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燦々と照りつける太陽。背中がジリジリ熱い。
青い空に青い海。足元には白い砂浜。足の裏が焼ける。
目を閉じれば人の笑い声が聞こえる。寄せては返す波の音が聞こえる。潮風が頬を撫でていく。

「これが…ハワイ!」

俺たちはついにハワイの砂浜に足を踏み入れたのだ。

「いやっほーう!!」

早速生徒達が海に駆けて行く。

「ヴォルカニックヴァイパー!!」
「シッショーウ!!」
「テエヤー!テエヤー!テエヤー!テエヤー!テエヤー!テエヤー!」

無邪気にギルティの技を形態模写して遊ぶ生徒。(と言ってもチップ役はひたすら攻撃されているだけだ)

(おまえらは小学生か…)

「なにやってんだ!!早く戻れ!!」

雁田の怒号が飛ぶ。

「とりあえずホテルに行ってチェックインを済ませる。後は自由行動だ」

(遊び放題って訳か…)

早速現地のバスに乗り込んでホテルに向かった。

「部屋割りはこうなってるから、各班の班長、紙を取りに来い」

当然、部屋は男と女で分かれる。俺、郁瀬、永園、紙野の4人と聖、三綾の2人で分かれる形になる。
紙野はともかく、郁瀬と永園が心配だ。思えば紙野以外の男子は一癖も二癖もある野郎ばっかりだ。
 特 に 郁 瀬 。
空恐ろしい不安。急に寒気を覚える。

(大丈夫かな……大丈夫…じゃないよな…)

「どうしたの松瀬くん、顔色悪いよ?酔った?」
「な、なんでもない…」



ホテルは超が付くほど高級なものだった。本当にこの学校の財力は天井知らずだ。
俺たちの部屋は104号室。

「ザトー(10)様フォォォォォ(4)と覚えますかね」

今日の郁瀬はずっとこの調子だ。フォモード全開である。はっきりって怖い。と言うか恐ろしい。
郁瀬を無視してチェックインを済ませ、部屋に入る。

「すげーな…」

思わず声も出る。テレビ、エアコン、ベッド…生活に必要なものは一通り揃っている。
見るからに値段の高そうなソファーもある。スイートルームってヤツだろうか。

「永園もそう思うだろ?」
「……」

俺を無視する永園。永園はバスの中でも飛行機の中でも終始仏頂面だった。
ずっと1人で音楽を聴いているばかりだった。そして今も。
こんなんじゃ何のために同じ班に入れたのか分からない。

「何聴いてんだ?」

イヤホンを片方耳から外す。

「あ!何してんだテメェ!!」
「simple life か…意外だな」
「ぶっ殺す…!」
「や、やめろって!暴力はいかんですよ!!」
「るせェッ!」

修学旅行の班を決めた日から俺は永園と会話をするようになった。(一方的に)
でも永園は俺を煙たがる。なかなか打ち解けられない。当然といえば当然だ。
でもまだまだ時間はある。これからだ。

「2人とも仲良くなったね」
「ンだとォ!?」

紙野が火に油を注ぐ。

……これって打ち解けてるのって言えるのか?よくわかんねぇ…

「ここが俺と兄貴の愛の巣…」

早くも郁瀬が危ない雰囲気を出し始める。

「チッ…変態共が」
「俺は違うぞ!!」
「ハッ、どうだか」
「まぁまぁ…皆落ち着いてよ」

この先この4人でやっていけるのだろうか。不安だ。

「じゃ、じゃあ早速泳ぎに行きますかね!」

郁瀬の声が浮ついている。なんとなく理由はわかる。分かるから余計に行きたくない。
でも態々こんな所まで来て泳がないと言うのは勿体無さすぎる。
ゲーセンまで来てギルティをやらずに帰るようなもんだ。

「仕方ない…着替えよう…」

渋々水着に着替える。Tシャツと海パンの格好になる。

「言っとくが、オレは勝手に行動させてもらうからな」

相変わらず永園は単独行動を取ろうとする。

「単独行動は禁止だろ。教師に見つかったらどうすんだ?多分ずっとこの部屋から出れないぞ」
「チッ…」
「あ!!兄貴ィィィィ!!ダメッスよ、そんな水着じゃ!!」
「は?なにが駄目……て、うおおお!?」

振り向くとそこには競泳用の海パンをはいている郁瀬。
当然だが俺と永園と紙野はトランクス型の海パンを穿いている。

「これ穿いて下さい!!」

そう言って競泳用のヤツを押し付けてくる。

「や、やめろ…変態!!」
「フオオオオオオアアア!!!」

―――コンコン

「あれ?誰か来たみたいだよ」

絶妙なタイミング。誰か知らんが助かった。

―――ガチャッ

紙野がドアを開ける。ツンツンヘアーの女が現れた。

「あ、蘇留」
「あー!!そ、蘇留さんっ!?」

郁瀬が狼狽し始める。これはもしかして…郁瀬から逃れるチャンス?

