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 **野庭の赤ナス  (野庭)
 &bgsound(http://www19.atwiki.jp/konanrekishi/pub/nobanoakanasu.wma)
  
  むかし、野庭村は、人も少なく、さびしい村でした。雑木林が広がり、人々は、畑を中心に野菜を作って生活していました。
  村の子どもたちは、いつも元気で、日がくれてやっと家に帰ると、みな真っ黒けでした。
 「今日もね、うさぎを見つけたんだよ。ね」
 「ぜったい、はさみうちにしてやろうと思ったのにさ、また逃げられちゃったよ」
 「あいつら、はやいんだよなあ、うさぎ谷へ入ったら、あっという間さ」
  うさぎ谷とは、うさぎがいっばいいる谷のことです。
 
  子どもたちは、たっぷりと家の手伝いもしました。中でも、この家の末の弟は、なぜか、いそいそと畑に出ていきます。それは、真っ赤なナスが実っていたからです。
  日本に、まだ外国の人があまりいなかったころ、横浜の港からたくさんの外国人が入ってきて、住みつくようになりました。
  そして、西洋料理には欠かせない野菜を、このあたりでも作るように決められたのです。
  畑仕事をしながら、末の弟は、そのめずらしい赤ナスに心をうばわれていました。どんな味なのか想像もつきません。
  赤ナスは、緑色から、日に日に赤くなっていきます。けれども、父も母も、中華街で買ってもらう大事な作物だからと言って、食べさせてはくれませんでした。
  他の西洋野菜も作られていましたが、何と言っても一番知りたいのは赤ナスの味でした。
  ある日、とうとう、重そうにぶら下がっている赤ナスをもぎ取ると、ガプリ・・・。
 「うぁっ」
  口中に青臭い汁があふれました。あわてて吐き出しましたが、のどにも鼻の奥にも、そのみょうなにおいがはりついたかのようです。
  目くばせしながら、弟の様子をこっそり見ていた二人の兄は、「やったぁ」と、大笑い。
  弟は、初めての味にびっくりしたのでしょうか・・・。この弟だけでなく、二人の兄はもちろん、一度これをかじってみた者はだれも、二度と食べてみようとはしなかったそうです。
 
  日本中のほとんどの人が、まだトマトを知らなかったころのことです。野庭村の人々は、いちはやく、その「赤ナス」と呼ばれていた「トマト」の、味見をしたんですね。
  
  
   
 
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