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・・・ 聖はピンク色のパジャマを着ていた。まだ熱があるのか、頬が少し赤味を帯びている。 ついさっきまで眠っていたんだろう。髪に寝癖がついてるし、なんだか眠たそうだ。 我ながら不謹慎だけど、弱々しくて不健康な聖を見るのもなんだか新鮮でいい。 「ちょうど暇だったのよ。なんかして遊ぼうよ」 「体は大丈夫なのかよ?」 「ん。多分」 「でも何をするんだ?ギルティか?」 「う~ん……何しよっか」 流石に病人にギルティは酷な気がする。多分本来の実力なんて出せないだろうし。 「ねぇねぇ!これやろうよ」 『オメーの出番だ、ゴハン!』 『カカロ、カカロットオ、カカ、カ、カカロッ、カカロットオ……』 何故か三綾の提案で『超○闘伝2』をやることになった。 スーパーファミコンのコントローラーなんて久し振りに持つ。なんか異様に薄くて違和感が付き纏う。 聖が選択したのはゴ○ウ。なるほど、火力も高いし優秀な無敵技を持つ強キャラだ。 しかし敵ではない…ククク……俺のトラン○スでぶっ倒してやるぜ……。 「ステージは"荒野"でいいよね」 「何ィッ!?」 「まさか『"海"がいい』なんて言わないわよね?」 「くっ……聖、きさまこのゲームやり込んでいるなッ!」 「答える必要はない」 そのまま聖は"荒野"を選択してしまった。はっきり言ってかなり不利な闘いだ。 伝家の宝刀スーパースライディングハメを封じられたトラン○スなど、犬を失ったザッパみたいなもんだ。 と言うかゴ○ウは強すぎる。しかもよく見るとちゃっかり裏技使って小型化していやがる。 ここは近距離で闘うわけにはいかんな…… 『たぁっ!』 開幕からガン逃げして空を飛び、すぐに気を溜める。 いくらゴ○ウが強くても遠距離戦は5分だ。しかし対する聖も追って来ずに気を溜めている。 最初に逃げたせいでこちらの方が若干気の溜まりが遅い。ここは先に勝負を仕掛けるッ!! 『バー○ングアタック!!』 ずびーっと両の掌からビームを出すトラン○ス。 『はっ!』 か○はめ波をバー○ングアタックにぶつけてくる。 (げ……撃ち返し!?) 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 血管が切れそうな勢いでボタンを連打する。 ―――ドォォンッ! 負ける。 これが何を意味するか、このゲームをやった者なら誰でも分かる。 以後、必殺技>撃ち返しが延々と続き、ただの連打力勝負になってしまう。 接近すれば太○拳>メテオスマッ○ュのコンボで3割。はっきり言って勝てる要素は無かった。 その後も1時間ほど超○闘伝2をやった。結局スーパースライディングハメを奪われた俺は全く相手にならず、聖と三綾のタイマン勝負となった。 今は2人ともゲームを止めてぺちゃくちゃと喋っている。 「凄い凄い!俣奈って髪解くとなんかお嬢様って感だね」 「聖ちゃんも結んだ方がかわいいよ!ポニーテールとかも似合いそう!」 正直言って居場所が無い。今も1人寂しく漫画を読んでいる。 「ねぇ聖ちゃん、松瀬が虚ろな目してるけど……」 「気にしない気にしない」 ははは……やっぱりネウロは面白いなぁ。ドーピングコンソメスープとか並の発想じゃないぜ……。 ・・・ 「じゃあ明日も来るね」 「えっ、そんな……悪いわよ。明日はクリスマスじゃない」 「でも私予定ないし…」 「俺も無いぞ」 「なら2人でどっか行って来ればいいじゃん。たしか学校の近くのゲーセンでイベントがあるはずよ。  それに、あんたたちに風邪をうつすわけにもいかないでしょ?」 という聖の提案で三綾とゲーセンに行くことになってしまった。 