冥巫2


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「皆様こんばんは、冥巫です」
「今回は、前回の私の番の話を踏まえて進行しますので、忘れた方は読み直すのも一つの手です。忙しい方はそのまま読んでもらっても構いません。
 理解できるならですけど。今回も設定が増えますのでがんばって理解してください」

「まず初めに、携帯電話等の小型機械では読みにくい物となっているのでご了承ください」
「そして、この物語はフィクションであり、実際の人物、団体、場所、現象などはフィクションです」
「それでは皆様。今宵の夢物語をお楽しみくださいませ」

6/17   第十六話「神楽の姫」 ver.2.06


―――火星ニーベルング・リング内にて。
「どうするの?キロハ…何かと引っ掻き回しえくれた"FAUST"なる連中については…」
「どうするもなにも、決まっているじゃない?」
 彼女は不適な笑みを携えて答えた。
「怪しいやつの言う事なんて、鵜呑みにするほど私たちは暇じゃないのよ。
 ある程度、参考にする程度に留めるのがベストよ。そうでしょハネフ?」
「そうね。いきなり現れてこちらに得になる情報を言ってくる馬鹿はいないわね」
「そういうことよ。ほんとに皆おバカさんばかりなんだから…うふふ。
 ――なんらかの工作も考えれるでしょう。オペレター?先のやり取りをちゃんと録音出来て?」
「はい。少尉!ちゃんと出来ています!魔術的なものでも、ちゃんと出来るように工夫して撮りましたよ。映像もバッチリです!」
「そう。優秀なスタッフがいるとほんと便利ね。ありがとう」
 そう言うなり、自身の前のモニターに先の魔術師とのやり取りが映し出された。
 その映像を二人は、何か見落としがないか確認する。
「それで、彼女たちについてはどうするつもり?」
 二人は、モニターから目を離さずに会話をする。
「――それも簡単なことよ?向こうがこちらを利用しようとするなら、ある程度便乗して隙を見せるならば殺すまでよ。
 撃たれる前に撃て、初歩の初歩を完璧にやってのけてこそ一流なのよ」
「そう簡単にいくのかしら?相手は魔術師みたいだし…これも先の戦闘で破損が多いし…システム自体も修復しないと」
「そうね。システムの問題を解決しなければ…修理している間に情報を集めておいて、それで今後検討しましょう」
 キロハは不敵な笑みを浮べながら、モニターを射抜くように見つめる。まるで、他のものが見えるかのように…。
「せっかく良い物が手に入ったんだから、使わない手はないわ。これは遊びじゃないのよ?戦争なんだから…うふふ」
(さぁ、戦争の始まりよ…忌々しい魔術師達に目にものを見せてあげなくちゃね…。)


―――数時間前
 ところは、町の大通り。
 殺風景ではなくだからと言って、賑わっているわけでもない道をコスモスとナナは歩いていた。
「お~な~か~!すいたー!」
 そう言いコスモスは、不機嫌に駄々をこねていた。
「――後少しで、ここら辺を統括しているJ支部に着くから我慢してよ」
 とナナがコスモスを宥めていた。
「ぶぅ~!もう、お腹がすいてうーごーけーなーいー!」
「後少しなんだから我慢してよ。――って言っている内に着いたよ」
 余り大きくないが、こじんまりした教会がそこにはあった。
 別に、教会は外見が大きくなくてもいい。
 地下に、沢山の実験場、器具、優秀なスタッフがあればいいのだから。
「ご飯♪ごは~ん♪ほかほかごはん♪」
 と歌いながら、コスモスは教会の扉を開けて走っていった。
「もぉ~!さっきまで駄々こねていたのが、あんなに元気になっている」
 それからナナは、足早にコスモス探した。

―――しばらく教会内を散策して、コスモスを見つけた。
 そこは食堂だった。いくつもテーブルと椅子がある少しシャレた感じの場所だった。
 時刻は昼を過ぎているのだが、人はあまりいないようだ。
 日当たりの良さそうな窓際の席で、コスモスは席に着いて肉を食べ散らかしている。
 きょろきょろと辺りを探しているナナを見つけたコスモスは、手を上げて言った。
「ファファ~!ほほだほ~!」
 その声に気づいて、ナナはコスモスに近づきながら悪態をついた。
「食べながら喋らない。行儀が悪いよ。―――よく食堂の場所が分かったね。ほんと嗅覚と勘は一流ね」
「もぐもぐ、ごっくん。にゃはは~そんなに誉めないでよ~」
 頬を朱色に染めながら言った。それから、照れ隠しなのかコップの水を一気に飲み干した。
(ん~皮肉のつもりなんだけど…あまり伝わっていない…)
「ごく、ごく。ふぁ~!おいしい!ご飯はいいね~♪携帯食料ももっと改善してほしいよ。そんなところに立ってないで、ナナも食べなよ」
「そうね。たまには美味しいご飯食べなきゃね」

―――それから二人は、しばらくランチタイムを楽しんだ。
「もぉ~入らない。まんぞく、まんぞく~♪」
 そう言うコスモスの目の前に、沢山の皿が積まれていた。
「その量は――さすがに食べすぎだよ。敵に襲われたらどうするのよ?」
「大丈夫~大丈夫。この量なんて、やろうと思えばすぐに魔力に変換出来るんだから」
 その時一人の老人がテーブルの前に近づいて来て、二人に話しかけてきた。
「もし?そこのお二方。この支部では見ない者だの?」
 声をかけられてコスモスが反応した。
「ふぇ?誰このおじいちゃん?」
「オホン!失礼した。私はこの支部の『管理者』のダグラスじゃ」
 二人の目が点になった。
 ナナは急いで立って頭を下げた。
「し、失礼しました!ちょっと、コスモスもぽけ~としてないで謝る!」
「ふぇ?ごめんなさいでした!」
 呆気にとられていたコスモスも急いで立ち上がって誤った。
「まぁまぁ、良いよ。元気があってなおよい。まぁ、立ってないで座ってくれ」
 そう言って、ダグラスは二人の前にある席に座ってから、二人に手で座るように促した。

