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「そもそもなぁ…ヒック…ヴェノムは相手しててムカツクんだよ!!」
「ふざけんらねーお!…ヒック…髭らってパイルうざいんらお!!」

(すっかり出来上がってるなぁ…松瀬くん呂律回ってないし…)

「ああああああああ!!デズとアクセルもムカツク!!」
「はァ?ヴェノムだったら両方有利じゃねェか」
「たしかに有利らけろ嫌いなもんは嫌いなんらお!!」

このまま放っておいていいのだろうか。もう3時を回ってしまっている。
駄目だ。そもそもみんな未成年なんだ。飲酒なんて駄目に決まってる。

「酔っ払ってる兄貴も趣き深い……嗚呼、俺は蘇留さんと兄貴のどっちを取ればいいんだ……」

郁瀬くんはあまり変わらない。むしろちょっと大人しくなっている。それが逆に不気味だけど。

「みんな、もうお酒飲んじゃ駄目だよ…」
「なんだ毅ィ…ヒック…てめーも飲めよ。オレの酒が飲めないってのかァ?あ?」

永園くんも完璧に酔ってるみたいだ。目が据わってる。

「さっさと飲めよ!!」
「むぐ!?」

鼻を摘まれる。当然呼吸する為に口が開いてしまう。

「ささ、ぐいっと」
「んー!?」
「ははは!良い飲みっぷりらな!紙野!」

に、苦い…胸が焼けるように熱い…




「いいか貴様等、飲酒は法律で禁止されてんだ!!そんなことも知らんのかぁ!!」

法律を犯した3人の高校生男子を正座させる。

「うう…ごめんなさい紙野さま!」

郁瀬が許しを請う。当然そんなことを聞く気はない。

「御免で済めば警察はいらねぇんだよボケェーー!!」
「そ、そんな…」
「スシ!!」
「ひでぶ!」
「永園!貴様もだ!!歯を食いしばれ!!……スキヤキ!!」
「あべし!」
「か、紙野様、その辺で許してやってはどうでしょうか…」

松瀬が横から口を挟んでくる。

「あァ?このヘアースタイルがサザエさんみてェーだとォ?」
「え!そ…そんなこと誰も言って…」
「たしかに聞いたぞコラーーーーーッ!!」

拳を握る。

「駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
 駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目ェーーッ!!」


―――メ メ タ ァ


こうして馬鹿4人の夜は更けていった。

目を覚ますとまず目に入ったのは夥しい量のビールの空き缶。床に散乱していて踏み場も無い。
そして何故か知らんが顔面がやけに腫れている。あきらかに外傷がある。
そう言えば昨日は変な夢を見た。カエルになって誰かに拳で潰される、そんな意味不明な夢だった。

(頭がガンガンする……2日酔いか…)

時計を見る。14:34。折角のハワイだってのに半日寝て過ごしてしまったらしい。

「やっと起きたか…」

永園が面倒くさそうに呟いた。紙野も顔色が悪い。郁瀬はまだ眠っている。
どうやら4人とも2日酔いになってるらしい。

「……今日はどうする?」
「………」

朝っぱらから空気が悪い。でも、正直言って俺も気分が悪い。あんまり動きたくない。
今日は部屋でのんびり過ごそうか……

「チッ…酒買ってくる」
「お、おい!マジかよ!!余計酷くなるんじゃ…」
「バカ。迎え酒だ」
「迎え酒?」
「2日酔いを紛らす為に酒を飲むんだよ」
「それって悪循環って言うんじゃ…」
「うるせェな…頭痛くてやってらんねェんだよ」

永園が立ち上がろうとしたその時

―――コンコン

「あれ?誰か来たみたい」

紙野がドアを開ける。

「っておい!待て紙野!中には缶ビールが…」

遅かった。紙野がドアを全開してしまった。

「お前たち…何やってんだ…飲酒か?」

ドアの影から現れたのは―――紙野 蘇留。助かった。教師じゃなければ誰だっていい。

「郁瀬に用か?今起こすから…」
「いや………待て…これは好機…」
「なんだ?何ぶつぶつ言ってんだ?」
「用があるのはおまえら3人だ」
「なんだよ?」



「弓太起きろ」
「あれ?蘇留さん…?」

目を覚ますと蘇留さんが目の前に立っていた。

「兄貴たちは…」
「さぁな。私が来た時は誰もいなかったぞ」

なんと言う事だ。今日こそは兄貴とあんなことしたり、こんなことしたりしたかったのに。
寝過ごしたと言うのか。郁瀬 弓太、一生の不覚。

「だから今日は私と付き合ってくれ」
「たしか昨日も…」
「良し、そうと決まれば早速行くか」

例によって強引に話を展開していく。

「どこ行くんスか?」
「海」
「泳ぐんですか?」
「ああ。実は私泳げないんだ。泳ぎ方を教えてもらおうと思って」

海岸の岩場に隠れる怪しさ全開の男子高校生3名。

「毅…てめェが無用心にドア開けるからこう言うことになるんだ」
「ご、ごめん…」
「もういいじゃねぇか。過ぎたことはしょうがないだろ」
「ったく…なんでオレがこんなことを…」

