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「デバイスは儚き覚悟の悪に」(2009/03/23 (月) 11:11:53) の最新版変更点
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*デバイスは儚き覚悟の悪に ◆CqqH18E08c
(登録タグ) [[パロロワ]] [[ニコニコ動画バトルロワイアルβ]] [[KYM]] [[キワミ]] [[マッハキャリバー]]
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「えぇと……つまりお前は”スバル・ナカジマ”と言う人間の相棒なのか」
『はい、その通りです』
二人(?)はそれぞれの持つ情報を交換し現在の状況を確認した。
マッハキャリバーはなんとか魔法やデバイスの概念等について左之助に説明しようとし
左之助もマッハキャリバーの言う魔法やデバイスを理解しようとしたが
如何せん時代の壁、科学の壁が大きく立ちはだかり左之助がそれを理解することはできなかった。
しかしそれでも自分の中にリボルバーナックルという手甲状デバイスを格納していることや
自分が意志を持つからくり人形に近い存在であると言ったことはしっかりと左之助に説明をすることに成功した。
「とりあえず物が喋るとか”まほう”とかはもう状況がわけわからんから置いて置いてだ
お前はこのバトルロワイアルから抜け出すにはどうしたらいいかわかるか?」
ペンダントに話しかける様子は事情を知らない人がまわりからみると危ないものがある
この場に他に参加者がいないのは左之助とマッハキャリバーにとって幸運だったのかもしれない。
そんなことはともかく左之助は魔法とか不思議な言葉をさらさらと口にする不思議な物なら
このバトルロワイヤルから抜け出し主催者に喧嘩を売る方法が分かるのではないかという一縷の望みをかけて
マッハキャリバーに質問をするがそれに対する答えはあまりにも非常で単純なものだった
『いいえ』
「……」
『……』
沈黙。
悲しい沈黙。
左之助の望みはその一言で粉々に打ち砕かれた。
マッハキャリバーもサノスケの沈黙に引きずられるように何も言葉を発しない。
「…………」
『…………』
沈黙。
悲しい沈黙はまだ続く。
左之助も脱出が簡単なものではないと理解していた。
しかしその望みを一言で打ち崩されるとやはり受けるショックは大きい。
どこかの王子であれば『もう駄目だ……』とか言っていたとしてもおかしくはない状況。
そこを考えるなら左之助は立派である。
まだ前向きに考えることができたのだから
「でも、戦うための道具……いやお前の相棒の言葉を借りるなら相棒として一緒に戦うことはできるわけだな?」
『はい。しかし私はスバル・ナカジマのために特別な改造が施してありますので
あなたでは扱うことができないと思います』
マッハキャリバーには改造が施してある。
もともとの重量は分からないが重量は改造前の2.5倍である。2.5倍。
想像してみよう。ローラースケートを履いた時の重さを。
重いですね?そう、それが2.5倍です。
元の重量は普通のローラースケートの非じゃないほど重い可能性があります、デバイスですし。
そんなものを扱える一般人なんてあんまりいないでしょう。
でも佐之助は一般人じゃないんです。武人なんです。
「いや、試してみよう。やって駄目ならあきらめればいいがやって上手くいけば御の字だ」
『無理だと言っても聞かないようですね……』
そういうとマッハキャリバーは形態をローラースケート状に変化させ
左之助に自らを履くように促した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
しばらくして左之助はマッハキャリバーを履きリボルバーナックルを装備し橋の上にいた。
堂々と悪一文字を背負い立ち、周りを見回す。
マッハキャリバーを履き左之助はなんど倒れ、なんど立ち上がっただろうか?
