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家に帰ると早速ギルティの練習を始める。もちろんキャラはヴェノムだ。もう迷わない。
コントローラーの前に座る。

クシャッ

(ん、なんだ…?)

ズボンのポケットから出てきたのは白い紙切れ。

(そう言えばミッギ―マウスが…)

紙を開いてみる。

(F式…?)

そこにはそう書かれていた。
聞いたことないが、続けて書かれている解説を読むとどうやら起き攻めのことらしい。
レシピが簡単に書かれていた。
最後に「私はアドバイスをしたに過ぎない。強くなれるかは君の努力次第だ」と書かれていた。

(高速中下2択…これなら…これなら三綾を崩せる…!)

俺は寝るのも忘れ、一心不乱にF式の練習を始めた。

―――永園 翼は困惑していた。

それもこれも全て松瀬 緒土とか言う訳のわからん野郎のせいだ。彼はそう思っていた。

『マッパハン…』『カウンタ!』

夏休みもすでに終盤。日々トレモでひたすら無敵付加の練習。
おかげで成功率もかなり上がってきたが永園の心は晴れない。
雑念があると無敵付加は成功しない。また松瀬 緒土に対する怒りが込み上げる。

『マッパハン…』『カウンタ!』

緊張感が足りないのだ。永園は思った。
血沸き肉踊る快感…やはりこれだけは実戦の世界にしか存在しない。
しかし彼は現在停学中の身。
学校は夏休みも開放されているとは言え、入ることはできない。

―――永園 翼は戦いに飢えていた。

今までこんなことはなかった。たいした練習をしなくても永園は強かった。
ギル高に入るまでは敵らしい敵もいなかった。
だから、飽きた。

『マッパハン…』『カウンタ!』

だが今は違う。
永園の心には、かつてのギルティに対する熱い情動が再び息衝いていた。

―――永園 翼は考える。

ギル高のすぐ近くに、学校の生徒も大勢利用するゲームセンターがある。
確かツェップスと言う名前だ。以前永園もそこに一度だけ行った事がある。
まだギル高に入ってない時だ。
そこで完膚なきまでに叩きのめされた。相手はギル高の上級生だった。

『マッパハン…』『カウンタ!』

キレて台パンをしたら店主に追い出されてしまったのだ。
永園はあそこには行きたくないと思っていた。
だが、彼は自分の衝動を抑えきれなかった。戦いたい。力を試したい。強いヤツを倒したい。

『マッパハンチ!!』

スレイヤーがスタンエッジ・チャージアタックをすり抜けた。
実体のない幽霊のように、全く干渉しなかった。

―――永園 翼は笑う。

真っ黒に染め直した髪を軽く整えると、永園は町へ出ていった。



「あんなもん見えるわけねーよ…」
「ここまでF式が完璧なヤツは初めて見たな…位置の調整とか、結構ミスりやすい筈なんだけどな」

ゲーセンに入るとちょうどギルティの台が空いた。男が2人、店を出て行く。
画面を見る。18連勝中。相手にとって不足はない。
しかもキャラはヴェノムだ。運がいい。
ちょうどヴェノム使いをぶっ倒したかったところだ。

ガチャリッ

『夕飯はベジタボー!!』

『器ではない。あそこは息苦しいだろう?』
『始めるか…』

『ヘヴンオアへール!デュエルワン!レッツロック!!』

―――バシュウッ

(開幕は空中バックダッシュか…まぁ当然だな)

こっちも前ダッシュで距離を詰める。

『ふんっ』『炸裂!!』『カウンタ!』

無敵マッパを2Sに合わせる。続けて2K>足払いでダウンを奪う。
さて…起き攻めか…TGの無い今の状態では最もリターンが高いのは無敵吸血。
だが相手もそれは承知。一番警戒する技だ。ファジージャンプをするはず。
なら6Kと下段の2択…それに裏回りによる表裏の揺さ振りをかける。

『デュービスカーブ!!』

チッ…下段を刈られた…!!

