ギル高 まとめ
http://w.atwiki.jp/momotatan/
ギル高 まとめ
ja
2006-12-09T21:13:24+09:00
1165666404
-
20氏まとめ6
https://w.atwiki.jp/momotatan/pages/58.html
日曜日-AM 8:24-
「おぉ・・・」
「おぉぉ・・・」
朝、一二三は先週見忘れた仮面ライダーを見ていた。
なるほど、むこうで聞いたとおり面白い。
細かい設定などもあったりするが、一二三脳を持ってすれば理解することは容易い。
番組が終わり、アナウンスが流れる。
『この番組は、楽しい時を作る企業BANZAIと、ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。』
テレビが次の番組の予告をする中、テレビの前で一二三が硬直していた。
「やばいよ、、これ面白い・・・。あぁ、、はまってしまいそうだぁ・・・。」
さっき見た戦闘シーンを頭に浮かべる。
「凄いなぁ、あれ・・・。まさに『血踊り、肉沸く・・・。』チップにも応用できないのかなぁ・・・
やっぱり乱舞系コンボというと、前P>近S>前P>近S>前P>スシ>スキヤキRC>いろいろよねぇ・・。」
映像に影響を受けて自分のチップの方針を改めて考え直してみる。
つーか、『血踊り、肉沸く』ってなんだよ。
一度初心に戻って、立ち回りやコンボについて考えてみるのもいいだろう。
「いやいや、でもなぁ、やっぱり凄いコンボよりも立ち回りに重点を、そうね、特に最大の長所の速さを・・・。
うん、やっぱり転移、手裏剣、迷彩を多用して速さでもって相手を翻弄、攪乱・・・。
う、、でもなぁ、この間のソル使いさん・・・双琉さん・・・だったかな。らしくない立ち回りも重要なのよね。
ん~?でもチップにとってらしくない立ち回りっていうのはどういったものなのかなぁ・・・。
どっかり腰を据えて相手と殴り合い?無理よねぇ、事故した時のリスクが全てのリターンを跳ね返してくるし・・・。
ましてや、スレイヤーやポチョ、メイとかが相手だと顕著にリスクが多くなるよねえ・・・。
チップにとってはらしくない立ち回りをするときは時と場所と空気を読まないとダメってことだね。
てことは、必然的に立ち回りは高速の出入りでこっちの世界に相手を引きずりこむことなるのかな、、
いやいや、敢えて相手の世界に飛び込んで玉砕覚悟のカミカゼアタック??
いや、だからそれはダメなんだってば、危険度が高すぎてとても今の私じゃ使いこなせないよ・・・。」
悶々と考えを廻らせる一二三。
やはりここは誰かに相談してみるのがいいのだろうか、、でも自分のスタイルは自分で考えた方がいいか・・・?
「うん、やっぱり基本となるのは速さよね、それが全キャラに勝っている点なわけだし。
『この世の理はすなわち速さだと思いませんか?物事を速く成し遂げればその分時間が有効に使えます。
遅いことなら誰でもできる、二十年かければ馬鹿でも傑作小説が書ける、有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、
週刊よりも日刊です。つまり速さこそ有能なのだ、文化の基本法則、そして俺の持論です。あぁ、二分二十秒・・・また二秒世界を縮めた・・・。』
と、どこかの誰かも言ってたしね。うんうん。」
どっかの誰かの台詞を引用しつつ考えをまとめてみる一二三。
結論は「速さバンザイ!」といったところで一応の落ち着きを見せた。
さらに一二三の考えは止まることをしらない。
「それから、チプコンて呼ばれるチップのエリアルコンボだけど・・・
先生が言ったとおり、相手のバーストゲージが増えるのが難点なわけだし・・・やっぱりサシミ落としで・・・
となると、キャラ別に最大ダメージの叩き落としを覚える必要が出てくるね・・・
別に覚えるのは全然苦じゃないんだけど、最大ダメージだとやっぱりバースト増える?う、考えが一周した・・・。
削岩脚をキャンセルする度に一秒間テンション上昇量が20%になるとか授業で聞いたっけかな・・・。
正確にはFDする度だったと思うけど、、となると、テンションをより多く回収できるコンボってのはどんなのかな・・・?
やっぱりコンボ中にどんどん前に進めたほうが溜まるのかな・・・う~~???
あ、空投げがあったなぁ、、、うん、ワザと復帰させて空投げってのも選択のうちよね・・・。
コンボを入れつつ復帰投げってことは、2段ジャンプでエリアルを止めればいいよね、うん・・・出来るかな?」
家庭用を起動して早速空投げの練習を始める。
とりあえず投げられそうな、というか相手が空中判定になる物は一通り練習してみた。
ミリアのアイアンセイバー、カイのグリードセバー、梅喧のJHS、ジョニーのディバインブレイド。
更にブリジットのメンテナンス中の悲劇、終いにはナパームデスやディエルタエンドも練習してみた。
「・・・空投げは奥が深いわぁ・・・。うー、疲れた。」
そのまま床にベタンと張り付いて寝息を立て始める。
実際ここまで使えるのかどうかわからない物の練習は疲れるものだ・・・、面白いけど。
―次の日―
昨夜の血のにじみ出るような練習で身につけた
『血と汗と涙とキムチの結晶的チップ理論』もとい空投げを試すべくZEPPSへやって来た三人。
空投げの練習をしたのは一二三だけですが・・・。
「やっぱり、、ZEPPSが一番落ち着くわね。」
「今俺も同じこと考えてた・・・。」
やはり一般ゲーマーの中で対戦するのは息苦しい。
だが、ここに要るのはほとんどギル高生だ、気兼ねなく対戦できる。
なにより、自分と均衡した腕の持ち主と出会いやすい。
実力が近い者同士戦うのは、なによりも成長への近道だ。
「あ、あの子」
ふと樹が誰かを見つける。
どうやら向こうも樹に気づいたらしい。
「久しぶり、子澄ちゃん。」
「お久しぶりです、別に呼び捨てでも構いませんよ?」
「あ、そう?それじゃ遠慮なく、」
樹が見つけたのは一人の明るい女の子。
先日、偶然ZEPPSで遭遇した夜貞 子澄だ。
「あれ?連れは?」
「ケンジですか?向こうの筐体で頑張ってますよ。」
なるほど、それらしい人物が筐体に座っている。
やっぱり独り言は治っていないらしい、口元がモゴモゴ動いている。
「樹さん、知り合いですか?」
「ん?あぁ、ごめん。紹介するね、こちら夜貞 子澄さん。それであっちが剣 犬助くん。」
「よろしくね。」
「あぁ、よろしく、佐藤 愛。"男"だ」
「一二三・エア・プロヴォークです、えと、、よろしく。」
犬助だけ自己紹介が済んでいないが、今は手が離せないようだ。
「よかったら、ケンジの相手してあげて下さい。今日は乱入すくなくて」
「それなら私行ってきます。」
一二三が乱入しようと筐体に歩いていったその時、
そこには筐体の椅子に手をかける女性の姿があった。
「・・・?乱入するのか?」
「あ、いえ、お先にどうぞ。」
微妙におっかない人だが、悪そうには見えない。
勿論一二三の目と脳が勝手に判断した上での結論なので断言はできない。
「なんだ、先取られちゃったのか。」
「それなら、ケンジの後ろで見ようよ。」
と、言うわけで、そそくさと犬助の後ろ側へ行って試合を見る。
さっきの女性が選んだキャラはアクセル。
犬助のキャラはザッパだけに、かなり不利な組み合わせだ。
『楽しくやろうぜ』
HEAVEN or HELL Duel1 Let's Rock!!
まずはアクセルがバックジャンプSで距離を離し、Pで牽制を始める。
対するザッパはムカデ、憑依一発目は・・・幽霊だ。
「幽霊か、、じゃぁとりあえず距離とって・・・」ボソボソ
犬助が悪癖の独り言を呟きだす、後ろから子澄が突っ込んでいるが気にしない。
『あもあもあもあも』
アクセルの射程外まで距離をとり、まずはS長男を発射。
立て続け様にダッシュHS次男発射。
そこから一気にダッシュして距離を詰めに掛かる。
「そのまま固まっててくれよ・・・」ボソボソ
そしておもむろにJHSで三男爆発。
狙いは着地ダストらしい。呟いているから解る。
『隠し技だぜ。』
「あっ・・・!」ボソボソ
一瞬アクセルが白く光り、円を描いた。
「このアクセル強いなぁ、、」ボソボソ
犬助の独り言は止まらない、家庭用で対戦していたら手の内がばれてしまいそうだ。
先ほどから後ろで見ている愛の顔が少し引きつっている。
どうやら、独り言のせいでかなり怖い人間に見えているらしい。
画面の中ではアクセルの攻めが始まっている。
鎌閃青を当てる・・・と見せかけて当たる直前に青キャンをかける。
「投げ!?」ボソボソ
とっさにボタンを押す。
『注意一秒、怪我一生。』
投げ潰しの暴れを読んだ当て身。
画面には布を被されてもがいているザッパの姿。
※決して白い布を頭に被されているわけではありません。まだ生きています。
ザッパの残り体力は約半分。アクセルはほぼ無傷だ。
いまだアクセルの猛攻は続いている、犬助は先ほどの当て身の恐怖がまだ残っているらしく手を出さない。
『ノリノリだぜ。』ロマンティーック!!
「ケンジ、投げだよ。」
「うぇぇ!?」ボソボソ
突然子澄が「相手の次の手は投げ」と言い出した。
助言をムダには出来ないので、犬助もレバーを上に倒す。
なるほど、どうやら当たっていたらしい。
アクセルが一瞬FDを貼った、仕込み投げだ。
勢いでムカデまで繋いでダウンを奪う、憑いたのは犬。そして画面端
「キタ―――――――(。A。)――――――――!!」ボソボソ
犬助が寒気の声、じゃない、歓喜の声を上げる。
後ろで愛が「リアルザッパ怖いよ~」とか言っているが置いておこう。
まずは犬噛み付きから強制的にガードをこじ開けワンコンボ。
みるみるうちにアクセルの体力が無くなっていく。
アクセルのGBが点滅する。この状態でコンボを入れれば勝てるだろう。
「ここで投げですよ・・・」ボソボソ
言葉どおり、投げを狙いに行く。
『隠し技だぜ。』
「読まれてた・・・!」ボソボソ
犬助の投げを見透かしたようにS弁天で割り込み。
『ドッカーン!ドッカーン!』
威勢良くアクセルボンバーが決まる。
もう体力が残っていない、次何かを食らったらそのまま死ねる。
「S子の傍まで逝けそうだぁぁ・・・」ボソボソ
「あきらめちゃダメだよ、ケンジ。」
FDを貼って何とか攻めをしのぐ。
「産まれる」で割り込みたいが残念ながらテンションが無い。
『ノリノリだぜ』ロマンティーック!
鎌閃青の直後、アクセルの手から青白い何かが放たれる。
「あ、やばっ」ボソボソ
気づいたときにはもう遅い。
画面に映るのは宙吊りになった青年ザッパの姿
※決してS子の呪縛に耐えかねて首吊り自殺をしたわけではありません。
『気分はどうだい?』
「最悪です。」ボソボソ
ズギャーン!
― S L A S H ―
『アンタ、弱いねぇ。』
「無理ポ」ボソボソ
2ラウンド目はラオウが憑依するも、当て身に踊らされて負け。
何度か、子澄のアドバイスに救われたりもしたが、それでも負けてしまった。
「拝啓母上様、やはりギル高は凄いところでした。
田舎のゲーセンとは格が違います。最近自信が無くなって来ましたが、頑張っています。」ボソボソ
その後、一二三がチップで乱入するも、
暴れを誘われては当て身を喰らい負ける。
ちなみに、昨晩血の滲むような練習をした空投げはまあまあ役にたったようで、
S雷影やら6HSはバシバシ投げ飛ばした、つかハラ切った。
さらにその後に愛が頑張ってみるが、
やはり足暴れ狙いの当て身が厄介だったようでかなり苦戦していた。
切迫した試合が続いたが、結局は2タテ喰らって負け。
「このアクセル、強いぞ・・・。」
「暴れ取り上手すぎるよなぁ」ボソボソ
「むしろ最後は動く気さえ失せませんか・・・?」
「「わかるよ、その気持ち。」」
戦った物が口をそろえて「動きたくなくなる」とさえ言っている。
このアクセル使い、只者ではない。
「それより一二三、ずいぶん空投げ上手くなったんじゃない?・・・て、あれ?一二三は?」
さっきまでそこで喋っていた一二三がいない。
ふと辺りを見渡すと、一二三は筐体に隠れるようにしてアクセル使いを見ていた。
「何やってるの?」
続けて樹も筐体の後ろから覗き込む。
「何してんだ、お前ら?」
さらに愛も覗き込む。
「どうしました?」
ついでに犬助も覗き込む。
「みんな、どうしたの?」
最後に子澄までもが覗き込む。
「そこ、・・・いつまで見ている?」
いい加減痺れを切らしたのか、アクセル使いの女性が口火を切る。
「え、いや、あのその~、、ただ・・・強いなぁと思って。」
「・・・さっきのチップか?」
アクセル使いの女性は長いブロンドの髪に長身。
丁度、樹と並ばせると対照的な感じだ。
樹が女テスタメントだとすると、アクセル使いは女アクセルといった具合
「ど、どうして私のキャラが解ったんですか!?」
「日本人じゃないからな。」
質問しても返ってくる答えは随分と簡潔なものばかり、
あまり物事を多く語りたがる性格ではないらしい。
「あ、そうだ。私、一二三・エア・プロヴォークです。」
「・・・鎖蜂 焔(さばち ほむら)だ、好きに呼べ。」
「じゃぁ『サッちゃん』!」
「却下する。」
「それなら『ほむっち』!」
「却下」
「好きに呼べって言ったじゃないですかぁ~。」
どうやら、一二三は「人間はちゃんをつけて呼べばいい」と思っているらしい
それが嫌な人間もいるってことを忘れちゃいけないんだが・・・。
「と、とりあえず・・・あたしは五所川原 樹。」
「随分とゴツイ苗字だな。」
「俺も言うのか・・・、佐藤 愛だ。うん」
「ザトー・・・?」
「ウガ、、、初対面の人間は殴りたくないんだがな・・・。」
「あ~、、剣 犬助です。」ボソボソ
「? すまない、聞き取れなかった。」
「剣 犬助っていって、あだ名はケンジです。私は夜貞 子澄、よろしく~。」
「・・・そうか、」
それぞれ自己紹介を終える。
自己紹介しつつも画面内のアクセルが相手の牽制を取っているのだから驚きだ。
その後、何度か対戦してその日は帰ることにした。
夏休みももうじき終わろうかというその日
担任の雁田に呼び出され一二三は学校へ来ていた。。
「おい、一二三、お前部活見学してないだろ?」
「はい、してませんよ。」
「せっかくだからパンフレットだけでも渡しておこうと思ってな」
「あ、わざわざありがとうございます。」
早速パラパラと冊子をめくってみる。
「むむむ…柔道、剣道、、意外と普通なものが揃ってるのね。。。
てっきり刺激的絶命拳部とか危ない物があるんじゃないかと思ってたのに。」
「柔道部:48の必殺技を身につけろ。」
「剣道部:今日から聖騎士団。スタンエッジ!」
「美術部:萌えよギルヲタ達 ハァハァ」
「音楽部:ミギーの素晴らしき音楽を演奏しよう!」
「野球部:絶対ホームランバッター。」
「ヨーヨー部:おひとつどうですか?」
「斎藤流古武術部:テスタメントもイ・チ・コ・ロさ」
「居合の会:雲長師範直伝。」
「HAIKUの会:朝起きて すれ違い様 プチ旅行」
「ビリヤード部: や ら な い か 」
「心霊同好会:ザッパは実在するんだ!」
「隠語しりとりを愛する会:一歩大人の女性になろう」
「猫愛好会:追いかけっこに限界は無い。」
「日本舞踊部:GP付き、決して弱くない。」
「Z団:戦いは数だよ兄貴!」
「現代視覚文化研究会(現視研):ココニイル」etc...
(・・・いや、、全然普通じゃない・・・。
特に、美術部、ビリヤード部、Z団、現視研は謎が多すぎるよ
他はなんとなく想像が出来る。。ギルティのキャラに置き換えれば・・・
あぁ、ビリヤードはヴェノムね、そっか。
・・・まぁ・・・部活はやめとこうかな。)
意味不明な部活の数々に戸惑う一二三に雁田が声をかける。
「どうだ?入る気になったか?
健全な精神は健全な身体に宿るからな、是非部活はやったほうがいいぞ。」
「ハァ、、考えておきます。」
そうは言ってみたが、とても入る気にはなれない。
その日の帰り、ついでがてらにZEPPSに寄っていくと、そこには樹がいた。
「一二三、その冊子どうしたの?
ん?あぁ部活ね、可笑しいの揃ってるよね。」
「えぇ、樹さんは何か入ってるんですか?」
「いえ、何も入ってないわよ。
というより、入れるものがないっていうのかな・・・w」
「そうですか、、愛ちゃんは?」
一瞬、樹の顔から笑みが消える。
なんとも言いがたい真面目な顔になった樹は重い口を開いた。
「・・・アイツはぁ・・・現視研さ行っただぁ。」
「・・・どこの訛りですか。」
鈍行の窓に人生が映りそうな、そんな午後のひとときなのでした。
さて、夏休み最後の月曜日。
今週が終わると、とうとう夏休みもお終いである。
今日は三人揃って愛の家に集まっていた。
『ナインボール、ゲットだ。』
「あ゙ー!F式なんぞ抜けられるわけねぇがや!!」
「いや、お前どこ出身だよ。それに今の劣化版だし・・・。」
最近わかったことだが、樹は狼狽すると訛りだすようだ。
以前はそんなことなかった気がするのだが・・・、現に今は訛っている・・・。
しかし、彼女の使う方言は多岐に渡っていて、日本の最北から最南まで網羅している。
「ところで愛ちゃん、このプリントはなんですか?」
「あ、いやそれは部活の・・・」
「えと、、学園祭・・・コスプレ・・・?こすぷれ、、って何ですか樹さん??」
「コスチュームプレイの略だと思うけど・・・。」
そう、ギル高現代視覚文化研究会では学園祭で
『GuiltyGear XX #Reload コスプレMATSURI!!』を開催する予定なのだ。
「・・・丁度いい、お前らコスプレしろ。」
「断固拒否!」
「なんだか面白そうな響きですねぇ~。」
「おう、面白いぞ。」
具体的にコスプレとは何か知らない少女一二三。
しっかりと愛に騙されて(?)あっさりとコスプレMATSURI!参加を承諾。
「なんだよ、樹もやれよ、釣れねぇなぁ。」
「コスプレなんかやらないからね。」
(無理!絶対に無理!コスプレなんか出来るかぁ!!
何があっても断固として拒否の姿勢を崩しちゃダメよ、樹。)
「やれよ、テスタメントで我慢してやるからさ。」
「断固拒否」
「んだよ、、じゃぁイノか?」
「ばっ、断固拒否」
「文句多いな・・・、梅喧ならいけるか。」
「断固拒否ぃ~。」
「あぁ、ジャスティスなら出来そうだな!」
「だから断固拒否だってばぁ!」
頑なに断固拒否の姿勢を崩さない樹。
この調子で勧誘を続けたら宇宙から電波を受信してしまいそうだ。。
「しゃぁねぇなぁ、じゃあこうしよう。トランプで決めようぜ。」
「・・・ギルティじゃないの?」
「だってギルティだと俺の圧勝だもんねー」
「ガッ、ちょっとアンタ!前言撤回しなさい、トランプくらいあたしは負けないからね!」
・・・やられた。乗ってしまった。
敢えてギルティ以外の勝負を持ち掛けることで誘いに乗せてくるとは・・・。
でも、トランプならば顕著に実力は反映されない。
むしろ運に左右される、誰にでも公平に勝機が訪れるゲーム、ギルティとは違う。
これなら、、勝てる!
「ん?トランプで勝負するか?」
「・・・いいわ、トランプで勝負してあげる。勝ったらコスプレはしないわよ。」
「お、じゃぁポーカーで勝負。」
コスプレを掛けて2人に5枚ずつカードが配られる。
・・・あたしの手札は
・ハートの2
・ハートの8
・スペードの8
・クラブの10
・ハートのJ
(5枚のうち3枚がハートのカード・・・、
どうしようかな、、スペードの8とのワンペアは捨てないほうがいいかな・・・
リターンが一番大きいのは5枚捨てての完全な大穴狙い、
でもリスクが、チップがスレイヤーに開幕幻朧斬をするくらい大きいし・・・。
やっぱりリスクとリターンが一番かみ合うのはハート五枚のスラッシュもといフラッシュ・・・よし!)
いざ余計な2枚を捨てるべく手を掛ける。
しかし、視界には5枚全部を横へ放り投げてカードを引きなおす愛の姿があった。
(なっ、、まさかそんな・・・。
いや、きっとアレはあたしへの心理的な揺さぶりよ。
あんなリスクリターンが崩落した選択肢は普通選ばないでしょ・・・。
あぁぁぁぁ、トランプは運で勝負が決まるゲームじゃなかったの!?
思いっきり読み合ってるし、というかあたし一人でテンパッてるしぃ~!)
激しく困惑しつつも2枚のカードを捨てて、新しいカードを引く。
樹が手にしたカードは「ハートの7」そして「ハートのK」
(きたきたきたきたぁー!フラッシュ成立ぅ~!)
