KANTAのショールーム
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KANTAのショールーム
ja
2009-02-19T21:20:18+09:00
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12.アプローチング・ピープル
https://w.atwiki.jp/kakakakanta/pages/87.html
「お前は、おれを必要とするよ」
ツバサのその言葉が、頭から離れなかった。
そんなことは、ない。無いはずだ。
しかし、本当にない、と言えるか……?
「……」
どこかへ消え去ったノイジーも、何事もなかったかのように来なくなったウィアド達。それが、荒らしの前触れのような気がして、ならなかった。
「……」
僕は……僕は……
「僕は、誰なんだ……?」
「誰もがそういう疑問には、ぶつかるよねー」
聞き覚えのある声に、咄嗟に振り返った。
「……ウルズ……!」
そこにはウルズが居た。しかし服装はドレスではなく、ジーンズにラフなティーシャツだ。
「ういーっす」
「どうして、ここに?」
「ん? 暇だったしね。後……」
そういってウルズは、うつむいた
「いいや。」
「?」
久世が頭を傾げると、その瞬間、巨大な何かが降りる音がした。
「……」
ウルズは目を大きく見開いた。
「まさか……」
家から出ていこうとするウルズを小走りで追いかけると、そこには数十体のアームヘッドが居た。
「……」
「ウルズ、あれは?」
久世の問と同時にそのアームヘッド達は一斉に銃口を向け、銃弾を放ってきた。
その爆音をきくと、久世は反射的に身をかがめた。
しかし、痛みはない。
「……」
恐る恐る目を開けると、そこには銃弾が、止まっていた。ウルズが両手を前につきだしている。そこで、銃弾はきれいに止まっている。
「チッ。こいつに手を出そうモンなら、細切れにして、潰して、ころしてやる」
アームヘッド達は一瞬うろたえたようだったが、すぐにまた銃口を向けた。
『レーザーに変換。』
音声がそうつげ、銃弾がレーザーに変換される瞬間……
アームヘッド達は次々と、次々とズレていった。
「……言っただろ? 細切れにする、って。」
アームヘッド達は形すら残らず、地面に転がっていた。
「……」
「言っただろう? 力をお前は欲しがる、と」
その声に驚き、後を振り向いた。
ツバサが、いた。
ツバサはゆっくりと久世に近づくと、肩に手を置いた。
「この女は、お前に害をもたらすだろう。」
「……そんな、バカな。ウルズが? まさか」
「お前を殺すために、近づいてきたのだとしたら……?」
「僕を守ってくれたんだ。」
「
2009-02-19T21:20:18+09:00
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11.ザ・キング・リヴァイバル
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「菊田アッ!」
そう叫んで飛び込んできた宝生のキックを菊田は避けることができなかった。
「ゴメスッ」
奇怪な事を言って菊田は倒れた。
「あら、おじさん、こんにちは」
宝生は菊田の横にいた武藏に気がつき、あいさつをした。
「な、なんのようだ? 宝生」
菊田は宝生に踏まれながらうなるように言った。
「そうだった、これ」
宝生は菊田の上から退きながら、持ってきた鞄の中から、あるものを取りだした。
「……これは」
それは、輝くアームコア、ユグドラシルだった。驚く菊田に対して、武藏はあまり驚く気配を見せない。
「やはり、もどってきたか。ユグドラシル」
武藏は呟いた
「……おじさん?」
「宝生、君に見せなければならない、物がある。言左右衛門、お前も、ついてきてくれ」
武藏に従うまま歩くと、菊田重工本社内のもう使われていない試験プラントにたどり着いた。
「父さん、ここは?」
「……これを、みろ」
そういって試験プラント内の電源を入れた。部屋の中が明るくなると同時に、一体の赤いアームヘッドがそこにあった。
「……これは?」
「あと、角をつければ完成なんだ。」
「これはなんなんだっ父さんッ! また、また変な物を作って居るんじゃないだろうな? 答ろッ!」
叫ぶ菊田に対して、武藏は冷静に答えた。
「これが何? 簡単だ。私が、託された物だよ」
「……託された?」
「そうだ。ラグナロク消滅の少し前、その老人はやって来て、私に、見えない設計図を託したんだよあたまになかにね」
凶人とも取れるその発言に、菊田は舌打ちした。
「……オーディン?」
宝生は、ついそう呟いていた。違うかもしれない、だが確かに、これはオーディンのようにも見える。
「……君がそう思うのなら、これはオーディンだ。」
武藏は、にっこりと笑った。
「……それを、貸してくれ」
武藏は宝生からアームコアを奪うと、なにやらよく分からない作業をし、手元にあった金槌で叩き始めた。
アットいう間に、巨大な、それでいて美しい一本のアームホーンが完成した
「……これは?」
宝生の問いかけに武藏は答えることなく、それを持って、赤いアームヘッドの頭へ続くはしごを、その巨大なホーンを持ったまま上がっていった。
そして少しすると、それは完全にアーム
2009-01-31T21:58:48+09:00
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10.オーディン
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(私を、解放しろ、宝生)
そんな声が聞こえ始めたのは、一週間ほど前から、毎晩聞こえてくる
(……だれ?)
