ヌエが運んだ青木神社 (大久保)


 上大岡、グリーン通り商店街の、裏手を流れる大岡川に、青木橋が架かっています。橋のたもとに建つ青木神社は、ヌエの宮とも、盗っ人の宮とも呼ばれる、不思議な神社です。
 昔、青木神社は、いまの場所からもう少し川上の、西側の岸に建っていました。ある年のこと、大雨が降りました。降り続いた雨は、土砂くずれを起こし家も畑も押し流しました。
 やっと雨がやんで、村人たちがほっとした時、今まであった神社が、跡かたもなくなっていました。驚いた村人が、あたりを探したところ、少し川下の東側の岸に、そっくりそのまま、神社が移動しているのを見つけました。
 人びとは、びっくり仰天しました。自分たちの鎮守様が、隣の村に行っては大変です。皆で相談して、もとの場所戻すことこしました。
 何日もかけて、ようやく戻ったお宮様をみて、人びとは大変喜びました。ところが、次の日、村人は息も止まるほどに驚きました。ようやく戻ったお宮が、また無くなってしまったのです。
 村人たちが、大さわぎして神社を探しあてた所は、なんと大雨で流された東側の岸の、あの場所でした。不思議なこともあるものだと、人びとは首をひねるばかりでした。
 また何日もかけて、神社はもとの場所に戻りました。どうぞどこにも行きませんように、村を守って下さいと、村人たちはお祈りをしました。
 でもどうしたことか、夜が明けると、神社はまた東側のあの場所に移っていました。なんど戻しても、夜が明けると、お宮は川を越えて隣村に行っています。
 あんなに大きなお宮を、一晩で動かすのは妖怪の仕業だ、いやヌエの仕業だ、まつ黒な大きな羽でお宮をすっぼり包んで動かしてしまうのだと、村人は恐怖におののきました。
 神社の境内には大きな木が枝を広げてお宮の屋根をおおって、昼でもうす暗くいかにも怪鳥のヌエが住んでいそうです。
 村人たちが寄りつかなくなった神社には、泥棒が住みついたと噂を呼んだヌエの宮は、なまって、いつのまにか盗っ人の宮と呼ぶ人もでてきました。
 なんど戻しても、夜が明けると隣り村に行ってしまうのなら、もう戻すのはよそうと相談して、その後、青木神社は現在の場所に落ち着いたということです。