勝利を確信し、両手を天に掲げる。
「コスプレ免除ぉ~、フラッシュフラッシュ!」
「・・・フルハウス」
その言葉を聞いた途端に樹の動きが停止する。
「・・・ねえ、これはどっちがつよいの?ていうかー、ふるはうすってなんですかぁ~?」
「俺の 勝 ち 」
「え、なに?しくんだ??」
「君 コ ス プ レ 」
この瞬間、樹の学園祭コスプレが決定した。
夏休みも終了し、いよいよ本格的に修学旅行、学園祭の準備が始まる。
聞いたところによると、今年の修学旅行は海外へ行くらしい。
一体全体どこへ行く気なのだろうか、ギルティキャラの出身国巡りかもしれない。
そして学園祭、愛は未だ地道な草の根勧誘活動を続けている。
ただし、一二三と樹以外にまだ誰も捕まっていないようだ。
さて、楽しい行事はさておいて、今日はテストの日。
雁田曰く、
「この数字はお前らの『評定』だ。強さに応じて数値が違う。5が最高で1が最低だ。
これからお前らには校舎に適当に散ってもらう。
チャイムが鳴ったら校舎をうろついて戦いを挑め。
誰と戦ってもいい。他クラスでも関係ないぞ。筐体は校舎のどれを使ってもいい。
戦いを挑まれた場合、拒否権は無い。対戦は1R先取。
勝ったら相手のカードを奪う。負ければ自分のカードを相手に渡す。
最後に自分の持っているカードの数字の合計を最終的な評価とする。
自分のカードが全てなくなった時点で失格だ。つまり3回負けたらゲームオーバーってわけだ。
失格になっても相手のカードを奪っていれば得点はそのまま与えられる。
つまり強い奴を倒せば一気に+5点。弱い奴だと倒しても+1点にしかならないというわけだ。
が、強い奴と戦うと当然自分のカードを奪われるリスクも増える。
あと、一度勝った生徒に再挑戦することは出来ない。でも相手からの再挑戦は受けることが出来る。
以上、質問はあるか?」
だそうだ。
その後、順々に生徒にキャラが描かれたカードが配られていく
「次、五所川原。」
「はい」
樹のカードに書かれていた数字は『2』。
お世辞にも高い数字とは言えない。
そもそも、樹のメイの立ち回りは一点読み&事故狙い。
事故を狙うためにはテンションを惜しまない謎っぷり、
普段から安定した強さを発揮できる立ち回りとは言いがたい。
さらに一学期の筆記試験は勉強不足が祟って10点。
「右渡太輔」を「右渡大輔」と書いて見事に玉砕。
通信簿も結構ぼろくそ言われていた・・・、コンボ精度以外は。
「次、佐藤」
「は~い」
愛のカードに書かれていた数字は『4』。
上位陣の仲間入りである。
愛のヴェノムはボール硬直を利用した崩しが最大の売りだ。
他にも、表裏二択も得意としている。
読みも鋭い方だが、樹同様こちらも一点読みが多い。
やられるときはひたすらボコボコにされるというタイプだ。
攻めは申し分ないが、防御面で多少の不安がある。
特にダストをポコポコ喰らったりしてしまうのは頂けない。
それと、動きが速いキャラは苦手、特にミリア。
余談だが、愛は勝った時にPボタンを押しっぱなしにしてヴェノムのポーズを固定する癖がある。
「次、一二三」
「はい」
一二三のカードには『3』の数字。
消しゴムのような物で一度消された形跡がある。
一二三のチップは立ち回りに重点を置いている。
特に目立つのは事故率の低さ。ぶっパイルくらいにはそうそう当たらない。
最近空投げ連携を習得し、隙があれば狙っている。
弱点は『挑発』
意外にも、挑発されるとすぐにカッときてたちまち事故る。
そんなこんなで、テスト開始。
―樹―
(さて、と。どうしたものかしら・・・。)
教室を出てみたものの、どこに行けばいいか解らない。
ふらふらとほっつき歩いているうちに10分が経過する。
(そろそろ、、人が見つかってもいいと思うんだけど。。)
比較的人が集まりそうな場所を考えてみる。
だが、もともとこの学校で大量の人が押し寄せる場所などない。
入学式の時には気味悪いほど人が集まっていた場所もあるが・・・、今は違う。
(・・・部室棟のほうに行ってみようかしら。)
ふらふらと歩き出す。
目指すは部室棟、日本舞踊部部室。
―――つまり闇慈使いの溜まり場。
早くも弱キャラばかりを相手にしようという卑下た考えである。
「そこのお前、止まれ。」
いきなり声を掛けられる。この声・・・どこかで聞いたことがある気がするが・・・。
声の主は意外と近い場所にいた。ブロンドの長髪、樹に負けないほどの長身。
「・・・ドッペルゲンガー!?」
「違う。」
「・・・って、なんだ鎖蜂さんか。」
「失礼な、、勝負を申し込みにきた。」
探す手間が省けた、助かる。
だが、焔はZEPPSで犬助、愛、一二三を倒したツワモノだ。
評定もかなり高そうな予感がする。
間違いなく樹のそれよりも高いことは容易に想像できる。
そんな考えを知ってか知らずか、焔がカードを取り出す。
書かれていた数字、、それは『4』。
「・・・ご、ご遠慮しますわ。」
「拒否権はないぞ。担任から聞かなかったか?」
そうだ、このテストには『拒否権』は存在しない。
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
―愛―
(さて、どうするかな・・・。
もらったカードは『4』だしな、、その辺にいても相手から寄って来るか?)
・・・と、いうわけで教室のすぐ前の廊下で待つことにした。
一人、また一人と人が出て行く。
こちらを見る奴はいるが誰一人として勝負を挑んでこない。
(暇だ、、一二三が出てきたら勝負してみるか。)
とは言っても、一二三は転校生なので、現時点では出席順で一番最後だ。
ちょうど今出た人で最初からいる奴らは全員教室を出たことになる・・・。
転入生はたしか一二三を含めて3人だったはず。
そのうち1人は闘劇出場者とかいわれていた気がする・・・。
確かミリア使い、、実力は折り紙つき・・・。
出来る限り戦いたくない、負けるのが目に見えている。
そんなことを考えていると、丁度そのミリア使いが教室からでてきた。
(・・・こっち見てるし、、はやく向こうへ行ってくれ。)
「お前、、、ザトーとかいったか?」
「佐藤だよ!」
(って、なに反応してんだ俺の馬鹿ぁーーーー!!)
「ウォームアップがしたい、付き合ってくれるか?」
そう言ってカードを取り出す。
当たり前のように書かれた数字は『5』。
「拒否権、、ないんだよな、仕方ない・・・。」
「・・・感謝する。」
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
― 一二三 ―
教室を出てから時間にして約15分。
いまだに人っ子一人見つからない。
探す場所が悪いのだろうか、、体育館にも誰もいなかった。
・・・チョット待て、体育館には居ただろう。見逃したのか?
(困ったなぁ、、昇降口と、体育館と、職員室と、事務室と、それから屋上も誰もいなかったよ・・・。
ほんとにみんなテスト受けてるのかなぁ。。う~~ん、次は食堂かなぁ・・・。)
―――たぶん食堂も人はいないと思うぞ。
―食堂―
(・・・やっぱり誰もいない。)
ここにも人はいない。
ジェリーフィッシュ海賊団の格好をしたウェイトレスならいるが・・・。
(次はぁ、、教室に戻ってみようかな。)
踵を返して食堂を後にする。
・・・その瞬間。
「おい、そこの小さい奴!」
「はい・・・?私ですか??」
振り向いて見てみると、そこに立っていたのは一二三より小さい女の子。
髪の毛はボサボサ、、というかツンツンしてる、、というか・・・そんな感じ。
見た目日本人ではない、だが外国人でもない。たぶんハーフだ。
板チョコをバリバリと頬張っている。
「テスト受けてるんだろ?勝負だ!」
元気いっぱいにカードを取り出す。
描かれいるのは紙袋の医者、ファウスト。裏には『1』の数字。
手についたチョコがさらにカードに付着している。
「いいですよ、やりましょう。」
一二三も同様にカードを取り出す。
「おぉ、お前『3』なのか!強いな!!」
「え、そんなことないですよぉ・・・普通です、普通。」
「それじゃ私が弱いみたいじゃないか、お前は強いんだ!」
「はぁ・・・?」
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
―愛―
『ザトー様ァッ!』
『ボーっとしてるから・・・。』
(ふふふ、、負けた・・・完敗だな。
ボーっとしてる暇すらなかった気がするが、、
流石は評定『5』、、流石は闘劇出場経験者・・・、格が違う。たぶん『5』より上だな。)
肝心の試合内容:
開幕、意外性重視でダッシュからいきなりの足払い。
どういうわけかミリア6Kで避けられてそのままダウンを奪われる。
起き攻め、セオリー通りにHSタンデム。
低空ダッシュ>空中バックダッシュ>高速落下
ダッシュが2回出た時点で愛はもう混乱してる。
そのまま屈HSで空中に放り上げられて、バーストするも見事に読まれ、
そこから20ヒットは簡単に超えそうな、とっても長いわけわからんコンボを喰らって。
ガーデン起き攻めで硬直利用の高速中段喰らって・・・、SLASH
対戦後、筐体の後ろからミリア使いが顔を出す。
「まずまずだな。」
「言ってくれるよまったく、、ほらよ、俺のカード。」
そう言って自分のカードを差し出す。
・・・しかし、相手はそれを受け取ろうとしない。
「・・・?ほら、カード。」
「いや、今のはウォームアップだから・・・、いい。」
「でもルールだし、」
「気にするな、私はもう行く。」
それだけ言って青い瞳のミリア使いはサッサと向こうへ行ってしまった。
(なんだぁ?まぁ、、命一つ失わずに済んだからいいか。)
そんなこんなでミリア使いとは逆の方向へ歩き出す。
―樹―
それはいきなりの出来事だった。
ふと閃いた瞬間に前Pを振ったら見事にカウンターした。
これまたふと閃いた瞬間に山田さんを呼んだら相手はJSを振っていた。
きづいたら相手は気絶していた。
慣れた手つきでコンボを決めたら倒せてしまった。
いきなりの大金星だった。
正直、以前ZEPPSで見た時の焔の立ち回りとは似ても似つかなかった。
『野望に一歩前進!』
それは正に樹の今の状態を表したかのような一言。
犬助や愛、一二三を倒した評定『4』のアクセル使いを倒したのだから。
「・・・その『2』は何かの冗談か?」
「いや、あたしのだけど・・・。」
「そうか・・・私のカードだ、持って行け。」
かなり残念そうだ、そりゃ『2』に負ければ残念か・・・。
それ以上に何かもっと重たそうな失念を抱えているようにも見える。
「・・・ねぇ、何かあった?相談乗るよ?」
「む・・・。」
焔の様子を案じて『相談に乗る』と言ってみる。
最初は口をモゴモゴさせていたが、結局焔は理由を話してくれた。
「吸に完膚なきまでに倒された・・・。
それで自分の実力の程度が知りたくて、そこにお前がいたんだ。」
なるほど、焔が持っているカードは2枚。
アクセルの『4』とテスタの『3』、、もう後がない。
「そっか、、でもねぇ、自分の戦い方を忘れたら『1』にだって負けるわよ?
まず深呼吸しましょう。話はそれからよ。」
「・・・そうか。」
2人並んで深呼吸をする。焔も大分取り戻してきたようだ。
「それじゃ、あたしはもう行くね。」
「・・・部室棟の方か?」
「これから闇慈を狩ってくるわ。」
グッと親指を立ててみせる。
「この卑怯者。。。」
「なんとでもおっしゃい、一学期の名誉挽回よ。」
それだけ言って二人は別れる。
樹が目指すは闇慈使いが集まるであろう『日本舞踊部』の部室。
― 一二三 ―
『さっさと始めようぜ。』
『わったしが来ったからには、いろいろな保障はできませんよ♪』
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
『あったーま!』
『ハラキリ!!』
開幕の大読みが的中した。
槍点を空投げ、そうそう狙って出来ることでもない。
そのまま着地>γまで繋ぐ
そこからP転移、相手の後ろに出現する。
『なにすんのさ。』
『ハラキリ!!』
復帰を空投げ
そのまま着地>γまで繋ぐ
そこからP転移、相手の後ろに出現する。
『なにすんのさ。』
『ハラキリ!!』
復帰を空投げ
そのまま着地>γまで繋ぐ
そこからP転移、相手の後ろに出現する。
『なにすんのさ。』
『ハラキリ!!』
復帰を空投g(略
(、、、このまま同じ連携でいいのかなぁ・・・。『ハラキリ!!』)
(受身を取らないでください、『ハラキリ!』、投げちゃうから・・・。『ハラキリ!!』)
(ごめんなさい、『ハラキリ!!』 ごめんなさい、『ハラキリ!!』)
(あぅぅ。。。)『ハラキリ!!』
― S L A S H ―
『みぎゃぴぃーーーー!!』
遂にファウストの断末魔がこだまする。
結局ダメージソースは全て空投げ。
「おぉ、チップは脱出不能の即死連携が使えるのか!」
「いや、、あれは・・・、そのぉ・・・。」
恐 る べ し 『 1 』 。
2006-12-09T21:13:24+09:00
1165666404
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20氏まとめ5
https://w.atwiki.jp/momotatan/pages/57.html
「さて、決勝戦、まずは『恋するヴェノム様』が先取する形となりました。
つづく中堅戦が楽しみですね、レベルの高い試合が期待できそうです。。
それでは『エムエー』対『SΩJ』! メイ、チップです!!」
決勝中堅戦はメイvsチップ。
これに勝つことが出来れば優勝が決まる。
「一二三、頑張ってね。」
「はい、任せてください!」
「さぁ、高速の立ち回りで魅せてくれるかチップ、それともCHでピヨってしまうのか。
対してメイはどう戦うか、、なにせチップは速さだけは人外の域達してますからねぇ・・・。
ん?あぁ、、はいはい??あ、そうですね、防御力も人外の域ですね・・・、まぁ、仕方ないんじゃないですか?」
司会者が「人外」について色々解説している。
たしかにチップの速さは頭一つ出ている。防御係数も頭三つくらいは余裕で出ている。
まぁ、メイの馬鹿力も問題なく飛びぬけているわけだが、、他が他だけにあまり目立たない。
やはり、このゲームのキャラにまともなことを望む方が間違っている。
そもそも、一般青年のザッパですら、精神寄生体に憑かれればアレほど強くなれるのだから、
『師匠、見ててくれよ。』
『泣いても知らないよ~!』
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
「これで一二三が勝てば、お前出番なしだな。」
「あはは・・・、なんかツマンナイね。」
「意地張って大将なんかやるから暇なんだよ、大体、俺達ギル高生だぞ?」
「確かに・・・、普通の人には負けない、か。」
確かに、ここで一二三のチップがメイを倒した場合、樹の出番は無い。
ただし、相手がメイなのでピヨって負けてしまう可能性は無いとはいえない。
しかし、一二三のチップはちょこまかと動き回って的を絞らせない戦い方が印象的だ。
特に『事故』に関しては細心の注意を払って立ち回っている。
必然的に事故を狙いがちになるチップ戦において、事故しないチップは脅威だ。
ただ、それでも読まれてしまえば死ぬのはあっという間なのだが・・・。
「さぁ、γブレードを読んでいたかエムエーのメイ!!」
画面には体力4割のチップと体力5割のメイ、
どうやら体力的には押していたが、γを読まれて痛いコンボを喰らったらしい。
「まぁ、一二三なら二度目は無いわよね。」
「あぁ、そのことは俺達が一番よく知ってるしな。」
「あ~あ、、結局あたしは出番なしか。」
指を組んで腕をグッと伸ばす。
その瞬間、一際大きな音が会場に響き渡った。
『シッショー!!』
「あ、、負けた。」
「え、うそ、、、」
呆気にとられる2人、一二三が負けてしまった。
どうやら最後の最後に前Pカウンターを喰らって、意識を失ったらしい。
「エムエーの読みが冴え渡りました、中堅戦・・・、
チップが、、定番通りのやられ方をしてしまったのが、、少々悔やまれます。。
次は、大将戦・・・、『恋するヴェノム様』チームは初めて大将が出てきますね。
では、早速行きましょうか、大将戦!『オレナ』vs『猛者シャチさん』!ジョニー対メイ!!」
「あ、、樹、頑張って、、こいよ・・・?」
「え、、えぇ・・・、まぁ、頑張ってくる・・・ね」
(・・・そういえば、相手の人って編入試験受けてる人よね?
ということは、実力はそれなりにあるってことね・・・、油断できないわ。)
チーム『JEM』最後の砦となる大将のジョニー使い。
見に来ていた雷悪は、確か「織那 蔵」と言っていた覚えがある。
なるほど、、ギル高生の資質が垣間見える名前だ・・・。
『メイの不戦勝ー!・・・てのはどーぉ?』
『勝負にプライベートを・・・、持ち込むもんじゃないぜぃ?』
『いいもん!ジョニー食事抜きッ!!』
『おまっ・・・、汚ねえぞ!』
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
「始まりました、大将戦・・・、両者距離を取って牽制・・・。
やはり、この距離はジョニーの距離か、、メイこの間合いをどうする・・・?」
(・・・やっぱり気が抜けないわね、緊張してる様子もないし・・・
立ち回りはかなり堅実かつ冷静。。不用意なステップも踏まない・・・。)
試合は均衡を保ったまま一向に動かない。
お互いのテンションも既に十分溜まっているが、やはりリーチの長さが問題か。
ジョニー側は、メイ戦においてリーチ差を頭に入れて戦えば問題なく勝つことが出来る。
残り時間もかなり少ない、このままだとメイが若干の体力差で判定負けになるだろう。
(焦って攻めてこない、、きっと生半可な揺さぶりは通じないし・・・。
たしか準決勝で相手の敬意にも冷静に対応してたしね。
でも、、まだミストレベルは1、、多少の焦りはあるはずよ・・・。)
『ばっちぐー☆』
『あんたなかなか・・・エキセントリックだぜ。』
「ここでメイが敬意、、さぁジョニーどう返すか・・・敬意で返しました。両者冷静ですね。」
敬意を敬意で返してくる。
精神的には嬉しいが、これでは試合が動かない。
いかにして中距離の壁を突破し、近距離に近づくべきか・・・。
(敬意したって焦らないのは目に見えてるけど、、多少は考えが揺らぐはず。
だとしたら、そこをつけば近距離まで接近できるはずよ。)
ズサー
2ゲットの勢いでメイスライディングを放つ。
ただし、ワザと根元に食い込むような当て方で突っ込む
勿論相手はガード、、めり込んだ3Kを見ればいくら焦ってなくても反撃するはず。
(・・・反撃が狙いだけどね。)
ロマンティーック!!
『こうなったら・・・』
画面が暗転する、映っているのはポーズをとるメイと、暴れているジョニー。
『グレート山田アターーック!』カウンタッ
「勝負がうごいたぁ!!流れを掴んだのはメイ!!
山田アタックからコンボを繋いで、ジョニーの体力が奪われていくぅ!!」
体力差が大幅にメイ有利に傾く。
ガードだけ完璧に固めておけば、間違いなく判定勝ちが期待できる。
(うん、このまま下がって拍手で押さえつければ勝てるわ。)
『皆さん、拍手ー☆』ロマンティーック!
HS拍手を設置し、動きを抑制しようとしたその瞬間
ジョニーが地上ディバ青で突っ込んできた、どうやら一発逆転を狙うつもりらしい。
(ここまできて、、ディバコン喰らって負けたりするのも癪よね。。
残り時間も少ないし、、瞬間のダメージが大きいのは打撃・・・?でも、ここまで来たら・・・。)
『ポーイ。』
『シリアスに行くぜ!』
『飛ばしてくよぉー!』
「だぁー!ディバインを空投げ!!
ジョニー、勝負を賭けて飛び込むも落とされてしまったぁ!!さらにダウンサイクすら返された!」
『2人の愛は今宇宙を越えてー!シャチさーん。』
ジョニーの起き上がりに足払い持続を重ね、決め打ちで超絶悶絶きりもみ大旋風。
ジョニーがFDで離し、射程ギリギリのところでデラックス五所川原ボンバー。
― T I M E U P ―
「あぁー!ここで時間切れ!勝ったのはメイ!!
勝ったのは『恋するヴェノム様』チームです、おめでようございます!
えー、オレナジョニー、、実に残念でした、またの参加お待ちしております!」
「ふぅ、、」
試合を終えて樹が戻ってくる。
最後は判定勝ちだったが、かなり精神を削られたのだろう。
「・・・しんどかったわ。」
「お疲れ、優勝だぜ、優勝。」
そうだ、今のは決勝。
そして先鋒、大将戦を勝って、、、ということはこちらの優勝だ。
「あ・・・、そうだね、あたし達優勝か。」
「・・・忘れてたのかよ。」
試合に集中するあまり、優勝のことが頭を離れていたらしい。
思い出すと、次第と樹の顔が笑みに変わっていく。
「やった!あたし達優勝よ!!」
「だから、ワンテンポ遅えんだよ、、、」
「一二三、優勝だよ、ゆ う し ょ う 」
喜び勇んで一二三の方へ歩いていく、
しかし、一二三は一枚の紙を持って怪訝そうな顔をしている。
何か、気になることが紙に書かれているらしい。チップ使いだけに紙に敏感なのか・・・
「どうしたの?」
「これ、トーナメント表なんですけど・・・、優勝のところ見てください。」
一二三が言ったところを見ると、優勝を表す星が書いてある。
しかし、、何か変だ・・・、星の下のあたり・・・?なんでだろう・・・?
「・・・なぁ、この線はなんだ?」
「え?」
愛がふと気づいて星のすぐ下を指差す。
決勝戦で2チームが戦い、勝った方が昇ってくる優勝の線。
しかし、優勝の星にたどり着く前におかしな線が一本生えている。
「何かしら、その線。」
「これ、、、シード枠じゃねえの?」
愛の言うとおり、1チームだけ、シード枠が設けられている。
ということは何だ、シード枠のチームは無条件決勝進出というわけなのか。
やっぱりこの大会は変だ!やる事がズバ抜けすぎていてついていけない。
「おいおい、、今の決勝じゃねぇのかよ!!」
「相手の名前は・・・?」
相手の名前を確認しようとした瞬間、司会者の声が響き渡る。
「ただいまより!真の決勝戦を行います!!」
「「「もう一試合ですか・・・。」」」
どういうわけか、さっきの試合は本当の決勝戦ではなかったらしく、隠れ決勝が用意されていた。
つーか、なんでシード枠のチームが最初から決勝に伸びているのだろうか、、絶対変だろ・・・。
「第23回、ギルティギアイグゼクス3on3真の決勝戦は・・・
『恋するヴェノム様』チーム 対 『Sammy社立ギルティ専門高等学校』チーム!」
!?
「「「今なんて言った!!?」」」
なんと、真の決勝の相手はギル高を堂々と名乗っていた。
こんなことなら、いっそのこと自分達も正体バラして良かったような気がする。
「なぁ、相手ギル高生か?」
「さぁ、名乗ってるだけかもしれないわよ。」
「いいんじゃないですか?楽しそうですし。」
得体の知れない謎の相手を前に驚く3人。
微妙に驚いてないヤツが若干一名混ざっているが。
「さあ、今回の3on3真の決勝、両チームともかなりの強さを誇っています。
それだけあって、、、レベルの高い争いが期待できるトコロですが・・・。参りましょう!
決勝先鋒戦『ザトー様フォォォ…』vs『歩護者』!!ヴェノム、スレイヤーです。」
「っしゃ、行ってくる。」
「頑張ってくださいね!!」
「まかせとけ。」
両チームともかなりの強さを誇っているらしい。
少なくとも相手は一試合もしてないだろうに、、司会者は雰囲気で物を言ってるようだ。
『始めるか・・・』
『器ではない、あそこは息苦しいだろう。』
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
(さて、どうする・・・仮にも真の決勝とやらだからな、慎重に来るか。ならば!!)
開始と同時にヴェノムが一気にスレイヤーに突進。
開幕一発、完全一点読みのダブルヘッドモービットをぶっぱなす。
『コカッ ブシュゥ』
(――はぁ!!?)
「真の決勝先鋒戦・・・やはり両者慎重に立ち回るのか?
おぉっと!ヴェノムいきなりのモービット!!いや!吸血だ!吸っている!!スレイヤー吸っている!!」
勢いよく放ったモービットはスレイヤーのまさかの無敵吸血で返されてしまった。
開幕でモビをぶっぱなすほうも凄いが、それを無敵吸血で吸い返すほうも凄い。
『コカッ ブシュゥ コカッ ブシュゥ コカッ ブシュゥ コカッ ブシュゥ コカッ ブシュゥ コカッ ブシュゥ コカッ ブシュゥ シュッ 爆砕!!』
(クソが・・・コイツマジでギル高生か・・・。状況は最悪。相手のゲージは50溜まったか・・・。マズイな。
下手すりゃもうワンコンボで死ねる。。どうする、、ガードに徹するか・・・それとも暴れ?
いや、暴れたとこに無敵マッパが来たりしたらどうする!?やはりガードか・・・いや、サイクがある!)
画面にはくるりと身を翻すスレイヤーが映っている。
「さぁ、驚きの吸血から、、起き攻めはなんだ。
あーっと!!このモーションは!!アレだ!何だっけ、、出てこない!」
(・・・アンダートゥかよ!!いや、この速さならヴェノムの起き上がりには少し遅れるはずだ。)
『無駄な時間は省こうか!!』
「ここでヴェノムがリバサ金サイク!!ペースを戻したいところか。。」
(とりあえず、これで流れはもらう!!)