(……世界を、変革する者。違う意味で。次こそ、世界の終わりが。一枚の羽根のよって巻き起こされる。)
(……)
(いいから、早く、私を解放しろ。お前が、よく分かっているだろう? 私の存在は。)
そういわれて、宝生は驚いた。
(まさか、お前は)
(……世界で、待つぞ)
宝生はベッドの上から飛び上がると、自室のタンスをあさくって、黒い革鞄を取り出した。鍵を半ば壊すようにして、それを開けると、現れたのは光を失ったアームコアだった
「……ラグナロク……」
宝生はさっきまで使っていた枕をどかし、それを置き、枕として仰向けになった。
急に眠くなり、眠りの世界へと飛び込むのに時間はかからなかった。
「……」
目の前にあらわれた世界に、宝生は息をのんだ。
金色の玉座が、そこにはあった。
「……」
「来たんだな。宝生」
そこには、黒いスーツに身を包んだ男が居た。
「……ラグナロク……」
「……いかにも、私が、そうだ」
「随分、イメージが変わったな。私を廃人にしよう、とかいう気はないだろうな?」
「まさか、あのころとは、状況が変わった。我々は、蘇る。ただのアームコアではなく、あのころの輝ける存在として。」
「……どういう事だ?」
宝生が尋ねる
「わからんか。まだ、お前も若かったからな。」
「?」
「……」
ラグナロクが息をすっとすうと、叫んだ
「蘇るのだ! 誇り高く! 美しく! そして、力強く! 大いなる樹・ユグドラシルに祝福された子供達が! 今! それぞれの武魂へ!」
「……もしかして、あいつも? オーディンも?」
「そうとも。宝生。眼を覚まし、今お前が今枕にしている物を、見るがいい。」
そういわれて、眼が覚めた。
枕を見ると、輝いていた。一転の曇りもなく、まるで太陽のように
2009-01-31T20:50:17+09:00
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9.ドリーム・ドリーム・ウイングス
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ふ、と眠くなり、ハッとして久世は頭を横に激しく振った。
「……こんなモンかな」
ウルズが、またギターを壊したのだ。
(どんだけ壊すんだよ……)
タンスの奥に眠っていた来客用の布団の上で猫のように円くなっているウルズに目をやった。
菊田重工の廃プラントから帰ってきてすぐ、彼女は現れた。
「……壊れた」
そういって、一本のギターを差し出したのだ。
(……まあ、いいんだけどさ)
背筋に、ゾ、っとする何かを感じる。……なんだ? そう思って振り返ると、そこにいたのは黒い、何かだった。
(……なんだ?)
声が、出ない。しかし、気のせいではない。絶対に。何かが、‘いる’
(なにが、いる?)
風が吹き抜けるように、何かが聞こえた。声のようにも聞こえたし、ただの物音のようにも感じた。
「……夢だ……」
そう呟いた。
ゆっくりと、歩いている自分がいた。暗闇の方へ。
急に脚の感覚が無くなった。
落ちている。
身体が
(?)