「――して、お二方の名はなんと言うのじゃ?」
 先導して、ナナが答えた。
「私はM所属の、ナナ・N・M・クレセンティスと言います。こちらはS所属の、コスモス・K・S・アルタシスです」
 ナナがコスモスを紹介する時に、コスモスがお辞儀をする。
「なるほど。名に所属名が入っているということは、MとS所属の最高位魔術師と御身請けした」
 その言葉を聞いて二人は頷いた。
「ふむ。M所属と言えば、主に結界や電子を操ることに優れたところであり、主に守りに長けた所と聞く。
 逆にS所属と言えば、破壊や五大元素を扱うのに優れたところとで、主に破壊と創造に長けた所と聞く…何故その所属の高位魔術師二人がペアを組んでいるのじゃ?」
「え~と…ちょっと訳ありでして、今二人である任務を遂行中なんです。」
 とコスモスが答える。
「ん?その大きな大剣…その容姿、さらにS所属…もしや――そなたが破壊することにかけては、他を許さない生粋の魔術師の『天上の焔摩(えんま)』なのか?」
「ありゃりゃ~有名なのも考えようだな~」
 照れながら、頭を掻いた。
「よかったね~有名人~♪」
 ナナが楽しそうにコスモスをはやし立てる。
「うみゅ~。今ならこの肩書上げるよ?」
 じと目でナナを睨む。
 それをナナは、笑顔で反す。
「いらない♪」
「オホン!話を続けてよいかの?」
 コスモスが拗ねているので、変わりにナナが答えた。
「ええ、どうぞ」
「事前にこちらに来られると聞き存じていたので、お二方宛に教会から手紙が届けられていましたのでお渡しします」
「ふぇ?誰からだろう?」
 好奇心から、コスモスがダグラスに尋ねたが、無言で返されてしまった。
「お預かりします」
 ナナはダグラスから手紙を受け取り、それを懐に入れた。
「確かに、渡しましたぞ」
「ところで、こちらのJ支部ではどのような魔法を研究しているんですか?」
 ナナが質問した。
「ふむ。簡単に言うと東洋魔術というものを扱っている」
「とうようまじゅつ?あまり、聞かない名前の魔術だね~」
 日当たりが良いせいもあって、眠そうにコスモスが答えた。
「確かに最近では、この名を聞かないね。何故かと言うと、この魔術は地球で使われていた魔術だからだよ」
 とナナが答えた。
「あーなるほど」
 ナナの言葉に続くように、ダグラスが続いて説明する。
「この東洋魔術は、五行思想(ごぎょうしそう)または、五行説(ごぎょうせつ)を元にして使われている。
 原点は古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素から成るという」
「あれ?地・水・火・風・空じゃないの?」
 コスモスが質問した。
「そちらを、地球では西洋魔術と言っていたのじゃ。
 東洋魔術は、その方式とは少し違うのじゃ。西洋魔術が精神を魔術として行使するならば、東洋魔術は精神もそうだが、自身の気をも魔術として扱っているのじゃ。
 また西洋魔術でもそうだが、魔術によって地脈や霊脈からマナを貰って魔術を行使する」
「地脈と霊脈って、実際どのくらい違うものなの?」
 その言葉を聞いて、ナナが少し考えながら話し出した。
「地脈は、地中のコア(星自身の)の地殻変動するエネルギーのことで、地震や火山等の放出される地中のエネルギーのことよ。
 また、地殻変動によって生じるその莫大なエネルギーを使うことで魔術を行使することだよ。
 そして、霊脈。または、龍脈とも言うんだけど…う~ん。そうだね簡単に言うとね。
 地球そのものにも、気があるのよ。簡単に言うならば、山の頂から噴出された後、地下に入り土地を潤していく力。
 大地の中を流れる力の河…とでもいうのかな。その力の流れや入口と出口を理解して使えば、その流れに乗せることによって魔術を行使することができるんだよ。
 また、これは万物に応用ができるの。万物というからには、当然人体にも応用できるんだよ。
 主に気を使って体の悪い場所を治したり、気を使って武術等をする人がこれを極めているね。主に言うなら、前者は気功。後者は太極拳あたりかな。」

――その後の3人の話を簡単にまとめると。
 火生土(かしょうど)・土生金(どしょうごん)・金生水(ごんしょうすい)火は土を生み。土は金を生み。金は水を生む。それは、自然の摂理である。
 そして、その自然の摂理を示すシンボルが五芒星。
 それらは、この地球を構成する 木 、火、 土、 金、 水、五つの気のつながりをいう。

