることにも気が付かない馬鹿だよ。
「でもミクちゃんは騙されてることに気が付いたじゃないか
命令した通り動く機械は絶対にミクちゃんを裏切らないし僕もミクちゃんを裏切らないよ
シゲルだってそうさ、僕は見たことがないけれどミクちゃんのご主人さまも裏切らないさ、絶対に」
「ありがと、ルイージさん。気が付けたならまだなんとかなるよね」
「なんとかなるさ、だってミクちゃんは騙されていることに気が付いたんだもの」
そうよねルイージさん。機械は私を裏切らない。
ルイージさんも私を裏切らない。ご主人さまも私を裏切らない。シゲルも私を裏切らない。
裏切らない仲間が今の私に入る。テトなんていう上辺だけの友達じゃない裏切らない仲間が今の私の周りに入る。
この仲間がいるなら嘘吐きにも騙されることなんてないはず。
嘘吐きさんにはもう二度と騙されない……
そうだ、もう一人の嘘吐きさんはどこに行ったんだろう?
嘘吐きさんはコロシテシマワナイト
もう、騙されるのは嫌だから。見たくない現実を見るのは嫌だから。
――ミクちゃん大丈夫?
え……どうして……どうしてあなたが生きてるの!!私は嘘付きの……嘘付きの重音テトを殺したはず!!
死んでまで私を騙そうとするの!!私はあなたを信じてたのに!!友達だと思っていたのに!!
どうして……どうして嘘をつくの!!嘘吐きさんは死んでまで嘘をつき続けるの!?
嘘吐きはみんなみんな消えてしまえばいい!!私にはルイージさんがいる、ご主人さまがいる、シゲルがいる!!
仲間がいる!!私を騙そうとする嘘吐きはもうみんな死んでしまえ!!
死んでしまえばいいんだ!!
そう、死ね!!
死んでも生き返るようなら私がまた殺してあげるから!!
―― ……もう、騙しは効きませんよ
えぇ、騙しはもう私には効かない。私は仲間を信じるから。
嘘吐きを信じたりしないから。
ルイージさんは私をちょっと疑ったけれど話したら信じてくれた。
嘘吐きさんには信じて貰えなくても、仲間になれる人なら信じて貰えるんだ。
仲間じゃない人なんていらない。
「そういえばまだあの嘘吐きさんは生きてるかな?
シゲル、あの嘘吐きさんが生きてるなら探して殺してきて。
ははははははははははははははははははははははああっはっはっはっはっはっは!!」
◆◆◆
機械の少女の、悲鳴とも歓喜とも怒りともとれる声が響く。
動く植物は少女の命令に従い嘘吐き――七夜志貴を探す。
もともと七夜はそこまで遠くまで吹き飛ばされたわけではないのですぐに見つかった。
気絶はしているようだが呼吸ははっきりとしている。
それを確認するとシゲルは少女の命令を実行するために自らの種を弾丸として射出した。
「ッ!?」
射出された種が胸に直撃したことで七夜は意識を取り戻す。
意識を取り戻すと同時に危険を察知しシゲルから距離を取るがそこにいつものような動きのキレはない。
シゲルの種ガンは彼の肋骨を打ち砕いていたのだ。
――咄嗟に飛んだが骨がいかれている……?
気絶している間に何が起こったのか良くわからんがとにかく長期戦は不利のようだな。
七夜はそう判断するとシゲルの元へ駆け出す。
シゲルも彼の方を向き迎撃の態勢を整える。
一人と一匹の間の距離はみるみる内に縮まりそして接触する。
「動く植物か……面白い!!」
彼はシゲルが葉をビンタのように打ちつけてくるのを軽くいなしナイフを胴体に突き刺す。
手ごたえは十分……なのだがシゲルに大きなダメージを与えた様子はない。
七夜はそれに気が付くと即座に反転し距離を取る。
植物であるシゲルには遠距離攻撃の手段がないと判断してのことである。
しかしそれは大きな間違い。先ほどの種ガンのようにかしこさ技を主軸にしているあおばシゲルはむしろ遠距離戦の方が得意なのだ。
ビンタやつっつきなどといった近接技もあることにはあるが当たったとしても屁のような威力しかない。
もっともそれをこの一瞬で見分けろと言うのは酷な話だが。
『せーのっ!!』
シゲルの顔(?)である花から連続して種が高速で飛ぶ。
七夜が種をかわしシゲルの攻撃範囲から離脱すると種は先ほど七夜がぶつかった木に激しい音を立て次々と着弾する。
それは轟音というほどではないが大きな音を聞いただけでその種一つ一つに洒落にならないレベルの威力があることがわかる。
彼をそれ聞き多少毒を吐く。
「今後のことを考えると一発でも貰ったらまずいか……」
七夜が間合いを詰めようと走る。
それに対しシゲルが種マシンガンを放ち再び間合いを維持しようとする。
それが何度続いただろうか?長期戦の様相を呈し始め七夜が焦り始めたころ突如として今まで間断なく放たれていた種の弾幕が止んだ。
七夜を狙い種を放っていたシゲルは花を下に垂らしたまま硬直し動く様子はない。
「罠か……?」
実際は罠でもなんでもなくただ所謂意味不明状態にシゲルが陥っただけの話である。
だがこれもまた初見で意味不明状態なんていうものを理解しろというもの酷な話。
今までの状況を考えると延々と続く攻防に痺れを切らした変な植物が一撃必殺のための罠を貼っていると考えても仕方がないのだ。
七夜が思考する短時間膠着状態が続く。
用心しながら七夜がじりじりと距離を詰める。だが先ほど種の弾幕が突然止まったのと同様にシゲルが意味不明状態から復帰し活動を再開した。
先ほどまで種を放っていたのとは明らかに違うモーションを取る。
種の弾丸ばかりを用心していた七夜は肉体的疲労もありその明らかに先ほどまでとは違う何かを吐きだすような技に対応が遅れる。
