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「母さん、出かけてくるよ。」

母さんはなにも言わない。俺がどこにいくかわかりきってるから。
それは歩いてすぐのゲームセンター。そして俺、織那 蔵(おれな くら)はギルヲタ。
ゲセでは蔵と使用キャラにちなんで「ぐらさん」と呼ばれている。
中学校卒業後、俺は無職。バイトもしていない。
甘やかされて育ってきて、家になまじ金があったから。それでも両親はいい顔をしなかった。
中学校卒業から一年、ずっとゲセに通ってきた。
お陰で、もう地元最強だろう。ひょっとしたら全一じゃないのか?

ゲセにつく。常連と店員にいつもどおり挨拶してからゲセ内をまわる。
俺は暗い性格で全然社交的ではない。それでも毎日通ってればこの程度の人間関係はできあがるものだ。

とりあえずギルティの場所にいってみる。
ここにヴェノムなんていたのか?どうせ練習中の初心者だろう。
だが画面に表示されていたのは数十連勝という数字。
「このヴェノムは強いよ。相手の格好を見ればわかると思うけど。」
エディ使いの常連が言う。この人は信用できるのでとりあえず向こう側を見てみる。
カップルか・・・しかしただのカップルではない。プレイしているのは女。
しかも服装が・・・
「ああ、ギル校の生徒か・・・」
こいつら、なんでわざわざこんなところまで来てるんだ。
学校で勝てないからパンピー狩りか?カップルで仲良くしたいからか?
どちらにせよ、軽くひねってやるか。
財布から50円出して乱入。わざわざ本キャラを使う必要もあるまい。
ポチョで十分だ。

_______


こちらの牽制はすべて刈り取られ、FDBで返せないように遅く撃って同時に攻めてくる。
ガード姿勢切り替えの中段も使ってくる。
なにより、瞬間移動の使い方が個性的だ。なおかつ上手い。
つまり、俺はボコボコに負けた。3ラウンド中2ラウンドがパーフェクトで、だ。

「よかろう、貴様を我が障害と認識する」
本キャラで乱入してやる。
霧でハメて、ディバで燃やして、居合で斬殺してやる。
そしてお前は泣きながらそばの男に慰められながらゲセから出て行くだろう。
ざまあみろ。強いのはギル学生徒だけじゃねえ。

コイン投入、乱入。
ジョニー選択。
さあ心の準備はできたか?彼氏は慰めの言葉を思いついたか?
思いつく前に殺してやるよ。

レッツロック!
開幕は様子見安定だな・・・
突然のダッシュ投げ。これは予想外だ。落ち着け、相手はちょっと強気の選択をしただけだ。
投げから近S>低空HSストラグル。
さあ、防御に集中だ。
ボール生成から瞬間移動。
はじきつつ中下段。
それはさっき見た。ファジーはできてる。
また投げ。こっちの心理は読まれてるのか?落ち着け、落ち着け。
同じようにまた起き攻めをくらう。
中段、ガード。ガードされたらいなや、相手は距離をとってシューティングの準備。
こっちはシューティングを直ガしつつ歩いてTG溜め。
ここにヴェノムはいなかったが、対策ぐらいできてるんだよ。
ゲージが溜まった。HJからディバ青で強引に。
6Pか?バクステか?どちらにせよ俺のターンだ。

ダッシュ。ヴェノムがとった行動はまさにそれだった。
ディバを出すのを読んでいたとばかりにダッシュ。
そこからさらにシューティング。
空からいくのはやめた。地上からじわじわ歩いてやる。
HSステ青からダッシュ。どうせ投げだろ?仕込んで投げ返しだ。


下段かっ!喰らっていた。
序盤の投げ2回は布石だったか。下段からのガトリングでまた起き攻め。
読み負ける。それもことごとく。
それでもなんとか画面端まで追い詰める。
俺の体力は2割。相手は8割といったところか。
だが、残念ながら画面端だ。切り替えしをもたないお前に逃げ場はない。
立ちHS>コインで固める。相手のGGが軋みを上げる。
そろそろかな・・・
コインの後にダッシュ投げを狙う。だが
「すまんな」
投げられたのは俺の方だ。しかも空中投げ。
ばかな。ステップを完全に読んでたというのか。そして切り返しが空中投げか。
そのまま、1ラウンド目はとられた。

2ラウンド目。
いい調子だ。投げてコイン。受身を空中投げ。バーストも読む。
それでもギリギリの試合内容だった。だが、勝つ。

3ラウンド目。
心なしか、1ラウンド目よりシューティングがきつい。各種牽制も混ぜてくる。
まさか最初は手加減されていたのか?
それでも遠Sに6Pやらぶっぱ気味の6HSで押す。
だが、一瞬の操作ミスが命取りになった。
ディバ青をミスり、投げからダウン。画面端でダークエンジェルを重ねられる。
相手は低空ダッシュ。中段か下段か・・・
攻撃を出さずに着地。下段だ!
キューを背後にまわして突く。しまった、ダストだ。
まずいマズイ不味い。立て。立て。
くらう。飛ぶ。
GGが溜まってたところに一番威力の高いエリアル。
衝撃に脳が、神経が、細胞が悲鳴を上げる。
2ラウンド目までとられてしまった。もう後はない。