まぁ明日は何の予定も無かったし、家にいてもどうせゴロゴロしてるだけだから別にいいか。 「イベントって何だろうね」 「さぁな」 帰り道であれこれと予想を立ててみる。 「じゃあ明日な」 「うん。じゃあね」 どうせゲーセンが催すイベントなんて1つだけ。多分大会でもやるんだろう。 クリスマスを1人で寂しく過ごすギルヲタへのプレゼントって所か……。 12月25日、クリスマス。キリスト様の御降誕を祝う日。 しかし日本では町がバカップルで溢れ返る日として知られており、本来の意味は完全に霧散してしまっている。 キリスト教信者意外には特別な意味を持たない1日のはずなのに、何故かみんな浮かれて騒ぐ。 もちろんギルヲタにとってはどちらの意味においても全く関係のない日である。 なのに、俺は今バカップルが跳梁跋扈する夜の町を歩いている。 目が痛くなるような電飾で飾られた店と、それに負けず劣らず派手な、赤いサンタの服を着た店員。 道には子供連れの家族、そして大量のバカップル。 人、人、人……。 一体何をやっているんだ、俺は。やっぱり家でコタツに入りながらみかん食ってギルティしてれば良かった。 クリスマスに1人でノコノコ町に出て行くなんて、自分のみじめさを実感させられるだけだ。 いつもより気温が低く感じるのはそのせいなのか。あまりの寒さに自然と背中が丸くなってしまう。 雪が降っていないのがせめてもの救いといていいだろう。 「あ!松瀬!」 待ち合わせの場所に来るとすぐに三綾に声を掛けられた。 「もう来てたのか…早ぇな…」 「そう言う松瀬こそ。まだ10分前だよ」 三綾はいたって普通の格好だった。なんの可愛げも無い、地味なコート。 いつも通りの姿。ただ1つ違う点があるとすればそれは 「お前って結構髪長いんだな…」 髪を解いているという事。 普段結んでいるから良く分からなかったが、腰の辺りまである。 「やっぱり結んでた方がいいかな…」 「さぁな……俺にはオシャレとかいうもんは分からん」 「そうじゃなくて、松瀬の主観で」 そう言えば昨日聖が「俣奈は髪を解くとお嬢様って感じ」とか言っていたような気がする。 その時はネウロに夢中で気がつかなかったが、なるほど確かにそうかもしれない。 普段の子供っぽいところを見すぎているせいか、ギャップが新鮮だ。 「いいんじゃないか」 「ほんと……?」 「ああ。それよりさっさとゲーセン行こうぜ。寒くて死にそうだ」 「う、うん……そだね…」 2人並んで歩き出す。髪を解いた三綾が新鮮で、必要以上に目が行ってしまう。 見た目は確かに大人っぽくなってはいるが中身はいつも通りの三綾だし、地味すぎる服装のせいでお嬢様って感じは全然しない。 コートは茶色でスカートは灰色。地味過ぎる。 なんでよりによってこんなに地味な色なんだ。もっと他にあるだろ。 「っつーかお前スカートなんかはいて寒くないのか?」 「ちょっと……」 女の宿命と言うヤツか……朝学校へ行くたびに男に生まれて良かったと思う。あれは絶対寒いはずだ。 でも今日は学校なんて無いんだし、ズボンでもはいて来れば良かったのに。 「マフラー使うか?」 「えっ、いいよ……慣れてるから…」 「マジかよ…そうは見ないぞ」 「うわっ!冷てぇっ!やっぱお前やせ我慢してるだろ!」 手を握られる。一気に顔面がカーッと熱くなる。 「ま、松瀬の手はあったかいね……」 「そうかぁ?お前の手が冷た過ぎんだよ」 なんで松瀬なんかに手を握られただけでこんなに照れてるんだろう。なんか……バカみたいだ。 「ほら、巻いとけ」 そう言って白いマフラーを手渡される。 「え、いいってば!平気だよ!」 「お前マフラーの事舐めてるだろ。こんなのでも有ると無いとではかなり違うんだぞ?」 