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**野庭の赤ナス (野庭)  むかし、野庭村は、人も少なく、さびしい村でした。雑木林が広がり、人々は、畑を中心に野菜を作って生活していました。  村の子どもたちは、いつも元気で、日がくれてやっと家に帰ると、みな真っ黒けでした。 「今日もね、うさぎを見つけたんだよ。ね」 「ぜったい、はさみうちにしてやろうと思ったのにさ、また逃げられちゃったよ」 「あいつら、はやいんだよなあ、うさぎ谷へ入ったら、あっという間さ」  うさぎ谷とは、うさぎがいっばいいる谷のことです。  子どもたちは、たっぷりと家の手伝いもしました。中でも、この家の末の弟は、なぜか、いそいそと畑に出ていきます。それは、真っ赤なナスが実っていたからです。  日本に、まだ外国の人があまりいなかったころ、横浜の港からたくさんの外国人が入ってきて、住みつくようになりました。  そして、西洋料理には欠かせない野菜を、このあたりでも作るように決められたのです。  畑仕事をしながら、末の弟は、そのめずらしい赤ナスに心をうばわれていました。どんな味なのか想像もつきません。  赤ナスは、緑色から、日に日に赤くなっていきます。けれども、父も母も、中華街で買ってもらう大事な作物だからと言って、食べさせてはくれませんでした。  他の西洋野菜も作られていましたが、何と言っても一番知りたいのは赤ナスの味でした。  ある日、とうとう、重そうにぶら下がっている赤ナスをもぎ取ると、ガプリ・・・。 「うぁっ」  口中に青臭い汁があふれました。あわてて吐き出しましたが、のどにも鼻の奥にも、そのみょうなにおいがはりついたかのようです。  目くばせしながら、弟の様子をこっそり見ていた二人の兄は、「やったぁ」と、大笑い。  弟は、初めての味にびっくりしたのでしょうか・・・。この弟だけでなく、二人の兄はもちろん、一度これをかじってみた者はだれも、二度と食べてみようとはしなかったそうです。  日本中のほとんどの人が、まだトマトを知らなかったころのことです。野庭村の人々は、いちはやく、その「赤ナス」と呼ばれていた「トマト」の、味見をしたんですね。 ----

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