 五つの気のつながりとは、一つのつながりを五行相剋(ごぎょうそうこく)という、これは闘争による気の力関係をしめしたもの。
 五芒星では星の形になる。

 もう一つは五行相生(ごぎょうそうしょう)という。
 こちらは、逆に気が順次発生する様をしめしたもの。
 五芒星では、星の周りを囲む円になる。

 この五行を完全に把握した者は、全ての森羅万象を読み解き 気を自在に操り変化させる事が出来るという。

――以上が眠気を抑えて会話を聴いて、コスモスがまとめたものである。
 実際にはもっとあるのだが、それはまた別の話にて。

 お腹もいっぱいになり、日当たりの良い場所だったのと、長く難しい話だったためコスモスはほとんど眠るような体勢なってうつらうつらと船をこいでいた。
「無名塔を作った古代のまじゅ…」
「ええ。誰がいるの…」
 二人の声が遠のいて聞こえる。
「アウトレス・ミスト…
 カリエスト・ダウス…
 アルテミス・ルナ…」
(ふみゅ~。二人とも何を話しているんだろ?)
 まどろみに沈もうとしていた時に、ふっとこの名前だけは不思議と聞こえた。
「―――クレセンティス」
「あれ?ナナと同じクレセンティスってことは、もしかしてナナのご先祖様か何かなの?」
 眠気を抑えつつコスモスがナナに質問した。 
「う~ん。どうなんだろ?家計図見たことないからはっきりとは言えないかな」
「そうなんだ。ふあ~ぁ。眠いねぇ~。」
「たるんでおるな。もしやと思うが…我等魔術師の悲願をお忘れではないな?
 世界の外側にあるとされる領域の、『あらゆる事象の発端』『万物の始まりにして終焉』。
 すべての魔術師にとっての最終到達目標であるところへ――『根源』へといたる事が我等魔術師の悲願であることを」
「…」
 二人は押し黙る。
「これへといたるために、魔術や魔法が発展したのじゃ。
 錬金術、呪術、奇術、呪術等はこれにいたるため派生、発展したもので――」
 突然館内放送がなった。
 それにより、ダグラスの言葉を遮るかのようになってしまった。 
「―――ダグラスさん至急第四実験室にお越しください。繰り返しお伝えします。―――」
 その放送を聴いてダグラスは、静かに席を立った。
「長々と話してしまったのぅ。老人の長話に付き合って貰ってありがとう」
「いえ。東洋魔術ついて貴重な話をしていただきましてありがとうございます」
「では、私は行きますので、頑張なされ」
 そう言い老人は、食堂を出て行った。
 それを、確認してからナナが話をしだした。
「さてと、まずは先ほど頂いた手紙を拝見しましょう」
「ちょっと楽しみだね~♪何が書いてあるんだろう?」
「悪い知らせじゃないといいんだけどね。宛名は―――!?」
「だれだれ?―――!?」
 そう言いながら、コスモスはナナが持っている手紙を覗き込んだ。
 お互い、どちらも息を合わせてその名を詠んだ。
「「アルテミス・ルナ・アストランチア」」
 ナナは手紙を机に置き、それを読み上げる。
『先の戦闘についての報告を受けました。次の任務なのですが、地球に行っていただきます。
 例の子があちらに行ったという情報が寄せられ、収用された場所の見当がつきました。
 ロケットを手配しましたので、それに乗って地球まで行って下さい。ロケットの場所はもう一枚の地図に示してあります。
 案内役として、現地に魔術師を一人配置していますので、合流したのち向かってください。
 では、がんばって彼女に会ってください。
P.S 紅き血の加護があらぬことを』

「ち、ちきゅうって、核の冬で行けないんじゃなかったけ?」
「ある程度は緩和されたということね。自然の治癒能力はたくましいわね」
「そっか~。ちきゅうか~どんなところだろうね~?」
「まぁ、行ったとしてもまた戦闘することには変わりないんだけどね」
「それにしても、最近戦闘することが多いよね~」
 ため息まじりに、コスモスが言う。
「まぁ、それもお仕事の一つだから仕方がないけどね」
 少し疲れたような顔で嘆息する。
 神妙な面持ちでコスモスがナナに訊ねる。
「ねぇ、ナナ。そろそろ例の物を欲しいんだけど」
 ナナは少し考えるそぶりを見せてから、七個の宝石をテーブルの上に置いた。
 それぞれ、赤、黄、橙、黄緑、緑、青、紫、の色の拳一つ分の大きさのいろんな色と形の宝石がテーブルを彩った。
「本当に…コレを使うのね?」
「うん。これがナナがいる理由の一つでもあるしね」

―――魔法石
 ただの宝石にしか見えないが、これ一つで膨大な量の魔力が蓄積されている。
 それぞれに、魔力増加、一部の魔術の無詠唱化、魔術および魔法のブースト化と固定化、貫通化、等の効果が一つ一つの魔法石に付加されている。

「でも、これは普通の魔法石じゃないからね」
 神妙な顔をしてナナが答えた。

―――普通に宝石に魔力を込めようと思ったら、長い時間と年月が必要になる。
 普通の魔法石に、火を放つぐらいの魔術を込めようと思ったら数日かかる。また、込める量によって術の質と威力が変わってくる。
 純度の高い鉱石か魔術師ならば、短縮することも可能である。
 またこれは、簡易魔術回路にもなる。
 魔力として扱うのに、何も魔力だけで動いているわけではない。
 エーテル体として変換してしまえば、従者の体力や精神力または、魂までもが魔力として使えるのだから。

「これが、私のもつ『魔道・魔道具「無名塔」』だから」
 と力強く答える。
 決心した面持ちで、コスモスは言った。
「これを使うからには、他の魔術師なんかに負けるわけにはいかない!」

―――そして、今二人はロケットに乗っていた。
 そこで、二人は発射の準備をしている。
「まさか、ロケットなんて科学的なものに乗るなんて思いもしなかった」
「面白いじゃん。ロケットに乗るなんて、この機会ぐらいしかないんだし」
「まぁ、そうなんだけど…さすがは手配されていただけに、準備は整っているね。いつでも地球に行けるよ」
「たのしみだな~♪」
 とコスモスは楽しそうにはしゃいでいた。
 それを見てナナは微笑ましく言った。
「本当に楽しそうね」
(少し羨ましいかな。)
「んでさ。ちきゅうって、どのくらいで着くの?」
 ナナはモニターを操作して確認した。
「えーと…4日くらいだって」
「えぇーーー!!長いー!二時間くらいで着いてよ!」
「無茶言わないでよ!そんな簡単に行けたら、人類はもっと進歩出来たよ!」
「ぶー!つまんないー!!」
 頬を膨らませてナナに抗議する
「もぉ~また駄々が始まったよ…」
 その光景を見てため息を吐く。
「ん?そうだ!ナナ!このロケットに防御結界張って!!」
「え?何をする気なの?」
「いいから~早く~!」
「…うん」