彼はシゲルから放たれた花粉とミツをもろに喰らってしまう。
目は咄嗟に閉じたため目をやられ視界を奪われることだけは避けたものの、花粉とミツが服がべたべたと体にひっつき動きにくい状態に陥ってしまう。
今現在七夜が着ているのはごく一般的な学生服。
普通の服でも水にぬれれば体に張り付き動きを阻害する。学生服ならば、かかったのがミツであるならなおさらである。
この状況ではさきほどまでのように種を交わし間合いを取るといった行動をとり続けるのは不可能。
先ほどと同じことを繰り返せばやがて種ガンに当たってしまうのは明白である。
「シゲル?まだ終わらないの?」
先ほど七夜を機械で吹き飛ばした少女の声。
距離はそう遠くないように七夜は思えたが今の状態でシゲルの弾幕を交わしそこまでたどり着くことはほぼ不可能。
だがシゲルのもとまでたどり着きシゲルを殺すことは現状ではまだなんとか可能だと七夜は判断する。
彼は殺人鬼。相手が人でなくとも殺すのが仕事。
だからこそ彼は現状で動ける最大のスピードで動く。
シゲルと七夜の距離は負傷した状況でも七夜が安全に種をかわすために大きく開いている。
本来ならばこの程度は問題にもならないが負傷しミツのせいで動きを制限された状態では遠いな距離。
この距離を埋めシゲルの息の根を止めるために七夜は走る。
本来よりは遅いが一般人では反応することもできないだろう速さで一気に接近する。
――あと10歩
シゲルが放った種マシンガンがいくつか七夜に直撃し彼にダメージを与えるが止まらない。
反応を許さぬままに命を奪うべく一歩ごとに高速で駆ける。
――あと6歩
呟き距離を確認しながら七夜は駆ける。
シゲルは七夜の接近に反応し花粉を放とうとするが彼は同じ技を二度喰らうような人間ではない
葉団扇を振りシゲルの体勢を崩し花粉を無力化する。
――あと3歩
呟き七夜は攻撃の態勢に入る。
シゲルにこの状況で放つことのできるまともな技はない。
せいぜい突っつきぐらいだ。
だが七夜も体力を大きく消耗し七夜死奥義を放つことはできない。
それどころか閃の七技ですら完全に放つことができるかは危うい。
―― 七夜
七夜はシゲルに肉薄する。
ここまで近づいた以上負傷していようとシゲルに攻撃をかわされることはありえない。
後は今できる限り全力で放つのみ、勝負はついた。 そう彼は確信し言葉を発する。
「斬る……!」
シゲルの胴体を一気にナイフで切りぬき流れるようにして片方の葉を切り落とす。
種をなんども体に受けた七夜にはそれが限界だったがそれはシゲルに対して致命傷を与えるのにはそれで十分。
彼は近づいてきているであろうロボットに乗った少女に向き直ろうとし――
◆◆◆
手ごたえは十分だった。
植物の胴体を大きく切り抜き、腕のような役割を果たしていた葉の一方も切り落とした。
相手が人間であれば確実に致命傷。たとえ相手が植物でも大きな傷を付ければそこから枯れてゆく。
即座に致命傷というわけにはならなくとも俺は勝負に勝ったはずだ。
体も弾が当たったところ以外に痛みはない。
あの近距離でなにか攻撃を喰らったということはないはず。
だが……ならなぜ……なぜ俺は倒れている。
なぜこんなにも体が重いんだ。
仰向けに倒れた俺の眼に映るのは胴体に小さな傷をつけた片方の葉を失った植物の姿だった。
なぜ胴体の傷があんなに小さい……俺は間違いなく大きく切ったはず。
あれは記憶違いで俺が妄想の中だけで切ったというわけじゃない。手ごたえも確かだった。
だから葉が片方切り落とされている。ならばなぜ……なぜあんなに傷が小さいんだ。
俺がそんな思考をしている間にロボットが近づく。
体が動くならば無防備な乗り手を殺しに行けるが今の俺では到底無理な話。
今までで感じたことがないほど距離を遠く感じる。
「嘘吐きさん、お気分はいかが?」
ロボットの上から俺を見下ろす少女。
その少女の瞳は狂気に満たされておりなにか俺と同じようなものを感じた。
狂ってるという言い方は適切ではないのだろうが狂ってるとしか言いよう無い何か
それが何かを理解するための時間はもう俺には残されていないようだった。
「あはははははは、嘘を吐くからこういうことになるんだよ
なにか言い残したいことある?私はとってもやさしいから嘘吐きさんの言葉でもちゃんと聞いてあげるんだ」
まったく狂ってるな。
これで優しいなんて殺人鬼の俺よりも狂ってるじゃないか。
少女はクスクスと笑いながら好奇の眼で俺を見ながら答えを待っている。
どうやら今の俺に選択権は無いらしい。
「言い残したいこと……そうだな、俺とお前は同類ってことかな」
「私は嘘吐きなんかじゃないよ、うふふ。
嘘吐きさんは最後まで嘘吐きなんだね。私があなたと同類なんてはずがないじゃない
それじゃ、バイバイ」
そんな言葉とともにロボットの足が静かに迫る。
別に死ぬのは怖くないが俺が思うことは一つ。
もっとこの殺し合いを愉しみたかった。
「あははははははははははははははははははは。
嘘吐きさん、さようなら。
はははははは、あっはっはっはっはっはっはっは!!」
俺は狂った笑い声を聞きながら、冷たいロボットの足を見ながら――
&color(red){【七夜志貴@MUGEN 死亡】}
◆◆◆
「ははははははははははははははは」
肉を踏みつぶす嫌な音と共に少女の狂気の笑いが森に響く。
少女はクスクスと笑いながら一人呟く。
「これで嘘吐きさんはとりあえずいなくなったね」
「でも、ミクちゃん?友達が嘘吐きだったんだよ?