始めは無理だとマッハキャリバーに言われた。
それでも左之助は諦めず。驚異的な慣れと学習能力を見せマッハキャリバーを使いこなしていた。
勿論途中で諦めさせるのは無理だと悟ったマッハキャリバーもアドバイスをしていた
しかしそれを踏まえて見ても左之助の習得速度は異常と言ってよいレベルだった。
ローラースケートの基礎技術を次々と繰り出し踊るように滑る
次の瞬間には突如として静止しリボルバーナックルを繰り出し二重の極みを放つ。
二重の極みを放ったかと思えば反転しその場から高速で離れる。
長年ローラースケートをやってきたと言っても違和感のないほど……
いや、それ以上の技術を見せる左之助。
それは驚愕するしかない光景だった。
「少し重いがもう問題はないな
もう走るよりも全然スピードが出る」
橋の上で舞うように動きながら左之助は呟く。
『まさか生身の人間が本当に扱えるとは思いませんでした
なれるのが早すぎです』
「動くことには自信があるからな」
そんな会話をしながら左之助は動くことをやめない。
――二重の極みの不調
それは左之助にとって認めたくないことに他ならない。
自分が極めたと思っていた拳が思うように打てなくなる。
極めたと思った自分の慢心なのか
それとも殺し合いに参加させられたという異常事態で自分が動揺しているのか
はたまた全く関係のないことから来ている不調なのか
どれにしても左之助は認めたくない事実。
実際は主催者側からかけられた制限であるのだがそれを佐之助が知るすべはない。
それが左之助の焦りを加速させる。
「くそっ!うまくいかねぇ!」
『サノスケ、それで十分な威力ではないのでしょうか?』
本来の二重の極みを知らないマッハキャリバーからすると普通の人間である左之助が放つ拳の威力は尋常ではない。
一発地面に打てば地面に大きなヒビを造り
一発空に打てば空気を振動させる
一発打ち上げた小石に打てば小石を粉々に砕く。
しかしそれほどの威力を出しながら左之助は上手くいかない、不調であるという。
スバル・ナカジマと共に多くの戦いをしてきたマッハキャリバーからみても信じられないものだ。
『(そういえば私も多少上手くいかない機能がある……
相棒がいないせいだと思っていたがまさかこれもサノスケと同じようななんらかの理由……?
いや、サノスケは運動能力が高いとはいえただの一般人。私が本来の力を出せないのは当然のこと)』
マッハキャリバーも主催が制限を掛けたということに気が付けない。
左之助が魔法を操ることができたならば、少なくとも魔法の概念を理解することができたならば
もしそうだったマッハキャリバーも自身の不調が主催者からの制限だと気が付けたのかもしれないが
左之助は魔法を操ることなどできず概念を理解することもできなかった。
身体能力が明らかに一般人からかけ離れていると言うだけの人間、それが左之助。
それがマッハキャリバーの判断を間違えるさせる原因だった。
「二重の極み!」
左之助が何十発目かになる拳を空に放つ。
激しく動き回っていたせいか多少息切れもしている。
というかあれだけの重量のあるマッハキャリバーを装備していながら今まで息切れをしていなかったというのが非常識なのである。
『サノスケ、一度休憩するべきです。
このまま動き回っていても無駄に体力を消耗し精神の集中を欠き
サノスケの言う二重の極みの極意がまた遠くなってしまいます』
「まだこんなものは疲れているうちにも入らねぇ!」
『サノスケッ!』
マッハキャリバーが珍しく声を荒げる。
その声に止まらざるを得なかったのか左之助が動きを止める。
多少不満そうではあったが。
「わかったよ、休憩すればいいんだろ休憩すれば」
『今のあなたに必要なのは落ち着きです。休憩をとってからまた修行をすればよい。
(私らしくもないな……サノスケは相棒でもないのに感情的になって)』
左之助はマッハキャリバーを履いたまま橋に腰を下ろす。
周囲には粉々になった小石やヒビの入った大地
ここに来た者が見ればなにか戦闘があったのではないかと勘違いするような光景である。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『サノスケ、落ち着きましたか?』
「あぁ、落ち着いた
確かに二重の極みの不調で俺は焦っていた