「古の祝詞よ 彼の者の羽衣を纏い
 彼の者に護りを与え 彼の者の力となせ!」

「ケージ・オブ・ファンンタジア!」
    「幻想の檻!」

 術を唱えた瞬間見えない守りがロケットを包んだ。
「これって、結構強度強い?」
「そうそう敗れるような結界じゃないよ」
 胸を張ってナナは答えた。
「さすが!ナナだね♪そんじゃあ…始めようかな」
 そして、コスモスの眼に焔が灯った。
―――魔眼の目だ。

「暁の果てに喪われし 力の根源よ
 最果ての炎翼纏いし 不死鳥の羽根」

「ヴォルケーノ・エンペスト!」
  「炎帝の炎翼!」

 コスモスが魔術を唱えたら、ロケットの両端に焔の翼が現界した。
「え!これってまさか…」
「そんじゃあ、ばびゅーんと行こう!!」
「ちょ、ちょっと、待ってってええええぇぇぇぇぇーーーーーーー!!」
 ロケットには、ナナの絶叫とコスモスの笑い声が響いていた。

―――二時間後
 夕日が大地を照らしていた。
 時刻は、夕方で辺りは茜色に彩られていた。
 殺風景な大地を風が凪いでいる。
 遠くの方に森林があるようだが、それ以外は何もない広大な土地が広がっていた。
 その平和な場所に爆発音が轟いた。
 そう。二人が乗っていたロケットが大地に突き刺さったのだ。
「ちきゅうに着いたぁぁーーー!!」
 一人楽しそうに、ロケットから飛び出してきた。それに続いてもう一人出てきた。
「はぁはぁ。し、死ぬかと思った…まぁ、死ねないけど」
「快適な船旅だったね♪」
 辺りをきょろきょろと物珍しそうに見ながら、ナナに話しかけた。
「宇宙空間を音速以上で飛ぶなんて体験するとは・・・思いもしなかったよ」
「もう一回行っとく?」
 満面な笑顔でナナに話しかけた。
「結構です!」
 不機嫌そうにナナが答えた。
「ありゃりゃ~怒ってらしゃる」
 背後から足音がした。
 それに気づいて、二人は振り返り見知らぬ人物を確認した。
「お待ちしていました。あなた方がコスモスさんとナナさんですね?」
「ええ、そうですけど…あなたが教会から手配された方なんですか?」
「はい、そうです。私の名は葛葉と申します」
 見た目は全体的に黒装束で、見ただけでは年齢が分からない。さらに、性別すらも分からない立ち振る舞いと中性的な声をしている。
 そして、ただ立っているだけだというのに隙がない。
 ただ特徴的なのは、顔に仮面を着けているということだけだ。
「えっと…予定していた日にちと時刻とは違うようですが…」
 仮面を着けて表情が分からないのだが、困惑しているのが分かりやすかった。
「えっと…ちょっと早く着きたかっただけですよ」
 とナナがいい繕う。
「…そうですか。では、早速ですが目的の場所までご案内させていただきます。
 道なりは長いので、その間に我々が調べ上げたカナメさん及びその周囲の状況についてご説明します」
 そう言い、三人はアスナプルの屋敷へと向かった。

―――数時間後、葛葉に案内されて森を抜けていた時のことである。
 そこは、闇が支配していた。
 森が光を遮り漆黒の闇広がっている。
 そこに、一つの光点が輝いていた。
 ナナが明かりを灯す魔術を使い半径10メートルほどが、光に照らされていた。
「暗いね~。こんなに暗いと何か出て来そうな感じだね。魔獣とか幻獣とか…ん?こういう場合は触手とかかな?いやーん♪」
 そういい腰をくねらせながら、イヤイヤと一人妄想にふけていた。
「えっと…なんですかあれ?」
 葛葉は困惑して、ナナに助けを求めていた。
「うん。あまり気にしないであげて、頼むから」
 そう言い、コスモスを見ないようにしながら、恥ずかしそうに嘆いていた。
 それに対して、葛葉は「そうなんですか」としか声がかけれなかった。
 そして、急に葛葉が立ち止まった。
 それを見て、コスモスとナナはその後ろで立ち止まった。
「ここら辺一帯は監視カメラと、トラップが沢山あるので気をつけ下さい」
 葛葉は、右斜めの方角に指を指してから話し出した。
「こちら道を行きます。そこなら、トラップは少なめですので」
「へー。よくそんなこと調べられたねーどうやったの?」
「お話することではありませんので、秘密です」
「ふーん。まぁ、いいかな。ナナお願いね~」
そう言われるなり、ナナは詠唱を始めた。

「幻想の時の鐘よ 欠片を紡ぎし
 偽りの月の霞月よ 我が言霊に答えん!」

 「刻限の幻想」

「さぁ、行きましょう」
 そう言い二人は歩き出したが、何が起きたのか理解が出来ない葛葉は立ち尽くしていた。
「え!?な、何をしたんですか!」
「何って、ここら辺一帯の電子機器を支柱に押さえただけだけど?」
 さも当然という感じでナナが答えた。
「そ、そんな簡単に出来るはずがない!」
「普通ならね」
 それを弁解するようにコスモスが葛葉の問いに答えた。
 それに、続いてナナが言う。
「電子機器を別次元軸に固定したって感じかな。簡単に言うと、向こうに流されるはずの映像を差し替えているって感じだね。
 密封された箱をずーと監視しているって状態だと、向こうには何が起きても気付けない。
 だから、あちらの目を奪えたことになる。今回は結構カメラ多くて助かるな~」
「前回は監視機器少なかったから、ずいぶん迷ったしね。ナナ~できた?」
「今ちょうど終わったよ。これが屋敷の見取り図ね」
 そう言ってナナは、虚空に屋敷のマップを写し出した。
「!?す、凄すぎる…!」
「う~ん。無駄に広いね~この赤い点がカナメさん?」
「そうだよ。ご丁寧な監視カメラに感謝したいね」
 満足そうに微笑んで答える。
「さぁ、行きましょう」
 三人は屋敷へと歩き出す。
 歩いている最中に、疑問に思っていたことを葛葉がナナに質問した。
「M所属の魔術師は皆こういうことができるのですか?」
「そうだね…ここまで手際よく出来る者は少ないだろうし術としては、結構高度な部類に入るから難しいかな。まぁ、例外もいるだろうけど。
 うん。一つだけ言える事は――私の眼からは逃れることは出来ないことかな」
 と、碧眼の眼が葛葉を射抜くように見ていた。