やはり、声が出ない。
急に落下が止まったように感じると、目の前には一人の男が現れた。
「……」
「よお」
その声は風のように吹き抜けた。心地よくはない。むしろ、まとわりつくような感じだった
「……」
「強く、なりたいとは思わないか? 相棒」
『相棒』と、そいつは久世のことを呼んだ。久世はそれが気持ち悪くてしょうがなかった。
「……僕が、強くなる必要が、どこに、あるというんだ。‘ツバサ’」
気がつけば、そいつの名前を呼んでいた。そいつの顔は、ゆっくりと歪んでいった
「ある。ある。大いに。ありまくりだよ、相棒では、聞くがお前の周りは、今まさに変動していないかな? 知らないルーンの娘達。黒いアームヘッドとヘッドホン女。まさしく、変化の時だ。……お前の身体に危機が現れれば、迷わず、俺の名を呼べばいい。」
ツバサが、闇に消えようとする
「……まて、お前は誰なんだ、ツバサ。」
「……くくく、矛盾たっぷりだな。今、俺の名前を、呼んだじゃないか、相棒。」
そういわれて、ハッとする。
「……ツバサ……まて……!」
消えようとするツバサを止めようとして叫ぶが、ツバサは、闇に消えた。
2009-01-31T12:48:14+09:00
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8.ザ・ハンガー
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菊田重工のプラント、と言っても、こんなものとは思わなかった。
(まあ、そりゃあそうか)
売れなかったからか、人員的な問題なのかそこは寂れて誰も居そうにはなかった。
(菊田重工のプラントなんて、聞いたこと無かったしな)
「……」
ここがどこか問おうとしたが、ノイジー今、巨大なヘッドホンからでも聞こえてくるような爆音で音楽聴いていることに気がつき、やめた。
どこかで、聞いたことあるな。と思って、思い出した。昔、白黒のテレビで流れていたあれだ。
リ・ビット「ドリームドリーマー」
その曲名が出てくるのには時間がかかった。何も言わず、そのプラント内に入っていくノイジーを追いかけ、今、やっと追いついた所だった。
「……」
沈黙の間を、ディストーションギターが右往左往駆けめぐる。
目の前に現れたのは、巨大な色あせた銀色をしたハンガーが現れた。そこには、一機のアームヘッドがセットしてあり、その下に作業服を着た誰かが、横たわって何かをしていた。
彼はノイジー達に気がつき、駆け寄った。
「君、来たんだね。」
と彼が言うと、ノイジーはまるですべて分かっているかのように頷き、彼に言われるがまま何かを話し込んでいるようだった。こちらの方に、視線が来ることはない。それを疎外感を含んだ瞳で、久世は見つめていた
「……」
(それにしても、凄い機体だ)
心からそう思う。
アームヘッドの美しさとか、そういうのはよく分からないけれども、凄い、それだけは分かった。
百戦錬磨と言いたげな、黒く、艶のある装甲の上にも細かな傷が入り、光を受けるごとに、それは目立って見える。
肩に背負っている巨大なブレードは、アームヘッドの仰々しさを物語っているようだった
「どうだい? きみ」
と、作業服の男が叫んだ。灰色の蓄えられた髭が目立つ。
「……そうか。完璧、か……このほかに、何か、追加して欲しいものはないかい?」
ノイジーが、アームヘッド用のはしごから下りてくる。最後は二、三段跳び抜かして床に着地した。
「最近まで稼働していた工場だからね。レーザーサーベルが六、七本あるけど、格闘用にマウントしておくかい?」
男がそういうと、ノイジーは口を動かさないが、会話は成立しているように思えた。
事実、成り立っていた。
「え……? それは、
2009-01-30T22:05:56+09:00
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一頁