4ラウンド目。
低空燕、コインを惜しまず、できる限りの力を尽くして。
それでも・・・このヴェノムにはかなわない。
起き攻めだけで、倒されるほどの勢い。加え、近づけない牽制とシューティング。
結局俺がしたのは相手の勝ち数を2増やすというだけだった。

バカめ・・・これのどこが全一だ。
最初は明らかに手を抜かれ、簡単な操作をミスり。
こっちの行動はすべて読まれ、ダストにすら反応できない。
なんなんだ俺は。初心者よりちょっと強いだけのパンピーではないか。
俺は、結局弱いやつを狩って楽しんでいただけなのか。
なにが泣かすだ、なにが殺すだ。
己の身の程を知れ。もう帰ろう。俺には無理だ。強いやつにはもう乱入しないで
「ちょっとそこのあなた」
後ろから声をかけられる。なんだ・・・さっきのヴェノムか。
「なに?」
「あんた、なかなかやるじゃない」
「散々ボコっておいてよく言うよ。おまけに手まで抜いてくれちゃって。あーあんたにはかなわねえよ。」
「たしかに手は抜いたわ。最初だけね。でも、手を抜いたままじゃ勝てないとわかった。だからダストまで使って本気を出したのよ」
「で?結局負けたのは俺だし勝ったのはあんただ。だいたい、ギル校のあんたがこんなところに何の用だよ」
「んだとてめえ。なんだその言い草は。自分が負けたからってキレてんじゃねえよ」
そいつの連れの男が口を挟んでくる。なんだこいつ。
「ああ?じゃあお前は自分より小さい女の子に手加減された上に負けたことがあんのか?」
小さい、という単語に女がぴくっと眉を吊り上げる。
「そんなんよくあ」
「松瀬は黙ってて。ややこしくなるから。」
ちっ、と松瀬と呼ばれたは訝しげに身を引く。
「私たちがここにきた理由だったわね。」
「ああ。対戦環境が整ってるギル校の奴らがなんでこんなところにくるんだよ」
「単純に生徒勧誘のためよ。」
「はあ?生徒が生徒勧誘?バカ言ってんじゃねえよ」
「ウチは全国各地からギルヲタを集めているのは知っているわよね?そんな中には、心が脆い子も混じってるわ。実際、成績が悪い子の中にはやめてく子も多いのよ。」
「で、生徒数が減るからって自分たちが勧誘か?ご苦労なこった」
「私たちは本気なのよ。本気で上を狙ってるの。だからこそわざわざゲセにまできて生徒を勧誘し、対戦環境の向上を図ってるの。」
なるほど・・・たかがゲームでねえ・・・だが、羨ましい。打ち込むことがある。それが世間には卑下されるようなことでも。
自分が一生懸命にやれることがある。それが羨ましい。
「で、あなた。ウチに来る気ない?」
「俺が?あんたに手加減されて負けた俺が?」
「ここで私に本気を出させたのはあなただけよ。もちろん無理にとは言わないわ。」
願ってもない話だ・・・だが、今まで散々迷惑をかけてきた自分を親が許してくれるだろうか?
許してもらえたとしても自分は上手くやっていけるだろうか?こんなヒッキーが・・・
「学校生活なら心配しなくていいわ。寮もあるし。それに、周りが同じ人間しかいないんだから楽でしょ?」
確かに。共通の趣味を持つ奴らならやっていけるかもしれない。
「考える時間をくれないか・・・」
「もちろん。パンフレットを渡しておくわ。あとは電話かけて指示に従って。あなたみたいに途中入学の人は少なくないわよ♪」
やはり仲間が増えるのは嬉しいことなのだろう。やや上機嫌に、ゲセを去っていった。
「ギル校・・・か・・・」
あんなやつばっかりなら言ってもいいかもな。


その夜、久しぶりに両親とまともな会話をした。
「父さん、母さん。俺・・・いきたい学校があるんだ」
パンフレットを渡す。中を見た瞬間、少し怒っているような、哀しそうな顔になる。
「ゲームの学校か・・・お前そんなことで、将来どうするんだ?」
予想済みの答えだ。でも、俺は自信を持って言った。
「俺が初めて、本気で打ち込みたいと思ったことなんだ。生まれて初めて。頂点に昇りたいと思ったことなんだ。だから御願いします!ギル校にいかせてください!」
机に頭をこすりつけて。プライドも羞恥心もかなぐり捨てて。ただ、叫んだ。
「今まで流されるように生きてきたお前が・・・初めて本気でやりたいと。初めて私たちに感情をぶつけてきてくれた。親として、息子の夢を潰すわけにはいくまい。」
「え、じゃあ・・・」
「好きにしろ。ただし・・・でっかくなれ。男なら一番を目指せ。」


