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 私は、雪の上に只一つおとされたその羊皮紙を拾い上げた。何だろうか。
 それには、なにやら訳の分からない記号と絵と、それの名前のような物が載っていた。
「……なんだろ?これ」
 羊皮紙を指でこすりながら指に残る感覚があった。
『ODIN』
 と書かれたその羊皮紙。とりあえず声に出してみることにした。
「オー・ディー・アイ・エヌ?何なんだろう」
 私はその羊皮紙を捨てようかと考えたが、どうも手が動かない。かじかんでいるのか。その羊皮紙を手放したくない。と私の本能が語っているのかもしれない。どちらにしろ、これは捨てられない。
 家に着くと、中は案の定真っ暗で、私は電気をつけた。一回瞬きながらついた明かりは部屋の全てを照らしてくれた。
 テーブルの上にある置き手紙を見つけ、ああ、やっぱりな。という感覚になった。
『当分帰ってきません。母より』
 誰がお前のような人間を母だと思うか。父が死んだのを良いことに、色んな男と寝るような女は母とは言えない。私は、あいつのことが嫌いだったし、あいつも私のことが嫌いだった。お互い、お互いが死ねばいいのに。と、常に思っているだろう。
 父が前の母親と離婚したとき、私はまだ小さくて、幼かった。だから、若い母親を新しい妻としてめとったのだろう。あいつが『母』として生きていたのは三年。父が死んだ瞬間、あいつは家族を捨てた。遺書により、遺産の半分を受け取ったあいつは、その多額な金を服や、色んな物に費やし、それはすぐになくなるのは案の定だった。きっと、今も男にこびってるんじゃないのか?
「なにが『母より』だ……。ふざけるなよ」
 私は、その何ヶ月も前からある紙をみた。……鉛筆の濃さが違うような気がした。
 私はまさかと思って、タンスの奥に隠した銀行の通帳を広げ、中を見た。
「……あの、クソ女ッ」
 通帳の中にあった、私の父の残した金は確実に無くなっていた。
 私はすぐに鍵の業者に電話を入れた。
 鍵を取り替えてもらうと、私は新しい鍵を受け取り、業者に金を支払った。これで、安心だと思う。
 鍵をかけて、ソファの上に転がった。
「……ふう」
 手には、さっきの羊皮紙が握られたままだったから、私はその羊皮紙を開いてみた。
「……私にあるのは、この紙だけか……」
 明日にでも、木堂に聞いてみよう。私は、ソファに横になったまま、寝てしまったようだ。
 大きな樹が一本だけある、世界に私はいた。目の前には、黒いローブを羽織り、右手に槍を持った老人だった。
「……あなたはだれ?」
「……我が名はオーディン。会う日を楽しみにしている」
「?なに?オーディンって。あなたは一体何者?」
「……会える日は……そう、遠くないといいな。少女よ」
 私は、起きあがった。遠くの方から目覚まし時計が騒がしくないている。私は時計を止め、制服を着たままだったから、用意をして、外に飛び出した。腕時計を見ると、もうすぐで予鈴がなる。間に合うかもしれない。多分、間に合わないけど。
 坂の手前ほどで、ついにチャイムはなってしまった。
「……あーあ、まあ、いいか」
「何がいいんだ?」
 真後ろに、木堂が腰に手をあてて私を見下ろしていた。このでくのぼうめ
「あ、そうだ。せんせい、ちょっと、見てもらいたい物が」
 私は鞄の中をあさくった。
 鞄の中の羊皮紙を見せる。木堂の顔はちょっとして、状況を受け止めたようだ。
「……それ、何処で手に入れたんだ?売ってくれないか?」
「嫌です」
「そうか。じゃあ、没収だ。分かったか?すぐそれを渡すんだ」
 私はその瞬間、木堂がおかしくなったかと思った。狂った人間の眼だ。おかしい。くるってる
「……わたせ」
「いやです」
「これは命令だ!宝生!それをわたせぇえ!」
 私は後を向いて走り出した。
「クソッまて!」
 後を振り向くと、木堂が追いかけてくる。勝てるか?私。
 前を向くと、本をよみながら歩いてくる見慣れた姿があった。
「あっユッキー!」
 私は目の前まできた村井を横目に、走った。
 後を振り向くと、すぐ近くまで木堂が来ていた。そして、私は捕まった。
「……たく、てまかけさせやがったな。このやろう」
 私は目の前の木堂を睨んだ。
「何だ?その目は」
 木堂が手を構え、私を殴ろうとする。手が動こうとした瞬間に、その手の動きは止まった。
「……なんだ?」
 木堂が後を振り向くと、そこにいたのは村井だった。
「ユッキー!」
 私が叫ぶ。
「村井、はなせ」
「嫌です」
「はなすんだ」
「いやだ」
「はなせっ!」
 木堂の手は村井の手を振り払おうとしていた。
「先生、何をそんなに必死になっているんですか?」
 木堂の手は止まる
「……もしかして、言えないようなことですか?」
「……」
 木堂が黙り込む。
「私は、あなたのこの行動を見逃すわけには行きません。何があったか、はなして貰えませんか?」
「……こいつは、設計図を持ってる。逃がすわけには行かない。リズに突き出す」
「……そんな、只の高校生のいたずら書きが欲しいんですか?」
「いたずら書き?」
 木堂は村井の方を目だけで見る。
「そうです。昨日二人で考えたんだよね?旬香?」
 私は唖然としたが、すぐに言葉を返した。
「ああ、うん。そうなんだよ。もしかしたら木堂先生が騙されてくれるかなーって」
 木堂は、分かった。と言いたげな表情で頷いた。
 私は、村井と二人で道路脇の道を歩いている。少し先に木堂がいる。
「ユッキー、どうする?あいつおかしいよ」
「……いったん、私の所に逃げよう。あいつは、多分リズに連絡する。そうすると、軍部がやってくる」
「……私が拾ったヘンなのがそんなに欲しいのかな?」
 村井は、少し考えてから、言った。
「おそらく……ね」
 私達は、一旦立ち止まって、後を向き、一気に走り出した。
 まだ木堂には気づかれていない。
 村井の家に着くと、彼女は手招きした。
「多分、あなたの家にもリズがくると思うから、ほとぼりが冷めるまで、私が面倒を見る」
 そういって、彼女は私をその巨大な豪邸に通した。