幸運と運命 02-ユニウスセブンの落下


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「あ、零さん、制服来ましたよ。」


格納庫で雪風の整備をしている零をシンが呼ぶ。


「MSのほうは馴れましたか?」


「ああ、なんとなく感覚がつかめていたからな。すぐに戦闘マニューバの機動は出来た。」


「そうですか。」


シンと零は更衣室へと入る。


”深井 零”と書かれたロッカーを開ける。


「え・・・っ!赤服!」


シンは驚きの顔をする。


まさかあの議長が異世界の人間を赤服にするとは・・・。


ついでに言うと制服に付いたバッジ。


「ふ、フェイスかよ・・・。」


「?」


「あ、フェイスは議会直属の部隊の事さ。緊急時となれば指揮権はそこらの隊長より優遇がきく・・・まぁ、おれの上官って事だな。」


「・・・そうか、だが好きにしろ。おれには関係ない。」


「ま、ゆっくり着替えてください”隊長”どの。」


そう言うとシンは部屋を後にした。




「何ですって!?」


「えっと、”ユニウスセブン”が軌道上に乗っています。このまま行けば・・・。」


ブリッジが重い雰囲気へと変わる。


「・・・まぁ、いいわ。本艦に任は降りてるんでしょう?メイリン。」


「あ、はい。」


「わかったわ。本艦はこれより―――。」




「うわぁ、凄い~!」


シンの同僚であるルナマリア・ホークが驚きの声を上げる。


彼女もエリートの1人である。


「私フェイスのバッジ初めて見た~♪」


いわゆる”アホ毛”をぴょこぴょこと動かしながらしつこく零の周りを回る。


「・・・。」


普段軍服を着るという習慣がなかった零は違和感を感じる。


何せ特殊戦は他戦隊員とも会う事はなかったし、特殊戦内でも同様だ。


それに零は地上勤務の時いつも青いスカジャンを着ていた。


なれないことが多すぎて頭が混乱してきそうだった。


「・・・むぅ・・・。」


いつもの零ならいつも”あっちへ行け”とか言って遠ざけるのだがどうしてもそれが出来なかった。


「どうしました?深井隊長。」


ルナマリアが目を光らせて零の顔を見る。


そんな時だった。


「あ、アラート!?」


「何よ、こんな時にぃ。」


ぷぅ、と頬を膨らませながらルナマリアは更衣室へと向かっていった。




「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」


「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する。」


「アスラン・ザラ機、出る!」


3機のザクがミネルバのハッチから飛び出した。


『初陣ですけど、大丈夫ですか?零さん。』


「ああ。」


『じゃあ。』


短い会話をシンは終えると一気に怒鳴った。


「シン・アスカ。コアスプレンダー、行きます!」


ミネルバ中央ハッチから数機の戦闘機が飛び出し、合体、”インパルス”へとなる。


「B-3、雪風、発進する。」


”FFR-31/MR”スーパーシルフが飛び出す。


公式資料にはこのナンバーはプロトナンバーとされていた。


ザフトでの正式名称は”ZGMF-X367/SR シルフィード”となっている。


雪風はPSV装甲を持っている。


色が変わる。


白い装甲は光るように闇を貫く。


加速。


今回、零たちに与えられた任務は”ユニウスセブン”と呼ばれる構造体を破壊する事だった。


今まで自分がしてきた偵察任務とは違う、実戦。


そんな時だった。


「っ!?」


雪風から警告。


<MS approach.
Evade.>


自分は人型にまだ馴れていないという事を雪風はちゃんと知っていた 。


(人間は、必要さ・・・ジャック。)