「弓太を借りていく。異議は?」
「ありませんっ!!」

即答する。

「そ、そんなぁ!!兄貴ィィィィィィィ………!!」

連れ去られる郁瀬。どうやら助かったらしい。

「じゃ、じゃあ僕達も行こうか」
「そうだな」

これなら楽しく遊べそうだ。郁瀬は蘇留に任せておこう。




「あれ?アンタ達もこれから海?」

廊下に出るとTシャツ姿の聖&三綾に遭遇。
鼻血が出るとマズイので、なるべく上半身に目をやるようにする。
下半身はこれでもかと言うくらいに生足が露出しているからだ。(水着なんだから当たり前だけど)
これでは俺のような女に免疫の無い真性ギルヲタにとって刺激が強すぎる。
これでTシャツまで脱いだらと思うと気が気でない。

「お前らも?」
「ビーチバレーの大会があるんだってさ。出ない?」
「ふ~ん……面白そうだな。出るか」
「てめェ…また勝手にそういう事を…」
「永園は運動音痴だもんな。出たくないか」
「野郎…!」

永園はあっさり乗ってくれた。こう言うところでは意外に単純だ。

「2on2だから1人余るわね」
「なら僕は観戦してるよ。あんまり得意じゃないし」
「じゃあ俺と永園のチームと三綾、聖のチームだな」

俺達はそのまま5人でビーチへ向かった。
おそらくビーチバレー大会には俺たちのようなギル高生徒も多数出場しているだろう。
ウチの学校はある意味猛者揃いだ。

(一筋縄ではいかないだろうな……)


「それでは第一回戦、チーム『マッセ』対チーム『紙忍者』の試合を行います。
 両チームはコートに入ってください」

このチーム名……チップクラスの生徒だと考えて間違いないだろう。
俺は知っている。ヤツらは以前ギル高行われた球技大会で、手裏剣による攻撃をしていた。
普通なら反則だが、あいつらも曲がりなりにも忍者である。審判にバレないようにやるなんて造作も無い。

「永園…手裏剣には気を付けろよ」
「るせェ…オレに話し掛けんな」

バレーは連携が大切なのに…これじゃあかなり苦戦しそうだな…。

―――ピィーーーーー!!

「サーブはチーム『マッセ』から!」

良し…まずは様子見から行くか…!!

―――ぼんっ!

オーバーサーブを放った。

―――ピィーッ!!

久しくバレーなんてしていなかったからだろうか。
筋力が無いからだろうか。運動神経が極端に悪い所為だろうか。

「アウト!」

俺の放ったボールはふわふわと飛んでいくと、コートから思いっきり外れた所に落ちた。
ボールがあさっての方向に飛んでいった事もさることながら、
そのあまりにも弱々しい球威に我ながら驚いてしまった。

「てめェやる気あんのか!?」
「て、手が滑っただけだ!」

サーブが相手チームに移る。

「とぉー」

間延びした掛け声でボールを打つ。これなら俺でも楽に返せる。

―――ぼんっ!

アンダートス。

―――ピィーッ!!

「アウト!」
「あ、あれ?」

またあらぬ方向へ飛んでいくボール。

「テメェ…」

流石に雲行きが怪しくなってきた。もしかして初戦敗退?カッコ悪すぎる。

「オレに恥かかせるつもりか!?あァ!?」
「ま、まぁ待て!早まるな!次は入れてやる!」

再びサーブを撃つ。

―――ピィーッ!!

アウト。ギャラリーから笑い声が聞こえてくる。

「いい加減にしろよ…」
「次こそ大丈夫!!」

また相手チームがやる気ないサーブを放ってくる。
そもそもアンダートスは苦手なんだ。オーバートスなら大丈夫。

ぼんっ!

―――ピィーッ!!