―――屋敷内
 アスナプルは自身の部屋で、今後のことについて思考をめぐらせていた。
 そして、何かを思い立ったのか近くに控えていた輪廻に語りかけた。
「――輪廻君」
「はい、鮫アスナプル様なんでしょう?」
 先ほどまで、影に隠れていた輪廻が出てきた。
「なんでも、ソウスケが修行したいと言っていたそうだな?」
 少し考えてから、輪廻が言った。
「ええ、そうらしいです」
「そうか。では、彼にこれを渡しておいてくれないか?
 武器がないのでは、何かと困るだろう。模造刀ではなく、真剣だから気付けるように」
 そう言って、机から匕首を取り出して輪廻に渡した。
「はい、分かりました。届けてきますね」
 そう言い、すぐに輪廻は部屋を出ていった。
(さて、彼があの摩剣をどう使いこなすのか見せて貰おう)

 輪廻は二階のソウスケの部屋に行く途中の廊下で、前方を暇そうに歩いているソウスケを見つけた。
「あ、居た!ソウスケさーん!」
「ん?輪廻か。何の用だ?」
「アスナプル様がこれをソウスケさんに渡すように云われまして、真剣ですから気付けて使って下さい」
 ソウスケは、手に収まるほどの大きさの棒状の何かを輪廻から渡された。
「なんだこれ?」
「匕首(ひしゅ)です。切るのも良し、投げ飛ばすのも良しな便利な武器ですよ。難点なのがリーチの低さですけど…」
「なるほど。でも何故この武器を俺なんかに渡すんだ?」
「武器を常に携帯するには、この大きさが良いと判断されたのでしょう。急に持ち慣れてない剣や槍なんて渡されても困るでしょう?」
「まぁ、確かにそうだな」
「今日は、使い方とかを私がレクチャーしますから、覚悟してくださいよ~♪」
 そう言い輪廻が悪戯っ子のように微笑んだ。
「う、なんかきつそうな予感が…」
 ソウスケが顔を歪める。
「大丈夫ですよ~♪痛いのは最初だけだと思いますから♪では、今日は外で特訓しましょう」
(確かに強くなりたいし…これは逃げれそうにないな。)
「ああ、分かった」
 ソウスケは大人しく輪廻の後を着いて行った。
 輪廻は、匕首のある程度の使い方を話しながら、屋敷の二階からエントランスホールに行き階段を降りる。
 ここのエントランスホールは、いわゆる舞踏会が開ける程の広さを有している。
 そして、ここから正面玄関を通ることが出来る唯一の場所でもある。
(雨が降っても、ここなら訓練出来るな。)
 そして二人は、屋敷の外に出た。

 外は闇に包まれていた。
 空には、三日月が輝いていて、所々で虫の鳴き声が聞こえ心地よい風が吹く。
 そんな静寂な夜の世界が支配していた。
「ここが地球だなんてな。火星とは大違いだ。風が心地いい。本当に核の冬が起きたなんて思えないな」
「さすがに、何年も経ってますからね~。自然の生命力の凄さですよ~」
(まぁ、それでもこの場所だけは、別の話なんですけどね。)

――三人は鮫アスナプル屋敷に着いた。
「う~ん。どうしよう?どこをぶった切って入る?」
「効率的に行きたいところだけど、結界が張ってあるね」
 ナナは屋敷を見つめながら判断を下した。
「あ~厄介だね。破れない?」
「…恐らく無理かな。向こうのデータベース見たけど、屋敷全体にかけてある見たいだし」
「何か秘策はあるのですか?」
「普通は、結界を使う場合一時的に身を守るか閉じ込めるか、または土地に掛けるのが目的なんだけどね。
 違う次元なんかに繋げたりするのとかは、また別の話なんだけど。
 簡単な結界を張るなら、それなりに長続きするんだけど…これは、防御結界だね。
 それもかなり強力な。それに、これはつい最近出来た感じじゃない。 
 普通の術師なんかじゃあ長続きしないし、護符や何かでは効率的じゃない。
 ――となると、ここの土地自体に何かあるしかない」
「土地に?ということは、霊脈があるってこと?」
「おそらくね。それに、見えるでしょ?屋敷全体に何か靄(かすみ)見たいなのがかかっているのが。
 ――これほど強いということは、かなりの場所だろうね」
(ここでは空間が不安定だから、アレを使うことは出来ないか…)
「ん~どうするのナナ?」
 とナナに話しかけても肝心の本人は、思考の海に潜っていた。

「ん?」
 急に直感めいたものが、ソウスケに語りかけてきた。
 遠くの方をよーく見てみると、3人の見知らぬ人達がかろうじて見えた。
「輪廻。あっちの方に人がいるけど…どう思う?」
 そう言いソウスケは、その人物達がいる方向を指差した。
 訓練の準備をしていた輪廻は一旦手を止めて、言われた方向をじーと観察した。
「し、侵入者ですよ!ソウスケさん!」
 明らかに動揺しながら、慌てふためいていた。
「まずは、話し合うのが先決じゃないのか?この間の人達もそうだったし。」
「ここまでに、何十もある監視カメラと罠にかからずに来るなんてありえません!前回の方々だって、写っていたんですから!」