『覚悟を決めろ、ダークエンジェル!!』
試合の流れをこちらに呼び寄せるため、渾身のダークエンジェルを放つ。
これで上手いこと崩すことができればこっちのものだ。転ばせてもう一回重ねてやる。
髭の防御係数は標準以上だが、闇天使で2回も崩せば10割近く奪えるだろう・・・。
「さぁ、ダークエンジェル!試合の流れを掴めるかヴェノム!?」
キィィィン
(――ぁん?おい、ちょっとまて!!ヤメロ!!!)
『本物パンチ!!』
ダークエンジェルをすり抜けてスレイヤーがこっちへ飛んでくる。
「リバサDOTだ!ダークエンジェルをすり抜けてDOTがヒットしたぞ!!」
(チッ・・・ことごとくふざけた技ばかり揃ってる。
起き攻め、動く気配はないな・・・打撃重ねか。・・・よし、こうなったらとことんやってやる!)
愛が頑張ってスレイヤーと戦っている丁度そのころ。
後ろで観戦する2人の会話
「ねぇ、一二三」
「何ですか?樹さん。」
「新作が出るらしいわね。」
「ホントですか!?初耳です。」
そう、ただいまギルティギアの最新作。
と、言っても実は調整版その2。
その名も『Guilty Gear XX #Reload SLASH』
が、都内某所でロケテ中らしい、釣りじゃないらしい。
「また随分と長い名前になりましたね。」
「トップキャラの弱体、底辺キャラの強化が期待されるわね。」
「チ ッ プ 強 化 の予感ですか!」
「聞いたところによると、チップは空中挑発がコマンド技に、
6Kがカウンターで相手が吹っ飛び&壁バウンド
さらに、JDが壁バウンドするようになったらしいわよ。」
「JDが壁バウンド・・・。」
― 一二三脳 ―
『テェヤー、テェヤー、テェヤー、テェヤー、テェヤー、テェヤー、テェヤー、ネッテロー!』
新作だと・・・。
『サシミ、サシミ、サシミ、サシミ、サシミ、サシミ、サシミ、サシミ、サシミ、ベータブレー!』
= 夢 が 広 が っ て い く ぅ ・・・ 。=
― 一二三脳終了 ―
「それは凄そうですね!」
「今Dループ想像してたでしょ。
聞くところによると、本家Dループが出来なくなったらしいわ。
きっとチップに10割決めたのが校長に伝わったのね。」
「チップの天下ですね!」
でも、チップの防御力はやっぱり紙のまんまだそうで、
まぁ、それがチップのアイデンティティーってヤツなんですけどね。
話は戻って対戦中
「さぁ、二度目の起き攻めはぁ、、打撃重ねかぁ!?」
(喰らいやがれ、この髭野郎がッ!!!)
― R E V E R S A L ―
『覚悟を決めろ、ダークエンジェル!!』
「リバサダークエンジェルだ!!この試合目が離せなくなってきました!!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
重ねた打撃にダークエンジェルが引っかかり、そのままスレイヤーを押し流す。
ヴェノム残り体力2割、スレイヤー残り6割、互いにテンションはほとんどない。
(・・・さて、もうテンションも体力もないか、、だったらシューティングで追い詰めるしかないな。)
HS生成>P生成>S生成>K生成でフォーメーションを組み、
そこからP打ちとP生成を繰り返し大量の弾幕を貼っていく。
「凄い!凄い弾幕だ!!画面がボールで埋まっている!!!
よく分からない!なんだかよく分からないけどとりあえず凄いぞ!!」
大量の弾幕を前にスレイヤーはただ固まっている。
というか、これだけの超弾幕を前にして固まらない方が愚かしいとも言える。
(よし、好機到来。一気に攻めきって倒す!!
・・・いや、でもな・・・弾幕はもうない・・・、無敵Kマッパで無理矢理抜けてくるか・・・?)
「さぁ!ヴェノムが勝負をかける!!逆転なるか!?そしてスレイヤーはこれをどう捌き切る!!?」
『マッパハンチ!』
『ハァッ!』
読みどおりマッパハンチを放ったスレイヤーにJHSを当てダウンを奪い、空中P生成。
それを下りのJKで弾き基本三択を仕掛けていく。
(・・・マズった、、やばい、、このまま着地したらスレイヤーの真横・・・吸血の範囲内!?気づくなよ・・・。)
しかし、愛の心の声が聞こえてしまったのだろうか、
スレイヤーは期待通り、リバサ無敵吸血でヴェノムのうなじに噛み付いてきた。
「さぁ、ヴェノム遂にチャンスを手にしました、、しかしリバサ無敵吸血。お疲れの一言です。」
『はしたない様だが、オードブルでは満足できなかったのでな。』
勝負が終わり、愛は2人のところへ戻っていってとりあえず謝る。
「わりぃ、負けた。」
「・・・ホントにギル高生みたいね。」
「一二三、頼んだぞ。」
「逝ってきます!」
「「逝くな。」」
「続いては、真の決勝中堅戦となります。先鋒戦からしてかなりのレベルの争いが期待できる今大会・・・
なりより、あの『ギル高』を名乗っているのが非常に気になるところですが・・・、参りましょう。
中堅戦!『SΩJ』vs『グレイヴ』 チップ対テスタメントです!!」
画面でKカラーのチップとSカラーのテスタメントが対峙する。
『お前、死相が出てるぜ。』
『私に勝てると思うのか?』
HEAVEN or HELL Duel1 Let's Rock!!
開幕からテスタメントは篭城のためにバックステップで後退する。
しかし、チップの機動力を持ってすれば、篭城する前に接近することは十分可能だ。
一二三のチップも、開幕から一気にダッシュで距離を詰める。
(罠の中で待たれたりしたら厄介極まりない、高速戦で押し切ろう。)
慌てた用にゼイネストを設置するテスタメントを尻目に、チップはK転移で裏に回りワンコンボ
起き攻めにドリキャンJHSで襲い掛かる。
テスタメントはコレといって強力なリバサや対空技を持ち合わせていない。
そのため、ヴェノムの前Pでも落とすことが困難なチップのJHSは落とされる要素がない。
キンッ キンッ
テスタメントが確実にチップの攻撃をガードする。
テスタメントはコレといった割り込み技も持ち合わせていないが、
同様にチップもコレといった凄い崩し技を持ち合わせていない。
つまり、チップが頑張って固めてテスタが頑張ってガードする展開になる。
既にテスタのGBは点滅を始めているが、直ガで虎視眈々と割り込む隙を狙っている。
(うぅ、、このままだと埒が明かないよ・・・、範囲狭いけど、投げで崩そう。)
屈Pから当て投げを狙いにいく。
『何故退くことができない!?』
(あっ、まずい・・・逆に投げられちゃった・・・。
しかもこの投げ方向は間違いなくディガーループ直行コース、抜けなきゃ。)
『なめんじゃねぇ!』キンッ
無意識の内に埋め込まれたループコンボへの恐怖からサイクを発動する。
しかし、タイミングを見誤った。投げの直後にあわせてもガードさせるのは当たり前だ。
『オオォ!グレイヴディガー!!オオォ!グレイヴディガー!!グレイヴディガー!!』
ディガーループでざっと3割~4割程度の体力を奪われる。
だが、ループコンボが終わったからといって安心はできない。
そう、テスタメント最大の脅威。高速中下段二択が待っている。
(とりあえず、、テスタの中下二択なら、下段>中段のファジーで大丈夫。
相手のゲージが75%あるから、、え~と・・・・)
私起きる>テスタされる>ワニ青くる>テスタされる>ワニ青くる>テスタされる>ワニ青くる>テスタされる・・・
(・・・単純に考えると4回も中下段迫られるのかぁ、、、それは流石にしんどいよ・・・。)
シンドイなぁと考えつつも起き上がりにファジーガードを展開する。
チップが下段ガードから中段ガードに切り替えるが攻撃がまだ来ない・・・。
その瞬間、画面には両膝をついて鎌を水平になぎ払うテスタの姿があった。
(―――――足払い!?)
ファジーのせいで反応に遅れが出た。あっさり足元を掬われる。
『無益な、マスターオブパペットロマンティーック!フワッ オオォ!グレイヴディガー!!
オオォ!グレイヴディガー!!オオォ!フワッ オオォ!グレイヴディガー!フワッ 血に染まれ。』
『こんなトロイヤツに!』
非の打ち所がない華麗なパペコンがチップの体に刻まれていく。
チップがまるでバレーボールのようにデカHITOMIに弄ばれる。
画面からは元気な「トス!レシーブ!グレイヴディガー!!」とかが聞こえてきそうだ。
― S L A S H ―
『妙計などないのだ・・・。』
「試合終了!勝ったのは華麗なパペコンで会場を沸かせた『グレイヴ』さんです!
よって優勝は名前のとおり圧倒的な強さを誇った『Sammy社立ギルティ専門高等学校』チームです、おめでとうございます!!」
ギル高チームが優勝商品を受け取っている。
とりわけ、柔和な笑顔で微笑んでいる男とかわいい女の子が目立つ。
おそらく、前者がスレ使い。後者がテスタ使いだろう。
「それでは、これにて第23回の3on3。閉会とさせて頂きます。
また次回もご参加待ってます!皆様、ごきげんよう、さようならー!」
司会者の元気な挨拶で大会は幕を閉じた。
―大会終了後、ゲーセン前アイスクリーム屋―
「しっかし・・・、あのチーム強かったよなぁ・・・。バニラ下さい」
「結局準優勝か、残念だったわね、、ミント下さい。」
「息抜きになったし、丁度いいんじゃないですか?バナナチョコチップ2段重ねにナッツのトッピング下さい。」
結局準優勝という結果に終わってしまったわけだが、
どうせ気分転換、ということで来ていたので大してショックは受けていない。
ちなみに、商品として持ちキャラのキーホルダーを貰ったりもした。
さらにこのキーホルダー、どういうわけかヴェノムはザトー人形を抱いているという凝(狂)った作りになっている。
「あれ?あの人ってさっきの・・・?」
ふと、一二三が何かに気づく。
樹と愛が一二三のいう方向を向くと、そこには決勝で戦った二人がいた。
男の方は相変わらず微笑を湛えている。どこか包容力のある人物だ。
一方女の方は、男に隠れるような角度からこちらを見ている。
「どうも、改めて自己紹介しようと思いまして。
私、直下 吸(なおした きゅう)と申します。スレイヤー使いです。以後お見知りおきを。」
丁寧な口調で直下が自己紹介をする。
つられて三人もばらばらに自己紹介をしていく。
「あ、五所川原樹です。こちらこそよろしく・・・。」
「佐藤愛。先鋒戦で戦ったな。モビを吸血したのなんかアンタが始めてだぜ?」
「私は一二三・エア・プロヴォークです。えっとえっと、とりあえず宜しくお願いします。」
ボタッ
一二三がお辞儀をした反動で二段重ねのアイスクリームが地に這い蹲る。
食べ始める前に2人に気づいたので、一口も口をつけていないまま地面に落としたことになる。
「うぁ!私のバナナチョコチップ2段重ね+ナッツトッピングがぁぁ!!」
「・・・何やってんだよ間抜け~。」
既に一二三のアイスには蟻さん達がわらわらと群がっている。
もしこれを食べた場合、蟻と大量の雑菌を一緒に腹の中へ運ぶことになる。そこまで赤貧してはいない。
「おや、いけない・・・。それ、いくらでしたか?」
「・・・350円です。」
聞くや否や、直下はサッサとカウンターの方へ歩いていって注文をしている。
しかも、見たところ、代金もしっかり払ってしまったようだ。
「はい、どうぞ。」
「えっ、、そんな悪いですよ・・・。」
「気にしないで下さい、元は私達が話しかけたことが原因ですから。」
そう言って半ば無理矢理アイスを一二三の手に持たせる。
「そういえば、さっきから気になってんだけど。」
「何でしょうか?」
「そっちの女は自己紹介しないの?」
"女" その言葉に反応したかのように、その女の子が前にでてくる。
「墓堀 魔夢(ぼほり まむ)。テスタ使いです。」
こざっぱりとした自己紹介をする。
だが、決して「ぶっきらぼう」な印象は受けない。
「あ、それじゃ『まむちゃん』て呼んでいいですか?」
「・・・俺は男だよ。」
「・・・またですか。」
「?」
喜び勇んで早速"ちゃん"付けで呼んでやろうと思った一二三だったが、
どこか、前にも聞いたことがあるような、そんな返事が魔夢からは帰ってきた。
どうやら愛と同じく、見た目女の子中身男の子らしい。
わかりやすく言うのであれば、そう『リアル鰤』だ。
愛はどちらかというと美人形だが、魔夢はどちらかというと可愛い形だ。
「なんだ、お前男か、それならそうと早く言えよ。」
「あんたに言われたくないね。」
「ヌガッ、ぬかしやがったな・・・。」
愛と魔夢が早速同じ『鰤属性』同士でなにか言い争いを始めている。
傍から見てると、まるで姉妹が喧嘩でもしているかのようだ。・・・微笑ましい。
「つかぬ事お聞きしますが、先ほど対戦していて思ったんですけど、、貴方達もギル高生では?」
「それじゃあ、そちらも?」
「えぇ、名乗るなら堂々と名乗ろうと思いまして。」
「あたし達、三人とも一年E組なんですけど、お2人は?」
「おや、奇遇ですね。私達も一年ですよ、クラスはGですけどね。」
やはり、この2人もれっきとしたギル高生らしい。
クラスは一年G組、一二三達の二つ隣に位置する教室だ。
という事は、地方ゲーセンの優勝をギル高生が奪い合うという地元人泣かせの展開だったというわけか。
「なんだってんだよ、鰤みてぇな顔しやがって!」
「あんた、もう少し御しとやかにしてみたら?男にモテるんじゃない?」
「お前も修道女が着るローブ着てみろ、膝上高いヤツをよ!」
「だったらあんたは膝辺りまで隠れるTシャツ着るかい?」
「ウググ・・・。」
言い争いはどうやら魔夢有利に進んでいるらしい。
まるでことごとく牽制をウォレントでとられているようにも見える。
「それでは、私達はこの辺でお暇します。魔夢、行きましょう。」
「わかった、じゃあまたな、愛 ち ゃ ん 。」
「二度と現れんな!!」
今日はいわゆる林間学校。
全校生徒がホールに集まり、右渡校長の話を聞く。
そして、期待の新作『GuiltyGearXX #Reload SLASH』も紹介された
さらに、成績優良者によるロケテ版のエキシビジョンマッチも行われた。
ただ、、エディと闇慈を戦わせるのはどうかと思ったわけだが・・・。
しかし、勝負は人々の予想を裏切り、また、人々の期待に応える結果となった。
プレイヤースキルか、はたまた調整の成果か、勝者は闇慈だった。
ざわざわ
「おいマジかよ、エディ負けちまったぜ。」
「うはwwwww闇慈に負けるとか弱くなり杉wwwwwwwww」
「臨強すぎwwwwwwwwミギー、修正キボンwwwwwwwww」
「もうね、キャラ変え安定。もうエディの時代は終わったのさ。」
「弱キャラと罵られ続けただけのリターンがキターーー!!」
「弱キャラ、いや"元"弱キャラ勢マンセー!」
「みんな、今こそ"故"強キャラに一矢、いや百矢くらい報いるときだ!!」
会場では様々な声が飛び交っていた。
やはり、いままで最強×最弱の組み合わせだったカードで最弱が勝利したのは大きい。
中にはエディを見限って早速強そうなキャラに変えるチキンな野郎共もいるようだ。
続いて行われたエキシビジョンは"スレイヤー対チップ"
この組み合わせは調整の成果が問われる一番重要なものだと思われる一戦。
こちらも、先の試合に負けず劣らず驚きの試合が展開された。
コカッ ブシュゥッ
ワァァーーー!
「マッパフェイントから吸血のポチョ真似入ったぜ、もう試合終了安定w」
「だぁぁー!!頑張ってくれチップ!!俺たちの未来が掛かってるんだよ!!」
で、結局画面に映ったのは3ループもしない吸血ループ。
よろけ時間に修正が入ったようで、常人のレバガチャでも容易に抜け出せる仕様になったようだ。
「ぃよっしゃぁぁぁ!!吸血に恐れる時代は終わったぁ!!」
「んなアホなぁぁーーー!!どういうことだミギー!」
『シュリケーン』
「なんだあの手裏剣は!!?」
「ネタ技じゃなくなったのか!!」
「なんか速いぞ!!」
「チップ版サイレントフォース降臨やったー!ミギー、アンタやっぱり神だぜ!!」
さらに、チップの手裏剣は機能面で大幅な強化。
ついに使える飛び道具として昇華するに至るのだった、おめでとうチップ。
「凄かったですね、修正版。」
「・・・なんでメイの対戦がないのかしらね。」
「D生成にビリビリデュービス・・・、コイツは来てるな。
このままの調整レベルで事が進めば・・・4強は狙える!」
エキシビジョン終了後、筐体がホールに大量に設置され、
各々好きに対戦してよいとの連絡が回った。
そういうわけで、今この馬鹿長い列に並びながら話しているわけだ。
幸い、設置された筐体の数が多かったので、
それほど待たされることもなく順番が回ってきた。
「最初は誰と誰がやりましょうか。」
「俺は後でいいよ。」
「それじゃぁ、遠慮なく。」
一二三と樹がそれぞれ筐体に座る。
『師匠、見ててくれよ。』
『ジョニー、頑張るからね。』
HEAVEN or HELL Duel1 Let's Rock!!
「手裏剣速いっての!!」
「サシミ飛びすぎ!!」
「6Kがパイル並みに吹っ飛ぶってば!!」
「γも速いって!!」
「ぶっぱβ青ってどういう了見よ!!」
「きりもみ大旋風短ッ!シャチ出せないわよ!!」
結局、樹はチップの強化相手に絶叫するだけで終わった。
強キャラが弱くなって、弱キャラが強くなったこのロケテ版。
つまり、中堅で落ち着いていたメイは大した変化がなかった。
「チップ強いわよ、、せいぜいあんたも頑張りなさい。」
「D生成の恐ろしさを見せてやるって。」
そう息巻いては見たが、D生成がどこに生成されてどういうフォーメーションを組むのか知らない。
ぶっつけ本番で見極めるしかない。
『ブレイクだ。』
『さっさと始めようぜ。』
HEAVEN or HELL Duel1 Let's Rock!!
(よし、まずはD生成を見て・・・話はそれからだ。)
バックステップしてD生成を行う。
(・・・低ッ!)
生成されたボールはヴェノムの足元近くへ移動した。
どうやら2Kや足払いで弾けという事らしい。
(Dデュービス>2K>持続弾きとか出来るかな・・・。
出来るならErtai式みたいにキャンセルカーカスで、、ふむふむ。)
「あれ、ボールが明後日の方向に・・・!」
「足払い遅くなってる!!」
「お、電撃デュービスいいな。」
「だぁー!γ速すぎ!!」
「更に俺が苦手なキャラになったじゃねぇかこの紙忍者!!」
勝負は僅差だったが、チップの紙装甲が祟りヴェノムの勝ち。
事故して負けるのはチップの永遠の課題だろうか・・・。
2006-12-09T20:49:52+09:00
1165664992
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20氏まとめ
https://w.atwiki.jp/momotatan/pages/12.html
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-[[20氏まとめ2]]
-[[20氏まとめ3]]
-[[20氏まとめ4]]
-[[20氏まとめ5]]
-[[20氏まとめ6]]
-[[20氏まとめ7]]
-[[20氏まとめ8]]
-[[20氏まとめ9]]
-[[20氏まとめ10]]
2006-12-09T20:32:20+09:00
1165663940
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20氏まとめ4
https://w.atwiki.jp/momotatan/pages/56.html
「さぁ、第一試合も終わって、チームも半分になりました。
ときに今回の3on3、非常にレベルが高くてワクワクしてきます。
心なしか、地元の人たちがほとんど帰っちゃった気もしますけど・・・。」
そう、地元の顔なじみプレイヤー達はことごとく一回戦で敗退していった。
『我らアサシンズ!』のエディ、スレイヤー、ポチョムキンもそんな可愛そうな人たちだ。
他にも、『弱キャラ』というチームもやはり地元人だったようだ。
それも弱キャラを名乗って強キャラばかりが雁首揃えて実は一番強いのは大将の闇慈ですといった奴ら。
「なんだ、地元のヤツらはみんなやられたのか・・・。」
「あたし達が倒したのもその一つだと思うんだけど。」
「あの、さっきから気になってることがあるんですけど、いいですか?」
一二三が唐突に話を切り出す。
どうやら、このゲーセンでとっても気になることがあるらしい。
「なんだか、キャラ選択画面おかしく無かったですか?」
「ん~?微妙に違和感感じたけど気のせいじゃねぇの?」
意味の分からない相談を持ちかける。
キャラ選択画面の違和感?SPカラーでも出現してるのだろうか。
もしそうだったところで、大会で金キャラや黒キャラを使うDQNはいないだろう。
「え~、それではそろそろ参りましょうか、
準決勝第一試合!『恋するヴェノム様』vs『隠れキャラ』!!」
準決勝が始まる。
相手のチーム名はしょうもない冗談だろう。
「んじゃ、軽く終わらしてくる。」
そういって愛が筐体へ向かう。
慣れた手つきで、ニュートラルのソルからカーソルをヴェノムへ持っていく。
「・・・違和感の正体はこれか。つーか何でだよ・・・。」
何故かこのゲーセンの筐体はJUSTICEが解放されていた。
「チョット待て司会者。なんで隠しキャラ出てんだよ!」
流石に相手にジャスティスを選ばれるわけにはいかない。
そもそも、チーム名が『隠れキャラ』なだけあって一層危ない。
「え?あぁ、今日の大会のために特別に解禁させてもらいました。
どうせみんな慣れたキャラしか使わないだろうからいいかな~ってことで。」
「そういう問題じゃねぇっての・・・。そもそもアーケード版にデータ入ってんのかよ・・・。」
まぁ、司会者の言うことも一理ある。
大会で使うのであればやはり使い慣れた持ちキャラだろう。
いきなりクリフやジャスティスを使ったところで、持ちキャラよりは弱い。
「まぁ、いいか・・・仕方ねぇ。」
そう言って再び筐体へ向かいなおす。
ヴェノムを決定するためボタンを押そうとするが、、相手のカーソルが・・・。
相手のカーソルがジャスティスの上にあるのはどういうことか。
(・・・待て、、マジかテメェ・・・、、家庭用でジャスティス練習したのか。。
いや、落ち着け俺。大会参加のためにはエントリーが必要だ。そしてそこでキャラを書く・・・、
つまり、事前にこの大会において特別に爺と正義が開放されることを知っていないとダメだ。
だが、店の外にあった張り紙にはそれらしい文句は何一つ書かれていなかった・・・。
すなわち、これらの事実から導き出される真実は一つ、『関係者以外はこの事を知らない!』
ということは、相手も俺と同じく、ジャスティス解放は知らなかったはずだ。
だとしたら、これは俺に対する心理的な揺さぶり作戦、、持ちキャラをジャスティスと見せるだけか・・・
ならば、制限時間ギリギリでカーソルを動かすはずだ・・・。フン、完全に読みきったぞ。)
相手の浅はかな考えをあざ笑うかのように、
カーソルをヴェノムの上からジャスティスの上に動かし、相手を挑発してみる。
(さぁ、これでどうだこのチキン野郎!