「アウト!!」

―――俺は一体いつからドジっ子キャラになってしまったのだろう。

早くも4点も相手に与えてしまった。しかも全部俺のミスのせい。
是が非でも入れなければならない。見た目は多少悪くなるが、アンダーサーブに変更だ。

ぼんっ!………ぱすっ……

へろへろろ飛んでいったボールはネットに引っ掛かってしまった。ギャラリーからまた笑い声。

(ちくしょう…筋トレでもやってりゃ良かった…)

「とぉー」

(トスだ…今度こそッ!!)

―――ぼんっ!

アンダートス成功。ボールが天高く舞い上がる。
タイミングを見計らって永園が飛び上がろうとした…そのとき

「シュリケーン!!」
「なッ!?」

黒い手裏剣が永園の頬を掠めて行った。バランスを崩し、永園が地面に落ちる。

「野郎…いい度胸してるじゃねェか…」

永園が相手を睨みつける。しかしチーム『紙忍者』の面々はニヤニヤと笑っているだけだ。

「ムカツクぜ…」

6-0。ビーチバレーは1セット9点が一般的。勿論この大会でもそうだ。
後3点入れられたら終わり。なんとしてでもサーブを入れなければ…

「はッ!」

気合を入れて放ったサーブは球威十分。しかし方向は相変わらずだった。
7-0になる。
相手のサーブを何とか返そうとするが、俺も永園も手裏剣に阻まれて全く手が出せない。

「糞が…反則ばっかしやがって…!」

そしてついに8-0。マッチポイントである。このサーブを外せばその瞬間に負けが決まる。
仮に入れたとしても忍者共に勝てるとは思えない。
でもやるしかない。諦めたらそこで試合終了ですよってどっかの偉い人も言ってた。諦めちゃ駄目だ。
これが最後のサーブになったら死んでも死にきれない。入れてやる。

「はッ!!」

―――バシッ!

スピードも威力も頼り無いサーブだった。でも方向はバッチリだ。ネットも辛うじて越えている。

(入った…!)

「TOO LATE!!」

しかしそこにはギル高の誇る忍者。一瞬で落下地点まで転移する。

(マジかよ……くそ!ここで負けるのってのか!?)


          シッショー!!


―――まさか。

ありえない。会場にいる全員がそう思った。
だってアレだぞ?ビーチボールが腕に当たっただけだぞ?ビニール製で、滅茶苦茶やわらかい。
しかもアンダーサーブで球威もかなり弱かった。虫も殺せないようなボールだ。

「HEY!!DOCTOR!!COME ON!!」

もう一方のチームメイトが血相変えて医者を呼ぶ。
白衣を纏ったドクターがすぐに駆けつけ、生徒に聴診器を当てた。

「明日が峠です」

こうして俺達は一回戦をなんとか突破できたのだった。

「では2回戦、チーム『見誤ったな』 VS チーム『レッドへイル』!!」

目の前のコートには見たことのある人物が2人。
1人はたしか赤井 雹ちゃん。先日の校内テストで対戦した。ちなみにぼくっ子。
そしてもう1人…雹ちゃんが「みっさー」って呼んでいた女の子。名前は知らない。

「サーブはチーム『見誤ったな』から!」
「聖ちゃんガンバって」
「任せて」

私は残念ながら超が付くほど運動音痴なので、なるべく聖ちゃんの足を引っ張らないようにしたい。

「雹、計算頼んだぞ」
「おっけい」

(計算…?何のことだろう?)

「いくわよ…」

聖ちゃんが腕を振りかぶる。オーバーサーブだ。

―――バシィッ!!

ピッ、と短く笛がなる。聖ちゃんに見惚れている間にボールはコーナーにピンポイントで決まっていた。

「は、速…」

そのあまりの球速に、チームメイトである私も驚いてしまう。
そしてコントロールも抜群。非の打ち所が無い。

「キャー!江辻様すてき~~~~~~!!!」

『江辻様ファンクラブ』とか『江辻様親衛隊』とか書いてある服を着た女子が騒ぎ出す。
当の聖ちゃんはその様子を見て顔を引きつらせている。

「あの細い体躯であんな速度のボールが打てるなんて……物理的じゃないなぁ…」
「計算狂った?」
「実際彼女が打ったボールの速度は大体分かったから…修正は容易…」
「まぁ…良くわかんないけど大丈夫なわけ?」
「うん」
「良し」

でも一番肝心な相手チームにはあまり動揺が見られない。手強そうだ。

「余裕ぶっこいてると一気に決めちゃうから……ねっ!」

―――バシィッ!!