 その様子を葛葉は、木の上から観察していた。
「屋敷の前に二人います」
 木の上から、下にいる二人に声をかけた。
「あ~確かに、とお~くの方に二人いるねー」
 とコスモスは魔術をかけた目で屋敷を見て、二人いるのを確認した。
「屋敷から出てきたということは、あそこの住人だろうね。さてと、それじゃあ交渉に行きましょうか」
 ナナはそう言い、コスモスと共に屋敷に近づく。
 そして、ナナ達は輪廻達と話せる十分な距離をとってから話しかけた。
「こんばんは。月の綺麗な夜ね」
「え?えっと…こんばんは」
 いきなり来た来訪者に輪廻は、体を硬くする。
 そんなことなど気にせずに、ナナは悠然と話を続けた。
「教会の者です。少しお尋ねしたいことがあるのですが…よろしいですか?」
 それに、輪廻は無言で頷いた。
「この人を探しているのですが、ご存知ありませんか?」
 そう言う、虚空にカナメの顔が映し出された。
「…」
「な!?――カナメ!」
 突然のことだったので、ソウスケは声を上げてしまった。
「どうやら、ここで会っている様ね」
「っ――!教会がカナメになんの用なんだ!?」
 ソウスケは、激怒にも近い声で言う。
「用も何も彼女にお話したのちに、教会にご同行お願いするだけですよ」
 それを冷静に対処するように、ナナは静かに告げる。
「そんなの信じられるか!お前達をカナメに会わせる気はない!」
 ソウスケは、早口に捲くしたてる。
「はぁ。また頑固な方ですね、大人しく従って頂ければ面倒なことにならないのに…」
 ため息をつきながら、演技がかかったように話し出した。
「話し合いで解決できないのであれば…強行突破しかないですね。
 コスモス?いつもどおりお願いね。私は結界を破るから」
(邪魔者が来られても困るかな。
 まずは、屋敷に出入りできなくしないと…同時に、結界の上に結界を張って相互干渉させて破壊するしかないかな。)
「コスモス。少しの間時間稼ぎをお願いね?」
「うん。分かった!」

「彼の地を統べし時の王よ――」

 そして、ナナが永唱を始める。
 コスモスは、それを確認してから、二人の前に立ち塞がるように出る。
「それじゃあ、始めようか」
 そこには威圧と威風を携えた魔術師が立ち塞がり、死の宣告を二人に告げる。
「――殺し合いを」

 「ほうき星のごとき 彗星の光の奔流を抱く
 最古なる永劫の炎よ その煉獄を我に魅せよ!」
         
「フレイム・インフェルノ!」
  「煉獄の烈火」

 焔が放たれた。
 ソウスケは、その光景を呆然と見ていて反応が遅れてしまった。
 だが、すんでのところで輪廻に蹴り飛ばされて、難を逃れることができた。
 地面を転げまわって、背後を振り返った時に自身が先ほどいた場所で爆発が起きた。
「こ、これが…ま、魔術なのか?」
 ソウスケの前に輪廻が出る。
「ソウスケさんは、屋敷に戻って誰か助けを呼んできてください!ここは、私が食い止めるから!」
「わ、分かった!」
 ソウスケは急いで駆け出そうとしたが、何者かに背後から拘束され地に伏した。
「まぁ、そう焦らずに事の成り行きでも見ましょう」
 いつのまにか、葛葉がソウスケを拘束していた。
「は、離せ!」
 力いっぱい抵抗するが、物凄い握力で押さえつけられて動くことも出来ない。
(ぐ、動けん。こいつ…男か?)
「ソ、ソウスケさん!」
 輪廻が振り返った時には、ソウスケは葛葉に拘束されていた。
(助けないと…でも、前にいる魔術師に背は向けれないし…まずはあちらをどうにかしないと…)
「邪魔をしなければ、何もしませんよ。まぁ、満足に動くことも出来ないでしょうけどね」
 その間に、コスモスは七つの宝石を軽く上に投げた。
 それらが、コスモスを中心にして浮いた。
「――また魔術師を殺すことになるのかな…でも!やらないと!」
 輪廻は相手の出方を伺って、対策を考えるが相手のほうが早く動いた。

 「奈落に落ちた 真紅の華よ
 炎帝言霊に答え その御身を魅せよ」

「フレイム・サラマンダー!」
 「天壌に燃える火精!」

 数多の焔が大地を駆け巡った。
 それにより、周囲に焔の火柱が立ち上がって輪廻を包囲した。
(囲まれた!?)
 冷静に退路を探すが…見つからない。
 その焔の中に向かって、コスモスは突きの構えで突進した。
 だが、後一足のところで頭上から悪寒を感じ取り立ち止まる。
「ディジョン・スラッシャー!」
 突如頭上から、高速の斬激がコスモスに襲い掛かる。
 その奇襲に、持ち前の勘が働いて俊敏に対応する。
「っー!」
 コスモスの回りに飛翔している宝石が光る。

「フレイム・インフェルノ!」
  「煉獄の烈火!」

 一瞬の内に魔術を構成し、剣に焔を纏わせて迎撃する。
 炎を帯びた剣と、重力を帯びた剣の二つが攻めぎ合い辺りに轟音と爆発が轟いた。

―――本来ならば、力負けしてしまうだろう。
 急ごしらえ程度の魔力量では、爆発的に溜めた魔力には屈してしまう。
 だが、ナナの持つ宝石の力がそれをも覆す。
 永唱を簡略化し、魔力と威力を増幅し、魔術を固定化する。それを一瞬の内に達成させ術を放つ。
 故に、ナナの持つ宝石の力によって、あの芸当ができるのだ。