その夜、本気で泣いた。
これからも迷惑をかける罪悪感と。それ以上に両親がこんな息子の夢を信じてくれて。
本気で、泣いた。
~続く~


その後、ギル校に電話して筆記を受ける。
かなりギリギリではあったがなんとかパス。
続いて実技だが、ギル校の誰かと対戦するのかと思えば、違うらしい。
「○○というゲセで大会があるのでそこでキミの腕を見せてもらう。3on3だから、メンバーはそっちで用意してくれ」
とのことだった。
実は俺は自分のホーム以外のゲセは行ったことがない。
ましてや、遠出するなど何年ぶりだろうか。
幸い、チームメイトは見つかった。ホームの常連のエディとメイだ。
どちらも実力的には信用できる。しかし、俺の腕を見せなければ意味がない。


会場につく。
ここで、俺のギル校入りが決まる。
若干タバコ臭いが、そんなのはもう慣れている。
エントリーより先にギルティを見てみる。
レベルはほどほどといった感じだろうか。単に強いやつらは野試合をしていないだけかもしれない。
ふと、受け付けのあたりが騒がしい。手裏剣だとかハラキリだとか。どんな揉め方だよ。


ある程度対戦を見終えたら受け付けへ。
さっきの騒がしいやつらはどうしたんだろうか。受け付けしてたということは大会参加者だろう。
だが、今は自分のことだ。
とりあえずエントリー。俺は・・・本名でいいや。
「あの、名前はオレナで御願いします。」
「かしこまりました。」
その後、エディ使いがイーディー、メイ使いがエムエーということになった。
わかりやすい名だ。だが、俺は本名にした方がギル校の職員にわかりやすいだろう。
時計を見ると、もうじき開催時間。

「第23回。ギルティギアイグゼクス、3on3を開催します!!
 では、まずルールの説明から、各チーム先鋒、中堅、大将に別れてもらいます。
 そして、先鋒、中堅、大将同士で戦ってもらい、先に2勝した方の勝利です。」

さあ、戦闘開始だ!

俺のチームの試合は二試合目のようだ。
一試合目はもうはじまっている。
だが少しはレバーを触っておかなければなるまい。
野試合専用の台へと向かう。
「まずは先鋒戦!!
 『ザトー様フォォォ…!』対『黒き影』です。」
・・・ザトー様フォォォ…?
こいつ、正気か?いや、相手を油断させるためかもしれない。
なにより、人の名前にけちをつけてはいかん。
野試合に集中する。いい動きだ。
投げて燕カス。そこから霧ハメ。ディバコン。
青キャンの精度もいい感じだ。

『ゆくぞ!マッセ!マッセ!ハァッ!デュービスカーブ!!マッセ!
 ふんっ、ハァッ!マッセ!ゆくぞ!デュービスカーブ!!マッセ!
 マッセ!ショットロマンティーック!マッセ!ゆくぞ!ゆくぞ!マッセ!
 ゆくぞ!ゆくぞ!デュービスカーブ!!ショットロマンティーック!マッセ!』
ヴェノムの声が響く。これだけで、相手がどんな状況に立たされているかよくわかる・・・
なんでか最近、よくヴェノムの声を耳にする。
ひょっとしたら今戦っているのはこの前ゲセであったあの女か・・・?
いや、違うだろう。それらしきやつは見かけていない。


『まるで相手にならんな。』

勝ち挑発?こんな大きい大会で?
よほどのDQNか・・・
あるいは

よほどの実力の持ち主なんだろう。
さっきの攻めを聞いている限りでは、エディ側はなにもできなかったんだろう。
ったく、最近のヴェノムはどうなってやがる。

一試合目の実況に耳を傾けつつ、野試合を再開した。

実況の声が響く。どうやら一回戦は終了したらしい。
チップの攻撃ボイスとスレイヤーのやられボイスしか聞こえなかったが・・・気にしないでおこう。

「第二回戦、チームJEM VS チーム弱キャラですが!先鋒はイーディーVSエド!」
チーム名はキャラの頭文字を取った。プレイヤー名といい、こういうのはどうも苦手だ。
弱キャラとか言っていきなりエディ出してきやがった。まあこっちもエディだ。
丁度いい組み合わせだろう。エディを倒すにはエディだ。

_______
どうやらただのJK厨だったようで、しゃがみHSカウンターからの起き攻めで幕は閉じた。
「先手を取ったのはチームJEM!続く二回戦・・・エムエーVSアル!」
メイVSロボ・・・まずい。このメイは弱くないが、ロボはまずい。
元々地元にまともなロボは少なかった。勝てるかどうか・・・
ていうか、弱キャラじゃないよね。

_______
善戦はしたが、やられてしまった。
メイ戦をよく知っているロボだったな・・・大会に出る上で対策をしていない方が悪い。
次は俺か。
「さあ、勝敗を分ける一戦!オレナVSトキコ!」
ここで、相手が出してきたのはアンジ。
エディ、ロボで2勝を取っておきたかったのか?
なんにせよ、立ち回りで封殺してやろう。
いや・・・職員が見ていることだろう。魅せコンの一つでも決めてやろう。
なんにせよ、踏み台にしてやるよ。

レッツロック!
開幕はしゃがみS・・・
P戒。だが、それでは直接のダメージはない。
バクステ。

ダッシュ立ちK。相手がとった行動。
それはこっちのバクステに引っかかり、近S>立ちHSから陰へ。
そのまま疾。

まずい。
こいつは、強い。おそらく、さっきのエディやロボよりも。
弱いから後回しにしたのではない。
最も実力が要求される大将戦で、実力的に最も信頼できるプレイヤーを置いてきただけだ。
疾>しゃがみP×2
ここでバーストだ!