のこり時間はあと15秒か、、ヴェノムはジャスティスから近いからな、ギリギリまで競ってやってもいいぞ。
ただ、そうなると相手の持ちキャラはジャスティスに程近いキャラになるのか・・・?
そうなると、アクセルかエディか梅喧か、、同キャラか?まぁいいさ。残り5秒だ。そろそろだな。)
愛の予想通り、相手のカーソルは横へ動いて梅喧を選んだ。
もちろん、愛もうっかりカーソルを動かし忘れてジャスティスを選ぶといったことはしない。
「・・・読み勝ったぜ。」
どこか誇らしげにレバーを握りなおす。
「それでは、先鋒戦!
『ザトー様フォォォ…』vs『大和撫子』!!ヴェノム対梅喧です!!」
「さぁ、生き残った少ない地元勢の底力を見せてくれるか、大和撫子・・・。
しかし、相手はヴェノム、、きついキャラですが、、、どうでしょうか。。」
『・・・始めるか。』
『粋がんじゃないよ・・・、若造がぁ。』
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
(さて、、さっきのジャスティスでの揺さぶりも考慮すると・・・、
ガーキャンをちらつかせてプレッシャーをかけてくるタイプか?
まぁ・・・、遠距離戦を展開してれば問題ない、な。爵走は見て足払い安定だし・・・。)
開幕から距離をとるためにバックステップ。
梅喧相手に近距離でガンガン固めるなんて事は出来ない。
ガーキャンを外させればこっちのもんだが、リスクを伴うのも事実だからだ。
(よし、バクステからシューティング・・・、おいおい、あっちもバクステかよ。)
出来る限り接近したいはずの梅喧は何故か開幕バクステ。
大胆に開幕爵走から投げを狙うくらいでもいいと思うのだが。
(・・・まぁいい、こっちに有利になったことには変わりはないしな。
とりあえず、P打ちあたりから冷静にシューティングを組んでいれば、焦って自滅するだろ。)
梅喧を遠距離に釘付けにするためにP玉を生成して立ちPで打ち出す。
続いてHS生成>K生成。
『ままごとなら、一人でやんな。』
「あぁ!!なんと挑発です!!これは梅喧有利か!!?
しかも台詞が酷い、ボール生成するヴェノムにままごと発言!それは禁句だろ!!」
(んだと、、このヤロ・・・、シューティングをおままごとだと・・・?
ジャスティスに続いてフザケタことをぬかすじゃねぇか、、オイ!!
ぃゃぃゃ、落ち着け俺、ここで突っ込んでは相手の思う壺というヤツだ。
もし接近戦で妖刺刃CHからSD喰らったりしたら洒落にならんだろうが・・・。)
今すぐ接近して倒しきってやろうかという考えが一瞬頭をよぎる。
だが、そんな誘いに乗るほど下らないギルティ人生を歩んだ覚えはない。
(挑発をするということは、それほど接近戦に自信があるんだろうな。
つまりだ、、ここで敢えて接近戦を選び、ガーキャンを完璧に読んだ上で倒すことができれば・・・、
相手のプライドを完膚なきまでに引き裂くことができるじゃないか。名案だ。)
・・・画面には爆走するヴェノムの姿が映っていた。
「え!?ヴェノム走りました!!ヴェノム何故が走ってる!!何でだ!?」
見ている側から言わせて貰えば、愛の行動はまさに、
『挑発に乗って突っ込んだだけ』
としか映らない。というか、遠まわしに乗ったのだが・・・。
「なんだこのヴェノム!ザトー様か!?画面の右端にザトー様が見えたのかぁ!!?
既にSが届く距離に到達しています・・・、それなのに手を出さない!!なんだ!?分からないッ!!」
(・・・間合いに入ったか。
さて、相手は何か適当な技で暴れるか、もしくは仕込みガーキャンだろうな。
もはや今の俺は一点読みの鬼だ。間違いない、相手は屈Kだ!)
完全に相手を潰すために意味の分からない一点読みを仕掛ける。
恐らく来るだろうと予想した屈Kに勝つ選択肢。『デュービスカーブ』
「梅喧暴れた!屈Kで梅喧が暴れました!!
あんたがビビってどうすんだ大和撫子!!ヴェノムはデュービス!!
はい、足元無敵でした。梅喧、残念!正解は仕込みガーキャンでしたね。」
デュビから近Sで拾ってエリアルへ、屈Kを空かされて焦ったのか、近Sにバーストを使う。
「近Sから、、エリアルか?
って、おい!!何やってんだ梅喧!!近Sにバーストしたって当たらないぞ!!
あ~あ~あ~、、大和撫子やっちゃったよ。」
(近Sにバーストか・・・、よっぽど焦ってるな。
完璧だ、ここまでやれば相手は次からガーキャン安定だろ。)
拾ってからワザと大きなエリアルを入れずに地面に落とす。
そして、着地から起き上がりにスラストを重ねる。
「起き攻めは中段!マッドストラグルだ!?
ん?スト!? 気のせいでしょうか、これは妖刺確定な気がするんですけど・・・。」
起き上がった梅喧はストをガーキャンで返すためにガードしている。
全てにおいて愛の読みどおりの反応だ。もっと焦ってくれ。
(はい、投げどうぞっと。)
『すまんな。』
「おっと、これは中段じゃない。空かし投げでしたね。
え?ガーキャン準備したのは・・・私のせいですか?いえいえ、貴方の責任ですよ。」
(解説の兄ちゃんと相手の梅喧がなにか口論を始めたな・・・。
試合に集中しないで喋るとはいい度胸じゃないか、梅使いよ。
ま、関係ないことだな。さて、画面端、ボール2個起き攻めだな、オーソドックスにPK陣でいいか。)
昇りJKでK玉を弾いて起き攻めを開始する。
相手を焦らす意味も込めて着地ダストを狙う。
「ほらほら、起き攻め来てるって!
あんたこっちと喋ってる暇なんかないでしょうが・・・。」
『ゆくぞ!』
『どこ見てんだい!?』
(ちっ、回り込みか、、そこまで焦ってないってことだな。)
攻めのターンが梅喧に回る。
しかし、梅喧の固めはまるで強くない、畳青を使う手もあるがゲージもない。
(ゲージが50無いな、それだと低空妖斬の意味がない、、
投げと下段の二択か。どちらにせよ、問題なく抜けられる、残念だったな。)
梅喧が選択したのは下段の選択肢。
小技で少し刻んだりはしたが、投げはしてこなかった。
(足払いが出たか、畳がくるようなら直ガして抜ける。
青キャンしてくるか?相手のテンションは・・・、50溜まったか。。。ん?溜まったの!?)
『妖斬扇!!』
「低空妖斬!!崩したぁ!!」
(マズッた!サイクを・・・!)
『ファールを犯したな!』ガキン
「たまらずサイク!あぁっと読んでいた!!」
(なんてこった・・・、サイク読まれたか、情けねぇな。
しかたねぇから、SDループ喰らってやるか。読み負けたわけだしな。)
しかし、愛の予想に反して、梅喧が飛ばない。
かわりに画面が暗転し、覚醒必殺技を出したことを告げる。
『ここだぁ!結界・・・!』
「ここで覚醒ガーキャンだ!!こんなもん滅多に使わんだろ・・・。
画面に刻まれた文字は・・・?『麟』だ!!縛・麟です!!え~と誰か効果教えてください。
はい?あぁ、なるほど、必殺技封じですか。ありがとうございます。」
(必殺封じ?マジかよ・・・生殺しじゃねぇか。ボール無しで戦えと?)
必殺技を封じられたヴェノムはまさに、翼をもがれた鳥。
後ろの2人をもがれたディズィーだ。戦闘力がガタ落ちしてしまう。
「さぁ、、必殺技、ボール生成を封じられましたヴェノム!どうするか!?」
なんとか画面端から逃げてはみたが、生成できないので牽制に欠ける。
いまのところ遠Sで誤魔化してみたりしているが、JHSで突っ込まれたら防げないだろう。
(どうする、、梅喧のJHSは前Pじゃ落とせない・・・。
攻められたら一応足暴れがあるからまだいいが・・・、空ぶったら死ねる。)
梅喧が勢いよく走ってくる。
とっさに振ってしまった屈Sを回り込み青から投げ
『ドッカーン ドッカーン ドッカーン』
威勢良く大砲の音が響き渡る。
投げ始動のため威力が抑えられているのが何よりの救いだろう。
そして、SDループ終了と同時に、ヴェノムの体の点滅は終わっていた。
(ふう、、遂に反逆の鎌をかざす時がきたか。見てろよ梅喧!!)
「お、ヴェノムの必殺封印が何時の間にか解けています!
遂にこの窮地を脱することができるのでしょうか、ヴェノム!!」
HS生成でボールを梅喧の後ろに配置し、特殊瞬間移動で突破口を開く。
着地>屈K>近Sで少しずつ、確実にせめて行く。
「ヴェノム固めるのか!?梅喧を固めても危ないと思うんですが。
そのうちガーキャンからごっそり持っていかれてしまいそうな気がします・・・、」
『させるかよ』
『時間をとらせたな・・・、』
梅喧が妖刺刃でガトリングを潰すその瞬間、画面が暗転する。
完璧にガーキャンのタイミングを読みきった上でのダークエンジェル。
梅喧はダークエンジェルを回り込みで無効化できるが、当たってしまえばそれは出来ない。
『貫けぇぇ!!!』
「ガーキャンにダークエンジェルを合わせた!コレは致命傷だぁ!!」
梅喧が一気に画面端まで押し流されていく。
体力は3割を切ったところか、梅喧はギルティ紙装甲ベスト3なのだ。それなりに減っている。
(もう逃がさねぇ。)
『デュービスカーブ!』
ガトリングをデュービスで締めて2度目の2個起き攻め。
相手はガーキャンの使用頻度が高いうえに随分とガーキャンが好きなようだ。
さっきの覚醒を見て分かる。普通ならSDループでダメージに直結させるだろう。
(ガーキャンは厄介だ、、だが、発動させない方法はある。ガードさせなければいいんだ。)
『すまんな。』
JKでボールを弾くと見せかけ着地投げ
あくまでガーキャンで返すことを第一に考えているためか、こんな攻めには弱い。
「ジャンプから、、着地投げ!!梅喧喰らっています!!逃げろよ。」
(ちっ、、余計なこと言うなよ司会者・・・。
相手の体力はあと1割程度、、根性値4だったか、しぶといな。)
投げの追撃でHSストを決め、スティンガーを溜めはじめる。
「なんと、スティ溜めを・・・、重ねるのか?」
(目の前でコレをチャージすれば、重ねてくると読むはずだ・・・。
うっかり喰らえば終わり、FD安定だろうな、まぁ、そこが落とし穴なんだけどな。)
『ショットロマンティーック!』
溜めに溜めたスティンガーが、梅喧の起き上がる直前に通過する。
最大溜めは削り防止のFDを誘うためだけの囮。最大の狙いはダッシュから3回目の投げだ。
『すまんな。』
― S L A S H ―
死にボイスのない静かな終わり。
梅喧の骸がボールの中から出て、そのまま動くことは無い。
『ナインボール、ゲットだ!』
「最後は投げで試合を決めました、先鋒戦ヴェノムの勝利です!
え~、最初突っ込んだときはヒヤリとしましたけど、、なんとか勝ちましたね。
それより大和撫子、お前ヤッパりガーキャンばっかに拘るの止めた方がいいんじゃないのかねぇ。」
「挑発に乗ったりして、微妙に危なかったんじゃないの?」
「いや、接近戦で叩き伏せてやろうかと思ったんだがな・・・。」
「いくらなんでも無茶苦茶ですよ・・・。」
筐体から離れて二人のもとへ行く。
予想していた通り、最初の挑発喰らってガンダッシュに厳しい批判が集まる。
「続いての対戦は、、中堅戦。。
『SΩJ』vs・・・『ランダマー』ですね。ランダマー、次は何が来るんでしょうか、楽しみです。」
「準決勝中堅戦、、とにかく注目なのは『ランダマー』、、
いままでひたすらランダムで戦ってきました。ちなみに一試合目はイノを引きました。
さぁ、この準決勝では・・・、何を引くのでしょうか。」
そう、中堅戦の一二三の相手は名前のとおり、ランダマー。
使用キャラを完全に運任せのルーレットで決定する熱い漢だ。
登録のキャラクター欄にも、大きな文字で元気良く「らんだむ!」と書いてある。
「一二三の相手、キャラはランダムみたいだぞ。」
「闇慈みたいな弱キャラ引いてくれると大いに助かるんだけどね。」
カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカ
カーソルが無差別に動き回る。
どのキャラを引き当てるかは、それぞれ1/24の確率だ。
(・・・なんだか、心臓に悪いです。)
ランダムルーレットの音は心臓に悪い。
いやおう無しに緊張してしまう、無意識の内に目がキャラを追ってしまう。
「さぁ、、、まだか?・・・まだなのか??・・・まだ決まらない。
いいかげん、、こっちの心臓の具合も考えて欲しいんですけど、、まだ?」
カウントが10秒を切る。
なんだってこのチームは時間を引っ張るのが好きなんだ。。。
ガコーン
決まった、誰だ。誰だ。誰だ!?
白と青のボディ、金属質の体。
そして、獅子のような髪を持つそのキャラクターは・・・!
「なんと!!ジャスティスだーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「げぇ!!」
「うそ!?」
後ろで事の成り行きを見守っていた二人が驚きの声を上げる。
まさか、全キャラ中最強のキャラクターがランダムで決定されるとは・・・
固まる2人、そしてそれ以上に驚く少女が一人
( 勝 て る 気 が し ま せ ん 。)
ジャスティスの高火力とチップの紙装甲が合わさることによって、驚異的なゲージの減りが実現してしまうのである。
適当ガト>足>ミカエル
とりあえず、これで4~5割は問題なくはじき出す。
逆にチップがいくらコンボを叩き込んでもギアの装甲を破ることは難しい。
「さぁ!ランダマーがなんと・・・!
なんとジャスティスを引きました!チップ危うしか!?
その紙装甲を遺憾なく発揮して、最強最悪ギアの生贄となってしまうのか!!?」
会場の全員が息を飲み、画面を見守る中、
無情にも画面は切り替わって、チップと、何故かDカラーのジャスティスが映しだされる
『お前、死相がでてるぜ。』
『コレデ封ジタツモリカ?』
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
(や、、やばいやばい、、どうしよ~・・・
とりあえずジャスティスの性能を思い出さなくちゃ・・・。
中段は高速の前Pで、超判定、上半身無敵の・・・、膝上だっけ?とにかく強い、、
さらにコマンド成立から無敵の昇竜持ちでしかも後ろにバックするからサイクも当たらない。
足払いは画面半分近くカバーするし、、NB固めは残酷なまでに強力だし。。。
そのうえ簡単に拾える当身や投げも完備してるし、、ガードさせたら凄いことになる覚醒あるし、
3段ジャンプで特権を食われちゃってるし、、空ダッシュ3回できてめくりも完璧。
飛び込みにはこれまた超判定のJDが、、、ダ、ダメだコリャ・・・。)
性能を思い出せば出すほど、トンデモない性能ばかりが顔を覗かせる。
これはヤバイ、、エディあたりなら起き攻めすればまだ勝ち目はあるかもしれないが・・・。
なにせこっちはチップだ、JHSも前PやS.B.T.でホイホイと落とされるだろう。
『αブレー!』
『吹キ飛ベ!』カウンタッ
「さぁ!チップ開幕αブレード!!いきなり金サイク!!
やばいぞ!!これはヤバイ!!逃げろチップ、破られるぞ!!」
(うぁぁ、、ヤバイなぁ・・・。
正面から戦って勝てるわけないし、、いくら攻撃しても一発で返されるし・・・。
こ、、こんな時は・・・、ちょっと不本意だけど、アレを使わないと勝てない。。)
『カワシテミセロ』
ジャスティスがNBを重ねてくる。
ジャスティスの起き攻めは、テスタとエディを足して1.5倍するくらいヤバイ。
『シャァァァ!』
「起き攻めは、、高速中下と見せかけて投げ!!そこから前HSで追撃、、、、画面暗転!!?」
暗転の瞬間、チップが天高く舞い上がる。
そして、その下には両肩を抱えるジャスティスの姿があった。
「あ」
「あれって・・・、」
後ろの2人も思わず声が漏れる。
普段なら、家庭用で適当対戦したときにしか目にしない技だ。
「「 ガ ン マ レ イ じゃ・・・。」」
『ゥゥゥウアアァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』
ドバババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ
極太のレーザーがチップに直撃する。
ゲージがすさまじい勢いで減っていく。『紙、燃える』といった具合だ。
実際問題として、洒落にならない勢いだ、6割は間違いなく消えた。
死に一層近づく、ワンコンボ適当に喰らえばこのまま死んでしまう。
(やっぱり、、狙ってみるしかない。)
『Find Me!!』
一応の距離をとって迷彩。そして――
『気を全開にしてやる!!』
「おっと!チップが、、チップが一撃を準備しました。やはり素の状態でコイツには勝てないと悟ったのか!?」
準備を見て、走ってきたジャスティスが動きを止める。
うっかり当たってしまったのではあまりに口惜しい。
(・・・ディエルタエンドは確か空中ガード不能だから、、ウッカリ当たる・・・かも。)
最終手段に望みを託すが、、
はたして全キャラ中ダントツで使えないこの一撃をどうしたものか・・・。
「さぁ、チップ・・・、この大逆転の一発を、どう当てるのか。。
個人的にはチップの一撃って当たる要素っていうか、当たれる要素すらないような気がするんですが、、」
ジャスティスは動きを止めてガードしている。
これ以上攻めるつもりはないらしい、燃えた紙が風に流されるのを待っているようだ。
『じれってぇ!』
沈黙を破って、ダッシュからいきなりのダスト
迷彩の効果で見づらいのもありヒット、くるくる回りながらジャスティスが飛んでいく。
――― そして画面暗転、一撃発動
「出した!ここでチップが一撃を出したぞ!!」
画面に5つの点が浮遊する。
前方受身を取ったジャスティスが結界に接触する。
(お願いだから、、FDしないでください・・・。)
ガキンッ
「ダメだったぁ!FDの前に最後の望みを断ち切られました、SΩJチップ!!
さぁ、、ジャスティスがぁ、、トドメを刺すべくダッシュする。さようならチップ!頑張れチップ!!明日があるぞ!!」
(まだ、、、もう一つ。)
最後の一撃を加えようとジャスティスが走る。
だが、次の瞬間、画面に映し出されたのはシショったチップではなく、
―― 画面中央に吊るされた自律型ギア第一号の姿だった。――
「て、あ、あれ??ジャスティス吊るされてる??吊るされてる!!?
嘘!?ということは・・・、、何?え、ジャスティス死んだ!!?じゃすてぃすシショッタ!?え、マジ!!?」
『ディエルタ・エンド!!』ドバァーン
― D E S T R O Y E D ―
『全て熟知。』
「・・・え~と、、チップの一撃は一回ガードしても触れば死ぬみたいですね。。
知りませんでした、ランダマーも知らなかったみたいですね、、折角ジャスティスだったのに・・・。」
会場が静まり返っていた。
いくら相手がジャスティスだからといって、大会で本気で一撃を狙うチップにも驚いているが、
なにより、うっかり結界の中に飛び込んでそのまま殺されたジャスティスに驚いていた。
「あ、、と、あ!準決勝は『恋するヴェノム様』の勝利・・・です。はい、、決勝も頑張ってください。」
司会者も結構戸惑っている。
知らない人は意外と知らない事実だ。
あんな形ではあったが勝利した一二三が2人の方へ歩いていく。
「ははは、、、勝ち、ました・・・。」
「う、、ん、まぁ、勝った、、、な。」
「最後、おかしかったけどね・・・。」
3人そろって「あはは・・・。」といった具合に苦笑いする。
あんな負け方をしてしまった相手の人がものすごく気の毒に思える。
当たる方が悪いのだが、それでもアレはショックだっただろう・・・。
「なあ、決勝の相手、どっちだと思うよ。」
「そうねぇ、、たぶん編入試験受けてる人のチームじゃないかしら?」
「『JEM』でしたっけ、戦ってみたいなぁ・・・。」
一撃フィニッシュについて語り合うのも変なので、話題を変える。
次は決勝だ、これでも現役のギル高生3人、一般ゲーマーに負けるわけにはいかない。
だが、恐らく決勝に上がってくると思われるチーム『JEM』の大将は編入試験を受けている。
つまり、実力はギル高生に順ずるか、もしくはそれよりも少し高い水準に位置することになる。
「となると、、大将戦はジョニーvsメイになるのか、奇遇だな。
『ジョニー食事抜き!』が炸裂するわけか、まったくこれだから最近の色餓鬼はぁ。」
冗談半分に愛が樹をからかう。
『色餓鬼』という言葉を聴いた瞬間、樹の目つきが変わったのは言うまでも無く・・・、
「・・・なぁに言ってんのかなぁ、愛ちゃんはぁ~、
自分のことに気づきなさいよ、、先鋒はザトー×ヴェノムだってことにね!」
「テメ、やるか!」
「いくらでも掛かって来なさい。」
また始まった、いつもからかうのは愛なのだが、、負けるのも愛だ。
結局のところ、名前からザトー×ヴェノムに弱い体質なので、そこを突付かれるとそのまま負けてしまう。
「2人ともやめて下さいよ、、周りに迷惑ですってば・・・。」
「お前なんかジョニーに切り刻まれちまえッ!」
「あんたがザトー様にダムドで抱擁されるほうが先でしょうが!!」
「俺が『ザトー様フォォォ…』だったらお前は『ジョニーフォォォ…』じゃねえか!」
「『フォォォ…』はフォモの特権でしょう!メイには関係ないわよ!!」
「あのぉ、、やめてくださぁい・・・。」
一二三の制止などまるで耳に入っていない様子で『フォォォ…』について討論する2人。
一体、何時から決勝の話題が『フォォォ…』の話題に変わってしまったのだろうか、、、
「結局アンタは『ザトー様フォォォ…』で終着してるのよ!フォォォ…!!フォォォ…!!」
「あまりこの場で『フォォォ…』を連呼するんじゃねぇぇぇぇ!!周りが見てるじゃねぇか!!」
実際、エントリーネームが『ザトー様フォォォ…』なので、あまり連呼されたくない。
というか、この場で自分自身も『フォォォ…』を絶叫しているじゃないか、ヤバイ、恥ずかしい・・・。
「・・・やめよう、俺の負けだ。」
「なによ、『フォ「俺の負けだからもう『フォォォ…』は言わないでくれ。」
「言ってるじゃないの・・・。」「言ってますよ・・・。」
隣の筐体では、すでに準決勝第二試合が始まりつつあった。
さて、二十分間の休憩も終了し、周りの空気が微妙に変わる。
遂に決勝戦の時がやってきたわけだ。勝ち上がってきたのは予想通り『JEM』
ちなみに、休憩中は相手のチーム名の由来について話していた。
それぞれのキャラのイニシャルという意外と簡単な答えだったが、そこまで行くのにどれだけ苦労したか・・・
「第23回、3on3決勝戦。
チーム『恋するヴェノム様』vsチーム『JEM』です!」
司会者が声高らかに試合の幕開けを告げる。
「早速ですが、先鋒戦!『イーディー』対『ザトー様フォォォ…』!
本日二回目のエディ対ヴェノムとなります、、一回目はヴェノムが固め殺しましたが、、今回はどうか。」
『愚弄してくれたな・・・!例え!骸だけでも!返してもらうぞッ!!』
『ならば貴様の体をもらおうかァ・・・!』
筐体に映るヴェノムとエディも、決勝戦だけあって台詞に気合が入っている。
もちろんこれはランダムで決定されるわけだが・・・。
HEAVEN or HELL FINAL Let's Rock!!