「でも……」 「まぁ巻きたくないなら別にいいけど」 「あ……」 「ん?」 「やっぱり借りる……」 そんなやりとりをしながらゲームセンターへ向かった。 ・・・ 店の前に立てられた大きい看板には『クリスマス特別企画!!』と言う文字。 そしてその下には……『カップル限定2on2!!』 (これって…) 松瀬の顔を見る。 「まぁ入ってみるか」 「ちょっとちょっと!!駄目だよ!!」 「なんでだよ」 「書いてあるでしょ?」 看板を指差す。 「ああ、そんな事か。別に本物の恋人同士じゃなくても大丈夫だ。確認する手段なんて無いんだからな」 ……たしかに本当の恋人同士かどうかなんて見分けることはできない。 『本当の恋人同士』なんてことは誰にも決められないんだ。 当人でさえ。 相手も自分を愛してくれている、なんて断言することは不可能。証明することも出来ない。 恋人や友達なんて関係は、単に互いの信頼と言う一点のみによって支えられて成り立っているんだ。 「さっさと入ろうぜ」 「う、うん…」 ・・・ 意外とすんなりエントリーできた。クリスマス特別企画と言うことで同キャラチームもOKだった。 ゲーセン内は異様な雰囲気だった。参加者はどいつもこいつも気合が入っていない。 いちゃいちゃと惚気ているばっかりだ。 「優勝できるといいね」「僕らの愛は無敵さ!」そんな頭の痛くなる台詞が飛び交う。恐るべしバカップル。 「三綾…勝ちに行くぞ」 「あれ?なんか気合入ってるね?」 「それではこれよりクリスマス特別企画、カップル限定2on2を開催します!  一回戦はチーム『ソル×カイ』vsチーム『フォモーズ』です!」 「おい弓太……あのフォモーズってチーム…」 「あ…兄貴と三綾さんッスね」 あの2人…そう言う関係だったのか。カップル限定の大会に出てくるって事は間違いない。 そうか…そうだったのか…。 「やっぱり俺たちも出た方が良かったんじゃ…」 「せっかくのクリスマスにギルティなんてやってられるか。そろそろ他の所へ行くぞ」 弓太と緒土を引き合わせるわけにはいかない。 そそくさと弓太を連れてゲーセンを出た。しかしこれからどこへ行こうか……。 「へ~~い、そこのバカップルぅ~~ちょっと占いやってみなぁ~~い?」 背後から間延びしまくった声が聞こえてきた。聞き覚えがある。 「雹…お前こんな所で何やってんだ」 「あ!?蘇留!?やけにちっこい子だと思ったら蘇留だったのか~」 「貴様…」 「あ~!ごめんごめん!!そんな怒らないでよ~冗談だよ~」 「何やってんだお前」 「占い」 うらない……?あの雹が?機械よりも論理的な思考を持つと言われている赤井 雹が? 「何故」 「え~っとね~……お金になるから」 怪しい……絶対裏があるに決まってる。 と言うか…夜にこんな所で女子高生が占いなんてしていて大丈夫なんだろうか。 補導されたりしないだろうな……やはりこいつは特異な女だ。未だに性格を掴みきれない。 「ね~占いやってみない?」 「ふん、下らん」 占いなんてモノは自我の無い、意志薄弱な者が頼る幻想に過ぎん。 ある種宗教に近いモノと言っても過言では無い。占いも宗教も、自分で何も出来ない弱者の拠所。 己の道を己で決められないような屑の逃げ道だ。 だが私はそんな弱い人間じゃない。私は強い。誰にも頼らずに生きていける。 「面白そうっスね」 「なっ……!?」 「あ、蘇留さんは占いとか嫌いなんスか?」 「そ、そんなことはないぞっ!」 「それじゃあ~2名様占わせてもらいま~す」 (ちっ……) 「さっそく蘇留から占ってみるね。血液型と誕生日を」 「B、6月9日」 「え~っと…紙野 蘇留……総画が50画で……ふむふむ……  まずクールで知的。