ブン…

ボール生成…HS、K陣?何をする気だ?
こんな陣は見たことがない。だが案ずる事はない。ヴェノムに高速中段はない。
スラストもダストも発生は遅い。警戒していれば、見てから立つのは不可能じゃねェ。

『ゆくぞ』

(中段…!立てる!)

ギン!

一発…?ボールか?なら…すかしストからの下段と投げの2択が来るはず…!

バシッ

ヴェノムの足先がスレイヤーの脳天を捉える。

(なっ…!JK?中段?っつーかなんで当たんだ!?)

続けてKボールが当たる。さらにJHS>近S>Sカーカス>2K>近S>HSデュビ。
そうか、ガード硬直中は喰らい判定が変わらない…
ソルの低空ダッシュJS>JDがしゃがみ状態に当たるのと同じ原理か。
……この2択は見切れそうにない。だが―――

再びHS、K陣形から起き攻め。

(ボールをしゃがみガードしていればJKは中段にならねェハズだ)

『ゆくぞ』

ドドッ

(直接当ててきた…!?)

またHSデュビでダウンを取られる。

(チッ…要は最初のスラストを見切ればいいんだろ!)

『ゆくぞ』

(来い)

ヴェノムの身体が浮き上がる…低い…すかしだ!!

ギンッ

ボールを屈ガード。続けて繰り出されたJKがスカる。

ギンッ

(Kボールが…!?)

JK自体は当たってないが、それに弾かれたボールは別だ。ちゃんと命中してやがる。

バシュウッ……バシッ!

着地寸前の空中ダッシュから中段のJS。

(ミスってもフォローが効くってのか…ウゼェ…)

『デュービスカーブ!』

ループしてやがる。立てねェ。気が付けば体力は残り3割。

(このまま攻めさせるか…!)

『一押しが足りんよ』

キィィーン…

『覚悟を決めろ』

『デュエルツー!レッツロック!!』

1R目と同様に空中バックダッシュで距離を離す。相手も同じように前ステップ。
さっきは不用意に放った2Sを無敵マッパで刈られた。もう迂闊に技は振れない。

『甘い』『いかがかね?』

バクステに6HSが刺さる。

(やべぇッ!)

『シュッ!パイルバンカー!!』

ヴェノムの身体が大きく横に吹っ飛ぶ。

『マッパハンチ!!』

Kマッパで距離を詰めてくる。近~中距離は圧倒的に不利。
とにかく距離を離さないと一気に畳み掛けられる。

『ふんっ』『炸裂!!』『カウンタ!』

また2Sに無敵マッパ。さっきと同様にダウンを取られる。
コイツ…無敵付加が上手い。
とにかく近距離は駄目だ。どんな手段を使ってでも距離を離す…!

『無駄な時間は省…』『いかがかね?』

(空中投げ!?)

リバサ金サイクをいとも簡単に投げられる。
サイクが無くなった…ここでコンボを喰らうのはまずい。

―――ゴカッ、ブシュッ!!

(しまった!!くそッ…!!)

投げに弱いのだけは相変わらずだった。これは本当に何とかしないとマズイ。

『シュッ!パイルバンカー!!』

残り1割。画面端から抜け出せない。
相手の無敵付加精度はかなりのものだ…しかも無闇に振ったりせずにちゃんと牽制にぶつけて来る。
読みが鋭い。
暴れるのは得策ではない。やはりHJから逃げるしかない。

ギンッ

2KをFDして間合いを離す。逃げるなら今しかない!
HJをした次の瞬間。

キィィーン…

『マッハ人生!!』

『ザトー様…!』
『道草をくったがなかなか楽しめたよ』




1勝1敗…これで決着がつく……ハズだった。いや、実際決着はついた。オレの勝ちだった。
だがそれは本当の勝利とは程遠い。一撃準備が暴発したヴェノムに噛み付いて勝利を収めたのだ。
勝ちは勝ちだ。でもオレが求めていたものはそんな糞下らねェ、見かけだけの勝利なんかじゃなかった。