もしかしたら皆で寄ってたかってミクちゃんを騙してたのかもね」
「ルイージさん……そんなことは……
いや、テトちゃんが裏切ってたんだ。皆嘘吐きで私を騙してたってこともありえる……どうしよう……」
「そうそうミクちゃん、もっと疑わないと」
「そうだね……知ってる人だからって信用できるわけじゃないんだ。ありがとルイージさん」
「いやぁ、ミクちゃんのためだもの。このくらいどうってこと無いって」
クスクスと笑い続けその後も歌姫は一人呟き、独り芝居を続ける。
すでにその話す相手がこの世にないことを受け入れらぬまま。
この場にいるものが狂気に乱され理性を失った歌姫だと認められぬまま。
「それはそうと……シゲル、痛かったよね。あんなに切られてて
でも大分治ってるようで良かった。」
シゲルの胴体に付けられた大きな傷は既に再生を始めている。
確かに七夜がつけた傷は時間は致命傷だった。それは間違いない。
ならばなぜこうしてシゲルが生きているのか?
決してシゲルの生命力が異常だったとかそういうわけではない。シゲルが七夜に向け最後に使った技が原因なのだ。
シゲルが使った技はドレイン。相手の体力を吸収し自らの体力とする強力無比な技である。
戦闘の最終局面でこれを打ち放てばHPが逆転し勝利になることも少なくない多技である……が
元々この技は命中率が低く素早い相手には効果を発揮しにくい。
しかし七夜はミツと花粉を受け、スピードが低下した状態であり、さらに勝利を確信しシゲルの最後の反撃のことを考慮に入れていなかったため成功したのだ。
この中の要素がどれか一つでも欠けていれば七夜はシゲルに致命傷を与え、疲弊しながらも初音ミクへとどめを刺していただろう。
もっともこれが初音ミクにとって運が良かったといえるかどうかは微妙であるが。
七夜とテトの死体を見ることもなく……いや、見ようとせずに歌姫は歌う。
「さぁ早く遊びましょう、人形はどうしても喋らない」
その歌声は透き通り透明だった。
しかしその透明さは狂喜を隠すことなく全てを透かす。
「血をかけてあげるほら、真っ赤な色のドレスになったわ」
歌姫の悲しみ、喜び、怒り、憎しみ、その全ての感情を伝える狂喜の声。
その歌を聴くものがいればその物がどんな猛者であろうと恐怖に震えるほどの感情がそれには籠っている。
「髑髏で作った牢屋にまた1人閉じ込める」
ある意味では歌姫としての境地。
伝えたい思いを全てを歌として伝えること。それを完全に達成しているとも言えるこの歌。
短いフレーズではあるが過去ミクがうたったどんな歌よりも完成度が高いともとれる
歌姫の感情全てが籠り、全てを伝える狂喜。
「ねぇ悲鳴を聞かせてほしいの悲鳴を聞かせてよ」
歌の1フレーズを歌い終えると少女は植物へ語りかける。
狂気に囚われた美しい微笑みを浮かべながら。
「シゲル、葉っぱを切られちゃって痛かったよね……ごめんね……
これからも嘘吐きを倒すために無理させるかもしれないけどごめんね……」
動く植物は何も語らず少女の乗るロボットにつき従う。
彼女らはこれからどこへ向かうのか、どこへ狂喜を振りまくのかそれは彼女らしか知る者はいない
「 うふふふふ……ふ ふ ふ ふ
は は は は は は
あ は は は は は は は 」
――そして
だれも――
――いなく
なった――
◆◆◆
確かにそこには誰もいなくなった。
いなくなったのは生きる”人間”であるが。
皆さんお忘れではないだろうか?あの生首生物たちを
「ゆ……ゆっ!!」
戦闘の間どこかに隠れていたゆっくりはミク達がいなくなると現れ物言わぬ壊れた人形となったテトに語りかける。
しかし人形は喋らないからこそ人形なのだ。壊れた人形は二度と動くこともなく喋ることはない。
「ゆ……ゆ?……ゆ……」
ゆっくり霊夢は涙を流しテトに声をかけ続ける。
声をかけ続ければテトが生き返るかのように、テトがバーボンに引っかけただけで実は死んだふりをしているだけだと願うように。
一方ゆっくり魔理沙 は涙を流しながらもテトと七夜の支給品を四苦八苦しながら集める。
テトが死んでしまったという現実に苦しみながらすべきことはしなければならないという決意を秘め。
「ゆ……ゆっ!!ゆっ!!」
「ゆ……」
「ゆっ!!ゆっ!!」
「ゆぅ……」
ゆっくり魔理沙 はゆっくり霊夢をしかりつける。
今自分たちがやらないといけないことは何なのか諭すために。
だが別にゆっくり達が今しなくてはならないことなど存在しない。