(角度47.7度の放物線。運動エネルギーが……)

今度はさっきと逆のコーナーにボールが刺さる。
雹ちゃんが反応して腕を出したが、ボールはそのかなり下を通過していった。

(空気抵抗を計算に入れ忘れた…?いや、そんなミスはない。
 そうか、風か…?でもそれにしてはズレが大きい…?)

「大丈夫?雹」
「ん…。今度こそ完璧。ぼくがトスしたらツインテールの方を狙って。あっちの方が運動神経悪そうだから」
「あ、やっぱそう?金髪の方はちょっと人間離れしてる匂いがするよね」

う…私を狙ってくる気だ…どうしよう…

「あたしがフォローするから、そんなに気張らなくても大丈夫よ」
「う、うん…私も出来るだけがんばるよ」
「あたしがサーブで黙らせてやれば、そんな心配する必要も無いしね」

聖ちゃんなら本当にサーブだけで9点取りそうだ。でも相手チームもなにやら不穏な雰囲気を出している。
このまま終わりそうには無い。

「はっ!」

―――バシィッ!!

―――ぼんっ!

雹ちゃんがアンダートスでボールを反射させる。ネットのすぐそば、高さは丁度いい。
まるで落下地点が正確に分かっているかのような、素早い反応だった。

「良し!」

"みっさー"がボールに向かって飛ぶ。

「残念でした」
「あ!?」

―――バシィッ!!

"みっさー"がボールを打つ前に、聖ちゃんが一瞬でネット際まで出て来てボールを打った。
雹ちゃんの上げたボールはネットに近すぎた。
だからこちら側でも打てたのだ。3-0。

「…トスしたボールがあんなに前に飛ぶなんて…反射角度もそんなに大きくなかったのに…」
「まぁまぁ。そんなに気にすんなって」
「ん~?何か忘れてるのかなぁ?」

「はっ!!」

―――ぼんっ!!

またアンダートスを試みる。
今度は想定よりも遥か後ろにボールが飛んだ。ラインを割ってしまう。
4-0。

(なんで?)

計算に狂いは無い。何か情報を見落としている。そうとしか考えられない。なら何を見落としているのか。

また金髪がボールを高く放る。

(―――!)

微妙に回転している…?
そうか、ドライブサーブを打っていたのか。ならボールの回転速度を計算に入れて…

―――ぼんっ!

最高のトス。ボールの回転も考慮に入れた。完璧な座標にボールを上げる。もう彼女のサーブは見切った。

「みっさー!」
「よっしゃ!後は任せろっ!」

―――バシッ!

みっさーの打球はあの金髪には及ばないが、それでもかなりのスピードだ。

「えいっ!」

三綾 俣奈(って名前だったと思う)に受けられるはずもなく、アンダートスを思い切り外してしまった。
"外した"……触れてもいない。
4-1。
ぼくの目に狂いは無かった。三綾はあの金髪より運動神経が悪い。いや、比べるまでも無い。
相当な運動音痴と見て間違いない。

「みっさー、サーブ頼んだよ」
「みっさー言うな。殺すぞ」

―――ぼんっ!


"みっさー"が恐ろしい台詞と共にアンダーサーブを放つ。
さっきの強力なスパイクを見る限り、オーバーサーブを打ってくると思ったのに…。
球威も球速もそこまで強くない。

(これなら私でも…!)

「えいっ!」

―――べちっ

「わ!?」

見間違いだったのだろうか。
アンダートスをしようとしたが、ボールが僅かに浮き上がって私の顔面にヒットした。

「あ、悪い!ワザとじゃないんだ!」
「あ、大丈夫です!大丈夫!」

球威は大して強くなかった。痛くない。それより、一体どうして浮き上がったのだろう?


「ま、間違いないッ!!あれは…ホップサーブ!!」
「あ?なんだそりゃ」
「 説 明 し よ う ッ ! !
 まず聖が撃ったドライブサーブ!これはボールに強烈な順回転を掛けることによって
 相手の手前でボールが急激に落ちる変化球を打つことが出来るのだッ!!
 そして今相手が撃ったのがホップサーブ!
 これはドライブサーブとは逆の回転を与えることによって、
 相手の手前でボールを浮き上がらせるのが可能なのだッ!!
 ちなみに熟練者でないと効果的なホップサーブを打つのは難しいぞッ!!」
「松瀬くん…いつからそんな解説キャラに…」
「役に立たねぇ知識ばっか豊富な奴だぜ……」

「ふっ!」

―――ぼんっ!