こんなんじゃ二重の極みを取り戻すどころか余計に遠くにしちまうだけだった」
左之助は素直に自分の非を認める。
この状況で二重の極みの不調を理由に無茶な修行を続け
体そのものを不調に持ち込み最終目的である主催――右上、左上との喧嘩に影響を出す。
それどころか途中で誰かに殺され何もできないままに主催者の思惑通り消えていく。
このようなことでは笑い話にもならないといった判断からの結果である。
左之助はただ突っ走るだけの猪武者という印象が強いが喧嘩の前には入念に相手のことを調べる
調べた結果を分析すると言った前準備もしっかりとする智者なのだ。
周りにいた人物の性能がチート級すぎるだけで
『落ち着いたところで質問です。
あなたは先ほどの意見交換で殺し合いには参加しないといいましたね?』
「ああ」
機械的だが真剣な声――まぁいつもと同じような声だがその声で
マッハキャリバーは佐之助に問いかける。
マッハキャリバーに目があれば左之助の瞳を真剣に見つめていたことだろう。
『もし殺し合いに乗った人間――もしくはそれに準じる生物があなたを襲った場合
サノスケはその相手をどうしますか?』
「……」
それは左之助が今まで避け続けてきた問題だった。
相手が殺す気で襲いかかってくる以上相当な実力差がない限り佐之助も全力で……
つまり殺す気で応戦しなければならないのだ。
左之助の友であれば「なにがあろうと拙者は人を殺めるつもりはござらん」と即答していたのだろうが
左之助は即答できない。
それがあの剣客が背負ってきた重みなのだと左之助は実感する。
口で「俺は相手を殺したりなんかしない」そう言うのは簡単である。
だがその簡単なことを口に出せるか否か
そこに覚悟がある。
覚悟を持ってその言葉を言えるのか……否か
今それをこの物言う意志を持つ機械”マッハキャリバー”は問うているのだ。
おそらくマッハキャリバーは相手を殺すと言っても殺さないと言ってもどちらでも受け入れるだろう。
この場はバトルロワイアルという殺し合いの場であり襲ってくる相手を殺さなければ自分が死ぬ可能性もあるのだ
『覚悟』
どちらの場合でもそれが必要となる。
戦闘の途中での邪念は致命的、即死に繋がる公算が高い。
だからこそ戦闘状態に入る前の今、この時にマッハキャリバーは聞いたのだ。
今のうちに決めておかなければ絶対に後悔する。
そう分かっているから
『まだ答えなくても構いませんよ、本格的な戦いに入る前に答えを出せれば間に合います。
ですが、戦いに入ってから迷っているようなら困ります
サノスケと共にここから脱出しないと私は面倒なことになるのです』
「別に一緒に脱出する相手は俺じゃなくてもいいんじゃないか?」
『いえ、サノスケでなければ困ります。
サノスケ以外に私を短時間で使いこなせるようになるほどの実力者がいる可能性は非常に低い
私が脱出するためにはサノスケがいてくれなければ困るのです
それに私たちは脱出という同じ目的をもった同志であり、仲間です。
その同志が答えを出せないまま迷い消えていくようでは私としては悲しいですし悔しい
だから私はサノスケが生きて共闘してくれなければ困るんです
脱出という望みを語り向かうならもっと胸はって堂々とどんなことでも覚悟していくものです
それができないようならば誰もサノスケが本当に脱出を望んでいると信じてはくれないでしょう。
サノスケは私はまだであって時間はたっていませんが堂々と脱出し主催と喧嘩することが目的だと言った。
だから私はそれを信じたのです』
その言葉に左之助は絶句する。
マッハキャリバーの言葉にはかつて彼が言った言葉と似たようなものが含まれていた。
言葉こそマッハキャリバーの都合で左之助には生きていてもらわないと困る
そう表面こそ言っているが本心では損得抜きで佐之助に生きて欲しい
その思いが見える言葉だった。
『もうしわけありません。出過ぎたまねをしました。
最終的に決めるのはサノスケです
私はサノスケの判断に従います』
左之助の絶句をどう受け取ったのかマッハキャリバーは謝罪の言葉を口にする。
左之助はそれに応えることができない。
あまりの衝撃だったのだ。マッハキャリバーはデバイスというからくり人形である。
それが左之助の心の一部があったのかもしれない
しかしその人形はたしかに意志を持ち覚悟を持っていた。
だが左之助はどうだろうか?