数日後、また学校が始まる。
絶対強くなってやる。
あの松瀬とか言う気に入らねェヴェノム使いをぶっ倒してやる。

「起・き・ろーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「…な、なんだなんだ…!?」

安らかな眠りをぶち壊す大声。
目を擦る。目の前に少女が立っている。

「遅刻!!」

その口から単語が飛び出す。腕組みして俺のことを睨んでいる。事態が飲み込めない。
なんで三綾が俺の部屋にいるんだ?

「2学期!!」

怒ってる。一体何がそんなに気に入らないんだ…ん…?2学期?

「今日?」
「そうだよ」

時計を見る。8:00。

「 遅 刻 じ ゃ ね ぇ か ! ! 」
「だからそう言ってるでしょー!!早く起きてよ!!」

朝食も満足に取らずに家を飛び出した。

「時間は!?」
「もう8:30だよ!」
「くそっ!走るぞ!!」

いつもの光景。いつもの朝。俺が走って、三綾が後から追いかける。
木漏れ日の中を颯爽と走り抜ける。9月…まだ暑い。でもどこか清々しい…そんな朝だった。




「あ、緒土!」
「兄貴ィィィィ!!」
「三綾さん、松瀬くん、久し振り」

教室に入るといつもの顔ぶれ。夏休みもいいけど、やっぱり学校に行ってる方がいい。
"学校の方がいい"…か。まさか俺がこんなことを思うようになるなんてな…
今更だけど、ギル高に来て本当に良かった。