(また浮いた…!?)

「えいっ!」

外れる。どうしても浮き上がるせいでタイミングと落下地点がズレてしまう。4-2になる。

「俣奈、だいじょうぶ?」
「あの人のサーブ…手前で浮き上がっちゃうんだよ」
「浮き上がる?」
「うん」
「ホップサーブかぁ…でも浮き上がるって分かってれば大丈夫じゃない?」
「うん…なんとか頑張ってみるよ」

そうは言ったものの、それから続けざまに2点入れられる。頭で分かっていても体が変化に反応できない。

「このまま決めるぞ?」

―――ぼんっ!

またホップサーブを放ってくる。私がこれを取らない限り、いつまでも相手のターンだ。
聖ちゃんが私をフォローしようとすればコートが空いてしまう。私が取らないと。

「変化前を叩けばいいんでしょ…!」
「え!?」「な!?」

―――バシィッ!!

いつのまにか聖ちゃんがネット際に出ていた。トスを挟まずにダイレクトにボールを返した。
ビーチバレーは普通のバレーよりコートが狭い。
そのため素早くネット際に出ることが出来る。もちろん聖ちゃんの脚力あってこその芸当だけど。
5-4。相手チームも流石に動揺を隠せない。

「あの金髪……反則紛いの運動神経だよ」
「参ったな…でもサーブは見切ってるんだろ?」
「うん。もう彼女のサーブがぼくたちのコートに刺さることは無いよ」

まだ心は折れていないみたいだ。これで両チームの必殺サーブは封じられた形になる。
と言うことは、如何に敵のサーブを捌いてスパイクを叩き込めるか。
つまりチーム2人の連携が鍵になる。

(足手纏いにならないかなぁ…)

「ふ~ん…見切ったって?言ってくれるわね。今までのはほんの挨拶代わりよ」

そう言って聖ちゃんはボールを空に放った。ギャラリーの目が上空のボールに集中する。
ジャンプサーブ。バレーの知識なんてほとんど無い私でも分かる。
なぜならテレビでやるバレーの試合では良く見るサーブだから。
―――プロが使うサーブだから。

タイミングを見計らって飛翔する。
すらっと天に向かって伸びた腕が鞭のように撓る。
しなやかで美しすぎる肢体。風になびく金髪がこれまた綺麗だ。同姓でも見惚れてしまう。

―――バシィッ!!

ボールを叩く音だけが海岸に響いた。
さらに球速が上がっている。それでもコントロールは相変わらず正確で、コーナーに鋭く刺さる。
しかもドライブも健在。むしろ強化されてる。聖ちゃんの美技を見て親衛隊が失神しだす。

「おい雹…なんとかなんねーのか、アレ」
「無茶言わないでよ…計算は出来るけど身体がついてけないよ…」

そのまま聖ちゃんがサーブを立て続けに4本決めて試合は終わった。

「勝者、チーム『見誤ったな』!」

初戦から厳しい相手だった…聖ちゃんがいなかったら確実に負けていた。

(私も頑張らないと…)

「5回戦を行います!チーム『見誤ったな』 VS チーム『ごーいんぐまいうぇい』!」

目を疑った。
でも私の視力は悪くないし、頭も大丈夫(なハズ)
だから私は次にギル高を疑った。
生物兵器か何かを開発しているのではないか。或いは、とうとうギアの開発に成功したのではないか。

眼前のコートには、3mはあろうかというヒトとは思えない身長の男が2人。

「聖ちゃん…」
「なんていうか…壮観ね…」

太陽の光を遮るほどの身長。彼らの作る影に全身が隠れてしまう。
バレーは身長が高いほど有利。そんなの私でも分かる。
でもここまで高くなると、どんな試合運びになってくるのか見当もつかない。

「サーブはチーム『ごーいんぐまいうぇい』から!」

―――ぴよん

3mが太陽を背にして飛ぶ。飛蝗の如き跳躍。

「オイーーーーッス!!」

超高高度、超高角度からのジャンプサーブ。太陽が眩しすぎて相手の動きがサッパリ見えない。

「う…眩しい…」

流石の聖ちゃんも人の子。眩しいものは眩しい。
苦し紛れに腕を伸ばしてみるがボールは全然違うところに落ちていた。
0-1。

「これ…ちょっとヤバイわねぇ…」
「全然動きが見えないね…」




「オイーーーーッス!!」

全く手が出せない。2人とも適当に腕を伸ばしたりするものの、ボールに触れることすら出来ない。

(サングラスでもあれば何とか対応できるんだけど…)

そのまま相手のサーブは全て決まり、気付いたら0-6という所まで来ていた。

「オイーーーーッス!!」

―――ぼんっ!

