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「First Stage」(2009/03/13 (金) 16:25:14) の最新版変更点
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*First Stage ◆6e/o5z/zpo
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雪歩は、ただ固く目を閉じ、「死」を待った。
しかし、いつまで待ってもその瞬間は訪れない。
「俺はお前を殺す気はない。ただ話をしたいだけだ」
彼女の様子を見かねて、男――ときちくは、できるだけ穏やかな調子でそう言った。
その言葉に少しだけ安心し、雪歩はゆっくりと目を開け、振り返る。
しかしそこにいたのは、フードにサングラス姿の不審者。
「ひ……!!」
「おい、大声出すんじゃない。殺し合いにのってる奴が集まってきたらどうするんだ。
このままじゃ恰好の標的だぞ」
「ご、ごめんなさい……」
怒られて、雪歩は小さな体をさらに縮こませる。
だが、彼の言うことはもっともだった。
今誰かに襲われたら、二人ではロクに反撃することもできないだろう。
「それで、お話って?」
おずおずと話を切り出す雪歩。
正直、こんな怪しい男とは一緒にいたくないのだろう、早く話を済ませたいようだった。
「率直に聞く。お前はこの殺し合いにのっているのか?」
愚問だった。
彼が現れた時、反撃する様子など全く見せず、むしろ死を受け入れるような雰囲気さえ感じた。
そんな彼女が殺し合いにのっているはずがない。
しかし、ときちくはあえて尋ねた。
「そんなわけないじゃないですか!」
雪歩は即答する。
予想通りだ。
「じゃあこのまま死ぬのか?」
「死にたくないです……でも、誰かを殺して生き残るくらいなら、死んだ方がマシです」
それは雪歩の本心だった。
ここに集められた70人。
みんな、それぞれの人生があり、大切なものをたくさん抱えて生きている。
それらを奪う勇気は、彼女にはなかった。
ときちくは、一呼吸置いてはっきりと告げる。
「全員が助かる方法がひとつだけある」
「……え?」
雪歩は理解できなかった。
この殺し合いで自分は死に、他にもたくさんの人が死んでしまう。
それは絶対だと思っていたから。
全員が助かる方法なんて、考えたこともなかった。
「お前、忘れたのか?あの主催者達が言ってたこと。
優勝者はひとつだけ、何でも願いを叶えられる」
「あ――」
『優勝者にはどんな願いでも一つだけ叶えてあげます』
確かに、そう言っていた。
あの時のことは、思い出すだけでゾっとする。
だからできるだけ考えないようにしていた。
でも、本当に願いが叶うとしたら――?
「死んだ奴も生き返る。元の世界にも帰れる」
ときちくは手を大きく広げ、雄弁に語ってみせる。
「優勝しよう。そして、全て元通りにするんだ」
「でもそれって、みんなを……殺すってことですよね」
生き返るとはいえ、人殺しはいけないこと。
いくら精神が磨り減ってしまっているとはいえ、それくらいの判断は彼女にもできた。
「私には無理ですよ……」
「違う。俺達がみんなを救うんだ」
しかしときちくは、”善人のように”言ってみせた。
「もし、悪い奴が優勝してしまったらどうなる?世界征服をしたい、なんて願ったとしたら?
俺達どころか、世界の危機だ」
「それは……」
「俺達が正義なんだよ」
雪歩には今、心を繋ぎ止めておくための目的が必要だった。
でないと、いつの間にか生きることを諦めてしまいそうな危うさがあったから。
強い心を持たない彼女には、ときちくの胡散臭い話を拒絶することなどできなかった。
つまり――
「……はい。私、頑張ります」
雪歩は、ときちくの言葉を受け入れた。
進むことを選んだのだ。
進行方向は、穴の中より暗い所だったけれど――
▼
俺自身は、主催者達の言ったことなんて全く信用しちゃいない。
だが、こいつの心を掴むには十分だったようだ。
「それじゃあな。健闘を祈る」
そして目的を果たすと、踵を返してさっさと歩き出す。
ネガティブ思考だし、その上どんくさいし、俺にとっては足手まといにしかならないだろうから。
それに、俺は参加者を減らすことができれば十分だった。
こいつが俺の言葉を信じて、他の参加者を殺して回ってくれれば上出来。
所詮その程度だ。
自分の手はできる限り汚さずに、生き残る。
それが、俺のやり方。
女は、ポツンとその場に座り込んでいる。
「え?ま、待って下さい!一人にしないで下さいよぉ……!」
やっと置いていかれそうだということに気付いて、必死で呼び止めてきた。
「何言ってるんだよ。別行動した方が早いだろう」
「一人じゃ無理ですぅ!」
こいつ、足元に縋り付いて離れようとしない。
正直面倒なことになったと思った。
今のうちに殺してしまおうか。
……いや、逆にこれは便利なんじゃないか?