(一試合目みたく固め殺せれば理想なんだが・・・、
流石に決勝まで残ってきてる奴らだからな、開幕に金バーストしても読まれるだろう・・・、ならば。)
『ショット!』
『ドランカーシェイド!!』カウンタッ
開幕HSスティンガー。
しかし、完璧に読まれていた、ドランカーで返されてしまった。
(マズッた!)
『回るゥ!!』
「さぁ、開幕から素晴らしい読み合いを見せてくれます、、ます読み勝ったのはエディ。そこから回る!」
『よめているぞ。』
(実際のところ読めてねぇよ・・・、読めてればあんな物喰らわねえのに・・・。)
移動攻撃をガードするが、そこから脅威のエディ連携が開始される。
こうなってしまうとエディは他の追随を許さない。
『回るゥ!!回るゥ!!伸びるゥ!!』
「エディが固める、一回戦のエディとは大違いだ!はたして、無事に画面端から脱出出来るのか!!」
そろそろエディゲージが底を尽きかけている。
そうだ、早く消えちまえ、消えさえすればこっちのモンだ、なんとでも出来る。
(まだかよ、、心なしがゲージの減りが遅い・・・。
つーか、このチビエディなんだよ、、ヴェートーヴェンかモーツァルトか・・・。
そもそも、この攻撃はなんだ?回るでも跳ねるでもないな・・・ジェントるか??)
てゆーか、これ 『敬意』 じゃねぇか!!
マジか!コレが噂に聞いた『石井エディ』なのか!!?コイツ並みの腕じゃねぇ!!
固めの際に突然敬意、もしくは挑発をして、相手にまだチビがいることを強調し、
相手が「まだ割り込めないな」と思っている隙にゲージを気合で回復させる、それが「石井エディ」だ。
「敬意だ!!なんと実践で石井エディを投入する猛者がここにいるぞ!」
(なにやってんだ俺!早く割り込め!!スティ青でいい、撃て!)
『ショッt『ご覧に入れよう・・・』
決勝のプレッシャーを無意識の内に感じていたのか、こともあろうに石井エディに引っかかってしまった。
なんてこった、これではギル高生失格だ・・・。しかも反応が遅れたせいで割り込みが間に合ってない。
これは完全に割り込みを誘われてしまった形だ、下から巨大な影が迫ってくる、駄目だ、避けられない。
『伸びろッ!』カウンタッ
「スティンガーにアモルフォスヒットォ!!ヴェノムの体力が一気に消える!!残り4割か!!?」
(くそ、なんだこの馬鹿ダメージは・・・またダウンか、、どういうわけか相手のエディゲージが赤いな。
石井エディを導入することに自分でビビッたのか?うっかり回収を忘れるとは、テンションもない。
これなら固めは継続できないな、、大丈夫だ。抜け出せる!)
ゲージも無いので苦渋の決断といった具合に立ちKを重ねてくる。
だが、ヴェノムが身を翻し立ちKを避ける、画面にはREVARSALの文字。
『デュービスカーブ!!』
「ヴェノム読んでいた!レベルの高い読み合いが依然として続いています!!
さぁ、、ダウンを奪ってどう切り返すのかフォォォヴェノム!!一試合目の悪夢再来かぁ!?」
(よし、ここからKS陣ダッシュジャンプ裏周りからバックダッシュ3択。このまま壁に押し付けて倒しきってやる!)
ダッシュジャンプからバックダッシュJSでめくり中段。流石にガードする。
そこからJPに繋いで着地下段と見せかけ投げ。
『すまんな。ゆくぞ!』
HSストで〆て完全に画面端にエディを追い詰める。
そこからHSK陣を組んで再度、完璧な形で起き攻めにとりかかる。
「さぁ、遂にヴェノム本領発揮か!!
第一試合のような、、強烈な固めがまた見れるのでしょうか・・・!」
『ゆくぞ!』
Kボールをスラストで弾く、エディが立ちガード。
ボールによるガード硬直を利用した高速中下段起き攻め『F式』だ。
昇りJKでボール硬直のせいで当たり判定の変わらないエディを崩し、、
そこからJP空キャンJHS>近S>Sカーカス>近S>HS>スティ青>HS>モビ
『ハァッ!マッセ!ショットロマンティーック!ダブルヘッドモービットォ!!』
「F式が決まったぁ!!エディの体力はぁ、残り3割!!ターンはまだヴェノムだ!!」
(・・・テンションは約30%、俺も相手もサイクは残ってる。。
間違いなく要所で使ってくるだろうな、、ダークエンジェルが使えないのが口惜しい。。)
テンションの溜まりをうだうだ言っても仕方が無い。
K生成から定番のJK弾き三択起き攻めを迫る。崩せれば倒せるだろう。
愛が選んだ選択肢は着地下段。
直接足払いからエリアルを決めればヴェノムの火力でも十分倒しきれるはずだ。
「起き攻めは下段の選択肢!!足払いがヒットォ!!」
(当たった!!ここでバーストかッ!!?)
『ショットロマンティーック!』
『やってくれたな!』
『無駄な時間は省こうか!!』
「スティ青から青サイクに金サイクを合わせたぁ!!
ヴェノムがここで一転の曇りもない完璧な読みを見せ付けました!!」
『覚悟を決めろ・・・、ダークエンジェル!!』
『覚悟を決めろ・・・、ダークエンジェル!!』
エディの起き上がりに2つの暗黒物質を重ねる。
エディのテンションはほとんど残っていない、削りだけで問題ないだろう。
『人間ごときにぃぃ!』
― S L A S H ―
『一度のチョークで・・・、十分だったな。』
「先鋒戦終了!!最後に勝ったのはヴェノム!!勝者は『ザトー様フォォォ…』です!!」
2006-12-04T23:21:02+09:00
1165242062
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20氏まとめ2
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「お疲れ様、結果は私と校長とで検討してから教えるわ。
明日には結果でると思うから、また明日来てね。」
「はい、ありがとう、、ございました・・・。」
そういって一二三は職員室を、ギル高を一度去るのだった。
「・・・筝笠先生」
「あ、右渡校長、見てたんですか?」
「まぁね、それより彼女だけど」
「そうですね、素質は十分だと思います。
それから、見掛けの割りに感情的みたいですね。
他には」
「いや、いいんだ」
「はい?」
筝笠の話を右渡が止める。
「彼女、合格だよ。
チップの何たるかを無意識のうちに理解している。」
「はぁ?校長が言うんでしたら、異論はありませんけど・・・
なんですか?チップの何たるかって?」
「・・・なんだろうねぇ」
後日、一二三には正式に合格通知が手渡された
[一二三・エア・プロヴォークの転入を認める。学校長 右渡 大輔㊨]
―1年E組SHR―
「と、ゆーわけで
こちらが、今日からこの学校に通うことになった
一二三・エア・プロヴォークだ。」
ざわざわ
「おぉ~、また転入生か・・・」
「あの子、この前ゲーセンにきた子じゃない?」
「あ~、確かに」
ざわざわ
「犬が西向きゃ尾は被害妄想・・・」
「ケッコー可愛くない?」
「不謹慎だぞ・・・」
ざわざわ
「兄貴には俺がついてるッス、浮気しちゃだめッスよ」
「気持ちわりーんだよテメーは!」
教室がざわめく、この辺はやはり高校生らしいところだ。
ただ、、、教室にズドンと筐体が置いてある、、やっぱり圧巻だ。
「あ~、こら、黙れお前ら。
ほら、適当に自己紹介しとけ」
「は、はいはい、えーとえーと
一二三・エア・プロヴォークです。
持ちキャラはチップです・・・はい。」
その時一二三はふと見知った顔が入ることに気づいた。
(あれ?、樹さんじゃ?)
樹(とおぼしき女性)は紙に何かを懸命に書いていた。
(なんだろう、キャラ対策かな?
それとも独自のメイ理論だったりして、、ま、まさかラブレター!
おぉ~、恋する女性は美しいよねぇ~。。)
脳回路全開、フル稼働開始。
少女の想像力は留まることを知らない、これぞ一二三脳。
「ん?どしたぁ?、君の席はあそこな。
授業始めるぞー、今日は弱キャラが弱キャラと呼ばれる所以についてだ。
っと、その前に、、おい、お前ら、
最近校長の名前を間違った不届き者がいるから注意しろよ?
右渡太輔校長だぞ。大輔じゃぁないからな?」
とりあえず、さっさと授業を始める雁田。
どっかの20番が右渡の名前を間違ったことについて話している。
(恋する女性、相手は誰かなぁ~
やっぱりこの前約束にこれなかった人のことかなぁ~)
「いいか?弱キャラってのはな、ゲーム中のシステムや仕様に恵まれず、
ダイヤの下にいるのが多いキャラたちのことだ。
コンボが安いとか、相性が悪いとか、対義語はもちろん強キャラだぞ。」
(うんうん、
樹さんの持ちキャラはメイだから、
きっと相手の人はジョニーよね、そうよ、そうに決まってるわ。
はぁ、一途な恋、、憧れちゃうなぁ・・・)
そんな腐女子脳をフル稼働させる一二三をよそに
教室中の70%の人間が睡魔に襲われていた。
なんでって、そんなの決まってる。
『弱キャラが弱い理由なんて解りきってるから』である。
「え~、とまずチップについてだな」
(恋と言えば障害が付き物・・・?
・・・先生、いま何と?
チップは弱キャラだったんですか~・・・?
ずっと中堅以上だと思ってたのになぁ)
心の中で当惑する一二三の事など露知らず、雁田が解説を進める。
「特筆すべきはその防御力と気絶値にある。
コイツの防御係数は1.61、気絶値は50だ。
ワンチャンスで一気に体力をぶっこ抜けるギルティでは致命傷だ
サイクの無い状態で浮かされたら死を覚悟したほうがいい。
火力も比較的低いし、エリアルもPやKを多く刻むからバーストを溜めやすい。」
(そうかぁ、そうだったのね、、
体力減りやすいなぁとは思ってたけど、、、
真実とは常に過酷よね・・・)
それっきり、一二三も夢の世界の入り口へと向かうのだった。
『オゥァーオゥァーオゥァーネッテロー!!』
右渡の声が響き渡る。
この学校特有のDループチャイム。
(ハッ!
Dループ!!?)
「あ~、んじゃ授業終わるぞ
おつかれ~、みんな夢ん中だけどな。」
(なんだ、チャイムか・・・
恐るべし右渡チャイム、
恐るべしDループ。)
チップ使いにとってDループはまさに恐怖の象徴と言える。
5割、6割当たり前、つい先日の転入試験のこともある。
「受かったのね、よかった。」
授業が終わってすぐ、樹が声をかけてきた。
「あ、樹さん。
??そちらの人は?」
「あぁ、この前約束に来れなかった奴よ
佐藤 愛っていってね、ヴェノム使いよ。」
そう言って樹は隣にいた、、、、、、、女子?を紹介した。
「はじめまして、一二三です。
よろしくお願いします。女の子さんでしたか、
私はてっきりジョニー使いの男の子だとばかり、あはは・・・
(ふぅ、読みがはずれちゃった・・・おつかれさま、私)」
「あぁ、よろしく、、
いや、俺は男だよ。。」
「・・・はぇ、、、、?」
(お、可笑しい、どこから見ても女の子に見える、、
いや、髪は長いし、でも胸はサッパリないわね。。
やゃ、ホントに男の子みたいだ、、
それ以前に明らかに男子の制服でしょ、これは
ま、まずい、この雰囲気は、絶対気にしてるよ。。)
「ご、ごめんなさい。
な、名前が名前だけに、ついつい・・・
あぁ、それより、愛って名前なのにヴェノム使いなんですね。
ファウスト使ってるわけじゃないんですか??」
性別を間違えたことを咄嗟にフォローすべく話題を変えてみる。
「・・・ハァ」
しかし、愛は気の抜けた大きなため息をつく、
なんだろう、またいけないことを言ってしまったのだろうか?
「あのねぇ、一二三、
名前だけじゃなくて、苗字も込みなのよ?ニヤニヤ」
「・・・苗字?佐藤ですよね。。。」
(佐藤、、さとう、、さとー
サトー・・・・・・・・・・・ま、まさか!!)
『ザトー 愛』
(*<◎>)<ザトー様、フォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!
( <◎>)<ザトー様、どうしてこんなことにっ!
(#<◎>)<愚弄してくれたな、例え骸だけでも返してもらうぞ!
(;;<◎>)<あぁあ、あの方以外にっ!
「・・・ご、ごめんなさい、気づかなくて、クスッ
すいません、悪気はなかったんで、、ププッ」
「いや、いいって、慣れた慣れた。
樹なんてもっと笑いやがったしね・・・」
「なに言ってるのよ、全部あなたの名前が悪いのよ。
いっそ開き直りなさいって、そのほうがいいわ。」
「やっかましい!
間違っても『ザトー様フォォォォォ…』とは言わんぞ!
右に誓う!!」
「校長に誓うとろくなことにならないわよ?」
「いや、俺は右渡を信じる。
・・・それより気分転換に対戦しようぜ、、、」
「転換するのはあなただけだけどねぇ・・・?」
「ウルセー、ウルセー!」
こうして少女の学校生活は始まった。
『マッセ、ハァッ!マッセ、ショット!ロマンティーック!デュービスカーブ!』
『覚悟を決めろ、ダークエンジェル!見誤ったな!!』
『シッショー』
『一度のチョークで、十分だったな。』
「ほへ~、
愛ちゃんつよいですねぇ~」
「なあ、"ちゃん"はやめてくれないかな・・・」
「じゃぁ、何がいいですか??」
「・・・俺もわからん。」
やはり、愛という名前は普通に生きるには苦労する名前だ。
男の友達とかなら「佐藤」で済ましてくれる。
しかし、どうだ、、「愛ちゃん」はないだろ、、
俺は天才卓球少女でもなければ年間億単位のプロゴルファーでもない。
しかも呼ぶことにまるで罪悪感がないな、罪なハーフだ。。
そもそも、俺がヴェノムを使いだしたのは動画に感化されたからだ。
ボールと共に華麗に立ち回るそのキャラを見て、俺は全身が痺れた。
元は梅喧を使っていたが、そのときの衝撃といったら・・・筆舌に尽くしがたい。
そして、俺はヴェノムにキャラ換えしたんだ。。
日夜、ヴェノムの練習に明け暮れた。
難しい、難しいと言われていた操作も苦にならなかった。
むしろ、楽しいとしか思わなかった。
だが、あまりにも納得いかない事実がそこに隠されていた・・・。
そう、こいつはフォモだったんだ!!
GGXXBBSを見て初めてそのことに気づいた。
そして気づいたときにはもう遅かった。
おれはヴェノムしか使えない体になっていた、やりこみすぎた。
ギルティでここまで自分自身を悔いたのはこれが初めてだった。
(キャラがフォモ?
別にいいじゃねぇか、そんなのネタだぜ。笑いのタネ。)
そう思った、そうやって過ごすことにした。
今思い返しても苦しいやり過ごし方だったんだ。
事実、このとき俺はもう既に気づいていたんだ。
「己の名が絶望的に危ないことに!」
なぜ俺の苗字は佐藤なんだ!?
日本で一位二位を争うメジャーな苗字だよ。
なぜ俺の名前は愛なんだ!!?
「答えてくれ、親父!!!」
俺は親父を問い詰めた、勿論さりげなくだが。
曰く、「人を愛することが出来るような人間になって欲しかったんだ。」
「・・・あんたは、3年B組の担任か・・・?」 orz
俺は決意した、たとえ納得いかなくとも、
親から貰った名前を背負って生きていくんだ、と
この名前を蔑むような奴は俺のヴェノムで倒せばいい。うん、それでいい。
「・・・?
愛ちゃ~ん?どうかした?」
「いや、別に、、
だから"ちゃん"は・・・」
「でも、他にいいのがないんだよね・・・
愛くんもおかしいでしょ。。
なんなら愛殿にする??」
「・・・謹んでご遠慮します。」
「一二三、愛そろそろ帰りましょう。」
「はーい」「はいはいっと」
まぁ、悪くない、、かな・・・
「それにしても、
一二三残念だったわね。」
「何がですか?」
「闘劇代表選抜ランバト兼期末テストに参加できなくて、
実はあたしも愛も負けちゃってね。」
「そんなのあったんですか?
でも、私の腕じゃ無理ですよ。流石に」
「そうかしら?でも勝った人達ってホント強いのよねぇ、
特にうちのクラスだと・・・そうね、
エディ使いの郁瀬君と、カイ使いの聖さんと、、
あぁ、あとDQNスレイヤーをボッコボコにしたチップ使いが一人・・・紙野っていってね。
あの試合は見物だったわね、雁田が試合のビデオ持ってるかも知れないから、借りてみたら?」
学校からの帰り道、三人、いや二人で他愛のない話を繰り返す。
もう既に、一二三はこの空気に馴染んでいた。
愛は話に加わらずに自分はなんと呼ばれるのがいいのかを熟考している。
「愛、、さん、くん、、ちゃんは却下だし・・・
殿、、は明らかに可笑しい。呼び捨てで構わないけどな、、いや」ブツブツ
「このあとは夏休み、それから次は学祭ね、学祭。
ま、学祭って言っても結局ギルティにまみれた学祭だけどね。」
「いいですねぇ~、学祭
やっぱりクラス毎に色々やるんですか?」
「うん、クラス毎、キャラ毎、部活毎ってところね。。
あぁ、そうそう、チップ使いの集まりには行かないほうがいいわよ。
なんか、前に手裏剣が刺さって病院いったのがいるらしいから。」
「・・・なんですか、、それ?
やっぱり、樹さんはメイ使いの集まり行くんですか?」
「いや、あたしは。。行かないかな・・・」
「??
あ、愛ちゃんは?いかないの?ヴェノムの集まり」
「断じて行かん!ただの同人誌ならともかく、
ザト×ヴェノやらヴェノ×医者の同人誌の即売会なんて行けるわけないだろ。」
「は・・・?ドージンシ?」
「知らないほうがいいわ、気分を害する。
愛にとって自分の名前が一番恥ずかしくなる場所ってことよ、
あ、じゃぁあたし、家こっちだから、また」
「さよなら~」「じゃな」
「じゃ、俺はここで、またな」
「愛ちゃん、さよなら~」
「・・・わかって言ってんな。」
―終業式―
遂に明日から素晴らしい夏休みが始まる。
全国のちびっこたちが待ちわびる夏休みだ。
そして、もう一つ、ちびっこ達が首を長くして待つもの。
そう、通知表!
「返すぞー」
「遂に来ましたね、通知表。」
「ふふふ、、生きた心地がしねぇよ。」
「あたしも・・・」
愛と樹は絶望的な表情をしている。
なにか成績が下がってしまうようなことをしたのだろうか。
うってかわって一二三は随分と楽しそうだ。
「次、五所川原」
「きた、、」
背を丸めて通知表を受け取りに行く。
樹が通知表を受け取る・・・
「樹さん固まりましたね・・・」
「あぁ・・・」
そのままへなへなと地面に座り込む樹。
ヤバかったらしい。
「次、佐藤」
「あーい」
ポジティブに通知表を受け取り行く。
愛が通知表を受け取る・・・
「ふっふっふ・・・キタァーーー!」
愛がガッツポーズをとる。
すぐそばで樹が肩を落としている。
「対極的ですね。」
「気にしないで・・・」
「ハッハッハ!」
「次、一二三」
「はーい」
通知表を受け取る。
恐る恐る中身を確認すると、そこにはこう書いてあった。
「編入から数日しか経ってないからイマイチわかんね。」
(・・・何だコレ。)
―終業式の帰り―
一二三は一人でZEPPSに行くことにした。
愛は浮かれてさっさと家に帰ってしまったし、
樹は落ち込みすぎでとても対戦する気分ではないらしい。
空いている筐体を見つけ硬貨を投入する。
あえてデモを飛ばさずにCPU戦に突入してみる。
(そういえば、日本に来てからゆっくりCPU戦する暇もなかったなぁ・・・)
来日初日に厨髭に絡まれ、試験で1Fを見るソルと戦い、
ほんの数日で夏休みになってしまった。
『Hare Comes Daredevil!!』
まだ、しっかりと聞き取れる。
まだ一二三の夕飯はベジタボーではない。
(焦ることもないよね、ゆっくり慣れればいいもん。)
乱入してきた相手がソルを選択する。
どうもソルというと「小足見てからヴォルカ」が勝手に連想されるのはいただけない。
『さっさと始めようぜ。』
『・・・』
HEAVEN or HELL Duel1 Let's Rock!!
『βブレー!』
開幕、ガンダッシュβを勢いよく放つ。
『どうしたぁ』
(しっかりガードされた。
いきなりダッシュヴォルカなんかしてくるようなソルじゃないわね。
う~~ん、、微妙にやりづらいなぁ。。。)
一旦距離を離して仕切りなおす。
ソルは前後にふらふらと動いてはフェイントを繰り返す。
『Find me!!』
(よし、慎重に立ち回ってくるなら、速さで攪乱してみよう。
迷彩よーし、心の準備よーし。)
『はずれだ!』
ダッシュから意表をついてソルの後ろに転移、そのまま近Sを繰り出す。
しかし、近Sはソルに届かない、完璧なタイミングでのバックステップ。
(むむ~、、いよいよもってやりづらいソルだぁ
ん~、そっちから手を出してくれるとありがたいんですけどねぇ・・・)
そんなことを考えていると、ソルがチップに接近してきた。
それもダッシュではない、『歩き』でだ。
(・・・ダッシュからヴォルカ、ぶっきら2択も嫌いだけど、、
歩きからN択って・・・うわぁ~全然わかんないよこの人ぉ!!)
ソルがこつこつと歩いてくる。
怖い、歩きがコレほどまでに恐ろしい行動だったとは・・・
じりじり、じりじりと歩み寄るソル、お互いの射程内に入っても歩みを止めない。
(・・・ど、どうしよう、、、手をださなきゃ、、
ううん、もしそこでヴォルカがきたらヤバイことに成りかねないし。
あぁ~~、もうわけワカンナイ・・・。)
『フッ、オォゥ!』
(・・・あ。)
延々と一二三が悩み続ける間にとうとうソルはぶっきらの射程内まで歩を進めていた。
エリアル>ヴォルカ>叩き落し、一連の作業のようにソルが攻撃を当てる。
(・・・なんで投げの範囲に入られるまで悩むかなぁ、私ってば・・・
やっぱり、ソルが歩いてくるとか反則だよ。)
しかし、叩き落しを決めた後のソルの動きは一変して、ガンダッシュ
倒れるチップを画面端まで引きずって、いや・・・押していく。
(・・・う・・・またなんか始まった。。
リバサで投げを入力すれば投げられる・・・でもなぁ、次こそヴォルカ?
ぶっきらされても洒落にならないし。。う~~~~~~~ん、よし!!)