と思ったのも束の間。

「フォォォォォォォォ!!」
「ぎゃああああ!?」

案の定郁瀬が突撃してくる。

「はは…あの2人相変わらずだね」
「あんたらもね。新学期早々遅刻ギリギリじゃない」
「だって松瀬がさぁ…」

「よーし!席につけー!!」

雁田の声でHRが始まった。2学期初日、この日は驚きの連続だった。




「知っての通り、2学期には修学旅行がある」

いきなり教室内の空気が最高潮に達する。俺は初耳だった。

「今年は海外に行く」

「さすが右だぜ!!」とか言った具合に歓声が上がる。
でも海外つっても色々あるじゃねぇか。どこだ?ブームに肖って韓国とか言うんじゃねぇだろうな…。

「ハワイだ」

「す、すげぇ…」「え、なに?それマジ?」
GGXX#R SLASHのロケテが行われた時のような反応。
『マジで?釣りじゃないの?』生徒全員がそう思っていた。

「マジだ」
「いっやほーう!!!!」

アクセルの6HSばりの歓声が上がる。

「落ち着け!!修学旅行の前にテストがある。2週間後だ。
 修学旅行はそのテストからさらに2週間後だ」

またテストか…まぁいい。今までの遅れを取り戻すチャンスだ。
誰が相手だろうと勝ってやるぜ。

「じゃあそう言うわけだから練習しとけよ」

雁田が話を切り上げる。生徒が間髪要れずに「先生、対戦の組み合わせは?」と雁田に尋ねる。

「あー今回のテストはちょっとばかり特殊でな…まぁ2週間後を楽しみにしとけ」

そう言うと雁田はテキストを広げて授業を始めたのだった。

2週間後―――テスト当日。俺たちはまだ何の説明も受けていない状態だった。

「ルールを説明する」

軽く咳払いをして雁田が説明をはじめた。

「まずお前らにはこのカードを3枚ずつ渡す」

雁田はトランプくらいの大きさのカードを持っていた。ポチョムキンの絵が描かれている。

「まず、この絵はお前等の使用キャラを示している。そして…」

雁田がカードを裏返す。裏面には数字で『5』と書かれていた。

「この数字はお前らの『評定』だ。強さに応じて数値が違う。5が最高で1が最低だ。
 これからお前らには校舎に適当に散ってもらう。
 チャイムが鳴ったら校舎をうろついて戦いを挑め。
 誰と戦ってもいい。他クラスでも関係ないぞ。筐体は校舎のどれを使ってもいい。
 戦いを挑まれた場合、拒否権は無い。対戦は1R先取。
 勝ったら相手のカードを奪う。負ければ自分のカードを相手に渡す。
 最後に自分の持っているカードの数字の合計を最終的な評価とする。
 自分のカードが全てなくなった時点で失格だ。つまり3回負けたらゲームオーバーってわけだ。
 失格になっても相手のカードを奪っていれば得点はそのまま与えられる。
 つまり強い奴を倒せば一気に+5点。弱い奴だと倒しても+1点にしかならないというわけだ。
 が、強い奴と戦うと当然自分のカードを奪われるリスクも増える。
 あと、一度勝った生徒に再挑戦することは出来ない。でも相手からの再挑戦は受けることが出来る。
 以上、質問はあるか?」
「関係あるのは数字だけ?キャラ差とかは関係ないんですか?」

生徒がすぐに質問をぶつける。

「ああ、キャラ差も多少関係ある。
 『エディの5』を倒すのと『アンジの5』を倒すのとでは当然前者の方が評価は高い。
 まぁこの辺は互いのキャラの相性にもよるがな。あとは質問ないか?」

いつの間にか生徒達は黙り込んでしまっていた。

「……無いみたいだな。じゃあカードを配るぞ」

名簿順に名前を呼ばれ、生徒達が雁田にカードを貰いに行く。

「松瀬 緒土」
「はい」

雁田にカードを渡される。ヴェノムの絵が描いてある。だが俺はそんなのには目もくれず、すぐに裏面を見た。
『2』
でかい字でそう書かれたあった。

(面白ぇじゃねぇか…俺にこんな低い評価を与えたことを後悔させてやる)

「全員渡ったな?それじゃあ、名簿順に教室を出て行け」

郁瀬が立ち上がる。「あいつとだけは戦いたくないな…」そんなヒソヒソ声が所々から聞こえる。

「次は江辻。適度に間を空けてどんどん行けよ」
「江辻さんだ…わたし一回戦ってみたいなー」

憧れとも取れるような声があがる。俺も今のうちに獲物を品定めしておこう。
聖、郁瀬は避けるのが無難か。しかし強い奴を倒さないと点は稼げないし…悩むな…。

「次、永園」
「あいつ偉そうなこと言っといて紙野って奴に負けたんだろ?」

馬鹿にしたような口調で喋る生徒。

「ンだとこの野郎…」
「ひっ…!」

永園が睨みつけると、生徒はビクッと震えてすぐに黙り込んだ。

「……」
「どうした永園。早く行け」
「……おい雑魚共」

クラス全員に呼びかけるよう話し出す永園。

「俺は体育館に行く。文句のある奴はそこで勝負しろ。
 俺は『3』だ。お前等みたいなクソでもガンバりゃ勝てるかもな」

そう言って永園はゆっくりと教室を出て行った。
『3』…普通ってところか?
アイツ自分でバラしたぞ…『4』とか『5』の奴に狙われたらどうする気なんだ?

「次、松瀬 緒土」

俺が立ち上がるときは誰も声を発しなかった。それほど俺は注目されていないということらしい。
まぁ当然といえば当然だが…。

(今に見てろ……目に物見せてくれる)

教室を出る。

さて、どこに行くべきか…現在動向が分かっているのは永園1人だけ。奴は体育館にいる。
でも折角のテストだ。他クラスの生徒とも戦いたいし、この異様な緊張感も楽しみたい。
しばらくうろつくとしよう。

そう決めると、俺は獲物を探してぶらぶら歩き出した。

『オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!ヴォルカニックヴァイパー!!』

テスト開始のチャイムが校内に鳴り響いた。
とにかく制限時間内に片っ端から倒していくしかないな。
まずは肩鳴らしに弱そうな奴と戦っておきたいところだ。
しかしこの校舎は広大。バラけた生徒を見つけるだけでも結構時間を食う…早くしないと。