背中に悪という覚悟を背負いながらこの場では覚悟一つすることができない。
そんな自分と向かい合わざるを得なくなり左之助は言葉を失ったのだ。
「ふはははは……あははははは……」
『サノスケ……?』
そして硬直から抜け出し突如笑いだす左之助。
絶句した男が突如として笑いだせばだれだって疑問に思う。
その例にもれずマッハキャリバーも疑問に思った。
「思い出したってか気が付いたのかね?」
『……?』
笑いながら左之助は先ほどとは違う覚悟した目で前を見据える。
先ほどまで我武者羅に二重の極みを取り戻そうとしていた男も
マッハキャリバーの覚悟に絶句した男もそこにはいない。
堂々と言葉を紡ぐ
「夢を語る時は胸張って高笑いしながらいうもんだってね」
「俺は帰る場所がある。だから覚悟を持つ。
守るものある、だから覚悟を持つ。
自分がブチ壊れるまで「守って闘う」覚悟を持つ
守る者はこの胸糞悪いゲームを考えだした主催以外全てだ
殺し合いに乗ってる奴も乗ってない奴も関係ねぇ
俺が全部守って闘う」
全部守ることは実際には全部不可能。
そんなことは左之助にだって分かっている。
殺し合いに乗っている奴を守るのがほぼ無理なことだとも佐之助は理解している。
それでもそれを目指すのが左之助の覚悟。
最悪の場合は殺すことも辞さない。
それも含めた上での左之助の覚悟。
佐之助の背中の悪一文字にかける新たな覚悟。
「そうだ。これだ。ここに来てすっかり忘れてたが、ようやく見せてやれそうだ。これが俺だ。」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ところでさっき話した円盤と箱とかその他諸々の使い道、お前なら分からないか?」
ごそごそとデイパックを漁りながら腰をおろしてようやく落ち着いたのか役に立たなそうに見えた支給品について左之助はマッハキャリバーに問う
情報交換の時は魔法やデバイスのことで頭がいっぱいだったのか思いつかなった質問である。
『円盤……?箱……?
それを見せて貰えませんか?』
「見せるってどうやって?お前物だろ?」
佐之助が心底不思議そうに足元のマッハキャリバーを見つめる。
それにマッハキャリバーはまた珍しく多少呆れたような声で
『かざして頂ければ大丈夫です。』
と、言ったのだった。
「…………」
そしてあるのは沈黙。
気まずくはないが悲しい沈黙。
覚悟し信頼関係を持つことに成功したとはいえなにかと悲しい沈黙多い一人と一品(?)であった。
【D-6 橋/一日目・早朝】
【相楽左之助@るろうに剣心~明治剣客浪漫譚~】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、スタープラチナのディスク@ジョジョの奇妙な冒険Part6ストーンオーシャン、携帯電話@現実
[思考・状況]
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:二重の極みが打てない……だと……?
3:主催者相手に『喧嘩』する。
4:友人、知人と合流する。
5:弱い奴は放って置けねぇ。
6:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
7:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ
【マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 】
[思考・状況]
1:サノスケの……覚悟……
2:相棒……
3:不調……?
4:二重の極みの本来の威力……?