決意を固めて623コマンドを入力する。リバサβだ。
『βブレー!』
しかし、チップのβが空を切る。
ソルはチップの起き上がりにバックステップを選択していた。
(・・・もう呆れて声も出ないよ。
読みが深いとか、洞察力が凄いとか、そういう感じじゃない・・・
でも、このチャンスなら間違いなくJDを当てに来るはず、結局ソルはDループだから。
これほど複雑な立ち回りをして、やっとDループのチャンスがきて、それをしないソルなんかいないよ。)
一二三が予想したとおり、ソルがジャンプする。
『テェヤー!』『なめてんじゃねぇ!』
ロマンティーック
『どうしたぁ』
(・・・え、と、、サイクも読まれましたか、そうですか。)
『テェヤー、テェヤー、ヴォルカニックヴァイパー!!』
ひとしきりDループが炸裂する。
再び起き攻め、今度は月並みにガンフレ青を重ねてくる。
(ガンフレ青、、流石にとんでも起き攻めはもう来ないか。
さて、どうしよう・・・そうだなぁ、ここは意表をついてもう一発・・・)
『βブレー!』
ガンフレ青後、走ってきたソルにβブレードが今度こそ炸裂する。。筈だったんだけどなぁ・・・
『ドラゴンインストォーーール!!』
(もう無理、勝てる気しない・・・
ぶっぱするわけでもないし、こっちの予想は完璧に裏切るし、
その上、立ち回りは慎重極まりなく、要所を押さえて何故かドライン・・・)
その後は
【JD>JD】×2>JS>JS>JS>JC>JS>JS>JS>ヴォルカ
という、ネタの域にすら達しかねないJS乱舞を喰らってSLASH
『手の内はしまいかっ?』
(・・・まだ次のラウンドあるけど、ちょっと話かけてみようかな。)
そう思って筐体の裏に回ってみる、座っていたのはギル高の男子学生
「すいませぇん・・・」
「ん?俺ですか?もう1ラウンド残ってますけど?」
ソル使いは物腰柔らかで、ソルのようなとげとげしさは無かった。
別にソル使いならみんながみんなぶっきらぼうで粗野ってわけではないが。
「いやぁ、なんか圧倒されちゃって・・・」
「あぁ、そうか、さっきはワザと意外な立ち回りをしようと思いまして。
そうだ、僕の名前は双琉 建、見ての通りソル使いです。
基本的にぶっぱとかはあまり好きじゃないんです、必要な時には使いますけどね。」
「あ、私は一二三・エア・プロヴォークって言います、一年です。」
「一年?なんだ、僕と同じなんですね。
また学校で会う機会があったらまた、よろしくお願いします。」
「あぁ、いえいえ、こちらこそ・・・。」
それだけ言ってそそくさとその場を立ち去る。
う~ん、らしくない立ち回りっていうのも結構重要なのかも・・・。
2006-12-04T23:08:58+09:00
1165241338
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1165241227
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5スレ目まとめ1
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「糞ッ!!」
「みっさー…そんなに気にすることないよ。まだ僕や蘇留もいるんだし…」
「そういう問題じゃねぇんだよ!!」
やっぱり気にしてるのかな。いや…気にしてないわけ無い。
まだみっさーは本調子じゃないんだ。僕がみっさーの分まで頑張らないと。
「……やっぱりアタシなんかより葵夙(きすく)を出していた方が…」
「馬鹿な事を言うなッ!!」
蘇留が怒鳴る。
「海なんかよりもお前の方が絶対に強い!!私が保障する!!それに、あんな女が出たら私の士気まで殺がれる」
「そうだな…悪かった…」
そう言ってみっさーは笑った。それはまるで自分を嘲笑うような、痛々しい笑顔だった。
「…雹」
「な~に?」
「あのヴェノム使い強ぇぞ。大丈夫だとは思うけど、ナメてかかるな」
「うん」
ステージに登って行く。僕がみっさーの分まで頑張らないと。
敵はヴェノム……同キャラ戦……同キャラなら6:4で有利、それが僕の理論だ。
「雹、忘れてるぞ。ほら」
「あ」
みっさーが投げてきた赤い物体を片手でパシッとキャッチした。早速包装を手で切って中身をほおばる。
ぱきぱき…もぐもぐ。
「ん~~これが無いと調子でないんだよね~~さんきゅうみっさ~」
キットカットはいつ食べてもおいしいけど、やっぱり試合前に食べるのが一番だ。
・・・
リアルヴェノムが筐体に歩み寄ってくる。長い前髪のせいで表情はやはり窺い知れない。
「そう言えばお前あの時の…」
クリスマスの日にこいつに占ってもらった時の事を思い出す。
たしか名前と誕生日と血液型を聞かれて……将来は犯罪者になるかもしれないとか言われて……
そんで三綾との相性がバッチリ、とか言われたんだっけ。
お互いに友達としか思っていなかったのに急にあんな事を言われたもんだから、あの時は流石にかなり困惑した。
もしあの日こいつに会ってなかったら、俺と三綾の関係もなかったように思える。
「あ~~はいはい。たしか松瀬……でしたっけ~~?」
だら~~っと間延びした口調。緊張感の無い奴だ。なんかチョコレートみたいな甘い匂いもする。
しかもこのポリポリと言う音……まさか―――
「キットカット…だと…?」
"試合寸前にキットカットを食う!"
それは野球で言う所の予告ホームランであり、「北○の拳」で言う所の「お前はすでに死んでいる」と同義である!(?)
「やってくれるじゃねぇか…!」
「?」
・・・
何故かは分からないけどキットカットを食べたことが気に障っているらしい。
僕はただ縁起を担いだついでにブトウ糖を補給しただけなのに……。
どうやら彼はキットカットに対してとんでもない勘違いをしているようだ。
「それではこれよりE組vsG組の試合を行います!
E組からは松瀬 緒土、ヴェノム。対するG組の次鋒もヴェノム使いの赤井 雹!」
『PLEASE SELECT YOUR CHARACTER!!』
―――カチャカチャ、カチャカチャカチャ、ガ、ガァン
同キャラ戦はロードが1人分で済む為画面が切り変わるのも早い。
すぐに筐体から『NOTHING OUT OF THE ORDINARY』が流れ出す。この緊迫感をジワジワ高めるようなイントロ……堪らなく良い。
何故あまり人気が無いのか…僕にはわからない。
『始めるか』
『ブレイクだ』
『ヘヴンオアへール! デュエルワン! レッツロック!!』
『次が読めるか!』『死角を取ったぞ』
互いの手が重なった所に白い光が迸る。
『SHOT!』『ショッ!』
ボールがぶつかりあって打ち消される。
『並の腕ではないな』『これ程とは…』
そして寸分たがわぬタイミングで同時敬意。これぞ同キャラ戦の醍醐味……しかし
『ダブルへッドモービット!!』『ダブルヘッドモービット!!』
(え…っ!?)
「あっと両者とも敬意キャンセルモービット!
打ち合わせしていたのか、それとも天然か…後者だとしたら2人ともかなり狡猾!!」
会場からも少し笑いが起こる。
(まさかモビまで同じタイミングで撃つなんて…松瀬 緒土…こいつ……できる…)
そういえば蘇留が言ってたっけ…。
"お前…松瀬に似てるな"
"マッセ?何それ?カーカスライド?"
"『何それ』と言われても非常に答え難いんだが……そうだな……ライバルだな"
"ライバルかぁ……強いの?"
"そこそこ"
"じゃあさ、僕とどっちが強い?"
"……まぁ……そうだな……お前の方が強いと見て間違いないな"
―――バシュウッ!
すぐにバックダッシュで間合いを離してシューティングを展開する。
P生成>K生成>ダッシュP撃ち>P生成の3WAYから、HS生成>瞬間移動>JS弾きで突撃。
『見誤ったな』『そこではない』
それをお互い全く同時のタイミングで行った。
『カウンタ!』
中央で背中を付き合わせる格好になり、互いのJSが相討ちになった。受身を取って間合いが離れる。
『驚いたな』『これ程とは……』
(これは…シューティング合戦になる)
そう踏んでいた。そして恐らく松瀬も同じことを考えていたのだろう。
しかし2人の行動は一致しなかった。
『カウンタ!』
ボール生成にダッシュ遠Sを刺し込まれた。
シューティングの打ち合いになれば勝つ自信があった。だから生成した。当然の行動。
対する相手の取った行動はダッシュ遠S。
これはつまり、彼はシューティングでは僕に勝てないと感じていると言う事。
だから強引に突撃してきた……って事なのかな~?
(シューティングに自信が無いのかな~…?)
中距離で刺し合えばどうしても「運ゲー」になってしまう。これは同キャラ戦の逃れられない宿命。
敵がシューティングを不得意とするのなら尚更距離を取って闘いたい。
しかしこの状況ではそれも無理。「運ゲー」……別に嫌いじゃないし、付き合ってもいいや。
それに運ゲーになるのはあくまでも理論的な話で、互いのプレイヤー性能が全くの五分の場合のみ。
そんな事はまずありえない。つまり実戦においては運ゲーなどではない。むしろ逆。
どちらが強いのか、ハッキリと分かる。
『ハアッ!』
―――バシッ!
遠S>P生成からジャンプしかけた相手に6HSを引っ掛けた。起き攻めのチャンス到来。
ヴェノムの切り替えし性能は悪い。一回ダウンを奪い、そのまま起き攻めをループさせて倒す事も可能。
同キャラ戦は先にダウンを奪った方が圧倒的に優位。
―――ヴン…
K生成>ダッシュJK撃ちからN択を迫る。だが、こんな安っぽい起き攻めで崩せるかどうか……。
―――バシュウッ!
裏に回って着地寸前のバックダッシュからめくりJS。
『読めているぞ』
やはりガードされてしまう。しかしせっかく接近戦に持ち込んだんだ。このまま逃がすわけにはいかない。
『ゆくぞ!』
『読めているぞ』
2K>近SからSストで崩しにかかるが、それも難なくガードされてしまう。
(なら投げ…!)
『すまんな』
『ファールを犯したな!!』
HSストにバーストで割り込まれてダウンを奪われる。
相手はそのままダッシュで迫り、目の前まで到達すると横に一回転した。
(なんだ…?)
『次が読めるか!』
『それで終わりか』
起き上がりにデュビだって…?確かに持続の後半を重ねれば、そこそこの有利Fが生まれる。
ボールが生成される分、ここからの攻撃もダメージが上がってしまうが……
『見誤ったな』
直後に2S>瞬間移動で相手が頭上に出現する。
―――バシッ!
初めて見る起き攻めなだけに戸惑ってしまい、そこからめくり中段のJSをくらってしまう。
起き上がりに重ねたのはHSデュビだったらしい。
『マッセ!次が読めるか!』
さらに近S>Sカーカス>2K>近S>デュビ。
これはHSデュビ……みっさーの時も何回か使っていたし、どうやらF式がこいつの十八番らしい。
だがF式なんて何度もやってきたんだ。対処法は分かっているし、食らう要素は無い。
―――ヴン…
僕の予測はそうそう外れるものじゃない。だからこそ、外れた時の対応が鈍くなってしまう。
ヤツがデュビの後に生成したのは、Pボールだった。
(F式じゃない…?)
『見誤ったな』
直後に瞬間移動して裏に回られる。めくり中段か…だがこの程度なら余裕で見えるレベル。
―――バシュウッ!
(えっ!?)
J仕込み瞬間移動から空中バックダッシュで表に回られる。
(くっ…でも!)
―――ガッ
裏回りならぬ、表回りJKをなんとかガードする。同時に弾いていたPボールもガード。
危なかった……しかし急に起き攻めのパターンを変えて来るなんて……侮っていた。
一つの起き攻めを繰り返す事で、変化させた時に相手の対応を鈍らせるのが狙い…と言うわけか。
『見誤ったな』
(いっ!?)
再び瞬間移動。HSボールの上に現れるヴェノム。
―――バシッ!
めくりJSから近S>Sカーカス>近S>HS>HSデュビ。
(なんか僕いい様に振り回されてない?……こんな受身なキャラじゃないのに…)
それだけ相手がやり手って事か……みっさーが強いって言うくらいだもんね…気を引き締めないと。
『ファールを犯したな!!』
デュビ後の生成にバーストを合わせる。これで主導権は握った。
"天才"の名は伊達じゃないって事、君にも教えてあげるよ。
―――ヴン…ヴン…
・・・
たしかにバースト後じゃろくな起き攻めは出来ない。
だが起き攻めを放棄するとは……そんなにシューティングに自信があるってのか?
まぁそんな事はどうでもいい。ヤツのシューティングを破りさえすればいいんだ。
『SHOT!』
レベル2Sステで3WAYを突き破る。
『そこではない』
直後、瞬間移動で目の前にヴェノムが現れた。
3WAYのどさくさに紛れてHSボールを配置していたのか……抜け目ないヤツだ。
でもその程度の行動は予想の範疇。6Pで迎撃すればいいだけのこと。
―――バシュウッ!
(あ…!?)
J仕込み瞬間移動からバックダッシュJPでHSボールを弾いてくる。
(固められる…!?)
『ゆくぞ!』
JP弾きから着地し、即座にスラストを放ってきた。全く反応できずに綺麗にくらってしまう。
『カーカスライド!死角を取ったぞ』
HSデュビでダウンを奪われる。
(呆気無さ過ぎるぞ俺…)
こうも簡単に接近を許してしまうなんて…まるで何手も先を読まれていたみたいだ。
―――ヴン…
(この陣は…F式か)
『ゆくぞ!』
『読めているぞ』
最初のスラストで弾かれたボールをしゃがみガードする。
いくら見えない高速中段とは言え、ここさえ捌けばそれも成立しない。
何回も繰り返してきたストラグルだ。見切るのは難しくない。
そして、それは同じヴェノム使いである相手もそうだろう。
(こいつにF式は使えないな……)
そんな事を考えているとJK弾きのフォローから着地2Kに当たってしまった。
『カーカスライド!死角を取ったぞ』
コンボをつなげられ、今度はオーソドックスなPK陣。
ダッシュJKで弾かれたKボールをガードし、続く中段の低空ダッシュJS>JHSもガードする。
そのまま着地して近S>Sスティンガー>Pボール打ち>2K>近S>Sカーカスで固められ、敵のTGも緑から赤に変わった。
ここで崩されれば相当なダメージを負うな……さっさと抜け出さないと。
『ゆくぞ!』
(スラスト…見える…!)
寸での所で立ち上がるが、ストラグルは命中していなかった。
(すかし下段!?)
『ゆくぞ!』
―――バシッ!
「ここでダストー!!」
慌ててしゃがんだ所にダストが当たった。
『ゆくぞ!ゆくぞ!ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ふんっ!』
ダメージを重視したダストコンボ。JD>JD>JS>JP>JS>JP>JS>JP>JS>JS>JHS。
(くっ、このダメージ…!)
ガードゲージの上昇も相まって、一気に残り体力を2割弱まで殺がれる。
―――キィィィーン…
『レッドヘイル!!』
―――ドドドドドドド!!
弾丸のようなボールが次々とヴェノムの体に打ち込まれていく。残り僅かな体力ゲージが見る見る短くなって行く。
(まさか…!?)
『驚いたな』
「まだ残っている!!」
(あ、危ねぇ……)
残り数ドット。受身を取って空中ダッシュで間合いを離す。相手はまだ残り4割弱…。
ヴェノム相手に残り数ドットと言うのは厳しすぎる。ここまで来たら賭けに出るしかない。
・・・
残り数ドット…ボール1発ガードさせるだけでSLASHだ。悩む必要は無い。シューティングで削り殺すんだ。
そう考えて生成した直後、相手のヴェノムが猛然と走り寄って来た。
『ダブルヘッドモービット!!』
(ぶっぱノビタぁ!?)
『ロマンティーック』
『ハァッ!!ダブルヘッドモービット!!』
HSモビRC>6HS>HSモビを食らった。こちらも残り数ドットになる。
(ど、どうしよう!?)
状況はほぼ5分…遠S?生成?それともスティンガー?
(考えてる暇は無い!)
『カウンタ!』
音声が二重になった。
『不覚……!』
『私が未熟なばかりに!!』
『ノックアウト!』
「あっとこれは遠S相打ち!両者とも一気に後がなくなりました」
やられた。あそこでぶっぱなして来るなんて…こいつの動き、全然予測できなかった。
でもこのラウンドで敵の事も大体は把握出来た。2R目は確実に取ってみせる…!
『デュエルツー!レッツロック!!』
『ふっ』『甘い』
「開幕は両者バクステから生成…」
(シューティング戦…!)
生成するボールは正確に、弾く技も最良の物を慎重に選択する。
そして動作は、判断は、可能な限り早くしなければならない。撃ち合いになれば当然回転率がモノを言うからだ。
だが互いの動きはボールを4つ生成した所で止まった。
(松瀬 緒土…やはり易々と勝たせてくれそうにない)
回転率が大きなウェイトを占める訳だから先手を取りたくなるのは当然だ。
だが穴の無いシューティングなど存在しない。
3WAYや4WAYのように範囲を広くすればそれだけ弾幕は薄くなり、ステ溜めや瞬間移動で破られ易くなる。
逆に弾幕を厚くすればそれだけ範囲は狭まり、上からボールを打って攻められたりする。
だから確実に接近するには「無駄弾」を減らさなくてはならない。
『ゆくぞ…』
(えっ!?)
『カウンタ!』
慌ててボールを弾いて相殺しようとするが、間に合わずに被弾してしまう。
そんな馬鹿な…先手を取ってくるなんて。それも、ダストなんかで弾いてくるなんて…!
何故わざわざ硬直の長いダストなんかで打ってくる?理由はただ一つ、弾速が速いから。
しかし当てた所で有利Fは立ちPなどで弾いた時と雲泥の差がある。
つまりヤツは有利Fの大きさを意識していない、ボールでダメージを取りに来ている…ってことは…つまり…
(…"封殺型"のシューティング)
かなり大雑把に分けてしまうが、シューティングには2つの種類がある。
1.封殺タイプ
多くのボールを使って2WAY3WAYを駆使し、封殺しに掛かる。
他にも地上の弾幕を厚くして相手を飛ばせて落としたりする。
特に機動力が低く、飛び込みの弱いキャラ、接近戦が強いキャラなどに使う。
2.ボールを盾に攻め込むタイプ
多少リスクを背負いながらも強引に攻め込んで固め殺す短期決戦型。
1のタイプが通用しない相手や、切り返しなどの防御能力が低いキャラに使う事が多い。
どちらかと言えばヴェノムに有効なのは「2」のタイプ。
切り返しが弱いため、固めてしまえばそのまま押し切れる可能性が高いからだ。
松瀬は僕と同じようなタイプだと思っていたが、それは間違いだった。
僕はシューティングから本体のコンボへと移行してダメージを取るように立ち回っている。
前述したシューティングのタイプで分けると「2」と言っていい。
とにかくボールを作ったら早めに突撃し、当たればその時にデカイ一発を見舞う。
だからコンボに移行しやすいよう、ある程度距離を詰めつつ闘うのが基本形だ。よって若干のリスクを伴う。
対する彼のシューティング……シューティング自体で敵を制し、シューティング自体でダメージを与える。
典型的な「1」の、完全砲台スタイル。気付けば体力がすり減らされ、プレイヤーの集中力も奪われてしまう。
遠距離主体だから当然間合いも遠く、切り抜けにくい。だが一発一発のダメージはたいしたことは無い。
リスクが少ない分リターンも小さい。一気に逆転する事も十分可能。
(面白い……勝負だ。どちらの"venom"がより強いのか)
例えるなら僕のvenomは出血毒。
侵入するとタンパク質を次々と溶かしていき、体の組織・細胞を破壊して内出血を引き起こす。
果ては臓器等からも出血して凄まじい痛みを伴う。
対する松瀬のvenomは神経毒。
文字通り中枢神経を破壊する。視覚や平衡感覚を失わせて麻痺状態にし、そこを仕留める。
痛みを伴わないため気付いた時には手遅れになっている。
一見同じヴェノムに見えても中身はまるで別物だったんだ。
『ショッ!』『SHOT!』
互いのシューティングのスピードはほぼ五分。
だが相手は近寄らせまいとシューティングし、こっちはなんとか近付こうとシューティングしている。
つまり瞬間移動するにせよ、ダッシュするにせよ、こちらは絶対に距離を詰めなければならない。
それが足枷となる。移動しながら打つパターンは限られているし、弾速の速い球は使ってもあまり意味が無い。
しかし相手はそれらの拘束無しに自由にシューティングを組み立てることが出来る。だから攻め込めない。
『それで終わりか』
一応ボールを直ガしてゲージも溜めておく。
防戦一方になる…このまま打ち合っていてはマズい…。
(こいつ思うように動かないな…)
ほとんどのボールは避けられるか相殺されているし、弾速の速い球は直ガしてゲージを溜められる。
もしミスをしてしまえばすぐにボールを盾にして突撃してくるだろう。
ここはパターンを絞らせては駄目だ。こちらも距離を詰めて戦うべきか…。
・・・
『見誤ったな』
―――カッ
進路を限定してくるシューティング…下りJK撃ち…この低い2WAYは…飛ばせて落とすタイプ…。
―――カッ
Pボールを弾いて相殺する。
さっきまでは玉を残しつつ撃っていたのに…。この人、シューティングの切り替えが巧い。
本当に自然に、こちらに気付かせないようにパターンをすり替えてくる。
しかもそれを意図的にやってると言うのだからタチが悪すぎる。
参ったなぁ…微妙な心理の揺れを敏感に察知して攻め方を変えてくる。
相手の最も嫌がる地点にボールを撃ってくる。それも先読みをしつつ。
小賢しくていやらしい立ち回り。思い通りに動かせてくれない。
まるでそう…狼みたいな奴だ。
狼は獲物を見定めると、まず狩りの手法を思案する。
そして獲物の特徴に合わせて狩りの手段を変える。基本は待ち伏せが多い。
自分より足の速い獲物に関しては、息を殺して忍び寄って強襲。
群れで狩りをするならハウリングによる連携など、多彩だ。
狼は意外にも速く走る事ができない。狼の狩りは"牙"に依らず、その"脚"に依る。
その理由は、彼らが驚異的なスタミナを備えているからだ。
待ち伏せが失敗に終わった場合、逃げる獲物を地獄の果てまで追跡する。
そして疲れさせて体力を奪ったところで襲い掛かり、喰い殺す。
松瀬 緒土…多彩な攻めと冷静な判断…気が付けばいつの間にか窮地に立たされている。
このまま相手のシューティングに付き合っていれば、僕の方が先に参ってミスを犯してしまうだろう。
体力ゲージだって地道に削られ、7割を切ってしまっている。
だけど焦っちゃダメだ。それこそ相手の思う壺。
……でも心理の読みは相手が上だし―――ん?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
って事は今の僕の思考も読まれてるかも知れない?
―――ヴン…ヴン…
早く状況を打開しないと取り返しがつかなくなる。
『SHOT!』
PS陣からのSステ。下方を厚くした3WAYが飛んでくる。
こちらの手元にはSボールのみ。
(奴の毒に侵される前に切り抜けないと。悔しいけど、今は慎重に動く時じゃないね…)
弾幕は鉄壁だった。確実に接近できた…ハズだったんだが…。
『時間をとらせたな』
(あと少しで追い詰められたのに……くそ…!)