「ちょろちょろしてんじゃねえ」
「バースト投げ!魅せてくれます!」
ここまで読まれている。あせるな。
もう魅せコンなんぞどうでもいい。倒すことに執着しなければ、勝てない。
アンジだからと言って侮っていた。アホめ。
3ループほど起き攻めをくらってから逃げれたが、ダメージ差を覆せることなく1ラウンド目は取られた。

ラウンド2
開幕は・・・ステップだ!
1ラウンド目で押されたからと言って弱気になってはいけない。
むしろ攻めろ。後手に回ったら潰される。
画面端。そのまま攻め殺す。
3ラウンド目
ここからがきつい。おそらく、俺の攻めはもう見切られている。
どうする・・・
とりあえず開幕は逃げる。相手も逃げる。
しばらく膠着。
中間距離からアンジが疾。それに6HS
相手は躍起になって低空ダッシュ。合わせて6Pからコイン。相手バースト。
なんなんだ・・・?
さっきの戦い方を見る限り、こんなことはしてこないはず。
まさか、頭に血が上って・・・だとしたらチャンスだ。
攻めろ。切れ。焼け。斬れ。燃やせ。
倒せ。
コロセ。
レバーを握る手に力がこもる。
固まっている相手を押して画面端。
泣いて、許しを乞え。
どんどん攻める。決してリズムを作らず。それでも途切れることなく。

だが

立ちHS>彩>陰

こちらの攻めは読まれていた。
まさか、さっきの行動は

こっちの攻めを、誘うタメカ?
ソレトモ俺ヲバカにしていタのか?

頭の血が上る。もう考えてなんかいられ

「落ち着いて、冷静になった方がいいわよ」

ふと、女の声がした。
誰だろうか・・・チームメイトではない。
ギャラリーに誰かいるのか・・・後ろを見ている余裕なぞない。

冷静になった。今はこっちが攻められている。
相手の攻めをいなせ。防御に集中しろ。
疾>しゃがみP×2>しゃがみS>足払い
足払いを喰らった後にバースト。
相手は吹っ飛ぶ。冷静に・・・冷静に。
体力はこっちの方が上だ。冷静に寄せ付けないような立ち回りでいい。
しゃがみS。6HS。遠S。立ちK。
うまくバラ巻いて、攻めのきっかけを与えずタイムアップギリギリ。
相手が無理矢理攻めてきたところにしゃがみSからミスト2、ディバコン。
それで試合は終わった。
「二回戦目はチームJEMの勝利!」
終わった・・・
実質、負けていたようなものだ。
あの声がなければ、負けていただろう・・・
ふとギャラリーを見回す。女性はいなかった。
声からするに高校生ぐらいだろうか・・・
一言礼を言いたかったが、いないのでは仕方がない。
台から離れて、三人で各試合の悪かったところを話し合った。

準決勝第一試合が終了したらしい。
しかもジャスティス VS チップという異色の組み合わせ。しかもチップ側が一撃必殺で倒す。
って、異色どころじゃねえ。
ジャスティスなんてありかよ。まずい、使われたらまずい。
だが、隠しアリなんて受け付けの時は言ってなかったし・・・
つまり、隠しキャラが出ているなんて店員以外は誰も知らない。
従って、隠しキャラを使えるというのは受け付け時点ではわからない。
ランダムで引き当てる以外に使用の可能性はないと言うことだろう。
なら安心していい。相手が隠しキャラの可能性は無い。

「準決勝第二回戦、チームJEM VS チームメイたんかわい14メイたん!」
おいおい、どっかで聞いたようなチーム名だな。
というか、そんな名前で出て恥ずかしくないのだろうか・・・
一回戦、「イーディーVSこれはオナゴですよ!」
エディVS鰤(注:鰤は男である)

_______

1-1にもつれ込むものの、金バー>俺キル×2で敗れてしまった。
強気なのが功を奏したか。弱気なのが機会を逃したか。
いずれにせよ、結果に変わりは無い。
二回戦、「エムエー VS 目まい!」
メイVSディズィー。
ここで負けると、俺の出番はない。

_______

実力的には負けていたが、振り回した6Pが運良くカウンター。そこからのフルコンボで事故勝ちといったところか。
勝ちは勝ちだ。大会では事故こそが敵だ。

最終戦、「オレナ VS リコ!」
結局メイいねえのかよ!!
ジャムが相手だ。
ここで勝てば決勝・・・やるしかない。

開幕・・・足払いを読んでステップ。
当たった!投げからコインでミストLV2。
お互い距離をとりつつ機会を伺う。
ジャムにはジョジョブレが有効だ。厨房に見えるが、勝つにはこれしか・・・

とにかくジョジョブレ、ジョジョブレ。
2S、遠Sを振りまきつつ、近づかれたらジョジョブレ。
開幕からペースを握ったお陰で1ラウンド先取。
この調子・・・

2ラウンド目、それでも相手は強気に攻めてくる。
画面端。立ちKを刻んでくる。
穴が空いた。ジョジョブレ!