「おおー!当たったー!!」

ギャラリーが盛り上がる。聖ちゃんがボールをトスしたのだ。しかし方向は滅茶苦茶でアウトしてしまう。

「聖ちゃん凄い!!」
「掴めてきたわ…今度はちゃんと上げるから、俣奈はもう一回トスお願い。あたしのスパイクで決めるから」

責任重大だ。でもここまで聖ちゃんに頼りっぱなしだった。私だって聖ちゃんを助けないと。

「オイーーーーッス!!」

―――ぼんっ!

聖ちゃんがボールを上げる。

「俣奈!」
「えいっ!」

―――ぼんっ

トスが大きく横にズレてしまった。

「はっ!」

それでも聖ちゃんはボールに向かって飛んでいた。並外れた反応。

―――バシィッ!

渾身のスパイク。ついに切り返せた。1-7。

「ごめんね…ちゃんとトスできなくて…」
「ドンマイドンマイ。あれぐらいズレたって全然平気よ」
「ありがとう聖ちゃん…それにしても、なんであのサーブが見えたの?」
「見えたんじゃないよ。読んだだけ」
「読んだって…落ちる場所を!?」
「アイツら、ちゃんとセオリー通りにコートの空いてる所狙ってきてたしね。
 わざとコートに隙を作って誘導したってワケ。
 結構時間は掛かっちゃったけど、これから逆転してやるわ」




宣言通りに聖ちゃんは強烈なジャンプサーブを次々と決め、9点取ってしまった。
最早私の出番は無いのだろうか。

「聖ちゃんはやっぱり凄いね」

本当に凄いとしか言いようが無い。

「ん…?な、なに?ごめん…聞こえなくて…」
「聖ちゃん?」

見ると汗だくで顔色も悪い。かなり辛そうだ。
よくよく考えてみれば当然だった。
実はビーチバレーという競技は想像より遥かにハードなスポーツなのだ。
足元は細かい砂で、少し動くのにもかなり体力を使う。
ましてや走ったり飛んだりボールを打ったりである。疲れないハズが無い。
さらに追い討ちを掛ける真夏の炎天下。
しかも私が運動音痴なせいで聖ちゃんにはかなり負担が掛かっていた。
今の試合も本気のジャンプサーブを連発しなければ勝てない相手だった。
相当に体力を消耗してしまっている。

「大丈夫!?」
「へ、平気…。次は決勝だし…ちょっと休めばこんなのすぐに…」

「それでは決勝戦、チーム『マッセ』 VS チーム『見誤ったな』の試合を行います!!」

「え…?なんでそんなに早いの!?」
「松瀬のチームは相手が棄権したんだって。たしかチーム『イクゼキューター』とか言ってたよ」
「ふ~ん…そう言うこと……棄権するのも頷けるわ…」

「両チーム!コートへ!」

「聖ちゃん大丈夫…?」
「平気だって…緒土をぶっ倒して優勝するわよ」

スポーツドリンクを一気に飲み干すと、聖ちゃんはコートに入って行った。

(大丈夫かな…)

「さぁ本日のビーチバレー大会もついに決勝戦です!!
 初戦は敵に怪我を負わせ、2回戦は不戦勝!ここまで運だけで勝ち上がってきた、チーム『マッセ』!
 対するは今大会人気絶頂!人間離れした運動神経を持つ「江辻 聖」を擁する、チーム『見誤ったな』!
 初戦も2回戦も熱い試合を見せてくれました!期待が掛かります!
 優勝チームにはトロフィーと金一封、そしてディズィーランドの無料入場券が授与されます!」

ディズィーランド…海外にまで進出してたんだ…。

「誰が『運だけで勝ちあがってきた』だ!!」

松瀬が吼える。

「事実でしょ?」
「ふっ…分かってないな聖。これから俺達の真の実力をとくと見るがいい」
「テメェは俺の足をひっぱるんじゃねェぞ」
「お……」

―――ピィーーーーッ!!

「それでは決勝戦を始めます!!サーブはチーム『マッセ』から!!」