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次にやってきたのは紙野の希望で美術部。
先程の剣道部とは違い、部員も大勢いる。勿論描くのはギルティのキャラ。
一応ちゃんと活動しているようであったが、漫画を描く者もいればキャラのエロい姿を描く者もいる。
内容に関しては無法地帯だった。
他にも色んな部を見て回った。
何故か一回転してからバットを振る、ホームラン率100%のモンスター野球部。
部員全員が極度のあがり症のため、酒を飲んでから練習するという声優部。
要するに変な部活しかなかった。

「あ~~~疲れた~~~」

2時間近く歩き回って流石に聖も疲れたようだ。
こいつは剣道(あれを剣道と言っていいのか疑問だが)もやってたし。

「休憩するか」

人気も疎らな学食で休息を取る事にした。自販機で各々ジュースを買って席に座った。

「…そういえば蘇留はどうしたかなぁ…」

紙野が思い出したように呟く。

「青春ですなぁ…紙野もこの一度しかない青春を満喫しないと駄目だぞ?」
「おっさんかアンタは…」

横から聖のツッコミが入ったその時

「あれ~?毅君じゃないですか」

どこからか笑いを含んだ声が聞こえてきた。紙野の顔色が一気に青ざめる。

「お前何やってんだよ?寂しかったぜ?また俺らと遊ぼうぜ」

(永園…!)

永園は2人の男を従えていた。名前は知らんが見覚えのある顔だ。同じクラスの奴か。

「なんだよ…雑魚も一緒か」

俺と聖を見てニヤニヤと笑みを浮かべる。こいつの顔を見ていると言い様のない感情が沸いてくる。
怒りなのか憎しみなのか…理性がその奔流に飲まれてしまいそうになる。

(…抑えないと)

せめて俺が永園に勝っていればすぐに追い返すことも出来たんだろうが…如何せん負けている。
聖も俺と同じ心境なんだろう。遣る瀬無い表情を浮かべている。肝心な時に郁瀬はいないし…

「金ねェんだ。貸せよ」

紙野の頭をまるでバスケットーボールでも持つように鷲掴みにする。

「やめろ!」
「お前には関係ないだろ?なァ毅、貸せよ」
「関係ある!友達だ!!」
「ハッ!泣かせるねェ」

ダメだ…喧嘩はまずい。4対3で有利だが三綾と紙野は戦力になりそうに無い。
実質2人……いや、勝てることは勝てる。でも教師に知れたらまずい。

「嫌だ!!」
「あ?」
「も、もう永園君には屈さないって決めたんだ!!」

食堂が水を打ったように静まり返る。

「おいおいふざけんなよ毅君?いまここでボコボコにしてもいいんだぜ?」

ぶん殴ってやりたい衝動を必至で抑え―――

―――ん?

いや、待て。

待て待て待て。

待て待て待て待て。

落ち着けよ"松瀬 緒土"。何を抑える必要がある?"苛め"を見過ごすと言うのか"松瀬 緒土"。
簡単じゃないか。そうだ。やれよ。お前1人でやれるじゃないか。こんな奴等…こんな害虫すぐに殺

「待てよ」

永園が連れている男の言葉で思考が中断された。

(クソ…何考えてんだ…マジで落ち着け、俺!)

「ちょっと待てよ翼。ギルティで決着つけるってのはどうだ?チクられたらヤべーだろ?
 もしその毅とか言う奴が勝ったら見逃す。翼が勝ったら一生奴隷ってことで」

永園の仲間の1人が提案した。類は友を呼ぶ…永園以外の2人もやはりDQNか。

「そういやァ、もうすぐテストだったな…良し。面白そうだし、それでいくか。いいよな?毅」
「う、うん…わかった」
「ハハ!これで当分金には困らねェな!良し、行こうぜ」

永園はそう言うと仲間を引き連れて食堂を出て行った。
皆胸を撫で下ろしていたが、俺は全く別のことを考えていた。

(…やっぱまだ残ってたのか、"アレ")

「あたしアイツ大っ嫌い!!」
「好きな奴なんていないだろ。それより…大丈夫なのか、紙野」
「うん…勝てばいいんだ」

(こいつ…変わったな)

紙野の目に恐怖の色はなかった。

「緒土…」

その時背筋がゾクッと凍るような氷点下の声が耳元で響いた。

「ぎゃあああああああああああ!!!!」
「叫ぶな馬鹿ッ!!」

耳をギュっと抓られる。

「いッてええええええええええええ!!!」
「五月蝿いっ!!」

ギュっ。

「いッてええええええええええええ!!!」
「五月蝿いっ!!」

ギュっ。

耳を抓られると痛くて叫び声が出る。叫ぶと耳を抓られる。吸血ループもビックリの永久ループだった。

「なんだよ!?」

横を見るとツンツン頭の少女が突っ立っていた。こいつの絶対零度の声だけは未だに慣れない。

「蘇留じゃないか…郁瀬君はどうしたの?」
「……ついさっきまで順調だった。冊子を見ながら次に行く部活を相談してたんだ…」
「それで?」
「いきなりだった…弓太が『ウホッ』って叫ぶや否や、もの凄いスピードで走り去って…」