ここにいきなり連れてこられ殺し合いの道具として支給された、ただそれだけでゆっくり達には闘う理由はないのだ。
この場ではあくまでゆっくり達は道具、テトのような参加者とは違う。
それこそ優勝者が決まるまで禁止エリアに隠れて震えておくという選択肢もあった。
しかしその選択肢を蹴ってまでゆっくり魔理沙 はしなければならないことがあるという。
「ゆっ!!ゆっ!!ゆ!!」
「……ゆ……ゆ」
テトが恩人だと言っていやミクの様子は明らかにおかしかった。
ミクは赤さんの言い方を借りるならば今、初音ミクは歪みある生き方をしているといえるだろう。
それを何とかするのが僅かな時間とはいえテトのそばにいたゆっくり達であり、赤さんの言葉を聞いたゆっくり達ではないか、そうゆっくり魔理沙 は言っているのだ。
赤さんが歪みねぇ生き方を伝えたのはゆっくり達とフラン、そしてすでにこの世にはいないテト。
赤さんが残した歪みねぇ生き方の道しるべはゆっくり魔理沙 の中には生き残っている。吹けば消える小さな火としてではあるが。
この吹けば消える小さな火も油の中に投げ込めば業火となり歪みすべてを焼き尽くし歪みを取り除くだろう。
だがこの場にその油となる人物はいない。
「ゆ……ゆ!!」
ゆっくり魔理沙は強引にではあるがテトのそばで泣き続けようとするゆっくり霊夢を連れどこかへ移動を始めた。
ゆっくり達がなにを望むのかは分からない、フランとの再会なのかテトの恩人であるミクの救出なのか
それともまったく別なことなのか。
ただ一つ分かることはゆっくり達がこれから進む道が果てしなく困難で遠い道のりだということだけだ
「ゆっくりしている暇なんてないよ!!しっかり急いで行ってね!!」
【A-3 森/一日目・午前】
【初音ミク@VOCALOID2】
[状態]:混乱、恐怖、精神疲労(限界突破)身体疲労(限界寸前)
[装備]:ルイージの帽子 魔導アーマー(左腕欠損、武装チャージ中1/2)@FF6
[道具]:基本支給品、あおばシゲル@MF2死ぬ気シリーズ
[思考・状況]
0.重度の疑心暗鬼
【オボロゲソウ「あおばシゲル」の思考】
[状態]大ダメージ(移動と戦闘に支障はない。ドレインの効果で再生中)
[思考・状況]
1:嘘付きからミクを守る
2:ミク……
【ゆっくり@ゆっくりしていってね】
[道具]ランダム支給品(0~2)基本支給品×2(食料・水-1) 三国志大戦カード(UC董白)@三国志大戦、 葉団扇@東方project 包丁@現実 射命丸文のカメラ@東方project
サバイバルナイフ@現実 偽起爆リモコン(4-5時間使用不可)@オリジナル 拳銃(0/6 予備弾24)@デスノート
[思考]0.不明
※指定された命令以上のことはできない。しかし殺傷力の高い技も存在する。
※ルイージの死体(帽子無)が放置されています
※初音ミクは今現在正常な判断ができません。精神に多大なショックを受けたようです。
※ゆっくり達がテトと七夜の支給品を回収しました。行く先、思考ともに次の作者様に任せます。
|sm109:[[賊を倒しに館へ行く事になった]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|sm111:[[シンデレラ・ケージ(前編)]]|
|sm109:[[賊を倒しに館へ行く事になった]]|[[投下順>101~150]]|sm111:[[シンデレラ・ケージ(前編)]]|
|sm103:[[嘘の歌姫]]|&color(red){七夜志貴}|&color(red){死亡}|
|sm103:[[嘘の歌姫]]|初音ミク|sm116:[[トキが危険を修正するようです]]|
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*狂喜「サウンドプリンセス」 ◆CqqH18E08c
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――君は実に馬鹿だな、
私が馬鹿……?
やっぱり……嘘をついてたんだ。嘘付き。
私は……私はテトちゃんのことを友達だと思っていたのに……
テトちゃん……テトは私のことを馬鹿だと思っていた……
私は勝手に信じて、勝手に友達だと思って、勝手に嘘に騙されて……
――私の嘘を乗り越えさせてくれた
私は……助けてあげたのに……友達だと思っていたのに……
なんで……なんで……最初っから……最初っから私を嘘から乗り越えるためだけに利用するつもりだったの……?