5:私らしくもない……
※黎明の間はずっと練習してずっと修行してました。
結構轟音がなっていたので黎明の間にD6移動してきた人がいるならその人には聞こえているでしょう
※マッハキャリバーの不調もサノスケの不調も制限によるものです。
※佐之助はマッハキャリバーを結構使いこなせていますが”完全”には使いこなせていません。
※佐之助の機動力はかなり強化されています。
しかし本人はその機動力を生かして遠くまで移動しようという気は現在ありません
※ある程度の信頼関係を築いています。
※佐之助は色んな意味で覚悟しました。
|sm64:[[立場、逆転]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm66:[[アレックスに主人公をさせてみた(前編)]]|
|sm64:[[立場、逆転]]|[[投下順>51~100]]|sm66:[[アレックスに主人公をさせてみた(前編)]]|
|sm33:[[明治十一年の相楽サノスケ]]|相楽左之助|sm:[[]]|
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*デバイスは儚き覚悟の悪に ◆CqqH18E08c
(登録タグ) [[パロロワ]] [[ニコニコ動画バトルロワイアルβ]] [[KYM]] [[キワミ]] [[マッハキャリバー]]
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「えぇと……つまりお前は”スバル・ナカジマ”と言う人間の相棒なのか」
『はい、その通りです』
二人(?)はそれぞれの持つ情報を交換し現在の状況を確認した。
マッハキャリバーはなんとか魔法やデバイスの概念等について左之助に説明しようとし
左之助もマッハキャリバーの言う魔法やデバイスを理解しようとしたが
如何せん時代の壁、科学の壁が大きく立ちはだかり左之助がそれを理解することはできなかった。
しかしそれでも自分の中にリボルバーナックルという手甲状デバイスを格納していることや
自分が意志を持つからくり人形に近い存在であると言ったことはしっかりと左之助に説明をすることに成功した。
「とりあえず物が喋るとか”まほう”とかはもう状況がわけわからんから置いて置いてだ
お前はこのバトルロワイアルから抜け出すにはどうしたらいいかわかるか?」
ペンダントに話しかける様子は事情を知らない人がまわりからみると危ないものがある
この場に他に参加者がいないのは左之助とマッハキャリバーにとって幸運だったのかもしれない。
そんなことはともかく左之助は魔法とか不思議な言葉をさらさらと口にする不思議な物なら
このバトルロワイヤルから抜け出し主催者に喧嘩を売る方法が分かるのではないかという一縷の望みをかけて
マッハキャリバーに質問をするがそれに対する答えはあまりにも非常で単純なものだった
『いいえ』
「……」
『……』
沈黙。
悲しい沈黙。
左之助の望みはその一言で粉々に打ち砕かれた。
マッハキャリバーもサノスケの沈黙に引きずられるように何も言葉を発しない。
「…………」
『…………』
沈黙。
悲しい沈黙はまだ続く。
左之助も脱出が簡単なものではないと理解していた。
しかしその望みを一言で打ち崩されるとやはり受けるショックは大きい。
どこかの王子であれば『もう駄目だ……』とか言っていたとしてもおかしくはない状況。
そこを考えるなら左之助は立派である。
まだ前向きに考えることができたのだから
「でも、戦うための道具……いやお前の相棒の言葉を借りるなら相棒として一緒に戦うことはできるわけだな?」
『はい。しかし私はスバル・ナカジマのために特別な改造が施してありますので
あなたでは扱うことができないと思います』
マッハキャリバーには改造が施してある。
もともとの重量は分からないが重量は改造前の2.5倍である。2.5倍。
想像してみよう。ローラースケートを履いた時の重さを。
重いですね?そう、それが2.5倍です。
元の重量は普通のローラースケートの非じゃないほど重い可能性があります、デバイスですし。
そんなものを扱える一般人なんてあんまりいないでしょう。
でも佐之助は一般人じゃないんです。武人なんです。
「いや、試してみよう。やって駄目ならあきらめればいいがやって上手くいけば御の字だ」
『無理だと言っても聞かないようですね……』
そういうとマッハキャリバーは形態をローラースケート状に変化させ
左之助に自らを履くように促した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
しばらくして左之助はマッハキャリバーを履きリボルバーナックルを装備し橋の上にいた。
堂々と悪一文字を背負い立ち、周りを見回す。
マッハキャリバーを履き左之助はなんど倒れ、なんど立ち上がっただろうか?