あいつはいきなり"スイッチ"が入る。珍しいことじゃない。しかし何らかの理由が必ずあるはずだ。

「緒土の所にいったんじゃないかと思って…」
「こっちには来てない。ふむ…冊子が怪しいな」

部活紹介の冊子を開く。その部活はページの一番後ろに掲載されていた。
大会での成績や部員名簿などが記載されている。活動内容は何故か書かれていない。
一番最後の行に『部長のコメント』と言う欄がある。そこを見て俺はすぐにわかった。
郁瀬がビリヤード部に行ったに違いないと言うことを。

『  や  ら  な  い  か  』

そこには太く、デカイ字でこう書かれていた。
ある特殊な属性を持つ人間は、この一言を目にするだけで人格が一変してしまうと聞いたことがあった。

『オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!オウアー!ネッテロー!!』

どことなく哀愁を含んだ右渡の声が響いた。こうして部活見学は終わった。
数々の遺恨を残して。

テストの日がやってきた。

この2週間はとにかく練習の日々だった。聖と三綾にダメだしされる日が続いた。
その甲斐あってか俺も少しは上達したらしい。vs聖の勝率も最近上がってきた。
ざっと20%と言った所だ。まだまだ低いが確実に進歩している。聖はもう勝てない敵じゃない。倒せる。
ただ、勝率が上がったのが他でもない聖のおかげだと言うのが少し癪だった。
しかし俺はまだマシな方だ。一方の三綾…これはかなり厳しい状態にある。
まずvs郁瀬の勝率…10%
これは三綾が弱いという訳ではない。郁瀬が強すぎるのだ。はっきり言って俺たちと住む世界が違う。
聖ですら勝率は30%に届かない。俺は…一回も勝ったことが無い。
『勝てる気がしない』戦って最初に思った感想だ。
とまぁこんな怪物を相手にしなければならない三綾なのだが…。

「うあ~~私絶対負けちゃうよ~」

机に顔を伏せて鬱に入っていた。朝からずっとこの調子。

「元気出せって。何回か勝ってるんだ。無理ゲーじゃないだろ。そんなんじゃ勝てる試合も勝てないぞ」

特にこいつの戦闘スタイルは自分の体調がダイレクトに響いてくる。不安定な奴だった。
良いときは信じられないくらい強いが、悪い時は酷い。(それでも俺とは比べ物にならないくらい強いが)
三綾は明確な戦闘スタイルというものを確立していない。
その時の気分次第でガン攻め、待ち、ぶっぱ、電波などを使い分ける。(意識はしていないだろうが)
感覚的な戦闘スタイルだから不安定。1Rごとに変わったりすることもある。
だから人対策には滅法強い。というか三綾 俣奈への対策を立てることは不可能に近い。
そこが強みでもある。さて今日はその戦闘スタイルが吉と出るか凶と出るか。

「絶対負ける~」

大凶。

(試合までに調子良くなってるといいんだけどな…)

いつもは教室の後ろに置かれている筐体だが、今はド真ん中を占領している。
テストをしている間、他の生徒達は周囲360°から試合を見て勉強するわけだ。
対戦している者が大会などで緊張しないように鍛えるという意図もある。
視線が注がれるとテンションが上がる俺と郁瀬には好条件だった。逆に紙野と三綾には悪条件。
聖は特に影響無し。相対的に見れば恐らく有利だろう。緊張している者を見るとそう思う。

「ではこれからテストを開始する。制限時間は99秒。1R先取」

一気に教室内の空気が張り詰める。

「まずは名簿1番から。郁瀬 弓太と三綾 俣奈」

(いきなりかよ…)

三綾を見ると目に涙が溜まっていた。

(御愁傷様)

だが、腐っても三綾 俣奈である。実力は本物。郁瀬に勝機を持ち得る数少ない人間の1人だ。
ただでは負けないはず。いや、調子如何では普通に勝てる。

「両名、前へ」
「はい」「はい」

三綾の顔つきが変わる。眼光に鋭気が宿る。こんな真剣な三綾を見るのは初めてだ。
さっきまでの泣き顔とはまるで別人。
一方の郁瀬…その表情に湛えていたのは、笑み。
こいつは戦うのが大好きなんだ。何よりも。

(正確には『勝つのが好き』なんだけど…)

キャラを選び、画面が切り替わる。
戦いの幕開け。勝者は闘劇への長い階段を一歩上がり、敗者は一歩降りる。

ヴェノム…6以上の有利がつくカード。対策通りに行動していればまず負けることは無いと考えていい。
ハイリターンな技を持っていないが大きな原因だ。頼りになるぶっぱも無い。
有利なキャラには強いが、不利をひっくり返しにくい。そして彼女の実力は中の上程度。
以上を統合して考えると…

(まぁ、いつも通りやってれば勝てる)

『ヘヴンオアへール!デュエルワン!レッツロック!!』

まずは浮遊で制空権を握る。JKの前にはヴェノムの6Pと言えど全く役に立たない。
得意のシューティングはドランカーで反射。
6Pとシューティングを封じたヴェノムなど、翼をもがれた鳥。
HSカーカス、空投げ…くらったところで何とも無い。屁みたいなものだ。
その非力さで何が出来る?何も出来ない。

『見誤ったな!!』

―――グシャァッ!