こいつは俺を信用し切っているようだし、さっきのように適当なことを言っておけば何でも聞くだろう。
邪魔になったらその時殺せばいい。
今のうちにたっぷり利用してやろう。
「分かったよ、仕方ない。お前、名前は」
「萩原雪歩です」
また頭痛がした。
その名前、どこかで聞いたことがあるんだが……
やっぱり思い出せない。
「えっと……あなたは?」
「俺は……まあ、ときちくとでも呼んでくれ」
▼
今までみんなに迷惑かけっぱなしだったけど、今度は私がみんなを助ける番。
人を殺すのはまだ怖いけど……
私、頑張ります。
これが私の最初の一歩。
私の物語はこれから始まる。
待ってて下さいね、みんな。
プロデューサー……
【A-3 平原/一日目・黎明】
【萩原雪歩@THE IDOLM@STER】
【状態】:健康、精神疲労(小) 、決意
【装備】: コアドリル@天元突破グレンラガン
【道具】:支給品一式(水少量消費)
【思考・状況】
基本思考:優勝して全てを元通りにする。
1:優勝して全てを元通りにする。まだ殺すことには抵抗有り。
2:ときちくについていく。
3:死にたくない。
【ときちく@時々鬼畜なゲームプレイシリーズ】
[状態]:健康、精神疲労(小)
[装備]: ナイフ×4、包丁×3、ブレード@サイべリア
[道具]:基本支給品、フライパン、フォーク、張遼の書@ニコニコ歴史戦略ゲー
【思考・状況】
1:雪歩を利用する。
2:自分からは殺さない。
3:絶対に生き残る。
4:自衛のための殺害は已む無し。
【備考】
※七夜志貴と十六夜咲夜の姿を確認しました。名前は知りません。
※元世界の知識はかなり封印されているようです。
※元々の能力などのせいで他の参加者に比べ疲労が激しいようです。
|sm60:[[しねばいいのに]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm55:[[包帯男雪原を行く]]|
|sm61:[[従兄のカードでございます]]|[[投下順>51~100]]|sm63:[[朝霧の幻影殺人鬼(前編)>朝霧の幻影殺人鬼]]|
|sm60:[[しねばいいのに]]|萩原雪歩|sm77:[[私、始めるのよ。これは殺し合い]]|
|sm60:[[しねばいいのに]]|ときちく|sm77:[[私、始めるのよ。これは殺し合い]]|
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*First Stage ◆6e/o5z/zpo
(登録タグ) [[パロロワ]] [[ニコニコ動画バトルロワイアルβ]] [[ゆきちく]]
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雪歩は、ただ固く目を閉じ、「死」を待った。
しかし、いつまで待ってもその瞬間は訪れない。
「俺はお前を殺す気はない。ただ話をしたいだけだ」
彼女の様子を見かねて、男――ときちくは、できるだけ穏やかな調子でそう言った。
その言葉に少しだけ安心し、雪歩はゆっくりと目を開け、振り返る。
しかしそこにいたのは、フードにサングラス姿の不審者。
「ひ……!!」
「おい、大声出すんじゃない。殺し合いにのってる奴が集まってきたらどうするんだ。
このままじゃ恰好の標的だぞ」
「ご、ごめんなさい……」
怒られて、雪歩は小さな体をさらに縮こませる。
だが、彼の言うことはもっともだった。
今誰かに襲われたら、二人ではロクに反撃することもできないだろう。
「それで、お話って?」
おずおずと話を切り出す雪歩。
正直、こんな怪しい男とは一緒にいたくないのだろう、早く話を済ませたいようだった。
「率直に聞く。お前はこの殺し合いにのっているのか?」
愚問だった。
彼が現れた時、反撃する様子など全く見せず、むしろ死を受け入れるような雰囲気さえ感じた。
そんな彼女が殺し合いにのっているはずがない。
しかし、ときちくはあえて尋ねた。
「そんなわけないじゃないですか!」
雪歩は即答する。
予想通りだ。
「じゃあこのまま死ぬのか?」
「死にたくないです……でも、誰かを殺して生き残るくらいなら、死んだ方がマシです」
それは雪歩の本心だった。
ここに集められた70人。
みんな、それぞれの人生があり、大切なものをたくさん抱えて生きている。
それらを奪う勇気は、彼女にはなかった。
ときちくは、一呼吸置いてはっきりと告げる。
「全員が助かる方法がひとつだけある」
「……え?」
雪歩は理解できなかった。
この殺し合いで自分は死に、他にもたくさんの人が死んでしまう。
それは絶対だと思っていたから。
全員が助かる方法なんて、考えたこともなかった。
「お前、忘れたのか?あの主催者達が言ってたこと。
優勝者はひとつだけ、何でも願いを叶えられる」
「あ――」
『優勝者にはどんな願いでも一つだけ叶えてあげます』
確かに、そう言っていた。
あの時のことは、思い出すだけでゾっとする。
だからできるだけ考えないようにしていた。
でも、本当に願いが叶うとしたら――?
