たいしょお2

たいしょぉ

その1

「邪魔な奴はあと2人・・・待っていろ。」
彼女は再び高く跳躍し移動する。基地の跡地は既に血の海になっている。主な被害者は教会の追撃部隊とドウラン一家の回収員である。彼女の担いでいる大剣はAT斬馬刀(電磁斬馬刀)といい斬馬刀に新たな法則“魔力”を利用した改良版である。本来斬馬刀は対人用ではない、重すぎるのだ。人を斬るだけならばあそこまでの質量は必要ないのだ。そこで改良点…刀の芯を針のように細くし、芯と刀の間にプラズマを発生させる。プラズマによって生じた電磁誘導で刃と芯を30センチほどの空間を開けて静止させる。こうする事により細い芯と刀の柄ぐらいの質量しかないものになる。なお刃と芯には強力な電流が流れており、取り扱いは危険である。刃の外側は引力魔法が込められており刃の方に向けて圧力がかかっている。この刃にかかる圧力で形状を維持している。刃と芯の空きスペースには何もないように見えてプラズマがあるため銃弾程度なら止めることが可能である。形はアルファベットのAとTを縦に重ねた形になっている。
彼女は新たに男女ペアの獲物を発見した。男を出会い頭に袈裟斬りにし、返り血を浴びることなく女を縦に裂いた。
殺戮を終了した彼女は血の海及び死体を圧力魔法で小さく圧縮して瓦礫に忍ばせた。これで少しのカモフラージュになるだろう。最後にAT斬馬刀を収納し、何事もなかったかのようにその場を離れた。死体が残された基地跡地には静けさが戻った。




ここは地下室。暗い室内の椅子に男は座り、少女は扉の前で直立不動で話している。
「そろそろ行動にでたいものだね。」
男の話し方はどこか高貴な話し方で、それでいて全く嫌みにならない。
「はい…。そろそろいいものかと」
少女は相変わらず直立不動のまま話している。
「10年か…実に長いものだった…しかし今…好機が訪れた。まさか自分からこちらに向かってくるとはね。……あぁ…楽にしたらどうかね…」
男はゆっくり立ち上がり少女の方に向かう。そして少女の髪を撫でる
「……あ…」
少女は直立不動をやめ、おずおずと男を見上げる。
「君には期待している…。他の皆の道を開いてくれ。」
男は少女に優しく伝え、椅子に戻る。少女はまた直立不動に戻る。
「はい!尽力致します!では失礼します!」
少女は嬉しそうに敬礼をし、退室した
「…にしても…全く…また同じことを繰り返そうというのか…愚かな…ここでの過ちを糧にしていないな…まあ何度でも粛正してやろう…このアスナプルが」


―数日後―AM11時30分

「相変わらず遅刻か…あの上司は…」
ソウスケは相変わらずの上司の遅刻に立腹していた。今度はどんな罰をくれてやろうか…“1週間他人とのあいさつをシャンハ~イにする”とかはどうだろうか…意味のわからなさが気持ち悪いな…
考えてる内にハチワン本人が入って来た。
「お~す!さてみんなに話がある!」
「俺も話があるがとりあえず恒例行事の懺悔タイムといこうか。」
「待て…いきなり決めつけるなソウスケ…確かに恒例になりつつあるが今日は幼j…いや用事があって早めに来ていたんだ!」
「…以下禁止タグ…アニメ、ゲーム、北方…並びにそれに準ずるもの」
「カナメさんまで!確かにウジュンゲもオウムも可愛いが…いやいや今日は新入社員がいるんだよ!入ってきて~」
ハチワンの言葉と共に入って来たのは2人の少女だった。
「え~と…まず背の小さい子が九十九さんです。」
紹介された少女はおずおずと前に出てお辞儀をする。身長は恐らく150前後くらいか…真っ黒の髪の毛をポニーテールにしてるのが印象的である。
「はじめまして…えと…今日から入りました九十九白(つくもしろ)です…頑張ってお仕事覚えますのでよろしくお願いします…」
チラリとハチワンに視線を向けたあとすぐうつむいてしまった。話すのは苦手のようだ。
「ふむ…では隣の背の高い方は零崎さん」
ハチワンの掛け声で女性は前に1歩でて自己紹介をする
「零崎桜花と申します。よろしくお願いします。」
軽く会釈をし1歩下がる。


