天狗が守ってくれる大山道 (港南台)



 むかし,人々は雨降山といわれる,相模の大山へお参りに行きました。
 武蔵国の人たちも,小坪道や日野川の道を通り,東海道の戸塚の宿の不動坂から大山道に入って,雨降山へ雨乞いに行きました。
 そして,帰り道は一言でも話をすると,途中で雨が降ってしまって,雨乞いのお参りの効果がなくなると言われていました。
 ある時,武蔵国の一行は
「作物がよく育つよう雨を降らせて下さい」
 と,雨降山へお願いした帰り道のことです。日も暮れて,あたりは真暗になっていました。
 そのうち,峠のばあさんがいつもともしている常夜燈の明かりが見えてきました。
「ああ,よかった。道に迷わず,ここまで帰ってこれた」
 と,お互いに口には出せないので,みんなうなづき合いました。
 気がゆるんでお腹も空いていた一人は
〈この辺にまんじゆう屋があったはずだ〉
 と思わず,
『まんじゅう!』
 と言ってしまいました。
 みんなハッとしましたが,何も聞かなかったように黙々と歩きました。が,心は穏やかではありません。
〈まったく,ここまで帰ってきて,せっかくの雨乞いも水の泡かもしれない。今年も作物が枯れてしまったら,どうすればいいのだ。雨が降らなんだら,あいつ何としてくれよう〉
〈とり返しがつかないことをしてしまった〉
 と,当人もうなだれています。
 すると,ポツリ,ポツリ,ザーと雨が降ってきました。もう常夜燈の明かりも何も見えないし,道もわからなくなってしまいました。
〈おいはぎにでも会わなければいいが〉
と心細くなって,みんな寄りかっていました。
 その時,スーツと何かがおりてきました。
 そして,先頭にたって道案内のように歩く姿が,雨の中に見えかくれします。鼻が大きくて高く,顔は真っ赤で一本歯の下駄をはき,山伏の格好をした大天狗と,鳥のくちばしの小天狗ではありませんか。
 みんなが天狗の後を追っていくうちに,雨もあがり,無事,家に帰りつきました。
「大山道の天狗様が助けてくださった。いつも大天狗様,小天狗様が大山道で守っていてくださる」
 と,安心して村人たちはくらすことができました。








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