ジョジョブレ読みの特逆。
凄まじい火力だ。
ガードバランスが上がっていたせいか、こちらの体力は真っ赤だ。
2ラウンド目はとられる。

3ラウンド目。
距離をとる・・・いや、離れちゃダメだ。
離れたら相手は朝凪を溜めてくる。そうなると、コンボダメージどころか立ち回りで強化龍刃におびえなければいけない。
溜めれない距離で立ち回る。これだ。

お互いに牽制合戦。
決して大ダメージを取れる間合いではない。
少しずつ、お互いの体力を削っていく。
安易なぶっぱはせず。隙の少ない技を振って。それでも、無理矢理近づこうとはしない。
相手が来るのを待っている。相手に隙ができて、自分の突っ込める機会を待っている。
焦らず。勝負を急がず。相手のペースに乗らず。
じわじわと押す。間合いの維持力ではこちらが有利だ。なぜなら最初にジョジョブレをたくさん見せておいた。
ダメージを与えるだけが目的ではない。相手にジョジョブレの選択肢を刷り込むためでもある。
じわじわと。だが確実に。相手を画面端に追いやる。
ついに相手は壁を背負った。
だがここで

「おおっと、リコが敬意だ!何を考えているリコ!」
願っても無いチャンス。だが、相手の目論見はわかっている。
焦って突っ込んできたところに逆鱗をぶちこむつもりだろう。
わかりきっている。牽制合戦で俺が疲れていると。俺が勝ちを急いでいると信じ込んでいる。
だが、ここでお前が敬意をしたのが答え。勝負を焦っているのは貴様だ。
なら、幕を下ろしてやろう。お前程度が決勝にいくのはまだ早い。
「ほわっちゃー!」
「ここで逆鱗!どう対処する!」
だから、敬意をしたときから全てわかっている。

「いい的だぜ!」
「ミスト上段!レベル1ながらもカウンターなので受身不能だ!」
こうなることは、わかっていた。

「ダッシュ立ちHSからディバ追加青!拾いなおしでフィニッシュ!準決勝第二回戦はチームJEMの勝利です!決勝戦はチーム恋するヴェノム様 VSチームJEM!なお、決勝戦は20分の休憩のあとに行います!」
ふう・・・神経が削れた。俺が冷静でいられたのも、初戦でかけられた声のお陰だな。
「落ち着いて、冷静になった方がいいわよ」
あの声の主は誰だろうか・・・声質や高さからすると女っぽいが。
この大会に、レディースプレイヤーなんているのだろうか。
大会が終わったら、受け付けで聞いてみよう。
一言、お礼が言いたい。なんの下心もない。あの声のお陰で俺は決勝まで上れた。
だから、お礼を言っておきたい。
次の相手は誰だろうか・・・決勝まで上がってきたんだから相当強いんだろう。
だが、俺たちも強い。誰でもきやがれ。



ごめんなさいジャスティスとか勘弁してくださいOTL
情けないが隠しキャラには勝てねえ。
まともなキャラであることを祈りつつ、対戦台を離れた。

負けた・・・
決勝まで上がったが、優勝ではない。
これでは・・・ギル校入りは無理か・・・

「いや、いい勝負だった。」
背後から声をかけられる。誰だろう。
「ギル校の職員だ。キミの実力はしっかりと測らせてもらったよ」
「でも、負けました・・・一般の人に負けるようなら、ギル校入りなんて無理ですね・・・」
「合格だ」
「やっぱり無理ですか・・・って、ええ!?」
「合格と言った。ギル校入りを許可する」
「俺、優勝できなかったけど・・・いいんですか?」
「ギル校の生徒相手に勝たれては困るよ。そんなことがあればウチの生徒は夏休みを返上してもらわなければなるまい」
くくっ、とその職員は口をゆがめる。
「あれだけやればたいしたものだ。実力云々よりも窮地に立たされても冷静でいられたのを高く評価したよ。メンタルな部分が強いと見える」
「いえ、あれは・・・」
誰かが声援をくれたから・・・とは言えなかった。空耳だったかもしれない。
「よく親に言われたんです。追い詰められたときこそ冷静になれって。」
「ふむ。なにはともあれおめでとう。合格だ。これが資料。書類の方は必要事項を記入して学校の方にもってきてくれたまえ。」
「はい!」
分厚い紙の束を渡したらその人はすぐに去った。
信じられないが、合格した。


