”彼女”が自分を見捨てた。
見捨てて、自分の体を自ら壊した。
自分の”新たな体”を得て。
彼はその事自体が理解できなかった。
彼は自分の、深い、心の奥で自問を繰り返した。
「雪風は何故、このおれを捨てたのか」と・・・。
そんなとある日、彼の意識がゆっくりと浮上した・・・。
―
宇宙空間で漂うMS。
ガンダムタイプである事は、間違えないのだが、見た事の無い機体だ。
『シン、戻るぞ』
通信機から同僚であるレイ・ザ・バレルの声がする。
「わかった、でも、ちょっと待ってくれ。」
『どうした?シン。』
「見た事の無い機体を回収する。」
『やるのか?シン。』
「ああ!アレには人が乗ってるかも知れないだろ!?」
『・・・わかった、艦長にはおれから言っておこう。』
「ありがとう!レイ!」
そう言うと彼、シン・アスカは通信回線を閉じた。
そして”謎の機体”に近づき、自分の機体、”インパルス”の腕で抱いた。
「よし・・っと・・・。」
シンは自分の母艦”ミネルバ”に向けてインパルスを加速させる。
ゆっくりと、灰色の巨体、”ミネルバ”が姿を現す。
そして、着艦。
謎の機体をゆっくりと、置いて、シンはさっさとインパルスから降りて、外部スイッチで謎の機体のハッチを開いた。
片手には拳銃を持って。
ハッチを開くと、白を貴重としたパイロットスーツを着た男。
ヘルメットバイザを上げる。
前髪の長い、切れ目の、猫を思わせるような男だった。
シンは多分この人は自分より年上だ、そう思いながら彼を機から下ろした。
―
「・・・?」
彼の意識は現実世界へと浮上した。
見慣れない医務室。
医務機器もいくらか見慣れないものがある。
その時、扉がスライドし、赤い軍服のようなものを纏った”少年”が入ってきた。
「目が覚めたみたいだな。」
「・・・誰だ?」
「む、まるでレイだな。うん。」
男は変な方向に納得すると彼の前に立った。
「おれはシン・アスカだ。見ての通りザフトのエースさ。」
「ザフト・・・?」
「知らないのか?」
「ああ、おれが知っているといえばジャムと、いや、制服を着るといったらFAFか。」
「ジャム?FAF?」
彼は疑問符を出す。
「まぁ、いい。お前の名は?」
「・・・深井零中尉。戦術空軍団・フェアリイ基地戦術戦闘航空団、特殊戦第五飛行戦隊所属。3番機雪風パイロット。」
「中尉?階級か。えっとぉ・・・。」
「士官だ。お前たちにはないのか?」
「ああ。着る軍服の色で身分をあらわすんだ。」
「!そうだ、雪風はどうした!?」
彼、深井零はあせる。
「雪風?あのMSの事か。今は放置状態さ。主であるお前がぐったりと眠ってたからな。」
「MS?」
「ああ。MSというのはモビルスーツの略さ。この戦争の主装備だ。」
「雪風も、そのMSなのか?」
「ん?ああ。」
「おかしい。おれの知る雪風はスーパーシルフだったはずだ。雪風に会わせてくれないか?」
「わかった。だけどその前にこの戦争の事、お前知らないだろ?」
「ああ。」
「じゃあ、説明してやるよ、おれもあんまり説明は得意じゃないんだがな。」
そう言うとシンは近くにあった丸椅子に腰掛けた。
「この世界には2つの人種が存在してるんだ。ナチュラルと、コーディネーター。
コーディネーターはその名の通り、遺伝子を操作し、見栄えなどを調整され、あるいは遺伝子レベルで防げる病気を防いだ人たちだ。
初代コーディネーターであるジョージ・グレンという男がもたらし、自分がそのコーディネーターであると語った事から始まったから、コーディネーターの歴史はまだ浅いな。」
そう言うとシンはいったん席を立ち、先生の机においておいたコーヒーを持って席に戻った。
「まぁ、それで遺伝子を操作していないナチュラルはコーディネーターの持つ優れた能力に嫉妬して、コーディネーターを地球の外、つまりここ、宇宙に追い出したんだ。コーディネーターはコロニーを造って”プラント”という一国を作った。もちろん地球側にもそれを好まず、コーディネーターを迎え入れていた国もあるがな。
ナチュラルはそれも気に入らなくて今度は”核”を持ち出したんだ。
その核で・・・プラントのコロニー、”ユニウスセブン”を破壊したんだ。
たった一発のミサイルで何千人、いや、何万人という人が死んでいった。
コーディネーターはそれが気に入らず、”ニュートロンジャマー”を地球に投下した。
ニュートロンジャマーは核を無効化し、地球は電力不足に見舞われた。もちろんコレはコーディネーターも同じだ、地球のな。
あ、その前にユニウスセブンが破壊された後、プラントはおれたち”ザフト”を設立、防衛に当たらせたんだな。
それで中立国の一国である”オーブ連合首長国”の所有コロニー、”ヘリオポリス”で地球連合軍・・・ナチュラル側の機体が造られていて、ザフトはその奪取にヘリオポリスに襲撃したんだ。
結果は5機のうち4機を奪取に成功したんだ。」
そして、シンはこの世界について話した。
「なぁ、えっと、深井さん。深井さんの世界って・・・?」
「今度はおれの番ということか。分かった。いいだろう。
今から30年ほど前、おれが生まれる前に異星人”ジャム”が南極大陸に”超空間<通路>をぶち込み、地球側に進行した事から始まる。
激闘の末、人類、地球の人たちはこのジャムを通路の向こう側の星に閉じ込める事に成功した。
通路の向こう側は”フェアリィ”と名づけられ、地球防衛機構・・・”FAF・フェアリィ空軍”を設立したんだ。
FAFはフェアリィ、トロル、ブラウニィ、ヴァルキア、サイレーン、シルヴァン・・・この6基地をフェアリィ星に造り、各国のエースがフェアリィの空で戦った。
やがて、人はジャムを猛威ではないと思い始める。地球には一匹たりとも来なかったからな。