始めは無理だとマッハキャリバーに言われた。
それでも左之助は諦めず。驚異的な慣れと学習能力を見せマッハキャリバーを使いこなしていた。
勿論途中で諦めさせるのは無理だと悟ったマッハキャリバーもアドバイスをしていた
しかしそれを踏まえて見ても左之助の習得速度は異常と言ってよいレベルだった。
ローラースケートの基礎技術を次々と繰り出し踊るように滑る
次の瞬間には突如として静止しリボルバーナックルを繰り出し二重の極みを放つ。
二重の極みを放ったかと思えば反転しその場から高速で離れる。
長年ローラースケートをやってきたと言っても違和感のないほど……
いや、それ以上の技術を見せる左之助。
それは驚愕するしかない光景だった。
「少し重いがもう問題はないな
もう走るよりも全然スピードが出る」
橋の上で舞うように動きながら左之助は呟く。
『まさか生身の人間が本当に扱えるとは思いませんでした
なれるのが早すぎです』
「動くことには自信があるからな」
そんな会話をしながら左之助は動くことをやめない。
――二重の極みの不調
それは左之助にとって認めたくないことに他ならない。
自分が極めたと思っていた拳が思うように打てなくなる。
極めたと思った自分の慢心なのか
それとも殺し合いに参加させられたという異常事態で自分が動揺しているのか
はたまた全く関係のないことから来ている不調なのか
どれにしても左之助は認めたくない事実。
実際は主催者側からかけられた制限であるのだがそれを佐之助が知るすべはない。
それが左之助の焦りを加速させる。
「くそっ!うまくいかねぇ!」
『サノスケ、それで十分な威力ではないのでしょうか?』
本来の二重の極みを知らないマッハキャリバーからすると普通の人間である左之助が放つ拳の威力は尋常ではない。
一発地面に打てば地面に大きなヒビを造り
一発空に打てば空気を振動させる
一発打ち上げた小石に打てば小石を粉々に砕く。
しかしそれほどの威力を出しながら左之助は上手くいかない、不調であるという。
スバル・ナカジマと共に多くの戦いをしてきたマッハキャリバーからみても信じられないものだ。
『(そういえば私も多少上手くいかない機能がある……
相棒がいないせいだと思っていたがまさかこれもサノスケと同じようななんらかの理由……?
いや、サノスケは運動能力が高いとはいえただの一般人。私が本来の力を出せないのは当然のこと)』
マッハキャリバーも主催が制限を掛けたということに気が付けない。
左之助が魔法を操ることができたならば、少なくとも魔法の概念を理解することができたならば
もしそうだったマッハキャリバーも自身の不調が主催者からの制限だと気が付けたのかもしれないが
左之助は魔法を操ることなどできず概念を理解することもできなかった。
身体能力が明らかに一般人からかけ離れていると言うだけの人間、それが左之助。
それがマッハキャリバーの判断を間違えるさせる原因だった。
「二重の極み!」
左之助が何十発目かになる拳を空に放つ。
激しく動き回っていたせいか多少息切れもしている。
というかあれだけの重量のあるマッハキャリバーを装備していながら今まで息切れをしていなかったというのが非常識なのである。
『サノスケ、一度休憩するべきです。
このまま動き回っていても無駄に体力を消耗し精神の集中を欠き
サノスケの言う二重の極みの極意がまた遠くなってしまいます』
「まだこんなものは疲れているうちにも入らねぇ!」
『サノスケッ!』
マッハキャリバーが珍しく声を荒げる。
その声に止まらざるを得なかったのか左之助が動きを止める。
多少不満そうではあったが。
「わかったよ、休憩すればいいんだろ休憩すれば」
『今のあなたに必要なのは落ち着きです。休憩をとってからまた修行をすればよい。
(私らしくもないな……サノスケは相棒でもないのに感情的になって)』
左之助はマッハキャリバーを履いたまま橋に腰を下ろす。
周囲には粉々になった小石やヒビの入った大地
ここに来た者が見ればなにか戦闘があったのではないかと勘違いするような光景である。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『サノスケ、落ち着きましたか?』
「あぁ、落ち着いた
確かに二重の極みの不調で俺は焦っていた