今まで神経が擦り切れるような思いで展開していったシューティング。
それを1発のダークエンジェルが問答無用で攻守をひっくり返した。
だがダークを撃たせたと言う意味は大きい。TGを50%消費させれば上出来だ。
そして放たれたダークエンジェル…それはシューティング面では俺が相手の上を行っているという事を物語っている。
だが厄介な事に相手はそれに気付いている。だから不利を判断して絶妙なタイミングでダークを放った。
その時、唐突に場違いな思いが込み上がって来た。
(ギルティってこんなに楽しかったのか…)
久し振りだ……こんな事を思うのは。
1R目のダブルKOが恨めしくなる。どちらが勝ってもこのラウンドが最後になってしまうんだ。
もっとこいつと闘っていたい。そんな思いが自然と湧きあがってくる。
『貫けぇぇぇぇ!!』
迫り来る赤い球体。
さて、どう処理するか…。残念ながら今のSステでボールは全て撃ち切ってしまった。
残っているボールは無い。瞬間移動で逃げる事も出来ない。
だがダークをガードなんて出切る訳も無い。落とされると分かっていても、飛ぶしかない。
十分に引き付け、ダッシュJからの2段Jで可能な限り相手を攪乱する。
だが相手もそれはお見通し。落下地点までダッシュしてくる。
思い切ってJHSかストラグルで飛び込むか?いや、リスクが大きい。ここはFDで……。
『すまんな』
低空の空中投げから近S>HSストでダウン。K生成からダッシュJK弾きの起き攻めが来る。
『無駄な時間は省こうか!!』
暴発だと思った。だがそれは違うのだとすぐに分かった。命中したからだ。
・・・
『時間を取らせたな……貫けぇぇぇぇ!!』
めくり金バーストを当ててTGは100%。このターンで一気に決着を付けてやる。
『ゆくぞ!』
ダークの有利Fを使ってS生成>JK>持続ボール打ちから中段のストラグルを当てる。
デュービスでコンボを締め、続けてPK陣からの起き攻め。
認めたくないけどこいつのシューティングは一流。起き攻めで仕留めていく方が確実だ。
JK弾きから中段を狙う。
『無駄な時間は省こうか!!』
(しまった…!)
低空ダッシュJSに金サイクを当てられる。敵は素早く生成して3WAYの弾幕を張った。
(応戦しないと…)
『そこではない』
HS生成からタイミングを見計らって瞬間移動して距離を埋める。
『マッセ!』
だがちょうど移動した所にSカーカスを打たれた。
慌てて2段Jで飛んでしまう。ヴェノム相手に空対地の状況に持ち込んではいけないのに。
(マズい…)
空中で動きを制御するのはヴェノムには厳しい。仕方ない…ストラグルで飛び込むしかない。
『ゆくぞ!』
『ふんっ』『カウンタ!』
(やっぱ駄目か~……)
『覚悟を決めろ…ダークエンジェル!!』
6Pカウンターからダーク。
―――ヴン…ヴン…ヴン……
そこからダッシュ生成を立て続けに行った。
―――バシッ、バシバシッ……
空中ヒットのせいで、拘束される時間も運ばれる距離も長い。端に到達してダウンを奪われてしまう。
そして前には3つの―――
(ん…?ボール3つだって?)
…どうせアレだ。ハッタリ。
大方、動揺させて2択を見切らせないようにするつもりなんだろう。僕はそんな小細工には嵌る人間じゃないよ。
『覚悟を決めろ』
ダークをもう一発起き上がりに重ねてくる。
―――ヴン…
(なっ……4個!?)
ヴェノムの動きは非常に多彩だ。
それを可能にしているのがボールの存在。ボールが1個でもあれば攻めも守りも強化される。
それからさらに1個増えればボールの動きは「組み合わせ」によって複雑な物になる。
そして3個ともなれば組み合わせに加えて、ボールを残しつつ撃ったりタイミングを遅らせて撃ったりする事でさらに幅が広がる。
しかし、4個も生成した所で到底生かしきる事はできない。第一に4個も生成するチャンスなんて無い。
遠距離のシューティングでさえそんな感じ。ましてや起き攻めなんて2個あればほぼ事足りる。
2WAYなどの組み合わせを考える必要も無い。
なのに彼は4個目を生成した。
(は…ハッタリに決まってる…!)
生かしきれる訳が無い。
上下左右にボールを配置したひし形の陣形……普通に起き攻めしようとすれば一度の技で複数の玉を撃つ事になる。
結局ボールを絡めた攻撃は多くならない。だから攻めは複雑化しない。せいぜい崩した後のダメージを底上げする程度。
下手にボールを増やしても自分が混乱するだけだ。過ぎたるは及ばざるが如し。
どうせヴェノムにはF式を利用しない限り見えない中段は無い。
(集中)
相手のヴェノムの姿が一瞬ブレる。
(瞬間移動…)
ここからの選択は直にJHSか着地寸前低空ダッシュからの中段、着地下段など…。
どうする?バクステで食らい逃げ?
…ダメだ。さすがに4個もボールがあればコンボも自在。食らい"逃げ"にならない。深手を負うことになる。
(焦るな)
瞬間移動からの攻め……たしかに多岐に渡るが、決して見えない攻撃などではない。
今は飛び道具による目くらましがあるわけでもない。単純な崩しなら反射神経でカバーできる。
(何が来る…)
考えろ。見極めろ。
4個のボールはなるべく生かしたいと思うのが人情。よって効率の悪い撃ち方はしないと考えられる。
ならば一度の攻撃につき弾く玉は1つないし2つに抑えてくるはず。
そして、投げの選択肢は無い。投げではせっかく生成した4個のボールが生かせないからだ。
『見誤ったな』
ヴェノムが出現した位置は、4つあるうちの右のボールの所。
こちらはダークの背中の方が当たっていてまだ動けない……けど―――
(…なんだ……焦って損した)
この間合いなら着地下段が届かない。立ちガード安定だ。
やはり慣れない事をするもんじゃないね、松瀬。無様だよ。策士策に溺れるとはまさにこの事だ。
―――バシュウッ!
着地寸前の空中ダッシュJK。当然こんなエセ中段なんかには当たらない。
下段の選択肢が無いのだから当たる要素は無い。
―――ガッ
続けてJSに繋いで来る。
『そ、それで終わりか』
4個のうちの左と下、2つのボールがJSで弾かれる。
これを利用してSストと着地下段の2択を迫るって所か……安っぽい起き攻めだ。
こんなのはボール1個でも事足りる。4個使う意味なんて無い。
あとはボールを絡めて適当に固めるくらいしか出来ない。
やはり4個のボールは、僕を混乱させる為のものだったのだろう。
(やはりこの程度の崩しか……)
そのままヴェノムが着地する。
良し。ここまでくれば後は余裕。ストラグルもダストも発生は20Fを超える。
しゃがみガードで耐えて、崩しに来たところを逃げるなり割り込むなりすればいい。
だが油断してはいけない。起き攻めを凌ぎ切ったとは言え、状況は依然として相手が有利。
残ったボールにもまだ注意しなければならないし、固められてはGBも上がってしまう。
(そうか…4個生成したのは崩しが失敗に終わった時のフォローをするためってわけか)
ここは慎重に行動していこう。最悪の場合はDAAでも使って切り返してい
―――バシッ!
(え?)
しゃがみガードをした次の瞬間、敵の昇りJKがヴェノムの脳天を捉えていた。
―――バシッ!
上に配置されていたボールが続けざまに当たる。
(な…!?えぇっ!?しゃがみ食らい!?中段!?なんで!?)
しゃがみ状態に命中するJK。後を追うように当たるボール、続けて刺さるJHS…この連携は…
(F式……ガードバグ!?)
そうか…JK>JSのあとに弾いたボールの硬直を利用したのか…!
4個のボールは僕を攪乱させるための物じゃなかった。ましてや崩しの保険なんかでもなかった。
"木の葉を隠すなら森の中"……F式を狙っていたなんて…全く気が付かなかった。
『マッセ!マッセ!SHOT!』
さらに右に配置されたボールを絡めてコンボを繋げられる。
JHS>近S>Sカーカス>近S>HS>Sスティンガー……
最後のSステに続いて右に設置されたボールが絶妙なタイミングで命中し、FRCをかけなくてもコンボが繋がっていく。
体力ゲージが、ヴェノム生命がみるみる削られていく。
『マッセ!』
残り2割……1割……
(そんな、まさか―――)
『ダブルヘッドモービット!!』
『これまでかぁ……っ!』
『SLASH』
―――クルクルクルクル……バシッ!
『9ボールゲットだ』
「勝ったのはE組の松瀬 緒土!」
「ごめ。負けちゃった」
苦笑いして(と言っても髪の毛のせいで口元しか見えないのだが)雹が戻ってくる。
「でも嬉しそうだな」
「え、そう?僕そんな顔してる?」
「キットカット腹いっぱい食ったような顔だ」
まさか雹まで負けてしまうとは……。
だがまぁ、考えようによっては私の手であのいけ好かない3人組と決着をつけられると言う事だ。
それにしても気に入らん…松瀬 緒土、江辻 聖、そして永園 翼。
私が最も嫌っている人間が3人、雁首揃えている。不愉快極まりない。
松瀬 緒土、いつもいつも私の邪魔ばかりする。
江辻 聖、こいつは生理的に受け付けない。それにあの海 葵夙(かい きすく)を髣髴とさせる。
「そ、そるぅ~……顔怖いよ…」
「なんかやたら気合はいってんな…」
そして永園 翼、この野郎のせいでお兄ちゃんは……
思えばこの1年間はヤツを倒すことしか考えていなかった。だがそれも今日で終わりだ。
「続いてG組は大将の紙野 蘇留!もう後が無い崖っぷちです!!」
「頼んだよ~そるぅ~」
「暴れて来い蘇留」
「ああ」
ステージを登って筐体へ向かって行く。ついに決着をつける時が来たのだ。
「おいおい、蘇留が大将かよ。大丈夫か?」
「ふん、ぬかせ雑魚が」
「それでは先鋒大将戦…このまま快進撃を続けるか松瀬 緒土!それとも大将の紙野 蘇留がここで巻き返すか!?」
『君に用はないのだが…』
『めんどくせぇ…』
松瀬 緒土……ちょうどいい。お前は前菜にはちょうどいいぞ。
まずはこのスカした輩を血祭りに上げ、金髪女とDQNを引きずり出してくれる。
お前など眼中には無い…とは言え、あの亜麗寺と赤井を倒している訳だからな……油断は禁物か。
(とりあえず開幕は……)
『ヘヴンオアヘール!』
さて…亜麗寺 美里、赤井 雹、2人とも滅茶苦茶強かった。
そいつらと共に代表に選出された紙野 蘇留…どうやらこの1年の間に大きく成長したようだ。
ヤツはもう昔の、DループのDの字も知らなかった頃の蘇留ではない。全力で倒す。
(開幕は…やはり)
『デュエルワン!』
(ダッシュVV)(立ちK)
『レッツロック!!』
『ネッテロォー!!』
最大の失策はヤツの性格を考慮に入れていなかった事だろう。
あの蘇留が大会のプレッシャーのせいで慎重になるなんて事はありえなかったのだ。
だがまぁそれは今後注意を払えば良いとして―――
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(こいつは一体何をやっているんだ?)
「開幕は…ダッシュSVVー!?」
いつもより低めに打ち上げられる。
馬鹿な…全ての点においてHSVVを下回る性能のSVV……何故撃ってくる?
判定はHSVVより小さく、発生も遅く、それどころか命中したって受身を取れ―――
(ない……?)
なんだ…普通のSVVじゃない!?
『ハッ、ネッテロォー!!ハッ、イタダキー!イタダキー!イタダキー!テヤ、イタダキー!ネッテロォー!!』
・ ・
(て、低空……ダッシュ低空SVVからの"VVループ"!!)
ダッシュ低空SVV>K>低空SVV>K>2HS>JD>JD>JK>JD>JS>JD>SVV>叩き落し。
開幕から5秒。5割弱のダメージを負って画面端起き攻め。
(ちっ…なんて火力だ…ッ!)
―――キンッ!
息つく暇を与えずにJSからの起き攻めが来る。ここからソルの十八番、打撃とぶっきらの2択。
対抗策として妥当なのはファジーJか足払い暴れ……だが読まれれば立ちKから5割。
画面端でソルが相手ではリスクはどちらもほぼ変わらない。ならリターンを重視して暴れるが得策…
『ハッ!』『カウンタ!』
(げっ!立ちKで刈られた…!)
『イタダキー!イタダ…』『ファールを犯したな!!』
JDにバーストを合わせて吹っ飛ばす。
(あ、危ねぇ……)
流石に今のはヒヤッとした……ソル戦はラウンドの序盤から神経を使う。
TGに左右されないDループの超高火力が危険すぎる。
相手の好きなようにやらせては駄目だ。幸い立ち回りは有利……慎重にシューティングしてペースを握らなくては。
―――ヴン…ヴン…カッ…カッ…
『ガァン!かかったか?』
だが敵はこちらのシューティングなどどこ吹く風。
ひたすらガンフレフェイントを繰り返し、ボールを直ガしてゲージを着実に蓄積させていっている。
スキはある……突っ込むか?
いや、VV割り込みを食らえば一気に起き攻めされて分が悪くなる。ソル相手に接近戦へ持ち込むのは危険だ。
だがこのままでは敵のゲージがどんどん溜まって不利になっていくだけ……。
(…焦るな)
ゲージがどうした。ゲージなんて幾らでもくれてやる。
立ち回りなら確実に有利が付く。近付けさせなければどうという事はない。
(いいだろう…このまま封殺してやる)
・・・
どうやら緒土は雹の言う「タイプ2」……封殺狙いのシューティングを展開してくるつもりらしい。
このままゲージを溜め、チャンスを掴んで一気に殺し切ってやる。
『ガァン!かかったか?ガァン!かかったか?』
TGが50%まで溜まる。だが敵は一向に突っ込んで来る気配が無い。
チマチマとシューティング削られて体力も7割程度にまで減らされている。
当然このまま黙っているわけには行かない。やはりこちらから仕掛ける他ない。
だが、どうやってこの弾幕を破る?
赤井との試合を見る限り、緒土のシューティングは間違いなく1流だ。隙はそう簡単に見せないだろう。
(無ければ作るまで…)
『グランドヴァイパー!!』
(…やると思ったぜ)
地面を滑走してくるソルをジャンプで回避する。
大方、GVRCで無理矢理ペースを掴もうとしたんだろう。だがこうやって避けてしまえば問題は無い。
着地して来た所にコンボを入れてやろう。だが、ここがヴェノムの辛い所だ。
こんなデカイ隙があれば、大抵のキャラはコンボも自由自在に組めるのだが、ヴェノムはそうはいかない。
ボールのない状態ではせいぜいカーカスループからデュビで締めて2割。
ゲージを使ってダメージを取りに行っても4割程度が限界と悲しい。でも、ここできっちり反撃しとかないとな。
『デュービス…』『調子に乗りやがって!!』
(あ!?)
バーストで弾き飛ばされる。GVは俺を釣るための餌だったか…!
『ガァァンフレーイッ!!』
『ロマンティーック』
ガン青から2択。
『ハッ、テヤ、テヤ』
『よ、読めているぞ』
打撃の立ちKをガードする。相手は近S>2Sにガトリングして有利Fを作った。
ボール無しで近距離、この状況は危険すぎる。とにかく間合いを離さなければ。
『オオッ!!』
『甘い』
2S直後の遠Sをバクステで回避する。
あの赤井にも競り勝ったんだ…シューティングにさえ移行できればそう簡単には近付けさせない自信はある。
ボールを生成して有利状況を作るんだ。
『バンデェーッ!』
(BB!?)
……確かに命中すれば超ハイリターン。ガードされても状況はほぼ五分で距離を埋められてしまう。
だがこんなもん見てから余裕で……。
『ハッ』
条件反射と言うものは恐ろしい。俺は足払いを振ってから思い出した。あの修学旅行の時の対戦を。
『ロマンティーック』
―――ザシュッ!
BB青からのJS。続けて2HS>ガン青>BB……あの時と全く同じコンボを入れられる。
『イタダキー!ガンフレイッ!!バンデェーッブリンガー!!イタダキー!イタダキー!イタダキー!イタダキー!イタダキー!イタダキー!イタダキー!ネッテロォー!!』
『SLASH』
(スラ……え?スラッシュ?)
『こんなもんか…』
マジかよ…この火力、これぞソルってところか…。ヴェノムにもあれの何割かでいいから火力が欲しいもんだ。
しかしソルも厄介な事には変わりないが、もっと厄介なのは紙野 蘇留の方だ。
開幕のSVVと言い、予想出来ない独特の立ち回りは健在……向こうにペースを握られては一気にやられてしまう。
次はこっちから攻める…!
2006-12-04T23:05:43+09:00
1165241143
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5スレ目まとめ
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[[5スレ目まとめ1]]
2006-12-04T23:04:20+09:00
1165241060
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64氏まとめ
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-[[1スレ目まとめ]]
-[[2スレ目まとめ]]
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-[[5スレ目まとめ]]
2006-12-04T22:50:26+09:00
1165240226
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4スレ目まとめ5
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「言ったでしょ?あんた達の出番は無いって」
どう?と無い胸を張る聖。
まさか本当に3タテしてしまうとは思わなかった。
あのジョニーも倒してしまうし……やっぱりあのジョニー使いも大したヤツじゃなかったのか?俺が弱いだけなのか?
(…また気分が…)
「ほら、次の試合始まるわよ。早く戻ろ」
控え室に戻ると次の組が既に揃っていた。
黒いショートカットの眼鏡が1人、ヴェノム並みの超絶ロングヘアーが1人、そしてツンツン頭の低身長が1人。
このいかにも優等生そうな眼鏡の奴は初めて見る顔だ。……いや、どこかで見たような気もするが…思い出せない。
でもリアルヴェノムの方は覚えている。インパクトのある容姿だからだろうか。
たしか名前は赤井 雹。これでヴェノム使いじゃなかったら詐欺だ。という事は眼鏡がミリア使いか。
「勝ったようだな」
蘇留が話しかけてくる。
「お前らが負けたら意味無いけどな」
「なんだ?そいつら蘇留の知り合いか?」
眼鏡が会話に入ってくる。ですます調かと思いきや、容姿に似合わないぶっきらぼうな口調だった。
「2回戦で当たる事になる」
「ふ~ん……」
舐め回すように俺から聖、聖から永園へと視線を滑らせる。鋭い目付きは少し永園に似ている。
パッと見は優等生に見えるが、良く見ると荒々しい目をしている。
「あ……アンタあの時のDQN!」
そう言って永園を指す。
「ん?知り合いか?」
「知らねェよこんなヤツ」
と言いながらも暫し睨み合う2人。どうやら知り合いらしい。
永園はあの性格だからな……揉め事なんか日常茶飯事なんだろう。
「続きましてG組対H組の試合を行います!」
火丸さんの声が体育館に響き渡る。
「首を洗って待ってろ」
親指を首に当て、横にズバッと斬るような動作をする。様になり過ぎてて怖い。
いまだに蘇留の奴には恐怖に似た感情を覚えることがあるが、そのたびに蘇留の背が低くてよかったと思う。
もし俺と同じくらいの身長だったら、マジでかなりの恐れを抱くのだろう。
あの冷血そうな声といい、静謐だが覇気の溢れた瞳といい……
「俺トイレ行ってくる……」
「ちょっとちょっと!ちびっ子の試合見なくていいの?」
「気分が悪いんだ」
「また?しっかりしてよ?」
吐き気が止まらない。それは緊張から来るものなのか、それとも恐怖から来るものなのか…。
一体それは何の恐怖だ?蘇留に対する恐怖なのか?それとも試合…ギルティそのもの?
・・・
「G組の先鋒は亜麗寺 美里、ミリア!対するH組の先鋒は御剣 彩子(みつるぎ さいこ)でザッパです!!」
ゆらりゆらりと長い髪を左右に揺らせて対戦相手がステージに上がってくる。
「ったくどいつもこいつもムカつくぜ…俺は"PSYCHO"なんかじゃねぇっつってんのによォ…」
ぶつぶつと文句を垂れる対戦相手。絹のような長い黒髪に端麗な顔立ち。
華奢な体に白い肌は少し不健康……というより、病的な印象を受ける。
まぁ美人なのは間違いないが、その口調は容姿とは不気味なほど合っていなかった。
立ち居振る舞いもなんだか異様だ。姿勢はかなりの猫背で、両手をポケットに突っ込んでいる。
とても女とは思えない。
「アッタマ痛ぇ…PSYCHOの糞が…」
(女のくせに『俺』かよ……なんか危ねーヤツだな)
何より、目つきが気味が悪い。不快感と威圧感を与えてくる嫌な目をしてやがる。
「オイお前、俺は植田 幽二(うえだ ゆうじ)だ。PSYCHOって呼ぶなよ?」
御剣 彩子はあたしの目を見てそう言った。
(なんだコイツ……マジで既知外?)
「みっさ~!気圧されないでね~っ!!」
「チッ、わぁってる!!」
くっくっく、と不気味な笑い声を立てる御剣。口から覗いた鋭い犬歯が目に留まった。
(…呑まれるな)
彩子だか幽二だか知らんが、こんな奴さっさと倒してやる。
『ヘヴンオアヘール! デュエルワン! レッツロック!!』
控え室で出番を待つ。マッセの野郎は便所に行ったきり帰ってこねぇ。
アイツは一体何やってんだ?なんだか朝から様子がおかしい。
江辻に聞いてみても「あたしもわかんないのよ」とか言われる始末。
「悪い遅くなった……次の相手は?」
なんて考えていると、力なくドアを開けてふらふらと控え室に入ってきた。
「ちびっ子チーム。悪運強いみたいね」
「どういう意味だ?」
「先鋒のザッパがミリアとちびっ子を倒して3タテと思いきや、大将のヴェノムが逆3タテ」
あの糞餓鬼、自信満々だったくせに負けやがった。だがあれは糞餓鬼の実力が劣っていたってワケじゃなさそうだ。
対戦相手のザッパ、犬を引き当てること連続7回。実況も「また犬ーっ!」と叫んでいたぐらいだ。
運も実力の内とは言うが…アレは異常だった。
「そういう事だから順番決めるわよ」
「次はオレが先鋒で出る」
「いや、ここは調子がいいあたしが先鋒で出るべきよ」
もうこの女に先鋒は譲らねェ。コイツのせいで1回戦は出番が無かった。
最悪、マッセを根回しにしてでも……。
「てめェはどうすんだ」
「俺は……大将でいい」
大将でいいだと?コイツまさか……
「……フン」
「な、なんだよ…」
「お前、ビビッてんじゃねェだろうな?」
一瞬、マッセが動きを止める。
「なに…?」
「お前みたいな奴に大将は任せらんねぇ。さっさと行って無様に負けて来い」
「なんだと…!!」
よほどオレの言葉がムカついたのか、鋭く睨んでくる。
「ちょ、ちょっとあんた達!こんな時になに喧嘩してんのよ!」
「てめェは黙ってろッ!」
一喝して江辻を黙らせる。
ちょうどいい機会だ。ここはこの糞野郎に一発文句を言ってやらないと気がすまねぇ。
さっきからウジウジしやがって。
「ふざけんじゃねェぞ?てめェはクラスの代表なんだろ?その他大勢を蹴落としてここまで来たんだろうが」
グイッと乱暴に胸倉を捕む。
「見苦しいんだよチキン野郎。さっさと負けてこい。その方が俺の出番が増えるってモンだ」
「野郎……ッ!」
手を振り払い、オレの目を直視してくる。怒気を纏った瞳。だがそこには怒り以外の感情も見え隠れしていた。
コイツが何を考えてるのかはオレにだってなんとなく分かる。
マッセはもう駄目だ。
これじゃオレの足を引っ張りに来ただけじゃねェか。面倒くせェ野郎だ……早々に退場してもらうか、或いは
「てめェなんかいなくてもオレが全員ぶっ殺してやるよ」
オレの言葉は通じたのだろうか。マッセは踵を返すとそのままステージへ登って行った。
奴は途中一度だけこっちを振り向いて言った。
「お前の出番は無い。俺が全員片付けてくる」
「出来んのかよ?」
「やってやるよ」
・・・
自分でも驚くほど永園の言葉に怒りを覚えたのは、恐らくそれが的を得ていたからだろう。
今更そんなことを考える。
自分の一番弱いところを的確に抉られた。
バンソウコウが剥がれ落ちて、黄色のリンパ液が、ピンク色のグロテスクなデキモノが露になった。
だから俺はそれを隠す為に感情的になってしまったのだろう。
今にして思えば永園の判断は良かった。
あの性格だ。永園はおそらく優勝の事しか考えていない。聖も。俺だって、そうだ。
永園は俺の心理状態を見抜いた。そして「使い物にならない」と踏んだ。
だから先鋒で出るように俺をけしかけたんだ。
早い段階で松瀬 緒土を正常な状態の戻す事が必要だと判断したんだ。
これは永園なりの荒療治だったのだろう。
永園は俺の弱い部分を抉った。バンソウコウを剥がし、そしてそのままデキモノまで無理矢理抉り取ってしまったんだ。
最も、多少の出血はあったが。
「先鋒は筐体へ!」
ステージを登って行く。反対側から出てきたのは眼鏡の女だった。
「さぁAブロック準決勝第2試合、最初のカードはヴェノム対ミリアのアサシン対決となりました!」
ミリアか…相手にとって不足は無い。
こんな所で負けるわけにはいかない。今まで培ってきた力を全てぶつけるんだ。
"てめェなんかいなくてもオレが全員ぶっ殺してやるよ"
言葉は刺々しかったけど、その瞳は穏やかだった。
そうだ。俺が負けても永園が、聖がいるんだ。俺は独りじゃない。俺には仲間がいる。
『へヴンオアへール! デュエルワン! レッツロック!!』
―――シャアッ!!