やっぱり酷いよ……嘘付き……
――ミクちゃんは嘘をきっと乗り越えてくれるんだから
嘘を乗り越えるなんて……今まで友達だと思っていたのに……
嘘を勝手について置いて乗り越えてくれるなんて勝手に思ってた……?
なによそれ……嘘をついて置いて……いつかその嘘に気付くって思ってた……?
あはははは、私本当にただの馬鹿じゃない。
私はずっとテト……嘘付きに騙されていて。その嘘付きを信じていて。
その嘘付きはいつ嘘に気が付くのか心の中で笑ってたってこと……
友達だと思ってたのに……私が勝手に思い込んで騙されていただけ……
嘘付き……嘘付き……
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
本当に馬鹿じゃん私、嘘嘘嘘。嘘に騙されっぱなし。
はははははは。嘘吐きさん。あなたもたまには正しいことは言うんだね。
確かに私は馬鹿だよ騙されてることにも気が付かない馬鹿だよ。
「でもミクちゃんは騙されてることに気が付いたじゃないか
命令した通り動く機械は絶対にミクちゃんを裏切らないし僕もミクちゃんを裏切らないよ
シゲルだってそうさ、僕は見たことがないけれどミクちゃんのご主人さまも裏切らないさ、絶対に」
「ありがと、ルイージさん。気が付けたならまだなんとかなるよね」
「なんとかなるさ、だってミクちゃんは騙されていることに気が付いたんだもの」
そうよねルイージさん。機械は私を裏切らない。
ルイージさんも私を裏切らない。ご主人さまも私を裏切らない。シゲルも私を裏切らない。
裏切らない仲間が今の私に入る。テトなんていう上辺だけの友達じゃない裏切らない仲間が今の私の周りに入る。
この仲間がいるなら嘘吐きにも騙されることなんてないはず。
嘘吐きさんにはもう二度と騙されない……
そうだ、もう一人の嘘吐きさんはどこに行ったんだろう?
嘘吐きさんはコロシテシマワナイト
もう、騙されるのは嫌だから。見たくない現実を見るのは嫌だから。
――ミクちゃん大丈夫?
え……どうして……どうしてあなたが生きてるの!!私は嘘付きの……嘘付きの重音テトを殺したはず!!
死んでまで私を騙そうとするの!!私はあなたを信じてたのに!!友達だと思っていたのに!!
どうして……どうして嘘をつくの!!嘘吐きさんは死んでまで嘘をつき続けるの!?
嘘吐きはみんなみんな消えてしまえばいい!!私にはルイージさんがいる、ご主人さまがいる、シゲルがいる!!
仲間がいる!!私を騙そうとする嘘吐きはもうみんな死んでしまえ!!
死んでしまえばいいんだ!!
そう、死ね!!
死んでも生き返るようなら私がまた殺してあげるから!!
―― ……もう、騙しは効きませんよ
えぇ、騙しはもう私には効かない。私は仲間を信じるから。
嘘吐きを信じたりしないから。
ルイージさんは私をちょっと疑ったけれど話したら信じてくれた。
嘘吐きさんには信じて貰えなくても、仲間になれる人なら信じて貰えるんだ。
仲間じゃない人なんていらない。
「そういえばまだあの嘘吐きさんは生きてるかな?
シゲル、あの嘘吐きさんが生きてるなら探して殺してきて。
ははははははははははははははははははははははああっはっはっはっはっはっは!!」
◆◆◆
機械の少女の、悲鳴とも歓喜とも怒りともとれる声が響く。
動く植物は少女の命令に従い嘘吐き――七夜志貴を探す。
もともと七夜はそこまで遠くまで吹き飛ばされたわけではないのですぐに見つかった。
気絶はしているようだが呼吸ははっきりとしている。
それを確認するとシゲルは少女の命令を実行するために自らの種を弾丸として射出した。
「ッ!?」
射出された種が胸に直撃したことで七夜は意識を取り戻す。
意識を取り戻すと同時に危険を察知しシゲルから距離を取るがそこにいつものような動きのキレはない。
シゲルの種ガンは彼の肋骨を打ち砕いていたのだ。
――咄嗟に飛んだが骨がいかれている……?