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ハーモニカを吹きながら石を削りだして作られた壁に腰掛ける青年がいた。
もう寒くなるのに動きやすい半袖の服を身につけ、腰には剣が一本差してある。青色のクセのある髪と、覇気のない緑の眼は静かにハーモニカを奏でていた。
ティンクである。
「ここにいたんだ」
優しげな顔をしてゆっくり近づいてきた彼女は、フィーレーである。
フィーレーの声も無視して、ハーモニカを吹く。
「へえ、うまいね」
フィーレーはそういいながらティンクのとなりに座った。
ハーモニカを吹くことをやめたティンクはそのハーモニカをベルトに備え付けてある小さな袋にしまった。
「どうかしたの?」
「ん? ちょっとよったから、アルフォンモに会うついでに、ここまで来たんだよ」
「それはお疲れさま」
ティンクは微笑んだ。嘘の笑い、嘘笑みである。
「やっぱり、怒っているよね」
「……あたりまえだろ」
「ターミーになりたければ、うんたらかんたら、とか言われて、もう何年経つと思ってるんだ。いろんな資格を受けないとターミーにはなれない、とか言われてさ。」
ティンクが自嘲気味に言うと、フィーレーはなだめるように笑った。
「それだけ君を離したくないのさ。いま、その年でそれだけ強い人は居ない。もっと強くなれる。だから、はなしたくなんだ」
「放したくない? 僕を戦争の道具にするつもりか」
「……そうじゃなくて」
「だったら、どうするつもりなんだ? 僕を、僕の人生を、どうするつもりだ? 君は、あいつは、お前達は」
「ティンク……」
フィーレーがなだめるように言うが、ティンクはため息をついた。
「このままなんだろうか、僕は」
「……そんなこと無いよ。いつか、彼女も君を手放してくれる。」
フィーレーがそういうと、ティンクは頷いて笑った。
「よし、じゃあ、交渉しよう。フィーレー、またな」
ティンクは勢いよく立ち上がると、皇室へ走っていった。
「どうぞ」
ノックした後、彼女の声だ。
「失礼します」
そういってはいると、そこには黒く、長い髪をした女性がいた。
「ティンクか。どうした?」
「ターミーにならせてください。」
「却下」
沈黙が流れる。
「お前の力は、この国に必要なんだ。根無し草の旅人になられるのは、正直言って困るんだ。」
「一つ、言
2009-01-05T09:36:02+09:00
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第二章 ハード
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空は青く、雲は白く、地面は緑に包まれ、木々の恵みを、大地の、すべての恵みを、世界は謳歌している。
〈ハード〉はそんな場所だと思っていた。
そんなティンクの想像を、悪い意味でそれらは裏切った。
空は鮮血をまいたような赤。雲は黒く、地面は乾き、植物なんて見あたらない。
「……」
これじゃあ、〈ホーム〉と何ら変わりは無いじゃないか。ティンク思った。
これが、これが楽園なのか?
ティンクは今、荒野の上に立っていた。荒涼としていて、何もない。
「……」
ただ、口は動かせても、言葉は出ない。これは、自分が夢にまで見ていた、〈ハード〉か?
ティンクは、ゆっくり歩き始めた。
ティンクの足跡は、すぐに乾いて、風にさらわれて、消えていった。時々吹く突風は乾いた砂をティンクにぶつける。
脚が、痛いことを思い出した。唐突に。そういえば、そうだった。ノックに……
あの時は自然と身体が走り出していたが、今はもう、走れなくなっていた。全身が痛い。疲労感はズルズルとティンクを捕らえた。
まるで、泥に足を取られているように、歩けない。倒れてしまおうか、と、ティンクは思った。しかし、今、それはできない。自分言い聞かせる。
歩かないと。進まないと。
――何処に――?