破天荒な性格でプライドが高く、意志も強い。  でも実は子供っぽくて打たれ弱く、すぐ泣いちゃう。それを隠す為に強く振舞う。  ギャンブル運は全然無いくせに一発逆転に出る癖がある。  堅実に行けば大丈夫だけど、性格がそれを許さない……と出ております」 実は子供っぽくて打たれ弱い…すぐ泣いちゃう…だと…?き、聞き捨てならん…! 「じゃあ次はそっちの人~」 「え、あ、はい。え~と、名前は郁瀬 弓太。血液型がO型で……」 「あ……蘇留ちゃんだ……」 という声に反応して後ろを振り向く。三綾 俣奈と…我が宿敵、松瀬 緒土。 ちっ…こんな所で見つかってしまうとは…。 あいつら大会に出てたんじゃなかったのか…もう終わったのか…。 「蘇留と郁瀬じゃねぇか。何やってんだ?」 「あ、兄貴!!実は占いしてたんスよ!!」 「占い?」 緒土が不思議そうな顔をして弓太と雹と私の顔を見る。 「蘇留、お前占いなんて信じてんのかよ?なんか意外だな」 「ちっ、違うっ!!私は占いなんて信じてないっ!!」 「も~~悪い結果が出たからってそれは無いよ蘇留~~」 「黙ってろッ!!」 キッ!と雹を睨みつける。とにかくここは早く退散しなければ。弓太がまた暴走するかもしれない。 「で……そっちの前髪が異様に長いリアルヴェノムはどちらさん?」 良し。緒土の注意が雹へ逸れた。 「お前も占いでもやったらどうだ。私たちは用事があるからもう行くぞ」 「あ!蘇留さん!待って下さいー!」 ・・・ 「赤井 雹ちゃんだよね?」 「あれ?なんでぼくの名前知ってるのかなぁ?」 「一回テストで対戦したし、修学旅行のときビーチバレーで試合したよ。覚えてない?」 「あ~~はいはい。なんとか…俣奈だっけ?」 「三綾だよ」 「みあや…?言いにくいなぁ……呂律回んないから『みゃー』って呼ぶね」 「みゃ、みゃー……」 いきなりリアルヴェノムこと赤井 雹に主導権を握られる三綾。 この雹と言う女……なんかスゲー不気味だ。負のオーラを感じる。なんなんだこいつは? 「で…お前はこんなとこで何してるんだ」 「君達は知らないかもしれないけど、占いってのはいいお小遣い稼ぎになるんだよ。  なんてったって元手が掛からないからね~~。ローリスクミドルリターンってヤツ。  君らみたいなバカップルを片っ端から捕まえていけば一日で結構儲けられるよ」 まさか自分達がバカップル扱いされるとは夢にも思わなかったぜ……。 「で、占いって?」 「姓名判断&血液型&誕生日占いなんだけど」 「へ~~面白そうだね」 女って何でこう占いが好きなんだろう。俺は占いなんて一切信じない。 誕生日占い然り、血液型占い然り、細○数子然り。 自分の運命は自分切り開くものだ。信ずるはただ己のみ。 実体の無い幻想に己の未来を委ねるほど俺は弱くない。 「じゃあみゃーからやるね」 「うん!えっとね、AB型で誕生日は8月13日だよ」 とは言っても、大半の女は遊び半分でやってるだけ。 まれに真性もいるみたいだが…三綾はそんな感じでもない。 「え~~っと~~三綾 俣奈…っと……ん~~なかなか悪いね~~  総画34画は『崩壊型』で、独特な雰囲気が特徴。悪く言えば変人。  運気はかなり不安定で、若いうちは大丈夫だけど歳をとると苦難に見舞われて大変。  でも数奇な運命を味方につければ凄い才能が出るってさ」 「もしかしてあんまり良くない…?」 「うん。ってか凄く悪い。10段階評価で言えば『2』ってとこだね」 「………」 「ハイ次~~名前は?」 「松瀬 緒土、B型、4月14日」 「あれ…どっかで聞いたよう名前だなぁ…」 「どうした?」 「あ、ううん。なんでもない。え~と~松瀬 緒土ね~~……ハイ!出ました!!  