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第8部 メーメル篇 第2話「殲滅」(最終回)

2007年3月29日放送

概要




「ベルゲ1(アイン)よりベルゲ1(ツヴァイ)」

ベルゲ1、2、3(ドライ)、は赤軍の戦車部隊を迎撃している戦車小隊各車のコードネーム。
ベルゲ1(小隊長車)は2、3に左右への展開を命じ、敵が側面に回りこむのを防ごうとしているようである。

「先頭の85ミリを狙え」

ここでベルゲ1の車長が呼びかけている相手の人名がよく聞き取れないが、砲手に対し射撃目標(T-34/85)を指示している。
「先頭の」と言っているので敵の戦車部隊は先頭車両はT-34/85、残りの車両はT-34/76、もしくは76と85の混成と思われる。

85ミリ

T-34/76の主砲を76mmから85mmに換装したT-34/85戦車のこと。
T-34/85は史実では1943年末に量産が開始されているので、登場の時期が半年以上早くなっている。
主砲の85mm砲はティーガーの88mmには劣るものの4号戦車の75mmを凌駕していた。
また砲塔が大型化されたため乗員が4名から5名となり、車長が砲手か装填手を兼任せず指揮に専念できるようになった。
史実では終戦までに3万両近くが生産され、戦後も長くソ連および共産主義諸国で生産と使用が続けられた。
最近では90年代の旧ソ連諸国および旧ユーゴ内戦でも反政府勢力などが使用している姿がTVで放映されている。


「徹甲4、榴弾5」

徹甲榴弾と榴弾のこと。
徹甲榴弾はタングステンなどの硬い材質で作られた砲弾で対戦車戦に用いられる。
目標の装甲を貫通後遅延信管が作動して弾殻内の炸薬が爆発する。
弾殻が厚くなっているため炸薬量は少ないが、車内で爆発し破片を飛散させるので乗員や機器の殺傷・破壊には充分な威力を持つ。
この他に弾体の重量を軽くすることで初速を早め。貫通力を向上させた高速徹甲弾というものもあった。
こちらは内部に炸薬を持たないが、貫通時の衝撃で飛散する装甲板の破片や弾体自身が戦車内部で跳ね回ることで内部の機器や人員を殺傷することができた。
榴弾は比較的薄い弾殻内に大量の炸薬を充填した砲弾。
着弾し爆発すると広範囲に弾片を撒き散らすので、歩兵や装甲されていない車両・施設に対して用いられる。
4号戦車では87発の砲弾を搭載できるので、ベルゲ1は一連の防衛戦でほぼ撃ち尽くしたか補給不足の状態で出撃したものと思われる。

「弾かれた!」

T-34シリーズは独特の斜めに傾けた装甲板(水平に飛来する戦車砲弾にとって厚みが増すこととなる)を持ち、さらにT-34/85では正面装甲が70mmから90mmになったため、四号戦車の75mm砲では撃破しずらい強敵となっている。
このシーンでは砲塔の旋回音、砲弾を装填して砲尾の閉鎖器が閉じる音、発射後閉鎖器が開いて空薬莢が弾き出される音が聞こえる。

「交互に発砲しつつ後方阻止線まで後退せよ」

このシーンでは、1両が停止・発砲して敵の進行を食い止めている間に他の2両が後退するという「蛙跳び」機動を繰り返しつつ後方に退こうとしている。
阻止線とは敵の侵入を食い止めるべく設定されたラインのこと。

「脚(あし)は捨てろ」

ベルンはシュバイニに重くてかさばる三脚は捨て、カメラとレンズケースだけ持てと命じている。

「もう立派な擲弾兵ですね」

擲弾兵(Grenadier)とは18~19世紀の擲弾(導火線のついた小型の爆弾で現在の手榴弾の原型)を携行した歩兵のこと。
銃を持たず敵の隊列近くまで前進して擲弾を投げつける擲弾兵は非常な勇気が必要とされた。
擲弾そのものは19世紀に入って廃れたが、「擲弾兵」の名はエリートの象徴として部隊名などに残された。
第二次大戦のドイツ軍では、装甲師団の歩兵連隊がこれにならい「装甲擲弾兵(Panzer Grenadier)」と呼称された。
ここではノイヴィルはおそらく前者の「勇敢な兵士」という意味でマキを賞賛していると思われる。

