おまけの追記です

題:蛇の苦労、ベルカイン知らず


自称「マユミ」と名乗る蛇は、すごすごと病室を退散したあと病院内をぐるぐると三周ほどして、そろそろええやろと病室を覗き込んだタイミングで口づけを交わす二人に再びぶっ倒れ大慌てで退散。中庭でぶらぶらあてもなくさまよっているうちに、玄関近くを通る「山吹弓美」を見つけ、病院の門を出るのを確認の後に、疲れ果てた顔でベルカインの病室に戻った。

「おかえりなさい」
いつもと変わらぬベルカインのわかっていない笑顔に、気をきかせた自分の苦労を思い、ふーっとため息。
「弓美ちゃん、だったな。もう帰ったんか」
自分でさんざ確認したのだ。しかしそこは悟られたらあかん。
ベルカインは赤面して目をそらす。
ああそないな顔したらなんかやっとったことがばればれやっちゅうに・・・。
「ええ。あなたが戻る少し前に」
「そうか」
あえてっつっこみはいれず「マユミ」はいつものようにくるりとベルカインの首に巻きつき、仕返しとばかりに尾でベルカインのほおをつんつくつっつきまわす。
「恋人がいるなんてわし、聞いたことあらへんで。弓美ちゃん可愛くていい子やな。ちなみにどこまでいっとんのや。白状せい」
冗談めかしてからむ「マユミ」にベルカインのえ?という顔。
どこまで?部屋からは出ていないし・・。
「ずっと部屋にいましたが」
そのことばにぱたりと撃たれたように倒れる「マユミ」。
あかん。直球や。ずうんと重い球がきたでぇ。
動揺をうまく隠すんも思いやりやと、冷静を装って会話を続ける。
「す、ずっと部屋にいたんか。ま、まあ室内のが便利いいかもしれん」
キスしたり抱き合ったり、その先も。
屋外より室内のほうが良い場合もある。弓美ちゃんのことを考えるなら室内や。ええ選択やでえ!
ナイスプレイを観戦したときのようにうんうん納得する「マユミ」。
そして蛇の反応によくわからないベルカインは不思議な顔をしたあと、匂いとやわらかな感触を思い出し顔をそらす。
恥ずかしさと、嬉しさと。

「でもまあしかし・・」
蛇はベルカインの顔を眺めた。
先ほどより生気にあふれ、安定した様子である。
これは弓美ちゃん効果か。
「身体鍛えててよかったやろ」
少々くじけそうになったベルカインに「なにいっとんのや。そんな言っとる間にちっと体鍛えや。うんそうしよう」と強引に器具を運ばせ、気ののらないベルカインに発破をかけていたのは間違いではなかった。今年こそ阪神優勝やで!!
ベルカインは、確かによかったのだと思い、蛇にお礼をいう。
「ありがとう。あなたのおかげです」
幸せになるんやで。
親のような心持で蛇はベルカインに笑いかけた。



FIN