気絶している間に何が起こったのか良くわからんがとにかく長期戦は不利のようだな。
七夜はそう判断するとシゲルの元へ駆け出す。
シゲルも彼の方を向き迎撃の態勢を整える。
一人と一匹の間の距離はみるみる内に縮まりそして接触する。
「動く植物か……面白い!!」
彼はシゲルが葉をビンタのように打ちつけてくるのを軽くいなしナイフを胴体に突き刺す。
手ごたえは十分……なのだがシゲルに大きなダメージを与えた様子はない。
七夜はそれに気が付くと即座に反転し距離を取る。
植物であるシゲルには遠距離攻撃の手段がないと判断してのことである。
しかしそれは大きな間違い。先ほどの種ガンのようにかしこさ技を主軸にしているあおばシゲルはむしろ遠距離戦の方が得意なのだ。
ビンタやつっつきなどといった近接技もあることにはあるが当たったとしても屁のような威力しかない。
もっともそれをこの一瞬で見分けろと言うのは酷な話だが。
『せーのっ!!』
シゲルの顔(?)である花から連続して種が高速で飛ぶ。
七夜が種をかわしシゲルの攻撃範囲から離脱すると種は先ほど七夜がぶつかった木に激しい音を立て次々と着弾する。
それは轟音というほどではないが大きな音を聞いただけでその種一つ一つに洒落にならないレベルの威力があることがわかる。
彼をそれ聞き多少毒を吐く。
「今後のことを考えると一発でも貰ったらまずいか……」
七夜が間合いを詰めようと走る。
それに対しシゲルが種マシンガンを放ち再び間合いを維持しようとする。
それが何度続いただろうか?長期戦の様相を呈し始め七夜が焦り始めたころ突如として今まで間断なく放たれていた種の弾幕が止んだ。
七夜を狙い種を放っていたシゲルは花を下に垂らしたまま硬直し動く様子はない。
「罠か……?」
実際は罠でもなんでもなくただ所謂意味不明状態にシゲルが陥っただけの話である。
だがこれもまた初見で意味不明状態なんていうものを理解しろというもの酷な話。
今までの状況を考えると延々と続く攻防に痺れを切らした変な植物が一撃必殺のための罠を貼っていると考えても仕方がないのだ。
七夜が思考する短時間膠着状態が続く。
用心しながら七夜がじりじりと距離を詰める。だが先ほど種の弾幕が突然止まったのと同様にシゲルが意味不明状態から復帰し活動を再開した。
先ほどまで種を放っていたのとは明らかに違うモーションを取る。
種の弾丸ばかりを用心していた七夜は肉体的疲労もありその明らかに先ほどまでとは違う何かを吐きだすような技に対応が遅れる。
彼はシゲルから放たれた花粉とミツをもろに喰らってしまう。
目は咄嗟に閉じたため目をやられ視界を奪われることだけは避けたものの、花粉とミツが服がべたべたと体にひっつき動きにくい状態に陥ってしまう。
今現在七夜が着ているのはごく一般的な学生服。
普通の服でも水にぬれれば体に張り付き動きを阻害する。学生服ならば、かかったのがミツであるならなおさらである。
この状況ではさきほどまでのように種を交わし間合いを取るといった行動をとり続けるのは不可能。
先ほどと同じことを繰り返せばやがて種ガンに当たってしまうのは明白である。
「シゲル?まだ終わらないの?」
先ほど七夜を機械で吹き飛ばした少女の声。
距離はそう遠くないように七夜は思えたが今の状態でシゲルの弾幕を交わしそこまでたどり着くことはほぼ不可能。
だがシゲルのもとまでたどり着きシゲルを殺すことは現状ではまだなんとか可能だと七夜は判断する。
彼は殺人鬼。相手が人でなくとも殺すのが仕事。
だからこそ彼は現状で動ける最大のスピードで動く。
シゲルと七夜の距離は負傷した状況でも七夜が安全に種をかわすために大きく開いている。
本来ならばこの程度は問題にもならないが負傷しミツのせいで動きを制限された状態では遠いな距離。
この距離を埋めシゲルの息の根を止めるために七夜は走る。
本来よりは遅いが一般人では反応することもできないだろう速さで一気に接近する。
――あと10歩
シゲルが放った種マシンガンがいくつか七夜に直撃し彼にダメージを与えるが止まらない。
反応を許さぬままに命を奪うべく一歩ごとに高速で駆ける。
――あと6歩
呟き距離を確認しながら七夜は駆ける。
シゲルは七夜の接近に反応し花粉を放とうとするが彼は同じ技を二度喰らうような人間ではない
葉団扇を振りシゲルの体勢を崩し花粉を無力化する。
――あと3歩
呟き七夜は攻撃の態勢に入る。
シゲルにこの状況で放つことのできるまともな技はない。
せいぜい突っつきぐらいだ。
だが七夜も体力を大きく消耗し七夜死奥義を放つことはできない。
それどころか閃の七技ですら完全に放つことができるかは危うい。
―― 七夜
七夜はシゲルに肉薄する。
ここまで近づいた以上負傷していようとシゲルに攻撃をかわされることはありえない。
後は今できる限り全力で放つのみ、勝負はついた。 そう彼は確信し言葉を発する。
「斬る……!」
シゲルの胴体を一気にナイフで切りぬき流れるようにして片方の葉を切り落とす。
種をなんども体に受けた七夜にはそれが限界だったがそれはシゲルに対して致命傷を与えるのにはそれで十分。
彼は近づいてきているであろうロボットに乗った少女に向き直ろうとし――
◆◆◆