半装軌車

ドイツ軍のSd.Kfz251装甲兵員輸送車のように、車体前部の車輪で操舵し後部の装軌(キャタピラ)で駆動する車両のこと。
戦車のような全装軌車よりも操舵しやすく、トラックのような装輪車よりも不整地走行能力が高いというメリットがあった。
戦後は全装軌車の性能が向上したため廃れている。
なおSd.Kfz251の定員は操縦手と車載機銃手各1名+乗員10名の計12名である。

「後方で予備の車両に乗り換えるのさ」

おそらく弾薬を撃ちつくしたところで戦車兵は戦車を捨てて後方に退避し、戦車は敵の攻撃をひきつける囮として放置している。
メーメル地方は遠浅の海岸が続き、車両の陸揚げや船舶への搭載は港以外ではほぼ不可能である。
このため北方軍集団は火砲や車両などの重装備は捨て、兵員の退避を最優先させているので後方には大量の車両が余っている。

「2個戦車中隊と1個突撃砲中隊で」

平均的な戦車および突撃砲の中隊は通常14両前後からなる。

34年式特殊増加装甲

ケルベロスの装甲服。
デザインについてはホビージャパン2007年5月号及び鋼鉄の猟犬公式HPを参照のこと。

「狼の皮」

人狼伝説には人が狼の皮を被って人狼となる、というバリエーションがある。
古代のトーテミズム(動物祖霊信仰)に由来するとも言われるが定かではない。

デイライトタイプ(?)

シュバイニはおそらくカメラレンズの交換と昼光撮影用のフィルムへの換装を行っていると思われる。
(ここの台詞が聞き取りにくかったので用語が誤っている可能性がある)

「対戦車戦闘準備」

塹壕に入れという指示もなされているようなので、塹壕に潜んで敵戦車をやり過ごしその後方や側面を至近距離からパンツァーファウストなどで攻撃しようという戦法と思われる。
おそらくは対戦車砲など重火器を装備していない装甲猟兵がとりうる唯一の戦法だが、生還は期しがたい過酷なものである。

カチューシャ Katyusha

赤軍の多連装ロケットランチャーのこと。
ロケットを載せるレールと支持架を組み合わせた単純な構造だったために大量に製造され、主にトラックに搭載されて使用された。
132mmBM-13の場合、一度に16発の発射が可能。
当時のロケット兵器の常として命中精度が低かったので、大量発射による面制圧に使用された。
「カチューシャ」は俗称であり、製造工場の刻印「K」にちなみ当時の流行歌からロシア兵が名づけたといわれている。
ドイツ兵はその独特の泣き叫ぶような飛翔音から「スターリンのオルガン(Stalinorgel)」と呼んだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Katyusha_launcher_rear.jpg
Zis-6トラックに搭載されたBM-13「カチューシャ」

「止まれば背後から撃たれますからね」

独ソ戦初期~中期の赤軍は戦前の大粛清と緒戦の大敗北の結果、将兵の練度が著しく低下していた。
これを補うため、赤軍はしばしば無謀ともいえる突撃を命じ、後方に退いた者や命令を果たせなかったものへの銃撃や銃殺をしばしば行った。
ソ連の勝利が見えてきた大戦後半にはそのようなことはなくなっていったが、終戦に至るまで損害を省みない攻撃の強行がしばしば行われている。

「フラックで掃射しろ」

フラック(FLAK)とは対空火砲(Fliegerabwehrkanone)のこと。
ここで使用されているのはおそらく20mm対空機関砲で、一発で人間の胴体を両断する威力があり対人火器としても多用された。