 二人は、直ぐさま間合いを取って形勢を立て直す。
「大丈夫?輪廻」
 敵から、目を離さずに背後にいる輪廻に話しかける。
「クオさん!ありがとうございます!」
「仲間か?厄介だ」
 ソウスケを拘束している葛葉が愚痴る。
「ナナは結界を構成中。葛葉はソウスケを捕獲中。こっちは――能力の分からない二人組みか…分が悪いなぁ」
 そう愚痴るコスモスだが、楽しそうに笑っていた。
 自身を鼓舞して、テンションを上げていく。
 相手が強ければ強いほどさらに獰猛に、かつ魔力が満ちて爆発的な瞬発力と運動能力が、増していくのがこの魔術師の本質だ。
 焔のように燃え上がり、天を翔る速さを合わせ持つが故に、二つ名が『天上の焔魔』等という少女には似つかわしくない名を持つ。
 だがそれ故に、歯止めが利かなくなる時がある。
 彼女が参加する戦闘では、まず生存者がいない。
 さらに、自身の魔術により仲間に危害が及んで死んでしまうことが殆どだ。
 故に、この二つをクリアできたのが、ナナだけだったのだ。
 だから彼女がコスモスを監視しながらも協力する。また場合によって止めるのがこの二人の業務上での関係だ。

「向こうはかなりのやり手の魔術師か…まだやれる輪廻?」
「大丈夫です。二人掛かりでやればあいつを倒せます!」
「じゃあ、行くよ!」
「はい!」
 二人が駆ける。

「フレイム・インフェルノ!」
  「煉獄の烈火!」

 コスモスが放った焔をクオが断ち切る。
 その中を輪廻が駆ける。袈裟切りにコスモスに斬激を与えようとするが、それを剣で受け止められる。
 その隙をついて、クオがコスモスの背後から奇襲をかけが、それを振り向きもせずにまるで予知していたかのように、輪廻を飛び越して避ける。
「――っ!小さくてすばしっこい!輪廻!一気に方をつけるわよ!」
 それに輪廻は頷く。

(むえいげっか!)
「無影月華!」

「宇宙の塵となりなさい!コズミック・スラッシャー!!」

 二人の威力と素早さが加わった恐ろしいほどの渾身の必殺一撃が、攻めぎ合い炸裂した。
 それにより、爆発が起き地面が砕け衝撃波が起きる。
 その斬撃はコスモスの体を真っ二つに・・・
「残念でした」
 ならなかった。
 所々ボロボロだが、その瞳に焔のように燃え上がる魔眼の眼を携えて、彼女はそこに立っていた。
「な!」
「あれだけの攻撃に堪えたの!?」
 驚愕の光景に二人は目を見開いた。
 徐に、コスモスは目を閉じた。
 その者がもつ奇跡の力を使って、世界に干渉する。
「あれは…もしかして魔眼!?」
「そう。この眼は世に幻想を可能とする。
 この目は…魔眼の目よ。そして――集束の魔眼…発動」
「ぐっ――!な、何?この魔力が吸い取られるような感じは…。」
 輪廻は今まで感じたことのなかった感覚に、苦悶の表情を浮べる。
 こ、この威圧と魔力波は…魔眼の特性なの!?」
 その眼に朱の紅いよりも、焔い(あかい)眼を抱いて力強い言の葉を紡ぐ。
「コスモス・カーラネミ・シヴァ・アルタシスの名の下に、無名塔――顕現!!」
 その一言に応えるかの如く、剣の形状が変化する。
 大剣の中心が真横に割れた。
 さらに、その残った部分が縦に分かたれた。
 ――そう。その部分が双剣へと変貌したのだ。

「ヴォルケーノ・インフェルト!」
   「炎帝の焔翼!」

 コスモスの背中に煌々と燃え上がる焔の翼が顕現する。
 それにより、周囲は灼熱の焔に覆われた。
 否。焔に埋め尽くされた。
 圧倒的な力のエネルギーが周囲を覆い熱風と爆風が吹き荒れる。
 そして、少女が双剣を構えた。
「行くよ。覚悟はいい?」
 そう伝えるなり、少女は翔けた。
 己の翼を使い飛翔し間合いをつめる。 
「はっ――!」
 双剣の乱舞の斬激が二人を襲い一撃二撃と確実に速さを増していく。
 剣の斬激がまるで、舞うかの如くいくたびの軌道を描き。その速さは、高速から神速の領域へと変わった。
 クオはかろうじて、コスモスの剣を受け止めるが、確実に押されていく。
 振りかぶるたびに焔を纏った双剣が、幾たびの焔と衝撃波を生み出しクオに業火の奔流浴びせ続ける。
「くっ――!」
 圧倒的な力の前に防戦一方しか許されず、クオは苦悶の表情をうかべる。
「せいっ――!」
 輪廻が横から加勢する。
 だが、それを盾に防がれた。
 そう。
 先ほど分かれた剣の残りがコスモスの回りに浮いて、盾として輪廻の鎌を受け止めたのだ。
「――っ!」
 その光景に、驚愕の表情しかうかべることしか出来なかった。

「レジストリ!」
 「開放!」

 盾が割れた。
 正確には、盾だったものが四つに分解した。
 頭一つ分より、少し小さめのものが空中を舞う。
 それらが、縦横無尽に飛び交い火、水、土、風の魔術をアトランダムに撃ち放った。
 それを輪廻は鎌で迎撃するが、数が多く幾つかは自身に当たってしまう。
「ぐ――っ!」
「え、遠隔魔術!?」
 迸る戦慄と慟哭が戦場を支配した。
 突然四つの無名塔が光りだした。
 そして、加速器のようにコスモスの周りを円を描く様に回りだした。