手ごたえは十分だった。
植物の胴体を大きく切り抜き、腕のような役割を果たしていた葉の一方も切り落とした。
相手が人間であれば確実に致命傷。たとえ相手が植物でも大きな傷を付ければそこから枯れてゆく。
即座に致命傷というわけにはならなくとも俺は勝負に勝ったはずだ。
体も弾が当たったところ以外に痛みはない。
あの近距離でなにか攻撃を喰らったということはないはず。
だが……ならなぜ……なぜ俺は倒れている。
なぜこんなにも体が重いんだ。
仰向けに倒れた俺の眼に映るのは胴体に小さな傷をつけた片方の葉を失った植物の姿だった。
なぜ胴体の傷があんなに小さい……俺は間違いなく大きく切ったはず。
あれは記憶違いで俺が妄想の中だけで切ったというわけじゃない。手ごたえも確かだった。
だから葉が片方切り落とされている。ならばなぜ……なぜあんなに傷が小さいんだ。
俺がそんな思考をしている間にロボットが近づく。
体が動くならば無防備な乗り手を殺しに行けるが今の俺では到底無理な話。
今までで感じたことがないほど距離を遠く感じる。
「嘘吐きさん、お気分はいかが?」
ロボットの上から俺を見下ろす少女。
その少女の瞳は狂気に満たされておりなにか俺と同じようなものを感じた。
狂ってるという言い方は適切ではないのだろうが狂ってるとしか言いよう無い何か
それが何かを理解するための時間はもう俺には残されていないようだった。
「あはははははは、嘘を吐くからこういうことになるんだよ
なにか言い残したいことある?私はとってもやさしいから嘘吐きさんの言葉でもちゃんと聞いてあげるんだ」
まったく狂ってるな。
これで優しいなんて殺人鬼の俺よりも狂ってるじゃないか。
少女はクスクスと笑いながら好奇の眼で俺を見ながら答えを待っている。
どうやら今の俺に選択権は無いらしい。
「言い残したいこと……そうだな、俺とお前は同類ってことかな」
「私は嘘吐きなんかじゃないよ、うふふ。
嘘吐きさんは最後まで嘘吐きなんだね。私があなたと同類なんてはずがないじゃない
それじゃ、バイバイ」
そんな言葉とともにロボットの足が静かに迫る。
別に死ぬのは怖くないが俺が思うことは一つ。
もっとこの殺し合いを愉しみたかった。
「あははははははははははははははははははは。
嘘吐きさん、さようなら。
はははははは、あっはっはっはっはっはっはっは!!」
俺は狂った笑い声を聞きながら、冷たいロボットの足を見ながら――
&color(red){【七夜志貴@MUGEN 死亡】}
◆◆◆
「ははははははははははははははは」
肉を踏みつぶす嫌な音と共に少女の狂気の笑いが森に響く。
少女はクスクスと笑いながら一人呟く。
「これで嘘吐きさんはとりあえずいなくなったね」
「でも、ミクちゃん?友達が嘘吐きだったんだよ?
もしかしたら皆で寄ってたかってミクちゃんを騙してたのかもね」
「ルイージさん……そんなことは……
いや、テトちゃんが裏切ってたんだ。皆嘘吐きで私を騙してたってこともありえる……どうしよう……」
「そうそうミクちゃん、もっと疑わないと」
「そうだね……知ってる人だからって信用できるわけじゃないんだ。ありがとルイージさん」
「いやぁ、ミクちゃんのためだもの。このくらいどうってこと無いって」
クスクスと笑い続けその後も歌姫は一人呟き、独り芝居を続ける。
すでにその話す相手がこの世にないことを受け入れらぬまま。
この場にいるものが狂気に乱され理性を失った歌姫だと認められぬまま。
「それはそうと……シゲル、痛かったよね。あんなに切られてて
でも大分治ってるようで良かった。」
シゲルの胴体に付けられた大きな傷は既に再生を始めている。
確かに七夜がつけた傷は時間は致命傷だった。それは間違いない。
ならばなぜこうしてシゲルが生きているのか?
決してシゲルの生命力が異常だったとかそういうわけではない。シゲルが七夜に向け最後に使った技が原因なのだ。
シゲルが使った技はドレイン。相手の体力を吸収し自らの体力とする強力無比な技である。
戦闘の最終局面でこれを打ち放てばHPが逆転し勝利になることも少なくない多技である……が
元々この技は命中率が低く素早い相手には効果を発揮しにくい。
しかし七夜はミツと花粉を受け、スピードが低下した状態であり、さらに勝利を確信しシゲルの最後の反撃のことを考慮に入れていなかったため成功したのだ。
この中の要素がどれか一つでも欠けていれば七夜はシゲルに致命傷を与え、疲弊しながらも初音ミクへとどめを刺していただろう。
もっともこれが初音ミクにとって運が良かったといえるかどうかは微妙であるが。
七夜とテトの死体を見ることもなく……いや、見ようとせずに歌姫は歌う。
「さぁ早く遊びましょう、人形はどうしても喋らない」
その歌声は透き通り透明だった。
しかしその透明さは狂喜を隠すことなく全てを透かす。
「血をかけてあげるほら、真っ赤な色のドレスになったわ」
歌姫の悲しみ、喜び、怒り、憎しみ、その全ての感情を伝える狂喜の声。
その歌を聴くものがいればその物がどんな猛者であろうと恐怖に震えるほどの感情がそれには籠っている。
「髑髏で作った牢屋にまた1人閉じ込める」
ある意味では歌姫としての境地。