「そこのヴェノム使い」

ぞくっと背筋に寒気が走る。この氷点下の声は…

「蘇留か…何の用だ」

背中を向けたまま喋る。

「鴨がネギ背負って現れてくれたから早速狩ろうと思ってな」

蘇留の方に顔を向ける。

「ミイラ取りがミイラに…なんてことにならないように気を付けろよ?」

カードを取り出す。

「ふん、『2』の分際でデカイ口を叩くな」

蘇留もポケットからカードを取り出す。

―――『1』!?

(錯覚か!?)

目をこすってもう一度カードと蘇留の顔を交互に見る。やはり『1』だ。
そしてそれを持っているのは紛れも無く蘇留だ。
全然上達してないって言うのか?なんでこいつこんなに強気なんだ?

「どうした?怖気付いたのか?」

いや、奴が『1』だと考えるのは早計…あのカードは他人の物かもしれない。
俺を油断させる為に『1』のカードを見せているとも考えられる。
蘇留が上達しだしたのは最近のことだし、教師もまだその成長に気付いていないだけかもしれない。

「…やってやるよ」

まぁどうでもいい…戦えば分かることだ。




「こんなもん、欲しけりゃくれてやる!!このハイエナが!!」

蘇留はカードをブン投げると、すぐに走り去ってしまった。
泣けるほど上達してなかった。
いや、確かに以前見た時よりは強くなっていたが、まだまだ俺の敵じゃない。
つい最近まで初心者だったヤツがそう簡単に強くなれるほどギルティギアというゲームは甘くない。

(そっちから仕掛けてきたくせに…めちゃくちゃ後味が悪い…)

でもそんな事も言っていられない。
先はまだまだ長い。厳しい戦いが続くだろう。
でも何故だろう。俺の心がこんなに昂ぶっているのは。

(これで1点か…)

俺は廊下に落ちたカードを拾い、次の獲物を探し始めた。

「あ、アイツ…!江辻だ!!江辻 聖だ!!」

1人の生徒が叫ぶと、他の者も蟻の子を散らしたように逃げ出した。

「これじゃあ勝負にすらなんないじゃない…」

未だに持ち点は0点のままだった。

「この場合、他クラスの人を狙った方が良いかな…」
「あ、やっと見つけた…そこの生徒、勝負して」

背後から声。後ろを振り向く。
ショートヘアーで黒い髪。メガネの奥にある鋭い瞳が印象的な女子だった。
見た目は大人しそうな優等生タイプ。その意志の強そうな瞳以外を見れば、の話だが。

「グッドタイミング。こっちも相手を探してたところよ」

第一印象は「雰囲気があたしと少し似てる」そんなところだった。
2人とも同時にカードを突きつける。敵はミリアの『5』…相手にとって不足無し!

「あたし、亜麗寺 美里(あれいじ みさと)アンタは?」

外見とは似ても似つかない砕けた口調。声もハッキリしていて強気な感じ。

「江辻 聖。よろしく頼むわね」

『あなたに捕まえられる?』
『いい試合にしましょう』

『ヘヴンオアへール!デュエルワン!レッツロック!!』

敵はカイの『5』か…カイって厄介なんだよな…。
その辺の糞厨房の使うカイと、上級者が使うカイでは全然違う。
立ち回りのプレッシャーが月とスッポン。
まぁミリア有利で間違いないが…果たして簡単に行くかどうか。

(とりあえずバクステ安定だな)

『ここだ!!』

カイのHSがスカる。地上戦は不利。上から攻めたいところだ。

―――バシュウッ!

早速低空ダッシュJS>ランサーで飛び込む。

『失礼!』

(げっ!?)

