2010夏北アルプス北部縦走 白馬大雪渓~海抜0メートル親不知まで


日にち 2010 7・20~7・25
メンバー 鈴木公子(55)川井宏作(61)渡部卓夫(61)
仁科茂子(61)高野 甫(64)中津川量子(65)
日程 7/20 新宿(10時00分あずさ11号)=猿倉山荘
7/21 猿倉-白馬尻-葱平-白馬山荘
7/22 白馬山荘-白馬岳-三国境-雪倉岳-小桜が原-朝日小屋
7/23 朝日小屋-朝日岳-吹上のコル-黒岩山-サワガニ山-犬ヶ岳-栂海山荘
7/24 栂海山荘-菊石山-白鳥山-坂田峠-親不知
          親不知交流センター 「まるたん坊」
7/25 親不知=糸魚川=越後湯沢(上越新幹線)大宮=東京


「初体験 7月の北アルプス」              鈴木公子(55)

白馬の大雪渓を登る行列、槍の穂に溢れんばかりの人の群れ、小屋の混雑を考えるだけで
夏のアルプスには近寄る気がしなかった。
73歳にして初めて7月の北アルプスに登る機会に恵まれた。
なんともはや厳しい行程ではあったが落ちこぼれずに歩けて幸せをかみしめている。

7月20日 梅雨は明けたばかり。新宿から猿倉へ

2日目いよいよ縦走が始まる。白馬の大雪渓も私たちの前には数名の人が登っているだけだった。
左にそそり立つ杓子岳の沢筋から絶えず落石の危険がある。やっと雪渓を登りつめて振り返ると
20名あまりのグループがはるか下に登ってくるのが見えた。

しばらくしてピーっと鋭い笛の音。落石があったようだ。昼食をとっているところに登ってきた人に聞くと、
人の上半身程もある岩が、集団で登っていた列に落ちてきたらしい。
先頭の人たちは逃げたが、後ろのほうは間にあわず、あたってしまった人が横たわっているところを
登ってきたとのこと。大騒ぎになっているようだ。あの大雪渓を集団で登るのは危険なのではないだろうか。
上からの落石を列の後尾にいる人には見えない。よける間もなくあたってしまうだろう。
“落石危険速く通過せよ”と標識はあった。
速くといわれてもあの急斜面、アイゼンを効かせて直登するのが精一杯だ。
稜線に出て白馬山荘を目のあたりにしてからがきつかった「後300歩!」と言ったのは誰だ・・・?
あえぎながら数えたら1200歩以上あったよ!
白馬の山頂からなだらかに広がる緑の南面は牧歌的。西に旭岳がでんとすわっている。
大雪渓から見上げた杓子岳は鋭い岩の剣がそそり立つようだった。西側からはそんなに尖がってはみえない。
あの後ろ側で絶えず落石がおきていると思うと恐ろしい。

白馬山荘と白馬岳山頂

3日目は朝日小屋をめざして6時前に出る。白馬山頂の北側は牧歌的というわけにはいかない。
こちら側から登ってきた人には三国境から最後の苦しいアルバイトを強いられるだろう。
晴天に恵まれ鉢ヶ岳、雪倉岳と快適な稜線歩き。チングルマやタカネリンドウ、コマクサ、にも会えた。
けれども11キロのザックは重い。もう寝袋持参の山は遠慮しよう。朝日小屋は遠かった。
あとで本を見たら水平道という言葉に釣られて巻き道に入らない方がよいと書いてある。
アップダウンは激しいし雪渓の状態で通行不能になることもある・・・と。
我々も“なんでこれが水平道なの?こんなに降りたくないよー!”“雪渓が崩れていて道に降りられない”
などといいながら歩いたのだった。
本には朝日に登っていくのと時間的に変わりないとある。そちらの方がずっと歩きやすそうだ。
けれどもあの可愛らしい水芭蕉やリョウキンカ、ワタスゲの群落、見事なキヌガサソウ、サンカヨウは
あそこでしか見られない。白山コザクラのお花畑も独占して楽しめたのはひとえにあのとんでもない
水平道のおかげなのだ。水平道は永久にあのままであれ。とはいっても二度と歩きたくない道でもある。


4日目。無人の栂海山荘に向けて出発。長栂山、黒岩山、サワガニ山、犬が岳・・・・。
登ったり、下ったり。アイゼンを付けるまでもないけれど滑りやすい雪渓、地塘、木道。
タカネバラ、シラネアオイ、ゴゼンタチバナ、キンポウゲ、などの花たち、
鳥博士の卓夫さんがおしえてくれた、鶯、ホトトギス、オオルリ、コルリ、クロツグミの
声を励みに苦しいアップダウンを繰り返しやっとついた栂海山荘。
犬ヶ岳を越える手前の最後の水場で汲んできた貴重な水でご飯と味噌汁を作って食べ、
日暮れと同時に寝る。夜は長い。