頃合いを見計らったかのようにハチワンが片手を上げる。
「さて…ここからは恒例行事の質問タイムと行こうか!!」嬉しそうなハチワンの顔に九十九は1歩後ずさりする。
「ん~…なんだい?大丈夫大丈夫!質問の8割は普通なので!」
「クオ、消火器を持って来てくれ…」
「え…火事ですかセンパイ?」
「大丈夫だ…すぐに消火する…流血はまのがれないが。」
「うわあ……」
「じゃあまずは俺から!2人のスリーサイズを教えt」
「たわけが!てめえいきなり何聞いてやがるボケが!」
「何言ってるんだソウスケ!サイズにあった仕事があるだろうが!」

「あの…私恥ずかしくいので…お仕事に必要な情報なのでしたら…82と51と72です」
白は顔を真っ赤にしながらつぶやくように答えた。
「88、57、86です。」

桜花の方はしっかりした声で答える。
「おいおいあんたらも答えるな答えるな!あとお前はもうすぐ消火器くるから頭洗って待ってろ」

「まあ冗談はさておき配置なんだが…新しく3人入ったせいで大きく変わる。まず新人から。九十九さんは普段は雑用、清掃指令が入ったらデブリの記録をしてもらう。零崎さんも同じく普段は雑用、んで清掃指令の時はデブリの軌道元計算をお願いする。カナメさんは普段はお茶汲み、清掃指令時には臨時事態発生時の連絡係って事で。んでもってソウスケは普段は奴隷、清掃指令時はデブリの清掃、クオは普段は奴隷、清掃指令時にはオペレーターとしてソウスケと連絡を取る。以上だ。」
さらさらと部下の配置を言い渡すのを見る限りやはりただの遅刻ではないようだ。無理を言って匿って【かくまって】るカナメも社員として問題を済ませているのも流石である。
「…だがしかし…やっぱり貴様は消火器と熱い接吻をしたいみたいだな…身を滅ぼすほどに濃厚な口付けをさせてやろう…」
「いやほら冗談だって!な?ほら消火器下ろせよ!使用方法が違うって!用法容量を守って正しく使えって言うだろ?」
「ほうら消火器が顔を真っ赤にして待ってるぞ?熱いディープキスを交わすがいい…顔が変形するほどのな!」

「ぬわあああー!!」



「いてて…マジで殴るんだもんないつも…えっと今日はもう一人気になる人材が居てだな…入ってくれ…」

ハチワンの指示で入ってきた人物はクオだった。いや…そんなはずはない…クオは今隣にいる…クオ自体も酷く驚いてるようだ。
「正直見分けがつかなかったし今朝君を見るまではクオかと思っていた。いきなり俺の部屋に入って来ていきなり寝てしまったから体調が悪いのかと思い置いておいた。しかし本物のクオを見た時すぐに自宅にもどり彼女に追求した。その結果得た情報が…クオ…この子は君のいm…」
「お兄ちゃん…」
ハチワンの話に夢中になっている隙にか少女はいつのまにかクオの横に移動し、クオの裾を引っ張っている。
少女は続けざまに話す。
「私の…お兄ちゃん…たった独りだけの…家族…」
少女は今にも泣き出しそうな顔でクオを見つめている。
「…んで…クオは記憶にあるのか…?」ハチワンは少女の前までわざわざ歩きクオに訪ねる。対するクオは暗い顔をし、小さな…いつもの職場なら聞き取れないくらいの小さな声で説明する。
「実はボク…産まれてすぐに施設に連れてかれたみたいで…家族とかは…1人も…」
「わかった。もういい。つまり生き別れみたいな感じだな。」
ハチワンがクオの話を強引に遮り、さり気なく移動してクオを隠す。あまりいい思い出ではなかったようだ。
「……ごほんっ!クオ、会議中に欠伸をするな。顔洗って来い。今すぐだ。」
「はい…。すみません。」
(5分後)
「すみません!会議中に欠伸して!もう泣k…眠くないので大丈夫です!続けて下さい。」
少し元気の出たクオを見たハチワンは軽く頷き
「ったくホントにお前は…新入社員がいるのによくあんな大欠伸できたよな~www」
と一言皮肉を言い話を続ける。
「一つ疑問が残る…クオの知らない情報を何故この子が知ってるかだ。」
ハチワンは少女を一瞥し
「何故君はクオが家族だとわかった?」ここに来て誰もが抱いている疑問を投げかける。
「……」
少女は何も言わない。クオの裾を再び引っ張り、顔を近づける。
「えと……昔、この子も施設に送られたそうです。ボクの存在に気づいたのは10歳の時で彼女の親と名乗る人から写真が贈られたそうで…その写真が施設で遊んでるボクだったらしいです…こんな感じ?」
クオが説明する。
「それで探し続けた結果ここにたどり着いたわけだ………よし…お前うちの部の社員!んでもって部屋の空きないからクオの部屋行け。このまま俺の部屋に居ると俺の理性がヤヴァイ」
「あの…ボクも一応男なんですけど…」「…会議中に寝てた貴様に拒否権はない。」
「うわあ…でもいいや。初めての家族だし!」
「んで君名前は?」「……」
「えと…睦月と言うそうです…」
「だあウザイ普通に話せ!」
こうしてハチワンの部署には新入社員が4人入った事になった。



