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 許してくれ、俺は、君の願いを叶えられそうもない

 ルーシルアは畑のあぜ道に座っていた。森と森との間にできた畑だ。今は野菜を作っているらしい。この時期のカボチャは美味い
「追いかけてくるな!」
 森の真ん中にある獣道から一人の少女が飛び出してきた。白い色のドレスを身につけ、少し茶色に汚れたドレスのスカートを持ちながら走っている。
「……無視するか、関係ねえし」
 少女の後には、一人の男が追いかけている。茶色い鎧を身につけ、槍を手に持っている。
「……」
 少女はまだ年齢が二桁にもなっていなさそうなのに、男はもう三十路を通り越しそうなくらい老けている。何処からどう見ても犯罪だ。変態である
「……まあ、人の趣味なんて、知ったこっちゃねえし」
「捕まえましたよ、もう逃げられません」
 変態だな……紳士っぽく言ってるが……まあ、この子に明るい未来はないだろ……
 その場を去ろうとして、立ち上がったときだった。
「私はもう戻りたくない!お願いだ!はなしてくれ」
 ルーシルアが頭を抱えて考えると、さらに少女が叫んだ
「帰りたくない!いやだ!はなしてくれ!」
 どうするべきだ?俺が干渉するようなことでもないだろう。そうだ、俺が干渉する必要はないのだ。
 ルーシルアは少女の方を見た。
 ルーシルアが石を拾うと、ゆっくり男の方に狙いを定める。そして、投げた
 石は見事に男に当たり、男は倒れた。そしてゆっくり起きあがると、こちらの方を見ると、凄い形相でこちらを見ながら歩いてきた。そいつが槍を構えると、一気に駆けだした
 ルーシルアが腰にある剣を抜くと、男の槍と交えた
 槍を振りほどくと、剣の柄で男の頭を殴った
 ルーシルアは少女のいたほうをみた。もうすでに居なくなっていて、ルーシルアが少し空しくなると、男の巾着袋をあさりだした
「……しけてんな」
 金だけを取り出すと、ルーシルアは森の方に歩き出した
 森の中は薄暗く、オオカミの一匹や二匹出てきてもおかしくない程だった
「あ、野菜盗めばよかったかもな」
 ルーシルアが後悔すると、道に一個のペンダントがおちていた。金色のペンダントだ。中の写真は……ほう。仲の良さそうな父と娘。まあ、悪いけれど、これは換金させてもらうとしよう
 森を抜けると、石の防壁で囲まれたおおきな村に出てきた。
「到着……と」
 まだ日は暮れてないし、随分早くついたな、そんなことを思いながら門の前につくと、一人の少女が門番とああだこうだ言い合っていた
「よう、アレイン、どうした?」
 ルーシルアが門番と挨拶をすると、アレインと呼ばれた門番が答えた
「ルーシルアさん、この女の子が、村の中に入りたい、と言ってきかんのです」
 ルーシルアは少女の方を見た。みすぼらしい格好をしている
「領主様からは、あやしい奴は入れるな……と言われているのですが……どうすれば良いんでしょう」
「俺に聞くな、そんなモン。領主から入れるなって言われてんなら入れるなよ、それはともかく、俺は入れてくれよ」
 ルーシルアが言うと、門番は何も言わずに門を開けた
 ルーシルアが最後に少女の方を振り向くと、少女の目の色が気になった。
 赤色……珍しいな。北の人種か……ここまでよく来たな……不思議と、その目は何かをねだっているように見えた
「なんだよ、そんな目で俺を見たって、何もしてやらねえぞ」
 ルーシルアがそういっても、少女の目は変わらなかった
「おい、子供、この村で何がしたいんだ?」
「……この村を横切って……向こうの森に行くだけだ……決して害さない」
「だってよ。アレイン、入れてやれよ」
 門番はそういわれると、渋々少女を入れてやった
 少女は、走しって、門をくぐると、すぐに向こうの方までいった。
「いいのか?」
 ルーシルアが門番に聞いた
「あなたが言ったんでしょう?だから、入れたのです。最悪、あなたのせいにします」
 ルーシルアは笑いながら、村の中に入っていった。
 ルーシルアがまず最初に向かったところは、宿屋だった。部屋を取ると、村の中を出かけていった。
「……何年ぶりだろうな」
 村は衰えることなく、未だ元気に活気があった。南の風車がゆったり回っている
「……穏やかだな。たまには、こう言うのも良いな」
 けれど、俺に穏やかな場所があるものか
 ルーシルアが質屋に向かおうとした瞬間、誰かが叫んだ
「ああ!さっきの!」
 一瞬びくっ、としたが、いいや、俺のはずがないだろう、と思いまた歩き出した
「ちょっと待て!おい」
 大変だな。叫んでばっかりみたいだな。可哀想な人生だ
「そこの男!話を聞け!」
 演説でもやってるのか?聞いて貰えていないんだな、それにしては幼い声だ。まあ、いいや
 すると、ルーシルアの目の前に、いつかの少女が現れた
「話を聞け、と言っている」
「俺?」
「お前だ」
 ルーシルアが面倒臭そうに頭を掻くと、少女はキッとこちらを睨んだ
「一応、変態から助けてもらったのだから、礼はしておかなければならない」
「いいよ。そんなシュミねえし」
 ルーシルアが少女を通り抜けて先に進もうとすると、少女はしつこく追いかけてきた。
「もう、何なんだよ」
「礼をする、と言っている。言っておくが変な意味ではない」
「誰も期待してねえよ、変態」
「むう、なんだと?」
「何だとじゃねえ。早く用件を言え。俺も暇じゃないんだ」
「ほう、暇じゃない、とな」
 ルーシルアは少女を持ち上げると、水の入った樽の中に少女を放り込んだ
「うわっ」
 すっぱりおさまった少女がジタバタする間に、ルーシルアは全速力で走った。
 質屋に行くのは諦め、宿屋の中に入り込むと、ベッドに倒れるようにして転がった
「何なんだ、あのガキ……くそ。まあ、いい。さっさと寝るとするか」
「運命は奇妙な物よ、ルーシルア」
 へえ。そうかい。じゃあ、君が俺と出会ったのも、奇妙な物、ッてことになるのか?