俺たちは蘇留に脅迫されていた。「飲酒をバラされたくなかったら下僕になれ」との事だった。
もしかしたら一番見つかってはいけない奴に見つかってしまったのかもしれない。
まだ教師に見つかった方がマシだった。
(一応断っておくが、蘇留は 警 察 に バラすというニュアンスを込めて言っていた)

「あ、郁瀬くんと蘇留が来たよ!」
「えっと…まずはなんだっけ?」

ノートを開く。紙野曰く、「これは蘇留の字じゃない」そうだ。ちなみに字はかなり汚い。
解読に一苦労した。恐らくクラスの誰かに作戦を立ててもらったのだろう。

「郁瀬くんに泳ぎを教えてもらうみたいだね」
「蘇留は泳げないのか?」
「いや…泳げるよ」
「………」

流石は紙野 蘇留。目的の為なら手段を選ばない。

「で、オレらは何すりゃいいんだ」
「『トラブルが起きないように見張ってろ』って言ってたけど」
「なんだ、楽だな。じゃあ俺らも適当に遊んでるか」
「え!まずいよ!もし何かあったら…」
「大丈夫だって!泳ごうぜ!」



「そうそう、水を後ろに送るように腕を動かして…」
「こうか?」
「いえ、そうじゃなくて…」

雹の作戦によれば「駄目な子ほど可愛く見える」らしい。正直私にはよく分からない。
運動音痴に見られるんじゃないかと思ってこの作戦は避けようと考えていたが…
なかなかどうして良い感じだ。この調子なら後は適当にやっても大丈夫なんじゃないだろうか。

「こうですよ、こう」

腕を掴まれる。

「こ、こ、こうかっ!?」
「痛っ!?」

テンパって「究極のだだっこ」張りに腕を回してしまう。

「あ、悪い!大丈夫か!?」
「はは…大丈夫っスよ」

顔を見合わせて笑い合う。

(ああ…結構いい雰囲気じゃないか…このまま行けば…)


「 痛 ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ! ! 」


どこからか激しい絶叫が聞こえてきた。聞き覚えのある声だった。

「あ、あの声は…!!」

弓太が声の聞こえた方へ向かって猛然と泳ぎだした。

(おのれ…憎き松瀬 緒土…まだ私の邪魔をするというのか…)

「ったく何やってんだよバカ」
「松瀬くん大丈夫!?」
「く、クラゲに刺された…」

腕を見ると赤く蚯蚓腫れになっている。滅茶苦茶ヒリヒリする。痛い。

「兄貴ィィィィィィィ!!」
「げ!?」

凄まじい速度で泳いでくる郁瀬。まずい。郁瀬がここに来ていると言う事は、蘇留は今ひとり。
俺のせいだ。蘇留に殺される。

「逃げるぞ!!」

しかし残念なことに俺は運動音痴だ。一応泳げることは泳げるが滅茶苦茶のろい。
すぐに追いつかれてしまった。

「どうしたんですか兄貴!!大丈夫ですか!?」
「い、郁瀬…俺は大丈夫だから早く蘇留のところに戻…」

息を呑む。いつのまにか蘇留がすぐ近くまで泳いできていた。
鬼のような形相で俺を睨みつけている。死ぬほど怖い。

「松瀬 緒土…貴様ぁ…どうしても私の邪魔をしたいようだな…」
「ち、違いますっ!断じてそんなことは!!」
「殺す」

(ころ―――!?)

「ま、待ってください蘇留さん!!」
「弓太…やはりお前はそいつを庇うのか」
「いえ!ただもうちょっと穏やかに…」
「……弓太がそう言うなら仕方ないな…。おい緒土」
「は、はい!?なんでしょう!!」
「私と勝負しろ」
「勝負?」
「あそこのテトラポットまで泳ぐ。先に辿り着いた方が勝ちだ。
 これでどっちが本当に弓太に相応しいか決めようじゃないか」

そう言って蘇留は200mほど先にあるテトラポットを指した。
なんだ…簡単じゃないか。わざとノロノロ泳げばいい。要は俺が勝たなければいいんだ。

「ちなみに手加減なんかしたらどうなるか分かっているな?」
「は、はいっ!!」
「弓太もそれでいいな?」
「え、えぇ…」

こうして蘇留と水泳勝負をすることになってしまった。でも心配は要らないだろう。
紙野の話だと蘇留は普通に泳げるらしいし、俺は本気で泳いでも高が知れている。
しかも200m。泳ぎ切ることすら出来ないと思う。俺が勝つ要素はない。
むしろこの勝負で郁瀬が蘇留の彼氏だとハッキリしてくれた方が俺としてもありがたい。

(まぁ適当に頑張るか…)

「では位置に付いて…」

紙野が声を張る。

「レッツロック!!」

即座に蘇留がバシャバシャと水飛沫をあげて海に突入する。
このまま小さい体で必死に泳ぐ蘇留を見守っていてもいいのだが、本気を出さないと殺される。
俺も全力で海に向かった。