こんなんじゃ二重の極みを取り戻すどころか余計に遠くにしちまうだけだった」
左之助は素直に自分の非を認める。
この状況で二重の極みの不調を理由に無茶な修行を続け
体そのものを不調に持ち込み最終目的である主催――右上、左上との喧嘩に影響を出す。
それどころか途中で誰かに殺され何もできないままに主催者の思惑通り消えていく。
このようなことでは笑い話にもならないといった判断からの結果である。
左之助はただ突っ走るだけの猪武者という印象が強いが喧嘩の前には入念に相手のことを調べる
調べた結果を分析すると言った前準備もしっかりとする智者なのだ。
周りにいた人物の性能がチート級すぎるだけで
『落ち着いたところで質問です。
あなたは先ほどの意見交換で殺し合いには参加しないといいましたね?』
「ああ」
機械的だが真剣な声――まぁいつもと同じような声だがその声で
マッハキャリバーは佐之助に問いかける。
マッハキャリバーに目があれば左之助の瞳を真剣に見つめていたことだろう。
『もし殺し合いに乗った人間――もしくはそれに準じる生物があなたを襲った場合
サノスケはその相手をどうしますか?』
「……」
それは左之助が今まで避け続けてきた問題だった。
相手が殺す気で襲いかかってくる以上相当な実力差がない限り佐之助も全力で……
つまり殺す気で応戦しなければならないのだ。
左之助の友であれば「なにがあろうと拙者は人を殺めるつもりはござらん」と即答していたのだろうが
左之助は即答できない。
それがあの剣客が背負ってきた重みなのだと左之助は実感する。
口で「俺は相手を殺したりなんかしない」そう言うのは簡単である。
だがその簡単なことを口に出せるか否か
そこに覚悟がある。
覚悟を持ってその言葉を言えるのか……否か
今それをこの物言う意志を持つ機械”マッハキャリバー”は問うているのだ。
おそらくマッハキャリバーは相手を殺すと言っても殺さないと言ってもどちらでも受け入れるだろう。
この場はバトルロワイアルという殺し合いの場であり襲ってくる相手を殺さなければ自分が死ぬ可能性もあるのだ
『覚悟』
どちらの場合でもそれが必要となる。
戦闘の途中での邪念は致命的、即死に繋がる公算が高い。
だからこそ戦闘状態に入る前の今、この時にマッハキャリバーは聞いたのだ。
今のうちに決めておかなければ絶対に後悔する。
そう分かっているから
『まだ答えなくても構いませんよ、本格的な戦いに入る前に答えを出せれば間に合います。
ですが、戦いに入ってから迷っているようなら困ります
サノスケと共にここから脱出しないと私は面倒なことになるのです』
「別に一緒に脱出する相手は俺じゃなくてもいいんじゃないか?」
『いえ、サノスケでなければ困ります。
サノスケ以外に私を短時間で使いこなせるようになるほどの実力者がいる可能性は非常に低い
私が脱出するためにはサノスケがいてくれなければ困るのです
それに私たちは脱出という同じ目的をもった同志であり、仲間です。
その同志が答えを出せないまま迷い消えていくようでは私としては悲しいですし悔しい
だから私はサノスケが生きて共闘してくれなければ困るんです
脱出という望みを語り向かうならもっと胸はって堂々とどんなことでも覚悟していくものです
それができないようならば誰もサノスケが本当に脱出を望んでいると信じてはくれないでしょう。
サノスケは私はまだであって時間はたっていませんが堂々と脱出し主催と喧嘩することが目的だと言った。
だから私はそれを信じたのです』
その言葉に左之助は絶句する。
マッハキャリバーの言葉にはかつて彼が言った言葉と似たようなものが含まれていた。
言葉こそマッハキャリバーの都合で左之助には生きていてもらわないと困る
そう表面こそ言っているが本心では損得抜きで佐之助に生きて欲しい
その思いが見える言葉だった。
『もうしわけありません。出過ぎたまねをしました。
最終的に決めるのはサノスケです
私はサノスケの判断に従います』
左之助の絶句をどう受け取ったのかマッハキャリバーは謝罪の言葉を口にする。
左之助はそれに応えることができない。
あまりの衝撃だったのだ。マッハキャリバーはデバイスというからくり人形である。
それが左之助の心の一部があったのかもしれない
しかしその人形はたしかに意志を持ち覚悟を持っていた。
だが左之助はどうだろうか?