零はそう思った。


自分の親友であり、上官であるジェイムズ・ブッカー少佐の顔を思い浮かべながら。


敵は――前大戦時に活躍した機体、”ジン”。


零はビームライフルを撃つ。


敵はそれを回避。


ハイマニューバのジンであるらしい。


敵はビームトマホークを抜き出し、突撃してくる。


零はビームライフルを腰のハードポイントに押し込み、背中の対艦刀、”クレイモア”を抜き出し、応戦。


速さにものをいわせ、敵を斬る。


ただの破砕作業と聞いていたのだが、さっきのジンといい、さっきから聞こえるビームの銃声等々、破砕作業にはないような音をセンサは拾っている。


「おかしい・・・。」


零はそう呟きながら”ユニウスセブン”へ向った。




「お?新型か?」


「そのようですな。」


”ガーティ・ルー”のブリッジで仮面をつけた男が珍しいとでも言うようにモニターを見た。


「あれはデータベースに登録されてないから、そう考えるのが良いでしょう。」


「ああ、そうだな。」


ガーティ・ルー艦長、イアン・リーはモニターを見る。


「新型敵機を”フェアリィ”に登録!」


仮面男はそう言った。


「妖精・・・ですか。」


「ああ、とても無邪気な、殺戮の妖精さ。」


仮面男は笑った。




「ああ?敵?」


見た事も無い、白亜の機体。


「ふん、頂くぜ!」


彼、アウル・ニーダはザフト軍から強奪した機体――アビスのスラスターを吹かし、白亜の機体へと向う。


ビームライフルを連射する。


ひらひらと光の粉を舞わせ、軽々と回避する。


そして、白亜の機体も応戦する。


腰、肩、翼、ビームライフル、関節のミサイルのフルバースト。


「っ!?」


アウルは機体を捻る。


避けきれず、肩のアーマーに少しばかり損傷を与えてしまう。


「ふんっ!やるじゃん。」


アウルは肩のアーマーからビームを浴びせる。


コレも回避される。


「ちぃ・・・、何なんだよ!お前は!」


ビームランスを引き抜き、接近戦へと持ち込む。


敵機はライフルを腰へ押し込み、背中から対艦刀を抜き出す。


「うぉりゃ~!」


ビームとビームがぶつかり合い、火花が舞う。


弾き返される。


再び切りかかる、弾かれる。


アウルは頭に血が上り始めていた。


――


青と白の装甲の機体。


これが、議長や艦長たちが言っていた強奪された機体の一機かと零は思った。


ディスプレイに目を移す。


本当らしい。


近接戦闘を繰り広げながら零は元の世界のことを思っていた。


親友のブッカー少佐、口うるさいしわしわ婆さんことクーリィ准将、特殊戦の役割の事、機体の事、エトセトラ。


守るべき対象である地球でさえもただの嫌な思い出を浮かべた水溜りにしかすぎなかったのに、なぜかフェアリィの事をふと思ってしまう。


”メイヴ”雪風はどうなったのか、ジャム戦線はどうなっているのかなど。


自分は燃え上がる”スーパーシルフ”雪風から「彼女自身」により、射出された。


そしてその後、”スーパーシルフ”雪風は新たな体、”メイヴ”を得た雪風により、爆散させられた。


その後は、この世界の事の記憶しかない。


だが、そんな事はどうでもいい。


再び、雪風とともに敵が違くても戦える。


雪風に戦術を教えながら各種レーダーを見る。


ルナマリアとレイがガイアと交戦、シンがカオス、民間人――アスランと言ったか――がこの”ユニウスセブン”を落とそうとしているテロリストたちの長と交戦中。


敵アビスがビームランスを振りかぶる。


ひらりと上へ飛ぶ、上からクレイモアを叩き込む。


交わされたが、左アーマーを破壊。


「くそっ、やってくれたな!」


アビスのパイロット、アウルが声を上げる、もちろん、零は知らない。


再び、向かってくる。


クレイモアとビームランスがぶつかる、火花。


赤い閃光を冷ややかに見つめる零。


「・・・っ!?」


その時、アビスがさっとランスを引き、残った右アーマーのビームを雪風に浴びせ、踵を返した。


冷や水を浴びせられた気分だった。


あっけなくアビスと”スーパーシルフ”雪風の戦いは終わった。


――


「引き返す?何故?」


ミネルバのブリッジでプラント議長、ギルバート・デュランダルが声を上げた。


「恐らく、高度の問題でしょう。そろそろ地球の重力に引かれ始めます。・・・メイリン、破砕作業のほうは?」


「まだです。」


艦長、タリア・グラディスの問いに、MS管制のメイリン・ホークが答える。


「どうなっている!?」


オーブ代表、カガリ・ユラ・アスハも声を上げた。


するとタリアはふう、と溜息をつき、後ろのオブザーバ二人を見て、言った。


「本艦はコレより、主砲、”タンホイザー”による破砕作業を開始します。議長、アスハ代表、退艦を。」


「わかったよ、タリア。」


議長はそんなりとそれを受け入れた。


「ダメだ!黙ってみていられるものか!」


そう言ってアスハ代表は残ることとなった。


――


アスラン機以外のザク、そして雪風の収容、完了。


話を聞くとアスランとシンはさらに細かくしようとしているらしい。


零は雪風のコクピットでその戦闘情報を見つめていた。


特殊戦のときと同じ、数値を見るような、冷ややかな目で。


雪風は戦闘データをミネルバのマザーコンピュータ、そして自分の戦闘情報データファイルに記録する。


彼女は今、コンピュータたちとどのような会話をしているのだろうと、零はふと思った。


今まで気にかけたことが無かったが、雪風に捨てられた、あの日からずっと思っていた。


ずらずらと高速で流れるデータ。


全てを知る事が出来ない。


だが、どのような内容なのかは見つめていると分かった。


だけど、それでも零には不満だった。


ウーと、低い警報がなる。


これからミネルバは大気圏に突入するらしい。


アスラン、シン、帰投せず。


なんとなくジャックがどのような思いで自分たちの帰りを待っていたのか少しだけ気持が分かった気がした。
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