見当識orientation (= 指南力):

, 場所, 周囲の状況を正しく理解する能力をいう. 知覚, 注意, 記憶, 知能, 意識などが侵されれば当然障害される. 障害された場合を失見当識という. 脳の器質性疾患の診断の一項目となる. しかし, 精神分裂病でも人物や状況の誤認はみられることがある. 中毒, 循環障害, 代謝障害でも起こりうる.


失見当識disorientation (= 見当識障害):

人が現実の状況に最も効果的に対応し得るためには, 自分自身に関する情報が正しく把握されていることはもちろん必要であるが, その他, 現在の日時 (時間的見当識), 現在居る場所 (空間的見当識) , 周囲の人物 (対人的見当識) について妥当な判断ができなければならない. 見当識の障害された状態を失見当識という. 見当識が保たれるためには意識, 知的機能, 注意, 知覚などの精神機能が適切に保持されている必要がある. 失見当識が起こる原因として臨床的に重要なのは, 1) 意識障害, 2) 記憶障害 (健忘), 3) 知能障害, などである. 軽度の意識障害の存在が疑われる場合, 見当識障害の有無がまず確かめられる必要がある. 意識障害がなく, 知能障害もそれほどでないのに著しい失見当識がある場合にはKorsakoff's syndromeの可能性がある. そのほか, 妄想, 注意や関心の喪失 (うつ状態など) , 失認の存在などに由来する場合もある.

[南山堂医学大辞典]


A&O

最終更新:2007年03月14日 03:14