小さい頃、おれもこの戦争がそれほど緊迫した状態じゃないから、さほど気にしていなかった。
まぁ、そんな状況の中各国のエースはどんどん消耗していく。
各国の軍はそれを嫌い、おれたちのような犯罪者をFAFへ送るようになる。
そして、ある日のことだ。おれはいつも通り偵察を終え、フェアリィ基地へ帰還しようとした時だ。
おれたちが使う全く同じ機体、”スーパーシルフ”が出てきた。
おれは撃墜されそうになったよ。・・・。」
お互いに自分の世界の戦争について語り合った。
気がついたら1人の女性がむっつり顔で扉の前に立っていた。
「か・・・艦長・・・ッ!」
シンは慌てて立って敬礼。
海軍式である。
女も返礼するとこちらに来る。
「さっきの話じゃ、異世界らしいわね。信じられなけど。それで、あのMSの事でちょっと整備員が困ってるわよ。だけどその前に議長が会いたがってるわ、シン、あとで艦長室にお願いね。じゃあ。」
そう言うと女性はさっさと医務室を後にした。
「・・・今のは?」
「ここ、ミネルバの艦長、タリア・グラディス。噂では子持ちらしいけどな。」
「そうか。」
「あ、おれ着替え持ってきてやるよ。」
そう言うとシンも部屋を後にした。
零はというとやる事がないのでベッドから起き上がり、近くにあったコンソールのキーを叩いてみた。
あとは医療具を見たり、部屋の形はどうかとか、そういう状況を調べている間に時間はすぎた。
―
ミネルバの格納庫の一角。
そこで銀色の色をした、そしてかの”フリーダム”にも似ている、そして何より特徴なのは左腕のアーマー部分に達筆で書かれた”雪風”の文字。
そのコックピットで零はキーを叩いてみた。
―雪風。
<Inform me of your name. >
予想通りの雪風の反応だった。
「すごい、OS立ち上げてないだろ?それにAIなんて・・・。」
通常のMSにはAIはいない。
―深井零中尉。
<・・・Lieutenant Fukai after a long time. >
―おれを呼んだのは、お前、雪風なのか?
<It was in this world if noticing it.
It will not be "Nescience zone of battle. " of jam perhaps either>
英文で表示される”彼女”の言葉。
シンもなんとなくこの会話の意味が理解できているようである。
「不可知戦域って、さっき話してくれたあれか・・・?」
「そうだ。」
さらに零はキーを打つ。
―何故おれを呼んだ?
<It is because of the necessity. >
その文字の意味が、零はなんとなく理解できた。
―どういう世界かは、理解できたか?雪風。
<Because the data link had been cut, hacking was done to the data base of this warship.
The thing where the race who is called the result, natural, and a coordinator exists is confirmed.
The reason for the war is a reason that is simpler and more lucid than the war against jam.
Additionally, information on fleet information, the combat intelligence, and others is acquired. >
そして最後に零は、
―この戦争に介入するか?
と、キー・イン。
<There is no hand except intervening it.
Lieutenant Fukai who looks up at cooperation. >
これで、意思は固まった。
最後に、零とシンが機を出ようとしたときに、雪風はこう出力した。
<This time, let's fight neatly together. Lei. >
このような文字を雪風が出力したのは初めてだった。
それは、零にとってとてもうれしかった。
―
「やぁ、待っていたよ、深井零君。」
シンは敬礼。
艦長室にはタリアという艦長と、黒髪の長い男性、そして艦の副長らしき人がいた。
「話は聞いたよ、零君。」
髪の長い男はいやみのような笑みを浮かべながら言った。
「・・・ああ。」
零は静かに言った。
「それで、いきなりなんだが、このザフトに来ていただけないだろうか?零君。」
いきなり男はそう言った。
「名も分からん奴に零と呼ばれたくない。」
「そうだったな、私はデュランダル・ギルバートだ。もう一度言うが、ザフトに来る気はないか?零君。」
タリア艦長は影で溜息をつく。
プラントの代表――議長たる者に何たる物言いだろうか?
タリアはそう思いながら耳を傾ける。
「・・・いいだろう、雪風もその気だ。殺らなければ殺れる、それだけだ。」
平然と言い切る零にタリアは言葉を失った。
「では制服を送らせよう。それと、あのMS・・・君が雪風と呼んでいるMSが設計データの一部を渡してきたよ。整備しろってことなのかい?」
どうやら雪風は”とりあえず”整備はしてもらえるようにしたらしい。
此方にとってもこれ以上うれしい事はない。
「あとは、部屋割りね。1人部屋でいいかしら?シンの部屋の隣。」
「ああ。」
これで衣食住も確保できた。
「では、失礼するよ、零君。」
そう言うとギルバートは艦長室を出て行った。
「さてと、シン、アーサー、後は宜しく。」
「「はっ!」」
そういうとタリアも部屋を後にした。
最終更新:2009年05月26日 20:55