背中に悪という覚悟を背負いながらこの場では覚悟一つすることができない。
そんな自分と向かい合わざるを得なくなり左之助は言葉を失ったのだ。
「ふはははは……あははははは……」
『サノスケ……?』
そして硬直から抜け出し突如笑いだす左之助。
絶句した男が突如として笑いだせばだれだって疑問に思う。
その例にもれずマッハキャリバーも疑問に思った。
「思い出したってか気が付いたのかね?」
『……?』
笑いながら左之助は先ほどとは違う覚悟した目で前を見据える。
先ほどまで我武者羅に二重の極みを取り戻そうとしていた男も
マッハキャリバーの覚悟に絶句した男もそこにはいない。
堂々と言葉を紡ぐ
「夢を語る時は胸張って高笑いしながらいうもんだってね」
「俺は帰る場所がある。だから覚悟を持つ。
守るものある、だから覚悟を持つ。
自分がブチ壊れるまで「守って闘う」覚悟を持つ
守る者はこの胸糞悪いゲームを考えだした主催以外全てだ
殺し合いに乗ってる奴も乗ってない奴も関係ねぇ
俺が全部守って闘う」
全部守ることは実際には全部不可能。
そんなことは左之助にだって分かっている。
殺し合いに乗っている奴を守るのがほぼ無理なことだとも佐之助は理解している。
それでもそれを目指すのが左之助の覚悟。
最悪の場合は殺すことも辞さない。
それも含めた上での左之助の覚悟。
佐之助の背中の悪一文字にかける新たな覚悟。
「そうだ。これだ。ここに来てすっかり忘れてたが、ようやく見せてやれそうだ。これが俺だ。」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ところでさっき話した円盤と箱とかその他諸々の使い道、お前なら分からないか?」
ごそごそとデイパックを漁りながら腰をおろしてようやく落ち着いたのか役に立たなそうに見えた支給品について左之助はマッハキャリバーに問う
情報交換の時は魔法やデバイスのことで頭がいっぱいだったのか思いつかなった質問である。
『円盤……?箱……?
それを見せて貰えませんか?』
「見せるってどうやって?お前物だろ?」
佐之助が心底不思議そうに足元のマッハキャリバーを見つめる。
それにマッハキャリバーはまた珍しく多少呆れたような声で
『かざして頂ければ大丈夫です。』
と、言ったのだった。
「…………」
そしてあるのは沈黙。
気まずくはないが悲しい沈黙。
覚悟し信頼関係を持つことに成功したとはいえなにかと悲しい沈黙多い一人と一品(?)であった。
【D-6 橋/一日目・早朝】
【相楽左之助@るろうに剣心~明治剣客浪漫譚~】
[状態]:健康
[装備]:マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS リボルバーナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、スタープラチナのディスク@ジョジョの奇妙な冒険Part6ストーンオーシャン、携帯電話@現実
[思考・状況]
1:これが俺だ。全部守って闘う。
2:二重の極みが打てない……だと……?
3:主催者相手に『喧嘩』する。
4:友人、知人と合流する。
5:弱い奴は放って置けねぇ。
6:主催者になんとかたどり着く方法を模索する。
7:最悪の場合は殺す。でもそんな最悪の場合には絶対持ち込ませねぇ
【マッハキャリバー(ローラースケート状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS 】
[思考・状況]
1:サノスケの……覚悟……
2:相棒……
3:不調……?
4:二重の極みの本来の威力……?
5:私らしくもない……
※黎明の間はずっと練習してずっと修行してました。
結構轟音がなっていたので黎明の間にD6移動してきた人がいるならその人には聞こえているでしょう
※マッハキャリバーの不調もサノスケの不調も制限によるものです。
※佐之助はマッハキャリバーを結構使いこなせていますが”完全”には使いこなせていません。
※佐之助の機動力はかなり強化されています。
しかし本人はその機動力を生かして遠くまで移動しようという気は現在ありません
※ある程度の信頼関係を築いています。
※佐之助は色んな意味で覚悟しました。
|sm64:[[立場、逆転]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm66:[[アレックスに主人公をさせてみた(前編)]]|
|sm64:[[立場、逆転]]|[[投下順>51~100]]|sm66:[[アレックスに主人公をさせてみた(前編)]]|
|sm33:[[明治十一年の相楽サノスケ]]|相楽左之助|sm113:[[天まで届け、斬左の拳]]|
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