その晩、親と話し合い、あっちに住むことになった。
疲れが溜まった。もう寝よう。
まどろみの中で浮かぶのはこれからの生活と強者との出会い。

俺の、新しい人生がスタートする。

退屈だった。毎日が本当に退屈だった。
私、諏訪 露兎(すわ ろう)は学校や塾などと家を往復しているだけの生活だった。
父はとあるそこそこ大きい会社の社長、母は生け花の先生。当然、私も生け花をやらされている。
それでも週に一度は都合よく習い事が無い日もあった。
でも、退屈だった。普段から遊ぶ時間がないので友達なんかいない。
結局、どこにいてもやることなんかなかった。趣味らしい趣味も特になかった。
気が付けば中学生活も残り数ヶ月というところだった。
どうせ、親が決めた高校と大学に行って親の会社である程度高いポストにつけられて働くんだろう。
結婚相手だって親が決めるんだ。でも私はそれに文句をいう事は無い。
親から離れて生きてはいけまい。そもそも、こんな恵まれた環境に文句をつけると贅沢というものだ。
それにしても、退屈だ。親が敷いたレールに沿って生きるだけの人生か。
退屈だけど満足はしている。矛盾しているのだろうか。でも、退屈には慣れてる。
小さい頃は兄が遊び相手になってくれたが、兄が高校に入ってからは退屈で仕方がなかった。
今日も家に帰って。ぼうっとするだけなんだろう。
と、HRでの先生の話も聞かず長々と考えていた。
気が付いたら下校の時間。
「はあっ・・・」とため息をつく。そんなところを見られたからだろうか。
男の子に声をかけられた。
「なあ・・・ちょっといいか?」
「なに?」
相手に目をやる。どうやら私の目つきは少し鋭いらしく、相手を睨みつけるような感じになってしまう。
そんなつもりは全然ない。
しかし、私に声をかけてくるなんて珍しい。さっきのため息はそんなに憂鬱そうだったのか。
この人、織那君だったか。私と一緒で、他人といる所はあまり見かけない。
「暇ならさ、一緒にゲームセンターでもいかないか?面白いもの見せてやるよ」
「ナンパ?」
「違う。お前があんまりにも退屈そうだったから。俺は退屈なのがなにより嫌いだ」
見た感じが真面目そうな人だ。ついていっても問題ない。襲われたら護身術があるし。
「いいわよ、行きましょ。」
「え、そんなあっさり?」
「私は退屈なのがなにより嫌いなの」

学校から徒歩で10分と行ったところだろうか。ゲームセンターがあった。
そんなに広くない。初めて嗅ぐきついタバコの匂いに、少しむせる。
「大丈夫か?こういう場所は苦手か?」
「いえ・・・それより面白いものって?」
「ああ、こっちだ」
にやりと笑って、店の奥に案内される。
「これが、GGXX#リロード。青リロとかギルティとか呼ばれてる。」
織那君が親指で指してみせたその画面には、白髪のキャラと半裸のロボットのキャラが所狭しと動き回っている。
よく見ると動いているのは白髪の方だけなんだけど。
「で、これが面白いの?」
画面上部にある緑色のゲージが体力だとすれば、白髪のキャラは一度で減らされる体力が減りすぎである。
その割に、ロボットの方はまったく減らない。このゲームはなんだろう。
「これはこの白髪のキャラを捕まえて倒すアクションなのかしら?」
「いや、対戦型格闘ゲームさ。そんな表現したのはお前が始めてだよ」
いきなりお前とはなんだと少しむっとしたが、面白いものを見せてくれるんならよしとしよう。
「ええっと・・・つまり、相手の体力を無くした方が勝ちってことかしら?」
「まあそういうことだ」
これが面白いのだろうか。今のままではさっぱりわからない。
「まあ見てなって」
意気揚揚と財布から50円玉を取り出す。
ちゃりん、とコインを入れて画面が真っ赤に染まる。
「俺のキャラはこいつだ」
サングラスをかけて上半身はコートを羽織っただけのキャラ。どう見ても露出狂か変態にしか見えない。
でも、これだけキャラがいるのには驚いた。
相手はさっきのロボット。
「白髪のキャラはどこに?」
「あれはCPU。プレイヤーじゃないよ」
なるほど。どうにもこういうのは疎い。



織那君は勝ちつづけ、私はそれをずっと見ていた。
彼はとても落ち着いていた。自分の間合いを保っていた。私が習っている剣道でも同じようなことをしなければ強い相手には勝てない。
最後には挑戦するものがいなくなってゲームは終わってしまった。
画面の上には25WINという文字。織那君は強いのだろうか。
「面白そうだっただろ?」
「そうね・・・どうかしら」
内心、すごく面白そうだった。ゲームには全然興味のない私でも不思議と心が高揚してしまった。
ただ、自信満々な彼の思惑通りになるのはなんとなくしゃくだった。
「ちぇっ、なんだよそれ。がんばったのになあ」
「ふふ、見てるだけで面白かったわ」
その後、それぞれ帰路についた。外はもう星が瞬いているような時間だった。

私はそれから、暇があるとゲームセンターに行くようになった。
人がいないときを見計らって練習を積む。
私のキャラはジョニー。色々使ってみて、一番しっくりきたのはこのキャラだった。
織那君と一緒というのは偶然である。
ある日、そんな私に乱入が来た。
この時間帯は誰もいないはずなのに。
相手が選んだのはエディ。私が使ったときはそんなに強くなかったから、大丈夫だろう。