たいしょぉ

その1を見てない方はフィーリングで察して下さい。





新入社員が入って数日が過ぎた。睦月は相変わらずクオの化合物の如くくっついている。彼女自体が話すことは一度もなく、いつもクオが通訳をしている。

桜花と白はいつも二人で行動している。最初の方は白がミスをすると桜花が素早く修正するという一方的なものだった。しかし白の人懐っこい性格が桜花と白の間に友情を作っていった。いつもあまり話さない桜花とあれほど楽しそうに会話をするのも白だけだろう。桜花も嫌ではないらしく転んだ桜花を見ては微笑んで手を差し伸べる。
めまぐるしい変化を遂げているこの部署だが一つ未だに変わらない事があった。
「またあの上司は…」
現在の時刻は11時。9時から入社となっているので当然全員いるはずだった。しかしこれも当然と言うべきなのかハチワンが来ていなかった。
「来ないですねハチワンさん…」
「ん…」
「何かあったとか不吉なこと言わないでよぅ」
「…」
「そうだよね…心配だよねぇ…また遅刻だと思うけど。」
2人?で話しているのは白と桜花。もっとも会話になっていないが
(いやいや、お前はエスパーか…白…)
いつも彼女らの会話を聞く度にソウスケは心の中で突っ込んでいる。いつか口からでそうだが…
「……」
「ん?どしたの?えと…ハチワンさん、睦月が起こしに行きますかって言ってますけど?」
「いやいい、かわりに除草用のカッター持ってきといてくれ…」
「……草刈りですか?」
「ああ…刈るのは命だが。」
「うわあ……」
頭を抱えてでていくクオとついて行く睦月。扉を開けた瞬間に人が入ってくる
「ようしみんな!今日も頑張r…ぬお!」
「……!?」
勢いよく入ってきたハチワンにぶつかり倒れる睦月、バランスを崩して転ぶハチワン。二人の先にあるのは床……………ドサッ!
「……」
「痛てて…おいソウスケいきなりマウンドは酷いと…なっ!」
「…?!」
二人の距離は5センチ未満。睦月の頭の後ろにはハチワンの手のひらが敷いてあり、睦月も無意識にハチワンの背中に両手をまわしていた。「・・・」
「…いやいいか睦月…これは事故であり俺には予測のしようがなく…ソウスケさんもわかるでしょう…そのいかにも冗談じゃ済みそうのない机を置いて下さい…カナメさんも給湯器のポットをどうする気ですか…?」
「……///」
「うわあ顔を赤くするな!生々しいわ!」
「いいかハチワン…貴様は内気で人見知りする女の子にわざとじゃないとは言え抱きついて押し倒したわけだ。死のうか?」
「ハチワンさん…それは酷いと思います。私はこのポットを降り降ろさなければいけません…」
「さあ天誅を下されるがいい!!」
「…………す…」「え?」
「………許す…」
「あ…ああ…(自力で話せるじゃないか)」
「……」
「睦月!頑張って話せたね!」
彼女が自力で話せた事はクオも嬉しそうだ。睦月の頭を優しく撫でている。
「ごほんっ!…これからは少しずつ話せばいいさ。いつまでもだんまりじゃ鬱陶しいしな!」
「……!」
睦月は小さく、しかし確かに頷いた。


―その夜―
少女は誰かに連絡を取っている。
「私です。火星の株式会社デブリブデに到着しました。」
「ご苦労…しかしずいぶん遅い連絡だね?」
相手は男。鼻につく話し方をするがこの男にはしっくり来る…そんな気がする。
「…はい、申し訳ありません。連絡設備を整えるのに時間がかかりました。」
「まあいい。教会からの圧力もいずれ来るだろう。その他の新勢力も気になるところだ。急いで事を済ませなければならない。」
「…はい。いずれは戦闘になるでしょう。」
「まずはこちらの戦力を強化する。それを無視しきれなくなった教会を迎撃する。」
「その時は指揮は誰が取るのですか?」
「それはNO.81がやる。彼ならうまくやるだろう。最終目標はわかってるな?」「はっ。教会と連邦の解体です。」
「よろしい。現場ではとっさに個々の判断が試される時がある。常にその目標のために動くように。いずれ私もそちらに向かう。」
「はっ!お待ちしております!」
通信はそこで切られた。
今いる勢力の中でも連邦並に長く、そして恐らく全勢力中最も冷酷な勢力が静かに動き出した瞬間だった。