投げ返される。

『これを使うとは…』

チャージスタンから起き攻め。でも投げに気をつけていれば恐れることは無い。

―――ギインッ、ギインッ

小技をFD。隙を見てバクステで間合いを離す。
さて…状況はあまり良くないな。ランサーはカイの足元に突き刺さっている。
ランサーがなければ飛び込みは対処されやすい。なら地上戦に持ち込むか?
それは駄目だ。カイの2Sは鬱陶しいことこの上ない。
やはり空中から行くしかない。

―――バシュウッ!バシュウッ!

空中ダッシュを連続で噴射して前後に揺れる。地上に張り付くなら隙を見てJDあたりを刺していきたい。
空対空を狙ってきたらJPを刺して地上に降ろす…そんなところか…
飛んできたところに置いておけばカイのJKも問題無いだろう。

―――バシュウッ!

こちらの空中バックダッシュを確認したところでカイがジャンプする。

(空中スタンか?なら、JDをぶっ刺してやるまでよ!!)

―――シャアアアア…

『カウンタ!』

違った。逆に相手のJDでこっちのJDが刈られてしまった。補正無しのコンボが来る。

『ハッ!見切った!ヴェイパースラスト!ハッ!見切った!ヴェイパースラスト!…これを使うとは…』

またチャージから起き攻めをする。ここは小技を挟まずに投げてみるか…

『ここよ』

(今あたしが投げたって!!)

とか言ってみる。
今度はこっちが投げ返されてしまった。追い討ちからダウンを奪われる。見えないN択が来る。
毎度毎度起き攻めされるたびに思う。VTの発生がもっと速ければなぁ、と。
でも無い物を強請っても仕方ない。今は敵の起き攻めを見切ることだけに神経を集中させる。

ミリアが一回転してHSタンデムを置く。
さぁ何を出す。6K?2S?

―――バシュウッ!

(えっ……やばっ!)

空中ダッシュ。ガード方向が逆になる。

HSタンデムを直にくらってコンボ>ダウン。またHSタンデムから起き攻めが来る。

『ロマンティーック!』

―――パシッ

これが噂のコイチキック…

(なにコレ…見切れる要素無い…)

またコンボ>起き攻め。立てない。このまま殺されるのは避けたい。いや、させない。

『させませんっ!』『カウンタ!』

(ナイス代弁)

HSタンデムにバーストを合わせる。そのまま追いかけて起き攻め。




『油断しましたね』

(え…?あ…)

気付いたらミリアは上空にかっ飛んでいた。

(油断してた…)

『ハッ!見切った!ヴェイパー…』『ツメが甘い』

バーストでふっ飛ばし、すぐにダッシュで追いかける。

『ロマンティーック!』

HSタンデム青からバッドムーン。




勝つときはいつも呆気ない。
起き攻めをループさせ、気付いた時には相手は死んでいる。

今回もそうだった。

『なかなかよかったわ……アナタ』

とりあえず俺は体育館に向かった。
永園とは一回戦っているし、やつの性格も知っているから戦いやすい。
見過ごす手は無い。そう判断した。

「俺がやってやるよ!永園とか言って大したことないぜ?この前チップ使いにボロ負けしたらしいからな」
「ほざけ雑魚が。ぶっ殺してやるよ」

体育館に行くと既に戦いが始まっていた。
案の定、永園とその挑発に乗せられた男子生徒が戦っていた。

『マッパハンチ!!』

お互い残り数ドットとなったところで永園の無敵マッパがカイを捉えた。

「ハハッ!弱すぎて話になんねぇ」
「ちっ、あと一歩だったのに……もう一度勝負だ!」
「いいぜ?何回やっても同じだけどな」

再戦。また接戦になり、永園が辛勝。

「く…また残り数ドットで…」
「いい加減負けを認めろよ。雑魚が」
「クソ!これで最後だ!!」

しかし、またしてもギリギリで勝利を収める永園。

「今度は俺だ!」
「いいぜ?いくらでもかかって来い」

別の生徒が名乗りをあげる。

―――何かおかしい。

何故ギリギリで勝ってるのにこんなに強気なんだ?
そう言えば、こいつは一度も自分から勝負を挑んでいない。

(…こいつ…まさか、わざと…?)