「そういうこと、世の中、何億と人間は居るのに、私達が偶然であったの。そう考えると、とても不思議に思えないかしら」
 そうだな……じゃあ、その出会いを大切にしてみるよ
「それは本当にそう思っていっているの?」
 そうだよ。本当にそう持っているよ、どうしたんだ?いきなり
「……出会いを大切にするなら……何故私をこんな目に遭わせたの?」
 ルーシルアは全身汗だくになって、ベッドから飛び上がるように起きあがった。
「……クソッ」
 ルーシルアは支度をすると、部屋から出た。
 ……許してくれ……
「ああ!居た!」
 聞き覚えのある声だ
「……またお前か」
 昨日の少女だった
「またとは何だ。」
「なぜ、そう俺にかまう?お前がもう十歳年が高かったら構ってやらんでもないが」
「昨日の復讐だ!」
 ルーシルアは少女を無視して宿屋の階段を駆け下りた
「親父、勘定」
 宿屋のカウンターに金を置き、宿から出た
「まて!こら!」
「うるさいな。売春館にでもおいてくるぞ、少し黙ってろよ」
 ルーシルアがそういうと、少女は少し黙った
「ちょっと、目をつむるんだ。十秒を百回数えるんだ。そうしたら、かまってやるよ」
 少女はおとなしく目をつむり、数を数えだした。少女の目が開く頃には、ルーシルアは村から立ち去っていた
「あいつ、バカだなー」
 ルーシルアは村の外で笑っていた。
「さて、意味の分からないコブも消えたところだから、これで気兼ねなく歩けるな」
 ルーシルアは煙草を口にくわえると、火を付けた。
「ま、何のお礼をしたいかはしらんが、行くとしよう」
 ルーシルアが歩き出そうとしたときだった
「まて!ほ、ほんとうに、ま、まってくれ!」
 ルーシルアは嫌そうに振り返った
「お前は何の怨みがあって俺についてくるんだ?」
「昨日、私をあの変態から助けてくれただろう?礼の一つや二つ、言っておかなければきがすまん。ありがとう。できればちゃんとしたお礼がしたいが、今はそれどころではないのだ」
「へいへい。金にならなければ無意味だから、さっさと行きなさい」
 ルーシルアは手で少女を振り払った
「あの、その、それで、お願いがあるのだ。捜し物を手伝って欲しい」
「探しものだあ?」
「金色のペンダントを探している。」
 ルーシルアはハッとした。昨日俺が拾ったアレか
「それがどうした?」
「それをあの性悪女王が狙っているのだ」
「見つければ、どうなる?」
「……わ、私の財布の中にある金を、すべて渡そう」
 ルーシルアはポケットの中から、ペンダントを取りだした
「これか?お前が探しているのは」
 少女の顔はぱあっとし、目は希望の光で満ちあふれた
「返してくれ!わたしのだ!」
「いやだ」
 少女は何故?といいたそうな顔をした
「これは俺のだ。俺が今から売りにいくのさ」
「いやだ!それは私のだ。返してくれよ」
 ルーシルアは、少女を振り払うと、足早に森の中に入っていった。
「待ってくれ。返してくれたら、金を払う!」
 必死で少女はついてきた。ルーシルアはそれを聞かなかった。
「うるさい奴だ。忘れるなよ」
 ルーシルアは、ペンダントを投げた
「もう、俺についてくるな」
 森を抜けると、目の前には荒廃した村々が広がっていた