栂海山荘からみる日の出

5日目。今日は下るだけ。夜にはお風呂とビールが待っている!
早朝4時50分小屋を後にする。黄蓮山、菊石山、下駒山、白鳥山、坂田峠・・・・.
200m下って100m登り、50m下ってまた100m登る。
こんなところ絶対登りたくないと話しながらはるか遠い親不知の海をめざして
2本の足をひたすら前に出すしかないのだった。
金時坂なる急な下り、登るよりましかもしれないが、下るのも並大抵のきつさではない。

ようやくのことで車道の坂田峠に到着。時間も時間だし、携帯が繋がれば車を呼んで足の痛い人が
重いザックをひとまず宿へ運ぶという案、衆議一決。
わーい身軽に歩けると喜んだのもつかのま、携帯が繋がらない。しかたなくまたザックを背負い山道に入る。
糠よろこびのあとのザックはよけいに重い。ここで親不知から登ってきた人に会った。
我々が今苦戦を強いられたその道を登ろうとしている。思わず大変ですねと言ってしまった。
とても小屋まで行かれる時間ではなかった。水場まで行かれただろうか。テントは持っているようだったが、
テントが張れるようなところもなかったような気がする。しかも一人で・・・。無事を祈って見送った。

さらに登ったり、下ったりを繰り返し3時間半。
熊出没注意の標識を見て、カランコロンとアルミのカップを叩きながら歩いた。
最後に一気に400m余り急坂を下ってやっと栂海新道の入口についた。
日はもうすぐ日本海に沈もうとしている。午後6時過ぎ。暑い!アツい!
親不知まるたん坊の車に乗せた貰った時のクーラーの心地よさ!
新しい車のシートを泥んこのズボンで汚してしまってごめんなさい。
まるたん坊の玄関にザックを下し水道の水で登山靴の泥を洗い落とす。
チェックインは階段を上がったところと聞いてがっくり。部屋はさらにその上と聞いてウへッ!
5日ぶりのお風呂・・・。汗を流しシャンプーをし、念入りに体を洗ってからお湯につかる。
最後まで全員歩けた喜び・・・。

冷たいビールで乾杯!このビールのために歩いたのだ!こんなハードな山。
体重が2キロ減るはずなのになんと体重計は2.6キロもオーバー。
ばあさんがハードな山歩きで太るとは知らなかった。
初めての夏の北アルプス。人ごみとは無縁なお花畑を満喫することができた。
これからは歳相応に荷物を軽くしていかれる山を楽しむことにしよう。

写真 高野 甫(64)

コースタイム *記録 渡部卓夫(61)
7月20日(火) 新宿∸白馬=猿倉16:00
7月21日(水) 起床4:30 朝食5:30
    猿倉荘6:05-白馬尻小屋7:05~7:23アイゼン装着7:42~7:50-雪渓にて休憩
    8:40~8:50避難小屋にて昼食11:20~11:50稜線上(村営小屋)13:20~14:00
    白馬山荘
7月22日(木)早朝曇りのち晴れ  白馬山荘起床4:30
     白馬山荘5:57‐6:12白馬岳頂上6:23‐鉢が岳手前7:35‐7:49雪渓にて飲料水補      
     給8:25-8:35雪倉岳手前9:30‐9:45雪倉岳山頂―沢にて昼食11:05~11:40
     -小桜ヶ原着12:35‐朝日小屋15:08
7月23日(金)早朝曇りのち晴れ 朝日小屋起床4:00
     朝日小屋4:40‐朝日岳5:46-アヤメ平8:25‐黒岩平10:50黒岩山11:10-文子
     の池にて昼食11:50~12:35-13:30サワガニ山-北俣の水場14:35~15:10-犬ヶ    
     岳16:05-栂海山荘16:15
7月24日(土)快晴 栂海山荘 起床4:30  
     栂海山荘4:50‐黄蓮山5:55‐黄蓮の水場(ブナ林)6:55~7:20-下駒岳8:35-水場-
     11:20~11:35白鳥山山頂11:40-シキ割の水場にて昼食12:20~13:00-
     坂田峠14:15~14:35-尻高山15:15-親不知登山口18:30
     =車にて親不知交流センター”まるたん坊“    

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  • 諸老人。お疲れさんでした。うらやましいとは言いません。
    それでも女は強い。あやかりたい。吊りかねたい。 -- 63年度小澤 (2010-08-14 13:51:09)
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最終更新:2011年11月21日 20:09