相手に『もう一歩』という印象を植えつけ、再挑戦させる。
自分から勝負を挑めばそれが破綻するし、ルール的にもアウトだ。
あくまでも"相手が再挑戦"しないと駄目だ。

(いや、まさかな…そんな事できる訳がない…)

しかし俺の予想を裏付けるかのように適度に試合を縺れさせる永園。試合はいつも一進一退を繰り返す。
しかし最終的に勝利を収めるのはいつも永園だった。

「お前みたいな雑魚が『4』だと?先公の目は腐ってんな」

試合が終わり、永園がこっちに目を向ける。次の瞬間その瞳には殺気が満ちた。

「てめェ、あの時の…。マッセとか言ったな。どうした?お前はかかってこないのか?腰抜けが」
「お前…わざとギリギリで勝ってたな」
「なんだ気付いてたのか。じゃあ待ってることもねェな。"お前に試合を挑む"オレと勝負しろ」

拒否権はない。まぁ、端から断ろうとなんて思っていないけど。
しかし…コイツいつの間にこんなに強くなったんだ?
あの卓越した無敵付加の技術…どっかで見たような気もする…。
だが…強くなったのは俺も同じだ。

「そろそろ以前負けた借りを返すころだな」
「フン、さっさとかかってこい。ぶっ殺してやる」

『オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!ヴォルカニックヴァイパー!!』

テスト開始の鐘が鳴る。あたふたしてる場合じゃない。
テストの形式にかなり戸惑ったけど、結局やることは変わらない。相手を倒すだけだ。

とりあえず廊下をぶらぶらうろついてみる。生徒の姿は無い。

(この校舎広すぎるよ…早くしないと時間が…)

階段を昇って廊下を見渡す。それを何度か繰り返すうちにやっと生徒を1人見つけた。
女の子だ。黒いセミロングの髪。前髪が長めで、目が微妙に隠れている。
そして手にはなにやら黒い物体を持っている。なんだろう?

「ん。」「あ…」

目が合う。長い前髪の隙間から覗いた瞳は凄く眠たそうな眼だった。完全に寝ぼけ眼って感じだ。
とりあえず点数を稼がないといけない。思い切って勝負を挑むことにした。

「しょ、勝負して下さいっ!」
「ふぅ………別にいーけどぉ…」

軽く溜息をして承諾してくれた(断る権利はないから絶対受けなきゃいけないんだけど)

「ちょっとこれ食べ終わるまで待ってね…」

黒い物体を口に放り込む。

パリパリパリ……もぐもぐもぐもぐ…

(キットカット……おいしそう…)

「じゃー始めよっか…ぼく赤井 雹(あかい ひょう)よろしくー」

(ぼくっ娘だ……)

なんて思ってるうちに雹ちゃんはポケットからカードを取り出した。ヴェノムの『5』
私は『4』だ。数値上では格上…いきなり強敵だ。しかも同キャラ。

「わ、私、三綾 俣奈。よろしくお願いします…」
「そうキンチョーしなくてもいーよ。時間少ないから、さっさとやっちゃお」

『ブレイクだ』
『肩鳴らしになるか』

『ヘヴンオアへール!デュエルワン!レッツロック!!』


『デュービスカーブ!』『死角を取ったぞ』
『SHOT!!』

開幕デュビ>Sステ。互いの動作がバッチリかみ合う。
筐体の向こうから嬉しそうな笑い声がする。同キャラ恒例の儀式みたいなものだ。

―――バシュウッ!