「死んだ奴も生き返る。元の世界にも帰れる」
ときちくは手を大きく広げ、雄弁に語ってみせる。
「優勝しよう。そして、全て元通りにするんだ」
「でもそれって、みんなを……殺すってことですよね」
生き返るとはいえ、人殺しはいけないこと。
いくら精神が磨り減ってしまっているとはいえ、それくらいの判断は彼女にもできた。
「私には無理ですよ……」
「違う。俺達がみんなを救うんだ」
しかしときちくは、”善人のように”言ってみせた。
「もし、悪い奴が優勝してしまったらどうなる?世界征服をしたい、なんて願ったとしたら?
俺達どころか、世界の危機だ」
「それは……」
「俺達が正義なんだよ」
雪歩には今、心を繋ぎ止めておくための目的が必要だった。
でないと、いつの間にか生きることを諦めてしまいそうな危うさがあったから。
強い心を持たない彼女には、ときちくの胡散臭い話を拒絶することなどできなかった。
つまり――
「……はい。私、頑張ります」
雪歩は、ときちくの言葉を受け入れた。
進むことを選んだのだ。
進行方向は、穴の中より暗い所だったけれど――
▼
俺自身は、主催者達の言ったことなんて全く信用しちゃいない。
だが、こいつの心を掴むには十分だったようだ。
「それじゃあな。健闘を祈る」
そして目的を果たすと、踵を返してさっさと歩き出す。
ネガティブ思考だし、その上どんくさいし、俺にとっては足手まといにしかならないだろうから。
それに、俺は参加者を減らすことができれば十分だった。
こいつが俺の言葉を信じて、他の参加者を殺して回ってくれれば上出来。
所詮その程度だ。
自分の手はできる限り汚さずに、生き残る。
それが、俺のやり方。
女は、ポツンとその場に座り込んでいる。
「え?ま、待って下さい!一人にしないで下さいよぉ……!」
やっと置いていかれそうだということに気付いて、必死で呼び止めてきた。
「何言ってるんだよ。別行動した方が早いだろう」
「一人じゃ無理ですぅ!」
こいつ、足元に縋り付いて離れようとしない。
正直面倒なことになったと思った。
今のうちに殺してしまおうか。
……いや、逆にこれは便利なんじゃないか?
こいつは俺を信用し切っているようだし、さっきのように適当なことを言っておけば何でも聞くだろう。
邪魔になったらその時殺せばいい。
今のうちにたっぷり利用してやろう。
「分かったよ、仕方ない。お前、名前は」
「萩原雪歩です」
また頭痛がした。
その名前、どこかで聞いたことがあるんだが……
やっぱり思い出せない。
「えっと……あなたは?」
「俺は……まあ、ときちくとでも呼んでくれ」
▼
今までみんなに迷惑かけっぱなしだったけど、今度は私がみんなを助ける番。
人を殺すのはまだ怖いけど……
私、頑張ります。
これが私の最初の一歩。
私の物語はこれから始まる。
待ってて下さいね、みんな。
プロデューサー……
【A-3 平原/一日目・黎明】
【萩原雪歩@THE IDOLM@STER】
【状態】:健康、精神疲労(小) 、決意
【装備】: コアドリル@天元突破グレンラガン
【道具】:支給品一式(水少量消費)
【思考・状況】
基本思考:優勝して全てを元通りにする。
1:優勝して全てを元通りにする。まだ殺すことには抵抗有り。
2:ときちくについていく。
3:死にたくない。
【ときちく@時々鬼畜なゲームプレイシリーズ】
[状態]:健康、精神疲労(小)
[装備]: ナイフ×4、包丁×3、ブレード@サイべリア
[道具]:基本支給品、フライパン、フォーク、張遼の書@ニコニコ歴史戦略ゲー
【思考・状況】
1:雪歩を利用する。
2:自分からは殺さない。
3:絶対に生き残る。
4:自衛のための殺害は已む無し。
【備考】
※七夜志貴と十六夜咲夜の姿を確認しました。名前は知りません。
※元世界の知識はかなり封印されているようです。
※元々の能力などのせいで他の参加者に比べ疲労が激しいようです。
|sm60:[[しねばいいのに]]|[[時系列順>第一回放送までの本編SS]]|sm55:[[包帯男雪原を行く]]|
|sm61:[[従兄のカードでございます]]|[[投下順>51~100]]|sm63:[[朝霧の幻影殺人鬼(前編)>朝霧の幻影殺人鬼]]|
|sm60:[[しねばいいのに]]|萩原雪歩|sm77:[[私、始めるのよ。これは殺し合い]]|
|sm60:[[しねばいいのに]]|ときちく|sm77:[[私、始めるのよ。これは殺し合い]]|
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