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「料理はしないのか?」
 アイネアス固形食料をほおばりながら言った。
「食べ屑が飛んでるよ」
 菊田も固形食料をかじっている。菊田はアイネアスを指差していった。
「……じゃあ、君はしてるの?自炊」
「……してない」
 菊田はにたっと笑った。一口固形食料をかじると言った。
「僕はしてる」
 アイネアスはそっぽを向いた。
「どうしたの?」
「べつに、お前が気にするようなことでもない」
「……キクダ、一つ聞きたいことがある。お前は……」
 菊田は笑って答えた。手の中の固形食料はもう無くなっていた。
「何故、リズからおわれているか、聞きたいんだろう?でなければ色んな国の軍が動くわけがない。そういいたいんだろ?」
 菊田はコップの中にもう冷めたコーヒーを入れると、それを飲んだ。
「簡単なことさ。リズの大事な物を奪えば、そうなる。しかも、超極秘のね」
 アイアネスはゆっくり立ち上がると、息を乱しながら菊田の近くに寄ると、肩の上に手を置いた。
「どうした?えーっと……」
「アイネアス……だっ……」
 アイネアスは床の上に崩れ落ちた。さらに息を荒くしながら、床の上にうずくまる。金色の髪は床の上に散らばった。
「う、っく、クソ……少し歩いただけで……」
「オイ、大丈夫か?アイネアス。全身を強打してる。両足にはひびが入ってるし、右手は手首からぽっきり。左手に至っては、肩の骨にひびが。腰には青あざができてるし、胸の肋骨は折れてる。絶対安静だよ」
「はっは、早く……言えよ……べ、ベッド……あぐう」
 身体を引きずりながら進もうとするが、動くわけもなく、菊田がすぐにアイネアスの近くに寄った。
「大丈夫か?すこし、動くぞ」
 菊田が身構えると、アイネアスは菊田が何をしようとしているのか察したらしく、精一杯抵抗するが、あっけなく持ち上げられた。
「ちょ、ちょっと!は、はなせ!はなして!」
 菊田があっけにとられたような顔をした。
「……何?」
「ちゃんと女の子みたいな声だすんだなあ」
「……この……ッ」
 言いかけた途端、アイネアスはベットの上におとされた。
「飯の準備してくるから、ここで待ってろ。な?」
 菊田は部屋の中から消え、少しして香ばしいにおいがしてきた。
「……なんだろう……このにおい……」
 アイネアスは天井のシミを数えながら鼻歌を歌っていた。
「なに?その歌」
 アイネアスはまたそっぽを向いて眼を合わせようとしない。
「お粥作ってきたぜ」
「お粥?オコメのか?」
 アイネアスは菊田の方を向いた。
「いいや、麦の方だ。リズ人だろ?だったらこっちの方が良いかな。って思ってさ」
「……ありがとう。気を遣ってもらって」
「気は使うもんだよ」
 菊田はスプーンを動かしながら言った。アイネアスはゆっくり手を動かすが、眉間には皺が寄って、手は震えている。
「……大丈夫か?」
 黙々と手を動かしていた菊田がいった。
「……何がだ?」
 菊田はスプーンを持った方の腕を動かしながらもう片方の手でアイネアスの動く事すらままならない手を指差した。
「鎮痛剤が、もう切れてるんだな。腕を動かすと、痛くならないか?」
「……鎮痛剤は?」
「痛いんだな?」
 アイネアスの手は自然にゆるみ、スプーンが床に落ちた。
「っつ」
「キクダ、聞いて良いか?」
 菊田のスプーンを動かす手は止まり、彼は優しく答えた
「なんだ?アイネアス」
「……お前は……なぜ、そうも人に優しくできる?私は、お前を殺すかもしれない人間だ。そんな人間を、何故助けるんだ?キクダ。……情けをかけているつもりなのか?」
 菊田は大きく息を吸った。
「そうだ。せめてもの罪滅ぼしだ。正直言おう。僕は、スルトにのまれている。徐々に。そんな俺が、無意識のうちに殺して死まった、人たちへの……罪滅ぼしだ。お前以外は……みんな……」
「そうか。ありがとう」
「……悲しくないのか?」
「私は……軍人だぞ」
 アイネアスはうつむいた。
「泣かないのか?それとも……」
「……泣けないのか?」
 アイネアスはベットに取り付けられたテーブルを杖代わりにしてデットの上に立ち上がった。
「私が泣くものか!アイネアス・メイヤー!私は、私は……」
「……泣くことを……知らないのかも、しれない……」
 菊田は、立ち上がって、アイネアスのスプーンに付いたほこりを、服の裾で取ると、アイネアスに差し出した。
「……泣こうとして、泣く奴なんて、いない。涙は、自然に溢れてくるのさ」
「う、う、う……うわあぁああ」
 アイネアスは、ベットの上に膝をついた。