  「断罪の罪を逃れし 雷鳴の産声よ
 天空を裂き大地を滅す一瞬の煌きを示せ!」

  「ライトニング・ディバイダー!」
      「雷迅の閃光!」

「「うあぁぁぁぁっ!!」」
 一瞬の閃光の光が夜の帳を掻き消し周囲を光が満たした。
 その光が収まった後には、焔に彩られた煉獄の地獄が広まっていた。

――屋敷内。
 自身の部屋から、外の戦闘を観察していたアスは言葉を漏らした。
「ふむ。捕縛結界か…してやられたな」
 そう言葉にするが、さも当然という口ぶりでアスが言った。
「どういうことなんですか?」
 アスの傍らにいた睦月が質問する。
「元々、この土地周辺には防御結界が張っていたのだよ」
「この土地にですか!ありえません!」
「いやいや。霊脈が溢れていたのだよ」
「…」
「だから、ここに屋敷を立てたのさね」
「外部からは、強力な防御結界なのだが…いかんせん内部は、魔力が満ちているからもろいようだな。
 ここを砲台代わりにするならよいとも考えたのだがな。いやはや、やられたよ。
 どうやら、向こうには結界を操れる魔術師がいるようだな」
(完全な防御を檻に変えてしまうとは…やるな教会の連中め。)

「栄華の都!」

 最後の一説を唱え術が完成し、屋敷に新たに結界が張られる。
「――終わったようね。こっちも結界が完成しわ。
 あの場所向かって撃ってば、屋敷全体に覆われている結界を破壊できるよ」
 コスモスの足元で、地に付して身悶えている二人がいたが気にもしないで淡々告げ、ほぼ屋敷の中央に指を指す。
「どのぐらいの威力が必要になるの?」
 その穿つべく場所を確認しながらコスモスが言う。
「そうだね。宝石を使ったスターダストブレイカーの威力も見たいから、全力でやっていいよ」
「分かった」
 コスモスの足元に、巨大な五芒星の魔方陣が展開し、その周囲に魔力が集まり渦が出来る。
 そして、コスモスは右手を自分の前に突きだした。
 それに応じて、手の双剣と四つの無名塔がその前に行き六芒星の魔方陣を形作る。
 さらに、七つの宝石が六芒星の前に七芒星の魔方陣を作り上げる。

「刻限を告げる時の鐘の音よ!」

――それは、一つの理に背いた力。五大元素の力の流れ。星の印。
 それは世界に干渉しこの世に災いを撒く。
 そして――それは姿を成す!

 「神々の戒めの鎖を解き放ち」

 「天空を覆う朱の焔を砕き」

   「一途に煌めく星々の輝きを灯せ!」

 周囲に散りばめられていた魔力を全て集めて、二つの魔方陣が加速器のように高速回転する。
 それは、収束された光を纏って輝きを放ち、その神々しく見える輝きは、星の煌きを帯びていた。
 少女は自身の限界までの力と魔力を使って、その魔法をこの世に顕現させる。
 そして、少女は叫びながら集められた魔法を撃ち放った。

       「一撃!滅殺!」

      「イグニッション!!」

「スターダストォォォーーー!ブレイィィカァァァーーーー!!」
      「畏怖されし星屑の息吹!!」

 収束に集められた大魔力の光の奔流が撃ち放たれた。
 そして、周囲に光が満ちた。一瞬の内に周辺はまっさらな土地と化していた。

――そのはずだった。
 その爆心地に一人の少女が立っていなければ。
――そう。
 そこには、カナメがそこに立っていたのだ。
 彼女は左手を前に構えて佇んでいた。
 その光の魔法の奔流に呑まれながらも、平然と立っていたのだ。

「な!!」「え!!」
 コスモスとナナの声が重なった。
 その光景を見てナナは考える。
(どういうこと!?彼女が結界を越えたというの?いえ。そんなこと…今の彼女にはできないはず。
 それも問題だけど…魔法を打ち消した?いや。違うか…あれは、もしかして――)
「すぐに立ち去ってください!」
 カナメが静かに言った。
「待って!話があるの!」
 コスモスが叫んだ。
「貴方達に話すことは今はないわ!」
 冷徹に、だが拒絶するかのようにカナメは言った。

(…仕方がないかな。ここは、退くしかないか。)
「――の名の下に、無名塔…顕現!」
 その言葉に応えて、七つの宝石がナナの元に集い目映い(まばゆい)輝きを放ち本来の形に変貌する。
 次の瞬間には、ナナの左手にまるで鏡のように磨き上げられた白銀に煌く太刀が握られていた。
「せいっ――!」
 そして、その太刀で何もない虚空を袈裟切りに両断する。
 その切れ目に、人一人分が通れる七色に輝く穴が穿たれた。
 ナナはその光の中に右手を突っ込んで、相手の首根っこを掴んで引っ張り出した。
「ふぇ?えぇ!なんで…私は、ナナに掴まれているの!?」
 そう。
 かるく100m以上離れた位置にいたコスモスをナナは、穴から引っ張りだして来たのだ。
 そして、コスモスが完全に出た瞬間に穴は閉じた。
「撤収するよ」
「えぇ!でも、目的の人が目の前にいるんだよ?」
「怒っている相手に、お話してもいい結果は得られないわ。ここは退くのも一つの手だよ」
 ナナは、子供を諭すように言う。
「う~ん。分かった」
 しぶしぶと言った感じでコスモスは了解した。
 それを聴いたナナは、虚空を逆袈裟切りに切って遠くにいる葛葉の前に穴を作る。
 その穴に葛葉が入るのを確認してから、自分の前に袈裟切りをして新たな穴を穿つ。
「それでは、カナメさん。また今度お会いしましょうね?」
 そう微笑を浮かべながら、ナナが言う。
 そして、二人は七色の光の中に消えていった。
 通った後には、その切れ目自体も跡形もなく消えた。

―――つづく―――
ツールボックス

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