完敗だった。相手は空中で長い蹴りを出してくるだけ。
それに無理に対応しようとしてダウンを奪われてしまう。
そこから回転のこぎりのような攻撃を重ねられて崩されて終わり。
3ラウンドすべてパーフェクトに近い内容だった。
だが、それが逆に私のやる気を出させた。
私は負けず嫌いだったらしい。しかも、人と競争するということは初めてだ。
でも、自分じゃどうすればいいかわからない・・・どうしよう・・・

織那君に聞けばいい。明日、聞いてみよう。

二限目になっても織那君はこなかった。明日は来るだろう。

今日も来ない。
今日も。
今日も。
今日も来ない。

それからしばらくして、彼は親の都合で転校したことを知った。
それでも私はギルティをやめなかった。
むしろ、ハードとソフトを買って練習するようにまでなった。
そのお陰か、卒業する頃にはあのゲームセンターに敵はいなかった。
それでも私は強い相手を求めた。自分でもこんな感情があるんだと驚いた。
そして私は思う。ギル校に入学したい、と。
ゲームセンターにパンフレットがあったので持って帰って読んでみた。
その内容たるや凄まじい。まさかこんな学校があるとは。
入学資格は、中学校卒業と書いてある。
行ける。行きたい。とにかく行きたい。
だが親は許してくれないだろう。その夜。

「露兎・・・お前、最近ゲームセンターに行ってるようだな」
バレた。今までバレなかったのがおかしかったんだろうけど。
「そうですけど・・・なにか?」
「もう行くな。お前には害しかもたらさない。ゲームなんぞやるな」
「嫌です」
「なっ・・・親の言うことが聞けないのか!」
「親、ですか?今まで退屈でしょうがなかったのに、唯一の見つけた趣味さえ奪うのですか?それが親なんですか?」
「う・・・む・・・」
父は押し黙る。
「いい加減にしなさい。お父さんはあなたのためを思って」
「違うでしょう?お父さんが思っているのは自分のためでしょう?社長の娘がゲームセンターなんかで遊んでるとわかったら恥になるからでしょう?」
二人とも黙る。だが、流石に一筋縄ではいかない。
「ふむ・・・わかった。ゲームセンターに行くのは勝手にしろ。だが、高校、大学は私達が決めたところに入れ。」
「悪いけど、それはできないわ。私、ここに行きたいの」
バサッ、とギル校のパンフレットを机の置く。
「お前、ゲームの学校なんか・・・一体どうしたんだ?」
「どうもしてないわ。やりたい事が見つかっただけよ」
「お前のやりたい事などどうでもいい。とにかくこんな学校は許さんからな!」
「どーして!?世間体がそんなに大事なの!?」
「世間体などと言った問題ではない!ゲームの学校なんざ入って、将来どうするんだ!」
たしかに、そう言われたら答えようもない・・・
「ほら見ろ。お前は遊びたいだけなんだろ?」
「違うわ!そんなことない!」
目に涙が溜まる。自分のやってきたことが否定されたようで悔しかった。
「父さん、母さん、いい加減にしないか。」
「お兄ちゃん・・・」
二階まで叫び声が届いていたのか、兄が姿を見せる。
「露亞、お前までそんなことを」
「もう露兎は十分父さんたちのためにがんばっただろう?やりたくもない習い事にいかされて遊ぶ暇なんかなかったんだよ。でも父さんたちはそれを承知で強要してた。」
「あ、ああ・・・」
「露兎は父さんたちの人形じゃないんだ。敷かれたレールを歩く人生を露兎は拒否した。なら、露兎の好きなようにさせてあげようよ。どうしてもというなら僕が大学を辞めて今すぐ会社を継いでもいいよ。」
「・・・わかった。露兎の好きなようにさせる。まだお前には会社を譲らんよ。私はまだまだ若いからなw」
この家に、久しぶりに笑い声が響いた。
「お兄ちゃん、ありがとう・・・」
「あっち行っても、がんばれよ」

数日後、私のギル校入りが決まった。

ギル校に入学することが決まった私は、すぐにアパートを借りて向こうに住むことにした。
寮があるらしいが、どうも人付き合いは苦手だ。だから、一人で過ごせるようにアパートを借りた。
アパートと言っても高い値段に見合うだけの設備である。
一軒家の部屋数が少ないだけというか。とにかくなんでも揃っている。
近くに何があるか探索する。
スーパー、コンビニ、デパート、そしてギル校。
ゲームセンターは遠いが、ギル校があるので問題ないだろう。

入学式。
普通の学校と違い、長話などはしない。
校長の短いスピーチだけで式は終わった。
教室に入る。

教室の後ろに筐体がある。教室にアルカディアが置いてある。
筐体には動画録画専用の設備まであるし、時間割が実にギル校らしい。

担任の軽い挨拶のあとに点呼。しっかりと持ちキャラまで言わされた。
驚いたのは、意外にもレディースプレイヤーが多かったことだ。
教室の半分が女。しかし、この学校では性別など関係無い。
休み時間のあと、軽い試合が生徒間で行われた。
結果としては、私はそこそこにいい勝率と試合内容だった。