う~~ん……ちょっと言いにくいんだけど…まず総画が44画で…とりあえず運気は最悪」 占い師が「とりあえず運気最悪」とか言っていいのかよ……。 「この画数の性格は「二極型」で、天才か狂人かの2択。  上手く行けば科学者とか発明家で、ちょっと道を逸れると知能犯タイプの犯罪者。  吉凶の変動も激しいし、良かったら大丈夫だけど悪かったら落ちるとこまで落ちるって感じかな。  性格は束縛を嫌い、自由を愛する…既存の枠にとらわれない柔軟で奇抜な発想。と出ております。  10段階評価で言えば文句無しの『1』」 「しょ、将来は犯罪者……それマジか…?デタラメだよな?」 「本当だって。ちゃんと有名なサイトで調べてんだもん」 「"サイト"?」 「あっ!ごめん!うそうそ!!なんでもないよ~~」 そう言ってニコッと笑う赤井。(と言ってもヴェノム並みの前髪のせいで表情は良く見えないのだが) 「…………」 そう言えばさっきからカタカタと携帯電話のボタンを押すような音が鳴ってた気がする。 「ギャンブルでは強運を発揮するけど、自信過剰に注意。  あと惹かれる女性のタイプは『笑顔のかわいい女の子』だってさ」 いくら占いなんて信じてない俺でも「将来は犯罪者」なんて言われたら流石に少しへこむ。 「ま~そんなに落ち込まないでよ。2人の相性は悪くないよ。  2人の負のオーラが同調してるとかそんな感じだね。  特にこの恋愛相性なんて最高クラス。  『ラブラブ度数98%!2人の相性は最高!一度火が付いたら誰にも止められない!と出ております』」 その言葉を聞いて、三綾は俄かに頬を赤らめた。 なんだ―――気持ち悪い―――違和感 何故かは分からなかった。赤井のその言葉を聞いた時、もの凄く変な感じがした。 例えるならそう……ずっと女だと信じて疑わなかったブリジットが実は男だと言われた時のような感覚だ。 其れを何百倍も強烈にした感じ。 なんだ……胸に……胃の中に……ドロッとした異物が流れ込んで来るような感覚。 かと思うと、胃袋の中身がせり上がって来るような、嘔吐感にも似た不快感。 之は拒絶する…拒否反応か? 否……対応出来ないだけだ。 飲み込める筈なのに飲み込めないのは、胃が変化に(否、現実に)反応出切ていないからだ。 なら対応出切れば飲み下せるのか?消化出切るのか? 拒絶しない、のか。 解らない。 でも多分しない。と思う。 今まで飲んでいたのだから。……そもそも、何故対応出切ないのか? 要は、突然に知覚してしまったというだけの話。『脳』と『胃』がズレていただけの話。 単純なんだ。水だと思って飲んでいたのが実は唾液だった……そんな明解な話。 でも俺が唾液を飲むかどうかはまた別の話だ。 「ありがとうございました~!占い料は2人で2000円で~~す!!」 「高ぇなおい!」 「びた一文負けません~」 ・・・ 結局リアルヴェノムに2000円ぶん盗られ、やることも無くなった俺たちは帰路についた。 「ねぇ松瀬、私たちってさ…」 「なんだ?」 「私たちって…友達…だよね…」 唐突にわけのわからない質問をされる。 いや、質問と言うか……三綾の口調は自問しているような感じだった。 「はぁ?何言ってんだお前」 「ん……なんだろう…自分でも良くわかんない…」 「その発言は危ないぞ。聖並の電波を発している」 「聖ちゃんが聞いたら怒るよ…」 それから「明日は聖ちゃんも復帰してくるといいね」とか、普通の世間話をして俺たちは別れた。 やはり今年のクリスマスも特に変わった事はなかった。何事も無く終わる。 普通にギルティをやって、一風変わった占いをしただけ。 でも、この違和感は一体何なのか……。

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