伝えたい思いを全てを歌として伝えること。それを完全に達成しているとも言えるこの歌。
短いフレーズではあるが過去ミクがうたったどんな歌よりも完成度が高いともとれる
歌姫の感情全てが籠り、全てを伝える狂喜。
「ねぇ悲鳴を聞かせてほしいの悲鳴を聞かせてよ」
歌の1フレーズを歌い終えると少女は植物へ語りかける。
狂気に囚われた美しい微笑みを浮かべながら。
「シゲル、葉っぱを切られちゃって痛かったよね……ごめんね……
これからも嘘吐きを倒すために無理させるかもしれないけどごめんね……」
動く植物は何も語らず少女の乗るロボットにつき従う。
彼女らはこれからどこへ向かうのか、どこへ狂喜を振りまくのかそれは彼女らしか知る者はいない
「 うふふふふ……ふ ふ ふ ふ
は は は は は は
あ は は は は は は は 」
――そして
だれも――
――いなく
なった――
◆◆◆
確かにそこには誰もいなくなった。
いなくなったのは生きる”人間”であるが。
皆さんお忘れではないだろうか?あの生首生物たちを
「ゆ……ゆっ!!」
戦闘の間どこかに隠れていたゆっくりはミク達がいなくなると現れ物言わぬ壊れた人形となったテトに語りかける。
しかし人形は喋らないからこそ人形なのだ。壊れた人形は二度と動くこともなく喋ることはない。
「ゆ……ゆ?……ゆ……」
ゆっくり霊夢は涙を流しテトに声をかけ続ける。
声をかけ続ければテトが生き返るかのように、テトがバーボンに引っかけただけで実は死んだふりをしているだけだと願うように。
一方ゆっくり魔理沙 は涙を流しながらもテトと七夜の支給品を四苦八苦しながら集める。
テトが死んでしまったという現実に苦しみながらすべきことはしなければならないという決意を秘め。
「ゆ……ゆっ!!ゆっ!!」
「ゆ……」
「ゆっ!!ゆっ!!」
「ゆぅ……」
ゆっくり魔理沙 はゆっくり霊夢をしかりつける。
今自分たちがやらないといけないことは何なのか諭すために。
だが別にゆっくり達が今しなくてはならないことなど存在しない。
ここにいきなり連れてこられ殺し合いの道具として支給された、ただそれだけでゆっくり達には闘う理由はないのだ。
この場ではあくまでゆっくり達は道具、テトのような参加者とは違う。
それこそ優勝者が決まるまで禁止エリアに隠れて震えておくという選択肢もあった。
しかしその選択肢を蹴ってまでゆっくり魔理沙 はしなければならないことがあるという。
「ゆっ!!ゆっ!!ゆ!!」
「……ゆ……ゆ」
テトが恩人だと言っていやミクの様子は明らかにおかしかった。
ミクは赤さんの言い方を借りるならば今、初音ミクは歪みある生き方をしているといえるだろう。
それを何とかするのが僅かな時間とはいえテトのそばにいたゆっくり達であり、赤さんの言葉を聞いたゆっくり達ではないか、そうゆっくり魔理沙 は言っているのだ。
赤さんが歪みねぇ生き方を伝えたのはゆっくり達とフラン、そしてすでにこの世にはいないテト。
赤さんが残した歪みねぇ生き方の道しるべはゆっくり魔理沙 の中には生き残っている。吹けば消える小さな火としてではあるが。
この吹けば消える小さな火も油の中に投げ込めば業火となり歪みすべてを焼き尽くし歪みを取り除くだろう。
だがこの場にその油となる人物はいない。
「ゆ……ゆ!!」
ゆっくり魔理沙は強引にではあるがテトのそばで泣き続けようとするゆっくり霊夢を連れどこかへ移動を始めた。
ゆっくり達がなにを望むのかは分からない、フランとの再会なのかテトの恩人であるミクの救出なのか
それともまったく別なことなのか。
ただ一つ分かることはゆっくり達がこれから進む道が果てしなく困難で遠い道のりだということだけだ
「ゆっくりしている暇なんてないよ!!しっかり急いで行ってね!!」
【A-3 森/一日目・午前】
【初音ミク@VOCALOID2】
[状態]:混乱、恐怖、精神疲労(限界突破)身体疲労(限界寸前)
[装備]:ルイージの帽子 魔導アーマー(左腕欠損、武装チャージ中1/2)@FF6
[道具]:基本支給品、あおばシゲル@MF2死ぬ気シリーズ
[思考・状況]
0.重度の疑心暗鬼
【オボロゲソウ「あおばシゲル」の思考】
[状態]大ダメージ(移動と戦闘に支障はない。ドレインの効果で再生中)
[思考・状況]
1:嘘付きからミクを守る
2:ミク……
【ゆっくり@ゆっくりしていってね】
[道具]ランダム支給品(0~2)基本支給品×2(食料・水-1) 三国志大戦カード(UC董白)@三国志大戦、 葉団扇@東方project 包丁@現実 射命丸文のカメラ@東方project
サバイバルナイフ@現実 偽起爆リモコン(4-5時間使用不可)@オリジナル 拳銃(0/6 予備弾24)@デスノート
[思考]0.不明
※指定された命令以上のことはできない。しかし殺傷力の高い技も存在する。
※ルイージの死体(帽子無)が放置されています
※初音ミクは今現在正常な判断ができません。精神に多大なショックを受けたようです。
※ゆっくり達がテトと七夜の支給品を回収しました。行く先、思考ともに次の作者様に任せます。
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