私は今までではとてもできなかったような「放課後学校に残る」という行動をした。
さすがはギル校とも言うべきか、弱い人など一人もいない。
それとも私が弱いだけなのか。どちらにせよ精進が必要である。
疲れたのでいいところで切り上げる。家に帰って今日の悪いところを見直す必要がある。

朝登校すると早くも対戦を行っている。
教室だけでなく、図書室や体育館ですら対戦を行っている。
そんな私は対策を練ってきたのでやはり対戦する。
そんな毎日を繰り返している後、前よりかは勝率が上がった。
だが、新入生歓迎会という事で一度上級生と戦ったことがある。
結果は惨敗。ありとあらゆるキャラに負けた。
まだ足りないのか・・・それでも私の心が折れることはなかった。

ある日の昼休み。
私はいつものトマトサンドイッチを頼む。
そこでの出来事。もちろん昼休みですら対戦している生徒はいる(私もしたくてたまらないのだが)。
私の斜め前あたりに座った女子生徒が友達と会話している。
その女生徒のメニューは麺類。



「割り箸はこうやると綺麗に割れるんですよ~」



「っっっ!?」
これは驚いた・・・こんな、こんな技術が・・・



でも私はサンドイッチぐらいしか頼まないのであまり関係なかった。
サンドイッチを食べ終わると授業。その合間に対戦。
放課後も対戦。
そんな学校生活はとても充実していた。
この学校では日誌というか、一日の授業が終わるとその日の対戦の反省点や対戦相手にアドバイスを与えるような文章を作文用紙に書かなければならない。
上級生になるとそこらへんはパソコンでできるらしいのだが、私達はまだ一年生ということでこういう待遇らしい。
そういう毎日の作文は教室の戸棚に、書いた生徒のキャラ別で保管されている。
エディ対策を立てたいならエディの作文を、ポチョ対策を立てたいならポチョの作文を見ればいいというわけだ。
そんなシステムのお陰か、友達のいない私でも有益な情報を入手することができた。

授業と対戦の日々。そうして私の一年間は過ぎていった。

ギル校から合格通知をもらった俺は、学校の近くのアパートを借りた。
他人に気を使うのが苦手なので寮には入らなかった。
けどさすがに隣人には挨拶ぐらいしておかなければならない。
左隣に人は住んでいないみたいだ。右隣には「諏訪」という表札がかかっていたので人は住んでいるのだろう。
この名前にはちょっとした思い出があるが。相手は俺のことなぞ覚えてはいない。
引越しそばを持っていこうと思ったが、どうやら留守らしい。
まあ昼過ぎだからいないのは当然かもしれない。明日出直そう。
近くのデパートまで必要なものを買いに出かける。
とは言ってもあらかた家から持ってきてあるのでほんのわずかの生活雑貨と食材だけ購入した。

翌日、日曜日だというのに昼からギル校に用事があるので朝から隣に挨拶をすることにした。
用事といっても書類の記入と職員と対戦(恐らくこれはただの遊びだろう)である。まあ用事には変わらない。
インターホンを押してみる。
ガチャ

「・・・」
「・・・」
肩の辺りまで伸ばした艶やかな黒髪と整った顔立ち。凛としていて、男のようにも女のようにも見える。
まさかあの諏訪だったとは・・・
「おそばに参りました」
そばを差し出す。いや、ギャグを言ってる場合じゃない。
「えっと、久しぶり」
「ええ、お久しぶり。人にギルティ薦めておいて一言も無しに消えたからどうしたのかと思ったわ」
冷ややかに、たっぷりと嫌味を込められて言われた。
「いや、それは・・・」
「一 言 も 無 し にいなくなったことなんて何にも思ってないわよ?」
参った。どうやら相当ご立腹らしい。
急に親の転勤で引越しになったから話す時間なんてなかっただけなんだけど。
「それはその・・・ごめん」
素直に頭を下げる。
「・・・ふう。まあいいわ。あなたのお陰で今の私があるわけだし。」
「結局ギルティやってるのか?」
「私、ギル校の生徒よ」
驚いた。そこまで成長したのか。
「ちなみにジョニー使いよ」
キャラかぶってるし。
「あなたがいないお陰でずっと独学だったけどね。」
まだ引きずってやがる・・・ここは話題変えだ。
「俺もギル校なんだよ。クラスはまだわかんない。」
「私は入学して一年経つから二年生。中に入ってゆっくり話でもしない?ていうかギルティしない?」
こいつ、ギルヲタだ!
「ごめん、これからギル校行かなきゃなんないんだ。」
「ああ、職員と対戦しなきゃなんないのね」
「なんで知ってるんだ?」
「転校生は職員と対戦してレベルを踏まえてからクラス割が決まるの。」
「へえ、じゃあ一緒になれるかもな」
「何も言わずにいなくなるなんていうのはお断りだけどね」
「いや、だからごめんて・・・」
「いえ、冗談よ」
目が笑ってない。
「とりあえず頑張ってね。おそばありがとう。」
「ああ、じゃあ。」

びっくりした・・・あんなおとなしそうな一般人の諏訪がここまでのギルヲタになってるとは・・・
あいつと一緒なクラスになれるようにがんばろう。