ティンクは、倒れた。
揺れる炎が見える。
ただ揺れている。
不規則に、何の規則性もなく揺らめくそれは、ただ、自分を見据えている
炎はゆっくり、大きくなっている。
燃えながら、食い尽くす獣のように
ゆっくりと――
ティンクが目を覚ますと、目の前には石でできた暖炉があった。
「……」
まだ、夢がつづいているのか、とはぜながら燃える火を見て思った。暖かい。何だろう、毛布もある。ふわふわしていて、暖かいそれらは、ティンクを、また心地よい眠りの中に誘おうとしていた。
ゆったりとまどろみ、瞼が重くなっていく。寝ても、大丈夫だよな。自分自分自身に聞いてみた。
(ウン、大丈夫だよ)
そうか――目を暗闇に閉ざそうとした瞬間、しゃがれた女性の声が耳に飛び込んできた。
「起きたのか?」
飛び起きて見てみると、顔に皺をたためた老婆だった。
「え?」
「アルセイムの荒野に倒れてい
2009-01-05T08:55:36+09:00
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7.イト・イズ・ア・ウィアド
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「結婚式か……」
宝生は苦笑いだった。こんなにも早く、周りの人間が結婚していくとは。
宝生も、後六年で三十路。いい加減、そういう関係の人間だっていて良いはず……だが、いないものはいない。
そして、問題なのはこの女、村井、雪那。
ひどくニヤニヤしている
ひどく、ニヤニヤしている
「あ、やっほー」
(こっち向いて手、ふってんじゃねえよ。アタシが恥ずかしいだろうが)
と、宝生は小さく呟いた
キャラが、違いすぎる。氷の女王は今やただのにやついた主婦とかした。
「……」
そして、隣を見ると、目障りなくらいいちゃついている菊田夫妻。来週は、こいつ等の結婚式にも行かないと行けない。
「……」
ため息をすることも忘れ、椅子の上であぐらを掻き、その上に頬杖をつく、と言う奇怪なポーズをしながら、幸せそうな村井……もとい、テーリッツを見た。
幸せなら、良いんだけどさ
「関係者からの挨拶、関係者代表、宝生旬香様!」
いきなり自分の名前がマイク越しに聞こえてくるので、さっき口に含んだ林檎ジュースが口から飛び出して綺麗なアーチを描き、飛んでいった。
(何も考えてねえよ)
と、ブツブツ言いながら、どう、嘘をぶちかましてやろうかと考えていると、雪那と目があった。
……
「えー、どうも、初めまして。宝生旬香です。チャピオンです関係者代表の挨拶、と言うことで、えー、まず、最初に言いたいことは、雪那さん、もといユッキーが、非常にニヤニヤしていて、気持ちが悪い、と言うことでしょうか。」
会場の失笑
「彼女は、学校では氷の美少女、だとか、氷の女王、とか、村井家の女王様、だとか言われていた彼女が、こんなにもニヤニヤしているので、もう一度言いますが、気持ち悪いです。のろけにのろけて……おばさんみたいになりやがって! 何でも、子供も授かっているそうじゃないですか……のろけやがって!」
「ピャー」
そういって、白髪のおじいさんが倒れた。
「まあ、わたしが言えることは、マキータさんがロリコン、だと言うことと……」
「……二人が幸せであるように、これだけです」
決まった。
次のスピーチで、幸太朗おじさんが、ひどいスピーチをした後、一区切り、となった。
「……ひどいスピーチだったな」
菊田が言った。
「膝の上でアイアネスさん
2008-12-23T16:56:03+09:00
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第一章 アナザー・モーニング
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彼は駆け上がった。延々と続く、階段の上を。
砂埃を吸い込み、風を感じることもなく、一心に駆け上がった。ただ、目を見開いて。
血走った目は、遙か遠く、空を見据えていた
まただ、ティンクが呟いた。その視線の先は、右腕に現れた紅い文字にあった。
<Roomlock Nowhere>と、書かれている。
ルームロック・ノーウェー。誰かの名前だ。
「また、出てきたのか。」
全身をススだらけにした男が言った。オースだ。
「オース、やっぱり、この人は変人なのかな?」