廃兵

歳を老い、あるいは負傷などでもはや軍務に耐え得ない状態となった兵士のこと。

獣面人心

「人面獣心(人でなし)」の逆。

ハインケルの改造機

おそらくはHe-177グライフ爆撃機のことで、一部機銃の撤去や燃料タンクの増設などにより航続距離を延伸し、反応弾を搭載するために爆弾倉を拡張するなどの改造が施されているものと思われる。
もしくはこれを改良したHe-277あるいはHe-274かもしれない。
グライフはドイツが開発した数少ない4発重爆撃機である。
ひとつのエンジンナセルに収めた二発のエンジンで一つのプロペラを駆動するという方式をとったため、一見双発機のような外観を有する。
ルフトヴァッフェが急降下爆撃能力を要求したため空気抵抗の小さいこの方式を採用したが、エンジンの過熱による火災事故が多発したため成功作とはいえなかった。
(ただし、火災事故の頻度はさほど高いものでなく、欠陥が過大視されているという意見もある)
最高速度488km/h、航続距離5,500km、最大爆弾積載量7,200kg
He-277は一発のエンジンで一つのプロペラを駆動するというスタンダードな方式を採用した改良型。
(実際のところ、改造を施したとして重い反応弾を抱えてレニングラードまで飛行するのは困難だろう。)


分裂反応弾

核分裂爆弾のこと。
「反応弾」という名称は、押井守にも多大な影響を与えた架空戦記作家の佐藤大輔が核兵器の言い換えとして好んで用いている。
おそらくはそれに敬意を表してのことと思われる。
なお「反応弾」という名称そのもののルーツはアニメ「超時空要塞マクロス」である。

史実ではユダヤ人であるアインシュタインが提唱した相対性理論をヒトラーとナチスが最初否定したため、ドイツの核開発の研究の開始はアメリカに大幅に遅れをとった。
またドイツの核開発の責任者であったハイゼンベルクが密かに連合軍に情報提供を図ったり、核兵器の可能性に対して低い評価報告をナチスに行ったためにさらに核開発に遅れをきたし、最終的には頓挫したといわれている。
実際にはドイツが研究を積極的に進めたとしても、アメリカでさえ当時の金額で19億ドルを費やした核兵器の開発は当時の国力では不可能だっただろう。

「1週間後には、極東の戦争にも終結をもたらした」

これは反応弾の使用により日本に対する勝利、少なくとも有利な条件での講和をドイツは得たということなのだろうか。
対日戦についてほとんど語られていないのでその内容は想像するしかないが、これで「鋼鉄の猟犬」は「人狼」へとつながることになるのだろう。

次の戦争への戦間期

ドイツはソ連に勝利したとはいえ、完全に屈服させたわけではない。
またイギリスも作中では敗北していない。
国土の奪回を目論むソ連、抵抗を続ける英国といったドイツの敵は依然として存在し続けている。
おそらくこの世界での戦後はウクライナやアフリカ、東南アジアと極東などの地域をめぐって独ソ間の冷戦と代理戦争が行われるものと思われる。

参考文献

最後に紹介された参考文献は以下のとおり(訳者は省略)。
高価なものや現在入手困難な物もあるので、興味のある方は地元の図書館などを活用することをお奨めする。

「詳解独ソ戦全史」(デビッド・グランツ&ジョナサン・ハウス著 学研M文庫)
「バルバロッサ作戦(上・中・下)」(パウル・カレル著 学研M文庫)
「電撃戦」(レン・デイトン著 ハヤカワNV文庫)
「恐るべき欧州戦 ――第二次大戦知られざる16の戦場」(広田厚司著 光人社NF文庫)
「ヒトラー暗殺計画」(小林正文著 中央公論社中公新書)
「ヒトラーを狙った男たち―ヒトラー暗殺計画・42件」(W・ベルトルト 講談社)
「詳解 武装SS興亡史―ヒトラーのエリート護衛部隊の実像 1939‐45 」(ジョージ・ステイン著 学習研究社)
「ドイツ参謀本部―その栄光と終焉」(渡部昇一著 祥伝社)
「ナチスドイツの映像戦略―ドイツ週間ニュース 1939‐1945」(三貴雅智著 大日本絵画)