低空バックダッシュで間合いを離す。相手はぶっぱボール生成。
うー、不利な展開…でもまだ始まったばかり…これからだよ、これから。

『マッセ!』

早速相手は砲台と化す。生成、スティンガー、カーカスでシューティングモードに入る。
ボール一個の差がデカい。回転率で負けてる。大人しくガードしよう。

ギンッ、ギンッ、ギンッ、ギンッ

シューティングゲームみたいにボールの弾幕が襲ってくる。逃げ道が無い。

(なんて的確なんだろう…)

流れるような生成。緩急をつけて飛来するボールの群れ。
その美しいボール捌きに思わず見とれてしまう。次から次にボールがヴェノムに命中する。
まるでホーミング機能でも備わっているかのようだ。何10手も先を読み透かされているような…
移動する先々にボールがある。むしろこっちがボールに当たるように誘導されているようだ。

(どうしよう…このままじゃマズイ……隙が無い…)

『SHOT!!』

(好機―――突破する!!)

『見誤ったな!!』

HS生成>瞬間移動を素早く行って弾幕を避ける。
そのままJSでボールを弾き、固めに移行。
自分でも驚くほど鮮やかな動きだった。毎日松瀬と練習したおかげだろうか。

破られた?この"天才"赤井 雹のシューティングが?

(曲者…)

全然予測できなかった……ぼくの脳細胞も時間とともに順調に死滅しているということだろうか。
それとも昨日みっさーに殴られたせい?
一般的に、ゲンコツ一発でヒトの脳細胞というものは何百万個も死滅する。大変脆いのである。
殴られたの昨日だけじゃない。毎日何10回もド突かれている。今日もド突かれた。
みっさーの攻撃力は一般人のそれを遥かに上回っているから

『カーカスライド、行くぞ!』

(集中しないと……良くない癖だ)

固め。FDを張って耐える。
これは暴れのタイミングが鍵だね…
ヴェノムの火力は低いし、状況如何では暴れを潰されても大した被害は受けない。
問題はその好機を捕らえられるかどうか。

『SHOT!!ロマンティーック』

(ここ…だね)

ステ青後のダッシュ攻撃に足払いを合わせる。
キャンセルK生成>ダッシュJK弾きから、着地寸前の空中ダッシュ中段と着地下段の崩し。

―――バシュウッ!……ガッ、ガッ

(見えるの…?なら投げで…)

―――バシッ!

足払い暴れで割り込まれる。

『ファールを犯したな!!』

生成にバーストを合わせる。再びシューティングを展開。次は油断しない。
ボールを弾きながら前進して距離を詰める。

(わ、わ、あわわ…)

あれよあれよという間に距離を詰められる。
どこに逃げてもボールがしっかりヴェノム目掛けて飛んでくる。
いつの間にか近付かれて、いつの間にか固められていた。

『マッセ!マッセ!』

GBが猛烈な勢いで溜まって行く。固めも隙が無い。
これが『5』の実力…でも崩しには強いと自負している。何とかガードして隙を窺うんだ…

『すまんな』

(あぁーーーっ!!)

『覚悟を決めろ』

投げからダークエンジェル。こんなことになるならバーストを温存しておくんじゃなかった。

―――くるくるくるくる、バシッ!!

『ナインボール ゲットだ!』

惚れ惚れするような戦いだった。負けたのにどこか清々しい。

「強いんですね」
「そーかなぁ。自分じゃよくわかんないんだけどねー…」

カードを渡す。

「あれ、『4』かぁ…『5』だと思ったのに」
「え…本当ですか」
「ん…うん。ぼくお世辞とか言わないから」

その時背後から威勢のいい声が聞こえた。

「お、雹じゃん。どした?勝ったのか?」
「みっさー…」
「みっさー言うな」

黒いショートカットにメガネの女の子。性格と外見は相反しているらしく、口調は荒い。

「丁度いいや、あたしと勝負して」
「えーやだよ…面倒くさい」
「アンタはそうやってすぐ面倒くさい面倒くさい言うんだから……
 とにかく拒否権ねーんだから大人しく勝負しろ」

そのまま2人は対戦を始めた。
私も早く別の対戦相手を探そう…