たいしょぉ

前の二作を読んでない方はフィーリングで



早すぎる。この一言に尽きる。いつものように遅刻して入社し、仕事に入ろうとした矢先だった。突如としてデブリブデをテロリストが占拠したのである。まず間違いなく教会の関係者だった。確かにかつての鮫軍トップが一カ所に固まったのでいつかはばれると思っていた。しかしここまで早かったとは…これは緊急事態だ…
「どうなってるんだ…まさかカナメを狙いに…?」
ソウスケもいきなりの襲撃に酷く困惑している。
「とにかく急ぐぞ。俺の机の下に非常階段がある。急いで降りるぞ。」
「でもどこに行くんですかハチワンさん!もう頼るところが…」
クオは完全に混乱しているようだった。無理もない…50メートルも離れない所から死が近づいてきているのだ。
「地下に非常用ロケットがある。これを使って地球まで向かう。」
「は?!お前今の地球がどんな星かわかって言ってるのか?」
「もちろんわかっている。かつて人が住めなかった星だ…だが今は科学の進歩と魔力の発見で住める星になっている。現に複数人在住している。とにかく全てはあとで話す。乗るんだ。」
ソウスケ達を促す。叫び声が近づいてきている恐怖感もあり、従ってくれた。彼らは非常階段を下り始めた。俺は素早く部屋を出て近くの災害用シャッターを下ろし降りきった後に拳銃で撃ってスイッチを破壊した。次に部屋に戻り鍵を閉め、非常階段を降りる。階段と部屋を繋ぐ扉を閉め、階段側から鍵を閉める。これで少しの時間稼ぎにはなるだろう。


ロケットを発射するにはまず魔力を装填しなければならない。魔力を用いての空間転移するのだ。装填している間もテロリストは近づいてくる。部署内を見ることのできるカメラには既にやつらが侵入しているのが見えた。彼らは室内の物質を全て破壊し、発見した非常階段の蓋を破壊した。一応いくつか障壁を作ったが彼らにとってはバターのようなものだろう…
「今の充填量は?」たまらなくなって俺は九十九に聞く。
「充填量は56%です…。」
「間に合わん…魔力充填量を200%から99.5%までに変更。ギリギリ地球につくだけにする。桜花!変更頼む!」
「…了解」




障壁は8割は通過されてしまった。決断するしかなかった。
「やむを得ない…発射する!」

「…しかしまだ95%です。」
「地球に引っ張ってもらうからいい!座標計算はしっかりしろよ!」

「了解!発射します!!」




発射の瞬間窓から肉眼でやつらが見えた気がした。しかしまばたきした瞬間窓からの景色が暗転した。窓に写るのは漆黒を背景にした灰色の星。かつての地球だった。
「軌道計算終了。このまま引力に引きつけられて目的地の誤差3キロメートル未満に到着します。」
九十九が淡々と説明する。
「…さて…説明してもらおうかハチワン…」
ソウスケが吐き捨てるように喋る。
「うむ。簡単に説明するとこれから向かう先には君達も知ってる人物がいる。そこで厄介になるわけだ。んでもって九十九白、零崎桜花、睦月、んで俺は昔からの仲だ。彼女らは言わば潜入だな。仲間を増やしたかった。」
「…お前は全て予測済みだったのか?カナメがここに匿われるということも…」
「最終目的はカナメを地球に匿うためだ。しかし過程が大きく逸れた。ソウスケ…君がカナメを自ら連れてきたからな…予定は3年分程早まった。」

「…………最後に肝心な事だが誰の元に連れてく気だ?」
「それは本人を見ればわかる。ほら着いたぞ。」
軽く揺れた後ロケットは静止し、扉を開けた。その先には確かに知っている男がいた…いや、恐らくは知らない火星人はいないだろう。
「任務ご苦労。それから歓迎しようカナメ君、火星人の諸君。」
その男はかつて地球を破滅に導いた男…鮫アスナプルだった。


続く☆後悔なんかしないんだからね!

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最終更新:2018年06月05日 23:33
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