―――何だ?一体何が…?
JKが空を蹴って―――瞬間移動―――上―――JHS―――CH―――ダウン―――

(ちっ!まずいッ!!)

ヴェノムの手からボールが現れる。ダウンしているエディに重なる。
瞬間移動で上を取る…こんな戦法はいままでやってこなかった…やはり彼女の動きは不規則過ぎる…!

『見誤ったな!!』

起き攻め。瞬間移動からのN択。ダメージこそ低いが…

キンッ!

『行くぞ!』

ドドドド!

瞬間移動>JSからストの中段が当たる。そのまま近S…Sカーカス…2K…足払い。

『やってくれたな!!』
『見誤ったな!!』

(バースト読み…!)

再びJHSで地面に叩きつけられる。起こす気はない…彼女はこのまま俺を殺しきるつもりだ。

(いい読みをしてる…調子いいみたいだ。
 最強キャラエディと言えど切り返しは弱い。早く何とかしないと…)

ガッ、ガッ―――

固めにカーカスとステ青を混ぜられる。ガードゲージが凄まじい勢いで蓄積されていく。

『行くぞ!!』『カウンタ!』

(スラスト…くらった…ッ!!)

『SHOT!』

ガトリングからステ青。GBの上昇が響いている。『カウンタ!』の声が何重にも重なる。ダメージは5割弱。

『デュービスカーブ!!』

PK陣からJK弾きの起き攻め。

―――ガッ

下段の足払いをなんとかガードする。しかし固め続行。
ここがヴェノムの恐ろしいところだ。2択で崩しそこなっても攻勢をある程度維持できる。

(N択の見切りは得意じゃない……間に合うか?)

―――おかしい。もう点滅?さっき固めた時も早かった。早すぎた。
それに、何故FDを張らない?何を考えて―――

(まさか…!?)

『カーカスラ…』―――キィンッ!!

『カウンタ!』

気付いた時には遅かった。エディの体が白い光を放った。デッドアングルアタック。攻守逆転。
そうか、直ガしていたからGBが…。
緊張しすぎて気付けなかった。操作に集中するので手一杯だった。
大会ではもっと大勢の人間の視線に晒されることになる。耐えられるのだろうか。

『回る!!』

(余計なこと考えてる場合じゃないよ…!)

『悪いなァ』

JKから足払い。

(く、くらっちゃった!?嘘!?普段ならエディの中下2択なんてまず当たらないのに…!!)

『抜かったな!!』

(抜かってない。緊張しすぎて…)

そのまま分身と絶妙な連携でコンボを叩き込まれる。まるで曲芸だ。ヴェノムの体が翻弄される。
ドリハメ>ギャラリーまでキッチリくらって画面端ダウン。残り2割。

『ドリル!!』

本体のみの起き攻め。ドリルの持続の後半を当ててくる。

キンッ、キンッ

2Kなどの小技が鬱陶しい。だが所詮は本体のみの固め。崩しはダムドにさえ注意していれば…

―――グシャァッ!

この通り、ダムドをジャンプで回避してJHS。
足払いでダウンを奪って生成まで繋ぐ。このまま倒さないと…。

『行くぞ!』

ガガッ

Pボールを重ねて中段のスラスト。ガードされたがまだ有利。逃がさない。倒す。

『シャアァー!』

(投げ返し…!)

距離が離れた。

―――「俺、起き攻めはあんま得意じゃないんですよ」
紙野さんの家で対戦しているときに彼はそう言っていた。エディ使いにしては珍しい。
彼は起き攻めの為にエディゲージを温存しておくと言うことは滅多にしない。
とにかく隙があれば分身召喚。常時エディによる立ち回り強化に重点を置いている。
最初は私への対策だと思った。
自分で言うのもなんだが私はN択に強い。動体視力と反射神経が良いからだ。
先天的なもので、普通の人とはかなり違いがハッキリ出る。テスタの6Pも高確率で見切れる。

―――ゾワァッ

分 身 召 喚 。
エディの放つ威圧感が一気に増大する。シューティング?却下。ドランカーがある。
下手に打てば自分の首を締める事になる。
ならどこから攻め…ダメだ…死角…無―――

ゾ、ゾワ、ゾワァッ、ゾワァ…

分身が無気味な音を立てて近づいてくる。気味の悪い動き。まるで意思があって、生きているみたい。

(…余計なこと考えちゃダメ)

考える暇は無い。分身を消す。
分身がいなければ多少の攻撃はくらっても大丈夫。強気に攻め込むしかない。

バシッ

ダッシュから2Sを繰り出す。分身が消えた。
後は回復する時間を与えずに一気に畳み掛け―――

『喰らい尽くしてくれる!!』

(あ―――)

『喰らい付け!!』

(分身は…囮―――)

『不覚…』
『こいつの体を頂くか…』

「そこまで!勝者、郁瀬 弓太!」