森林管理参考マニュアル

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人工林の育て方
 一言で『森を育てる』と言っても、生えている木々や各藩国の気候風土、育成目標によって様々な育て方があります。
 ここではその一例となるであろう作業手順を記載します(ちなみに組合長の故郷での場合です)。
 なお、これらはあくまで一例に過ぎません。
 実際の作業は各藩国の気候風土などにより変わってきますので、皆さんが作業する時には所属する支部の方の指示に従って作業を行ってください。


・単層林と複層林
 人の手で育てられる人工林には、苗木の植えつけ方によって単層林(一斉林)と複層林という二つの呼び名があります。
 単層林と言うのは、森林の一定範囲の面積に一時期のうちに植えつけたものとなり、ほぼ同じ大きさの木々が並んでいるのが特徴となります。
 元々森のないところに新たに植林をする場合、最初はこちらの方法で植林をしていく事になります。
 それに対して、複層林というのは一つの森林の中に、年数や高さ、大きさなどが異なる木々が植えつけられたものの事を言います。
 この方法は伐採時期に達した木々を選んで伐採し(これを択伐と言います)、それによって空いたスペースに新たに苗木を植えていくもので、伐採のサイクルがある程度できてから進めていく事になるでしょう。


・地拵え
 苗木を植えつける前、もしくは間伐を行った後に行う作業を地拵え(じごしらえ)といいます。
 これは苗木を植える場所を苗木が植えられるように整地する作業で、間伐後や森林の中が植林場所だった場合、切った木の落ち枝や刈り払った潅木の片付けの事をいいます。
 また、2月から3月もしくは雪解けをしてから行われる地拵えは、春になって新たに植物が芽吹く前に秋や冬に落ちた枝や葉を綺麗に掃除する、という意味もあります。

 実際に落ち枝を集めてみると、想像以上に量が多く嵩張るので、手で拾っていくのは非常に大変です。
 そのため、作業をする時は熊手などを使って落ち枝の玉を作っていくようにしながら作業を進めていくことになるでしょう。
 ここで集めた落ち枝や潅木などを一定の場所に集めて、その上に同じく集めた木の葉をのせておくと、それらは段々と土に変わっていくので森林育成に役に立てることができます。


・苗木の植え付け
 木々の根が成長をはじめる直前の4月から5月頃に苗木の植え付けを行います。
雪の多い地方ではこの時期ではなく10月から11月頃に苗木を植えますが、これは秋植えと呼ばれています。
 苗木は1.5m~2mくらいの感覚で鍬などを使って穴を掘ってから、一本一本手作業で植え付けていくことになります。
 この時、付近の枯れ枝や石などの障害物が取り除かないでおくと、手元が狂って鍬が当たった時に思わぬ方向に跳ねたりする事があるので気をつけましょう。
 また、掘り起こした時に出てきた石や根などは、地面のくぼみや木の切り株などを使って転がり落ちないようにしておくと安心です。

 穴を掘り終えたら、穴の中の落葉落枝やゴミなどを綺麗に取り除いてから苗木を植え、根の周りにたっぷりと土を入れ、上からしっかり踏みつけましょう。
 こうすることで植えた苗木の根と土が密着するので、上手く根付かせる事ができます。
 その際に踏み固めたところで水を流し込むと、中の空気が抜けて土がへこむのでその上にまたタップリと土を入れていくといいでしょう。


・下草刈り、つる切り、除伐
 季節が夏に変わっていくと、苗木も含めた草木は大きく生長を遂げていきます。
 しかし、苗木は生長が遅く、蔓のある草木に巻きつかれたり、雑草などの生長の早い草木に覆われたりしてしまいます。
 こうなってしまうと苗木は生長を妨げられるだけでなく、場合によっては枯れてしまうこともあります。
 それを避けるために、雑草や蔓を鎌などで刈り取っていく作業が下草刈りやつる切りになります。
 植林してから8年から10年くらいまでは夏にこの作業を繰り返すことになります。
 また、苗木と共に生長していく潅木も刈り取っておかないと、養分が苗木に充分にいかなくなり立派な樹木に育てる事ができません。
 この潅木を切り取る作業の事を除伐と言います。

 どの作業も刃物を使う作業となりますので、周囲の方との距離をよく確認し、振り回したりしないように心がけましょう。
 刈払機などの機具を使って作業する場合、足元に潅木や石などの障害物があると、刃が当たった時に機具が大きく弾かれる事があり大変危険です。
 鎌や刈払機などで刈るのが難しいものは、事前にノコギリなどで切るなりして除去しておくと安心です。


・枝打ち、間伐
 植林してから10年ほど経つと、苗木も大きく生長しているでしょう。
 しかし、その分、森林内部は込み合ってくるので、一本一本の木が充分な日照が得られなくなっていきます。
 こうなってくると日光が当たらないせいで地面に下草が生えなくなり、その結果、少しの流水で土壌が流され、最終的には根の保持力が弱まって木が倒れてしまいます。
 それが自然なサイクルとなっている原生林ならばともかく、人の手で植林した人工林でのこうした事態は、人の手入れが行われなくなったのと同様の荒廃に繋がります。
 そうさせないために、木々の生長具合や他の木の成長を妨げていないかを確認し、間引いていく間伐が必要になってくるのです。
 また、植林して育ってきた苗木の枝を切り落とす枝打ちも、森林の中に日光を当てる事に一役買っており、病虫害や気象害を防いだり木々の肥大生長をコントロールしたりするという効果も持っています。

 これらの作業は、高所へ登ったり切った枝を落としたり間伐で木を倒したりと、安全確認を怠ると大変な怪我をする場合があります。
 周囲の安全確認はもちろん、周囲への合図を忘れないようにしましょう。
 また、木を切る際はロープを使う事で安全に作業ができます。
 倒したい木の高い位置にロープを縛り、その後、倒したい方向にある木にロープを回します。
 その状態で木を切る人の合図に従ってロープを引くと木を安全に倒す事ができます。
 ただし、木が倒れ始めたらロープから手を離さないと、一緒に引き摺られてしまうので気をつけましょう。

最終更新:2009年06月25日 22:51