開幕、俺は2Sを繰り出した。対するミリアはそれをバクステで回避。
それは開幕から1秒にも満たないほんの一瞬の出来事。
しかしギルティギアというゲームはその一瞬が明暗を……否、生死を分ける。それが1フレームを争う者達の世界。
そして敵はその数フレームの隙を見逃しはしなかった。
奴はこちらの2Sの硬直に付け込み、即座に低空ダッシュで突っ込んで来た。
そして空中でミリアが一回転して放ったのは……最強最悪の飛び道具サイレントフォース、通称毛針だった。
『読めているぞ』
ガードしてしまう。
(接近されては不利…)
『ここよ』
着地して投げられる。
2P>P>P>HJK>JS>JP>JHS>近S>2HS>HJK>JS>JP>JHSの追撃をもらって画面端に到達。
ミリアに6Pは出来ない。高い機動力のせいでシューティングも効きにくい。
そして攻め込まれてしまえば見えない起き攻めのループ。さらにこちらの足払い暴れに滅法強い6K……。
(要らん事を…今は敵を倒す事だけを考えろ)
不利だ不利だと嘆いた所で状況は何も変わりはしない。
こちらがアドバンテージをとるには、何よりも先にあの厄介な毛針をなんとかしなければならない。
逆に言えば、毛針がミリアの手元にある以上はまともに立ち回ることすら出来ないという事。
(多少のリスクは犯してでも、毛針を奴の手から離す…!)
そんな事を考えている間にミリアが一回転してHSタンデムを設置した。
今はとにかく目の前の脅威、見えない起き攻めを捌き切らなければならない。
このまま立てずに殺されるなんて珍しい話じゃない。
―――バシュウッ!
低空ダッシュ。
ここからはもう1度低空ダッシュからのJS、着地下段、投げなどで揺さ振ってくるはずだ。
―――ガッ
『読めているぞ』
2Kをガード。だがまだ6Kと下段に注意しなければならない。
どちらも当たれば約3割+画面端ダウン。
―――ガッ
立ちKをガードする。ここから中段の6K、低空BM、下段の2S等。
ファジーガードも出来るが、恐らくディレイを掛けて来る。
やはり下段ガードを基本に、中段は反射神経で乗り切るしかない。
―――ガッ
「前Kガード!良く見ている!」
そこからさらに続けて出してきた6KをHJで避け、空中ダッシュで画面端を抜け出した。
(6Kを2連続…やはり足払い暴れは迂闊に出せないな…)
なんとか間合いを空けてシューティングを展開しなければ。
だがミリアの機動力はトップクラス……遠距離での生成も安全とは言えない。
それどころか間合いを離す事すらままならない。
やはりこちらからも遠S等を振って牽制していくしかないか……。
―――バシュウッ!バシュウッ!
だがミリアは低空ダッシュを連発したりして飛び込むタイミングを窺ってくる。
どうやら地上で刺し合う気は毛頭無いらしい。
(くそ…どう立ち回れば……?)
―――シャアッ!
(っ…!)
―――バシュウッ!
空中バックダッシュで毛針を避ける。
だがこんなことをしても状況は好転しない。すぐに毛針を回収され、また飛び込まれるだけだ。
牽制は刺せない、迎撃することも出来ない。どうすりゃいいんだ…どうすりゃ毛針を奴の手から離せるんだ…!
―――シャアッ!
『カウンタ!』
『くっ、この威力……!』
苦肉の策にぶっぱ生成を試みたが、しっかり毛針をカウンターで刺された。
また2HSからコンボ…起き攻め…
『隙だらけね…』
『ファールを犯したな!』
HJSにバーストを合わせて弾き飛ばす。
即座にP生成>K生成>ダッシュP弾き>P生成で素早く3WAYを張る。
―――バシュウッ!バシュウッ!
だが折角張った3WAYもHJ>空中ダッシュ×2で難なく回避されてしまう。
(死角が無い…)
そのままミリアが上から飛び込んでくる。
(6P……って、違うッ!!)
―――シャアッ!!
『カウンタ!』
『くっ、この威力……!』
『隙だらけね……隙だらけね……隙だらけね…』
―――ガガガガァン!
画面端まで運ばれて毛針>6HS>ガーデン。
もはや抵抗する事も出来なかった。見えない中段と下段の嵐。
怒涛の攻めでガードは呆気なく崩され、そのまま起き攻めループでヴェノムの体力は尽きた。
一回転べば死が見えるとは良く言ったもんだ。
『ザトー様ぁ!』
ぴくりとも動かないヴェノムとは対照的に、ミリアは余裕。
体力ゲージを見ると、ほぼ10割残っている。手も足も出なかった……こんなにも差があるのか…。
『退屈な闘い…』
1R目が終わったのと同時に、ワーッと観客の歓声が耳に入ってきた。
ちらっと目を横にやると、生徒達は盛大に沸いていた。喧しい声。
(何だよ…これ…)
みんな俺が負けたのを見て盛り上がってるのか?全員ミリア使いを応援してるのか?
結局今のラウンド、俺は何も出来なかった。パーフェクト負け同然の糞みたいな試合だった。
こんな大舞台に出て来たのがそもそも間違いだったのか。
(やっぱり俺には無理なのか…)
その時ステージの真正面に見知った人物が立っているのが目に入った。
大きな口を開けて何か叫んでいる。でもその声は耳には入らない。
たった1人の少女の声なんて、大歓声に飲まれて消えてしまう。
それでもあいつは必死に力を入れて叫んでいる。聞こえるわけ無いのに。
でも何故だろう。俺には声が聞こえた気がした。三綾が俺を呼ぶ声が。応援してくれる声が。
『デュエルツー!』
闘いに引き戻される。再び指先に全神経を集中し、レバーを握りなおす。
「緒土ー!リラックスリラックスー!!」
「気張れやマッセェェェーッ!!」
そうだ、負けるわけにはいかない。聖のためにも、永園のためにも、そして三綾の―――
(あ……)
『レッツロック!!』
(そうか…その手があったか…!)
『甘い』
開幕、両者バクステで距離を空ける。
この距離……ボール生成を潰す為にも低空ダッシュ毛針が安定か……。
ガードさせても攻め込めるし、避けられても特に問題はない。
このヴェノム使い、やはり大した事はないようだ。さっきと同じ様に上から攻めていけばいい。
―――バシュウッ!
低空ダッシュで一気に距離を詰める。だがヴェノムは動いていない。
6Pで迎え撃つつもりか?無駄な事を。それとも観念してガードでもするか?
……まぁどっちにしろ毛針安定。
―――シャアッ!
『見誤ったな』
(えっ…!?)
―――グシャアッ!
毛針を回避され、JHSで地面に叩き付けられる。
(なるほど瞬間移動か…一杯食わされたわね…)
『マッセ!』
Sカーカスを起き上がりに重ねられる。
「ようやく捕まえた!ここは逃がしたくない所ですが……」
そう、いくら有利な組み合わせとは言え起き攻めまで持っていかれては当然不利。
ミリアの切り返しは良くない。だが画面中央で相手のボールも無い。抜けるのはそう難しくはないハズだ。
『ゆくぞ…』
『それだけ?』
Sストをガードする。
『ゆくぞ…』
―――ドドドドッ!
連続で出されたスラストを食らってしまう。そして近S>Sカーカス>2K>近S
『デュービスカーブ!』
HSデュビからK生成。
(この陣は……F式か…)
『ゆくぞ…』
スラストで弾かれたボールをしゃがみガードする。
―――バシュウッ!
『それだけ?』
その後のJK撃ち>空中ダッシュJSもガード。
F式の…いや、ヴェノムの対策は頭に入っている。
こちとら"天才"赤井 雹と毎日闘ってんだ。そんじょそこらの野良ヴェノムなんかに負けるかっての。
1ラウンド目の動きを見る限り、この男は雑魚だ。雹の足元にも及ばない。当然あたしの足元にも。
(だがこの2ラウンド目は……動きが少し雹っぽい…?)
『マッセ!』
近S>カーカスからP生成>2S>P生成>2S…
ちまちま固めやがって…だがこの距離なら崩しに来れない。隙を見てジャンプで逃げるのが得策か。
『ハァッ!』
―――バシッ!
ジャンプで逃げようとした所を6HSで叩き落とされた。
『見誤ったな』
6HS>S生成>瞬間移動からの起き攻め。
このまま起き攻めされてはマズい……でもヴェノムは基本的にバーストに弱いからな…。
最悪でもバーストを使えば確実に切り返せる。確定ポイントでさっさと使って切り抜けよう。
『すまんな』
瞬間移動からボールを弾かず、そのまま着地して投げられる。
『ゆくぞ…』
『ツメが甘い』
投げからの近S>HSストにバーストを合わせて吹っ飛ばす。すぐにダッシュで追いかけて2Sを重ねる。
『甘い』
(チッ…)
リバサバクステで回避される。フレームはやや不利…こちらもバクステで一旦距離を置く。
なんとか画面端を抜け出す事に成功したが……迂闊だった。毛針は撃ってしまったんだ。
どうやって攻め込むべきか。ヴェノムの6Pは優秀…毛針の無い状態で空中から飛び込むのは無理だ。
なら地上から?
―――ヴン…
考えている間にボール生成を許してしまった。
…ボールがあっては地上も無理。今度はこっちが逃げ回る番ってわけか。
―――カッ、カッ
2WAYが飛んで来る。
ここからの立ち回りとしては、まず持ち前の機動力を生かして無駄撃ちさせる。
そして相手がシューティングをミスったら突撃すればいい。無駄なリスクは犯すべきではない。
一見こっちが防戦一方だが、相手は相当辛いはずだ。
ミリア自体を牽制するのはもちろん、毛針も回収させないようにシューティングしなくてはならない。
そう簡単にこなせるもんじゃない。ここはとにかく逃げて隙を窺うのが妥当。
チャンスがあれば毛針を回収するか、突撃してやる。
―――カッ、カッ、カッ
(野郎…隙を見せねーな…)
それどころか徐々に画面端へ後退させられている。端を背負うのは駄目だ。一度空中から距離を埋めるか…
『ハアッ!』
―――ギンッ!
(くッ…!)
ジャンプした所でJHSに弾かれたボールをガードしてしまった。長い硬直が生まれる。
それを見逃さずにヴェノムが突撃してくる。
糞……隙を見せないどころか、追い詰められてたっての…?
『マッセ!マッセ!』
そのまま画面端で固められる。
DAAでも使って切り返したい所だが、逃げ回っていたのが災いしてTGも全然溜まっていない。
―――キィィーン……
『覚悟を決めろ』
ガトリングからダークエンジェル。
(一気に勝負を決めるつもりか…)
こちらがダークで足止めを食らってる最中に、敵はK生成からジャンプをする。
ここからJKで弾いて2択。
(…見えるか?)
だがヴェノムはJKを出さず、そのまま飛び込んで来た。
(弾かない…?)
―――ガッ
反応できずにJSをガードしてしまう。
(なんで玉を使わねーんだ……?)
いや、そう言えばこの攻撃…見覚えがある。たしか雹がやってたヤツだ。
このJSからJCJKによるガードバグを応用した中段、それと足払いによる下段の2択。
見てからガード出来るレベルの話じゃない。読むしかねぇ。
ヴェノム側としては……ネタがばれているか否かを考える。バレていなければ中段が安定。
だがアタシはさっきF式をガードしきった。なら敵は手の内はバレていると考えるはず。
(なら下段…?)
―――バシッ!
中段のJKをくらった。
『マッセ!マッセ!デュービスカーブ!!』
JKからKボールが連続ヒットしてコンボを繋げられる。HSデュビで締められ、体力は残り1割。
『ゆくぞ…]』
(…またF式か…芸の無いヤツ)
『すまんな』
と思ったら低空のすかしストからのダッシュ投げだった。追撃を貰ってミリアの体力が尽きる。
なんだよこいつ……やるじゃん。1R目とは別人みてーだ。
『SLASH』
『ハァァァァァ………』
『デュエルスリー!レッツロック!』
開幕、バクステで距離を置く。
どうやらこいつの事を過小評価してたみたいね。なかなか……いや、かなりいい動きをする。
雹と闘わせてみたら面白い試合になりそうだ。
(だがそれは無い…てめぇはここで倒す。もう負けられないんだ)
―――ヴン……
(開幕ぶっぱ生成…!?)
こっちはバクステを選択していた。攻撃してこないと踏んでたのか……随分思い切ったことをする。
(どう狩る…)
毛針は瞬間移動で対処される。なら直にJSと毛針で2択をかけるか?
だがJSは6Pで落ちるから……つまり……読み合いが発生する事になる。
なら地上から?ボールがうざってぇが……前転投げなんかを決めれば一気に流れを引き寄せる事が出来る。
(慎重に行け美里。過小評価するな。ヤツは……強い)
―――バシュウッ!
・・・
(来た…!)
JSか毛針を撃ってくるはず。毛針は瞬間移動で回避できる。
JSだった場合は不利だが、ボールを配置しているからフォロー出来るはずだ。
『見誤ったな』
ミリアが頭上に迫ってきたところで瞬間移動し、先程と同様にJHSを繰り出す。
しかし予想に反してミリアはJSも毛針も出さなかった。その代わりに
―――バシュウッ!
空中バックダッシュで後退した。
(あ……)
―――ザシュッ!
『カウンタ!』
・・・
相手がJHSを振ろうとした所にJDをカウンターでブッ刺した。
ヴェノムが勢い良く画面端に吹っ飛び、壁バウンドして跳ね返ってくる。
(レイプショーの始まり始まり)
『隙だらけね…隙だらけね…』
近Sから拾ってコンボを叩き込み、画面端へ落とす。締めは当然毛針>6HS>ガーデン。
(もう立たせねぇ……このままブッ倒すッ!!)
―――ガガガガァン!
・・・
6K、2Sを振りまくってガードを崩し、起き攻めを2ループさせた。
1度目は6Kで崩し、2度目は6K>6Kで崩した。あっという間にヴェノムの体力が1割を切る。
これぞミリアの真髄。相手に抵抗する暇を与えず、中段と下段の奔流を浴びせる。
それは一方的な制圧。圧倒的な蹂躙。
―――ガガガガァン!
この起き攻めで終わりにしてやる。
―――ガッ
まずは6K。寸での所でヴェノムが立ち上がり、ガードされる。
(今の動き…見えてるのか…?)
6K……確かに、集中していれば見える時もまれにある。
だが"まれ"は2度も連続で起きねぇ。脅威の発生17Fは何度も見えるもんじゃない。もう一度6Kで…ッ!!
―――ガッ
『読めているぞ』
少し、不安を覚えた。
(6Kが2回、か…)
自分で言うのもなんだが、敵の心理を読むのは得意な方だと自負している。
何回か闘えば、その戦闘スタイルから相手の性格を判断する事も出来る。
もちろん100%正確にとはいかないが、そう遠くはない判定を下すことは出来る。
亜麗寺 美里とか言ったか…とにかく上から毛針ガンガン攻めてくる。強気なヤツだ。
かと言って無鉄砲ではなく冷静さも持ち合わせている。開幕は全部バクステだし、無理はせず状況を良く見て行動してくる。
そしてこちらの瞬間移動>JHSに対するJD……対応が早く、読みも的確。
しかしこういう頭のいい奴ほど心理は読みやすい。今ヤツの心境は恐らくこうだ。
"6Kが見えているのか?"
結論から言うと俺に6Kは見えない。ガードできたのは2回ともまぐれだ。
「中段、中段とくれば、次は下段が来るだろう」と思うのが普通の考え。
だが亜麗寺 美里……ヤツもかなりの曲者らしい。
6Kを5回連続で出している。最初の起き攻め、俺は6Kで崩された。2度目は6K2回で崩れた。
とくれば次は……
・・・
ガーデンが消える。最後の2択だ。
さっきの2回の起き攻め……こいつは2回とも6Kで崩れている。
つまり、ヤツの頭には"6Kの恐怖"がこびり付いているはず。6Kを恐れるはず。
故にヤツの最後の行動は……
(立ちガード…ッ!)
―――キンッ!
『読めているぞ』
(ちっ…だが…!)
『どこを見てるの?』
2Sから即座に前転で懐に入る。奴の心には起き攻めを防ぎ切ったという安堵があるはず。
その油断に付け込む前転からの投げ。捌けるもんなら捌いて見せろッ!!
『すまんな』
(げっ……返された!?)
『ゆくぞ……』
追撃をもらって画面端ダウン。今度はこっちが起き攻めを受ける番か……。
―――ヴン……
K生成…オーソドックスな2択か?それともさっきみたいに簡易F式を狙ってくる?
―――カッ
ダッシュJKでボールを弾いてくる。当然と言えば当然だ。
奴の体力は残り1割。この状況からの簡易F式なら、立ちPで割り込んで倒される。それを警戒したのだろう。
そう、あと一発何か当てれば倒せるんだ。しかもこちらの体力も十分に余裕があり、TGだって溜まっている。焦るな美里。
・・・
(ここで倒さなければ…)
奴の手元にはまだ毛針が存在し、さらにこちらの体力は尽きかけている。
状況は現在有利だが、今ここで逃がしてしまったら一気に勝ち目が薄くなってしまう。
F式への対処といい……こいつヴェノム戦を分かっている。と言うか、"慣れて"いる。
―――バシッ
JK打ちからの空中ダッシュJSを当てる。そのままカーカスループからPデュビまで繋いでダウンを奪う。
そしてK生成からダッシュJK。続く空中ダッシュJS>JHS>Sストもガードされる。
(セオリーは効かないか……なら……)
Sストから着地して立ちK>Sステを撃って―――
(来ない…?)
『SHOT!!』
レベル2まで溜めたSスティンガーをガードしてしまう。ガードゲージが白く光り始めた。
さらにK>HS>SステでPボールを一緒に弾く。一気にガードゲージが蓄積されていく。
(まずい…)
野郎、ゲージを溜めて一気にケリを付ける気だ。
ミリアの防御力は低い。いくらヴェノムの火力が低いとは言え、画面端でガードゲージを上げられては流石にヤバイ。
下手をすればここからワンコンボ>起き攻めでやられてしまう。是が非でも見切らなければ、負ける。
確かにあたしの後には雹がいる。蘇留もいる。だけどそんなことは関係ない。
闘劇優勝なんて興味ねぇ。でもアタシはたくさんの物を背負ってここにきたんだ。ここで負けたら、あいつが浮かばれない。
あんなに闘劇に出るのを楽しみにしてたのに…出れなくて…それなのにアタシなんかが出場して…。
そして1回戦、ザッパに無様にやられた。それでまたこんなヤツに負けるなんて…認められるか…!
『ゆくぞ…』
ヴェノムの崩しと言えばSストか下段の2択。
Sストなんて何千回と見てきた。そう簡単に当たらない。
『それだけ?』
落ち着け美里。当たらなければどうと言うことはない。ガードして隙を見て逃げる、それだけの事じゃないか。
距離さえ離してしまえば後はどうにでもなる。とにかく逃げろ。逃げればあたしの勝ちだ。
(だから今はとにかくガードを固めるんだ…!)
『すまんな』
・・・
(良し…!)
ガードゲージをめいいっぱい上げてからの投げ。これならいくら補正がかかるとは言え、大ダメージは必至。
『覚悟を決めろ……ダークエンジェル!!』
ダッシュ6HS>ダーク。ダークエンジェルがミリアを反対側の画面端へ運んでいく。
さらに間に6HS>HS生成を挟み、敵の体力は4割を切った。ここで画面端で2個起き攻めのチャンス。
……この起き攻めを当てれば勝機はある…!
―――ヴン…
K生成からF式の体勢に入る。
『ゆくぞ……』
『それだけ?』
Sストで弾いたボールを立ちガードさせる。これで条件は整った。中段か下段か、いくら対策を立てようとこれは見切れない。
(この2択で決着をつける…!)
―――バシッ!
中段のJKが命中した。
さらにKボールが連続ヒットする。ヴェノム本体はそのままJPにガトリングし、JHSを繰り出した。
・ ・ ・ ・ ・
(ふ……フフ………かかったッ!!)
ツメが甘いぜ松瀬 緒土とやら! ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
なぜあたしがさっき投げを無視し、ガードしたままで投げられてやったか…理解出来るか?
お前にはただアタシがビビってガードしていただけに見えただろう。
ガードゲージを溜めてからの投げなら、確実にダークを当てて来ると読んでいた。
そして投げからのコンボはバーストが滅茶苦茶に溜まる。TGも溜まる。つまり、全てはこの攻撃のための布石。
『デュービス…』『ツメが甘い』『カウンタ!』
バーストをカウンターでぶち当ててダウンを奪う。そのままヴェノムに向かって一目散に走っていく。
(仕留める)
『ロマンティーック』
相手の起き上がりにダッシュHSタンデム青。そしてここからアイアンセイバー青。
それは人間の反応できる領域を超えた超高速の2択。見てからの反応は不可能。
回避するには運を天に任せるしかない。
『ロマンティーック』
(これで終わらせる…!!)
―――ガッ
「おーっと!JKガードしているーっ!!」
(バカな…ッ!?)
野郎なんて強運だ…!だがまだタンデムが残っている。次の2択でケリをつけるんだ。
投げか、下段か、中段か。どれでもいい。当てれば倒せる。
なら反撃を食らいにくいのは何だ?例えガードされてもその後の状況が有利なのは何だ?
(6K)
ミリアが縦に1回転して踵を振り上げた。
その次の瞬間―――本来ならミリアの蹴りがヴェノムの頭を捕らえているはずの場面―――ミリアは大きなボールに閉じ込められ
ていた。
(な、投げ返し…)
『SLASH』
『ハアァァァァ……』
すまん佐東……負けちまった。お前なら勝てたよな。負けなかったよな。こいつにも、あのザッパ使いにも。
あたしは弱い女だな、なぁ佐東……。
2006-12-04T21:40:08+09:00
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