「さあねえ。〈ハード〉の奴が悲しむことは、そう無いから、……そうなのかもしれんな。」
「……そうですか」
この世界には、二つの階層が存在する。まず、絶対的な幸福を祝福された<ハード>
<ハード>に一生分の幸福を与え奪われた者が落とされる<ホーム>。この二つの世界は、繋がっている。と、落下神父のムシクはいう。
落下神父というのは<ハード>から落ちてくる子供を見守り、受け止める人たちのことだ。<ハード>では、落下神父になるか、鉱山夫になるかだけ。大半の人は鉱山夫として、山を削っている。
怒りはない。ここの人たちは、心が麻痺してしまっている、と、ティンクは思う。うまれる前からきめてあったこの理不尽きわまりない制度、と言うよりもこんなことが大前提としてある世界を、ティンクはイヤだ、と思った。
しかも、〈ハード〉の人たちは、働かないらしい。何故?豊かだから? なぜ豊かなんだろうか、働く。なぜ? その疑問は、自分にも向けられた。
なぜ、僕はここで働いて居るんだろうか。逃げたい。無理だ。こんな感情も、いつかは踏みつぶされてしまうんだ。いつか、精神が麻痺し、魂をすり減らし、肉体を失っても、ただ、家畜のように……
心が先に腐ってしまう。ティンクはそう思って、目の前の岩肌に意識を向けた。
黄銅の鐘がなる。
一日の終わりを、それは叫んでいた。
一瞬だった。僕も、オースも、また、他の人たちも、汗を流し終え、やっと終わった、と安堵していた。
一瞬だった。
油断していた。
安らかに、
ただ、油断していた。
轟音が鳴り響いて、目の前が白く煙る。何かが崩れる音と、熱。奥の方で、熱と、光を持つ何かがうまれたのが分かった。
火事だ。人々が
2008-12-20T22:28:44+09:00
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6.ノイジー
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誰? 誰だ? そのことだけが久世の心を捕らえていた。
「お、おきたみたい。」
そこにはウルズと、ベルカナが居た。
「だ、誰ですか、この人は?」
久世は動揺しながらも尋ねると、ウルズは首を傾げた
「ん? ああ、そのこのことか。倒れていたから、拾ってきただけだよ。」
ウルズは、簡潔に、そう答えた。正直迷惑な話だった。
「迷惑かい?」
ベルカナはまた、毒のある笑みを浮かべた。馬鹿にしているような、挑発しているような、とにかく、本気して良いことはないだろう、久世はそう決めつけた。
事実、そうだし。
「ふふふ。もう、大丈夫そうだ。僕、もう行っていいよね?」
ベルカナがそういうと、ウルズはこくり、と頷いた。ベルカナは、僕のある笑みとはまた違う笑みを浮かべると、スラッとした歩き方で、玄関から外に出ると、すぐにバイクの音がした。
「オシラも、ウィアドも、もう居ないよ。わたしも、もう少ししたら、出ていく。」
早く出ていってくれないかな。と久世は毒突いた。そのときは、思ったよりも早く訪れた。三十分ほどすると、何も言わずに出ていってしまった。
ふ、と、背中にある視線を感じた。
真紅の目が案の定久世を見つめていたからだ。
「……君は?早く、どこかに行ってくれると嬉しいんだけど」
単刀直入に行ってみた。彼女は何も言わず、ヘッドホンをつけ、ポケットを適当にまさぐって、何かを操作したようだった。その瞬間、外にもきこえてくるような爆音で、ギターの音が聞こえてきたのだ。
「……」
正直、あっけにとられた。何だろうか、お前の声は聞きたくない、と言うことなのか?
「君は、出ていかなくっていいのかい?」
久世がそういうと、今度は何らかの反応を示してくれた。首を、静かに振ってくれたのだ。
「じゃあ、何処に行きたいんだ?」
彼女はポケットから、地図を取り出すと、いきたいのであろう場所を指差した。
「菊田重工のプラントじゃないか。そこに、何かあるのか?」
彼女は、こくり、と頷いた。
「しょうがないな……」
早く、出ていって貰いたかった。それ以外に理由はないから、久世はそこまで少女を連れて行くことにした。
「名前は?」
と久世がきくと、彼女の名前が、分かったような気がした。彼女は口を動かしてないが、何故だろうか、感覚的に分
2008-12-20T13:41:13+09:00
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